(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】抗真菌薬乾燥粉末
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20220609BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220609BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220609BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220609BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220609BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220609BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K47/18
A61K47/26
A61P31/10
A61K9/12
A61K9/14
A61K47/02
A61K47/12
A61P11/00
A61K9/72
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2019520036
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 US2017056497
(87)【国際公開番号】W WO2018071757
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-12
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517120046
【氏名又は名称】パルマトリックス オペレーティング カンパニー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェイスン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】スン,ジーン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハバ,デビッド,エル.
(72)【発明者】
【氏名】サーンダース,ロバート,クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】トレーシー,ヒラリー,エス.
(72)【発明者】
【氏名】オコーナー,アンドリュー,エメット
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-517127(JP,A)
【文献】特表2007-505830(JP,A)
【文献】特表2008-520307(JP,A)
【文献】International Journal of Nanomedicine,2012年,Vol.7,pp.5475-5489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
A61K 45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)結晶粒子状形態の
イトラコナゾールと、b)安定剤と、c)
ロイシンと、を含有する均質な呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末であって、前記結晶粒子状形態は、約50nm~約2500nmの二次粒子
(sub-particle)の形態であ
り、
前記乾燥粉末は、
総容量4Lで60L/分でRS01吸入器を用いてサイズ3HPMCカプセルから10mgの乾燥粉末を動かし、
UniDose収集システムを使用してグラスマイクロファイバーフィルター膜上に呼吸用質量を収集し、及び
37℃で2.0%ドデシル硫酸ナトリウムを含むpH7.4のリン酸緩衝化食塩水溶解媒体500mlを使用してUSP V Paddle Over Disk装置中で溶解プロフィールを評価すること
により測定した場合、4.13分以上16.84分未満の溶解半減期を有する、乾燥粉末。
【請求項2】
前記二次粒子が、約50nm~約800nm(Dv50)である、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項3】
前記二次粒子が、約50nm~約200nm(Dv50)である、請求項1に記載の乾燥粉末。
【請求項4】
前記
イトラコナゾールが、約1重量%~約95重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項5】
前記
イトラコナゾールが、約40重量%~約90重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項6】
前記
イトラコナゾールが、約40重量%~約60重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項7】
