(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】超音波波形断層撮影方法を用いた組織撮像および分析
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
A61B8/14 ZDM
(21)【出願番号】P 2018512330
(86)(22)【出願日】2016-09-01
(86)【国際出願番号】 US2016050014
(87)【国際公開番号】W WO2017040866
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-07-04
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518070928
【氏名又は名称】デルフィヌス メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サンドゥ, ガーズハラン シン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥリッチ, ネボイシャ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ツイピン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ, オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト, エリック
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】O. Roy, et al.,Sound Speed Estimation Using Wave-based Ultrasound Tomography: Theory and GPU Implementation,Proc. of SPIE,2010年,Vol. 7629,p.1-12
【文献】Cuiping Li, et al.,Toward a practical ultrasound waveform tomography algorithm for improving breast imaging,Proc. of SPIE,2014年,Vol. 9040,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
反復の総回数を、前記周波数成分のセットに分散させることと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成すること
であって、前記精緻化することを反復することは、前記周波数成分のそれぞれに対して、前記周波数成分に分散された前記反復の回数分だけ行われる、ことと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記シミュレートされた波動場を発生させることは、前記組織の体積を通して伝送された音響波の伝播を、[∇
2+ω
2/c(r)
2]u(r,ω)=s(r,ω)として表されるヘルムホルツ関数に従ってモデル化することを含み、
式中、∇
2は、ラプラス演算子であり、[∇
2+ω
2/c(r)
2]は、ヘルムホルツ演算子であり、
式中、ωは、周波数成分であり、cは、前記音速モデルであり、uは、前記周波数成分ωに関して前記変換器の位置rで得られることが予期される数値的波動場であり、sは、前記変換器の空間的な超音波源である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音速モデルを発生させることは、平面外の音響波形の散乱を考慮することなく、前記組織の体積を通した冠状スライスのセットと関連付けられた音響機械的なパラメータのスライスのセットを発生させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記音の減衰は、媒体に固有の減衰である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記音速モデルは、c=c
R+ic
Iとして表され、
式中、c
Rは、位相速度に対応する実数部分であり、c
Iは、前記音の減衰に比例する虚数部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記精緻化することを反復することは、前記シミュレートされた波動場と所与の波動場との間の差を含む、誤差コスト関数の勾配を適用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記適用することは、c
2=c
1-β∇S(ω,c
1)として表され、
式中、c
2は、前記音速モデルの更新された値であり、c
1は、前記音速モデルの現在の値であり、βは、ステップのサイズであり、∇Sは、前記誤差コスト関数の勾配であり、ωは、前記周波数成分のセットのうちの1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことであって、前記音速モデルは、c=c
R
+ic
I
として表され、式中、c
R
は、位相速度に対応する実数部分であり、c
I
は、前記音の減衰に比例する虚数部分である、ことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成することであって、前記精緻化することを反復することは、前記シミュレートされた波動場と所与の波動場との間の差を含む、誤差コスト関数の勾配を適用することを含む、ことと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングすることと、
を含み、
前記精緻化することを反復することは、
前記勾配を前記周波数成分のセットの1つに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分に関する値を得ることと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記1つの周波数成分に関する前記虚数部分に対して適用することと、
前記周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むことと、
を含む
、方法。
【請求項9】
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことであって、前記音速モデルは、c=c
R
+ic
I
として表され、式中、c
R
は、位相速度に対応する実数部分であり、c
I
は、前記音の減衰に比例する虚数部分である、ことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成することであって、前記精緻化することを反復することは、前記シミュレートされた波動場と所与の波動場との間の差を含む、誤差コスト関数の勾配を適用することを含む、ことと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングすることと、
を含み、
前記精緻化することを反復することは、
前記勾配を前記周波数成分のセットのそれぞれに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分の値を得ることと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記周波数成分のセットのそれぞれに関する前記虚数部分に対して適用することと、
を含む
、方法。
【請求項10】
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成することと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングすることと、
を含み、
前記精緻化することを反復することは、より高い周波数成分の前に、より低い周波数成分に対して行われる
、方法。
【請求項11】
前記周波数のセットのより低い周波数に分散された反復の回数は、前記周波数のセットのより高い周波数に分散された回数よりも小さくない、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記レンダリングすることは、前記音速モデルの前記実数部分の最終値に基づいて、画像を生成することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことであって、前記音速モデルは、c=c
R
+ic
I
として表され、式中、c
R
は、位相速度に対応する実数部分であり、c
I
は、前記音の減衰に比例する虚数部分である、ことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成することと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングすることと、
を含み、
前記方法は、前記音速モデルの前記実数部分の最終値に基づいて、前記組織の体積内の異なるタイプの病変を分類することをさらに含む
、方法。
【請求項14】
前記減衰の表現を使用して、前記分類を精緻化することをさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、組織の体積を分析する方法を行わせる命令を記憶した非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記方法は、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
