(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】MRIによりガイドされる放射線治療のための無線周波数バードケージコイル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220609BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61B5/055 350
A61B5/055 390
A61N5/10 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019071024
(22)【出願日】2019-04-03
(62)【分割の表示】P 2016501503の分割
【原出願日】2014-03-12
【審査請求日】2019-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-26
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512129837
【氏名又は名称】ビューレイ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViewRay Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エフ・デンプシー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クミエレウスキ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0043207(US,A1)
【文献】特開2012-223580(JP,A)
【文献】特開平6-47017(JP,A)
【文献】特開2002-102207(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148278(WO,A1)
【文献】特表2012-511382(JP,A)
【文献】特許第6509803(JP,B2)
【文献】特開平4-285535(JP,A)
【文献】特開平10-179539(JP,A)
【文献】特許第3516493(JP,B2)
【文献】特許第2572457(JP,B2)
【文献】米国特許第9404983(US,B2)
【文献】米国特許第10466319(US,B2)
【文献】米国特許第11035916(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61N 5/10
G01R 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI(磁気共鳴画像化)によりガイドされる放射線治療システムであって、
放射線ビームを放射するように構成された放射線治療装置と、
ギャップによって分離された一対の主磁石、及び、前記ギャップを横切って延在する導電性ラングを有
しており前記放射線ビームの経路にある中間部分を有するRF(無線周波数)送信コイルを含むオープンMRIシステムと、
前記放射線ビームが前記放射線治療装置によって放射されるとき、前記放射線ビームの経路の外側に配置される、PINダイオード減結合回路と、
を備え
、
前記PINダイオード減結合回路は、前記放射線ビームの経路にある前記導電性ラングの前記中間部分と導体によって接続され、前記導体によって前記PINダイオード減結合回路が前記導電性ラングの中心から外れており前記放射線ビームの経路の外側にある位置に配置される、
MRI(磁気共鳴画像化)によりガイドされる放射線治療システム。
【請求項2】
前記PINダイオード減結合回路は、
前記導体として同軸ケーブルを用いて前記放射線ビームの経路の外側に配置される、請求項1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項3】
前記PINダイオード減結合回路は、
前記導体として導体のツイストペアを用いて前記放射線ビームの経路の外側に配置される、請求項1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項4】
前記PINダイオード減結合回路は、
前記導体としてセルフキャンセリング磁場プロファイルを有する幅広な並列導体を用いて前記放射線ビームの経路の外側に配置される、請求項1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項5】
前記MRIシステムは、1.0T未満の磁場強度を有する低磁場MRIシステムである、請求項1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項6】
