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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】模型部品、及び、模型部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 9/00 20060101AFI20220609BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A63H9/00 U
A63H3/36 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019106472
(22)【出願日】2019-06-06
(62)【分割の表示】P 2018024305の分割
【原出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019141736
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】山上 篤史
(72)【発明者】
【氏名】望月 時道
(72)【発明者】
【氏名】志田 健二
【審査官】神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177237(JP,A)
【文献】特開2009-247798(JP,A)
【文献】特開平09-313742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
G09B 23/00-27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成され
前記第1の部分は、前記第1の色が前記第2の材料を透過して前記模型部品の外部から視認可能となる第1の厚さよりも薄い部分を含むように形成されている、模型部品。
【請求項2】
前記第2の層は、前記第1の部分において、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さから、前記第1の厚さに変化するように形成されている、請求項に記載の模型部品。
【請求項3】
前記第2の厚さは、前記第1の厚さの半分の厚さである、請求項に記載の模型部品。
【請求項4】
前記第1の層で覆われた、前記第2の材料からなる第3の層をさらに有する、請求項1からのいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項5】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成され、
前記第1の層で覆われた、前記第2の材料からなる第3の層をさらに有する、模型部品。
【請求項6】
前記模型部品は、該模型部品が他の模型部品と組み合わされて完成品を構成する場合に前記完成品の外観を構成する面において、前記模型部品を固定するためのランナーと前記第2の層及び前記第3の層が接続する、請求項4又は5に記載の模型部品。
【請求項7】
前記第1の層は、前記模型部品が前記完成品を構成する場合に前記完成品の外観を構成しない面においてランナーと接続する、請求項に記載の模型部品。
【請求項8】
前記第1の色の濃度は前記第2の色の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項9】
前記第1の色と前記第2の色とは、互いに同系色、類似色、または、反対色の関係を有する色である、請求項1から8のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項10】
模型部品の製造方法であって、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と
を含み、
前記第2の工程では、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように前記第2の層が構成され、前記第1の部分は、前記第1の色が前記第2の材料を透過して前記模型部品の外部から視認可能となる第1の厚さよりも薄い部分を含むように形成される、製造方法。
【請求項11】
模型部品の製造方法であって、
第1の色の第1の材料を用いて第1の層を成形する第1の工程と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料を用いて第2の層を成形する第2の工程と
を含み、
記第2の工程では、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように前記第2の層が構成され、
前記第1の工程の前に、前記第2の材料からなる第3の層を成形する第3の工程をさらに含み、
前記第1の工程において、前記第1の層は前記第3の層を覆うように成形され、
前記第1の工程では、前記模型部品が他の模型部品と組み合わされて完成品を構成する場合に前記完成品の外観を構成しない前記模型部品の面に対応する方向から前記第1の材料が提供され、
