(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】スタフィロコッカス感染症のための凍結乾燥製剤を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20220609BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220609BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220609BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220609BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20220609BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/19
A61P31/04
A61P43/00 121
C07K14/005 ZNA
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2018536378
(86)(22)【出願日】2017-01-09
(86)【国際出願番号】 IB2017050091
(87)【国際公開番号】W WO2017122114
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-04
(32)【優先日】2016-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508369571
【氏名又は名称】イントロン バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】iNtRON Biotechnology,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100127579
【氏名又は名称】平野 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100203301
【氏名又は名称】都築 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スヨン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ギモ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】サンヒョン・カン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0224179(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102648978(CN,A)
【文献】特表2013-527843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004321(US,A1)
【文献】国際公開第2009/035303(WO,A1)
【文献】Protein Science, 2004, Vol.13, pp.1802-1810
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C07K 14/00-14/825
C12P 21/00-21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥製剤を製造する方法であって、
配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる第2抗菌性タンパク質の混合物を製造する工程と、
前記混合物、ポロクサマー188、D-ソルビトールおよびL-ヒスチジンを含む溶液を製造する工程と、
前記溶液を
凍結乾燥機にかけて凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥する工程とを含み、
前記混合物が次のスタフィロコッカス種:スタフィロコッカスアルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカスアウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカスカルノスス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカスカルプレ(Staphylococcus carprae)、スタフィロコッカスクロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカスコーニィ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカスデルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカスエピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカスエクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカスガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカスヘモリチカス(Staphylococcus hemolyticus)、スタフィロコッカスホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカスインターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカスクローシィ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカスレントゥス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカスルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカスムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカスパステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカスサプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカスワルネリ(Staphylococcus warneri)とスタフィロコッカスザイロサス(Staphylococcus xylosus)のすべてに対し殺菌活性を有し、