前記放射線治療装置によって放射され
た前記放射線ビームの経路の外側に配置される同調キャパシタをさらに備え
る、請求項1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項7】
前記同調キャパシタが前記RF送信コイルのラングのギャップに配置され
る、請求項6に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項8】
前記同調キャパシタが前記RF送信コイルのリングのギャップに配置される、請求項6に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【請求項9】
前記PINダイオード減結合回路は、前記送信コイルの導電性ラングの端部部分に隣接して配置され、前記中心を外れた前記放射線ビームの経路の外側の位置は前記導電性ラングの端部部分に隣接している、請求項
1に記載のMRIによりガイドされる放射線治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、磁気共鳴画像化(MRI)によりガイドされる放射線治療システムでの使用に適するRFコイルを含むMRIシステムに使用するための無線周波数(RF)コイルに関する。
【0002】
関連された出願に対する相互参照
本PCT出願は、2013年3月12日に提出された特許文献1に対する優先権を主張し、出願日及び全ての開示はその全体の参照によってここに取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
一般的に、MRIシステムでは、実質的に均一な主磁場B0は、撮像される対象の全体領域を覆うように生成される。主磁場は、主磁場内のプロトンの磁気双極子を揃える。その後、一時的にフリップさせる瞬間的なRFパルスがプロトンの双極子に印加される。一旦RFパルスからのRFエネルギーが取り除かれると、双極子はこれらの緩和された状態にフリップバックし、RFパルスから吸収されたエネルギーをいくつかの予測可能な無線周波数を有するフォトンの形式で放出する。フォトンは捕獲され、撮像を可能にするように処理される。
【0004】
一般に、瞬間的なRFパルスはRFコイルによって送信される。MRIに一般に使用されるRFコイルの一つのタイプは「バードケージコイル」として知られている。例えば、バードケージコイルの例それぞれは、特許文献2及び特許文献3によって開示され、それらの全体内容は参照によってここに取り込まれる。典型的には、バードケージコイルは円筒形状であり、2つの端部リングをこれらの間に規定された円弧又は弓形に分割する偶数個のリング又は軸状の導電体によって接続された2つの導電性端部ループ又はリングを含む。この構成は、このタイプのRFコイルをバードケージの装置に提供し、それ故に発明の名称「バードケージコイル」を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願シリアル番号第13/796784号明細書(発明の名称“Radio Frequency Transmit Coil for Magnetic Resonance Imaging System,”)
【文献】米国特許第4680548号明細書(Edelstein et al.、発明の名称“Radio Frequency Field Coil For NMR”)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033497号明細書(Chmielewski et al.、発明の名称“Degenerate Birdcage Coil and Transmit/Receive Apparatus and Method For Same”)
【文献】米国特許第7907987号明細書(Dempsey、発明の名称“System for delivering conformal radiation therapy while simultaneously imaging soft tissue”)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で検討されたバードケージコイルにもかかわらず、さらなる改善の要望が残る。特に、MRI技術が放射線治療の分野に適用されるとき、従来のバードケージコイルは放射線治療システムに適用するために理想的に好ましくない。