前記
イトラコナゾール:安定剤(wt:wt)の比が、約1:1~50:1である、請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項8】
前記安定剤が、約0.05重量%~約45重量%の量で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項9】
前記
ロイシンが、約10重量%~約99重量%又は約5重量%~約50重量%から選択される量で存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項10】
前記
乾燥粉末が、一価金属カチオン塩、二価金属カチオン塩、アミノ酸、糖アルコール、又はそれらの組合せを
さらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項11】
前記
乾燥粉末が、塩化ナトリウム
及び硫酸ナトリウ
ムからなる群より選択される
1又は複数種の賦形剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項12】
前
記賦形剤が、塩化ナトリウ
ムである、請求項11に記載の乾燥粉末。
【請求項13】
前
記賦形剤が、硫酸ナトリウ
ムである、請求項11に記載の乾燥粉末。
【請求項14】
前記
二価金属カチオン塩が、乳酸マグネシウム
である、請求項
10に記載の乾燥粉末。
【請求項15】
前記安定剤が、ポリソルベート80であり、10wt%以下の量で存在する、請求項1~
14のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項16】
前記安定剤が、オレイン酸
又はその塩であり、10wt%以下の量で存在する、請求項1~
14のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項17】
前記呼吸用乾燥粒子が、約10ミクロン以下の体積中央幾何学径(VMGD)、0.2g/cc~1.0g/ccのタップ密度、約1ミクロン~約5ミクロンのMMAD、及びレーザ回析により測定して、約1.5以下の0.5/4バール分散性比(0.5/4バール)を有する、請求項1~
16のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項18】
前記乾燥粉末が、総用量約25%以上の5ミクロン未満のFPFを有する、請求項1~
17のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項19】
前記乾燥粉末が、カプセルベースの受動乾燥粉末吸入器を用いて、患者に送達される、請求項1~
18のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項20】
前記呼吸用乾燥粒子が、以下の条件:総質量10mgを含有するサイズ3カプセルを用いて3秒間にわたり吸入流量30LPMで、毎分約0.036sqrt(kPa)/リットルの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出されるとき、少なくとも80%のカプセル放出粉末質量を有し、前記総質量は、呼吸用乾燥粒子からなり、ここで、前記吸入器から放出される前記呼吸用乾燥粒子の体積中央幾何学径が、レーザ回析により測定して、5ミクロン以下である、請求項1~
19のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
【請求項21】
真菌感染症の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【請求項22】
真菌感染症の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な嚢胞性線維症患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【請求項23】
真菌感染症の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な喘息患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【請求項24】
アスペルギルス症の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【請求項25】
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【請求項26】
呼吸器疾患の急性増悪を治療するための又はその頻度若しくは重症度を軽減するための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な患者の呼吸器に投与可能なように適合されており、前記急性増悪が真菌感染症である、使用。
【請求項27】
免疫不全患者の真菌感染症の治療のための医薬の製造における請求項1~
