(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ホイールローダ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220609BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20220609BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20220609BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20220609BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20220609BHJP
B60L 50/15 20190101ALI20220609BHJP
B60L 7/22 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
B60K6/46
B60K6/52
B60K6/54
B60K6/22
B60L50/15
B60L7/22 G
(21)【出願番号】P 2019053378
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】歌代 浩志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 徳孝
(72)【発明者】
【氏名】大木 孝利
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/151965(WO,A1)
【文献】特開2010-030599(JP,A)
【文献】特開2019-038365(JP,A)
【文献】特開2008-201391(JP,A)
【文献】特開2008-154324(JP,A)
【文献】特開2018-149882(JP,A)
【文献】特開2017-121934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
B60K 6/46
B60K 6/52
B60K 6/54
B60K 6/22
B60L 50/15
B60L 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前フレームと、
前記前フレームに対して左右方向に回動可能に連結された後フレームと、
前記前フレームに支持されて動作する作業機と、
駆動力を発生させる電動モータと、
前記電動モータの駆動力を伝達するトランスミッションと、
前記トランスミッションで伝達された駆動力を元に回転する駆動輪とを備えるホイールローダであって、
前記駆動輪の制動時に発生する回生電力を熱に変換する抵抗器と、
前記抵抗器を収容する筐体と、
前記トランスミッションの潤滑油貯留部に貯留された潤滑油を前記筐体に供給する給油管とを備え、
前記潤滑油貯留部に貯留された潤滑油の液面の高さは、前記潤滑油貯留部の流出口より上方かつ、前記筐体内に収容された前記抵抗器の上面より上方に設定されることを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
前フレームと、
前記前フレームに対して左右方向に回動可能に連結された後フレームと、
作動油を貯留する作動油タンクと、
前記前フレームに支持されて、前記作動油タンクから作動油の供給を受けて動作する作業機と、
駆動力を発生させる電動モータと、
前記電動モータの駆動力を伝達するトランスミッションと、
前記トランスミッションで伝達された駆動力を元に回転する駆動輪とを備えるホイールローダであって、
前記駆動輪の制動時に発生する回生電力を熱に変換する抵抗器と、
前記抵抗器を収容する筐体と、
前記作動油タンクに貯留された作動油を前記筐体に供給する給油管とを備え、
前記作動油タンクに貯留された作動油の液面の高さは、前記作動油タンクの流出口より上方かつ、前記筐体内に収容された前記抵抗器の上面より上方に設定されることを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホイールローダにおいて、
前記後フレームは、
左右一対のサイドフレームと、
前記左右一対のサイドフレームの前端に支持されて、前記前フレームを回動可能に連結するセンタピンを支持するピン支持部とを備え、
前記トランスミッションは、前記左右一対のサイドフレームの内側に配置され、
前記筐体は、前記左右一対のサイドフレームの内側で、且つ前記センタピン及び前記トランスミッションの間に配置されていることを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のホイールローダにおいて、
前記後フレームは、
キャブと、