特許文献4はそのようなMRIによりガイドされる放射線治療システムの例を開示し、その全体内容は参照によってここに取り込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されるものは、磁気共鳴画像化(MRI)によりガイドされる放射線治療システムでの使用に適するRFコイルを含むMRIシステムに使用するための無線周波数コイルのためのシステム及び方法であって、そのいくつかの実施形態は、第1の導電性ループと、第2の導電性ループと、第1及び第2の導電性ループに電気的に接続されてもよい第1及び第2の導電性ループの間の導電性ラングとを備えてもよく、導電性ラングは第1及び第2の導電性ラング部分を含んでもよく、第2の導電性ラング部分は第1の導電性ループの厚さ、第2の導電性ループの厚さ、及び、第1の導電性ラング部分の厚さのうちの少なくとも1つよりも実質的に薄い厚さを有してもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、第2の導電性ラング部分は、第1の導電性ループ、第2の導電性ループ、及び、第1の導電性ラング部分のうちの少なくとも1つの厚さの約5%~約75%である厚さを有してもよい。他の実施形態において、第2の導電性ラング部分は、第1の導電性ループ、第2の導電性ループ、及び、第1の導電性ラング部分のうちの少なくとも1つの厚さの約10%~約50%である厚さを有してもよい。さらなる実施形態において、第2の導電性ラング部分は、第1の導電性ループ、第2の導電性ループ、及び、第1の導電性ラング部分のうちの少なくとも1つの厚さの約15%~約30%である厚さを有してもよい。また、第2の導電性ラングは、第1の導電性ループ、第2の導電性ループ、及び、第1の導電性ラング部分のうちの少なくとも1つの厚さの約20%である厚さを有する部分を有してもよい。
【0009】
特定の実施形態において、導電性ラングはさらに第3の導電性ラング部分を含んでもよく、第2の導電性ラング部分は第1及び第3の導電性ラング部分の間に設けられ、第2の導電性ラング部分は第1及び第3の導電性ラング部分よりも実質的に薄くてもよい。いくつかの実施形態において、第1の導電性ループ、第2の導電性ループ、及び、導電性ラングのうちの少なくとも1つは、銅、銀、及び、アルミニウムのうちの少なくとも1つを含んでもよく、又は、導電性材料の複数の層を含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、無線周波数コイルは第1及び第2の導電性ループに電気的に接続された複数の導電性ラングを含んでもよい。それはまた、隣接する導電性ラングの間に、及び、第1及び第2の導電性ループの間に設けられた絶縁領域を含んでもよい。絶縁領域の少なくとも一部は、絶縁領域の一部及び第2の導電性ラング部分の両方が実質的に同一の減衰量を放射線ビームに与えるように選択される厚さを有してもよい。いくつかの実施形態において、絶縁領域はポリイミドであってもよい。
【0011】
さらなる実施形態において、無線周波数コイルはまたプリント配線基板(PCB)基板を含んでもよく、導電性ラングはPCB基板の第1の側に形成された導電性材料の層を含んでもよい。コイルはまた、導電性ラングに隣接して、かつ、第1及び第2の導電性ループの間に配置される絶縁性領域を含んでいてもよく、絶縁性領域は、PCB基板の第1の側に形成された第1の絶縁層及びPCB基板の第2の側に形成された第2の絶縁層を含んでもよい。
【0012】
無線周波数コイルはまた、第1及び第3の導電性ラング部分に隣接して設けられるPINダイオード回路を含んでもよく、磁気共鳴画像化装置は1.0Tより小さい磁場強度を有してもよい。
【0013】
これら及び他の特徴、態様、及び本開示の利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を参照してより理解されるようになる。
【0014】
特徴、態様及び実施形態は、添付された図面と共に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示されたMRIシステムの簡略化した断面図を示す。
【
図3B】
図3Aに示された巻回されないRFコイルの平面図を示す。
【
図4】
図3A及び
図3Bに示されたRFコイルに用いられる導電性ラングの実施形態の側面図を示す。
【
図5】
図3Bの断面線V-Vに沿ったRFコイルの一部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、限定の方法ではなく例示の方法で実施形態を図示する。ここに開示される全ての数は、これらに関して用語「約」又は「略」の使用の有無にかかわらず、特に明記しない限り近似値である。下限及び上限を有する整数の範囲が開示されるときはいつでも、この範囲に含まれる任意の数が具体的に及び明示的に開示される。
【0017】