20のいずれか1項に記載の乾燥粉末の使用であって、前記医薬が、それが必要な免疫不全患者の呼吸器に投与可能なように適合されている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年10月14日に提出された米国特許出願第62/408,376号明細書に対する優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
アスペルギルス属種(Aspergillus spp.)及びその他の真菌による肺真菌感染症は、嚢胞性線維症(CF)患者など、呼吸機能が低下した患者において益々大きな懸念事項となっている。例えば、患者は、慢性肺真菌感染症又はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を有し得るが、これは、典型的に、重症の炎症状態であり、長期にわたって経口ステロイドにより治療される。いくつかの抗真菌薬が知られており、そうしたものとして、トリアゾール(例えば、イトラコナゾール)、ポリエン(例えば、アムホテリシンB)、及びエキノキャンディンなどがある。抗真菌薬は、典型的に、水溶性が低く、しかも経口バイオアベイラビリティも乏しいため、安全且つ治療レベルの抗真菌薬を供給するために投与することができる医薬製剤の取得は、困難であった。抗真菌薬は、典型的に、肺感染症及びABPAをはじめとする真菌感染症の治療薬として経口又は静脈内(IV)製剤として投与される。しかし、こうした製剤は、乏しい経口アベイラビリティ、有害な副作用及び毒性、並びに広範な薬物同士の相互作用によって制限される。理論的に全身副作用を低減し得る代替アプローチ、例えば、吸入による気道への送達なども、困難を呈する。特に、難水溶性の薬剤は、吸入されると、局所肺毒性(例えば、局所炎症、肉芽腫)を引き起こすことがよく知られている。難溶性薬剤の局所毒性に取り組む従来のアプローチは、例えば、非晶質製剤を用いて、その溶解速度を高めるように薬剤を製剤化することである。
【0003】
イトラコナゾールの化学構造は、米国特許第4,916,134号明細書に記載されている。イトラコナゾールは、治療利益(例えば、真菌感染症の治療において)をもたらすトリアゾール抗真菌薬であり、SPORANOX(登録商標)(イトラコナゾール;Janssen Pharmaceuticals)中の活性成分であり、これは、経口若しくは静脈内送達され得る。イトラコナゾールは、当技術分野で公知の様々な方法を用いて、合成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真菌感染症を治療するために安全に投与することができる抗真菌薬の新規製剤が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1)結晶粒子形態の抗真菌薬と、2)安定剤と、任意選択で3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する均質な呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関する。1つの具体的な態様では、結晶粒子形態の抗真菌薬は、ポリエン抗真菌薬ではない。別の具体的な態様では、本発明は、1)結晶粒子形態のトリアゾール抗真菌薬と、2)安定剤と、任意選択で3)1又は複数種の賦形剤とに関する。さらに別の具体的な態様では、トリアゾール抗真菌薬は、イトラコナゾールである。
【0006】
本発明の全ての態様において、結晶粒子形態の抗真菌薬は、約50nm~約5,000nm(Dv50)の二次粒子(sub-particle)の形態である。一実施形態では、二次粒子は、約50nm~約800nm(Dv50)である。一実施形態では、二次粒子は、約50nm~約300nm(Dv50)である。一実施形態では、二次粒子は、約50nm~約200nm(Dv50)である。一実施形態では、二次粒子は、約100nm~約300nm(Dv50)である。抗真菌薬は、約1重量%~約95重量%の量で存在する。抗真菌薬は、約40重量%~約90重量%の量で存在する。抗真菌薬は、約55重量%~約85重量%の量で存在する。抗真菌薬は、約55重量%~約75重量%の量で存在する。抗真菌薬は、約65重量%~約85重量%の量で存在する。抗真菌薬は、約40重量%~約60重量%の量で存在する。好ましくは、抗真菌薬は、少なくとも約50%結晶性である。抗真菌薬:安定剤(wt:wt)の比は、約1:1~50:1である。抗真菌薬:安定剤の比は、10:1以上、約10:1、又は約20:1であってよい。抗真菌薬:安定剤の比は、約5:1~約20:1、約7:1~約15:1、又は約9:1~約11:1であってよい。安定剤は、約0.05重量%~約45重量%の量で存在する。安定剤は、約4重量%~約10重量%の量で存在してよい。1又は複数種の賦形剤は、約10重量%~約99重量%の量で存在する。1又は複数種の賦形剤は、約5重量%~約50重量%の量で存在してよい。賦形剤は、ナトリウム塩であってよい。
【0007】
一部の実施形態では、1又は複数種の賦形剤は、一価金属カチオン塩、二価金属カチオン塩、アミノ酸、糖アルコール、又はそれらの組合せを含み得る。1又は複数種の賦形剤は、塩化ナトリウム又は、硫酸ナトリウム、及びロイシンなどのナトリウム塩及びアミノ酸を含み得る。1又は複数種の賦形剤は、乳酸マグネシウム及びロイシンなどのマグネシウム塩及びアミノ酸を含み得る。
