IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヴァレオジャパンの特許一覧

<>
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図1
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図2
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図3
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図4
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図5
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図6
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図7
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図8
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図9
  • 特許-車両用の空調ユニットの締結構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】車両用の空調ユニットの締結構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019008985
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020117034
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274152(JP,A)
【文献】特開平10-305723(JP,A)
【文献】特開2001-047854(JP,A)
【文献】実開昭54-183857(JP,U)
【文献】実開昭52-035034(JP,U)
【文献】実開平02-088811(JP,U)
【文献】実開昭61-179017(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1684154(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機器を収容する内部空間(12)を有する空調ケース(11、111、211)を備え、
前記空調ケース(11、111、211)は、第1ケース部材(26)と、第2ケース部材(27)と、前記第1ケース部材(26)と前記第2ケース部材(27)との間に配置される中間ケース部材(28)とを有するとともに、ネジ座面(31a、34a)を有するネジ頭部(31、34)と当該ネジ座面(31a、34a)から突立されて表面にネジ加工されたネジ軸部(32、35)を有する締結具(30、31)によって連結され、
前記第1ケース部材(26)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記締結具(30、33)のうち第1締結具(30)のネジ頭部(31)のネジ座面(31a)が着座する第1座面(40a)を含む第1フランジ部(40)を有し、
前記第2ケース部材(27)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線上に配置されて、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)が挿入可能に構成された第1ボス部(49)を有する車両用の空調ユニット(10、110、210)において、
前記中間ケース部材(28)は、前記第1ケース部材(26)と隣接する側に設けられ、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線上に配置されて、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)が挿入された中間ボス部(43)と、
前記第2ケース部材(27)と隣接する側に設けられ、前記締結具(30、33)のうち第2締結具(33)のネジ頭部(34)のネジ座面(34a)が着座する第2座面(46a)を含む第2フランジ部(46)とを有し、
更に、前記第2ケース部材(27)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)の軸線上に配置されて、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)が挿入された第2ボス部(52)を有して、
前記第1ケース部材(26)の第1フランジ部(40)と前記中間ケース部材(28)の中間ボス部(43)とを連結するために用いる前記第1締結具(30)と、前記中間ケース部材(28)の第2フランジ部(46)と前記第2ケース部材(27)の第2ボス部(52)とを連結するために用いる前記第2締結具(33)とを同一形状の締結具とすると共に、
前記第1締結具(30)を、前記第1ケース部材(26)と前記第2ケース部材(27)とを直接的に連結するときに、前記第1ケース部材(26)の第1フランジ部(40)と前記第2ケース部材(27)の第1ボス部(49)とを連結するために用いることを可能としたことを特徴とする車両用の空調ユニットの締結構造。
【請求項2】
前記第1フランジ部(40)の第1座面(40a)の拡がり方向と、前記第2フランジ部(46)の第2座面(46a)の拡がり方向とは、略並行であることを特徴とする請求項1に記載の車両用の空調ユニットの締結構造。
【請求項3】
前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線と、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)の軸線とは並行であり、
前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)の軸線方向において、前記第1フランジ部(40)と前記中間ボス部(43)とで成す投影領域と、前記第2フランジ部(46)とは重複しない
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1つに記載の車両用の空調ユニットの締結構造。
【請求項4】
前記第2ケース部材(27)の第2ボス部(52´、52)は、前記第1ボス部(49´、49)でもあり、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線と、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)の軸線とは非並行であることを特徴とする請求項1に記載の車両用の空調ユニットの締結構造。
【請求項5】
前記第1フランジ部(40)、前記中間ボス部(43)、前記第2フランジ部(46)、前記第1ボス部(49)および前記第2ボス部(52、52´)は、前記空調ケース(11、111、211)の外面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両用の空調ユニットの締結構造。