前記後フレームの外側面に沿って、前記キャブから下方に延設された梯子とを支持し、
前記筐体は、前記後フレームの外側面及び前記梯子の間の空間に配置されていることを特徴とするホイールローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動時に回生電力を発生させるホイールローダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの駆動力をトルクコンバータ及びトランスミッションを介して駆動輪に伝達する方式に代えて、電動モータで駆動輪を回転させる方式を採用したホイールローダが着想されている。電動モータを用いる方式では、トルクコンバータ及びトランスミッションを用いる方式と比較してエネルギ伝達効率が高いので、燃費を低減することができるというメリットがある。
【0003】
電動モータで駆動輪を回転させるホイールローダでは、モジュレート時や降坂時に回生電力が発生する。そこで、特許文献1には、車両制動時にモータが発生する回生電力を蓄電する蓄電装置を備えるホイールローダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、高価な蓄電装置に代えて、回生電力を熱に変換して消費する抵抗器を採用したホイールローダもある。このようなホイールローダでは、抵抗器を適切に冷却しないと、抵抗体の温度が急上昇してダメージを受ける可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、回生電力を熱に変換する抵抗器を適切に冷却できる冷却機構を備えたホイールローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、前フレームと、前記前フレームに対して左右方向に回動可能に連結された後フレームと、前記前フレームに支持されて動作する作業機と、駆動力を発生させる電動モータと、前記電動モータの駆動力を伝達するトランスミッションと、前記トランスミッションで伝達された駆動力を元に回転する駆動輪とを備えるホイールローダであって、前記駆動輪の制動時に発生する回生電力を熱に変換する抵抗器と、前記抵抗器を収容する筐体と、前記トランスミッションの潤滑油貯留部に貯留された潤滑油を前記筐体に供給する給油管とを備え、前記潤滑油貯留部に貯留された潤滑油の液面の高さは、前記潤滑油貯留部の流出口より上方かつ、前記筐体内に収容された前記抵抗器の上面より上方に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回生電力を熱に変換する抵抗器を適切に冷却することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るホイールローダの側面図である。
【
図2】ホイールローダに搭載される駆動回路の概略図である。
【
図3】ホイールローダに搭載される潤滑回路の概略図である。
【
図4】トランスミッション及び変換装置の構造を示す模式図である。
【
図5】後フレームを前方左側から見た部分斜視図である。
【
図6】変形例1に係る変換装置のレイアウトを示す図である。
【
図7】変形例2に係る変換装置のレイアウトを示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る後フレームの部分斜視図である。
【
図9】第3実施形態に係る抵抗器のレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係るホイールローダ100の各実施形態について説明する。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ホイールローダ100に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るホイールローダ100の側面図である。ホイールローダ100は、リフトアーム101、バケット102、及び左右一対の前輪103等を有する前フレーム104と、キャブ105、及び左右一対の後輪106等を有する後フレーム107とで構成される。
【0012】
前輪103及び後輪106は、ホイールローダ100に搭載された電動モータ14(
図3参照)によって駆動される駆動輪である。より詳細には、電動モータ14は、エンジン10の駆動力によって発電機11で発電された電力が供給されて回転する。そして、電動モータ14の回転駆動力は、トランスミッション15で変速されて、プロペラシャフト及びアクスルを介して前輪103及び後輪106に伝達される。
【0013】
リフトアーム101は、リフトアームシリンダ108の伸縮によって上下方向に回動(俯仰動)する。バケット102は、バケットシリンダ109の伸縮によって上下方向に回動(クラウドまたはダンプ)する。リフトアーム101、バケット102、リフトアームシリンダ108、及びバケットシリンダ109は、作業機を構成している。
