(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】互いに重なり合っている複数の積層板から成る積層板パックを製造する方法およびこのような方法を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K15/02 E
(21)【出願番号】P 2018528684
(86)(22)【出願日】2016-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2016002019
(87)【国際公開番号】W WO2017092866
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-02-01
(31)【優先権主張番号】102015015762.0
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514013875
【氏名又は名称】キーンレ ウント シュピース ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン ベーカー
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-110155(JP,A)
【文献】特開平04-105536(JP,A)
【文献】特開2012-196681(JP,A)
【文献】特開2011-091936(JP,A)
【文献】特開2015-123488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重なり合っている複数の積層板(2)から成る積層板パック(3)を製造する方法であって、前記積層板(2)を、電気帯板(1)または薄板から切り出し、互いに積層させて前記積層板パック(3)を形成させ、該積層板パック(3)内部で互いに結合させるようにした前記方法にして、
前記積層板(2)の材料をエッジ領域において少なくとも1つの工具(9’)を用いて摩擦熱を発生させることにより局部的に次のように可塑化させること、すなわち少なくとも互いに隣接しあっている前記積層板(2)の材料を前記工具(9’)により混合させて、可塑化した材料の冷却後に前記積層板(2)が融着されて互いに結合されるように可塑化させ、
前記工具(9’)を前記積層板パック(3)の高さ方向において移動させ、又は、前記積層板パック(3)をその高さ方向において前記位置固定の工具(9’)に対し移動させ、その際に前記積層板(2)の材料が接触領域において前記工具(9’)により可塑化されるような大きな力で、前記積層板パック(3)に対し又は前記積層板パック(3)を前記工具(9’)に対し押圧させ、前記工具(9’)を撹拌式摩擦溶接工程の間その軸線のまわりに回転可能に駆動させる方法において、
前記工具(9’)が筒状の外側ヘッド(11)を備えており、当該外側ヘッド(11)内には中央ヘッド(12)が収納されており、当該中央ヘッド(12)は、前記外側ヘッド(11)に対し軸線方向において位置調整可能でありまた前記外側ヘッド(11)と回転不能に接続されており、また、それにより前記外側ヘッド(11)と共に前記工具(9’)の軸の周りで回転され
、前記工具(9’)が、前記外側ヘッド(11)及び前記中央ヘッド(12)から構成され、前記工具(9’)の平らな端面(14)を用いて、前記積層板パック
(3
)の素材が当該素材の溶融点直下まで加熱されるような
押圧力であって、前記工具(9’)の軸方向で作用する
押圧力で、前記積層板パック(3)に当接
し、前記工具(9’)が、前記工具(9’)の平らな端面(14)とともに、前記積層板パック(3)の高さ方向へ移動され、その際、前記工具(9’)のスラスト力と回転数が維持され、積層板パック(3)内で互いに重なり合っている前記積層板(2)の材料の混合が、同時に回転運動をする前記工具(9’)の送り運動によって、行われること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記工具(9’)を前記積層板パック(3)の軸線方向へ移動させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層板パック(3)を2つまたはそれ以上の前記工具(9’)で処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数の前記工具(9’)が同時に前記積層板パック(3)を処理することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の前記工具(9’)が互いに独立に駆動可能であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