反復の総回数を前記周波数成分のセットに分散させることと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成すること
であって、前記精緻化することは、前記周波数成分のそれぞれに対して、前記周波数成分に分散された前記反復の回数分だけ行われる、ことと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の減衰画像をレンダリングすることと、
を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
より低い周波数に分散された反復の回数は、より高い周波数に分散された回数よりも小さくない、請求項
15に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、組織の体積を分析する方法を行わせる命令を記憶した非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記方法は、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信することであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備える、ことと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すことと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出することであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、ことと、
周波数成分および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させることと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成することと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出することと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の減衰画像をレンダリングすることと、
を含み、
前記音モデルは、実数部分および虚数部分を備え、前記実数部分および前記虚数部分は、それぞれ、位相速度および前記音の減衰に対応し、
前記精緻化することを反復することは、
誤差コスト関数の勾配を前記周波数成分のセットの1つに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分の値を得ることであって、前記誤差コスト関数は、前記シミュレートされた波動場と所与の波動場との間に差を有する、ことと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記1つの周波数成分に関する前記虚数部分に対して適用することと、
前記周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むことと、
を含む
、非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
組織の体積を分析するためのシステムであって、
超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える変換器であって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成され、超音波送信機/受信機対が、前記超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された前記超音波送信機のアレイのうちの1つを備え、前記超音波送信機のアレイは、前記組織の体積に向かって、前記超音波送受信機のアレイによって受信されることになる、音響波形を放出し、前記変換器は、受信した音響波形を音響信号のセットに変換する、変換器と、
プロセッサであって、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すように構成される、発生ユニットと、
各超音波送信機/受信機対に対して前記音響信号のセットから周波数のセットを識別するように構成される、識別ユニットであって、前記抽出することは、時間ドメイン窓を前記音響波形に適用し、フーリエ変換を算出し、前記フーリエ変換を算出することの結果として所望の周波数成分を選択することを含む、識別ユニットと、
反復の総回数を、前記周波数のセットに分散させるように構成される、分散ユニットと、
前記周波数のセットの周波数および前記音速モデルの観点から、シミュレートされた波動場を発生させるように構成される、生成ユニットと、
前記音速モデルの値を、前記周波数のセットのそれぞれに対して前記シミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、停止条件が満たされるまで反復し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成するように構成される、精緻化ユニット
であって、前記精緻化することを反復することは、前記周波数のセット内の前記周波数のそれぞれに対して、前記周波数のセットに分散された前記反復の回数分だけ行われる、精緻化ユニットと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出するように構成される、算出ユニットと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つ以上の減衰画像をレンダリングするように構成される、レンダリングユニットと、
を備える、プロセッサと、
前記1つ以上の画像を表示するように構成される、ディスプレイと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2015年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/212,983号(代理人管理番号第50174-732.101)および2016年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/294,360号(代理人管理番号第50174-732.102)の利益を主張するものであり、これらは参照により本明細書中に援用される。本願は、米国特許出願第14/817,470号(代理人管理番号第50174-728.201)に関連しており、該米国特許出願は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(政府支援研究に関する陳述)
本発明は、アメリカ国立がん研究所を通してアメリカ国立衛生研究所によって助成された認可番号第R43CA171601およびR44CA165320のもとでなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
(参照による引用)
本明細書で述べられる全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個々に参照することによって組み込まれるように示される場合と同程度に、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
癌による主要死亡原因のうちの1つである、乳癌は、早期に診断および検出されるとき、死亡率を低減させている。乳房マンモグラフィは、乳癌スクリーニングの現在の標準であるが、しかし、問題がないわけではない。これは、乳癌の検出およびスクリーニングのための他の方法への関心につながっている。リング超音波変換器アレイを用いた断層撮影の原理を組み込むことによって、超音波断層撮影は、乳房撮像における新しい技法につながっている。
【0005】
従来の超音波は、源送信機からの集束経路に沿って音響波またはビームを放出させ、波が組織またはその経路内の他の境界から散乱する(例えば、反射、屈折、回折、伝送において)ことを可能にすることを伴う。散乱した波は、その周囲に心合され、および/または送信機を含み得る、1つまたはそれを上回る受信要素の表面に戻る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、スクリーニングおよび診断目的のために組織体積を撮像ならびに分析するためのシステムおよび関連方法を提示する。いくつかの実施形態では、本システムは、組織体積をリング変換器設定に曝すことによって音響信号を発生させ、音響信号に対する組織体積の音減衰等の音響性質を算出し、音響性質に基づいて、組織体積に関する診断情報を提供する。リング変換器設定を介して、広範かつ体系的音響信号を発生させることによって、本システムは、組織体積の音響性質の算出の正確度を増加させることができる。音速に加え、音減衰をモデル化することによって、本システムは、算出の正確度、最終的には、診断情報を生成する有効性をさらに増加させることができる。
【0007】