【0014】
前フレーム104と後フレーム107とは、センタピン110a、110bによって、左右方向に回転可能に連結されている。また、前フレーム104と後フレーム107とは、左右一対のステアリングシリンダ111L、111Rによって接続されている。ステアリングシリンダ111L、111Rは、前端が前フレーム104に接続され、後端が左右方向に回動可能な状態で後フレーム107に接続される。
【0015】
一対のステアリングシリンダ111L、111Rのうち一方を伸長、他方を縮退させることにより、センタピン110a、110bを中心として前フレーム104が後フレーム107に対して左右方向に屈曲する。これにより、前フレーム104と後フレーム107との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。すなわち、このホイールローダ100は、センタピン110a、110bを中心に前フレーム104と後フレーム107とが屈曲されるアーティキュレート式である。
【0016】
キャブ105には、ホイールローダ100を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ105の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)が配置されている。キャブ105に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、ホイールローダ100が走行し、作業機が動作する。
【0017】
より詳細には、操作装置は、ステアリングシリンダ111L、111Rを伸縮させるステアリングレバー、リフトアームシリンダ108を伸縮させるアーム操作レバー、バケットシリンダ109を伸縮させるバケット操作レバー、エンジンの回転数を調整するアクセルペダル、前輪103及び後輪106を制動するブレーキペダル等を含む。
【0018】
次に、
図2~
図4を参照して、ホイールローダ100の駆動回路を説明する。
図2は、ホイールローダ100に搭載される駆動回路の概略図である。
図3は、ホイールローダ100に搭載される潤滑回路の概略図である。
図4は、トランスミッション15及び変換装置30の構造を示す模式図である。
【0019】
図2に示すように、ホイールローダ100は、エンジン10と、発電機11と、インバータ12、13と、電動モータ14と、トランスミッション15と、チョッパ回路16と、抵抗器17と、潤滑ポンプ18と、メインポンプ19と、方向切換弁20とを主に備える。これらは、後フレーム107に支持されている。
【0020】
エンジン10は、化石燃料を燃焼させて駆動力を発生させる。発電機11は、エンジン10の駆動力が伝達されて発電する。インバータ12は、発電機11から出力された三相交流電力を直流電力に変換して、インバータ13に出力する。インバータ13は、インバータ12から出力された直流電力を三相交流電力に変換して、電動モータ14に出力する。
【0021】
電動モータ14は、インバータ13から三相交流電力の供給を受けて駆動力を発生させる。トランスミッション15は、電動モータ14の駆動力を、プロペラシャフトに出力する。そして、駆動輪(前輪103及び後輪106)は、トランスミッション15で変速された駆動力が伝達されて回転する。
【0022】
一方、ホイールローダ100を制動する際、電動モータ14は、電気ブレーキとして作動する。そして、電気ブレーキとして作動する電動モータ14は、回生電力を発電して、インバータ13に出力する。インバータ13は、電動モータ14から出力された三相交流の回生電力を直流電力に変換して、チョッパ回路16に出力する。
【0023】
チョッパ回路16は、インバータ13から供給される直流電力を変圧して、抵抗器17に出力する。抵抗器17は、チョッパ回路16を通じて供給された回生電力を熱に変換する抵抗素子である。すなわち、電動モータ14が発生させた回生電力は、抵抗器17で消費される。
【0024】
潤滑ポンプ18は、エンジン10の出力軸10aに連結されている。そして、潤滑ポンプ18は、出力軸10aを通じて伝達されるエンジン10の駆動力によって、潤滑回路(
図3参照)に潤滑油を供給する。
図3に示すように、潤滑回路は、潤滑ポンプ18、発電機11、電動モータ14、トランスミッション15、及び後述する変換装置30を、潤滑油が流通する油路で接続したループ回路である。
【0025】
すなわち、潤滑ポンプ18から出力された潤滑油は、発電機11、電動モータ14、トランスミッション15、変換装置30内部を潤滑して、潤滑ポンプ18に還流する。なお、潤滑回路を構成する構成部品、潤滑油が通過する順番は、前述の例に限定されない。また、潤滑回路は、潤滑油を冷却するオイルクーラ(熱交換器)をさらに備えてもよい。
【0026】