本開示のRFコイルアセンブリの概念は、如何なるタイプの磁気共鳴画像化(MRI)システムに使用されてもよい。それは、2つの水平MRI磁石の半分の間にギャップを含む分割ソレノイド又は水平の「オープン」MRIでの使用に特によく適している。ここに開示されるRFコイルアセンブリはさらに、そのギャップ内で動作される追加器具と共に使用される水平オープンMRIでの使用によく適している。
図1は、ギャップ領域12によって分離された第1及び第2の主磁石ハウジング11a,11bを有する水平オープンMRI10の配置を図示する。器具14は、構台16上のギャップ領域12に搭載される。また、患者18及び患者寝台20が図示される。いくつかの実施形態において、構台16は、患者18の近くの(言い換えれば、
図1に示されたZ軸のまわりの)器具14の位置変更のために使用することができる。
【0018】
図1の実施形態は、参照によってここに取り込まれる特許文献4の一部に記載された本出願の譲渡人ビューレイ・インコーポレイテッドのシステムの要素を含むことができる。例えば、器具14は、特許文献4に開示されるように、第1の画像化水平オープンMRIと組み合わせて、放射線治療の間に目標の位置を確認することができる改良された放射線治療を可能とする放射線治療デバイス及び関連したマルチリーフコリメータ(MLC)を備えることができる。
図1では単に一つのアセンブリーが器具14として示されるが、いくつかの実施形態は、器具14に関連される複数のアセンブリー、例えば複数の放射線放射体及び/又はMLCデバイスを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態は、ギャップ12に搭載され、Z軸に対して分布され、構台16上でZ軸に対して回転可能な3つの放射線ヘッドアセンブリー(
図1に図示せず)を含んでもよい。ここに開示される実施形態のいくつかの態様は特許文献4によって開示されたシステムに関して記載されるが、このような態様は開示されたRFコイルアセンブリの使用を要求されない。ここに記載されるRFコイルアセンブリが、関連した器具14の使用と共に、又は使用なしに、如何なるタイプのMRIに使用されてもよいことは熟考される。さらに、器具14を利用するシステムでは、このような器具は放射線源又は直線加速器(LINAC)等の放射線治療デバイスに制限されないが、MRIに使用される如何なるタイプの器具を含むことができる。
【0019】
図2は、
図1に示されたシステムの断面図である。
図2の実施形態は、ギャップ12によって分離された1対の主磁石22a,22bを含む水平のオープンMRI10を図示する。MRI10は患者寝台20の上方の関心領域24を撮像するために使用されることができ、このとき、器具14は治療のいくつかの形態を関心領域24内の患者に同時に実施するために、放射線15を放射するように使用されることができる。MRI10はまた、ギャップ12を横切って延在するRF送信コイルアセンブリ100を含む。RFコイルアセンブリ100の実施形態は以下に非常に詳細に開示される。MRI10は、図示されない追加の従来の構成、例えば勾配磁場コイル及び潜在的に1つ又はそれ以上のシムコイルを含むことができる。図面に用いられ、またこの開示を通して用いられる座標系は、MRIボアを通過する長手方向の軸をZ軸として参照する。X軸はZ軸に対して直角にかつMRI10の側面から側面に延在する。Y軸はZ軸に対して直角にかつMRI10の下面から上面に延在する。
【0020】
図2に示されるように、RFコイルアセンブリ100は器具14と関心領域24との間に延在する。したがって、例えば、器具14が放射線治療システムに使用される放射線放射デバイス等の放射線放射デバイスを備える実施形態において、RFコイルアセンブリの一部は、器具14から関心領域24の患者に向けて向けられる放射線15の経路にある。従来のRFコイルアセンブリをそのような位置に単に挿入することは、MRI動作及び放射線治療デバイスの動作の両方に、また器具14として実施される他のシステムに問題を引き起こす。例えば、従来のRF送信コイルは、器具14からそれらを通して通過する放射線治療ビームを妨げ、RFコイルが臨床的に受け入れられないそのポイントに対する治療の品質を低下するポイントに対してビームを潜在的に減衰する構造を含む。したがって、器具14の動作を妨げることなく適切なMRI撮像を可能にするRFコイルがここに開示される。例えば、ここに開示されるRFコイルの実施形態は、器具14からRFコイルの一部を介して放射される放射線ビームに対して望ましくないレベルの減衰を引き起こすことなく、適切なMRI撮像を可能にすることができる。
【0021】
図3AはRFコイル100として示されるそのようなRFコイルの実施形態を示す。