一側面では、組織の体積を分析するコンピュータ実装方法が、本発明のさらなる側面に従って提供される。本方法は、変換器から、組織の体積を通して伝送される音響波形から導出される音響信号のセットを受信するステップを含む。変換器は、組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える。本方法はさらに、音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すステップと、音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出するステップと、周波数成分および音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるステップと、音速モデルの値を、周波数成分のセットのそれぞれに対してシミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで繰り返し、それによって、音速モデルの最終値を生成するステップと、音速モデルの最終値から、減衰の表現を算出するステップと、減衰の表現に基づいて、組織の体積の1つまたはそれを上回る画像をレンダリングするステップとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、シミュレートされた波動場を発生させるステップは、組織の体積を通して伝送された音響波の伝播を、[∇2+ω2/c(r)2]u(r,ω)=s(r,ω)として表されるヘルムホルツ関数に従ってモデル化するステップを含む。∇2は、ラプラス演算子であり、[∇2+ω2/c(r)2]は、ヘルムホルツ演算子であり、式中、ωは、周波数成分であり、cは、音速モデルであり、uは、周波数成分ωに関して変換器の位置rで得られることが予期される数値的波動場であり、sは、変換器の空間的な超音波源である。
【0009】
いくつかの実施形態では、音速モデルを発生させるステップは、平面外の音響波形の散乱を考慮することなく、組織の体積を通した冠状スライスのセットと関連付けられた音響機械的なパラメータのスライスのセットを発生させるステップを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、音減衰は、媒体に固有の減衰である。
【0011】
いくつかの実施形態では、音速モデルは、c=cR+icIとして表され、式中、cRは、位相速度に対応する実数部分であり、cIは、音の減衰に比例する虚数部分である。次いで、精緻化するステップは、シミュレートされた波動場と所与の波動場との間の差を含む、誤差コスト関数の勾配を適用するステップを含む。適用するステップは、c2=c1-β∇S(ω,c1)として表され、式中、c2は、音速モデルの更新された値であり、c1は、音速モデルの現在の値であり、αは、ステップのサイズであり、∇Eは、誤差コスト関数の勾配であり、ωは、周波数成分のセットのうちの1つである。次いで、精緻化するステップはさらに、勾配を周波数成分のセットの1つに関する実数部分に対して適用し、実数部分に関する値を得るステップと、勾配を、実数部分の値を使用して、周波数成分のセットの1つに関する虚数部分に対して適用するステップと、周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むステップとを含んでもよい。代替として、精緻化するステップはさらに、勾配を周波数成分のセットのそれぞれに関する実数部分に対して適用し、実数部分の値を得るステップと、勾配を、実数部分の値を使用して、周波数成分のセットのそれぞれに関する虚数部分に対して適用するステップとを含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、精緻化するステップは、より低い周波数成分に対して行われた後、より高い周波数成分に対して行われる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、反復の総回数を、周波数成分のセットに分散させるステップをさらに含む。精緻化するステップは、次いで、周波数成分のそれぞれに対して、周波数成分に分散された反復の回数分だけ行われる。周波数のセットのより低い周波数成分に分散された反復の回数は、周波数のセットのより高い周波数に分散された反復の回数と同じである。
【0014】
いくつかの実施形態では、音速モデルは、c=cR+icIとして表され、式中、cRは、位相速度に対応する実数部分であり、cIは、音の減衰に比例する虚数部分である。次いで、レンダリングするステップは、音速モデルの実数部分の最終値に基づいて、画像を生成するステップを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、音速モデルは、c=cR+icIとして表され、式中、cRは、位相速度に対応する実数部分であり、cIは、音の減衰に比例する虚数部分である。次いで、本方法はさらに、音速モデルの実数部分の最終値に基づいて、組織の体積内の異なるタイプの病変を分類するステップを含む。本方法はさらに、減衰の表現を使用して、分類を精緻化するステップを含む。
【0016】
別の側面では、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに、組織の体積を分析する方法を行わせる命令がその上に記憶された非一過性コンピュータ可読記憶媒体が、本発明のさらなる側面に従って提供される。本方法は、変換器から、組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信するステップを含む。変換器は、組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える。本方法はさらに、音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すステップと、音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出するステップと、周波数成分および音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるステップと、音速モデルの値を、周波数成分のセットのそれぞれに対してシミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで繰り返し、それによって、音速モデルの最終値を生成するステップと、音速モデルの最終値から、減衰の表現を算出するステップと、減衰の表現に基づいて、組織の体積の画像をレンダリングするステップとを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、反復の総回数を周波数成分のセットに分散させるステップを含む。精緻化するステップは、周波数成分のそれぞれに対して、周波数成分に分散された反復の回数分だけ行われる。より低い周波数成分に分散された反復の回数は、より高い周波数成分に分散された反復の回数と同じである。
【0018】
いくつかの実施形態では、音モデルは、それぞれ、位相速度および音減衰に対応する、実数部分および虚数部分を備える。精緻化するステップは、誤差コスト関数の勾配を周波数成分のセットの1つに関する実数部分に対して適用し、実数部分の値を得るステップを含む。誤差コスト関数は、シミュレートされた波動場と所与の波動場との間に差を有する。精緻化するステップはさらに、勾配を、実数部分の値を使用して、周波数成分のセットの1つに関する虚数部分に対して適用するステップと、周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むステップとを含む。
【0019】
別の側面では、組織の体積を分析するためのシステムが、本発明のさらなる側面に従って提供される。本システムは、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、組織の体積を囲繞するように構成される、変換器を備える。超音波送信機のアレイは、組織の体積に向かって、超音波受信機のアレイによって受信されることになる、音響波形を放出し、変換器は、受信した音響波形を音響信号のセットに変換する。本システムはさらに、音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させて、組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すように構成される、発生ユニットと、音響信号のセットから周波数のセットを識別するように構成される、識別ユニットと、周波数および音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるように構成される、生成ユニットと、音速モデルの値を、周波数のセットのそれぞれに対してシミュレートされた波動場に対して精緻化させることを、停止条件が満たされるまで繰り返し、それによって、音速モデルの最終値を生成するように構成される、精緻化ユニットと、音速モデルの最終値から、減衰の表現を算出するように構成される、算出ユニットと、減衰の表現に基づいて、組織の体積の1つまたはそれを上回る画像をレンダリングするように構成される、レンダリングユニットとを備える、プロセッサを備える。本システムはさらに、1つまたはそれを上回る画像を表示するように構成される、ディスプレイを備える。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
組織の体積を分析するコンピュータ実装方法であって、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信するステップであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える、ステップと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すステップと、
