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特許7085484連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/664 20060101AFI20220609BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20220609BHJP
   F16H 15/30 20060101ALI20220609BHJP
   F16H 15/52 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F16H61/664
F16H59/68
F16H15/30
F16H15/52 G
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018536480
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 US2016063880
(87)【国際公開番号】W WO2017123331
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】14/996,743
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512221120
【氏名又は名称】フォールブルック インテレクチュアル プロパティー カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】トマシー フェルナンド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロア チャールズ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ポール ブラッド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン デイヴィッド ブライアン
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506001(JP,A)
【文献】特表2010-532454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/00-15/56
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1スロットを含む第1キャリア、複数の第2スロットを含む第2キャリア、及びそれぞれの遊星アクスルの周りを回転するようにそれぞれ構成された複数の遊星であって、各遊星アクスルは、第1キャリアのそれぞれの第1スロットから第2キャリアのそれぞれの第2スロットまで延びる、複数の遊星を備える連続可変トランスミッション(CVT)における傾斜角を制御するための方法であって、前記方法は、
特定の遊星アクスルの所望の傾斜角に関連付けられた第1スキュー角に特定の遊星アクスルのスキュー角を変更するために前記第1キャリアを第1方向に回転させることを含む、設計回転方向に前記CVTを作動することと、
逆回転方向に前記CVTを作動することと、
を備え、
逆回転方向に前記CVTを作動することは、
前記特定の遊星アクスルのスキュー角を第2スキュー角に変更するために、前記第1方向とは反対方向である第2方向に前記第1キャリアを回転させるステップと、
前記特定の遊星アクスルの傾斜角の変化を決定するために前記CVTを監視するステップと、
前記特定の遊星アクスルの所望の傾斜角をもたらす第3スキュー角に前記特定の遊星アクスルのスキュー角を変更するために、前記第1キャリアを前記第1方向に回転させるステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記設計回転方向から前記逆回転方向に前記CVTがいつ切り替わったかを判定することを更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記逆回転方向に前記CVTを作動することは、前記第2スキュー角及び前記第1方向の前記第3スキュー角の間の一連の追加的なスキュー角の変化の間で前記特定の遊星アクスルを遷移させることを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の第1スロットの1又は複数の寸法及び前記複数の第2スロットの1又は複数の寸法に基づき、前記一連の追加的なスキュー角の変化の少なくとも1つの追加的なスキュー角の変化を決定すること、及び
前記少なくとも1つの追加的なスキュー角の変化を引き起こすこと、
を更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の遊星それぞれは、前記CVTの中心軸を中心として軌道を描き、かつそれぞれの回転軸を有し、
前記方法は、対応する遊星の回転軸のスキュー角の変化率及び少なくとも前記対応する遊星の回転率に基づき、前記特定の遊星アクスルのスキュー角を決定することを更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CVTへの負荷変化を決定することを更に備え、
前記特定の遊星アクスルのスキュー角は、前記CVTへの前記負荷変化により引き起こされたバイアスをオフセットするために更に変化させられ、
前記バイアスは、前記CVTに、オーバードライブ状態またはアンダードライブ状態のいずれかへ伝達比を調整させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の遊星それぞれは、前記CVTの中心軸を中心として軌道を描き、かつそれぞれの回転軸を有し、
前記第2スキュー角及び第3スキュー角それぞれは、前記CVTのスキューガイド特徴部の投影と前記CVTの前記中心軸に垂直である半径方向線LRとの間で計測され、
投影面は、前記中心軸に垂直であり、
前記傾斜角は、遊星回転軸と前記CVTの前記中心軸との間で計測された角度の投影であり、
前記遊星回転軸は、両軸を含む平面に投影されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
バリエータと、
アクチュエータと、
コントローラと、
を備える連続可変トランスミッション(CVT)であって、
前記バリエータは、
長手方向軸を中心として軌道を描く遊星の配列であって、各遊星がそれぞれのアクスルを有する、遊星の配列と、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第1リングであって、前記第1リングが前記遊星の配列の第1側にある、第1リングと、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第2リングであって、前記第2リングが前記遊星の配列の第2側にある、第2リングと、
第1方向に方向付けられた複数の第1キャリアスロットを有する第1キャリアであって、各第1キャリアスロットが、それぞれの遊星アクスルの第1端部を受けるように構成された、第1キャリアと、
前記第1キャリアの反対側にあるとともに前記第1方向に方向付けられた複数の第2キャリアスロットを有する第2キャリアであって、各第2キャリアスロットが、それぞれの前記遊星アクスルの第2端を受けるように構成された、第2キャリアと、
を備え、
前記アクチュエータは、前記第1キャリア及び前記第2キャリアの少なくとも一方に結合され、
前記コントローラは、前記アクチュエータに通信可能に結合され、
前記コントローラは、プロセッサ及びメモリを備え、
前記メモリは、
前記バリエータが設計方向に作動しているか逆方向に作動しているかを判別することと、
前記設計方向に前記バリエータが作動しているとの判別に応じて、
前記遊星の配列の所望の傾斜角を決定すること、及び
前記アクチュエータに信号を送信して、第1スキュー角まで第1方向に前記第1キャリアを回転させることと、
前記逆方向に前記バリエータが作動しているとの判別に応じて、
前記アクチュエータに第1信号を送信して、前記第1方向とは反対方向である第2方向に第2スキュー角まで前記第1キャリアを回転させること、
傾斜角の変化を決定するために前記CVTを監視すること、及び
前記アクチュエータに第2信号を送信して、第3スキュー角まで前記第1方向に前記第1キャリアを回転させて、前記CVTを前記所望の傾斜角に調整することと、
を実施するために、前記プロセッサにより実行され得る指示のセットを格納している、
連続可変トランスミッション(CVT)。
【請求項9】
前記プロセッサにより実行可能な前記指示のセットが、減速に向かって傾くための前記遊星のバイアスをオフセットするために前記スキュー角を変化させるための指示を含む、
請求項8に記載のCVT。
【請求項10】
前記コントローラが、前記スキュー角を進めるための指示を送信するように構成されている、
請求項8に記載のCVT。
【請求項11】
前記コントローラが、前記バリエータを前記逆方向において作動するように予め設定するように構成されている、
請求項8に記載のCVT。
【請求項12】
前記コントローラが、前記複数の第1キャリアスロットの1又は複数の寸法及び前記複数の第2キャリアスロットの1又は複数の寸法に基づき、前記スキュー角を変化させるように構成されている、
請求項8に記載のCVT。
【請求項13】
前記スキュー角の変化が、遊星軸のスキュー角の変化率及び前記遊星の回転率に基づく、
請求項8に記載のCVT。
【請求項14】
前記プロセッサにより実行可能な前記指示のセットが前記CVTへの負荷変化を決定するための指示を含み、
前記スキュー角が、前記CVTへの前記負荷変化により引き起こされた減速に向かって傾くための前記遊星のバイアスをオフセットするために更に変化させられる、
請求項8に記載のCVT。
【請求項15】
ドライブトレインであって、
動力源と、