前記混合物が
次の(1)~(5)の工程によって生物学的に製造され、
(1)配列番号3に示された抗菌性タンパク質をコードする遺伝子をベクター内にサブクローニングして発現プラスミドを作製する工程、
(2)前記発現プラスミドで大腸菌(Escherichia coli)BL21細胞を形質転換して産生宿主細胞を作製する工程、
(3)前記産生宿主細胞を37℃で培養する工程、
(4)600nmでの光学密度2.0でアラビノースを添加して抗菌性タンパク質の発現を誘導する工程、
(5)誘導地点から19℃で10時間前記産生宿主細胞を培養する工程、
前記混合物が15~35モル%の前記第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の前記第2抗菌性タンパク質を含むものである、方法。
【請求項2】
前記混合物の凍結乾燥以前の前記溶液の濃度が、0.1mg/mL~30mg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が、25モル%の前記第1抗菌性タンパク質および75モル%の前記第2抗菌性タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
凍結乾燥以前の前記溶液での前記ポロクサマー188の濃度が、0.1g/L~10g/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
凍結乾燥以前の前記溶液での前記D-ソルビトールの濃度が、1g/L~600g/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
凍結乾燥以前の前記溶液での前記L-ヒスチジンの濃度が、0.1g/L~10g/Lである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結乾燥サイクルが、
4℃で20分間平衡化する工程、
保管温度を-40℃に下げて12時間維持する工程、
凝縮器の温度を-50℃に下げる工程、
チャンバーに真空をかける工程、
真空が1,500mtorrの数値に達したら、保管温度を-20℃まで上げて、16時間維持する工程、
保管温度を時間当たり10℃ずつ20℃まで上げて、4時間維持する工程、
真空を解除する工程、
終結し、終結したバイアルを栓で密封する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性タンパク質、詳細には、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ(Staphylococcus arlettae)、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylocofccus aureus)、スタフィロコッカスアウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカスカルノスス(Staphylococcus carnosus)、スタフィロコッカスカルプレ(Staphylococcus carprae)、スタフィロコッカスクロモゲネス(Staphylococcus chromogenes)、スタフィロコッカスコーニィ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカスデルフィニ(Staphylococcus delphini)、スタフィロコッカスエピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカスエクオルム(Staphylococcus equorum)、スタフィロコッカスガリナルム(Staphylococcus gallinarum)、スタフィロコッカスヘモリチカス(Staphylococcus hemolyticus)、スタフィロコッカスホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカスインターメディウス(Staphylococcus intermedius)、スタフィロコッカスクローシィ(Staphylococcus kloosii)、スタフィロコッカスレントゥス(Staphylococcus lentus)、スタフィロコッカスルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカスムスカエ(Staphylococcus muscae)、スタフィロコッカスパステウリ(Staphylococcus pasteuri)、スタフィロコッカスサプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)、スタフィロコッカスワルネリ(Staphylococcus warneri)とスタフィロコッカスザイロサス(Staphylococcus xylosus)の少なくとも1種またはすべてに特異的な抗菌性タンパク質の凍結乾燥製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バクテリオファージ(bacteriophage)は、細菌に感染する多くのウイルス類似の微生物のうちの一つであり、用語「ファージ(phage)」が、その短縮形で一般的に使用される。スタフィロコッカスアウレウスに特異的な殺菌活性を有するバクテリオファージを単利し、これを韓国農業培養物樹立機関(KACC)、国立農業生命工学研究所(NIAB)に2006年6月14日付けで寄託した(寄託番号:KACC 97001P)。本バクテリオファージがスタフィロコッカスアウレウス感染の予防と治療に効果的であるが、本バクテリオファージの活用には、いくつかの欠点を有する。
【0003】
スタフィロコッカスアウレウスに対する殺菌活性を有する抗菌性タンパク質は、このようなバクテリオファージに由来し、前記抗菌性タンパク質は、スタフィロコッカスアウレウスによって引き起される疾患の予防および治療に使用することができる。米国特許第8,232,370号を参照。
【0004】