前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出するステップと、
前記周波数成分および前記音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるステップと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対してシミュレートされた前記波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで繰り返し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成するステップと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出するステップと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つまたはそれを上回る画像をレンダリングするステップと、
を含む、方法。
(項目2)
前記シミュレートされた波動場を発生させるステップは、前記組織の体積を通して伝送された音響波の伝播を、[∇
2
+ω
2
/c(r)
2
]u(r,ω)=s(r,ω)として表されるヘルムホルツ関数に従ってモデル化するステップを含み、
式中、∇
2
は、ラプラス演算子であり、[∇
2
+ω
2
/c(r)
2
]は、ヘルムホルツ演算子であり、
式中、ωは、周波数成分であり、cは、前記音速モデルであり、uは、前記周波数成分ωに関して前記変換器の位置rで得られることが予期される数値的波動場であり、sは、前記変換器の空間的な超音波源である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記音速モデルを発生させるステップは、平面外の音響波形の散乱を考慮することなく、前記組織の体積を通した冠状スライスのセットと関連付けられた音響機械的なパラメータのスライスのセットを発生させるステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記音の減衰は、媒体に固有の減衰である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記音速モデルは、c=c
R
+ic
I
として表され、
式中、c
R
は、位相速度に対応する実数部分であり、c
I
は、前記音の減衰に比例する虚数部分である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記精緻化するステップは、シミュレートされた前記波動場と所与の波動場との間の差を含む、誤差コスト関数の勾配を適用するステップを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記適用するステップは、c
2
=c
1
-β∇S(ω,c
1
)として表され、
式中、c
2
は、前記音速モデルの更新された値であり、c
1
は、前記音速モデルの現在の値であり、βは、ステップのサイズであり、∇Sは、前記誤差コスト関数の勾配であり、ωは、前記周波数成分のセットのうちの1つである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記精緻化するステップは、
前記勾配を前記周波数成分のセットの1つに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分に関する値を得るステップと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記周波数成分のセットの1つに関する前記虚数部分に対して適用するステップと、
前記周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むステップと、
を含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記精緻化するステップは、
前記勾配を前記周波数成分のセットのそれぞれに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分の値を得るステップと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記周波数成分のセットのそれぞれに関する前記虚数部分に対して適用するステップと、
を含む、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記精緻化するステップは、より高い周波数成分の前に、より低い周波数成分に対して行われる、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記反復の総回数を、前記周波数成分のセットに分散させるステップをさらに含み、
前記精緻化するステップは、前記周波数成分のそれぞれに対して、前記周波数成分に分散された前記反復の回数分だけ行われる、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記周波数成分のセットのより低い周波数成分に分散された前記反復の回数は、前記周波数のセットのより高くに分散された回数よりも小さくない、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記レンダリングするステップは、前記音速モデルの前記実数部分の最終値に基づいて、画像を生成するステップを含む、項目5に記載の方法。
(項目14)
前記音速モデルの前記実数部分の最終値に基づいて、前記組織の体積内の異なるタイプの病変を分類することをさらに含む、項目5に記載の方法。
(項目15)
前記減衰の表現を使用して、前記分類を精緻化するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、組織の体積を分析する方法を行わせる命令がその上に記憶された非一過性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記方法は、
変換器から、前記組織の体積を通して伝送された音響波形から導出される音響信号のセットを受信するステップであって、前記変換器は、前記組織の体積を囲繞するように構成される、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える、ステップと、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させ、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すステップと、
前記音響信号のセットから周波数成分のセットを抽出するステップと、
前記周波数成分および前記音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるステップと、
前記音速モデルの値を、前記周波数成分のセットのそれぞれに対してシミュレートされた前記波動場に対して精緻化させることを、閾値条件が満たされるまで繰り返し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成するステップと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出するステップと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の画像をレンダリングするステップと、
を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
(項目17)
前記方法は、
前記反復の総回数を前記周波数成分のセットに分散させるステップをさらに含み、
前記精緻化するステップは、前記周波数成分のそれぞれに対して、前記周波数成分に分散された前記反復の回数分だけ行われる、項目16に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
(項目18)
より低い周波数成分に分散された前記反復の回数は、より高い周波数に分散された回数よりも小さくない、項目17に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
(項目19)
前記音速モデルは、実数部分および虚数部分を備え、前記実数部分および前記虚数部分は、それぞれ、位相速度および前記音の減衰に対応し、
前記精緻化するステップは、
誤差コスト関数の勾配を前記周波数成分のセットの1つに関する前記実数部分に対して適用し、前記実数部分の値を得るステップであって、前記誤差コスト関数は、前記シミュレートされた波動場と所与の波動場との間に差を有する、ステップと、
前記勾配を、前記実数部分の値を使用して、前記1つの周波数成分に関する前記虚数部分に対して適用するステップと、
前記周波数成分のセットの別の周波数成分へと進むステップと、
を含む、項目16に記載の非一過性コンピュータ可読記憶媒体。
(項目20)
組織の体積を分析するためのシステムであって、
超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備え、前記組織の体積を囲繞するように構成される、変換器であって、
前記超音波送信機のアレイは、前記組織の体積に向かって、前記超音波受信機のアレイによって受信されることになる、音響波形を放出し、
前記変換器は、受信した前記音響波形を音響信号のセットに変換する、
変換器と、
プロセッサであって、