前記動力源に結合されたバリエータであって、
前記バリエータが、
長手方向軸を中心として軌道を描く遊星の配列と、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第1リングであって、前記第1リングが前記遊星の配列の第1側にある第1リングと、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第2リングであって、前記第2リングが前記遊星の配列の第2側にある、第2リングと、
前記遊星の配列の半径方向内側に位置するとともに前記遊星の配列と接触する太陽と、
を備える、バリエータと、
動力負荷と、
第1キャリア及び第2キャリアの少なくとも一方に結合されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラであって、プロセッサ及びメモリを備えるコントローラと、
を備え、
前記メモリは、
前記バリエータが設計方向に作動しているか逆方向に作動しているかを判別することと、
前記設計方向に前記バリエータが作動しているとの判別に応じて、
前記遊星の配列の所望の傾斜角を決定すること、及び
前記アクチュエータに信号を送信して、第1スキュー角まで第1方向に前記第1キャリアを回転させることと、
前記逆方向に前記バリエータが作動しているとの判別に応じて、
前記アクチュエータに第1信号を送信して、前記第1方向とは反対方向である第2方向に第2スキュー角まで前記第1キャリアを回転させること、
前記遊星の配列の傾斜角の変化を決定するために前記バリエータを監視すること、及び
前記アクチュエータに第2信号を送信して、第3スキュー角まで前記第1方向に前記第1キャリアを回転させて、前記遊星の配列を前記遊星の配列の前記所望の傾斜角に調整することと、
を実施するために、前記プロセッサにより実行され得る指示のセットを格納している、
ドライブトレイン。
【請求項16】
前記コントローラが、前記スキュー角を進めるための指示を送信するように構成されている、
請求項15に記載のドライブトレイン。
【請求項17】
前記コントローラが、前記バリエータを前記逆方向において作動するように予め設定するように構成されている、
請求項15に記載のドライブトレイン。
【請求項18】
前記コントローラが、前記第1キャリアにおける第1の複数のスロットの1又は複数の寸法及び前記第2キャリアにおける第2の複数のスロットの1又は複数の寸法に基づき、前記スキュー角を変化させるように構成されている、
請求項15に記載のドライブトレイン。
【請求項19】
前記コントローラは、前記スキュー角の変化率及び前記遊星の配列の前記遊星の回転率に基づいて、前記スキュー角を変化させるように構成されている、
請求項15に記載のドライブトレイン。
【請求項20】
前記プロセッサにより実行可能な前記指示のセットが前記バリエータへの負荷変化を決定するための指示を含み、
前記スキュー角が、前記バリエータへの前記負荷変化により引き起こされた回転するための前記バリエータのバイアスをオフセットするために更に変化させられる、
請求項15に記載のドライブトレイン。
【請求項21】
バリエータであって、
長手方向軸を中心として軌道を描く遊星の配列であって、各遊星がアクスルを有する、遊星の配列と、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第1リングであって、前記第1リングが前記遊星の配列の第1側にある、第1リングと、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第2リングであって、前記第2リングが前記遊星の配列の第2側にある、第2リングと、
第1方向に方向付けられた複数のキャリアスロットを有する第1キャリアであって、各キャリアスロットが、前記遊星の配列の遊星アクスルの第1端部を受けるように構成された、第1キャリアと、
前記第1キャリアの反対側にあるとともに前記第1方向に方向付けられた複数のキャリアスロットを有する第2キャリアであって、各キャリアスロットが前記遊星の配列の前記遊星アクスルの第2端を受けるように構成された、第2キャリアと、
前記第1キャリアおよび前記第2キャリアの少なくとも一方に結合されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラであって、前記コントローラが、プロセッサと、メモリであって、
前記バリエータが逆方向に作動していることを決定することと、
前記逆方向に基づいて前記バリエータを作動させるために前記遊星の第1回転を開始することであって、前記遊星の配列が減速に向かって傾くように付勢される、前記遊星の第1回転を開始することと、
前記遊星の配列の傾斜角を変化させるためにスキュー角を変化させることと
を実施するために、
前記プロセッサにより実行され得る指示のセットを格納しているメモリを含み、
前記プロセッサにより実行可能な前記指示のセットが前記バリエータへの負荷変化を決定するための指示を含み、前記スキュー角が、前記バリエータへの前記負荷変化により引き起こされた減速に向かって傾くための前記遊星のバイアスをオフセットするためにさらに変化させられる、
バリエータ。
【請求項22】
ドライブトレインであって、
動力源と、
前記動力源に結合されたバリエータであって、
長手方向軸を中心として軌道を描く遊星の配列と、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第1リングであって、前記第1リングが前記遊星の配列の第1側にある第1リングと、
前記遊星の配列と接触するとともに前記長手方向軸を中心として軌道を描く第2リングであって、前記第2リングが前記遊星の配列の第2側にある、第2リングと、
前記遊星の配列の半径方向内側に位置するとともに前記遊星の配列と接触する太陽と、
を備えるバリエータと、
動力負荷と、
第1キャリアおよび第2キャリアの少なくとも一方に結合されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラであって、プロセッサと、メモリであって、
前記バリエータを逆方向において作動させるために前記遊星の第1回転を開始することであって、前記バリエータが最大減速まで回転するよう付勢される、前記遊星の第1回転を開始することと、
回転するための前記バリエータのバイアスをオフセットするためにスキュー角を変化させることと、
を実施するために、前記プロセッサにより実行され得る指示のセットを格納しているメモリと、を含む、コントローラと、
を備え、
前記プロセッサにより実行可能な前記指示のセットが前記バリエータへの負荷変化を決定するための指示を含み、前記スキュー角が、前記バリエータへの前記負荷変化により引き起こされた回転するための前記バリエータの前記バイアスをオフセットするためにさらに変化させられる、
ドライブトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許出願第8,313,404号明細書、米国特許第8,469,856号明細書、および米国特許第8,888,643号明細書に関連し、これらの全ては本明細書において参照により包含される。
【0002】
本明細書において開示された実施形態は連続可変トランスミッションを対象とし得る。特に、実施形態は、正転を意図されたボール遊星タイプの連続可変トランスミッションを対象とし得る。
【背景技術】
【0003】
「連続可変遊星トランスミッション」(または「CVP」)という用語は、連続的で無段の動力(速度およびトルク)を伝達することができる可変比遊星駆動アセンブリを指し得る。CVPは、連続可変トランスミッションの連続可変サブアセンブリ(または「バリエータ」)であってもよく、または、速度およびトルクを修正する追加的な要素がない場合は、CVPは、連続可変トランスミッション(「CVT」)と呼ばれ得る。ボール遊星連続可変トランスミッション(CVT)は、一般に、入力リングと出力リングとの間に挿入され、太陽(sun)と接触する複数の球状の転動要素(ボール、遊星、球とも呼ばれる)を用いる。正方向または逆方向のいずれかに作動し得るCVPは、無限可変トランスミッション(「IVT」)と呼ばれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書において開示された実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムおよび方法を備えた先行技術の欠点を克服し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幅広い一事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムまたは方法を対象とし得る。正(設計)方向に作動しているとき、フィードバックは、一般に、キャリアスロットの形状により提供される。逆の作動(設計の反対の回転)の間、フィードバックは、制御モジュールにおけるアルゴリズムにより生成されたスキューアクチュエータコマンドにより提供される。制御モジュールは、アクチュエータと一体化されてもよく、または、アクチュエータへ通信可能に結合されたコントローラのメモリに格納された指示のセットを含んでもよい。
【0006】