【0008】
一部の実施形態では、安定剤は、ポリソルベート80又はオレイン酸若しくはその塩であってよい。安定剤は、ポリソルベート80であってよく、10wt%以下の量で存在し得る。安定剤は、ポリソルベート80であってよく、7wt%以下の量で存在し得る。安定剤は、ポリソルベート80であってよく、3wt%以下の量で存在し得る。安定剤は、オレイン酸であってよく、10wt%以下の量で存在し得る。安定剤は、オレイン酸であってよく、7wt%以下の量で存在し得る。安定剤は、オレイン酸であってよく、3wt%以下の量で存在し得る。
【0009】
一部の実施形態では、呼吸用乾燥粒子は、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下の体積中央幾何学径(VMGD)を有し得る。一部の実施形態では、呼吸用乾燥粒子は、0.2g/cc以上のタップ密度を有し得る。呼吸用乾燥粒子は、0.2g/cc~10g/ccのタップ密度を有し得る。
【0010】
一部の実施形態では、乾燥粉末は、約1ミクロン~約5ミクロンのMMADを有する。乾燥粒子は、レーザ回析により測定して、約1.5未満の1/4バール分散比(1/4バール)を有し得る。乾燥粒子は、レーザ回析により測定して、約1.5以下の0.5/4バール分散性比(0.5/4)を有し得る。乾燥粉末は、総用量が約25%以上の5ミクロン未満のFPFを有し得る。
【0011】
本発明は、さらに、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、真菌感染症を治療する方法にも関する。本発明はまた、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、嚢胞性線維症を治療する方法にも関する。本発明は、さらにまた、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、喘息を治療する方法にも関する。本発明は、さらに、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、アスペルギルス症を治療する方法にも関する。本発明はまた、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療する方法にも関する。さらに、本発明は、本明細書に記載の乾燥粉末を、それが必要な被験者に吸入により投与することによって、呼吸器疾患の急性増悪を治療する、又はその重症度を軽減する方法にも関する。さらにまた、本発明は、真菌感染症の治療に使用するための本明細書に記載の乾燥粉末にも関する。本発明は、アスペルギルス症の治療に使用するための本明細書に記載の乾燥粉末にも関する。本発明は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療に使用するための本明細書に記載の乾燥粉末にも関する。本発明は、個体における呼吸器疾患の急性増悪の治療に使用するための本明細書に記載の乾燥粉末にも関する。
【0012】
乾燥粉末は、カプセルベースの受動乾燥粉末吸入器を用いて、患者に送達することができる。
【0013】
本発明はまた、任意選択の賦形剤と共に界面活性剤安定化懸濁液を噴霧乾燥することを含む工程により製造される乾燥粉末にも関し、この工程で、組成的に均質な乾燥粒子が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】製剤I及びIIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図2】製剤III及びIVの粒子X線回析プロットを示す。
【
図3】製剤V及びVIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図4】製剤VII及びVIIIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図7】製剤XIIIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図10】製剤XVIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図11】製剤XVIIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図12】製剤XVIIIの粒子X線回析プロットを示す。
【
図13】製剤XIXの粒子X線回析プロットを示す。
【
図14】UniDoseを用い、60L/分でRS01からイトラコナゾール粉末製剤をエーロゾル化し、次にUSP Apparatus II構成を用いたPOD溶解試験後に収集したISMの累積質量溶出を示す。
【
図15】UniDoseを用い、60L/分でRS01からのイトラコナゾール粉末製剤をエーロゾル化し、次にUSP Apparatus II構成を用いたPOD溶解試験後に収集したISMの累積パーセンテージ質量溶出を示す。