音の減衰を特徴付ける音速モデルを発生させて、前記組織の体積のある領域にわたる音速の分布を表すように構成される、発生ユニットと、
前記音響信号のセットから周波数のセットを識別するように構成される、識別ユニットと、
前記周波数および前記音速モデルの観点からシミュレートされた波動場を発生させるように構成される、生成ユニットと、
前記音速モデルの値を、前記周波数のセットのそれぞれに対してシミュレートされた前記波動場に対して精緻化させることを、停止条件が満たされるまで繰り返し、それによって、前記音速モデルの最終値を生成するように構成される、精緻化ユニットと、
前記音速モデルの前記最終値から、減衰の表現を算出するように構成される、算出ユニットと、
前記減衰の表現に基づいて、前記組織の体積の1つまたはそれを上回る画像をレンダリングするように構成される、レンダリングユニットと、
を備える、プロセッサと、
前記1つまたはそれを上回る画像を表示するように構成される、ディスプレイと、
を備える、システム。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の新規特徴は、添付の請求項に詳細に記載される。本発明の特徴および利点のより深い理解は、本発明の原理が利用される例証的実施形態を記載する、以下の発明を実施するための形態と、付随の図面とを参照することによって得られるであろう。
【0021】
【
図1A】
図1A-1Cは、超音波波形断層撮影方法を実装するためのシステムを図示する。
【
図1B】
図1A-1Cは、超音波波形断層撮影方法を実装するためのシステムを図示する。
【
図1C】
図1A-1Cは、超音波波形断層撮影方法を実装するためのシステムを図示する。
【0022】
【
図2】
図2は、周波数ドメイン波形断層撮影を使用して、音減衰を判定し、対応する組織画像を生成する例示的プロセスを図示する。
【0023】
【
図3】
図3A-3Cは、異種乳房ファントムを模倣する、組織の再構成を図示する。
【0024】
【
図4】
図4は、本願に開示される任意のコンピューティングシステムを実装するように構成されることができる、コンピュータシステムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の種々の実施形態が、本明細書に図示および説明されるが、そのような実施形態が一例のみとして提供されることは、当業者に明白となるであろう。多数の変形例、変更、および代用が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起され得る。本明細書に説明される本発明の実施形態の種々の代替が、採用されてもよいことを理解されたい。
【0026】
本願は、スクリーニングおよび診断目的のために、組織撮像を改良する、システムおよび関連方法を提示する。以下の議論は、乳房組織に焦点を当てるが、本システムは、他のタイプの組織または腫瘤にも適用され得る。
【0027】
超音波波形断層撮影とリング超音波変換器アレイを併用して、患者は、その乳房を、水が充填されたチャンバ内に浸漬される、リング変換器アレイの中に設置することができる。乳房の冠状画像が、患者が胸壁から乳首まで走査された後、再構成される。走査プロセスでは、リングアレイの各変換器要素は、連続して、超音波源として作用する一方、全ての変換器は、受信機としても作用する。
【0028】
音速および媒体の減衰性質をより良好に定量化するために、周波数ドメイン超音波波形断層撮影技法が、本願に提示される。波動方程式への無限周波数近似を使用する、X線技法とは対照的に、周波数ドメイン波形断層撮影技法は、回折および多重散乱等の複雑な波現象を考慮することによって、波伝搬の物理学をより正確にモデル化する。これは、最急降下法反転アルゴリズムが、測定され、合成するように生成された音響圧力場間の差異として定義されるコスト関数を反復的に最小限にすることによって、音波が当てられた媒体のより正確な音速および減衰分布を再構成することを可能にしている。波形断層撮影技法を使用することによって、乳房の音速再構成が、下層乳房疾患の詳細な形態学的査定を与えることができる。
【0029】
音速および減衰は、典型的には、脂肪、線維腺組織、良性腫瘤、および悪性癌を区別することに役立つ。これらの性質の正確な査定は、感度および特異性を増加させることによって、診断を補助することができる。音速は、乳房内の種々の組織の区別に役立つが、嚢胞、線維腺腫、および癌等の組織の音速値には、ある程度の重複がある。減衰が、典型的には、類似音速を伴うこれらの病変をさらに分類するために使用されることができる。例えば、流体が充填された嚢胞は、通常、癌等の中実腫瘤より低い減衰を有する。音速が虚数成分を有することを可能にすることによって、波形断層撮影技法は、媒体の固有の減衰をモデル化することができる。媒体の固有の減衰は、媒体の加熱をもたらす摩擦によって生じるエネルギー損失であって、これは、反射、散乱、および速度不均一性によって生じるエネルギー損失と対照的である。これらの2つのタイプのエネルギーまたは減衰の和、すなわち、総減衰が、典型的には、X線断層撮影方法によって測定される。固有の減衰は、未知の組織の物理的性質に関連するため、病変タイプをより良好に特徴付け、分類するために使用されることができる。
【0030】
本願に開示されるシステムは、伝送された超音波信号を利用し、周波数ドメイン超音波波形断層撮影技法に基づいて、乳房の音速および減衰性質を定量化する。
【0031】
超音波波形断層撮影装置
図1A-1Cは、超音波波形断層撮影方法を実装するためのシステムを図示する。
図1A-1Cに示されるように、組織の体積内の堅度パラメータの分布を判定するためのシステム100は、組織の体積を受信するように構成され、超音波送信機のアレイおよび超音波受信機のアレイを備える、変換器120であって、超音波送信機のアレイは、音響波形を組織の体積に向かって放出するように構成され、超音波受信機のアレイは、組織の体積を通して伝送される音響波形から導出される音響信号のセットを検出するように構成される、変換器120と、変換器と通信する、コンピューティングシステム110であって、組織の体積のある領域を横断して音響機械的パラメータの分布を表すシミュレートされた波動場モデルと、音速モデルとを生成するように構成される、第1のモジュール112と、周波数成分のセットを音響信号のセットから抽出するように構成される、第2のモジュール114と、周波数成分のそれぞれに関するシミュレートされた波動場に対して音速モデル値を反復的に精緻化するように構成される、第3のモジュール116と、最終モデル値に基づいて、音響機械的パラメータのうちの1つの表現を算出するように構成される、第4のモジュールと、周波数成分のそれぞれに関する最終モデル値から強化された画像を生成するように構成される、第5のモジュール119とを備える、コンピューティングシステム110と、コンピューティングシステム110と通信し、組織の体積の強化された画像をレンダリングするように構成される、ディスプレイ190とを備える。
【0032】
システム100は、超音波画像をレンダリングする、および/または組織の体積内に存在する構造の高分解能画像を生成するために使用され得る、変化された超音波データを生成するように機能する。いくつかの実施形態では、システム100は、例えば、米国食品医薬品局(FDA)によって規制されるような医療撮像のための規制規格に準拠する、画像を生成するように機能することができる。システム100は、好ましくは、本願に説明される実施形態または変形例の少なくとも一部を実装するように構成される。しかしながら、システム100は、加えて、または代替として、任意の他の好適な方法を実装するように構成されることができる。
【0033】
変換器120、コンピュータプロセッサ110、およびディスプレイ190は、好ましくは、
図1Aおよび1Bに示されるように、スキャナ台105に結合され、スキャナ台105は、患者の組織10の体積へのアクセスを提供する、開口部106を有する。耐久性があって、かつ可撓性の材料(例えば、可撓性膜、布地等)から作製され得る、台は、好ましくは、患者の身体に象られ、それによって、乳房の腋窩領域への走査アクセスを増加させ、患者快適性を増加させる。台内の開口部106は、乳房(または他の付属物)が、台を通して突出し、音響波を伝搬する音響結合媒体としての水または別の好適な流体で充填される、撮像タンク130内に浸漬されることを可能にする。
【0034】
図1Bおよび1Cに示されるように、変換器要素122を伴う、リング形状の変換器120が、撮像タンク130内に位置し、乳房を包囲または別様に囲繞することができ、変換器要素122はそれぞれ、超音波受信機のアレイのうちの1つと対合された超音波送信機のアレイのうちの1つを備えることができる。安全な非イオン化超音波パルスを組織に向かって指向する、複数の超音波送信機と、組織から散乱し、および/または組織を通して伝送される、音響信号を受信および記録する、複数の超音波受信機とが、リング変換器120の周囲に分散される。1つの構成では、変換器120は、