別の幅広い事項において、実施形態は、逆方向に作動する連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムまたは方法を対象とし得る。いくつかの実施形態において、逆の作動の始まりに、コマンドのセットは、アクチュエータに、複数の遊星アクスルのスキュー角ζ(ゼータ)を、設計と反対の回転中に、減速に向かって傾斜角γ(ガンマ)の変化をもたらす方向に変化させる。コマンドのセットの数およびタイミングが、加工誤差を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)の不正確さを克服するか、負荷を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)のドループを克服する。コマンドのセットは、少なくとも1つの遊星キャリアを第1方向に回転させるために第1コマンドを含み得る。いくつかの実施形態において、コマンドのセットは、少なくとも1つの遊星キャリアを固定されたスキュー角で保持するために第2コマンドを含み得る。いくつかの実施形態において、コマンドのセットは、少なくとも1つの遊星キャリアを第1回転方向と反対の第2回転方向に回転させるために、第1または第2コマンドの後に必要に応じて実行される1つまたは複数のコマンドを含み得る。方法は、アクチュエータに一体化したメモリに格納された指示のセットを実行することにより実施されてもよく、または、アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラのメモリに格納された指示のセットを含んでもよい。
【0007】
別の幅広い事項において、実施形態は、正または逆方向において作動し得る連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムまたは方法を対象とし得る。逆の作動が予想されると、コマンドのセットは、逆の作動のための、減速に向かっての傾斜角γ(ガンマ)の変化をもたらすために、アクチュエータに、複数の遊星アクスルのためのスキュー角ζ(ゼータ)をある方向にオフセットさせる。初期スキュー角と任意のサブセット角を含むコマンドのセットは、CVTの形状、CVTの望ましい作動速度またはトルク、およびCVTの決定された入力トルクまたは速度の1つまたは複数に基づき決定される。コマンドのセットは、加工誤差を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)の不正確さを克服するとともに、負荷を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)のドループを克服する。方法は、アクチュエータに一体化したメモリに格納された指示のセットを実行することにより実施され得るか、アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラのメモリに格納された指示のセットを含み得る。
【0008】
別の幅広い事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるロールバックを管理するためのシステムまたは方法を対象とし得る。トランスミッションが停止し、次のアクションが不確定であるときはいつでも、複数の遊星アクスルのためのスキュー角ζ(ゼータ)を、回転方向が逆である場合に減速に向かっての傾斜角γ(ガンマ)の変化をもたらす方向にオフセットするためのコマンドがアクチュエータに送られる。コマンドは、加工誤差を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)の不正確さを克服するのに十分であり、負荷を原因とするスキュー角ζ(ゼータ)のドループを克服する。方法は、アクチュエータに一体化したメモリに格納された指示のセットを実行することにより実施されてもよく、または、アクチュエータに通信可能に結合されたコントローラのメモリに格納された指示のセットを含んでもよい。
【0009】
別の幅広い事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するためのシステムまたは方法を対象とし得る。設計と反対の回転中、駆動部のための傾斜角γ(ガンマ)の変化が減速に近づくにつれ、スキュー角ζ(ゼータ)は連続的に監視され得る。スキュー角ζ(ゼータ)が正のフィードバック(例えば、スキュー角ζ(ゼータ)を増加させる角度が付いている案内スロット)を原因として増加していると決定された場合、少なくとも1つのキャリアの反対方向への回転が、正のフィードバックに対抗するために使用され得る。いくつかの実施形態において、設計と反対の回転中、スキュー角ζ(ゼータ)が、減速に向かっての傾斜角γ(ガンマ)の変化を引き起こす方向にオフセットされた場合、傾斜角γ(ガンマ)が減速に向かって変化するにつれて、角度が付いている案内スロットは、スキュー角ζ(ゼータ)の増加を引き起こす。いくつかの実施形態において、暴走調整を防ぐために、ゼロスキュー角に向かって戻る後続のスキュー角ζ(ゼータ)の変化は比変化に従う。方法が、アクチュエータに一体化したメモリに格納された指示のセットを実行することにより実施されてもよく、または、アクチュエータへ通信可能に結合されたコントローラのメモリに格納された指示のセットを含んでもよい。
【0010】
別の幅広い事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるスキュー角を管理するための方法を対象とし得る。設計と反対の回転のための標的とされた連続作動状態は、CVPの入力端の最も近くの遊星アクスル端部が、入力キャリアの案内スロットの真ん中の極限に接触する回転位置を含む。いくつかの実施形態において、連続的なスキュー角ζ(ゼータ)は、遊星の配列における遊星の各々のための減速回転力を維持するのに必要とされる最小スキュー角ζ(ゼータ)に限られていてもよい。いくつかの実施形態において、連続的なスキュー角ζ(ゼータ)は、加工誤差、または、外部負荷および比ドループの予期しない変化を考慮して、限られていてもよい。
【0011】
別の幅広い事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるスキュー角を制御するためのシステムを対象とし得る。スロット付きタイミングプレートが、任意の単一の遊星が残りの遊星の平均比に対して有し得る比角の誤差を限るために、使用され得る。タイミングプレートは、キャリア半部間に軸方向に配置された半径方向案内スロットを備えた回転自在ディスクであってもよい。遊星アクスルの各々は、タイミングプレートを通って延在するとともに、駆動部の一端でキャリア案内スロットに係合する。タイミングプレートスロットの公差は、キャリア案内スロットが、遊星のための主な円周方向整列特徴部であることを可能にする。タイミングプレートにおけるスロットの角度または公差は、少なくとも1つのキャリアにおいて形成されたスロットに基づき得る。
【0012】
別の幅広い事項において、実施形態は、連続可変トランスミッションにおけるスキュー角を制御するためのシステムを対象とし得る。公差を有するとともに回転軸に垂直以外の角度で方向付けられているスロットを有するスロット付きタイミングプレートが、任意の単一の遊星が残りの遊星の平均比に対して有し得る比角の誤差を限るために使用されてもよい。タイミングプレートは、半径方向案内スロットを備えた回転自在ディスクであってもよく、キャリア半部の軸方向外側に位置付けられ得る。遊星アクスルの各々は、キャリア案内スロットを通って延在するとともに、駆動部の一端で(すなわちCVTの入力または出力で)タイミングプレートと係合する。タイミングプレートスロットの公差は、キャリア案内スロットが、遊星のための主な円周方向整列特徴部であることを可能にする。
【0013】
別の幅広い事項において、本明細書において開示された実施形態は、バリエータであって、太陽と、複数の遊星と、第1および第2リングとを有するバリエータを対象とし得る。複数の遊星は、第1および第2リングの間に挿入され、さらに、太陽と接触し、太陽を中心として回転可能であり得る。オフセット半径方向スロットタイミングプレートは、複数の遊星における各遊星が全体の制御された比角内および全体の限られたスキュー角ζ(ゼータ)内にあることを確実にすることにより、制御を高め得る。タイミングプレートは、遊星の配列とキャリアのうちの1つとの間に軸方向に配置されたオフセット半径方向案内スロットを備えた回転自在ディスクであり得る。遊星アクスルの各々は、タイミングプレートスロットを通って延在するとともにキャリア案内スロットに係合する。タイミングプレートスロットは、キャリア案内スロットが、遊星のための主な円周方向整列特徴部であることを可能にするのに十分大きい公差を有する。タイミングプレートスロットとキャリア案内スロットとの間の角度は、非ゼロである。
【0014】
別の幅広い事項において、本明細書において開示された実施形態は、バリエータであって、太陽と、複数の遊星と、第1および第2リングとを有するバリエータを対象としてもよい。複数の遊星は、第1および第2リングの間に挿入されてもよく、さらに、太陽と接触し、太陽を中心として回転可能であり得る。オフセット半径方向スロットタイミングプレートは、複数の遊星における各遊星が全体の制御された比角内および全体の限られたスキュー角ζ(ゼータ)内にあることを確実にすることにより、制御を高め得る。タイミングプレートは、遊星の配列の軸方向外側およびキャリアのうちの1つの軸方向外側に配置されたオフセット半径方向案内スロットを備えた回転自在ディスクであり得る。遊星アクスルの各々は、キャリア案内スロットを通って延在するとともにタイミングプレートスロットに係合する。キャリア案内スロットは、タイミングプレートスロットが遊星のための主な円周方向整列特徴部となるのを可能にするのに十分大きい公差を有する。タイミングプレートスロットとキャリア案内スロットとの間の角度は、非ゼロである。
【0015】
別の幅広い事項において、本明細書において開示された実施形態は、バリエータであって、太陽と、複数の遊星と、第1および第2リングと、第1および第2キャリアと、任意の単一の球状遊星が複数の遊星の平均比に対して有し得る比の誤差を限るために使用されるタイミングプレートとを有するバリエータを対象とし得る。タイミングプレートは、複数の遊星の反対側に位置するキャリアに対して接地していてもよい。タイミングプレートは、タイミングプレートとキャリアとの間の直接結合を原因として基礎を据えられてもよく、または、キャリアに対して同様に接地した要素に対して接地していてもよい。
【0016】