メインポンプ19は、エンジン10の出力軸10aに連結されている。そして、メインポンプ19は、出力軸10aを通じて伝達されるエンジン10の駆動力によって、作動油タンク53に貯留された作動油を、方向切換弁20等を通じて油圧アクチュエータ(リフトアームシリンダ108、バケットシリンダ109、ステアリングシリンダ111L、111R)に供給する。メインポンプ19から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量及び供給方向は、操作装置によって制御される。
【0027】
図4に示すように、トランスミッション15は、構成部品を収容する筐体21と、電動モータ14の駆動力が伝達されて回転する入力軸22と、入力軸22の回転を変速する変速機構(軸、ギヤの集合体)24と、変速機構24で変速された回転をプロペラシャフトに出力する出力軸25とを主に備える。トランスミッション15の基本的な構造は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0028】
また、筐体21の下部には、潤滑ポンプ18を通じて供給された潤滑油を貯留する潤滑油貯留部26が設けられている。すなわち、流入口(図示省略)を通じて筐体21の内部に流入した潤滑油は、トランスミッション15の構成部品を潤滑して、一時的に潤滑油貯留部26に貯留される。
【0029】
潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面は、出力軸25の近傍にまで達する。換言すれば、潤滑油貯留部26には、上下方向における出力軸25の近傍に、潤滑油を流出させる流出口27が設けられている。すなわち、ホイールローダ100が水平面上に載置された状態において、潤滑油貯留部26に貯留される潤滑油の液面の下限値は、流出口27の位置となる。
【0030】
変換装置30は、内部空間を有する箱型の筐体31と、筐体31に収容された抵抗器17とを主に備える。筐体31には、潤滑油が流入する流入口32と、潤滑油を流出させる流出口33とが設けられている。そして、トランスミッション15の流出口27と、変換装置30の流入口32とは、チューブ(給油管)34で接続されている。なお、給油管の具体例は、可撓性を有するチューブでもよいし、金属製の配管でもよい。
【0031】
そのため、流出口27からチューブ34に流出した潤滑油は、流入口32を通じて筐体31の内部に流入する。そして、流入口32から流入した潤滑油は、抵抗器17を冷却しつつ筐体31の内部に一時的に貯留されて、流出口33を通じて筐体31の外部にある潤滑ポンプ18へ供給される。
【0032】
すなわち、
図3に示す潤滑回路のうち、少なくともトランスミッション15及び変換装置30は、潤滑油を一時的に貯留するタンクとしての役割を担う。そして、変換装置30は、潤滑油の流れの下流側において、潤滑油のタンクとして機能するトランスミッション15と接続されるのが望ましい。
【0033】
さらに、流入口32には、潤滑油から不純物を除去するフィルタ35が取り付けられている。このフィルタ35は、例えば、トランスミッション15の構成部品から発生する金属粉などを、潤滑油から分離する役割を担う。また、フィルタ35は、着脱可能に構成されている。すなわち、フィルタ35は、定期的に交換することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、筐体31の上面(抵抗器17の上端)は、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面より低い位置にある。これにより、筐体31の内部空間は、チューブ34を通じて潤滑油貯留部26から供給された潤滑油(冷媒)で満たされることになる。サイフォンの原理を考慮して、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面高さが、筐体31内に収容された抵抗器17の上面が筐体31内の潤滑油に浸るように筐体31の上面に対し上方に設定されている。
【0035】
さらに、流入口32は、筐体31のできるだけ高い位置に設けるのが望ましい。
図4の例では、筐体31の上面に流入口32が設けられている。これにより、ホイールローダ100が左右に傾いた際に筐体31の内部に空気が流入したとしても、潤滑油貯留部26との間で気液交換(潤滑油貯留部26から潤滑油が供給され、空気が潤滑油貯留部26に戻る現象)が起こりやすくなる。
【0036】
次に、
図5を参照して、ホイールローダ100内における変換装置30の配置を詳細に説明する。
図5は、後フレーム107を前方左側から見た部分斜視図である。後フレーム107は、左右一対のサイドフレーム41、42と、センタピン110aを支持する一対の支持プレート(ピン支持部)43、44と、センタピン110bを支持する一対の支持プレート45、46(