図3Bは展開されフラットにされたRFコイル100、言い換えると平面状の面上のRFコイル100の平面図を示す。
図3AはMRIシステム10に取り付けられるようにRFコイル100の構成を示す。RFコイル100が取り付けられるとき、一般的に円筒形状を有する内部空間を画成し、円筒形状の長さは
図3Aに示されるようにMRIシステム10のZ軸に平行に延在する。
【0022】
RFコイル100は、両方ともZ軸を同軸とする第1の導電性ループ110及び第2の導電性ループ120を備える。第1及び第2の導電性ループ110,120は、少なくとも第1及び第2の導電性ループ110,120の間でZ軸に平行にそれぞれ延在する複数の導電性ラング150を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
RFコイル100は
図3A及び
図3Bに16個の導電性ラング150を有するように示されるが、RFコイル100の他の実施形態は他の数のラングを有することができる。例えば、RFコイル100の例示的な実施形態は、4の倍数に等しい数の導電性ラング150を含むことができる。しかし、16個よりも少ない導電性ラング150を含む実施形態は、所望よりも少ないRF放射の均一性を有するかもしれない。
【0024】
複数の導電性ラング150のそれぞれは、第1の導電性ループ110と第2の導電性ループ120との間に互いに直列に設けられた第1の端部部分151a、中間部分152及び第2の端部部分151bを備える。第1の端部部分151aは、第1の導電性ループ110に電気的に接続される。第2の端部部分151bは、第2の導電性ループ120に電気的に接続される。中間部分152は、第1の端部部分151aに、及び第2の端部部分151bに電気的に接続される。したがって、電流は、第1の導電性ループ110と第2の導電性ループ120との間に、導電性ラング150の第1の端部部分151a、中間部分152及び第2の端部部分151bを通って流れることができる。
【0025】
絶縁領域180は、1対の隣り合うラング150のそれぞれ、及び、第1及び第2の導電性ループ110,120によって規定される。絶縁領域180は以下により詳細に説明されるように電気的な絶縁材料を備えてもよい。
【0026】
開示されたシステムの一実施形態において、PINダイオード減結合回路が、第1の端部部分151a及び第2の端部部分151bと隣り合う放射線ビームの経路の外側に設けられる。この実施形態は特に低磁場MRI(例えば、1.0Tより小さい磁場強度)と併用して有効である。一実施形態において、同軸ケーブルがPINダイオード減結合の中心を外れた配置を提供するために使用される。同様により有効な方法はまた、セルフキャンセリング磁場プロファイルを有するツイストペア又は幅広な並列導体の利用等を実施されることができる。同調キャパシタは、放射線ビームの外側のラング及びリングのギャップに位置されてもよく、導電体の長さの変化に起因して増加されたインダクタンスを補償するために減少されてもよい。
【0027】
図4は、例示的な導電性ラング150の導電性部分の一般化された側面図を図示するブロック図を示す。
図4は、導電性ラング150の絶縁部分を示さず、その結果導電性ラング150の導電性部分がより明確に図示されることができることに気づく。また、
図4に示された図は縮尺に合わせて描かれる必要なく、導電性ラング150の導電性領域の正確な形状として制限されるように意図されない。さらに、
図4は単に導電性ラング150が薄い導電性部分及び厚い導電性部分のそれぞれをどのように含むのかを図示するために提供される。したがって、
図4に示されるように、導電性ラング150は比較的に薄い導電性部分を含む。言い換えると、各導電性ラング150の少なくともいくつかの導電性部分は、導電性ラング150の他の導電性部分の厚さ(厚さ)よりも実質的に薄い厚さを有することができる。特に、中間部分152は第1及び第2の端部部分151a,152bの導電性部分よりも実質的に薄い導電性部分を含む。また、そのような実施形態において、中間部分152の導電性部分は、第1及び第2の導電性ループ110,120の導電性部分よりも実質的に薄くなることができる。
【0028】
中間部分152の導電性部分は、第1及び第2の端部部分151a,151bの導電性部分の厚さの約5%~約75%である厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、中間部分152の導電性部分は、第1及び第2の端部部分151a,151bの導電性部分の厚さの約10%~約50%である厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、中間部分152の導電性部分は、第1及び第2の端部部分151a,151bの導電性部分の厚さの約15%~約30%である厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、中間部分152の導電性部分は、第1及び第2の端部部分151a,151bの導電性部分の厚さの約20%である厚さを有することができる。