【
図16a】異なる粉末製剤中のイトラコナゾールの溶解半減期と粒径との間の関係を示す。
【
図16b】異なる粉末製剤中のイトラコナゾールの溶解半減期と表面積との間の関係を示す。
【
図17】異なる粉末製剤中のイトラコナゾールの溶解半減期とCmaxとの間の関係を示す。
【
図18】製剤XIXに対する比として表されるイトラコナゾールの異なる粉末製剤の溶解半減期と用量調節Cmaxとの間の関係を示す。
【
図19】UniDoseを用い、15L/分でマイクロミスト(Micro Mist)ネブライザーからイトラコナゾール懸濁液製剤(製剤XX及びXXI)をエーロゾル化し、次にUSP Apparatus II構成を用いたPOD溶解試験後に収集したISMの累積パーセンテージ質量溶出を示す。
【
図20】cNGIのステージ4に付着したイトラコナゾールの異なる粉末製剤から回収された用量の累積質量パーセントを示す。
【
図21】異なる粉末製剤中のイトラコナゾールの溶解半減期とCmaxとの間の関係を示す。
【
図22】製剤XIXに対する比として表されるイトラコナゾールの異なる粉末製剤の拡散速度と用量調節Cmaxとの間の関係を示す。
【
図23】cNGIのステージ4に付着したイトラコナゾールの噴霧された懸濁液製剤(製剤XX及びXXI)から回収された用量の累積質量パーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、結晶粒子形態の抗真菌薬を含有する呼吸用乾燥粉末に関する。本発明者らは、非晶質形態の抗真菌薬(イトラコナゾールなど)を含有する乾燥粉末製剤が、治療用量で吸入されると、肺滞留時間が短く、肺:血漿曝露比が低く、しかも肺組織に対して望ましくない毒性作用を有することを見出した。いずれの特定の理論にも拘束されることは意図しないが、材料の結晶形態(例えば、ナノ結晶形態)は、肺においてより遅い溶解速度を有するため、投与後24時間にわたってより継続的な曝露をもたらすと共に、全身曝露を最小限にすると考えられる。加えて、非晶質を投与しない場合、肺組織内に観察される局所毒性は、総用量及び曝露時間に関して、薬物に対する肺組織の総曝露と関連しない。イトラコナゾールは、ヒト又は動物の細胞に対して既知の活性がないために、局所濃度を増加しても、局所毒性の原因を説明するための局所薬理活性がない。その代わり、非晶質形態の毒性は、イトラコナゾールの非晶性に派生する溶解度の増大に関連すると思われ、これによって間質空間内に薬物の過飽和が起こり、その結果生じた組織内の再結晶化が、局所肉芽腫性炎を引き起こす。驚くことに、本発明者らは、結晶粒子形態の抗真菌薬を含有する乾燥粉末が肺組織に対して毒性が低いことを見出した。このことは、結晶粒子抗真菌薬は、非晶質形態に比べ溶解速度が低く、非晶質形態の抗真菌薬の対応用量よりも長く肺内に滞留するため、意外であった。
【0016】
抗真菌薬の結晶性、並びに抗真菌薬結晶粒子のサイズは、有効な療法及び肺内の毒性低減のために重要であると思われる。いずれの特定の理論に拘束されることは意図しないが、抗真菌薬の結晶粒子は、より大きな結晶粒子よりも高速で気道被覆液中に溶解する(一部には、総表面積量が大きいため)と考えられる。また、結晶性抗真菌薬は、非晶質抗真菌薬よりも低速で気道被覆液中に溶解することも考えられる。従って、所望の結晶度及び粒径をもたらす結晶粒子形態の抗真菌薬を用いて、本明細書に記載の乾燥粉末を製剤化することができ、さらには、肺内の許容できない毒性を回避しながら、所望の薬物動態特性を達成するように設計することができる。
【0017】
本開示の呼吸用乾燥粉末は、1)結晶粒子形態の抗真菌薬と、2)安定剤と、任意選択で3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する均質な呼吸用乾燥粒子を含む。従って、乾燥粉末は、安定剤と、任意選択で1又は複数種の賦形剤と、結晶性抗真菌薬を含む二次粒子(呼吸用乾燥粒子より小さい粒子)と、を含有する呼吸用乾燥粒子を特徴とする。こうした呼吸用乾燥粒子は、任意の好適な方法、例えば、結晶粒子形態の抗真菌薬が、賦形剤の水溶液中に懸濁した供給原料を調製し、この供給原料を噴霧乾燥することにより、調製することができる。
【0018】
乾燥粉末は、経口吸入などの吸入により患者に投与してもよい。経口吸入を達成するために、受動乾燥粉末吸入器などの乾燥粉末吸入器を使用してもよい。患者の真菌感染症、例えばアスペルギルス感染症などを治療又は予防するために、乾燥粉末製剤を使用することができる。乾燥粉末により利益を受ける患者は、例えば、嚢胞性線維症、喘息に罹患した患者、及び/又は重度免疫不全のために真菌感染症を発症するリスクが高い患者である。吸入される抗真菌薬(例えば、イトラコナゾール)製剤は、これらの患者を治療する上での経口又は静脈内(IV)製剤の多くの欠点を最小限にする。
【0019】
定義
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、記載される値の±5%の相対範囲を指し、例えば、「約20mg」は、「20mg±1mg」となる。