さらに、これらの抗菌性タンパク質は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディマウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスのすべてに特異的な抗菌活性を示した。
【0005】
前記抗菌性タンパク質を含む薬剤学的組成物を製造する際に、前記組成物は、抗菌性タンパク質の活性が適切な期間維持されるように製剤化されなければならない。抗菌性タンパク質の活性または安定性の喪失は、タンパク質の化学的または物理的な不安定性から、例えば変性、凝集または酸化により引き起され得る。組成物は、それによって薬剤学的に許容できなくなり得る。賦形剤の活用が生体活性(bioactive)タンパク質の安定性を増加させることが知られているが、これらの賦形剤の安定化効果は、予測ができず、生体活性タンパク質および賦形剤の特性に非常に依存する。
【0006】
抗菌性タンパク質を活性成分として含み、適切な期間安定であり、注射に適した製剤に対する必要性がある。前記製剤は細菌感染によって引き起された疾患治療における投与に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、2016年1月12日付で出願された米国特許出願第62/277,588号の優先権を主張し、本明細書で全体を開示し、すべての目的のための参考文献とする。
【0009】
本発明は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;およびアミノ酸を含む、凍結乾燥製剤を提供する。
【0010】
一態様として、凍結乾燥以前の溶液での前記抗菌性タンパク質の濃度は約0.1mg/mL~約30mg/mLである。
【0011】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0012】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0013】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を含む第2抗菌性タンパク質の混合物である。
【0014】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、15~35モル%の第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0015】
また、別の態様として、前記抗菌性組成物は、25モル%の第1抗菌性タンパク質および75モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0016】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の溶液での前記ポロクサマーの濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0017】
また、別の態様として、前記ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0018】
また、別の態様として、前記糖はD-ソルビトールである。
【0019】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の溶液での前記糖の濃度は約1g/L~約600g/Lである。
【0020】
また、別の態様として、前記アミノ酸はL-ヒスチジンである。
【0021】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の溶液での前記アミノ酸の濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0022】
本発明は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;アミノ酸;および水を含む抗菌製剤を提供する。前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記抗菌性タンパク質の濃度は、約0.1mg/L~約30mg/mLである。
【0023】
本発明は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;アミノ酸;および水を含む抗菌製剤を提供する。前記抗菌性タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、前記抗菌性タンパク質の濃度は、約0.1mg/L~約30mg/mLである。
【0024】
本発明は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;アミノ酸;および水を含む抗菌製剤を提供する。前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を含む第2抗菌性タンパク質を含み、前記抗菌性タンパク質の濃度は、約0.1mg/L~約30mg/mLである。
【0025】
一態様として、前記抗菌性タンパク質は、15~35モル%の第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0026】
また、別の態様として、前記抗菌性組成物は、25モル%の第1抗菌性タンパク質および75モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0027】
また、別の態様として、前記ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0028】
また、別の態様として、前記ポロクサマーの濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0029】
また、別の態様として、前記糖はD-ソルビトールである。
【0030】
また、別の態様として、前記糖の濃度は約1g/L~約600g/Lである。
【0031】
また、別の態様として、前記アミノ酸はL-ヒスチジンである。
【0032】
また、別の態様として、前記アミノ酸の濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0033】
本出願は、凍結乾燥製剤を製造する方法として、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカス社プロパイティース、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌タンパク質;ポロクサマー;糖;およびアミノ酸を含む混合物を形成する工程と、前記混合物を凍結乾燥する工程とを含む、方法を提供する。