別の幅広い事項において、本明細書において開示された実施形態は、バリエータであって、太陽と、複数の遊星と、第1および第2リングと、第1および第2キャリアと、任意の単一の遊星が残りの遊星の平均比に対して有し得る比の誤差を限るために使用されるタイミングプレートとを有するバリエータを対象とし得る。タイミングプレートは、複数の遊星の同じ側に位置するキャリアに対してカウンタタイミングが行われ得る。換言すると、タイミングプレートが複数の遊星の第1側の入力キャリアの近くに位置する場合、タイミングプレートは、入力キャリアに対してカウンタタイミングが行われ得る。第1キャリアでタイミングプレートのカウンタタイミングを行うことは、歯車機構により達成され得る。
【0017】
これらのおよび他の態様は、以下の説明および添付図面と併せて考慮されると、より良好に認められるとともに理解される。以下の説明は、本発明の様々な実施形態およびその数多くの特定の詳細を示している一方で、限界ではなく例証として与えられている。多くの置換、修正、付加または再配置が開示の範囲内においてなされ得、本開示は、全てのそのような置換形態、修正形態、付加形態または再配置形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】ボール遊星タイプの無限可変トランスミッションのための制御機構の一実施形態を示す、CVTの単純化した図である。
図1B】ボール遊星タイプの無限可変トランスミッションのための制御機構の一実施形態を示す、CVTの単純化した図である。
図1C】ボール遊星タイプの無限可変トランスミッションのための制御機構の一実施形態を示す、CVTの単純化した図である。
図1D】ボール遊星タイプの無限可変トランスミッションのための制御機構の一実施形態を示す、CVTの単純化した図である。
図2A】連続可変トランスミッションの一実施形態の設計方向における作動を示す、傾斜角およびスキュー角の経時的グラフを示す。
図2B】連続可変トランスミッションの一実施形態の逆方向における作動を示す、傾斜角およびスキュー角の経時的グラフを示す。
図3A】一実施形態による連続可変トランスミッションにおけるロールバックを管理する一方法を示す、傾斜角およびスキュー角の経時的グラフを示す。
図3B】一実施形態による連続可変トランスミッションにおけるロールバックを管理する一方法を示す、傾斜角およびスキュー角の経時的グラフを示す。
図4】一実施形態による連続可変トランスミッションにおけるロールバックを制御するための一方法を示すフローチャートを示す。
図5A】逆の作動中に連続可変トランスミッションを制御するためにタイミングプレートを用いるシステムの一実施形態の部分図を示す。
図5B】逆の作動中に連続可変トランスミッションを制御するためにタイミングプレートを用いるシステムの一実施形態の部分図を示す。
図5C】キャリアプレート間に挿入された浮揚性タイミングプレートを介して制御されるキャリアプレートを含むシステムの一実施形態の図を示す。
図5D】キャリアプレート間に挿入された浮揚性タイミングプレートを介して制御されるキャリアプレートを含むシステムの一実施形態の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な特徴および有利な詳細が、添付図面に示されるとともに以下の説明において詳述される非限定的な実施形態を参照してより完全に説明される。公知の出発原料、加工技術、コンポーネントおよび装置の説明は、それらが提供する特徴および利点を不必要に曖昧にしないように、省略される。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、好ましい実施形態を示しているが、限界としてではなく例証としてのみ与えられていることが理解されるべきである。基礎となる概念の趣旨および/または範囲内にある様々な置換形態、修正形態、付加形態および/または再配置形態は、当業者に対しては、この開示から明らかとなるだろう。
【0020】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含める(includes)」、「含めている(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」またはそれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含をカバーすることを意図されている。例えば、要素のリストを含むプロセス、製品、物品、または装置は、それらの要素に必ずしも限定されず、明確に挙げられていない、または、そのようなプロセス、製品、物品、または装置に固有でない他の要素も含み得る。さらに、別段の指示がない限り、「または」という用語の使用は、包含的な「または」を指し、排他的な(または論理的)「または」を指さない。例えば、状態「AまたはB」は、以下の任意の1つにより満たされる、Aが真(または存在)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在)、またはAおよびBの両方が真(または存在)。
【0021】
追加的に、本明細書において与えられる任意の例または図は、それらとともに使用される任意の1つまたは複数の用語への制限、限界、または任意の1つまたは複数の用語の定義の表明としてみなされるものでは決してない。代わりに、これらの例または図は、1つの特定の実施形態に関して、例示としてのみ、説明されているとみなされるものである。当業者は、任意の1つまたは複数の用語であって、それとともにこれらの例または図が用いられている任意の1つまたは複数の用語は、それらとともにまたは明細書の他所で与えられてもいなくてもよい他の実施形態を包含し、全てのそのような実施形態は、当該1つまたは複数の用語の範囲内に含まれることを意図されていることを認める。そのような非限定的な例および図を指定する言葉は、限定するものではないが、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「例えば(e.g.)」、「一実施形態において」を含む。
【0022】
ここで開示された本発明の実施形態は、略球状遊星であって、各々、作動中に出力速度に対する入力速度の望ましい比を達成するために調整され得る傾斜可能な回転軸を有する略球状遊星を使用するバリエータおよび/またはCVTの制御に関連する。いくつかの実施形態において、前記回転軸の調整は、第2平面における遊星軸の傾動を達成するために、第1平面における遊星軸の角度変位を含み、第2平面は第1平面に実質的に垂直である。第1平面における角度変位は、ここでは、「スキュー」、「スキュー角」、および/または「スキュー状態」と呼ばれる。議論の目的上、第1平面は、バリエータおよび/またはCVTの長手方向軸に略平行である。第2平面は長手方向軸に略垂直であり得る。一実施形態において、制御システムは、実質的に第2平面において遊星回転軸を傾けるバリエータにおける特定の接触コンポーネント間に生じるスキュー角の使用を連係させる。遊星回転軸の傾動は、バリエータの速度比を調整する。前述のスキュー角、またはスキュー状態は、例えば、図1のページの平面に実質的に垂直な平面において適用され得る。バリエータの望ましい速度比を達成するために特定の発明性のあるスキュー制御システムを用いるトランスミッションの実施形態が考慮される。
【0023】
以下の説明は、特定の文脈においては、特に、動力が第1リングを介して入力され、第2リングを介して出るように構成され、動力が太陽を通過しないバリエータを考慮する場合には、理解するのがより容易となり得る。図1A、1B、および1Cに示された構成との関連において、遊星キャリア114または124は主アクスル101などの主アクスルに対して回転しなくてもよく、入力は第1リング112Aを介してであり、出力は第2リング112Bを介してである(「リング対リング」構成とも呼ばれる)。作動および効果は、説明がキャリアに対するリングの相対的回転に対して標準化される限り、キャリア対へまたは太陽への入力などいずれの構成についても同じである。
【0024】
図1A、1Bおよび1Cは、動力を連続的に伝達するために複数の遊星を含む例示的CVPの単純化した図を示す。特に、図1Aは、長手方向軸105を画定する主アクスル101を中心として分布する複数の遊星110を有するCVP100を示す。主アクスル101は、剛性部材であって、他の要素を支持するとともに動力源から要素へまたは要素から動力負荷へ動力を伝達するための剛性部材である。主アクスル101は中実であってもよく、または、少なくとも一部が、中空通路であって、流体フローを可能にするための、またはセンサー、ワイヤ、制御機構、ロッド、シャフト、他のアクスル、導管、貯蔵器などを収容するための中空通路を備えていることができる。長手方向軸105は、遊星110、牽引リング112、太陽102ならびに遊星キャリア114および124のための回転軸であり、主軸または中心軸とも呼ばれ得る。
【0025】
主軸105を中心として回転する要素に加えて、各遊星110は、傾斜可能な遊星アクスル111を有する。各遊星アクスル111は遊星110を通って延在するとともに、当該遊星110のための回転軸115を画定する。主アクスル101と同様に、遊星アクスル111は剛性部材である。遊星アクスルは、中実または、遊星110を通る流体フローを可能にするために中空であってもよい。
【0026】
動力は、リング112Aまたは112Bを介して遊星110に入力されてもよく、または、主アクスル101を介して太陽102に入力されてもよく、必要に応じて、遊星110を介して、太陽102またはリング112Aもしくは112Bに伝達される。上述のとおり、遊星110は、傾斜可能な遊星アクスル111を中心として回転可能である。動力が遊星110にわたってどのように伝達されるかの制御は、傾斜角γ(ガンマ)に基づく。傾斜角γ(ガンマ)は、遊星回転軸115と長手方向軸105との間の、両軸を含む平面における角度の投影を指すために本明細書では使用され、「比角」とも呼ばれ得る。