【0020】
本明細書で使用されるとき、呼吸用乾燥粒子の「投与」又はそれを「投与すること」という用語は、被験者の呼吸器に呼吸用乾燥粒子を導入することを指す。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「非晶質」は、粉末X線回析(XRD)により分析する場合、有意な結晶性の欠如を示す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「カプセル放出粉末質量」又は「CEPM」は、吸入操作中にカプセル又は用量単位容器から放出される乾燥粉末製剤の量を指す。CEPMは、典型的に、吸入操作の前及び後にカプセルを計量して、除去された粉末製剤の質量を決定することにより重量測定で測定される。CEPMは、除去された粉末の質量(ミリグラム)、又は吸入操作前のカプセル内の初期充填粉末質量のパーセンテージのいずれかとして表すことができる。
【0023】
用語「結晶粒子形態」は、本明細書で使用されるとき、粒子(すなわち、本明細書に開示する乾燥粉末を含む呼吸用乾燥粒子より小さい二次粒子)の形態であり、その中で、抗真菌薬が少なくとも約50%結晶性である、抗真菌薬(塩、水和物、鏡像体などをはじめとするその薬学的に許容される形態を含む)を指す。抗真菌薬の結晶化度パーセントは、二次粒子中に存在する化合物の総量に対して結晶形態である化合物のパーセンテージを指す。所望であれば、抗真菌薬は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%結晶化度であってよい。結晶粒子形態中の抗真菌薬は、約50ナノメートル(nm)~約5,000nm体積中央径(Dv50)、好ましくは80nm~1750nm Dv50、又は好ましくは50nm~800nm Dv50の粒子の形態である。
【0024】
用語「分散性」は、呼吸用エーロゾル中に発散させようとする乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子の特徴を表す技術用語である。乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子の分散性は、本明細書において、一態様では、1バールの分散(すなわち、標準)圧力で測定される体積中央幾何学径(VMGD)を4バールの分散(すなわち、標準)圧力で測定したVMGDで割った商、又はHELOS/RODOSを用いるなど、レーザ回析により測定される0.5バールのVMGDを4バールのVMGDで割った商として表される。これらの商は、本明細書において、それぞれ「1バール/4バール分散性比」及び「0.5バール/4バール分散性比」と呼ばれ、分散性は低い商と相関する。例えば、1バール/4バール分散性比は、HELOS又は他のレーザ回折システムにより測定される通り、約1バールでRODOS乾燥粉末分散器(若しくは同等の技術)の開口部から放出される乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子のVMGDを、HELOS/RODOSにより4バールで測定される同じ乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子のVMGDで割ったものを指す。従って、高度に分散性の乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子は、1.0に近い1バール/4バール分散性比又は0.5バール/4バール分散性比を有することになる。高度に分散性の粉末は、互いに集まって塊になる、凝集する、又は集塊形成する傾向が低く、及び/又は互いに集まって塊になる、凝集する、又は集塊形成しても、吸入器から放出されると、容易に分散又は解凝集されて、被験者により吸入される。別の態様では、分散性は、流量の関数として、吸入器から放出される粒径を測定することによって評価する。吸入器を介した流量が減少するにつれ、粉末に輸送されて、これを分散させるのに利用可能な空気流中のエネルギーの量も減少する。高度に分散性の粉末は、空気力学的にはその質量中央空気力学径(MMAD)を、又は幾何学的には、人による吸入に典型的な流量、例えば、毎分約15~約60リットル(LPM)、約20~約60LPM、又は約30LPM~約60LPMなどの範囲にわたって実質的に増加しないそのVMGDを特徴とする粒度分布を有する。高度に分散性の粉末はまた、より低い吸入流量であっても約80%以上の放出粉末質量若しくは用量、又はカプセル放出粉末質量若しくは用量を有し得る。VMGDは、体積中央径(VMD)、×50、又はDv50と呼ばれることもある。
【0025】
用語「乾燥粒子」は、本明細書で使用されるとき、合計最大約15%の水及び/又は別の溶媒を含有し得る呼吸用粒子を指す。好ましくは、乾燥粒子は、乾燥粒子の重量に基づき、合計最大約10%、合計最大約5%、合計最大約1%、又は合計約0.01%~1%の水及び/若しくは別の溶媒を含有するか、又は水及び/若しくは別の溶媒を実質的に含まなくてもよい。
【0026】