【請求項6】
前記第1ケース部材(26)は、外観を形成する外形部(26a)から前記内部空間(12)へ前記第1締結具(30)の軸線に沿って凸状に延伸し、頂部(57)を有する筒状の第1補強部(56)を備え、
前記第2ケース部材(27)は、外観を形成する外形部(27a)から前記内部空間(12)へ前記第2締結具(33)の軸線に沿って凸状に延伸し、頂部(59)を有する筒状の第2補強部(58)を備え、
前記中間ケース部材(28)は、前記第1補強部(56)と前記第2補強部(58)とに隣接する中間補強部(61)を備え、
前記第1フランジ部(40)は前記第1補強部(56)の前記頂部(57)に設けられ、
前記中間ボス部(43)及び前記第2フランジ部(46)は前記中間補強部(61)に設けられ、
前記第1ボス部(49)と前記第2ボス部(52)とは前記第2補強部(58)の前記頂部(59)に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両用の空調ユニットの締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される空調ユニットの空調ケースを構成するケース部材を締結するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、室内空間が小さいため低い空調能力でも足りる車両と、室内空間が大きいため高い空調能力を要する車両とがある。そして、それぞれの車両に、要求される空調能力を満たすための空調装置が搭載されており、多くの場合、空調装置の体格や寸法も異なるものとなっている。
【0003】
一方で、車両用の空調ユニットの製造コスト削減のために、空調ユニットの構成部品の共通化が図られている。例えば、上記した体格や寸法が異なる空調装置に対し、共通の空調ケースを利用する技術が提案されている。
【0004】
すなわち、特許文献1に示されるように、基本となる2つのケース部材を共通化し、これらの2つのケース部材の間に中間ケース部材を介在させたり、介在させなかったりすることにより、要求される空調能力の違いに応じて、車両用の空調ユニットの空調ケースの幅方向寸法を異ならせることを可能にした車両用の空調ユニットが開発され、開示されている。
【0005】
また、車両用の空調ユニットの組み付け性の向上のため、特許文献2に示されるように、空調ユニットのケースを積層して組み付け可能な構成が検討されている。
【0006】
ここで、特許文献1に示される空調ユニットにおける、基本となる2つのケース部材の間に中間ケース部材を介在した場合の各ケース部材の締結の一例を概説する。基本となる一方のケース部材(第1ケース部材)は、中間ケース部材の側に、締結具が挿通可能な孔を有する第1、第2のフランジ部を備える。そして、基本となる他方のケース部材(第2ケース部材)は、中間ケース部材の側、かつ、前記一方のケース部材が備える第1、第2のフランジ部の軸方向に延びるように、前記締結具を固定するネジ孔を有する第1、第2のボス部を備える。更に、中間ケース部材は、当該中間ケースの全幅(第1ケース部材の側と第2ケース部材との間の側)にわたり、かつ、前記一方のケース部材が備える第1、第2のフランジ部の軸方向に延びるように、前記締結具が挿入される孔を有する第1,第2の中間ボス部を備える。これらのケース部材を、基本となる2つのケース部材の一方、中間ケース部材、基本となる2つのケース部材の他方の順に組み合わせた後、一の締結具を第1のフランジ、第1の中間ボス、第1のボス部の順に挿通させ、他の締結具を第2のフランジ、第2の中間ボス、第2のボス部の順に挿通させることで、前記3つのケース部材を締結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-274152号公報
【文献】特開2004-343192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示される空調ユニットでは、基本となる2つのケース部材を中間ケース部材を介在させて接続する場合、ネジ軸部の寸法が長い締結具を用いて締結する必要がある。一方、基本となる2つのケース部材を中間ケース部材を介在させずに接続する場合、ネジ軸部の寸法が短い締結具を用いて締結する必要がある。このように、中間ケース部材の有無に応じて締結具を変更する必要があり、構成部品の共通化に関して改善の余地があった。
【0009】
さらに、空調ユニットの自動組立化の観点でも、中間ケース部材の有無にかかわらず同じ形状の締結具を利用して組立工程を設計することが好ましいところ、特許文献1に示される空調ユニットでは中間ケース部材の有無に応じて締結具を変更する必要があり、改善の余地があった。
【0010】
なお、これらのケース部材をネジ式の締結具で締結する代わりに、中間ケース部材の第1,第2の中間ボス部を肉厚の薄いボス部に変更したうえで、隣り合うケース部材のフランジ部やボス部を周知のU字状のクリップで締結することも考えられるが、ネジ式の締結具で締結する場合よりも、締結力が弱いという不具合や締結後に外れやすいという不具合が懸念される。
【0011】
本発明は、ネジ式の締結具を用いて第1ケース部材と第2ケース部材とを直接的に、あるいは中間ケース部材を介して間接的に接続する車両用の空調ユニットにおいて、中間ケース部材の有無によらず同一形状の締結具を用いることが可能な締結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の車両用の空調ユニットの締結構造は、空調機器を収容する内部空間(12)を有する空調ケース(11、111、211)を備え、前記空調ケース(11、111、211)は、第1ケース部材(26)と、第2ケース部材(27)と、前記第1ケース部材(26)と前記第2ケース部材(27)との間に配置される中間ケース部材(28)とを有するとともに、ネジ座面(31a、34a)を有するネジ頭部(31、34)と当該ネジ座面(31a、34a)から突立されて表面にネジ加工されたネジ軸部(32、35)を有する締結具(30、31)によって連結され、前記第1ケース部材(26)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記締結具(30、33)のうち第1締結具(30)のネジ頭部(31)のネジ座面(31a)が着座する第1座面(40a)を含む第1フランジ部(40)を有し、前記第2ケース部材(27)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線上に配置されて、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)が挿入可能に構成された第1ボス部(49)を有する車両用の空調ユニット(10、110、210)において、前記中間ケース部材(28)は、前記第1ケース部材(26)と隣接する側に設けられ、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)の軸線上に配置されて、前記第1締結具(30)のネジ軸部(32)が挿入された中間ボス部(43)と、前記第2ケース部材(27)と隣接する側に設けられ、前記締結具(30、33)のうち第2締結具(33)のネジ頭部(34)のネジ座面(34a)が着座する第2座面(46a)を含む第2フランジ部(46)とを有し、更に、前記第2ケース部材(27)は、前記中間ケース部材(28)と隣接する側に設けられ、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)の軸線上に配置されて、前記第2締結具(33)のネジ軸部(35)が挿入された第2ボス部(52)を有して、前記第1ケース部材(26)の第1フランジ部(40)と前記中間ケース部材(28)の中間ボス部(43)とを連結するために用いる前記第1締結具(30)と、前記中間ケース部材(28)の第2フランジ部(46)と前記第2ケース部材(27)の第2ボス部(52)とを連結するために用いる前記第2締結具(33)とを同一形状の締結具とすると共に、前記第1締結具(30)を、前記第1ケース部材(26)と前記第2ケース部材(27)とを直接的に連結するときに、前記第1ケース部材(26)の第1フランジ部(40)と前記第2ケース部材(27)の第1ボス部(49)とを連結するために用いることを可能としたことを特徴としている。