【0027】
本明細書において開示された実施形態は、スキューシフト(すなわち、傾斜角γの無段変化を引き起こすためにスキュー角ζを与えること)を可能にするCVTのアーキテクチャを使用し得る。図1B~1Dは、スロット角および角度変位ならびにスキュー角へのそれらの効果を示す、CVTの一実施形態の側面および上面図を示す。図1A、1B、1Cおよび1Dに示されるとおり、キャリア114は、遊星アクスル111の端部111Aが(キャリア124のスロット126に保持されたアクスル端部111Bとは無関係に)スロット116に沿って移動することができるように、遊星アクスル111の端部111Aを保持するように構成されたスロット116を有し、スキュー角ζ(ゼータ)の変化を可能にし、バリエータ100の速度比の連続的で無段の調整を提供するために傾斜角γ(ガンマ)の変化を引き起こす。図1Bに示されるとおり、バイアス角Bが、回転軸115に垂直に半径方向外向きに延在する(ページから出るように延在する)キャリア114(または124)の構造線LCに対するものである場合、スロット116(または126)は0度のバイアス角Bで方向付けられ得る。
【0028】
図1A、1Bおよび1Cに示されるとおり、キャリア124は、スロット126であって、遊星アクスル111の端部111Bが(アクスル端部112Aとは無関係に)スロット126に沿って移動することができるように、遊星アクスル111の端部111Bを保持するように構成されたスロット126を有し、バリエータ100の速度比の連続的な(無段)変化を提供するために、スキュー角ζの変化が傾斜角γ(ガンマ)の変化を引き起こすことを可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態において、キャリア114はキャリア124に対して回転可能である。他の実施形態において、キャリア124はキャリア114に対して回転可能である。キャリア114と124との間の相対的回転の角度は、望ましいスキュー角ζ(ゼータ)、標的傾斜角γ(ガンマ)、または望ましい速度比(SR)に基づき調整され得る。換言すると、キャリア114におけるスロット116がキャリア124におけるスロット126に対して異なる角度または向きを有する場合、キャリア114および124が互いに対して回転すると、遊星アクスル111の端部111A、111Bは、スロット116または126内で並進または回転することができ、傾斜角γ(ガンマ)の変化を引き起こすためにスキュー角(ζ)が遊星110に適用されるようになり、速度比(SR)の変化を引き起こす。遊星アクスル111の端部111A、111Bは、遊星アクスル111の線形運動および回転運動を可能にするように構成され得る。
【0030】
遊星アクスル111が、回転軸115が中心軸105と平行である(すなわち、傾斜角γ(ガンマ)=0)ように方向付けられているとき、遊星110をわたってリング112Bへ伝達される回転速度およびトルクは、リング112Aへ適用された回転速度およびトルク(摩擦、公差などを原因とする損失を引く)と実質的に均等である。動力がリングからリングへ(例えば、リング112Aからリング112Bへ、またはリング112Bからリング112Aへ)伝達され、遊星アクスル111が非ゼロの傾斜角(すなわち、傾斜角γ(ガンマ)が0より大きいか0未満である)で傾けられるとき、CVPは、アンダードライブまたはオーバードライブのいずれかで作動しているとみなされ、回転速度およびトルクは、何らかの他の比である。「アンダードライブ」という用語は、本明細書では、トランスミッションの入力から出力へのトルクの増加を引き起こす伝達比を指すために使用される。アンダードライブはまた、トランスミッションの入力から出力への回転速度の低下も指すことができ、「減速」とも呼ばれ得る。回転軸115が中心軸105と平行ではないように、遊星アクスル111が、0より大きい正の傾斜角γ(ガンマ)であるとき、リング112Bはトルクの増加および回転速度の低下を経験する。「オーバードライブ」という用語は、本明細書では、トランスミッションの入力から出力へのトルクの減少を引き起こす伝達比を指すために使用される。オーバードライブはまた、トランスミッションの入力から出力への回転速度の増加を指すこともでき、「加速」とも呼ばれ得る。遊星アクスル111が0より大きい負の傾斜角γ(ガンマ)であるとき、CVP100はオーバードライブであるとみなされ、リング112Bはトルクの減少および回転速度の増加を経験する。本原理は、スキュー力とスキュー方向との間の関係が一定であるという点で、動力経路がリングからリングへでも、リングから太陽へでも、または太陽からリングへでも適用される。
【0031】
傾斜角γ(ガンマ)の値(正または負を含む)は、キャリア114、124の使用を通じて制御され得る。キャリア114、124は、遊星アクスル111の端部111A、111B間の相対的回転角Ψ(プシー)を制御する構造である。キャリア114、124は、遊星位置と初期基準座標系との間の絶対的回転角度を制御する。第1および第2キャリア114、124間の相対的回転角の変化は、Ψ(プシー)または「キャリアシフト」と呼ばれ得る。キャリア回転は、例えば、「比シフト」または「ガンマシフト」とは異なる何かを指すことに留意されなければならない。さらに、「回転角」という用語は、本明細書では、キャリア114および124の間の相対的回転角を指すために使用される。理解を容易にするために、本文献全体にわたって、キャリア114は、バリエータの入力に配置されていると言われ、キャリア124は、バリエータの出力に位置すると言われる。キャリア114および124は、端部111A、111Bがスロット116、126に沿って並進することができ、さらに回転するか他の動きを経験することができるように、遊星アクスル111の端部111A、111Bを保持するように構成されたスロット116、126を有する。
【0032】
スロット116、126は各々、長さL、幅W、およびスロット角Θ(シータ)を有する。スロット116、126の長さは、キャリア114、124のピッチ直径(DP)の内部に延在する。スロット116、126の幅は、遊星アクスル111の端部111Aまたは111Bが並進または回転することを可能にする。しかしながら、任意のスロット116、126の幅が、全てのスロット116のための公差の外側にある場合、1つの遊星110が他の遊星110とは異なるように挙動することが可能であり、CVPの制御はより難しくなる。CVPを制御するのがより難しくなることの効果の1つは、CVPの効率の低下である。スロット角Θ(シータ)は、スキューガイド特徴部(すなわち、スロット116または126)の中心線、中心軸105に垂直である半径方向線LR、および牽引遊星110の配列のピッチ直径DPの投影された交差部(P)で決定され、投影面は中心軸105に垂直である。スロット角Θはまた、オフセット半径方向角度、スキュースロット角、または案内スロット角と呼ばれ得る。「半径方向」という用語は一般に、中心軸105に垂直である線、溝またはスロットを説明するものである。オフセット半径方向特徴部の第2の説明は、中心軸と同軸の非ゼロの半径の円に接する特徴部である。
【0033】
比回転は、スキュー角ζ(ゼータ)を遊星アクスル111に適用することにより制御され得る。スキューは、遊星軸115を含む平面から中心軸105を含む平面への角度を指す。スキュー角ζ(ゼータ)は、スキューガイド特徴部の投影と中心軸105に垂直である半径方向線LRとの間の夾角を指すことができ、投影面は中心軸105に垂直である。
【0034】
CVT100の正常な方向での作動中、キャリア114、124の形状は、傾斜角γ(ガンマ)が変化すると負のフィードバックを加え、これは、比変化中のシステム安定性に寄与する。1つのそのような負のフィードバック形状は、キャリア114であって、純粋に半径方向ではなく、代わりに、半径方向平面に対して角度が付いているキャリア案内スロット116または126の少なくとも1つのセットを備えたキャリア114を含む。スロット116の角度β(ベータ)は単数(すなわち一定)であってもよく、または、各半径方向インクリメントで異なってもよい。スロット116または126は真っ直ぐであっても曲がっていてもよい。有利には、角度が付いているスロット116または126は、正のスキュー角ζを相殺するために比角の正の変化を用いる。CVTが正方向(設計または転動方向とも呼ばれる)に回転しているとき、CVTのいずれのバイアスも対抗され、傾斜角γ(ガンマ)が達成されるまでCVTは望ましいスキュー角ζ(ゼータ)のままであり、CVTは安定的である。したがって、初期スキュー角入力のみが、標的傾斜角出力を達成するために必要である。
【0035】
ボールタイプバリエータが逆方向に作動する場合、望ましくない効果が生じ得る。すなわち、CVTが、転動方向におけるスキュー角ζ(ゼータ)を適用することにより傾斜角を誘導するように構成され、傾斜角γ(ガンマ)が変化するにつれてスキュー角ζ(ゼータ)を減少させるために負のフィードバックに依拠している場合、作動の方向が逆になり負のフィードバックが正のフィードバックになる(すなわち、傾斜角変化を誘導するスキュー角ζ(ゼータ)が、傾斜角γ(ガンマ)が変化するにつれて正に強化されるように、フィードバックが正になる)場合、CVTは不安定になり得、傾斜角γ(ガンマ)を極端なアンダードライブまたはオーバードライブ状態まで変化させ続け得る。
【0036】
図2Aおよび2Bは、一実施形態によるCVTの作動を示す図を示す。一般的な注釈として、実線はシステムへの能動的制御または入力を表し、破線は効果を表す。したがって、キャリア114または124の望ましい回転を引き起こすことを意図されたアクチュエータ位置の変化(例えば外部コマンド)は、実線により表され、一方で同じキャリア114または124がCVTの形状を原因として回転させられると、この移動は破線により表される。
【0037】