用語「乾燥粉末」は、本明細書で使用されるとき、呼吸用乾燥粒子を含む組成物を指す。乾燥粉末は、合計最大約15%の水及び/又は別の溶媒を含有し得る。好ましくは、乾燥粉末は、乾燥粒子の重量に基づき、合計最大約10%、合計最大約5%、合計最大約1%、又は合計約0.01%~1%の水及び/若しくは別の溶媒を含有するか、又は水及び/若しくは別の溶媒を実質的に含まなくてもよい。一態様では、乾燥粉末は、呼吸用乾燥粉末である。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、所望の効果;例えば、患者、例えば嚢胞性線維症(CF)患者、喘息患者及び免疫不全患者の呼吸器内の真菌感染症、例えば、アスペルギルス感染症の治療;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療;並びに呼吸器疾患の急性増悪の治療又はその頻度若しくは重症度の軽減を達成するのに必要な薬剤の量を指す。具体的な使用のための実際の有効量は、具体的な乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子、投与方法、被験者の年齢、体重、全身の健康状態、及び治療対象の症状若しくは状態の重症度に応じて変動し得る。投与しようとする乾燥粉末及び乾燥粒子の好適な量、及び具体的な患者の投薬スケジュールは、上記及びその他の考察事項に基づいて、通常の知識を有する臨床医が決定することができる。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「放出量」又は「ED」は、発射又は分散イベント後の好適な吸入装置からの薬物製剤の送達の示度を指す。より具体的には、乾燥粉末製剤の場合、EDは、単位用量パッケージから引き出され、吸入装置のマウスピースから出る粉末のパーセンテージの測度である。EDは、吸入装置により送達される用量と名目用量(すなわち、発射前に好適な吸入装置内に入っている単位用量当たりの粉末の質量)の比として定義される。EDは、実験により測定されるパラメータであり、USP Section 601 Aerosols,Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered-Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers,米国薬局方協会(United States Pharmacopeia convention),Rockville,MD,13th Revision,222-225,2007の方法を用いて決定することができる。この方法は、患者への投与を模倣するようにセットアップされたin vitro装置を使用する。
【0029】
用語「名目用量」は、本明細書で使用されるとき、1mg以上の抗真菌薬の個別用量を指す。名目用量は、1カプセル、ブリスター、又はアンプルを用いて、吸入/投与される総用量である。
【0030】
用語「FPF(<X)」、「FPF(<Xミクロン)」、及び「Xミクロン未満の微粒子分率」(Xは、例えば、3.4ミクロン、4.4ミクロン、5.0ミクロン、又は5.6ミクロンに等しい)は、本明細書で使用されるとき、Xミクロン未満の空気力学径を有する乾燥粒子のサンプルの分率を指す。例えば、FPF(<X)は、ステージ2及び2ステージ崩壊アンデルセン・カスケード・インパクター(Andersen Cascade Impactor)(ACI)の最終収集フィルター上に付着した呼吸用乾燥粒子の質量を、計器への送達用のカプセル中に計量された呼吸用乾燥粒子の質量で割ることによって決定することができる。このパラメータは、「FPF_TD(<X)」として識別することができ、ここで、TDは、総用量を意味する。同様の測定を、8ステージACIを用いて実施することもできる。8ステージACIカットオフは、標準60L/分流量で異なるが、8ステージ完全データセットからFPF_TD(<X)を補外することもできる。8ステージACI結果は、FPFを決定するためにカプセル中にあったものではなく、ACI中に収集された用量を用いるUSP方法によって計算することもできる。同様に、7ステージ次世代インパクター(NGI)を用いることができる。
【0031】
用語「FPD(<X)」、「FPD<Xミクロン」、「FPD(<Xミクロン)」及び「Xミクロン未満の微粒子用量」(Xは、例えば、3.4ミクロン、4.4ミクロン、5.0ミクロン、又は5.6ミクロンに等しい)は、本明細書で使用されるとき、Xミクロン未満の空気力学径を有する呼吸用乾燥粒子により送達される治療薬の質量を指す。FPD<Xミクロンは、標準60L/分流量の8ステージACIを使用し、最終収集フィルターに付着した質量を合計して、FPD値を直接計算するか、又はFPD値を補外するかのいずれかによって決定することができる。
【0032】