複数の前記工具(9’)が1つの打ち抜き操作部(6)に設けられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
複数の前記工具(9’)が1つの打ち抜き装置に設けられていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
シリコン・アルミニウム合金から構成されそのシリコン成分が
、4重量%以上である電気帯板(1)または薄板が用いられることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法を実施するための装置であって、少なくとも1つの打ち抜きプレス、および/または、1つまたは複数の積層板パックを受容するための少なくとも1つの受容部を備え、また、少なくとも1つの溶接工具(9’)であって、その軸線のまわりに回転可能に駆動されまたその回転軸線に対し横方向に走行可能である溶接工具(9’)を備える、
前記装置において、
前記工具(9’)が外側ヘッド(11)を有し、前記外側ヘッド(11)がその軸線のまわりで回転可能に駆動されており、前記外側ヘッド(11)内に中央ヘッド(12)が収納されており、当該中央ヘッド(12)が、前記外側ヘッド(11)と相対回転不能に接続されており、また、前記外側ヘッド(11)の軸線方向において前記外側ヘッド(11)に対し位置調整可能であること
を特徴とする装置。
【請求項10】
前記中央ヘッド(12)が、スピンドル駆動部を用いて前記外側ヘッド(11)に対し位置調整可能であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記外側ヘッド(11)と前記中央ヘッド(12)とが互いに同軸に位置していることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の、互いに重なり合っている複数の積層板から成る積層板パックを製造する方法、および、請求項9の上位概念部に記載の、このような方法を実施するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気薄板から複数の積層板を切り出し、これを重ね合わせて積層板パックを形成させることは公知である。次に、重なり合っている積層板を形状拘束的に互いに結合させる。このため、積層板は少なくとも1つの突起を備えており、この突起により積層板はそれぞれ隣り合っている積層板の対応する凹部に係合する。このような積層板の製造は面倒である。また、前記形状拘束的な結合はたとえば積層板パックの搬送時または貯蔵時に解離することがある。
【0003】
さらに、積層板パック内部の積層板を、この積層板パックを貫通するねじまたはリベットによって互いに固定結合させることが知られている。この結合態様も面倒である。また、特に比較的高い積層板パックを形成させる場合には、積層板を載置する前にそれぞれ特定の角度量だけ回転させることで、積層板パックがその周方向において一定の高さを持つよう保証しなければならない。
【0004】
それ故、重なり合っている積層板を互いに接着する方法も知られている。
【0005】
他の公知の方法では、重なり合っている積層板を互いに溶接させる。しかしながら、この溶接方法には限界がある。電動機または発電機のロータおよび/またはステータで積層板パックを使用するためには、シリコンとアルミニウムとから成っている金属帯板を使用することが多い。シリコン成分がほぼ3重量%以上の場合、或いは、シリコンおよびアルミニウム成分がほぼ4重量%以上の場合、このような積層板を溶接することは極めて不首尾な結果になりがちである。しかしながら、シリコン成分が多ければ磁気損失が少なく、よって高パワーが得られるので、シリコン成分が高いのが望ましい。さらに、EC-3 Isolationslackで説明されているような積層板は溶接が困難である。大きなおよび/または深いヒートゾーンも発生する。好守備の溶接結果を得るためには、薄板間の隙間を正確に調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、出発材料および積層密度に関係なく、積層板を背は層板パック内部で確実に互いに結合させることができるようなこの種の方法およびこの種の装置を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、この種の方法においては、本発明によれば請求項1の特徴ある構成により解決され、この種の装置においては、本発明によれば請求項9の特徴ある構成により解決される。
【0008】