図2Aは、CVTにおける遊星アクスル111(およびしたがって遊星回転軸115)についての傾斜角γ(ガンマ)220およびスキュー角210の経時的変化を示すダイアグラムを示し、設計作動において作動しているCVTについてのスキュー角と傾斜角γ(ガンマ)との間の関係を示す。図2Aに示されるとおり、スキュー角210は、当該スキュー角が望ましいスキュー角210bに至るまで、第1期間210a中にはCVTにより制御される。それに応じて、傾斜角220は、標的傾斜角220bまで時間220aと共にスキュー角に「従い」、スキュー角210は、時間210cと共にゼロへ戻る210c。換言すると、設計方向での作動中、スキュー角210bを標的とするための、キャリア124または114に対するキャリア114または124の第1回転が、遊星アクスル端部111Aを第1方向に移動するように誘導し、スロット116および126の形状は、バリエータにおいてスキュー状態を生じさせるために、アクスル端部111Aを並進させる。スロット116および126の形状は、端部111Aがスロット116において標的傾斜角220bまで並進することを可能にする。最終的に、キャリア114または124の元の回転および、スロット116および126を原因とするアクスル端部111Aの角運動はオフセットされ、遊星アクスル111は標的傾斜角でゼロのスキュー角を有することになる。実際のスキュー角および望ましいスキュー角が等しく、遊星回転軸115が回転軸105に平行である場合、遊星アクスル角度は変化をやめる(すなわちシステムは安定的である)。図2Aはこの原理を示している。
【0038】
図2Bは、スキュー角および傾斜角γ(ガンマ)のダイアグラムを経時的に示し、逆の作動中のスキュー角と傾斜角との関係を示す。逆回転中、第1キャリア(例えば、キャリア114)がスキュー角(ポイント210bとして示される)を達成するために回転させられる場合、遊星回転軸115のスキュー状態は、遊星アクスル端部111Aを第1方向に回転させるが、スロット116は、遊星アクスル端部111Aが、線221により示されたとおり、さらに半径方向内向きに移動することを可能にし得る。スロット116は、設計方向における回転のためのスロット角Θ(シータ)で構成されることから、遊星アクスル端部111Aが半径方向内向きに移動するにつれて、スロット116は遊星アクスル端部111Aを第2方向に移動させる。スロット116により作り出されたこの動きは、線210dにより示される、第1キャリア114の元の回転を増加させることになる。遊星回転軸115のスキュー角210dは増加し、第1キャリア114における遊星アクスル端部111Aが半径方向内向きに移動するための推進力が増加することになる。図2Bは、この原理を示すダイアグラムを示す。最終的に、転動方向からの遊星回転軸115のスキュー角ζ(ゼータ)は、トランスミッショントルク損失が利用可能な駆動トルク克服することになるように、傾斜角を最大値223に到達させるように、最大値222まで増加することになる(すなわち、システムは不安定である)。さらに、シナリオがチェックされないままである場合、遊星であって、その回転軸が転動方向から過激に歪曲された遊星により引き起こされた摺動行動は、転動接点を破壊することがあり、または他の方法でCVTへの損傷を引き起こすことができ、これはCVTを故障させ得る。
【0039】
代替的に、逆回転中、第1キャリア114が反対方向に回転させられると、遊星回転軸115のスキュー角210は、第1キャリアスロット116における遊星アクスル端部111Aを半径方向外向きに移動させる。スロット116のスロット角Θ(シータ)は、設計方向における回転のために構成されていることから、遊星アクスル端部111Aが半径方向外向きに移動し、スロット116は遊星アクスル端部111Aを移動させる。スロット116により引き起こされるこの動きは、第1キャリア114の元の回転を増加させる(すなわち、第1キャリア114を同じ方向に付勢する)。遊星回転軸115のスキュー角210dは増加し、第1キャリア114の遊星アクスル端部111Aが半径方向外向きに移動するための推進力は、増加する。最終的に、遊星回転軸115のスキュー角ζ(ゼータ)は、トランスミッショントルク損失が利用可能な駆動トルクを克服することになるように、傾斜角γ(ガンマ)を値223に到達させるために値222に到達する。さらに、任意の遊星110であって、その回転軸115が転動方向から過激に歪曲された任意の遊星110により引き起こされた任意の摺動行動は、CVPの転動接点または他のコンポーネントと接触、CVPの転動接点または他のコンポーネントを損傷または破壊し得る。
【0040】
本明細書において開示された実施形態は、先行技術のこれらのおよび他の限界を克服し得る。実施形態は、スキュー制御およびキャリア114、124における角度が付いているスロットを用いてボールタイプバリエータにおける逆回転を可能にする。スキュー制御およびキャリア114および124における角度が付いているスロット116、126は、正転しているときの遊星軸角度変化に負のフィードバックを提供する。逆回転で作動しているとき、第2キャリア124に対する第1キャリア114の回転角は、転動方向に対する遊星回転軸115のスキュー角が制御されるように、能動的に制御される。例えば、逆回転中、遊星回転軸115の傾斜角γ(ガンマ)が、第1キャリア114Aでのアクスル端部111Aが少量だけ半径方向内向きに移動するように、調整されることを考える。図3Aおよび3Bは、スキュー角および傾斜角の図を経時的に示し、CVTが逆方向に作動しているときであってもどのように傾斜角γ(ガンマ)が変化し得るかを示す。
【0041】
本明細書において開示された逆回転中の傾斜角を制御するための実施形態は、アクチュエータへ通信可能に結合されたプロセッサと、プログラムまたはプロセッサにより実行され得る指示のセットを格納するメモリとを含み得る。プロセッサは、CVP、バリエータ、CVTサブアセンブリ、CVT、ドライブトレインまたはCVTを有する自動車を制御または管理する方法を実行し得る。
【0042】
図3Aは、CVTにおけるロールバックを制御するための方法の一実施形態を示すフローダイアグラムを示す。図3Aに示されるとおり、第1キャリア114の初期回転により、第1スキュー角310aが、第1傾斜角340bへの第1傾斜角変化率340aを引き起こす場合、第1スキュー角310bへの初期回転後に、アクスル端部111Aが半径方向内向きに移動する一方で、第1キャリア114は、角度が付いているスロット116が遊星回転軸115のスキューに対して有する効果を補償するために、第2のスキュー角変化率310cにより第2のスキュー角310dまで反対方向に回転することができ、スキュー角変化率310eは、望ましい時間の間、または傾斜角γ(ガンマ)が標的値340dを達成するまで、一定に保持される。スキュー角変化率310eは一定であるが、傾斜角340cは変化し得ることに留意されたい。換言すると、第1キャリア114のための回転角は、標的傾斜角に等しくない。望ましい移動がなされると、または、傾斜角γ(ガンマ)が標的傾斜角340eに近づくと、時計回り方向の第1キャリア114の追加的な回転310gが、遊星回転軸115を転動方向にゼロスキュー310hへ戻すために求められる。
【0043】
図3Bに示されるとおり、第1キャリア114の初期回転310aが第1傾斜角変化率340aでのCVPを第1傾斜角340bへ調節する場合、第1スキュー角310bへの初期回転後に、アクスル端部111Aが半径方向内向きに移動する一方で、第1キャリア114は、角度が付いているスロット116が遊星回転軸115のスキューに対して有する効果を補償するために、第2のスキュー角変化率310cにより反対方向に第2のスキュー角310dへ回転させられ得る。スキュー角変化率310は、シリーズ310e-1~310e-nを使用して、または傾斜角γ(ガンマ)が標的値340dを達成する(または標的値340dに近づく)まで調整され得る。望ましい移動がなされると、またはCVTが設計方向に作動されると、第1方向における第1キャリア114の追加的な回転310gが遊星軸115を転動方向にゼロスキュー310hへ戻し得る。傾斜角340は、別のコマンドのセットまで、標的傾斜角のままである。
【0044】
正方向に開始された、停止から開始されたまたは逆方向に開始されたCVTは、能動的制御アルゴリズムを使用して制御され得る。機械的ガンマフィードバックでの逆回転を可能にするスキュー制御に基づく遊星CVTのための制御論理は、例えば別の作動または先行する計測からの格納された値により現在の伝達比を決定すること、例えば最後に観察された回転変化および回転値、(速度および方向)から現在のスキューを決定すること、または現在の回転の方向および回転の速度を決定することを含み得る。回転方向が逆になる、またはゼロである、または逆と予期される場合、相対的キャリア角は、最後に既知のスキューおよび回転両の合計が、逆回転において下向きの回転を安全に開始し得るスキュー値をもたらすようなある位置へ回転させられ得る。CVTが逆方向に作動している限り、制御は、実際のスキュー方向および傾斜角ガンマの変化率ならびに回転方向を決定することと、選択された条件のためにスキューを修正することとを含み得る。
【0045】
図4は、CVTの傾斜角を制御するための一方法を示すフローダイアグラムを示す。図4に示されるとおり、遊星軸スキュー角および回転の方向の現在の値が得られ、負荷が監視され、比が望ましい方向に変化すると、後続の信号が、比変化の率を制御するために好適な量だけスキュー角を維持する、減少させるまたは逆にするために通信され得る。さらに、実施形態は、予防措置として逆方向において作動するように予め設定され得る。
【0046】