【0034】
一態様として、凍結乾燥以前の混合物での前記抗菌性タンパク質の濃度は約0.1mg/mL~約30mg/mLである。
【0035】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0036】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0037】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を含む第2抗菌性タンパク質の混合物である。
【0038】
また、別の態様として、前記抗菌性タンパク質は、15~35モル%の第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0039】
また、別の態様として、前記抗菌性組成物は、25モル%の第1抗菌性タンパク質および75モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0040】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の混合物での前記ポロクサマーの濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0041】
また、別の態様として、前記ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0042】
また、別の態様として、前記の糖はD-ソルビトールである。
【0043】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の混合物での前記糖の濃度は約1g/L~約600g/Lである。
【0044】
また、別の態様として、前記アミノ酸はL-ヒスチジンである。
【0045】
また、別の態様として、凍結乾燥以前の混合物での前記アミノ酸の濃度は約0.1g/L~約10g/Lである。
【0046】
前述した一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的な説明であり、請求項に示すように、本発明の詳細な説明を提供するために意図されたものと理解されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明の実施例を詳しく述べ、その実施例を添付の図に示す。
【0048】
本明細書で用いるように、「次のスタフィロコッカス種の少なくとも1種またはすべて」は、スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスからなる群から選択される1種、2種、3種、4種、5種、6種....22種までの任意のスタフィロコッカス種を意味する。
【0049】
タンパク質は、水溶性の状態では比較的不安定で、処理および保管中に生物学的活性の消失を誘導する化学的および物理的分解を経る。凍結乾燥[凍結乾燥(lyophilization)としても、やはり知られている]は、保管のためにタンパク質を保存する方法である。
【0050】
凍結乾燥製剤物は、以下の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディマウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;およびアミノ酸を含む。
【0051】
凍結乾燥製剤を製造する方法は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;およびアミノ酸を含む混合物を形成する工程と、前記混合物を凍結乾燥する工程とを含む。
【0052】
凍結乾燥以前の溶液での前記抗菌性タンパク質の濃度は、約0.1mg/mL~約30mg/mL、0.1mg/mL~30mg/mL、0.5mg/mL~30mg/mL、1.0mg/mL~30mg/mL、1.5mg/mL~30mg/mL、5mg/mL~30mg/mL、0.1mg/mL~25mg/mL、0.1mg/mL~20mg/mL、0.5mg/mL~25mg/mL、0.5mg/mL~20mg/mLまたは1.0mg/mL~20mg/mLであり得る。
【0053】
前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1のアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を含む第2抗菌性タンパク質の混合物である。
【0054】
前記抗菌性タンパク質が、第1抗菌性タンパク質および第2抗菌性タンパク質の混合物の場合、前記抗菌性タンパク質は、15~35モル%の第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の第2抗菌性タンパク質を含むことができる。例えば、前記の抗菌性タンパク質は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35モル%の第1抗菌性タンパク質および65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84または85モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0055】
ポロクサマーは、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央疎水性鎖およびポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキサイド))の二つの親水性鎖で構成される非イオン性三重ブロック共重合体である。凍結乾燥以前の溶液での前記ポロクサマーの濃度は、約0.1g/L~約10g/L、0.1g/L~10g/L、0.2g/L~10g/L、0.1g/L~8g/L、0.2g/L~8g/L、0.1g/L~6g/Lまたは0.2g/L~6g/Lであり得る。好ましくは、ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0056】