図7参照)とを主に備える。
【0037】
左右一対のサイドフレーム41、42は、後フレーム107の外殻の一部を構成する。サイドフレーム41、42は、各々が上下方向及び前後方向に延設され、且つ互いに左右方向に離間して配置されている。そして、サイドフレーム41、42の内側には、トランスミッション15の他、発電機11、電動モータ14、メインポンプ19、及びその他の主な構成部品が収容される。
【0038】
サイドフレーム41の前端には、ステアリングシリンダ111Rの後端を左右方向に回転可能に支持するシリンダ支持部41aが設けられている。シリンダ支持部41aの上下方向の位置は、センタピン110aを支持する支持プレート43、44より下方で、且つセンタピン110bを支持する支持プレート45、46(
図7参照)より上方である。
【0039】
また、サイドフレーム42の前端には、ステアリングシリンダ111Lの後端を左右方向に回動可能に支持するシリンダ支持部42a(
図7参照)が設けられている。シリンダ支持部42aの構成はシリンダ支持部41aと共通するので、再度の説明は省略する。
【0040】
支持プレート43、44は、サイドフレーム41、42の上端部において、左右方向に延設された板状の部材である。支持プレート43、44は、その左端がサイドフレーム42に支持され、その右端がサイドフレーム41に支持されている。また、支持プレート43、44は、上下方向に離間して配置されている。そして、支持プレート43、44には、厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔43a、44aが形成されている。
【0041】
貫通孔43a、44aは、左右方向における後フレーム107の中央に形成されている。また、貫通孔43a、44aは、上下方向から見て互いに重なる位置に形成されている。そして、一対の支持プレート43、44の間に前フレーム104の支持プレート(図示省略)が挿入され、前フレーム104の支持プレートに形成された貫通孔と、後フレーム107の貫通孔43a、44aとに、センタピン110aが挿通されることによって、前フレーム104及び後フレーム107が左右方向に回動可能に連結される。
【0042】
支持プレート45、46は、サイドフレーム41、42の下端部において、左右方向に延設された板状の部材である。支持プレート45、46は前述の支持プレート43、44と共通するので、再度の説明は省略する。
【0043】
そして、第1実施形態に係る変換装置30は、サイドフレーム41の内面にボルトによって締結されている。すなわち、変換装置30は、左右一対のサイドフレーム41、42の間において、後フレーム107に支持されている。また、変換装置30は、前後方向において、センタピン110a、110bとトランスミッション15との間に配置されている。なお、変換装置30は、支持プレート43~46より後方に配置されていてもよいし、上下方向から見て支持プレート43~46の一部と重なっていてもよい。
【0044】
また、第1実施形態に係る変換装置30は、上下方向において、センタピン110a、110bの間に配置される。より詳細には、変換装置30は、上下方向において、センタピン110a、110b、及びシリンダ支持部41a、42aと上下方向にずれた位置に配置される。
図4の例では、上下方向におけるシリンダ支持部41a、42a及びセンタピン110bの間に、変換装置30が配置されている。
【0045】
第1実施形態によれば、変換装置30の筐体31の上面を、トランスミッション15の流出口27(すなわち、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面)より下方に配置したので、ホイールローダ100が傾いても筐体31の内部空間が潤滑油で満たされた状態を維持することができる。その結果、回生電力を熱に変換して高温になった抵抗器17を、適切に冷却することができる。
【0046】
また、第1実施形態によれば、
図3に示す潤滑回路内において、潤滑油タンクとして機能するトランスミッション15の次に変換装置30を配置することによって、変換装置30に十分な量の潤滑油を安定して供給することができる。
【0047】
また、第1実施形態によれば、サイドフレーム41、42の内側に変換装置30を配置したので、不整地を走行するホイールローダ100が弾き飛ばした小石や砂利などが当たって、変換装置30が損傷するのを防止できる。
【0048】
ここで、サイドフレーム41、42の内側の前端部分は、後フレーム107に対して前フレーム104が屈曲したときに、外部に露出される部分である。そのため、変換装置30をメンテナンス(例えば、フィルタ35の交換)しようとするオペレータが、変換装置30にアクセスしやすくなっている。
【0049】