【0029】
第1の導電性ループ110、第2の導電性ループ120、及び複数の導電性ラング150の導電性部分は、MRIのRFコイルの構成に適することが知られている1つ又はそれ以上の多くの異なる導電性材料を備えることができる。例えば、導電性ループ110,120及び導電性ラング150の導電性部分は、銅、銀及び/又はアルミニウムのうちの1つ又はそれ以上を備えることができる。また、いくつかの実施形態において、第1の導電性ループ110、第2の導電性ループ120、及び導電性ラング150のうちの1つ又はそれ以上は、銅、銀及び/又はアルミニウム等の導電性材料の1つ又はそれ以上の層を含むことができる積層された層で形成されることができる。
【0030】
いくつかの実施形態は、最小のロスを生じさせる厚さを有する導電性部分を含むことができる。例えば、最小のロスを生じさせる銅の望ましい厚さは約10個の表皮深さである。表皮深さは次式に従って計算されることができる。
【0031】
【0032】
ここで、
ρ=バルク抵抗率(オーム-メートル)
f=周波数(ヘルツ)
μ0=透磁率定数(ヘンリー/メートル)=4π×10-7
μr=非透磁率(通常 ~1)
したがって、例えば14.7MHzで、銅が導電性材料で、10個の表皮深さは0.172mmに略等しい。しかし、0.172mmの厚さを有する銅の層は、放射線ビーム15に対して、水の約1.53mm(計算:0.172mm×8.9(銅の密度/水の密度)=1.53mm)に略等しい減衰量を発生する。この減衰量は望ましくない減衰量である。しかし、有意な係数で放射線ビーム15の経路の銅の厚さを減少させることによって、減衰は満足なレベルに減少されることができる。例えば、放射線ビーム15の経路の銅の厚さが1/5倍で減少されるとき、銅によって発生される減衰は水の約0.3mm(計算:0.03302mm×8.9=0.3mm)に略等しい量に減少されることができる。
【0033】
したがって、
図2を戻って参照して、比較的に薄い中間部分152は、動作中に器具14から放射される放射線15の経路に供給されることが好ましい。ラング150の中間部分152を比較的に薄い導体を有するように構成することの1つの利点は、薄い導電体が、第1及び第2の端部部分151a,151bを形成するために使用される厚い導電体等の厚い導電体よりも少ない減衰量を放射線15に対して生成することである。したがって、放射線15は、RFコイル100の中間部分152を貫通ことができ、患者18に到達し、さらに放射線治療の望ましいレベルを患者18の関心領域24に及ぼすのに適する。
【0034】
当業者に理解されるように、従来のバードケージ型RFコイルのラングの導電性部分の厚さを減少することは、ラングのRF抵抗値を増加する効果を有する。RFコイルの重要な性能要因は、コイルの品質係数(Qファクター)であり、このQファクターは最大であるべきである。バードケージ型RFコイルでは、QファクターはコイルのRF抵抗値に逆比例する。したがって、放射線ビーム15を減少することを回避するために従来のRFコイルのラングを薄くすることは、コイルのRF抵抗値を増加させ、その結果コイルのQファクターを減少させるという望ましくない効果を有する。
【0035】
本開示は、部分的にのみ薄くされたラング150を提供することによって、この問題に対して解法を提供する。ここに説明されるRFコイルは、比較的に厚いラング端部部分151a,151bと組み合わせた比較的に薄い中間部分152と導電体ループ110,120とを含む。本開示の態様は、導電体ループ110,120のRF電流の量がラング150のそれぞれのRF電流の量よりも著しく高いという所見に基づく。例えば、導電体ループ110,120のRF電流の量は、ラング150のそれぞれのRF電流の量よりも4倍~5倍高いかもしれない。したがって、ラング150の一部を薄くすることによって発生された増加されたRF抵抗値は、導電性ループ110,120のRF抵抗値を減少することによって、またラング150の有意な部分(言い換えると、ラング端部部分151a,151b)のRF抵抗値を減少することによって、著しく補償されることができる。この結果は、RFコイルのQファクター又は性能の受け入れ可能な少ない量の低下である。
【0036】
再び