【0013】
このように、第1ケース部材と第2ケース部材との間に中間ケース部材を配置して連結(締結)するときに、第1ケース部材の第1フランジ部と中間ケース部材の中間ボス部とを連結するために用いる第1締結具と中間ケース部材の第2フランジ部と第2ケース部材の第2ボス部とを連結するために用いる第2締結具とを共通にすることが可能である。
また、前述した第1締結具について、第1ケース部材と第2ケース部材とを直接的に連結(締結)するときに、第1ケース部材の第1フランジ部と第2ケース部材の第1ボス部とを連結するために用いることも可能である。
このため、利用する締結具を中間ケース部材の有無に関わらず、1種類とすることができる。
【0014】
請求項2に記載の空調ユニットの締結構造にあっては、前記第1フランジ部の第1座面の拡がり方向と、前記第2フランジ部の第2座面の拡がり方向とは、略並行であることを特徴としている。
【0015】
これにより、第1座面の拡がり方向と第2座面の拡がり方向とが略並行であるので、第1締結具のネジ頭部と第2締結具のネジ頭部とは略同じ姿勢で空調ケースに取り付けられる、すなわち2つの締結具は略同じ方向から取り付けられるから、空調ケースの自動化した工程での締結を効率良く行うことができる。
【0016】
請求項3に記載の空調ユニットの締結構造にあっては、前記第1締結具のネジ軸部の軸線と、前記第2締結具のネジ軸部の軸線とは並行であり、前記第2締結具のネジ軸部の軸線方向において、前記第1フランジ部と前記中間ボス部とで成す投影領域と、前記第2フランジ部とは重複しないことを特徴としている。
【0017】
これにより、第2締結具のネジ軸部の軸線方向において、中間ケース部材に設けられた第2フランジ部が、第1ケース部材の第1ボス部及び中間ケース部材の中間ボス部の投影領域と重複しない位置に形成されているので、第2締結具を第1ケース部材の第1ボス部及び中間ケース部材の中間ボス部と干渉することなく第2フランジ部へ直線的に移動させることができる。また、第2締結具のネジ軸部を第2ケース部材の第2ボス部に固定するための棒状の工具を配置することができる。
よって、空調ケースの自動化した工程での締結を効率良く行うことができる。
【0018】
請求項4に記載の空調ユニットの締結構造にあっては、前記第2ケース部材の第2ボス部は、前記第1ボス部でもあり、前記第1締結具のネジ軸部の軸線と、前記第2締結具のネジ軸部の軸線とは非並行であることを特徴としている。
【0019】
これにより、第1ケース部材の第1フランジ部と締結するための第1ボス部と、中間ケース部材の第2フランジと締結するための第2ボス部とを共通にして、第2ケース部材に形成するボス部の数の増加を抑制することができる。
【0020】
請求項5に記載の空調ユニットの締結構造にあっては、前記第1フランジ部、前記中間ボス部、前記第2フランジ部、前記第1ボス部、および前記第2ボス部は、前記空調ケースの外面に設けられていることを特徴としている。
【0021】
このように、第1ケース部材、第2ケース部材を間に中間ケース部材を配置しつつ締結具を用いて連結(締結)するにあたって、空調ケースとして強固且つ簡易に組み付けるためには、第1フランジ部、中間ボス部、第2フランジ部、第1ボス部、第2ボス部は、空調ケースの外面に設けることが望ましい。
【0022】
請求項6に記載の空調ユニットの締結構造にあっては、前記第1ケース部材は、外観を形成する外形部から前記内部空間へ前記第1締結具の軸線に沿って凸状に延伸し、頂部を有する筒状の第1補強部を備え、前記第2ケース部材は、外観を形成する外形部から前記内部空間へ前記第2締結具の軸線に沿って凸状に延伸し、頂部を有する筒状の第2補強部を備え、記中間ケース部材は、前記第1補強部と前記第2補強部とに隣接する中間補強部を備え、前記第1フランジ部は前記第1補強部の前記頂部に設けられ、前記中間ボス部及び前記第2フランジ部は前記中間補強部に設けられ、前記第1ボス部と前記第2ボス部とは前記第2補強部の前記頂部に設けられていることを特徴としている。
【0023】
このように、第1ケース部材の第1補強部に第1フランジ部を設け、第2ケース部材の第2補強部に第1ボス部と第2ボス部とを設け、中間ケース部材の中間補強部に中間ボス部と第2フランジ部とを設けたことにより、第1ケース部材、第2ケース部材及び中間ケース部材を更に強固に連結させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上に述べたように、本発明によれば、ネジ式の締結具を用いて第1ケース部材と第2ケース部材とを直接的に、あるいは中間ケース部材を介して間接的に接続する車両用の空調ユニットにおいて、中間ケース部材の有無によらず同一形状の締結具を用いることが可能な締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は、本発明の実施例1を示す図で、3つのケース部材からなる空調ユニットを備えた車両用の空調装置の斜視図、(b)は、図1(a)の空調ユニットの外面の締結構造を締結具の軸方向から見た部分図、(c)は、図1(a)の空調ユニットの外面の締結構造を締結具の径方向から見た部分図である。
図2図1(a)の空調ユニットの外面の締結構造を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図3】(a)は、図1(a)の空調ユニットを、補強機構を中心に示した断面図、(b)は、図3(a)の空調ユニットの補強機構を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図4】(a)は、図1(a)の空調ユニットのうち中間ケース部材を用いずに2つのケース部材で構成した空調ケースを備える車両用の空調装置の斜視図、(b)は、図4(a)の空調ユニットの外面の締結構造を締結具の軸方向から見た部分図、(c)は、図4(a)の空調ユニットの外面の締結構造を締結具の径方向から見た部分図である。