ステップ410において、プロセッサは、遊星軸スキュー角および回転の方向の現在の値についての情報を受信する、検知する、またはそうでなければ取得することができる。遊星軸スキュー角は、遊星軸スキュー角の変化率および遊星110の回転率を求めることにより既知となり得る。遊星軸スキュー角の変化率は、伝達比の変化率または他の相対的因子から求められ得る。転動表面のクリープ、および後続の転動速度の損失はトランスミッションのトルクおよび速度に関連していることから、遊星軸角度の変化率の算出は、一般に動力により影響を受ける。したがって、動力は、相対的因子のうちの1つである。回転方向は、誘導またはホール効果速度ピックアップなど2つのオフセット信号間の位相角の計測により求められ得る。回転方向はまた、伝達比の予期される変化に対する実際の変化の方向を観察することにより示され得る。例えば、第1キャリアが第2キャリアに対して比を増加させるように回転するように信号が入力されるが、代わりに比が減少する場合、これは、回転方向は予期される回転方向の反対であるという表示となり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、ステップ415はCVTへの負荷を監視することを含む。トランスミッションへのトルクは、制御経路における各要素で負荷を引き起こし、そのとき、制御要素におけるバックラッシおよびコンプライアンス、ならびにクリープ率の変化は結論に影響を及ぼし得ることに留意されたい。例えば、オーバードライブに向かって比を減少させるための信号がトランスミッションでの外部負荷/トルクの増加と同期している場合を例とする。キャリアの相対的角度の回転および後続の遊星軸のスキュー角の望ましい変化が、トランスミッションをオーバードライブに向かって回転させると予期され得る。しかしながら、かけられた負荷の増加は、実際のスキュー角を符号において反対にするために要素の十分な偏向を引き起こし得る。正の回転が予期された場合には、この結果は負の回転であり得る(または逆もまた同様である)。したがって、トランスミッションへの負荷は、回転方向が比の予期される変化に対する比の実際の変化から決定されることになる場合、監視および考慮され得る。
【0048】
ステップ420において、望ましいスキュー角を提供し、したがって標的傾斜角を達成するために、キャリア角を調整するために信号が送信される。正方向の作動条件下で、連続的で無段の伝達速度比を提供するために、ステップ410、415および420が連続的に実施される。
【0049】
逆方向の作動下で、ステップ410、415、420および425が、連続的で無段の伝達速度比を提供するために、連続的に実施される。特に、駆動方向が設計の反対であるときのゼロスキュー角からの遊星軸115のいずれの変化も、暴走移動を引き起こす可能性が高い場合がある(すなわち、1つまたは複数の遊星アクスル111の端部111Aまたは111Bが、正の比フィードバックを理由として比の極値のうちの1つに向かって、スロット116または126に沿って並進する傾向がある)。ステップ425において、キャリア回転を逆にするための信号がアクチュエータに送られる。逆の回転が遊星軸115をアンダードライブに向かって必ず動かすように、キャリア114または124が回転させられる場合、遊星110がアンダードライブに向かって移動するにつれ、一方または両方のキャリア114、124は、キャリア114または124におけるスロット116により引き起こされたアンダードライブ回転の正の強化を補償するために、オーバードライブ状態へと回転させられ得る。
【0050】
CVTは、停止から開始され得る。トランスミッションが停止する、または次のアクションが不確定であるときはいつでも、回転方向が逆である場合に減速に向かう回転をもたらす方向にスキューをオフセットするためのコマンドが、アクチュエータへ通信され得る。好ましい実施形態において、加工誤差または負荷を原因とするスキュー位置のドループを原因とするスキュー位置におけるいずれの不正確さも克服するのに十分な、回転方向が逆である場合に減速に向かう回転をもたらす方向にスキューをオフセットするためのコマンドがアクチュエータへ通信される。CVTが停止から開始され、CVTが正転方向に作動するように設定されるが、代わりに、逆回転方向に作動する場合、損傷が生じ得る。いくつかの実施形態において、ステップ430において、CVTは逆回転方向に作動するように予め設定される。その後、CVTが逆モードで作動される場合、コマンドがキャリア角を調整するために与えられてもよく(ステップ420)、実施形態は、安定的システムを維持するためにフィードバックを提供するために、遊星軸スキューの現在の値および回転の方向についての情報を得る(ステップ410)ためにCVTを監視することをすぐに始め得る。代替的に、CVTが正方向に作動される場合、キャリア114および124のスロット116または他の形状は、安定的システムを維持するために正のフィードバックをすぐに提供する。有利には、システムに対する損傷の可能性は低下する。
【0051】
いくつかの実施形態において、信号(例えば、ステップ420または425において送信される信号、またはステップ415における負荷を監視することにより得られる情報)が、CVTの現在のスキュー角を維持するためにアクチュエータに送信され得る。アクチュエータは、後続の信号がアクチュエータへ通信されるまで、このスキュー角を維持し得る。回転は、キャリア114または124に結合されたアクチュエータへ信号を送信するプロセッサにより達成され得る。いくつかの実施形態において、アクチュエータは、キャリア114および124の両方に結合されてもよく、スキュー角を変化させることには、キャリア114および124の回転位置を連係させることを含み得る。
【0052】
アクチュエータにより負のフィードバックが提供される率は、正方向運転においてフィードバックがスロットにより提供される率より大きい。例えば、スロットにより提供されるフィードバックは、とりわけスロットの幅に依存する。したがって、スロットの幅が広いほど、提供するフィードバックは少なくなり得る。他の実施形態において、負のフィードバックの量は、CVPの速度、CVPの速度比(SR)、CVPの傾斜角、または望ましくない作動状態へ調整するCVPの可能性へ影響を及ぼすと決定された他のパラメータに加えてスロットのパラメータに基づき得る。したがって、CVPが高速で作動しており、スロット116、126がより大きい公差を有している場合、より多くのフィードバック(より高い周波数またはより大きい規模を含む)が損傷を防ぐために必要とされ得るが、低速またはよりタイトな公差で運転しているCVPはフィードバックをあまり必要としない場合がある。
【0053】
上で開示されたとおり、能動的制御アルゴリズムを用いるシステムは、CVTをいずれかの回転方向に安定化させるために有用であり得る。初期回転後に連続的な調整を使用することによりロールバックを制御することに加えて、実施形態は、ロールバックの原因となり得る条件を制御するためのシステムを含み得る。いくつかの実施形態において、スロットの第3セットを備えた第3プレートがタイミングプレートとして使用されてもよい。タイミングプレートは、複数の遊星110内の各遊星110の比角およびスキュー角を部分的に同期させ得る。
【0054】
図5A、5Bおよび5Cは、キャリア114およびタイミングプレート510の図を示す。キャリア124は図示されないが、キャリア114およびキャリア124は同様であり、同一であってもよいことに留意されるべきである。したがって、単純さおよび理解の容易さのために、キャリア114のみがここでは説明される。同様に、キャリア114およびタイミングプレート510は図5Aおよび5Bにおいて鏡像として示されることに留意されるべきである。しかしながら、これは、説明の容易さのためのみでありタイミングプレート510の寸法は異なっていてもよい。例えば、タイミングプレート510の厚さはキャリア114のための厚さ未満であってもよく、スロット516のための角度の値は、スロット116のための角度の値より大きい、より小さいまたは同じであってもよく、スロット516の幅(W516)はスロット116の幅(W116)より大きい、より小さいまたは同じであってもよく、スロット516の長さ(L516)は、スロット116の長さ(L116)より長くても短くてもよい、などである。いくつかの実施形態において、スロット516の幅W516は、公差であって、スロット116または126が正方向および逆方向作動において遊星アクスル端部111Aまたは111Bを制御するための主構造であり、スロット516が逆の作動における暴走または他の効果を防ぐためのものであるように選択された公差を有する。いくつかの実施形態において、スロット516の角度、幅またはいくつかの他のパラメータの値は、スロット116または126が正方向作動において遊星アクスル端部111Aまたは111Bを制御するための主構造であり、スロット516が、逆の作動における暴走または他の効果を防ぐことを意図されているように選択される。
【0055】
図5Cおよび5Dは、キャリアプレート114Aおよび114Bの間に挿入された浮揚性タイミングプレート510を介した制御を伴うキャリアプレート114Aおよび114Bを含むシステムの一実施形態の図を示す。図5Cおよび5Dに示されるとおり、遊星アクスル111はタイミングプレートスロット516を通って延在し、キャリアスロット(例えば、キャリアスロット116Aおよび116B)に係合する。タイミングプレートスロット516と対応するキャリアスロット116との間の角度(B)がゼロ以外である場合、遊星アクスル111の一端(111Aまたは111B)は、タイミングプレートスロット516およびキャリアスロット116の交差部(L)に位置付けられ得る。この構成において、タイミングプレート510は、任意の単一の遊星アクスル111が他の遊星アクスル111から方向が反れることを防ぐ、または、各遊星アクスル111を複数の遊星アクスル111についての総角度の公差内の角度に維持するなど、キャリアスロット116に沿った遊星アクスル111の移動を制御するために有用であり得る。例えば、総角度が25度である場合、実施形態は、全てのアクスルが22度~28度の角度であることを確実にし得る。キャリア114、124の各々におけるスロット516が、遊星110の配列内の各遊星アクスル111の端部の間の角度間隔を同期させることが効率的な正方向作動のために有利である。本明細書において開示された実施形態は、タイミングプレート510がキャリア(114または124)のいずれかの作動を妨害することを防ぐために、タイミングプレートスロットにおいて十分な量の隙間またはバックラッシを提供する。