前記第2の工程及び前記第3の工程では、前記模型部品が他の模型部品と組み合わされて完成品を構成する場合に前記完成品の外観を構成する前記模型部品の面に対応する方向を含む方向から前記第2の材料が提供される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品及び模型部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるプラモデル(登録商標)と呼ばれるような組み立て模型の部品(パーツとも言う)、例えば、玩具の顔に着色する際は、一か所一か所、人の手で色を塗ったり、彩色個所に開口部が設けられたマスクを利用してスプレーで塗装したりすることが行われている(特許文献1を参照)。また、複数の印刷機とコンベアを備えた彩色装置を利用して塗装を自動化したものも提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平3-34226号公報
【文献】特開平8-47585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、色が段階的に濃くなっていくようなグラデーションを施すには技量が必要であり、品質を安定させるのは困難である。また、塗装用の彩色装置を用いる場合、追加の設備投資や、設備が大型化するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、模型部品であって、
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成される。
また本発明は、模型部品であって、第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成され、
前記第1の部分は、前記第1の色が前記第2の材料を透過して前記模型部品の外部から視認可能となる第1の厚さよりも薄い部分を含むように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】発明の実施形態に対応する模型部品の構造説明するための図である。
図3】発明の実施形態に対応する模型部品の断面構造を説明するための図である。
図4】発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法に従って作製される成形物を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同じ要素を示している。また、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態おいて成形材料としてポリスチレンを例示するがこれに限定されず、他の材質(ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)の利用を排除するものではない。
【0010】
まず、発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法を、図1のフローチャートに従って説明する。S101では、模型部品の骨格部分を構成する1次成形層を形成するための1次成形を行う。1次成形層の成形材料(素材)としては、強化ポリスチレン(KPS)を使用することができる。次に、S102では、1次成形層の上側に、1次成形層を覆うように2次成形層を形成するための2次成形を行う。2次成形層の成形材料としては例えば汎用ポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を使用することができる。続くS103では、2次成形層の上側に、2次成形層を覆うように3次成形層を形成するための3次成形を行う。3次成形層の成形材料は、1次成形層と同様のKPSを使用することができる。3次成形層は模型部品の外側表面を形成することになるが、その厚みは部分的に異なっており、薄く形成されている部分は、その下側に形成された2次成形層の色が透ける程度の薄さで形成されている。
【0011】
上記の工程において、1次成形層と、3次成形層とを構成する成形材料はその種類及び色を同一とする。その一方、2次成形層の成形材料は、1次成形層及び3次成形層の成形材料と比較して、少なくとも色が異なっている。1次成形層及び3次成形層に比べ、2次成形層は濃度の高い色とすることができる。例えば、模型部品が人形の顔や体の一部を構成する場合に、表面を構成する3次成形層は肌色であるのに対して、2次成形層は濃い肌色、あるいは、濃いオレンジ色、濃いピンク色などとすることができる。3次成形層の色と2次成形層の色とは同系色であってもよいし、互いに類似色や反対色であってもよい。本実施形態では、このように3次成形層と2次成形層とを異なる色の成形材料で形成し、その上で3次成形層を薄く形成し、その下にある色の異なる2次成形層が透けて見えるようにすることで、グラデーションを表現可能にする。
【0012】