図5図4(a)の空調ユニットの外面の締結構造を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図6】(a)は、図4(a)の空調ユニットを、補強機構を中心に示した断面図、(b)は、図6(a)の空調ユニットの補強機構を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図7】(a)は、本発明の実施例2を示す図で、3つのケース部材からなる空調ユニットの外面の締結部分を締結具の径方向且つケース部材の側方から見た部分図、(b)は、図7(a)の空調ユニットの外面の締結構造を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図8】(a)は、図7(a)の空調ユニットのうち中間ケース部材を用いずに2つのケース部材で構成した空調ケースの外面の締結構造を締結具の径方向且つケース部材の側方から見た部分図、(b)は、図8(a)の空調ユニットの外面の締結構造を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図9】(a)は、本発明の実施例3を示す図で、図1(a)の空調ユニットの変形例を、前記補強機構を中心に示した断面図、(b)は、図9(a)の空調ユニットの補強機構を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
図10】(a)は、図9(a)の空調ユニットのうち中間ケース部材を用いずに2つのケース部材で構成した空調ケースを、補強機構を中心に示した断面図、(b)は、図10(a)の空調ユニットの補強機構を自動化した工程により形成する手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0027】
図1(a)及び図4(b)において、本発明の実施例1の車両用の空調装置1、1´の外観について車両の斜め後方から見た状態が示されている。車両用の空調装置1は、この発明では、ブロアユニット2と空調ユニット10、10´とが車両左右方向に並んで配置された横置き型が一例として示されている。図1に示される車両用の空調装置1は、室内空間が広い車両に搭載され、相対的に高い空調能力の求めに応じた空調装置である。図4に示される車両用の空調装置1´は、室内空間が狭い車両に搭載され、相対的に高い空調能力が求められない空調装置である。
【0028】
図1図4のブロアユニット2は、外気導入口と内気導入口6とが適宜開口され、外気導入口から導入する外気と、内気導入口6から導入する内気とを適宜するための内外気切換ドアが収容された上側ケース部材4と、送風機が収容された下側ケース部材5とからなるブロアケース3を有している。送風機は、回転軸を有するモータと、この回転軸に取り付けられた送風ファンとを有する。図1図4では、外気導入口は車両前方に向いた状態にある。内外気切換ドア及び送風機は、図示を省略する。
【0029】
図1図4の空調ユニット10、10´は、ブロアユニット2と直接的または間接的に連通しているもので、図3図6に示されるように、空調機器を収容する内部空間12を有する空調ケース11、11´を備えている。空調ケース11、11´の内部空間12に収容される空調機器は、例えば、エバポレータ等の冷却用熱交換器と、冷却用熱交換器より下流側のヒータコア等の加熱用熱交換器と、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器との間に配置されて、冷却用熱交換器で冷却された空気を加熱用熱交換器に送って加熱する割合と加熱用熱交換器をバイパスする割合とを調整するエアミックスドアとが挙げられる。
【0030】
図1図4の空調ユニット10、10´は、に、送風空気を吹出す空気吹出口である右センタベント開口部17、左センタベント開口部18、右サイドベント開口部19、左サイドベント開口部20、デフロスタ開口部21、フット開口部22、22が形成された空調ケース11、11´を備える。そして、これらの開口部17、18、19、20、21及び22から吹き出される空気の割合が所定の吹出モードドア(図示せず。)により制御される。
【0031】
(高い空調能力の求めに応じた空調ユニットの空調ケースの態様)
図1の空調ユニット10では、図2から図3でも示されるように、空調ケース11は、車両の幅方向の左側に位置する第1ケース部材26と、車両の幅方向の右側に位置する第2ケース部材27と、これらのケース部材26、27の間に配置される中間ケース部材28とを、第1締結具30及び第2締結具33を用いて連結(締結)することで構成されている。第1締結具30は、ネジ座面31aを有するネジ頭部31と、ネジ座面31aから突立されて表面にネジ加工されたネジ軸部32とを有している。第2締結具33は、ネジ座面34aを有するネジ頭部34と、ネジ座面34aから突立されて表面にネジ加工されたネジ軸部35とを有している。
【0032】
第1ケース部材26は、中間ケース部材28に隣接する側縁に、立壁261が該第1ケース部材26の外面から突出形成されている。第2ケース部材27は、中間ケース部材28に隣接する側縁に、立壁271が該第2ケース部材27の外面から突出形成されている。中間ケース部材28は、ケース部材26、27に隣接する両側縁に、立壁281、282が該中間ケース部材28の外面から突出形成されている。立壁261と立壁281、立壁282と立壁271とは、ケース部材26、27、28を連結したときに当接することができる。
【0033】

第1ケース部材26の立壁261に、第1フランジ部40が形成されている。第1フランジ部40は、第1ケース部材26に突出形成された立壁261から更に突出している。これにより、第1フランジ部40は、空調ケース11の外面に設けられたものとなっている。第1フランジ部40は、立壁261の厚みと同じ厚みを有しており、この厚み方向に第1締結具30のネジ軸部32が挿入する、ネジ加工されていない貫通孔41を有する。更に、第1フランジ部40は、中間ケース部材28とは反対側の貫通孔41の開口の周縁に、第1締結具30のネジ頭部31のネジ座面31aが着座する第1座面40aを有している。
【0034】
中間ケース部材28の立壁281に、中間ボス部43が形成されている。中間ボス部43は、中間ケース部材28から突出した立壁281より更に突出している。これにより、中間ボス部43は、空調ケース11の外面に設けられたものとなっている。中間ボス部43は、第1フランジ部40の貫通孔41に挿通した状態の第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されており、第1締結具30のネジ軸部32が挿入可能な、ネジ孔44が形成されている。中間ボス部43のネジ孔44の開口した面は、立壁281と同一面となっている。中間ボス部43のうち、第1締結具30のネジ軸部32の軸線に沿った方向の厚みは、立壁281よりも厚くなっている。
【0035】
中間ケース部材28の立壁282に、中間フランジ部46(第2フランジ部)が形成されている。中間フランジ部46は、中間ケース部材28から突出した立壁282より更に突出している。これにより、中間フランジ部46は、空調ケース11の外面に設けられたものとなっている。中間フランジ部46は、第1フランジ部40と中間ボス部43とで成す投影領域と重ならない位置に配置されている。すなわち、中間フランジ部46は、第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されていない。中間フランジ部46は、立壁282の厚みと同じ厚みを有しており、この厚み方向に第2締結具33のネジ軸部35が挿入する、ネジ加工されていない貫通孔47を有する。更に、中間フランジ部46は、第1ケース部材26側の貫通孔47の開口の周縁に、第2締結具33のネジ頭部34のネジ座面34aが着座する第2座面46aを有している。この中間フランジ部46の第2座面46aの広がり方向と前記第1フランジ部40の第1座面40aの広がり方向とは略並行になっている。すなわち、中間フランジ部46の貫通孔47の軸線と第1フランジ部40の貫通孔41の軸線とは略並行になっている。