前記凍結乾燥製剤に使用される好ましい糖は、例えばD-ソルビトール、スクロース、ブドウ糖、ラクトース、トレハロース、グリセリン、エチレングリコール、マンニトール、キシリトールおよびイノシトールである。さらに好ましくは、糖はD-ソルビトールである。凍結乾燥以前の溶液での前記糖の濃度は約1g/L~約600g/L、1g/L~600g/L、5g/L~600g/L、1g/L~500g/L、5g/L~500g/L、1g/L~400g/Lまたは5g/L~400g/Lであり得る。
【0057】
前記凍結乾燥製剤に使用される好ましいアミノ酸は、例えばL-ヒスチジン、L-グリシンおよびL-アルギニンである。さらに好ましくは、アミノ酸はL-ヒスチジンである。凍結乾燥以前の溶液での前記アミノ酸の濃度は、約0.1g/L~約10g/L、0.1g/L~10g/L、0.5g/L~10g/L、0.1g/L~8g/L、0.5g/L~8g/L、0.1g/L~6g/Lまたは0.5g/L~6g/Lであり得る。
【0058】
抗菌製剤は、以下の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコッホニー、スタピロコッカスデルフィニ、スタピロコッカスエピデルミディス、スタピロコッカスエクオルム、スタピロコッカスガリナルム、スタピロコッカスヘモリチカス、スタピロコッカスホミニス、スタピロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;アミノ酸;および水を含む。前記抗菌性タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1のアミノ酸配列を含む第1抗菌性タンパク質および配列番号2のアミノ酸配列を含む第2抗菌性タンパク質を含む。
【0059】
前記抗菌製剤で抗菌性タンパク質の濃度は、約0.1mg/mL~約30mg/mL、0.1mg/mL~30mg/mL、0.5mg/mL~30mg/mL、1.0mg/mL~30mg/mL、1.5mg/mL~30mg/mL、5mg/mL~30mg/mL、0.1mg/mL~25mg/mL、0.1mg/mL~20mg/mL、0.5mg/mL~25mg/mL、0.5mg/mL~20mg/mLまたは1.0mg/mL~20mg/mLであり得る。
【0060】
前記抗菌性タンパク質が、第1抗菌性タンパク質および第2抗菌性タンパク質の混合物の場合、前記抗菌性タンパク質は、15~35モル%の第1抗菌性タンパク質および65~85モル%の第2抗菌性タンパク質を含むことができる。例えば、前記の抗菌性タンパク質は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35モル%の第1抗菌性タンパク質および65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84または85モル%の第2抗菌性タンパク質を含む。
【0061】
前記抗菌製剤でポロクサマーの濃度は、約0.1g/L~約10g/L、0.1g/L~10g/L、0.2g/L~10g/L、0.1g/L~8g/L、0.2g/L~8g/L、0.1g/L~6g/Lまたは0.2g/L~6g/Lであり得る。好ましくは、前記ポロクサマーはポロクサマー188である。
【0062】
前記抗菌製剤に使用される好ましい糖は、例えばD-ソルビトール、スクロース、ブドウ糖、ラクトース、トレハロース、グリセロール、エチレングリコール、マンニトール、キシリトールおよびイノシトールである。前記抗菌製剤で糖の濃度は、約1g/L~約600g/L、1g/L~600g/L、5g/L~600g/L、1g/L~500g/L、5g/L~500g/L、1g/L~400g/Lまたは5g/L~400g/Lであり得る。
【0063】
前記抗菌製剤に使用される好ましいアミノ酸は、例えばL-ヒスチジン、L-グリシン、およびL-アルギニンである。さらに好ましくは、アミノ酸はL-ヒスチジンである。前記抗菌剤形でアミノ酸の濃度は、約0.1g/L~約10g/L、0.1g/L~10g/L、0.5g/L~10g/L、0.1g/L~8g/L、0.5g/L~8g/L、0.1g/L~6g/Lまたは0.5g/L~6g/Lであり得る。
【0064】
凍結乾燥製剤を製造する方法は、次の種:スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスレントゥス、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスパステウリ、スタフィロコッカスサプロフィティクス、スタフィロコッカスワルネリおよびスタフィロコッカスザイロサスの少なくとも1種またはすべてに特異的殺菌活性を有する抗菌性タンパク質;ポロクサマー;糖;およびアミノ酸を含む混合物を形成する工程、および前記混合物を凍結乾燥する工程とを含む。
【0065】
本発明の実用的で好ましい実施例を、以下の実施例に示す。
【0066】
しかし、当業者らならば、本発明を考慮する時、本発明の精神および範疇内の変形及び改善を行うことができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
添付の図は、本発明のさらなる理解を提供するために含み、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の実施例を示す説明とともに本発明の原理を説明するために提供する。
図面では、
【
図1】凍結乾燥製剤を時間ゼロで分析したサイズ排除高性能液体クロマトグラフィーの結果である。
【
図2】凍結乾燥製剤を1ヶ月保管後に分析したサイズ排除高性能液体クロマトグラフィーの結果である。
【
図3】凍結乾燥製剤を6ヶ月保管後に分析したサイズ排除高性能液体クロマトグラフィーの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
実施例1:抗菌組成物の製造
本発明の抗菌性タンパク質の発現プラスミドが配列番号3に示された本発明の抗菌性タンパク質をコードする遺伝子をpBAD-TOPOベクター(Invitrogen)内に常法によってサブクローニングして作製した。得られたプラスミドで形質転換した大腸菌(Escherichia coli)BL21細胞を、本発明の抗菌性タンパク質のための産生宿主として用いた。
【0069】