また、各成形層の成形材料の材質については、1次成形層、2次成形層、3次成形層を互いに結合させて一体化させるため、共通の材質とすることができる。上記の例ではKPS、GPPS、HIPSの性質の違いはあれど、ポリスチレンとして共通の材料を用いている。ポリスチレン以外にも、例えばABS樹脂やポリエチレン(PE)等を共通に用いてもよい。また、一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい。
【0013】
上記の3段階の成形工程からなる模型部品の製造方法は、例えば多色成形装置を用いて実施することができる。各成形工程では、その工程に対応する成形型を使用する。具体的には、成形型のランナー溝や各部品を成形するための成形空間(キャビティ)に成形材料を流入させて成形物を形成し、冷却した後に成形型から成形物が取り出される。1次成形、2次成形で作製された成形物については、それぞれ次の成形工程の成形型に取り付けられて、2次成形あるいは3次成形が実行される。多色成形装置を用いた成形方法そのものは公知であるため、より詳細な説明は省略する。
【0014】
図2は、図1の製造方法に従って製造された模型部品の構造の一例を説明するための図である。図2(A)は、本実施形態に対応する3段階の成形工程により作製された、人形玩具の胴体の一部としての模型部品200の一例を示す図である。図2(B)は模型部品200を1次成形層から3次成形層に分離した分離図である。図2(B)に示すように、1次成形層201は胴体の骨格部分を形成している。この骨格は、部材の間に隙間を含む櫛状あるいは格子状の構造を有しているが、当該構造はあくまで一例であって、骨格全体に隙間なく成形材料を充填させた構造としてもよい。
【0015】
2次成形層202は、1次成形層201を覆うように形成され、その表面には凹凸が形成されており、この凹凸により3次成形層203の厚みが調整される。3次成形層203は模型の表面を形成する成形層であって、模型の所望の外形に応じた表面を有している。模型部品200は人形玩具の胴体の一部であるため、3次成形層の表面形状により腹筋の線やウエストのくびれなどが表現されている。
【0016】
2次成形層202と3次成形層203とを比較すると、2次成形層202は3次成形層203の相似形(3次成形層203を縮小した形状)である部分と、相似形でない部分とを含むように構成されている。2次成形層202の相似形の部分は、3次成形層203の厚みが所定値に保たれる。一方、相似形でない部分は、相似形の部分よりも隆起(凸状を形成)しており、これにより、3次成形層203が所定値よりも薄く形成されることになる。ここで、所定値は、3次成形層を透過して2次成形層の色が外側から視認可能でなくなるような3次成形層の厚みのうち、最も薄い厚みに相当する。
【0017】
次に、本実施形態に対応する模型部品200の断面構造を説明する。図3(A)は、図2(A)模型部品200のA-B断面を例示的に示す断面図である。図3(A)の断面図に示すように、模型部品200の最も外側の面を構成する3次成形層203の厚みが、模型部品200の個所によって異なっていることがわかる。例えば、厚み、D1、D2、D3を比較すると、D1>D2≒D3となっている。ここで、D1は3次成形層203の表面から2次成形層202が透けて見えない領域における最も薄くなる厚み(上述の所定値の厚みに相当する)を有することとする。また、D2、D3はそれぞれ、3次成形層203の表面から2次成形層202が透けて見える領域における最薄部の厚みを有する。D2、D3は、D1の所定値の厚みよりも薄ければよい。
【0018】
本実施形態においては、D1、D2、D3の数値をそれぞれD1=d1(例えば、1ミリメートル)、D2=D3=d2(例えば、0.5ミリメートル)とすることができる。ただし、これはあくまで一例であって、使用する素材の性質(透過度)に応じてd1、d2の値をより小さく、あるいは、大きくしてもよい。あるいは、場所によって下地の透過度合いを変更したい場合には、領域内の最薄値を異なる値としてもよい。例えば、D2は、0.5ミリメートルに対し、D3は0.7ミリメートルとしてもよい。
【0019】
このようにして3次成形層203を部分的に薄く形成することにより、3次成形層203を透過してその内側に位置する2次成形層202の色味を模型部品200の外側から観察することが可能となる。図3(B)は3次成形層203を透過して2次成形層202の色味が模型部品200の外側から観察可能になる場合を説明するための図である。図3(B)に示すように、透過領域204は、3次成形層203において厚みが薄く形成された位置に形成される。
【0020】
このとき、3次成形層203の厚みが最薄値のd2から下地が透けて見えなくなるd1まで変化することにより、透過領域204は最薄値において最も濃く下地の2次成形層202の色が透けて見える個所から、徐々に色が薄くなって3次成形層203自体の色に遷り変わるので、観察者は模型部品200の表面においてグラデーションを観察することができる。
【0021】