図3Bを参照して、いくつかの実施形態において、RFコイル100は薄いプリント配線基板(PCB)技術を使用して構成されることができる。このような実施形態において、導電性層の複数の厚さは、(明確性の目的のために
図3Aに示されない)PCB19の一方側又は両側に適用されることができる。導電性層がPCB190の両側に適用される実施形態では、ビアがPCB190の反対側に設けられる導電性層に電気的に接続するように使用されてもよい。いくつかの実施形態において、例えば、ラング150の中間部分152の導電性部分は、PCB190の一方側(上)に設けられてもよく、端部部分151a,151b、第1の端部ループ110及び第2の端部ループ120の全ては、PCB190の他方側(下)に設けられてもよい。いくつかの実施形態において、ビアはPCB190を通って、隣り合う端部部分151a,151bに中間部分152を電気的に接続して使用されてもよい。
【0037】
RFコイル100は、公知のコイル設計及び同調方法に従うラング150及び/又は絶縁領域180において、例えばキャパシタ等の回路要素を含むことによってバンドパスコイル、ローパスコイル、又はハイパスコイルのように構成されることができる。また、導電性層のスロットは渦電流を減少するために提供されることができる。
【0038】
RFコイル100がPCB技術を使用して構成されるように説明されたが、RFコイル100の他の実施形態は、PCB技術を含まない構成の他の方法を含むことができる。例えば、導電性材料の薄いストリップが、ラング150の中間部分152を構成するために、絶縁材料でできた形成物に適用されることができる。端部ループ110,120もラング150の端部部分151a,151bも、厚い導電性材料、層、又は層のグループから構成されることができる。ラング150の端部部分151a,151bは、ラング150の中間部分152の薄い導電性ストリップに半田付けされるか、又は他の方法で接続されることができる。いくつかの実施形態において、導電性材料の所望の厚さは、公知のプレーティングプロセス又は他の公知の構成技術を使用して導電性材料を選択的に厚くすることによって達成されてもよい。
【0039】
絶縁領域180の厚さはまた、例えば放射線ビーム15の均一な減衰を可能にするために様々であることができる。絶縁領域180は、ポリイミドフィルム(例えば、デュポン(ウィルミントン、デラウェア州)から入手可能なKAPTON(商標登録)ポリイミドフィルム)等の1つ又はそれ以上の異なる絶縁材料含むことができる絶縁材料の1つ又は複数の層で形成されることができる。
【0040】
図5は、
図3BのセクションラインV-Vに沿った例示的な断面図を示す。
図5に示された部分は、RFコイル100に対する器具14の位置に従う放射線ビーム15の経路に位置されたRFコイル100の部分を図示する。
図5に示されるように、RFコイル100は、厚さT1を有する非導電性(絶縁)PCB基板190を含む。厚さT2を有する絶縁層192a,192bは、絶縁領域180のPCB基板190上に形成される。厚さT3を有する導電層194は、ラング150の領域のPCB基板190上に形成される。また、厚さT4を有する追加の絶縁層196a,196bは、絶縁領域180のPCB基板190の反対側上に形成される。導電性層194の材料は基板及び絶縁材料よりも大きな放射線減衰を発生するので、基板190及び絶縁層192,196の総厚さT1+T2+T3は、放射線ビーム15に対して均一な減衰を提供するために、基板190及び導電層194の厚さT1+T3よりも大きくなることができる。例えば、いくつかの実施形態において、PCB基板190は厚さT1=0.0762mmを有することができ、絶縁層192a,192bはそれぞれ厚さT2=0.0762mmを有することができ、導電層194は厚さT3=0.03302mmを有することができ、絶縁層196a,196bはそれぞれ厚さT4=0.127mmを有することができる。そのような実施形態において、PCB基板190及び絶縁層192,196は、KAPTONポリイミドフィルムで形成されることができ、導電層194は銅で形成されることができる。層192,194,196を基板190に固定するために用いられてもよい粘着材等のRFコイル100に含まれてもよい
図5に示されない他の材料が、導電層194と実質的に同一の減衰を提供するために層192,196の適切な厚さを決定するときに考慮に入れることができる。
【0041】
層192,194,196のそれぞれが1つの層として示されるが、他のブロック192,194,及び/又は196は1つ又はそれ以上の実際の材料の層として形成されることができる。また、1つ又はそれ以上の層192,194,及び/又は196は1つ又はそれ以上の異なる材料を含むことができる。