【0036】
第2ケース部材27の立壁271に、第1ボス部49が形成されている。第1ボス部49は、第2ケース部材27から突出した立壁271から更に突出している。これにより、第1ボス部49は、空調ケース11の外面に設けられたものとなっている。第1ボス部49は、第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されており、第1締結具30のネジ軸部32が挿入可能なネジ孔50が形成されている。第1ボス部49のネジ孔50の開口した面は、立壁271と同一面となっている。第1ボス部49のうち、第1締結具30のネジ軸部32の軸線に沿った厚みは、立壁271よりも厚くなっている。なお、空調ケースを構成するにあたり、中間ケース部材28を用いる場合には、第1ボス部49はケース部材の締結に使用されない。
【0037】
第2ケース部材27の立壁271に、第1ボス部49と並列して第2ボス部52が形成されている。第2ボス部52は、第2ケース部材27から突出した立壁271から第1ボス部49と同方向に更に突出している。これにより、第2ボス部52は、空調ケース11の外面に設けられたものとなっている。第2ボス部52は、中間フランジ部46の貫通孔47に挿通された状態にある第2締結具33のネジ軸部35が規定する軸線上に配置されている。また、第2ボス部52は、第2締結具33のネジ軸部35が挿入可能なネジ孔53が形成されている。第2ボス部52のネジ孔53の開口した面は、立壁271と同一面となっている。第2ボス部52のうち、第2締結具33のネジ軸部35の軸線に沿った方向の厚みは、立壁271よりも厚くなっている。
【0038】
第1締結具30を貫通孔41及び中間ボス部に挿入する方向と、第2締結具33を貫通孔47および第2ボス部に挿入する方向とは、共に第1ケース部材26の側からとなっている。そして、第1フランジ部40の貫通孔41及び中間ボス部43のネジ孔44に挿入された状態の第1締結具30と、中間フランジ部46の貫通孔47及びボス部52のネジ孔53に挿入された状態の第2締結具33とは、略並行となるようケース部材26、27、28に装着される。
【0039】
このように第1フランジ部40、中間ボス部43、中間フランジ部46、第1ボス部49、及び第2ボス部52を構成及び配置したことにより、図2に示されるように、ケース部材26が最も上、ケース部材27が最も下となるように、第2ケース部材27を下方、中間ケース部材28を第2ケース部材27の上、第1ケース部材26を中間ケース部材28の上となるように上下方向に積層して配置し、貫通孔41とネジ孔44とが連通するように第1フランジ部40と中間ボス部43とを当接させ、貫通孔47とネジ孔53とが連通するように中間フランジ部46と第2ボス部52とを当接させて、第1締結具30を貫通孔41、ネジ孔44に挿通させ、第2締結具33を貫通孔47、ネジ孔53に挿通させることができる。そして、第1締結具30と第2締結具33とを同じものにすることも可能である。よって、空調ケース11の外面では、ケース部材26、27、28について、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0040】
空調ユニット10は、空調ケース11の強度を高めるために、図1(a)及び図3に示されるように補強機構55を有している。補強機構55は、図1(a)に示されるように、内部空間12内を車両の左右方向に沿って直線状に延びているもので、図3に示されるように、第1ケース部材26の第1補強部56と、第2ケース部材27の第2補強部58と、これら補強部56、58の双方に隣接して配置される中間ケース部材28の中間補強部61とで構成されている。
【0041】
第1補強部56は、空調ケース11の外観を構成する外形部26aから内部空間12に向けて凸状に延伸し、延伸方向端に頂部57を有する、筒状の形状をしている。頂部57は、第1補強部56に交差し、筒状の該第1補強部56の内側に延びた板状部位になっている。頂部57のうち、中間ケース部材28の側の全ての面と外形部26aのうち中間ケース部材28の側の端面とは、この実施例では同一面上に位置している。
【0042】
第1補強部56の頂部57に、第1フランジ部40が設けられている。第1補強部56の第1フランジ部40の構成や配置は、前述した空調ケース11の外面に設けられた第1フランジ部40に対し、設けられた箇所が第1補強部56の頂部57である以外では同様である。このため、第1補強部56の第1フランジ部40の貫通孔41、第1座面40aを含めた構成や配置についての説明は、空調ケース11の外面に設けられた第1フランジ部40と同様の符号を付すことで省略する。
【0043】
第1補強部56の延伸方向は、中間ボス部43のネジ孔44の延伸方向と略平行である。このため、第1締結具30を、第1補強部56に接触させずに第1フランジ部40の貫通孔44に貫通させ、中間ボス部43のネジ孔44に挿入することができる。
【0044】
第1補強部56の延伸方向及び中間補強部61の延伸方向は、第2ボス部52のネジ孔53の延伸方向と略平行である。頂部57の突出方向端と第1補強部56の外面(内部空間12の反対側の面)との間は、間隔が空いている。同様に、後述するように中間補強部61に設けられた中間ボス部43と中間補強部61の外面との間は、間隔が空いている。このため、第2締結具33を、第1補強部56および中間補強部61に接触させずに中間フランジ部46の貫通孔47に貫通させ、しかるのち、第2ボス部52のネジ孔53に挿入することができる。
【0045】
第2ケース部材27の第2補強部58は、空調ケース11の外観を構成する外形部27aから内部空間12に向けて凸状に延伸し、延伸方向端に頂部59を有する、筒状の形状をしている。頂部59は、第2補強部58の筒状部において、対峙する内面の間に架設された板状部位になっている。頂部59のうち、中間ケース部材28の側の全ての面と外形部27aの中間ケース部材28側の端面とは、この実施例では同一面上に位置している。
【0046】
第2補強部58の頂部59に、第1ボス部49が設けられている。第2補強部58の第1ボス部49の構成や配置は、前述した空調ケース11の外面に設けられた第1ボス部49に対し、設けられた箇所が第2補強部58の頂部59である以外では同様である。このため、第2補強部58の第1ボス部49のネジ孔50を含めた構成や配置についての説明は、空調ケース11の外面に設けられた第1ボス部49と同様の符号を付すことで省略する。
【0047】
更に、第2補強部58の頂部59に、第2ボス部52が、第1ボス部49と並列に設けられている。第2ボス部52は、第1ケース部材26の頂部57の突出方向端と、この突出方向端と対峙する第1補強部56との間に配置されている。かかる配置並びに設けられた箇所が立壁271と頂部59との違い以外では、第2補強部58の第2ボス部52の構成や配置は、前述した空調ケース11の外面に設けられた第2ボス部52と同様である。このため、第2補強部58の第2ボス部52のネジ孔53を含めた構成や配置についての説明は、空調ケース11の外面に設けられた第2ボス部52と同様の符号を付すことで省略する。