【0056】
駆動角(アルファ)は、タイミングプレートスロット516の各々の投影と、線515であって、中心軸に対して半径方向であるとともに遊星の配列のピッチ直径でタイミングプレートスロット516の中心を横切る線515との間の角度を指し、投影面は中心軸105に垂直である。ブロッキング角(B)は、本明細書で使用する場合、タイミングプレートスロット中心線の投影と、タイミングプレートスロット中心線、キャリア案内スロット中心線および遊星の配列のピッチ直径の交差部でのキャリアスロット中心との間の角度を指すことができ、投影面は中心軸に垂直である。最適ブロッキング角は、タイミングプレートスロット516がキャリアスロット116および126に対して90°(回転方向の反対)であるときに生じる。
【0057】
タイミングプレート510は、自走しても、キャリア(例えば、キャリア114または124)に対して接地されていてもよい。タイミングプレート510が自走する実施形態において、その角度位置は、遊星アクスル111の配列の力の総和により決定され得る。好ましい実施形態において、タイミングプレート510におけるスロット516のための駆動角は、理想的には半径方向から90°未満となる。有利には、タイミングプレート510は、比角の変化をブロックすることにより比またはスキューにおける大きい誤差を防止することができる。好ましい実施形態において、ブロッキングおよび駆動のための二重の考慮から、タイミングプレートスロット516は、ブロッキング角が30°以上(半径方向線に対して、および設計回転方向に)であり、駆動角が45°以下(半径方向線に対して、設計回転方向の反対に)であるように構成される。
【0058】
いくつかの実施形態において、半径方向スロット516を有するタイミングプレート510は、遊星110の配列における各遊星110が遊星のセットの制御された比角内および遊星110のセットの限られたスキュー角内にあることを確実にすることにより、制御を高め得る。タイミングプレート510は、半径方向スロット516を備えた回転自在ディスクであり得る。いくつかの実施形態において、タイミングプレート510は、キャリア半部114および124の間に軸方向に位置付けられ得る。遊星アクスル111の各々は、駆動部の一端でキャリア案内スロット116または126に係合する前に、タイミングプレート510を通過する。タイミングプレートスロット516の公差は、キャリアスロット116または126が、アクスル111の主制御部および遊星110のための主円周方向整列特徴部であることを可能にする。いくつかの実施形態において、公差は、最大で3度の偏向を可能にする。他の実施形態において、公差は最大で5度の偏向を可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態において、オフセット半径方向スロット516を有するタイミングプレート510が、遊星110の配列における全ての遊星アクスル111について各遊星アクスル111が複数の遊星の平均比角の制御された比角内および複数の遊星の平均比角の限られたスキュー角内にあることを確実にすることにより、制御を高め得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、タイミングプレート510は、オフセット半径方向スロット516が中に形成されたディスクを含むことができ、キャリア114または124のうちの1つの軸方向外側に位置付けられてもよく、遊星110に対してその軸方向位置において反対側にあるキャリア114または124により駆動されてもよい。遊星アクスル111の各々は、キャリア案内スロット116または126を通って延在するとともに、タイミングプレートスロット516に係合する。この構成において、タイミングプレートスロット516はより大きい公差を有する。しかしながら、キャリア案内スロット116または126は、遊星アクスル111が、タイミングプレートスロット516を遊星110のための主円周方向整列特徴部となることを可能にするのに十分な公差を有する。タイミングプレートスロット516の角度は、キャリア114および124の両方におけるキャリア案内スロット116および126の角度に応じて決定され得る。
【0061】
自走タイミングプレート510のためのオフセット半径方向スロット角の選択に影響を及ぼし得る考慮がある。これらの考慮は、限定するものではないが、タイミングプレート駆動トルクの最小化、同期力の最大化、およびバックラッシまたは可能とされる同期誤差の最小化を含む。これらの考慮に影響を及ぼし得るいくつかの因子は、キャリア案内スロット半径方向間隔についての製造バリエーションおよび公差帯、キャリア案内スロット幅、タイミングプレート案内スロット半径方向間隔、タイミングプレート案内スロット幅、およびアクスルまたはアクスルエンドキャップ直径を含む。制御因子、例えば、逆の作動における望ましい静止スキュー値または最小の望ましい連続的なスキューはまた、タイミングプレートオフセット半径方向角度設計において関心の対象となり得る。
【0062】
いくつかの構成において、タイミングプレートに近接して位置付けられた(すなわち、複数の遊星の軸方向に同じ側に置かれた)キャリアにより駆動されるタイミングプレートを有することが必要または望ましい場合がある。これらの構成において、第1方向における駆動プレートの角運動が反対方向におけるタイミングプレートの角運動により相殺されるように、タイミングプレートおよび駆動プレートはある機構を介して結合され得る。いくつかの実施形態において、タイミングプレートは歯の第1セットを備えた第1歯車を有することができ、キャリアは、歯の第1セットと噛み合うための歯の第2のセットを備えた第2歯車を有し得る。キャリアが回転すると、歯の第2のセットが第1歯車の歯の第1セットと係合すると同時に第2歯車が第1方向に回転し、これは、タイミングプレートを付勢させるために第1歯車を反対方向に回転させる。他の機構も可能である。
【0063】
逆の作動が可能なCVTにおけるロールバックを制御するためのタイミングプレートを製造する方法は、タイミングプレートにおいて複数のタイミングプレートスロット(例えば、スロット516)を形成するステップであって、複数のタイミングプレートスロットが複数のキャリア案内スロット(例えば、スロット116または126)に対してある角度で形成されるステップを含み得る。角度は、同期力(すなわち、1つまたは複数の暴走遊星が遊星の配列に影響を及ぼすのを防ぐのに必要な力)を最適化するための分析に基づき決定され得る。いくつかの実施形態において、複数のタイミングプレートスロットを形成するステップは、タイミングプレートスロットと半径方向線との間の角度(b)を決定することを含み、両方は、遊星配列ピッチ半径で、0°の角度で(すなわち遊星軸に垂直に)交差する。角度は、スキューまたは傾斜力(すなわち、望ましいスキュー角または傾斜角に影響を及ぼすために必要な力)を最小化するために、基準の分析に基づき決定され得る。いくつかの実施形態において、方法は、30°~60°のタイミングプレートスロットと半径方向線との間の角度を決定することをさらに含んでもよく、両者は遊星配列ピッチ半径で交差する。角度は、先行する因子のいずれかの間での譲歩に基づき決定され得る。さらに、いくつかの実施形態において、タイミングプレートスロットと半径方向線との間の角度は、両方が0°~80°の遊星配列ピッチ半径で交差する場合、全ての前述の因子の最大可能な寄与のために保護される。
【0064】
いくつかの実施形態において、設計と反対の回転のための標的とされた連続作動状態は、CVPの入力端に最も近い遊星アクスルまたは遊星アクスルエンドキャップが入力キャリアの案内スロットの真ん中の極限に接触するような位置を含む。いくつかの実施形態において、スキュー角は、遊星の配列における遊星の各々のための減速回転力を維持するのに必要とされる最小角度に限られ得る。最小スキュー角は、加工公差(誤差または他のバリエーションを含む)に基づき決定されてもよく、さらに外部負荷の変化または比ドループの主原因となり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、遊星の配列の1つを除いて全てが、少量の正のスキューで保持されてもよく、これは、システムがオーバードライブ方向に比を徐々に変化させることを可能にする。残りの遊星は少量の負のスキューで、ある位置に保持され得る。しかしながら、負のスキューを有する遊星は、追加的な負のスキューを有することも、残りの遊星の正のスキューを否定することも妨げられる。
【0066】
本明細書において開示された実施形態は、それらが遊星タイプ連続可変トランスミッションに関連するものとして説明された。さらに、実施形態は、動力がシャフトを通じて入力されている状態で図示された。しかしながら、当業者であれば、本明細書において説明された概念および特徴は、動力がリングまたはリングとシャフトとのいくつかの組合せを通じて入力されることを含む他の設定にも当てはまり得ることを認めるだろう。さらに、本明細書において開示された実施形態は、正方向または逆方向のいずれかにおいて作動することができるドライブトレイン、連続可変トランスミッション、バリエータなどを提供するために、別個に、または他の実施形態と組み合わせて使用され得る。当業者であれば、これらの概念は他の設定においても同様に有用であることができ、したがって、限定されるものではないことを認めるだろう。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D