グラデーションの見え方は、d2からd1への変化のさせかたの違いによって異ならせることが可能である。例えば、厚みの変化の度合いを、急峻とするか、あるいは、緩やかとするかによって、濃い色から薄い色への変化の仕方が異なるため、異なるグラデーション表現を実現することができる。例えば、部分的に濃い色を出したい場合には、d2からd1の変化を急峻とすればよい。その一方、濃い色から淡い色を経て3次成形層203の素材色に遷移させたい場合には、d2からd1への変化を緩やかにする。例えば、厚さd2となる位置を中心とした円形領域において、中心から半径方向に厚さを増加させていき、中心から半径rの位置において厚さd1となるような状況を想定した場合、半径rを大きくすれば変化は緩やかになり、半径rを小さくすれば変化は急峻になる。
【0022】
また、同一の成形材料であればd1の値は固定的に決まるが、d2の値は可変とすることができるので、表現したいグラデーションの態様に応じてd2の値を変更してもよい。グラデーションを付加しようとする領域において、表現しようとする色が最濃値よりも薄くてもよい場合には、例えばd2の値を0.5ミリメートルではなく0.7ミリメートルとすることができる。
【0023】
次に、図4を参照して、本実施形態に対応する図1の成形方法に従い、1次成形層から3次成形層までを順に成形することにより成形された成形物の構成について説明する。図4(A)は、1次成形により成形された成形物400の一例を示す図である。図4(B)は、2次成形により成形された成形物410の一例を示す図である。図4(C)は、3次成形により成形された成形物420の一例を示す図である。
【0024】
図1のS101の1次成形において、まず成形物400が作製される。成形物400は主ランナー401、副ランナー402、部品403で構成される。成形物400は、強化ポリスチレン(KPS)で形成されている。主ランナー401は部品403の周囲を取り囲むように形成され、部品201は、副ランナー402を介して主ランナー401と接続されることで、主ランナー401に対して固定される。主ランナー401及び副ランナー402とは、不図示の第1の成形型(通常、雄型と雌型からなる)における部品403に対応するキャビティに成形材料を流入させるための溝に対応している。S101の1次成形においては、第1の成形型の主ランナー溝から副ランナー溝を介して、部品403に対応するキャビティに成形材料(KPS)を流入させ、キャビティ、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより成形物400を作製することができる。
【0025】
次にS102の2次成形において、成形物410が作製される。成形物410は成形物400を汎用ポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)により少なくとも一部を覆うことにより形成される。成形物410は、成形物400に加えて、主ランナー411、副ランナー412、部品413で構成される。本実施形態では、主ランナー411から副ランナー412を介して部品403表面にGPPSまたはHPPSを形成することにより、部品413が形成されている。主ランナー411は、副ランナー402と接続することにより、主ランナー401に対して固定される。また、部品413は、副ランナー412を介して主ランナー411と接続されることで、主ランナー411を介して主ランナー401に対して固定される。
【0026】
主ランナー401等と同様に、主ランナー411及び副ランナー412とは、不図示の第2の成形型における部品413に対応するキャビティに成形材料を流入させるための溝に対応している。S102の2次成形においては、成形物400を第2の成形型内に固定した後、第2の成形型の主ランナー溝から副ランナー溝を介して、部品413に対応するキャビティに成形材料(GPPSまたはHIPS)を流入させ、キャビティ、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより成形物410を作製することができる。
【0027】
なお、2次成形を行う場合、ランナー溝を部品413の上下にのみ配置している。これは以下の理由による。まず、部品413は、人形の胴体の一部であって、上下の部分は他の部品と接続されるように構成されている。したがって、接続面に当たる上下の面は完成品の人形玩具の表面に露出することはない。それに対して、側面は人形の胴体そのものであり、完成品の人形玩具の表面に露出することになる。その際に、副ランナーとの接続部分が側面に残っていると、完成品の外観に影響を与えることになる。そこで、2次成形により成形品410を成形する場合には、完成品の外観に影響を与えない方向から成形材料を供給するようにランナー溝を配置している。
【0028】
次にS103の3次成形において、成形物420が作製される。成形物420は成形物410をKPSにより少なくとも一部を覆うことにより形成される。成形物420は、成形物410に加えて、主ランナー421、副ランナー422、部品423で構成される。成形物420の表面はKPSで覆われることになるが、少なくとも完成品の人形玩具において表面に露出する部分がKPSで覆われていればよく、成形物420全体がKPSで覆われている必要はない。