【0048】
中間補強部61は、筒状の形状をしており、中間ケース部材28の外面を構成する外形部28aとは支柱部28bにより連結されている。中間補強部61は、第1補強部56の側の開口端において、第1補強部56の頂部57と面接触するように延出する壁部62を有する。支柱部28bは、内部空間12を、第1ケース部材26の側と第2ケース部材27の側とに仕切る仕切壁として用いられることもある。中間ケース部材28の壁部62の第1ケース部材26の側の全面と、外形部28aの第1ケース部材26の側の端面と、中間補強部61の壁部62以外のケース部材26の側の端面とは、この実施例では同一面上に位置している。
【0049】
中間補強部61の壁部62に、中間ボス部43が設けられている。中間ボス部43と中間補強部61の外面(内部空間12の反対側の面)との間には、筒状の第1補強部56及び頂部57の突出方向端と第1補強部56の外面との間を通ってきた第2締結具33を第2ボス部52のネジ孔53に挿入する際に通過可能な間隔が空いている。かかる配置並びに設けられた箇所が立壁281と壁部62との違い以外では、中間補強部61の中間ボス部43の構成や配置は、前述した空調ケース11の外面に設けられた中間ボス部43と同様である。このため、中間補強部61の中間ボス部43のネジ孔44を含めた構成や配置についての説明は、空調ケース11の外面に設けられた中間ボス部43と同様の符号を付すことで省略する。
【0050】
中間補強部61は、第2補強部58側の開口端において、第2ボス部52と面接触するように延出する壁部63を有する。中間ケース部材28の壁部63の第2ケース部材27の側の全面と、外形部28aの第2ケース部材27の側の端面と、中間補強部61の壁部63以外の第2ケース部材27の側の端面とは、この実施例では同一面上に位置している。
【0051】
中間補強部61の壁部63に、中間フランジ部46が設けられている。中間補強部61の中間フランジ部46の構成や配置は、前述した空調ケース11の外面に設けられた中間フランジ部46に対し、設けられた箇所が立壁261と壁部63との違い以外では同様である。このため、中間補強部61の中間フランジ部46の貫通孔47、第2座面46aを含めた構成や配置についての説明は、空調ケース11の外面に設けられた中間フランジ部46と同様の符号を付すことで省略する。
【0052】
なお、この実施例では、壁部62の端部と壁部63とは連接壁64により連接されている。
【0053】
このように第1補強部56、第2補強部58、中間補強部61、第1フランジ部40、第1ボス部49、第2ボス部52、中間ボス部43、および中間フランジ部46を構成及び配置したことにより、図3(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、中間ケース部材28を第2ケース部材27の上、第1ケース部材26を中間ケース部材28の上となるように上下方向に積層して配置し、貫通孔41とネジ孔44とが連通するように第1フランジ部40と中間ボス部43とを当接させ、貫通孔47とネジ孔53とが連通するように中間フランジ部46と第2ボス部52とを当接させて、第1締結具30を筒状の第1補強部56を通過させて貫通孔41とネジ孔44に挿通させ、第2締結具33を筒状の第1補強部56および筒状の中間補強部を通過させて貫通孔47とネジ孔53に挿通させることができる。そして、第1締結具30と第2締結具33とを同じものにすることも可能である。よって、空調ケース11に補強機構55を設けた場合であっても、該補強機構55を含めてケース部材26、27、28を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0054】
(低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様)
図4の空調ユニット10´では、図5から図6でも示されるように、低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様として、図1の空調ユニット10から、中間ケース部材28を省いたものが示されている。すなわち、図4から図6に示される第1ケース部材26、第2ケース部材27は、その構成において、図1から図3に示され、且つこれまで説明してきたケース部材26、27と同じものである。また、第1締結具30も図1から図6に示される第1締結具30と同じものである。
【0055】
図4(b)及び(c)に示されるように、第2ケース部材27の空調ケース11´の外面に設けられた第1ボス部49は、第1ケース部材26の外面に設けられた第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。そして、この第1ボス部49のネジ孔50は、第1締結具30のネジ軸部32の挿入が可能とされている。なお、空調ケース11´を構成するにあたり、第1ケース部材26と第2ケース部材27とを直接的に締結する場合には、第2ボス部52は使用されない。
【0056】
これにより、図5に示されるように、第2ケース部材27を下方、第1ケース部材26を上方となるよう上下方向に配置し、貫通孔41とネジ孔50とが連通するように第1フランジ部40と第1ボス部49とを当接させることで、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔50に挿通させることができる。そして、第1ケース部材26と中間ケース部材28とを締結するのに用いる第1締結具30と同じ第1締結具30を用いることが可能である。よって、図4に示される空調ユニット10´でも、空調ケース11´の外面において、ケース部材26、27を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0057】
また、図6(a)に示されるように、第2補強部58の頂部59に設けられた第1ボス部49は、第1補強部56の頂部57に設けられた第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。そして、この第1ボス部49のネジ孔50は、第1締結具30のネジ軸部32の挿入が可能とされている。なお、第1ケース部材26と第2ケース部材27とを直接的に締結する場合には、第2ボス部52は使用されない。
【0058】
これにより、図6(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、第1ケース部材26を上方となるよう上下方向に配置し、貫通孔41とネジ孔50とが連通するように第1フランジ部40と第1ボス部49とを当接させることで、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔50に挿通させることができる。そして、第1ケース部材26と中間ケース部材28とを締結するのに用いる第1締結具30と同じ第1締結具30を用いることが可能である。よって、図4に示される空調ユニット10´が、空調ケース11´に補強機構55を設けた場合であっても、該補強機構55を含めてケース部材26、27を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【実施例2】