図1Cにおけるように、各超音波送信機要素が、対応する超音波受信機要素と対合され、各超音波送信機要素が、2つの隣接する超音波送信機要素によって囲繞され、各超音波受信機要素が、2つの隣接する超音波受信機要素によって囲繞され、変換器が、軸方向に対称であるように編成されることができる。走査の間、リング変換器120は、胸壁と乳房の乳首領域との間の前後方向等、組織に沿って通過し、好ましくは、離散走査ステップまたは冠状「スライス」において、音響反射、音響減衰、および音速等の測定を含む、音響データセットを取得する。変換器120は、胸壁から乳首に向かって、および/または乳首から胸壁に向かって、段階的に増分して走査するように構成されることができる。しかしながら、変換器120は、加えて、および/または代替として、走査の間、任意の好適な方向に、組織の任意の好適な生体力学的性質に関するデータを受信してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、スキャナ台は、「Patient Interface System」と題され、2014年3月13日に出願された米国出願第14/208,181号(参照することによって全体として本明細書に組み込まれる)に説明される患者インターフェースシステムの実施形態、変形例、または実施例を備えることができる。さらに、具体的実施例では、システム100は、512の受信チャネル、512の伝送チャネル、動作周波数3MHz、データ分解能14ビット、画像分解能0.7mm、スライス厚2.5mm、スライスあたりの再構成時間15秒、および直径22cmの組織の体積に適応する能力を有する超音波断層撮影スキャナ100と協働する、2048の変換器要素を有する、リング変換器120を実装することができる。しかしながら、システム100は、加えて、または代替として、任意の他の好適な患者インターフェースシステムを備える、またはそれと結合されることができる。
【0036】
コンピューティングシステム110は、コンピュータ可読命令を受信するように構成される、少なくとも部分的にクラウド内に、および/または機械(例えば、コンピューティング機械、サーバ等)として、実装されることができる。加えて、または代替として、コンピュータプロセッサは、1つまたはそれを上回るコンピュータネットワーク、コンピュータシステム、またはアプリケーションサーバ等上に実装されることができ、コンピュータシステムは、クラウドベースのコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、グリッドコンピュータシステム、または任意の他の好適なコンピュータシステムのうちの1つまたはそれを上回るものを備えることができる。一変形例では、コンピューティングシステム110の第1のモジュール112、第2のモジュール114、第3のモジュール116、第4のモジュール118、および第5のモジュール119は、スキャナ台105に結合され、ディスプレイ190と通信する、コンピュータ機械上で実行する、ソフトウェアモジュールとして実装される。しかしながら、コンピューティングシステム110は、加えて、または代替として、任意の他の好適なコンピューティングシステムアーキテクチャを使用して、実装されることができる。
【0037】
システム100は、組織の体積内の堅度の表現を提供する様式において、ユーザの組織の体積から発生される音響信号の検出、処理、および/または分析を促進する、任意の他の好適な要素を含むことができる。さらに、当業者が、前述の発明を実施するための形態ならびに図および請求項から認識するであろうように、修正および変更が、システム100の範囲から逸脱することなく、システム100の好ましい実施形態に行われることができる。
【0038】
周波数ドメイン波形算出
0.5~10MHzの典型的診断範囲では、軟組織内の超音波の音響減衰は、周波数に略線形に依存する。いくつかの実施形態では、軟組織に関して、音響位相速度に分散は存在しないと仮定される。超音波エネルギー損失、すなわち、固有の減衰に起因する減衰をモデル化するために、コンピューティングシステムは、音速モデルが、虚数成分:c=cR+icIを有することを可能にし、式中、cRは、位相速度を表し、cIは、減衰に比例する。コンピューティングシステムは、特定の周波数に対して構成可能な回数だけ音速分布を更新し、次の着目周波数に進み、再び更新を開始する。このように、音速画像が、再構成プロセスの終了までに、より細かいスケールで徐々に改良される。
【0039】
図2は、周波数ドメイン波形断層撮影を使用して、音減衰を判定し、対応する組織画像を生成する、例示的プロセスを図示する。いくつかの実施形態では、最初に、コンピューティングシステムは、典型的には、0.5-10MHzの範囲内である、周波数のセットを音響信号のセットから識別する。ステップ210では、コンピューティングシステムは、所与の組織のスライスのための周波数および音速の観点から、シミュレートされた音響圧力場を発生させるが、シミュレートされた圧力場は、密度、圧縮率、反射率、吸収、または音響インピーダンス等、他の音響機械的パラメータも含むことができる。コンピューティングシステムは、複雑な音速モデルcおよび周波数成分ωに関するヘルムホルツ方程式を解法し、それによって、順モデル化圧力場データu
obs(ω、c)を生成することによって、シミュレートされた圧力場を発生させることができる。ヘルムホルツ方程式の解は、概して、粘度を無視し、幾何学的拡散に起因する振幅のみ減少させる。ヘルムホルツ方程式の解法は、有限差分法を使用し、以下の行列表現を使用してヘルムホルツ演算子をモデル化することによって、遂行されることができる。
【化1】
式中、∇
2は、ラプラス演算子であり、f(ω)は、ソース関数であり、Sは、ヘルムホルツ演算子の行列表現であり、uは、量子化された順モデル化圧力場であり、fは、量子化されたソース関数である。
【0040】
ステップ220-250では、コンピューティングシステムは、音速モデルの値を反復的に更新し、識別された周波数のそれぞれに関して、以下に議論される誤差コスト関数の値を低減させる。ステップ220では、コンピューティングシステムは、識別された周波数のうちの1つを選択する。典型的には、より低い周波数は、より高い周波数の前にあると見なされるが、初期周波数の適切な選択は、後続周波数の選択におけるさらなる柔軟性を可能にし得る。ステップ230では、選択された周波数に関して、コンピューティングシステムは、以下にさらに議論されるように、初期音速を選択する。
【0041】
ステップ240では、コンピューティングシステムは、音速を反復的に更新し、停止条件が満たされるまで、シミュレートされた圧力場値と所定の圧力場との間の差異を最小限にする。いくつかの実施形態では、順モデル化圧力場データuobs(ω、c)に関する方程式の得られた系を解法後、コンピューティングシステムは、uobs(ω、c)と実数圧力場データdobs(ω)との間の差異として定義されたデータ残留不整合e(ω、c)を生成する。
【化2】
実数圧力場データd
obs(ω)は、各所与の超音波送信機/受信機対毎に超音波波形のf(ω)を抽出することによって得られることができる。具体的には、これは、時間ドメイン窓を波形に適用し、そのフーリエ変換を算出し、所望の周波数を選択することによって達成されることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、各周波数は、一意のベクトルd
obs(ω)を与える。最急降下法が、次いで、使用され、データ残留不整合の内積として定義される実数値平均二乗誤差コスト関数S(ω、c)を最小限にすることができる。
【化3】
式中、
Hは、エルミート転置を示す。コスト関数の勾配を求めることによって、コンピューティングシステムは、音速モデルの実数または虚数部分に関する更新方程式を得る。
【化4】
式中、ステップサイズβは、直線探索またはステップサイズ近似法のいずれかによって選定され、更新されている音速モデルの実数部分かまたは虚数部分かに応じて、∇=∂/∂c
Rまたは∂/∂c
Iである。コンピューティングシステムは、具体的条件が満たされるまで、本反復プロセスを繰り返すことができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、構成可能様式において、音速モデルの実数部分および虚数部分を判定する。典型的には、コンピューティングシステムは、最初に、虚数部分が存在しない、または定数であると仮定することによって、音速モデルの実数部分に焦点を当てる。いったん実数部分が判定されると、コンピューティングシステムは、虚数部分を音速モデルに再導入することができる。コンピューティングシステムは、次の周波数に移行する前に、現在の周波数に関する実数部分を算出し、続いて、同一周波数に関する虚数部分を算出することができる。その場合、いったん最後のcR
i+1、cR’が、現在の周波数に関して判定されると、コンピューティングシステムは、全てのiに関してcR
iがcR’と等しく、∇=∂/∂cIとして、星印の付いた方程式においてci+1を求める。現在の周波数に関する結果は、次の周波数に関する初期値として使用されることができる。システムはまた、全ての周波数に関する虚数部分を算出する前に、全ての周波数に関する実数部分を算出することができる。その場合、いったん最後のcR’が、最後の周波数に関して判定されると、コンピューティングシステムは、全てのiに関してcR
iが最後のcR’と等しく、∇=∂/∂cIとして、星印の付いた方程式においてci+1を求める。異なる周波数に関する実数部分および虚数部分が他のシーケンスにおいて算出され得ることは、当業者によって理解されるはずである。
【0044】