さらに、第1実施形態によれば、センタピン110a、110b、シリンダ支持部41a、42aと上下方向にずれた位置に変換装置30を配置したので、変換装置30のメンテナンス時にセンタピン110a、110b及びステアリングシリンダ111L、111Rが邪魔になりにくい。
【0050】
なお、第1実施形態によれば、抵抗器17が発生させる熱によって潤滑油の温度が上昇する。しかしながら、抵抗器17が発熱するモジュレート時や降坂時は、発電機11、電動モータ14、及びトランスミッション15の発熱は少ない。一方、ホイールローダ100の登坂時、掘削作業(バケット102を掘削対象物に貫入させる作業)時は、発電機11、電動モータ14、及びトランスミッション15は発熱するものの、抵抗器17は発熱しない。
【0051】
このように、発電機11、電動モータ14、及びトランスミッション15と、抵抗器17とでは、発熱するタイミング(発熱するときのホイールローダ100の動作)が異なるので、同一の潤滑回路に接続しても潤滑油が高温になり過ぎることはない。
【0052】
なお、変換装置30の上下方向の位置は、
図5の例に限定されない。他の例として、変換装置30の上下方向の位置は、センタピン110a(換言すれば、支持プレート43、44)とシリンダ支持部41a、42aとの間であってもよい。但し、
図5の位置に変換装置30を配置することによって、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面より下方に配置しやすくなる。また、潤滑油を変換装置30へ供給するため、トランスミッション15の流出口27は、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面の下方に配置する必要がある。
【0053】
[変形例1]
また、変換装置30は、サイドフレーム41の内面に固定されることに限定されず、サイドフレーム42の内面に固定されてもよい。さらに他の例として、
図6に示すように、左右一対のサイドフレーム41、42の両方で変換装置30Aを支持してもよい。
図6は、第1実施形態の変形例1に係る変換装置30Aのレイアウトを示す図である。なお、変換装置30Aは、筐体31Aの形状が変換装置30と相違し、その他の構成は変換装置30と共通する。
【0054】
図6に示す変換装置30Aは、サイドフレーム41、42の間において、左右方向に延設されている。そして、変換装置30Aは、その一端がサイドフレーム41の内面に固定され、その他端がサイドフレーム42の内面に固定されている。
【0055】
図6に示す変換装置30Aは、
図5に示す変換装置30と比較して、水平方向の寸法が長くなっている代わりに、上下方向の寸法が短くなっている。そのため、変換装置30Aは、筐体31Aの内部空間の容積を
図5の筐体31と同等に維持したまま、筐体31Aの高さを低くすることができる。その結果、筐体31Aの上面を、潤滑油貯留部26に貯留された潤滑油の液面より下方に配置しやすくなる。
【0056】
[変形例2]
また、変換装置30は、サイドフレーム41、42の内側に配置されることに限定されない。他の例として、
図7に示すように、サイドフレーム41の外側面で変換装置30Bを支持してもよい。
図7は、第1実施形態の変形例2に係る変換装置30Bのレイアウトを示す図である。なお、変換装置30Bの構成は、変換装置30と共通する。
【0057】
図示は省略するが、キャブ105は、トランスミッション15より前方において、サイドフレーム41、42の上端に支持されている。そして、ホイールローダ100は、オペレータがキャブ105に乗降するための梯子47を有する。梯子47は、例えば、一対の支柱48、49と、複数のステップ50、51、52とを主に備える。
【0058】
一対の支柱48、49は、各々が上下方向に延設され、且つ前後方向に離間して配置されている。ステップ50、51、52は、上下方向に離間した位置において、一対の支柱48、49に支持されている。そして、ステップ50、51の両端には、サイドフレーム41の外側面にボルトで梯子47を固定するための固定部50a、50b、51a、51bが設けられている。
【0059】
固定部50a、50b、51a、51bをサイドフレーム41の外側面に当接させてボルトで固定すると、支柱48、49及びステップ50~52とサイドフレーム41の外側面との間には、空間が形成される。そして、変形例2に係る変換装置30Bは、この空間に配置されて、サイドフレーム41の外側面にボルトで固定される。
【0060】
より詳細には、変換装置30Bの前後方向の位置は、前方側の固定部50a、51aと、後方側の固定部50b、51bとの間である。また、変換装置30Bの上下方向の位置は、上下方向に隣接するステップ51、52の間である。変形例2によれば、変換装置30Bのメンテナンスがさらに容易になる。
【0061】