【0059】
次に、この車両用の空調ユニット110、110´の実施例2について、図7及び図8を用いて説明する。
【0060】
(高い空調能力の求めに応じた空調ユニットの空調ケースの態様)
図7において、実施例2のうち、高い空調能力の求めに応じた空調ユニットの空調ケースの態様として、中間ケース部材28の空調ケース111の外面に設けられた中間フランジ部46及び第2ケース部材27の空調ケース111の外面に設けられたボス部52´(49´)が示されている。空調ユニット110の全体構成並びにケース部材26、27、28の基本構成は、上記ボス部52´(49´)以外、これまで説明してきた空調ユニット10並びにケース部材26、27、28のものと同様である。このため、図7において空調ユニット110ボス部52´(49´)を除き実施例1と同様の符号を付すことで、立壁261、281、282、271や第1フランジ部40、中間ボス部43の説明を省略する。
【0061】
実施例2の中間フランジ部46(第2フランジ部)は、第1ケース部材26の第1フランジ部40及び中間ケース部材28の中間ボス部43に挿入された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。中間フランジ部46は、立壁282の第2ケース部材27の側の端面から同一平面状に延びる立面65と、この立面65の頂部を起点とし、第2ケース部材27から離れる方向に延びる斜面66とを有し、断面形状が略直角三角形状になっている。中間フランジ部46のうち第2ケース部材27の表面から延出する根本側は、立壁282の厚みよりも厚くなっている。中間フランジ部46は、斜面66の頂部近傍に、ネジ加工されていない貫通孔47と、この貫通孔47の周縁に形成された第2座面46a´とを有している。第2座面46a´は、第2締結具33のネジ頭部34のネジ座面34aが着座可能なように平面になっており、貫通孔47は、第2締結具33のネジ軸部35の挿入が可能とされており、ネジ座面34aに対し直角に延びている。
【0062】
実施例2のボス部52´は、これまで説明してきた第2ボス部52の変形例であり、中間フランジ部46と同様に、第1ケース部材26の第1フランジ部40及び中間ケース部材28の中間ボス部43に挿入された第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。ボス部52´は、立壁271の中間ケース部材28の側の端面から同一平面状に延び、中間ボス部43の立面65と当接可能な、立面67を有するブロック状である。ボス部52´は全体的に立壁271よりも厚くなっている。ボス部52´は、立面67にネジ孔53とネジ孔50とを有する。ネジ孔53は、第2締結具33のネジ軸部35の挿入が可能とされており、立面67が中間フランジ部46の立面65に当接したときに、貫通孔47と連通し、且つ、貫通孔47に挿入された第2締結具33のネジ軸部35が規定する軸線上に延びるように形成されている。ネジ孔50は、第1締結具30のネジ軸部32の挿入が可能とされており、第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。すなわち、実施例2では、ボス部52´は、これまで説明してきた第1ボス部49を兼ねている。よって、ボス部52´は、これまで説明してきた第1ボス部49の変形例でもあり、図7図8では符号52´(49´)で示している。なお、空調ケース111を構成するにあたり、中間ケース部材28が第1ケース部材26と第2ケース部材27との間に介在される場合には、ボス部52´のネジ孔50は使用されない。
【0063】
これにより、図7(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、中間ケース部材28を第2ケース部材27の上方、第1ケース部材26を中間ケース部材28の上方となるよう上下方向に積層して配置し、貫通孔41とネジ孔44とが連通するように第1フランジ部40と中間ボス部43とを当接させ、貫通孔47とネジ孔53とが連通するように中間フランジ部46の立面65とボス部52´の立面67とを当接させることで、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔44に挿通させることができ、第2締結具33を斜め上側から貫通孔47、ネジ孔53に挿通させることができる。そして、第1締結具30と第2締結具33とを同じものにすることも可能である。よって、図7にその一部が示される空調ユニット110でも、空調ケース111の外面において、ケース部材26、27、28を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0064】
(低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様)
図8の空調ユニット110´では、低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様として、図7の空調ユニット110から、中間ケース部材28を省いたものが示されている。すなわち、図8に示される第1ケース部材26、第2ケース部材27は、その構成において、図7に示され、且つこれまで説明してきたケース部材26、27と同じものである。また、図8に示される第1締結具30も、図7に示される第1締結具30と同じものである。
【0065】
図8(b)に示されるように、第1ケース部材27の空調ケース111´の外面に設けられたボス部52´のネジ孔50は、第1ケース部材26の空調ケース111´の外面に設けられた第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。そして、このボス部52´のネジ孔50は、第1締結具30のネジ軸部32の挿入が可能とされている。なお、空調ケース111´を構成するにあたり、第1ケース部材26と第2ケース部材27とを直接的に締結する場合には、ボス部52´のネジ孔53は使用されない。
【0066】
これにより、図8(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、第1ケース部材26を上方となるよう上下方向に配置し、貫通孔41とネジ孔50とが連通するように第1フランジ部40とボス部52´の立面67とを当接させることで、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔50に挿通させることができる。そして、第1ケース部材26と中間ケース部材28とを締結するのに用いる第1締結具30と同じ第1締結具30を用いることが可能である。第1締結具30と第2締結具33とを同じものにすることも可能である。よって、図8にその一部が示される空調ユニット110´でも、空調ケース111´の外面において、ケース部材26、27を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【実施例3】
【0067】
更に、この車両用の空調ユニット210、210´の実施例3について、図9及び図10を用いて説明する。
【0068】