本発明による方法により、積層板の材料組成に関係なく、積層板を簡単に、コストを節減して互いに固定結合させることができる。本発明による工具を用いれば、積層板の材料はエッジ領域において局部的に可塑化され、このために工具により積層板は、積層板の材料が可塑化されるように局部的に強く加熱される。その後、この可塑化された材料は工具を用いて隣り合っている積層板の間で混合される。その結果、可塑化した材料の冷却後に、積層板は融着して互いに結合される。工具自体は、この方法において自ら軟弱になったり、可塑化されないような選定される。シリコン・アルミニウム帯板から積層板を製造する場合には、シリコン成分は、磁気損失が小さくなる程度に高くてよい。
【0009】
積層板パック内部での積層板の簡単で確実な結合は、有利な態様では、工具を積層板パックの高さ方向において移動させ、その際に積層板の材料が接触領域において工具により可塑化されるような大きな力で積層板パックに対し押圧させるならば、得られる。工具は、積層板パックの周部に形成される溶接継ぎ目の幅に関して適合させることができる。この溶接継ぎ目が非常に狭い幅しか有していなければならない場合には、対応的に幅狭の工具を使用する。押圧力の大きさおよび/または継続時間により、本発明による方法を実施する際に積層板の材料をどの程度の深さで可塑化させるかを決定することができる。
【0010】
工具を、有利にはその送り運動中にその軸線のまわりに回転可能に駆動させる。工具の回転により、互いに隣り合っている積層板の可塑化された材料は簡単に混合される。
【0011】
さらに簡潔な実施態様では、工具を積層板パックの軸線方向へ移動させる。これにより、積層板パックに、同様に軸線方向に延びる溶接継ぎ目が生じる。
【0012】
しかし、積層板パックの構成によっては、積層板パックの高さ方向に傾斜した角度で工具を移動させてもよく、その結果発生する溶接継ぎ目は軸線方向に延びるのではなく、傾斜を持つ。
【0013】
他の方法態様では、工具を位置固定し、且つその軸線のまわりに回転可能に駆動する。このケースでは、積層板パックはその高さ方向において定置の工具に対し移動させ、その際に積層板の材料は接触領域において可塑化されるような大きな力で工具に対し押圧させる。このケースでも、積層板パックの周部に形成される溶接継ぎ目の幅に関して工具を適合させることができる。
【0014】
また、工具または積層板パックを異なる方向で積層板パックの高さ方向に移動させることが可能である。これによって、溶接継ぎ目の位置および/または延在態様をその都度の要求に適合させることが可能である。工具の送り運動は、制御部を介して非常に簡単にプログラミングすることができる。
【0015】
簡単で時間節約的な作業態様は、積層板パックを2つまたはそれ以上の工具で処理するならば、得られる。
【0016】
この場合、複数の工具は同時に積層板パックを処理し、その結果積層板パックの周方向に必要な溶接継ぎ目を所望の寸法で形成させることができる。
【0017】
有利には、複数の工具は互いに独立に駆動可能である。これにより、個々の工具を目的に応じて起動させ、これら工具にたとえば異なる送り距離を付与する可能性がある。
【0018】
簡潔な方法コントロールは、複数の工具が1つの打ち抜きプレスに設けられているならば、得られる。このとき、積層板パックは1つの打ち抜きプレス内で組み立てた直後に工具で加工することができる。
【0019】
工具は、積層板を積層して積層板パックを形成する積装置内部に設けられていてもよい。
【0020】
本発明による装置は、少なくとも1つの溶接工具がその軸線のまわりに回転可能に駆動され、加工の際にその回転軸線に対し横方向に走行可能であることを特徴としている。工具はその送り運動中にその軸線のまわりに回転可能に駆動され、これによって、積層板材料の可塑化のために必要な大きな摩擦熱を積層板に発生させる。
【0021】
簡潔な実施態様では、工具は外側ヘッドを有し、該外側ヘッドはその軸線のまわりに回転可能に駆動可能である。外側ヘッドを回転させるために、たとえば歯車駆動装置またはベルト駆動装置が設けられていてよい。
【0022】
外側ヘッド内に、有利には該外側ヘッドと相対回転不能にまたは回転自在に結合されている中央ヘッドが収納されている。これによって、中央ヘッドは回転している外側ヘッドによって一緒に駆動される。
【0023】
有利な実施態様では、中央ヘッドは、外側ヘッドの軸線方向において該外側ヘッドに対し位置調整可能であり、好ましくは回転可能である。
【0024】
この位置調整は、有利な実施態様では、中央ヘッドを外側ヘッドに対し位置調整することのできるスピンドル駆動部によって達成される。
【0025】
工具のコンパクトな構成は、外側ヘッドと中央ヘッドとが互いに同軸に位置しているならば、得られる。
【0026】
本出願の対象は、個々の請求項の対象から得られるばかりでなく、図面および本明細書に開示されたすべての記載および構成によっても得られる。本出願の対象は、請求の範囲の対象ではなくとも、個々にまたは組み合わせで技術水準に対し新規なものである限りは、本発明にとって重要なものとして権利を主張する。