【0029】
主ランナー421は部品423の周囲を取り囲むように形成される。図4(C)では、周囲を取り囲んでいるが、左側、右側だけに主ランナー421を設けてもよい。部品423は、副ランナー422を介して主ランナー421と接続される。図4(C)では、成形物420を表側から見ているため、副ランナー422と部品423との接続が副ランナー402に隠れて示されていない個所があるが、そのような個所については、副ランナー402の裏側で副ランナー422と部品423とが接続しているものである。また、副ランナー422は、主ランナー401または副ランナー402と接続しており、当該接続により部品423は主ランナー401に対して固定される。
【0030】
主ランナー401等と同様に、主ランナー421及び副ランナー422とは、不図示の第3の成形型における部品423に対応するキャビティに成形材料(KPS)を流入させるための溝に対応している。S103の3次成形においては、成形物410を第3の成形型内に固定した後、第3の成形型の主ランナー溝から副ランナー溝を介して、部品423に対応するキャビティに成形材料を流入させ、キャビティ、主ランナー溝及び副ランナー溝のすべてに成形材料を充填させたのち、冷却することにより成形物420を作製することができる。
【0031】
以上により、成形物420を成形することができる。図4(C)に示すように、成形物420の側面側に接続しているのは、すべてKPSの副ランナーであって、GPPSまたはHPPSの副ランナーは側面側には存在せず、上下にのみ存在する。したがって、完成品の人形玩具の胴体表面には、GPPSまたはHPPS素材のランナーとの接続跡が残ることがない。
【0032】
上記の実施形態の説明においては、まず1次成形により部品の骨格に相当する部分を形成した後に、2次成形、3次成形を行う方法を説明した。しかし、発明の実施形態はこの手順に限定されるものではない。例えば、骨格部分を作製する必要がない箇所については、1次成形を省略して2次成形から開始してもよい。
【0033】
骨格を作製する必要があると考えられるのは、上記の実施形態で説明した胴体のような、表面に2次成形の素材を露出させられない部品を作製する場合である。例えば、人形玩具の場合、胴体、腕、足といった部品は、その表面が露出することが想定されるので、そのような部品については、ランナーに対する固定を確実に行うために骨格を作製する。仮に、このような部品について骨格を作製しない場合、2次成形において作製された2次成形層のみで主ランナーおよび副ランナーが形成され、3次成形前の部品は2次成形において作製された副ランナーのみで主ランナーに接続されることになる。2次成形層は、ランナーの接続部分が人形玩具の表面に露出しないように成形材料の射出方向が限定されるため主ランナーに対する接続が弱いものとなり、3次成形材料を成形する際の射出圧に耐えられない可能性がある。また、骨格を作製しない場合、部品は3次成形において作製された副ランナーによって主ランナーの左右方向に接続されることになる。この場合、3次成形において作製される3次成形層は薄く、また、部品表面に接続跡が残らないように接続部分をできるだけ細くするため、部品と副ランナーの接続部分の強度は比較的弱いものとなるので、成形物をランナーに対して確実に固定することが難しくなる。これに対して、1次成形で骨格を作製した場合には、部品と副ランナーとの接続部分は2次成形層と3次成形層とを貫通して部品の接続を確保することになるので、接続部分の強度を高めることができる。なお、この際、本実施形態のように1次成形層と3次成形層とを構成する成形材料を同一色としておけば、1次成形で形成された骨格の部品と副ランナーとの接続部分が3次成形層を貫通していても同じ色なので目立ちづらくなるため、完成品の外観を良くする上で好ましい。
【0034】
上記の理由により、完成品表面における2次成形層の露出を避けるべき部品については1次成形を行うことが望ましい。一方、表面に露出していても他の部品により覆われて隠れてしまうため結果的に露出されないような部品、例えば、人形玩具の顔などは、端部は髪の毛の部品により隠すことができるので、1次成形を省略して2次成形から開始してもよい。また、腕や胴体であっても、装飾品を別途取り付けることにより表面に露出しない部分を含む場合には、当該装飾品により隠れる部分においてランナーとの接続を確保することが可能となるので、1次成形を省略してもよい。
【0035】
また、2次成形において用いる素材の色が1色の場合を説明したが、複数色の素材を重ねて使用してもよい。例えば、上述の実施形態では、人形玩具の表面を形成する3次成形層の色が肌色であり、2次成形層の色がオレンジあるいはピンクである場合を説明したが、陰影を与えるために、2次成形層の下に黒色層をさらに形成してもよい。その際に、上記実施形態と同様にして層の厚みを調整することにより、陰影の与え方を調整することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することできる。
図1
図2
図3
図4