いくつかの実施形態では、コンピューティングシステムは、構成可能様式において各周波数に対して実行する反復数を判定する。コンピューティングシステムは、具体的ステップサイズを各周波数に割り当てることができる。コンピューティングシステムはまた、具体的条件が、実数部分もしくは虚数部分の現在の値または前の値からの差異が閾値未満であることであるように、閾値を割り当てることができる。加えて、試験および実験は、リング構成の対称本質が、高正確度音速または高品質画像を得るために要求される全ての周波数にわたる総反復数が安定する傾向にあることを含め、比較的に安定結果につながる傾向にあることを示した。したがって、コンピューティングシステムは、主に、全ての周波数にわたる総反復数を制御し、次いで、それを異なる周波数に分散させることができる。概して、最急降下法プロセスが、より高い周波数より低い算出要件を用いて、より低い周波数に関して行われることができる。したがって、コンピューティングシステムは、より大きい反復数をより低い周波数に分散させ、全体的算出要件を低減させることができる。1つの周波数から次の周波数までの反復数には変化が存在することができる、または周波数の数は、一度にいくつかの周波数にわたって一定であるように、段階的に変化することができる。類似または異なる総反復数が、実数部分および虚数部分に関して使用されることができ、類似または異なる分散が、実数部分および虚数部分に関して使用されることができる。各周波数に関する反復数が効率的リソース利用および効果的出力生成を促す付加的方法において判定されることができることは、当業者によって理解されるはずである。
図2に戻って参照すると、ステップ250では、コンピューティングシステムは、次いで、識別された周波数毎に、プロセスを繰り返す。
【0045】
ステップ260では、コンピューティングシステムは、音速モデルの更新された最終値に基づいて、減衰係数を算出する。いくつかの実施形態では、エネルギー損失と実数および虚数音速を関連させる、周波数独立品質係数Qが、周波数wで発振する平面波のサイクルにおけるエネルギー損失ΔEの観点から定義される。
【化5】
【0046】
いくつかの実施形態では、音速モデルc=c
R+ic
Iおよび品質係数Qを用いる、媒体内で周波数wで発振する初期振幅A
0を伴う平面波の位置xにおける振幅A(x)は、以下によって与えられることができる。
【化6】
dB/(mm・MHz)の単位を有する、超音波減衰係数αが、次いで、以下によって与えられることができる。
【化7】
【0047】
組織体積撮像
いくつかの実施形態では、音速モデルの算出された値は、組織構造の容易な可視化のためにプロットされることができる。周波数ドメイン波形断層撮影減衰アルゴリズムのインビボ能力の試験に関して、乳房ファントムを模倣する異種組織が、使用される。組織模倣ファントムは、薄皮膚層によってさらに囲まれる皮下脂肪層によって囲繞される大容量腺組織中心から成る、乳房組織および疾患をシミュレートする。腺組織内に埋設されているのは、癌、嚢胞、および線維腺腫をシミュレートする、変動する音速および減衰特性を伴う、異なる病変である。ファントム再構成は、周波数間隔30kHzを伴って、周波数500~1010kHzを使用した。1024の変換器要素および中心周波数2.5MHzを伴う、2つのリングアレイ変換器が、組織模倣ファントムに関するデータを取得するために使用された。反転は、初期音速モデルとしてのX線断層撮影音速モデルと、初期減衰モデルに関する一定減衰係数0.1dB/(mm・MHz)とを使用した。
【0048】
図3A-3Cは、組織模倣異種乳房ファントムの再構成を図示する。
図3Aは、mm/μsの単位におけるオーバーレイバーを伴う、再構成された波形音速、典型的には、音速公式の実数部分に対応する、画像を図示する。
図3Bは、dB/(mm・MHz)の単位におけるオーバーレイバーを伴う、再構成された波形減衰係数に対応する、画像を図示する。
図3Cは、dB/mmの単位におけるオーバーレイバーを伴う、X線減衰に対応する、画像を図示する。
図3Aにおける音速画像から、システムは、中心腺組織層330と、周囲皮下脂肪層340と、外側皮膚層350と、嚢胞310(10時方向)、線維腺腫330(2時方向)、および癌320(6時方向)を模倣する、3つの埋設された病変とを復元可能であることが分かる。波形減衰と音速画像との間に、相関が認められる。3つの病変の場所は、画像間で良好に相関し、中心腺組織層330が異なる物質の層によって囲繞されるという事実もまた、減衰画像内で可視化される。これらの相関は、単なる複雑な音速のパラメータ空間内でのクロストークの結果ではない。これは、より高い音速物体として現れるが、それぞれ、より低いおよびより高い減衰値を有する、嚢胞310および癌320を視認することによって分かる。
【0049】
波形減衰画像とX線減衰画像の比較は、波形減衰方法の有効性の有望性を示す。3つの病変の場所および極性が、内側腺組織層330と周囲皮下脂肪層340との間の相対的コントラストと同様に合致することが分かる。特に、理想的には、X線ベースの画像内のそれを囲繞する低減衰光輪を伴う高減衰物体として可視化される、低減衰嚢胞310は、波形反転プロセス内において非常に均一な低減衰物体に変換される。波形およびX線減衰再構成の両方に見られる1つの組織は、脂肪腺界面の像である。層間インピーダンス不整合に起因して、反射は、減衰パラメータ空間内の界面を撮像する能力を曖昧にする。これは、理想的には低減衰であるべきとき、誤った高減衰脂肪層340の復元をもたらす。しかしながら、本問題は、界面領域の再構成された数値に影響を及ぼすが、界面境界および皮膚層の可視化には影響を及ぼさない。界面境界および皮膚層は、
図3Bでは、コントラストが修正される場合、良好に可視化されることができる。組織模倣ファントムの再構成された波形減衰値は、一見信頼できそうであって、真実を示し得る。組織模倣ファントムが、中心周波数2.5MHzを伴う超音波アレイによって走査されたため、
図3Cを2.5で除算すると、
図3Bで使用される同一単位スケールに変換されるであろう。本変換を用いると、2つの減衰画像の減衰値は、比較的に同一となる。但し、固有および散乱減衰の両方を考慮するため、依然として、より高い全体的減衰を有する総減衰X線画像が予期されるであろ。
【0050】
測定された波形音速および減衰値を製造業者によって報告される仕様と比較することによって、大まかには、再構成された音速値が製造業者と一致することが分かる。しかしながら、完全に収束する必要がまだあり得、その数値が、より低い音速を伴う隣接する組織の部分的体積平均の効果から歪曲される、より小さい病変に関しては、配慮されるべきである。減衰再構成に関して、報告される値と部分的一致が認められ、これは、他のシステムによって以前に生成された再構成に優る有意な改良である。より好適な中心周波数を伴う超音波変換器の利用は、減衰再構成の正確度をさらに改良するであろうことが可能性として考えられる。
【0051】
コンピュータシステム化
図4は、本願に開示される任意のコンピューティングシステムを実装するように構成されることができる、コンピュータシステム401を示す。コンピュータシステム401は、携帯電話、タブレット、装着可能デバイス、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、中央サーバ等を備えることができる。
【0052】
コンピュータシステム401は、シングルコアまたはマルチコアプロセッサ、もしくは並列処理用の複数のプロセッサであり得る、中央処理装置(CPU、本明細書ではまた、「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」)405を含む。コンピュータシステム401はまた、メモリまたはメモリ場所410(例えば、ランダムアクセスメモリ、読取専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶ユニット415(例えば、ハードディスク)、1つまたはそれを上回る他のシステムと通信するための通信インターフェース420(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、および/または電子ディスプレイアダプタ等の周辺デバイス425を含む。メモリ410、記憶ユニット415、インターフェース420、および周辺デバイス425は、マザーボード等の通信バス(実線)を通してCPU405と通信する。記憶ユニット415は、データを記憶するためのデータ記憶ユニット(またはデータレポジトリ)であり得る。コンピュータシステム401は、通信インターフェース420の助けを借りて、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)430に動作可能に連結することができる。ネットワーク430は、インターネット、インターネットおよび/またはエクストラネット、もしくはインターネットと通信しているイントラネットおよび/またはエクストラネットであり得る。ネットワーク430は、場合によっては、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク430は、クラウドコンピューティング等の分散コンピューティングを可能にすることができる、1つまたはそれを上回るコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク430は、場合によっては、コンピュータシステム401の助けを借りて、コンピュータシステム401に連結されたデバイスがクライアントまたはサーバとして行動することを可能にし得る、ピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0053】
CPU405は、プログラムまたはソフトウェアで具現化することができる、一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ410等のメモリ場所に記憶されてもよい。命令は、後に、本開示の方法を実装するようにCPU405をプログラムするか、または別様に構成することができる、CPU405にダイレクトすることができる。CPU405によって行われる動作の実施例は、フェッチ、復号、実行、およびライトバックを含むことができる。