【0027】
本発明の更なる特徴は、他の請求項、本明細書および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明を、図面に図示した実施形態を用いて詳細に説明する。
【
図1】積層板パックを形成するために積層板を積層させる本発明による装置の概略側面図である。
【
図2】撹拌式摩擦溶接機を備えた本発明による装置を
図1に対応して示した図である。
【
図5】積層板パックに係合する2つの撹拌式摩擦工具の概略平面図である。
【
図6】
図5の撹拌式摩擦工具と積層板パックとの側面図である。
【
図7】撹拌式摩擦溶接によって積層板が互いに結合されている積層板パックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1および
図2に記載の装置を用いて、金属帯板(電気帯板)または電気薄板から公知の態様で複数の積層板2(
図5)が切り出され、これらの積層板を積層した積層板パック3が形成される。積層板パック3は電動機または発電機のロータまたはステータを製造するために使用される。
【0030】
金属帯板1は、自らの軸線のまわりに回転可能な巻取機4に巻回されている。巻取機4から巻き戻された金属帯板1は矯正機5によって案内され、矯正機5により金属帯板1は次の打ち抜きプロセスのために方向を矯正される。矯正機5を通過した後、金属帯板1は打ち抜きプレス6内へ到達し、該打ち抜きプレス6内で金属帯板1から複数の積層板2が打ち抜かれる。
【0031】
打ち抜きプレス6内へは、2つまたはそれ以上の帯板1を互いに横に並べて誘導することができ、その結果個々の金属帯板1から複数の積層板2を同時に打ち抜くことができる。さらに、金属帯板1において複数の積層板を1つの軌道で打ち抜くことができるばかりでなく、たとえば2つの軌道で打ち抜くこともできる。
【0032】
打ち抜きプレス6は、1つまたは複数の対応する打ち抜き工具7を備えている。打ち抜き工具によって打ち抜かれた積層板2は竪穴8内へ到達し、打ち抜き直後に積層板2がこの竪穴内へ押し込められる。竪穴8は受容部を形成しており、積層板2がそのエッジでもって摩擦で竪穴8の内壁に当接するように公知の態様で形成されており、その結果積層板は竪穴8から落下しない。このようにして、打ち抜かれた積層板2が竪穴8内で重ね合わされてスタックを形成する。各打ち抜き行程では、それぞれ打ち抜かれた積層板2が下方へ押されて、すでに竪穴内にある積層板の上に載置される。竪穴8内へは(図示していない)雌型が突出し、雌型上に積層板2が積層されて積層板パック3が形成される。各打ち抜き行程により雌型は歩進的に下方へ移動し、その結果それぞれ打ち抜かれた積層板2は、次に打ち抜かれる積層板2を確実に竪穴8内へ押し込めることができる程度の距離で下方へ竪穴8内へ移動する。
【0033】
複数の金属帯板1を打ち抜きプレス6を通じて同時に誘導する場合、それぞれの金属帯板1に1つの竪穴8が付設されているのが有利であり、その結果打ち抜きプレス6内で複数の積層板パックを互いに横に並べて同時に打ち抜くことができる。しかし、打ち抜きプレス6内に1つの竪穴8だけを設け、この竪穴に、異なる金属帯板1から打ち抜かれた積層板を、搬送装置を用いて、たとえば回転ユニットを用いて、竪穴8の上方の領域へ誘導し、その後竪穴8内へ押し込める可能性もある。このような搬送装置は、特に、互いに横に並んでいる複数の軌道で1つの金属帯板1から複数の積層板2を打ち抜く場合に有利である。この場合には、互いに横に並んでいる積層板2を、このような搬送装置を用いてただ1つの竪穴8内へ搬入することができる。
【0034】
積層板パック3を、打ち抜きプレス6から取り出した後にさらに処理を施すことができるようにするため、積層板パック3内で互いに重なり合っている積層板2を互いに固定結合させる。このため、重なり合っている積層板2はその平面部に対し横方向において可塑化方式によって互いに結合され、そのために積層板2を、重なり合っている積層板2がその材料の冷却後に融着して互いに結合されるように、エッジにおいて部分的に可塑化させる。
【0035】
このため、打ち抜きプレス6は、有利には打ち抜きプレス6の打ち抜き装置の領域に配置される少なくとも1つの撹拌式摩擦溶接機9を備えている。薄板パック3のエッジには、積層板パック3の高さ方向に延びる溶接継ぎ目10(
図7と
図8)が生じる。積層板パック3のサイズに応じては、1つの溶接継ぎ目10だけで十分である。本実施形態では、互いに直径方向に対向しあっている2つの溶接継ぎ目10が積層板パック3に設けられている。積層板パック3のサイズによっては、積層板パック3の内部で積層板2をまとめて保持する更なる溶接継ぎ目が設けられていてよい。
【0036】