本発明の抗菌性タンパク質の発現を600nmでの光学密度(OD600)2.0で0.2%アラビノースで誘導し、誘導した細菌細胞を連続的に19℃でさらに10時間培養した。細菌細胞を遠心分離(20分間6,000×g)によって回収し、結果として得られた細胞ペレットを、溶解緩衝液[50mM Na2HPO4(pH7.5)、10mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、1mMジチオトレイトール(DTT)]で再懸濁し、通常の超音波処理(パルス間に3秒の休止間隔を有する1秒パルス)を用いて5分間破砕した。遠心分離(20分間13,000×g)以後に、上清を回収し、イオン交換クロマトグラフィー(SP高速フローカラム; GE Healthcare)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(Toyopearl PPG-600Mカラム; Tosoh Bioscience)を含む二段階クロマトグラフィーにかけた。
【0070】
より詳細に説明すると、製造した産生宿主は、TSB(tryptic soy broth)培地(カゼインダイジェスト、17g/L;大豆ダイジェスト、3g/L;デキストロース、2.5g/L; NaCl、5g/L;リン酸ジカリウム、2.5g/L)に接種して37℃で培養を行った。細胞濃度がOD600 2.0に到達した時、L-アラビノースを抗菌性タンパク質の発現を誘導するように0.2%の最終濃度で添加した。細胞を、19℃で誘導地点からさらに10時間培養した。細胞沈殿物を獲得するために培養液体培地(broth)を6000×gで20分間遠心分離した。前記沈殿物は、10mM EDTAおよび1mM DTTを含む50mM Na2HPO4緩衝液(pH7.5)(1gの細胞あたり10mLの緩衝液)に懸濁した。懸濁液中の細胞を通常の超音波処理によって破砕した。細胞残留物(debris)を除去するために細胞溶出物を13,000×gで20分間遠心分離した。上清沈殿物をイオン交換クロマトグラフィー(緩衝液A:25mM Na2HPO4(pH7.5)、10mM EDTA;緩衝液B:25mM Na2HPO4(pH7.5)、10mM EDTA、1M NaCl;緩衝液C:25mM Na2HPO4(pH7.5)、10mM EDTA、50mM NaCl、0.5%トリトンX-100;手順:試料ローディング→1.6CVの緩衝液A→30CVの緩衝液C→20CVの緩衝液A→5CVの22%緩衝液B→勾配溶出(20CVの22-100%緩衝液B))および疎水性相互作用クロマトグラフィー(緩衝液A:10mM L-ヒスチジン(pH7.5)、1M NaCl;緩衝液B:10mM L-ヒスチジン(pH7.5)、1M尿素;手順:試料ローディング(イオン交換クロマトグラフィーによって精製された試料)→10CVの緩衝液A→勾配溶出(10CVの0~100%緩衝液B))を含む2工程クロマトグラフィーにかけた。タンパク質溶液を次のように0.2μmのフィルターでろ過した。
【0071】
配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列を含む抗菌性タンパク質の組成を決定するために、二段階の分析を行なった。まず、液体クロマトグラフィー(LC)質量分光測定法(MS)をプロテアーゼ処理したタンパク質試料を用いて実行した。前記の手順に従って取られたタンパク質溶液は、遠心分離濾過を介して50mMトリスHCl緩衝液(pH7.6)内に緩衝液交換に供し、6M尿素溶液で2.5mg/mLの濃度に希釈した。希釈したタンパク質溶液をプロテアーゼで処理した。プロテアーゼとしては、シーケンシングブレード修飾されたブタGlu-Cプロテアーゼ(Promega,Madison,WI,米国)を使用し、プロテアーゼ処理はメーカーのプロトコールにしたがって行った。プロテアーゼ処理後に得られたプロテアーゼ処理されたタンパク質溶液を、逆相HPLCおよびQ-TOF-MSに供した。ピーク分析を通じて、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗菌性タンパク質に起源するペプチド断片MAKTQAEおよび配列番号2のアミノ酸配列を含む抗菌性タンパク質に起源するペプチド断片AKTQAEに該当するHPLCおよびMSピークを推定されたプロテアーゼ消化様相および質量計算を基にして確認した。また、HPLCおよびMSピークを化学的に合成されたペプチド(MAKTQAEおよびAKTQAE)を試料として用いて得られたピーク様相と比較して検証した。以後、抗菌性タンパク質の製造で配列番号1のアミノ酸配列を含む抗菌性タンパク質の組成割合をプロテアーゼ処理されたタンパク質試料および化学的に合成されたペプチド(MAKTQAEおよびAKTQAE)への逆相HPLC分析によってペプチド濃度及びこれに該当するピーク面積の相関性を基にして決定した。三バッチの抗菌性タンパク質の分析結果として、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗菌性タンパク質の組成割合は、25、27および29モル%であることが決定された。
【0072】
実施例2:凍結乾燥製剤を含む薬剤学的組成物の製造
本発明の抗菌性タンパク質を含むスタフィロコッカス感染症治療のための薬剤学的組成物は、凍結乾燥によって製造した。次の組成を有する凍結乾燥製剤を製造した。
【0073】
【0074】
製造工程は、実施例1で製造したタンパク質溶液成分を含む緩衝液に緩衝液を交換する工程と、得られた溶液を濃縮する工程と、溶液の抗菌性タンパク質濃度を調整する工程と、濃度調整された溶液を濾過する工程および濾過したものを凍結乾燥する工程とで構成される。
【0075】
前記工程のそれぞれの工程について説明する:
実施例1で製造したタンパク質溶液を、通常の透過ろ過(diafiltration)を用いて、緩衝液(1.56g/L L-ヒスチジン(pH6.0)、50g/L D-ソルビトール、1.47g/L CaCl2 2H2Oおよび1g/Lポロクサマー188)に緩衝液を交換し、
得られた溶液を遠心分離フィルター(10K)を用いて濃縮し、
通常のビシンコニン酸(bicinchoninic acid、BCA)検定法によって決定されたタンパク質の濃度を基にして、抗菌性タンパク質の濃度を緩衝液(1.56g/L L-ヒスチジン(pH6.0)、50g/L D-ソルビトール、1.47g/L CaCl2 2H2Oおよび1g/Lポロクサマー188)で18mg/mLになるように調整して、
濃度調整された溶液を0.2μmフィルターを用いて濾過し、
濾過溶液1mLを3mLガラスバイアルに添加して、充填したバイアルをステンレススチールトレイに置いて、