なお、変形例1、2において、変換装置30A、30Bの筐体の上面がトランスミッション15の流出口27より下方に位置する点は、第1実施形態と共通する。また、第1実施形態及び変形例1、2において、変換装置30、30A、30Bをサイドフレーム41、42に固定する方法は、ボルトによる締結に限定されず、溶接などであってもよい。
【0062】
[第2実施形態]
第1実施形態では、トランスミッション15から変換装置30、30A、30Bに潤滑油を供給する例を説明した。しかしながら、変換装置30、30A、30Bに対する冷媒の供給元は、トランスミッション15に限定されない。また、抵抗器17を冷却する冷媒の具体例は、潤滑油に限定されない。
【0063】
図8は、第2実施形態に係る後フレーム107の部分斜視図である。なお、第1実施形態及び変形例1、2との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図8に示すように、作動油タンク53は、トランスミッション15の直上において、左右一対のサイドフレーム41、42に支持されている。
【0064】
図8に示す変換装置30Bの構成及び配置は、変形例2と共通する。そして、変換装置30Bは、チューブ34によって作動油タンク53に接続されている。すなわち、第2実施形態において、変換装置30Bの筐体31Bの内部空間は、作動油タンク53に貯留された作動油(冷媒)で満たされている。また、筐体31Bの上面は、作動油タンク53の液面(図示省略)より下方に位置している。
【0065】
なお、変換装置30Bは、メインポンプ19より作動油の流れの下流側に配置されていてもよい。すなわち、変換装置30Bは、メインポンプ19を介して間接的に作動油タンク53に接続されていてもよい。そして、流入口32から流入した作動油は、筐体31Bの内部に一時的に貯留された後、流出口33を通じて作動油タンク53に還流すればよい。
【0066】
第2実施形態によれば、トランスミッション15より上方に位置する作動油タンク53から作動油の供給を受けるので、第1実施形態の作用効果に加えて、変換装置30Bのレイアウトの自由度が高まる。但し、変換装置30Bのレイアウトは
図8の例に限定されず、
図5に示す変換装置30の位置でもよいし、
図6に示す変換装置30Aの位置でもよい。
【0067】
[第3実施形態]
第1実施形態、変形例1、2、及び第2実施形態では、冷媒の供給元(トランスミッション15、作動油タンク53)とは独立した筐体31、31A、31Bに抵抗器17を収容した例を説明した。しかしながら、抵抗器17のレイアウトは、前述の例に限定されない。
図9は、第3実施形態に係る抵抗器17のレイアウトを示す図である。なお、第1実施形態、変形例1、2、及び第2実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0068】
図9に示すように、第3実施形態に係る抵抗器17は、作動油タンク53の内部に収容されている。すなわち、抵抗器17は、作動油タンク53に貯留された作動油によって冷却される。そして、作動油タンク53内の作動油は、流出口54を通じてメインポンプ19に供給され、油圧アクチュエータに供給された後、オイルクーラ56で冷却されて、流入口55を通じて作動油タンク53に還流する。
【0069】
第3実施形態によれば、抵抗器17を収容する筐体31、31A、31B、及び冷媒の供給元と筐体31、31A、31Bとを接続するチューブ34を省略できる他、変換装置30、30A、30Bの配置を工夫する必要もない。また、作動油タンク53には、抵抗器17が発生させる熱を十分に吸収できる量の作動油が貯留されているので、作動油の温度上昇も無視できる範囲に収まる。
【0070】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 エンジン
11 発電機
12,13 インバータ
14 電動モータ
15 トランスミッション
16 チョッパ回路
17 抵抗器
18 潤滑ポンプ
19 メインポンプ
20 方向切換弁
21,31,31A,31B 筐体
22 入力軸
24 変速機構
25 出力軸
26 潤滑油貯留部
27,33,54 流出口
30,30A,30B 変換装置
32,55 流入口
34 チューブ(給油管)
35 フィルタ
41,42 サイドフレーム
41a,42a シリンダ支持部
43,44,45,46 支持プレート(ピン支持部)
43a,44a 貫通孔
47 梯子
48,49 支柱
50,51,52 ステップ
50a,50b,51a,51b 固定部
53 作動油タンク
56 オイルクーラ
100 ホイールローダ
101 リフトアーム
102 バケット
103 前輪
104 前フレーム
105 キャブ
106 後輪
107 後フレーム
108 リフトアームシリンダ
109 バケットシリンダ
110a,110b センタピン
111L,111R ステアリングシリンダ