2つまたはそれ以上の溶接継ぎ目10を積層板パック3に設ける場合には、基本的には、積層板パック3の周方向に位置調整可能に配置される1つの撹拌式摩擦溶接機9をこのために設ければ十分である。しかし、積層板パック3にそれぞれ設けられる各溶接継ぎ目10に対しそれぞれ1つの撹拌式摩擦溶接機9が設けられていれば、より迅速な方法手順が得られる。
【0037】
撹拌式摩擦溶接機9は、筒状の外側ヘッド11を備えた工具9’を有し(
図3)、外側ヘッド内には中央ヘッド12が収納されている。外側ヘッド11は、歯車伝動装置またはベルト伝動装置を用いてその軸線のまわりに駆動される。中央ヘッド12は、スピンドル駆動部を用いて外側ヘッド11に対し軸線方向において正確に位置調整することができる。外側ヘッド11がその軸線のまわりに回転可能に駆動されると、中央ヘッド12は対応的に一緒に回転する。中央ヘッド12と外側ヘッド11との間には、半径方向の環状肩部13が形成される。
【0038】
工具9’は半径方向において積層板パック3のほうへ移動して、その端面14が積層板パックの側面15と接触する。工具9’は大きなスラスト力でもって積層板パック3に対し押圧され、その際工具はその軸線のまわりに回転可能に駆動される。工具9’の平らな端面14と積層板パック3との間の摩擦により、端面14の下の素材は積層板パック3の材料の溶融点直前まで加熱される。この高い温度により、積層板パック3の素材が可塑化される。この時点で、回転している工具9’を積層板パック3の高さ方向へ移動させ、その際大きなスラスト力と回転数とが維持される。工具9’の領域で材料が可塑化することにより、工具の送り運動の際に、重なり合っている積層板2の材料が混合する。材料の混合は、工具9’が送り運動と回転運動とを同時に実施することによって実現する。送り速度は、工具9’の領域で、重なり合っている積層板2の材料が柔らかくなるように選定される。回転運動により、互いに重なり合っている積層板2の材料同士が混合し、その結果可塑化された材料が冷却した後に、積層板2は積層板パック3の内部で融着して互いに結合される。
【0039】
工具9’は、有利には軸線方向において積層板パック3に沿って移動せしめられ、その結果溶接継ぎ目10は積層板パック3の側面において軸線方向に延在する。工具9’は、基本的には、積層板3に沿って種々の方向に移動されてよく、その結果溶接継ぎ目10は種々の延在態様を持つ。すなわち、溶接継ぎ目10は積層板3の軸線に対し垂直に見て積層板パック3の軸線方向に対し傾斜して延在していてよい。また、溶接継ぎ目10は、工具9’を積層板パック3の高さ方向において適当に移動させることによって種々の傾斜延在態様を持っていてもよい。溶接継ぎ目10は、積層板2が互いに確実に結合されるように積層板パック3の側面15に設けられる。
【0040】
本実施形態では、積層板パック3内で積層板2を結合させるため、互いに直径方向に対向しあっている2つの工具が使用される。このケースでは、積層板パック3の側面15に、互いに対向しあっている2つの溶接継ぎ目10が形成される。両工具9’は有利には互いに独立に制御され、その結果溶接継ぎ目10の種々の延在態様を生じさせることもできる。
【0041】
シリコン・アルミニウム合金から成る金属帯板が使用されることが多い。このような金属帯板の場合、シリコン成分を可能な限り高く選定するのが望ましい場合がある。このような金属帯板から積層板パックが作製されるロータおよび/またはステータは、シリコン成分がより高いために磁気損失が小さく、これにより電動機のパワーがより高くなる。このような積層板は、上述の方法を用いて難なく互いに融着させて結合させることができる。このようなシリコン・アルミニウム合金のシリコン成分は、ほぼ4重量%以上のシリコンを含むことができ、これは積層板2相互の融着結合に悪影響を与えることがない。工具9’を用いて積層板の材料を可塑化し、その際工具9’の回転運動と送り運動とにより、隣接しあう積層板の可塑化された材料は互いに混合し、これによって、可塑化された材料の冷却後の積層板2の保持が保証されている。
【0042】
溶接継ぎ目10は浅い深さしか有しておらず、その結果溶接継ぎ目は積層板パック3またはこの積層板パックを含んでいる電動機の特性に悪影響を与えない。溶接継ぎ目の深さは、積層板2相互の確実な結合が与えられるように選定される。上述した方法は簡単に、確実に、短時間で実施できる。このようにして製造された積層板パック3は難なく取り扱いおよび搬送でき、積層板パック3の内部で積層板2が剥がれる恐れがない。
【0043】
さらに、工具9’を位置固定して配置し、溶接工程中にその軸線のまわりに回転させることが可能である。このケースでは、積層板パック3はその高さ方向において位置固定の工具9’に対し移動せしめられ、その際積層板2の材料が積層板パック3の内部で上述のように接触領域において可塑化されるような大きな力で工具9’に対し押圧せしめられる。