(高い空調能力の求めに応じた空調ユニットの空調ケースの態様)
図9において、実施例3のうち、高い空調能力の求めに応じた空調ユニットの空調ケースの態様として、第1補強部56の頂部57、第2補強部58の頂部59、及び中間補強部61の壁部62の変更例が示されている。空調ユニット210の全体構成並びにケース部材26、27、28の基本構成は、上記以外、これまで説明してきたものと同様であるので、空調ユニット210を除き、実施例1、2と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
第1補強部56の頂部57は、外形部26aの中間ケース部材28側の端面よりも第1ケース部材26の内部側にて、第1補強部56の内面から直角に突出した、内側部位57aを有し、この内側部位57aに第1フランジ部40が設けられている。これにより、第1フランジ部40の中間ケース部材28の側の面も、外形部26aの中間ケース部材28の側の端面よりも第1ケース部材26の内部側に引っ込んだ位置になっている。
【0070】
第2補強部58の頂部59は、中間ケース部材28の側の面が、第2ケース部材27の外形部27aのうち中間ケース部材28側の端面と同一面となるよう形成されている。第2補強部58の第1ボス49は、外形部27aのうち中間ケース部材28側の端面から中間ケース部材28の側に突出している。第1ボス部49の外形部27aの端面からの突出寸法は、第1ケース部材26の外形部26aのうち中間ケース部材28側の端面から第1フランジ部40の中間ケース部材28側の面までの窪み寸法と略同じ寸法になっている。第1ボス部49のネジ孔50は、第1フランジ部40の貫通孔41に挿入された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に位置している。
【0071】
中間補強部61の壁部62は、外形部28aの第1ケース部材26の側の端面よりも第1ケース部材26の側に突出した中間ボス部43が設けられている。中間ボス部43の突出寸法は、外形部28aの端面と外形部26aの端面とが当接したときに、中間ボス部43が第1フランジ部40の中間ケース部材28の側の面に当接することができる寸法(あるいは、第1締結具30にて連結できる程度の範囲で離間した寸法)となっている。中間ボス部43のネジ孔44は、第1フランジ部40の貫通孔41に挿入された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に位置している。中間ボス部43の第2ケース部材27の側は、外形部28aの端面と外形部27aの端面に当接したときに、第1ボス部49の全体が収容される窪み45が形成されている。
【0072】
図9(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、中間ケース部材28を第2ケース部材27の上方、第1ケース部材26を中間ケース部材28の上方となるよう上下方向に積層して配置し、貫通孔41とネジ孔44とが連通するように第1フランジ部40と中間ボス部43とを当接させ、貫通孔47とネジ孔53とが連通するように中間フランジ部46と第2ボス部52とを当接させると共に、第1ボス部49を中間ケース部材28の窪み45に収容する。これにより、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔44に挿通させることができ、第2締結具33を斜め上側から貫通孔47、ネジ孔53に挿通させることができる。そして、第1締結具30と第2締結具33とを同じものにすることも可能である。よって、図9にその一部が示される空調ユニット210でも、空調ケース211の補強機構55において、ケース部材26、27を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0073】
(低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様)
図10の空調ユニット210´では、低い空調能力でも足りる空調ユニットの空調ケースの態様として、図9の空調ユニット210から、中間ケース部材28を省いたものが示されている。すなわち、図10に示される第1ケース部材26、第2ケース部材27は、その構成において、図9に示され、且つこれまで説明してきたケース部材26、27と同じものである。また、図10に示される第1締結具30も、図9に示される第1締結具30と同じものである。
【0074】
図10に示されるように、第2補強部58の頂部59に設けられた第1ボス部49は、第1補強部56の頂部57に設けられた第1フランジ部40の貫通孔41に挿通された状態にある第1締結具30のネジ軸部32が規定する軸線上に配置されている。そして、この第1ボス部49のネジ孔50は、第1締結具30のネジ軸部32の挿入が可能とされている。なお、空調ケース211´を構成するにあたり、第1ケース部材26と第2ケース部材27とを直接的に締結する場合には、第2ボス部52は使用されない。
【0075】
これにより、図10(b)に示されるように、第2ケース部材27を下方、第1ケース部材26を上方となるよう上下方向に配置し、貫通孔41とネジ孔50とが連通するように第1フランジ部40と第1ボス部49とを当接させることで、第1締結具30を上側から貫通孔41、ネジ孔50に挿通させることができる。そして、第1ケース部材26と中間ケース部材28とを締結するのに用いる第1締結具30と同じ第1締結具30を用いることが可能である。よって、図10に示される空調ユニット210´でも、空調ケース211´の補強機構55において、ケース部材26、27を、自動化した工程で連結(締結)することができる。
【0076】
最後に、これまでの実施例1から実施例3において、第1ケース部材26を下方または左側に、第2ケース部材27は上方または右側に配置されるものとして説明してきたが、必ずしもこれに限定されない。図示しないが、第1ケース部材26は上方または右側に、第2ケース部材27は下方または左側に配置されるものとして構成されていてもよい。また、空調ケースを組み付けて構成する際に、第1締結具30や第2締結具33を上方から下方に異動させるとして説明してきたが、必ずしもこれに限定されない。締結具30、33の締結方向は、適宜選択されることでよい。
【符号の説明】
【0077】
1、1´ 車両用の空調装置
10、10´、110、110´、210、210´ 空調ユニット
11、11´、111、111´、211、211´ 空調ケース
12 内部空間
26 第1ケース部材
26a 外形部
27 第2ケース部材
271 立壁
27a 外形部
28 中間ケース部材
28a 外形部
28b 支柱部
30 締結具(第1締結具)
31 ネジ頭部
31a ネジ座面
32 ネジ軸部
33 締結具(第2締結具)
34 ネジ頭部
34a ネジ座面
35 ネジ軸部
40 第1フランジ部
40a 第1座面
43 中間ボス部
46 中間フランジ部(第2フランジ部)
46a、46a´ 第2座面
49 第1ボス部
50 ネジ孔
52 第2ボス部
52´(49´) ボス部(第2ボス部)
55 補強機構
56 第1補強部
57 頂部
58 第2補強部
59 頂部
61 中間補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10