前記トレイを凍結乾燥機にかけて、凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥する:
4℃で約20分間平衡化し、
保管温度を-40℃に下げて12時間維持し、
凝縮器の温度を-50℃に下げ、
チャンバーに真空をかけ、
真空が1,500mtorrの数値に達したら、保管温度を-20℃まで上げて、16時間維持し、
保管温度を時間当たり10℃のずつ20℃まで上げて、4時間維持し、
真空を解除し、
終結し(stoppering)、終結したバイアルを適切な栓で密封する。
【0076】
凍結乾燥製剤は4℃で保管し、下記に強調するように、安定性および生物学的活性についてテストした。前記組成物を分析する前に、注射用水(0.92mL)を用いて再構成した。安定性をサイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を用いて測定した。 SEC-HPLCは、BioSep
TM-SEC-S 2000カラム(Phenomenex、Torrance、CA)で行った。移動相(10mMトリス、0.5M NaCl、1M尿素、pH7.5)を1.0mL/分の流速で適用した。50μLの試料を注入し、試料溶出を280nmで吸光度を測定して、30分間モニターした。結果を
図1~
図3に示す。
【0077】
生物学的活性は、濁度減少検定法を用いて検定した。濁度減少検定法は、次のように行った:試料が10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH 7.2)でスタフィロコッカスアウレウス菌株ATCC 33591(OD600=0.5)の懸濁液に添加して、最終的に0.1μg/mLの抗菌性タンパク質濃度となった。細菌細胞密度(OD600)の変化を、30秒ごとに15分間記録した。これらの実験から、TOD50(生存細菌の初期濃度の1/2ログ降下時間、分)が得られた。
【0078】
表2は、製剤の安定性および生物学的活性に関連する分析テストの結果をまとめたものである。数値を4つのチェックポイントにおいて測定した:ゼロ時間帯、4℃の保存温度で1ヶ月、3ヶ月および6ヶ月保存後。安定性試験では、ゼロ時間帯の無変化(intact)タンパク質の量を100%として考慮する。生物学的活性では、ゼロ時間帯で測定したTOD50数値との差で分析した。表2は、安定性と生物学的活性を示す。
【0079】
【0080】
表2から、本発明の凍結乾燥製剤の安定性および生物学的活性は、6ヶ月後にもよく保存されていると結論することができる。
【0081】
実施例3:凍結乾燥製剤および液体製剤の比較
凍結乾燥製剤および液体製剤の生物学的活性を実施例2で用いた濁度減少検定法を用いて比較した。凍結乾燥製剤として、1ヶ月保存した凍結乾燥製剤を使用した。生物学的活性を分析する前に、注射用水(0.92mL)を用いて再構成した。液体製剤として、実施例2で記述した手順に従って、新たに製造濾過した溶液を使用した。本実験では、次の菌株を使用した。表3は、テスト菌株を示す。
【0082】
【0083】
濁度減少検定法では、下記の菌株の場合に適用した最終抗菌性タンパク質濃度は0.1μg/mLだった:スタフィロコッカスアウレウス、スタフィロコッカスアウリクラリス、スタフィロコッカスカルノスス、スタフィロコッカスカルプレ、スタフィロコッカスクロモゲネス、スタフィロコッカスデルフィニ、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスエクオルム、スタフィロコッカスガリナルム、スタフィロコッカスヘモリチカス、スタフィロコッカスホミニス、スタフィロコッカスクローシィ、スタフィロコッカスルグドゥネンシス、スタフィロコッカスムスカエ、スタフィロコッカスサプロフィティクスとスタフィロコッカスザイロサス、スタフィロコッカスアルレッテ、スタフィロコッカスコーニィ、スタフィロコッカスインターメディウス、スタフィロコッカスレントゥスおよびスタフィロコッカスワルネリに対するテストの場合、適用した最終的な抗菌性タンパク質濃度は0.5μg/mLだった。スタフィロコッカスパステウリのテストの場合、適用した最終的な抗菌性タンパク質濃度は1.0μg/mLだった。二つの製剤間でTOD50値の差を 比較した。結果を表4に示す。
【0084】
【0085】
表4に示す結果から明らかなように、本発明の凍結乾燥製剤は、抗菌性質において液体製剤と非常に類似した抗菌活性および効果を有する。また、表4に示す結果は、本発明の凍結乾燥製剤が、多様なスタフィロコッカス菌株に対する迅速かつ効果的な殺菌活性を有することを示す。本発明の凍結乾燥製剤のTOD50は、テストしたほぼすべてのスタフィロコッカス菌株に対抗して、20分以下だった。
【0086】
一方、本発明の凍結乾燥製剤の非スタフィロコッカス菌株に対する抗菌活性を調べた。非スタフィロコッカス菌株として、2種類のエンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)菌株、3種類のエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)菌株、2種類のストレプトコッカスミティス(Streptococcus mitis)菌株、1種類のストレプトコッカスウベリス(Streptococcus uberis)菌株、5種類の大腸菌菌株、2種類のクロストリジウムパーフリングジェンス(Clostridium perfringens)菌株及び3種類のサルモネラ(Salmonella)菌株をテストした。その結果、本発明の凍結乾燥製剤は、テストしたこれらの非スタフィロコッカス菌株に対する抗菌活性を示さなかった(表5)。これらの結果は、本発明の凍結乾燥製剤抗菌活性がスタフィロコッカスに特異的な点を示す。下記の表5は、非スタフィロコッカス菌株に対する抗菌活性を示す。
【0087】
【0088】
したがって、本発明の凍結乾燥製剤はスタフィロコッカス特異的であり、スタフィロコッカス属内の広範囲な抗菌範囲を有することが分かり、本発明の凍結乾燥製剤がスタフィロコッカス感染症のための治療剤として使用することができることを提示する。
【0089】
実施例4:凍結乾燥製剤が単一のスタフィロコッカス感染症に及ぼす治療効果
本発明の凍結乾燥製剤が単一のスタフィロコッカス感染症に及ぼす治療効果を、動物モデルを用いて調査した。本実験では、スタフィロコッカスエピデルミディスおよびスタフィロコッカスヘモリチカスをスタフィロコッカス菌株のモデルとして選んだ。凍結乾燥製剤として、1ヶ月保存した凍結乾燥製剤を使用した。動物実験に使用する前に、注射用水(0.92mL)を用いて再構成した。液体製剤として、実施例2で記述した手順に従って新たに製造し濾過した溶液を使用した。