【0042】
本開示の図示的な実施形態が添付の図及び例を参照してここに説明されているが、本開示はこれらの詳細な実施形態に限定されないこと、及び、様々な他の変形及び変更は本開示の精神の範囲から逸脱することなく当業者によってこれらに影響を及ぼされてもよいことを理解される。全てのそのような変更及び変更は、添付された特許請求の範囲によって決定される本開示の範囲内に含まれるように意図される。
【0043】
ここに説明される主題は、提案された構成に従ってシステム、装置、方法、及び/又は物品で実施されることができる。前述する発明を実施するための形態に記載された実施態様は、ここに記載された主題を構成する全ての実施態様を代表しない。それどころか、これらは単に、説明された主題に関する態様を構成するいくつかの例である。本開示の原理に係る様々な実施態様が上述されているが、これらは単に例示の方法で提供されており、限定されないことを理解されるべきである。したがって、本発明の広がり及び範囲は、上述した例示的な実施態様のいずれかに限定されるべきでなく、特許請求の範囲及びこの開示から同等な主張に従ってのみ決められるべきである。本開示は、ここに実施態様に開示された計算がここに教示された同一の発想を適用する複数の方法で行われてもよいこと、及び、そのような計算が開示された実施態様と同等であることを考慮する。さらに、上述された利点は、如何なる主張された特許請求の範囲の出願を如何なる又は全ての利点を達成するプロセス及び構造に限定するように意図されない。
【0044】
さらに、見出しはこの開示から主張してもよい如何なる特許請求の範囲に述べた発明を限定し又は特徴付けるべきでない。特に、例示の方法によって、見出しが「技術分野」と記載するが、そのような特許請求の範囲はいわゆる技術分野を説明するためにこの見出しの下に選択された用語によって限定されるべきでない。さらに、「背景技術」の技術の説明は、技術がこの開示の如何なる発明に対して従来技術であるという承認として解釈することではない。「発明の概要」もまた、主張された特許請求の範囲に記載された発明の特徴として考慮されることではない。さらに、一般にこの開示の如何なる参照、又は、用語「発明」の単数での使用は、以下に記載した特許請求の範囲において如何なる限定を含むことを意図しない。複数の発明はこの開示から主張する複数のクレームの限定に従って記載されてもよく、したがってそのような特許請求の範囲は、これらによって保護される発明及びその等価を決める。
【0045】
いくつかの変形が詳細に上述されているが、他の変更又は追加が可能である。特に、さらなる特徴及び/又はバリエーションがここに記載されたこれらに加えて提供されてもよい。例えば、上述した実施態様は、開示された特徴の様々な組み合わせ及びサブ組み合わせ、及び/又は、上述されたいくつかのさらなる特徴の組み合わせ及びサブ組み合わせに向けられてもよい。さらに、添付の図に図示された及び/又はここに説明されたロジックフローは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序又は連続的な順序を要求することを必要としない。
【0046】
上の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲において、「少なくとも1つの」又は「1つ又はそれ以上の」等のフレーズは要素又は特徴の接続後リストによってフォローされてもよい。用語「及び/又は」はまた、2つ又はそれ以上の要素又は特徴のリストに生じてもよい。他の方法が使用された前後関係によって暗黙的に又は明白に矛盾しない限り、そのようなフレーズは、如何なるリストされた要素又は特徴のそれぞれを意味するように、又は、如何なる記載された要素又は特徴を如何なる他の記載された要素又は特徴と組み合わされて意味するように意図される。例えば、フレーズ「A及びBのうちの少なくとも1つ」、「A及びBのうちの1つ又はそれ以上」及び「A及び/又はB」はそれぞれ、「A単独、B単独、又はA及びB共に」を意味するように意図される。同様の解釈はまた、3つ又はそれ以上のアイテムを含むリストのために意図される。例えば、フレーズ「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B及びCのうちの1つ又はそれ以上」及び「A、B及び/又はC」はそれぞれ、「A単独、B単独、C単独、A及びB共に、A及びC共に、B及びC共に、又はA及びB及びC共に」を意味するように意図される。
【0047】
上記及び特許請求の範囲において用語「に基づいて」の使用は、記載されていない特徴又は要素がまた許容されるように、「少なくとも一部に基づいて」を意味するように意図される。