【0054】
CPU405は、集積回路等の回路の一部であり得る。システム401の1つまたはそれを上回る他の構成要素を、回路に含むことができる。場合によっては、回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0055】
記憶ユニット415は、ドライバ、ライブラリ、および保存されたプログラム等のファイルを記憶することができる。記憶ユニット415は、ユーザデータ、例えば、ユーザ選好およびユーザプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム401は、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを通してコンピュータシステム401と通信している遠隔サーバ上に位置するもの等、コンピュータシステム401の外部にある1つまたはそれを上回る付加的なデータ記憶ユニットを含むことができる。
【0056】
コンピュータシステム401は、ネットワーク430を通して1つまたはそれを上回る遠隔コンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム401は、ユーザの遠隔コンピュータシステムと通信することができる。遠隔コンピュータシステムの実施例は、パーソナルコンピュータ、スレートまたはタブレットPC、スマートフォン、携帯情報端末等を含む。ユーザは、ネットワーク430を介して、コンピュータシステム401にアクセスすることができる。
【0057】
本明細書で説明される方法は、例えば、メモリ410または電子記憶ユニット415上等のコンピュータシステム401の電子記憶場所上に記憶された、機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードを介して実装することができる。機械実行可能または機械可読コードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中に、コードは、プロセッサ405によって実行することができる。場合によっては、コードは、記憶ユニット415から取り出し、プロセッサ405による容易なアクセスのためにメモリ410上に記憶することができる。いくつかの状況では、電子記憶ユニット415を排除することができ、機械実行可能命令がメモリ410上に記憶される。
【0058】
コードは、コードを実行するように適合されるプロセッサを有する機械とともに使用するために事前にコンパイルして構成することができるか、または実行時間中にコンパイルすることができる。コードは、事前コンパイルされた、またはコンパイルされた時点の様式で、コードが実行されることを可能にするように選択することができる、プログラミング言語で供給することができる。
【0059】
コンピュータシステム401等の本明細書で提供されるシステムおよび方法の側面は、プログラミングで具現化することができる。本技術の種々の側面は、典型的には、一種の機械可読媒体上で搬送されるか、またはその中で具現化される、機械(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または関連データの形態の「製品」もしくは「製造品」と考えられてもよい。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読取専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスク等の電子記憶ユニット上に記憶することができる。「記憶」型媒体は、ソフトウェアプログラミングのためにいかなる時でも非一過性の記臆装置を提供し得る、コンピュータ、プロセッサ、または同等物の有形メモリ、もしくは種々の半導体メモリ、テープドライブ、ハードドライブ、および同等物等のそれらの関連モジュールのうちのいずれかまたは全てを含むことができる。ソフトウェアの全てまたは部分は、時として、インターネットまたは種々の他の電気通信ネットワークを通して伝達されてもよい。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへ、例えば、管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を持ち得る別の種類の媒体は、ローカルデバイス間の物理的インターフェースを横断し、有線および光学地上通信線ネットワークを通し、および種々のエアリンクを経由して使用されるような光波、電波、および電磁波を含む。有線または無線リンク、光学リンク、もしくは同等物等のそのような波動を搬送する物理的要素もまた、ソフトウェアを持つ媒体と見なされてもよい。本明細書で使用されるように、非一過性の有形「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」等の用語は、実行のために命令をプロセッサに提供することに参加する任意の媒体を指す。
【0060】
したがって、コンピュータ実行可能コード等の機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、または物理的伝送媒体を含むが、それらに限定されない、多くの形態を成してもよい。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されるデータベース等を実装するために使用されるような、任意のコンピュータまたは同等物の中の記憶デバイスのうちのいずれか等の光学もしくは磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリ等のダイナミックメモリを含む。有形伝送媒体は、同軸ケーブル、すなわち、コンピュータシステム内のバスを備えるワイヤを含む、銅線および光ファイバを含む。搬送波伝送媒体は、電気または電磁信号、もしくは高周波(RF)および赤外線(IR)データ伝送中に生成されるもの等の音波または光波の形態を成してもよい。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVDまたはDVD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを伴う任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、データまたは命令を輸送する搬送波、そのような搬送波を輸送するケーブルまたはリンク、もしくはコンピュータがプログラミングコードおよび/またはデータを読み取り得る任意の他の媒体を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、実行するために1つまたはそれを上回る命令の1つもしくはそれを上回るシーケンスをプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0061】
コンピュータシステム401は、例えば、管理インターフェースを提供するためのユーザインターフェース440を備える、電子ディスプレイ435を含むか、またはそれと通信することができる。UIの実施例は、限定ではないが、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザインターフェースを含む。
【0062】
本開示の方法およびシステムは、1つまたはそれを上回るアルゴリズムを用いて実装されることができる。アルゴリズムは、中央処理ユニット405による実行に応じて、ソフトウェアを介して実装されることができる。
【0063】
結論
前述の実施例に加え、本発明の種々の他の修正および改変が、本発明から逸脱することなく、行われてもよい。故に、前述の開示は、限定と見なされるべきではなく、添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲全体を包含するものと解釈されるべきである。
【0064】
本発明の種々の特徴は、単一実施形態の文脈で説明され得るが、特徴はまた、別個に、または任意の好適な組み合わせで提供されてもよい。逆に言えば、本発明は、明確にするために、別個の実施形態の文脈で本明細書に説明され得るが、本発明はまた、単一実施形態において実装されてもよい。
【0065】
明細書における「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」、「一実施形態」、または「他の実施形態」の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくともいくつかの実施形態に含まれるが、必ずしも、本発明の全ての実施形態に含まれないことを意味する。
【0066】
本明細書に採用される語句および専門用語は、限定として解釈されるべきではなく、説明目的だけのためのものであることを理解されたい。
【0067】
本明細書に記載される詳細は、本発明の用途の限定を構成するものではないことを理解されたい。
【0068】
さらに、本発明は、種々の方法で実施または実践されることができ、本発明は、上記の説明に概略されたもの以外の実施形態においても実装されることができることを理解されたい。
【0069】
用語「~を含む」、「~を備える」、「~から成る」、およびその文法上の変形は、1つまたはそれを上回る構成要素、特徴、ステップ、または整数、もしくはそれらの群の追加を除外するものではなく、用語は、構成要素、特徴、ステップ、または整数を特定するものとして解釈されるべきであることを理解されたい。