【0090】
スタフィロコッカスエピデルミディス実験のために、23g±20%の重量を有する雌ICRマウス(5週齢)に[特異的病原体のない(SPF)等級]を使用された。全体を、3つのグループに分けた30匹のマウス(グループ当たり10匹のマウス)にスタフィロコッカスエピデルミディス菌株CCARM 3751(1×108 CFU/マウス)の接種液を静脈内注射した。グループの動物(すなわち、対照群)に、緩衝液(1.56g/L L-ヒスチジン(pH6.0)、50g/L D-ソルビトール、1.47g/L CaCl2 2H2Oおよび1g/Lポロクサマー188)のみ細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した。凍結乾燥製剤再構成溶液処理群の動物に凍結乾燥製剤を再構成した溶液を、細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した(容量:25mg/kg)。液体製剤処理群の動物には、液体製剤を細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した(容量:25mg/kg)。死んだマウスの数を記録し、臨床的兆候を毎日観察した。凍結乾燥製剤を再構成した溶液と液体製剤の血流での細菌を撲滅する能力は、通常のコロニー係数法によって細菌接種(実験的エンドポイント)以後5日目に採取した血液を用いて調査した。
【0091】
その結果、治療的効果が明らかに観察された。二つの実験が類似の結果を示した。臨床的兆候観察では、処理群ではマウスが実験期間中を通じて正常であったが、対照群のマウスは、細菌接種後の2日目から、眼瞼周囲の浮腫、運動性減少、脱毛、立毛(piloerection)および旋回を含む多様な臨床的兆候を示した。凍結乾燥製剤を再構成した溶液および液体製剤の静脈内注射は、生存率を有意に増加させた(表6)。下記の表6は、単一のスタフィロコッカス感染モデル実験における死亡率を示す。
【0092】
【0093】
また、凍結乾燥製剤を再構成した溶液および液体製剤の静脈内注射は、血液中の細菌計数を有意に減少させた。平均CFU/mLが、スタフィロコッカスエピデルミディス実験で対照群のマウスから採取した血清で>1×106およびスタフィロコッカスヘモリチカス実験で対照群のマウスの血清で>1×105であったのに対し、処理群のマウスのすべてで細菌のコロニーが全く観察されなかった。
【0094】
前記の結果から、本発明の凍結乾燥製剤が、単一のスタフィロコッカス感染症を治療するにおいて、液体製剤と非常によく似た治療的効果を提供することができることが確認された。また、表6に示す結果は、本発明の凍結乾燥製剤がスタフィロコッカス感染症の治療に効果的に使用することができることを示す。
【0095】
実施例5:凍結乾燥製剤が複数のスタフィロコッカス感染症に及ぼす治療効果
本発明の凍結乾燥製剤が複数のスタフィロコッカス感染症に及ぼす治療効果を、動物モデルを用いて調査した。本実験では、スタフィロコッカスエピデルミディス、スタフィロコッカスルグドゥネンシスおよびスタフィロコッカスワルネリをスタフィロコッカス菌株のモデルとして選んだ。凍結乾燥製剤として、1ヶ月保存した凍結乾燥製剤を使用した。動物実験に使用する前に、注射用水(0.92mL)を用いて再構成した。液体製剤として、実施例2で記述した手順に従って新たに製造し濾過した溶液を使用した。
【0096】
22g±20%の重量の雌ICRマウス(5週齢)[特定病原体不含(SPF)等級]を使用した。全体を3つのグループに分けた30匹のマウス(グループ当たり10匹のマウス)にスタフィロコッカスエピデルミディス菌株CCARM 3751、スタフィロコッカスルグドゥネンシスCCARM 3734およびスタフィロコッカスワルネリKCTC 3340(それぞれ1×108 CFU/マウス)の接種液を静脈内注射した。グループの動物(すなわち、対照群)に、緩衝液(1.56g/L L-ヒスチジン(pH 6.0)、50g/L D-ソルビトール、1.47g/L CaCl2 2H2Oおよび1g/Lポロクサマー188)のみを細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した。凍結乾燥製剤再構成溶液処理群の動物に、凍結乾燥製剤を再構成した溶液を細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した(容量:25mg/kg)。液体製剤処理群の動物には、液体製剤を細菌接種後の30分、12時間および24時間に三回静脈内注射した(容量:25mg/kg)。死んだマウスの数を記録し、臨床的兆候を毎日観察した。凍結乾燥製剤を再構成した溶液および液体製剤の血流での細菌を撲滅する能力を、通常のコロニー係数法により細菌接種(実験的エンドポイント)後5日目に採取した血液を用いて調査した。
【0097】
その結果、治療的効果が明らかに観察された。臨床的兆候をみると、処理群ではすべてのマウスが実験期間中を通じて正常であったが、対照群のマウスでは、細菌接種後2日目から眼瞼周囲の紅斑、運動性減少、脱毛、眼瞼下垂、立毛および旋回を含む多様な臨床的兆候を示した。凍結乾燥製剤を再構成した溶液および液体製剤の静脈内注射は、生存率を有意に増加させた(表7)。下記の表7は、複数のスタフィロコッカス感染モデル実験における死亡率を示す。
【0098】
【0099】
また、凍結乾燥製剤が再構成された溶液および液体製剤の静脈内注射は、血液中の細菌計数を有意に減少させた。平均CFU/mLが、対照群のマウスから採取された血清で>1×106であったのに対し、処理群のすべてのマウスで、細菌のコロニーが全く観察されなかった。
【0100】
前記の結果から、本発明の凍結乾燥製剤が複数のスタフィロコッカス感染症を治療するために、液体製剤と非常に類似の治療的効果を提供することができることが確認された。また、表7に示す結果は、本発明の凍結乾燥製剤がスタフィロコッカス感染症の治療に効果的に使用することができることを示す。
【0101】
当業者なら多様な変形及び変化が本発明の精神または範疇を逸脱することなく、本発明からなし得ることが自明であろう。したがって、本発明は、添付の請求項及びそれらと等価物の範疇内に近接する本発明の変形及び変化を包括するものと理解されなければならない。
【配列表】