用語「呼吸用」は、本明細書で使用されるとき、吸入により被験者の気道への送達(例えば、肺送達)に好適な乾燥粒子又は乾燥粉末を指す。呼吸用乾燥粉末又は乾燥粒子は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン未満の質量中央空気力学径(MMAD)を有する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「呼吸器」は、上気道(例えば、鼻孔、鼻腔、喉、及び咽頭)、呼吸気道(例えば、喉頭、気管、気管支、及び細気管支)並びに肺(例えば、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、及び肺胞)を含む。
【0034】
本明細書で呼吸用乾燥粒子を表すために使用されるとき、用語「微小な」は、約10ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン以下、又は5ミクロン未満の体積中央幾何学径(VMGD)を有する粒子を指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「安定剤」は、抗真菌薬が難溶性である液体中に懸濁したとき、結晶粒子形態の抗真菌薬の物理的安定性を向上させる(例えば、粒子の集塊形成、凝集、オストヴァルト熟成(Ostwald ripening)及び/又はフロキュレーションを低減する)化合物を指す。好適な安定剤は、界面活性剤及び両親媒性材料であり、そうしたものとして以下のものが挙げられる:ポリソルベート(PS:ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル)、例えば、PS20、PS40、PS60及びPS80など;脂肪酸、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸及びステアリン酸など;ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、Span20、Span40、Span60、Span80、及びSpan85など;リン脂質、例えば、ジパルミトイルホスホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DPPS)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC);ホスファチジルグリセロール(PG)、例えば、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、DSPG、DPPG、POPGなど;1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE);脂肪族アルコール;ベンジルアルコール、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;グリココール酸塩;サーファクチン;ポロキソマー(poloxomer);ポリビニルピロリドン(PVP);PEG/PPGブロックコポリマー(Pluronic/Poloxamer);ポリオキシエチレンクロレステリルエーテル;POEアルキルエーテル;チロキサポール;レシチンなど。好ましい安定剤は、ポリソルベート及び脂肪酸である。特に好ましい安定剤は、PS80である。別の好ましい安定剤は、オレイン酸である。
【0036】
用語「均質な乾燥粒子」は、本明細書で使用されるとき、界面活性剤安定化懸濁液として前処理された、結晶性薬物(例えば、ナノ結晶性薬物)を含有する粒子を指す。次に、界面活性剤安定化懸濁液を(任意選択の)賦形剤と一緒に噴霧乾燥し、界面活性剤で被覆された結晶性薬物粒子と任意選択で1若しくは複数種の賦形剤とからなるそれらの組成物中で、組成的に均質な、又はより具体的には、組成的に同一である乾燥粒子を取得することによって、均質な乾燥粒子を形成する。
【0037】
乾燥粉末及び乾燥粒子
本発明は、1)結晶粒子形態の抗真菌薬と、2)安定剤と、任意選択で3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関する。本明細書に記載の製剤には任意の所望の抗真菌薬を含有させることができる。多種の抗真菌薬が知られており、例えば、以下のものがある:ポリエン抗真菌薬、例えば、アムホテリシンBなど;トリアゾール抗真菌薬、例えば、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、及びポサコナゾールなど;エキノキャンディン抗真菌薬、例えば、カスポファンギン、ミカファンギン、及びアニデュラファンギンなど。他のトリアゾール抗真菌薬として、クロトリマゾール、イサブコナゾール(Isavuconazole)、及びミコナゾールが挙げられる。新規化学クラスのトリテルペノイドグルカミンシンターゼ阻害剤、例えば、SCY-078も含まれる。さらに、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼを阻害するオロトミド抗真菌薬、例えば、F901318も含まれる。
【0038】
抗真菌薬の結晶化度、並びに抗真菌薬二次粒子の粒径は、有効な療法及び肺内での毒性低減のために重要であると思われる。いずれの特定の理論にも拘束される意図はないが、結晶形態の抗真菌薬の微小な二次粒子は、大きな粒子よりも速く気道被覆液中に溶解する(一部には、表面積が大きいため)と考えられる。また、結晶性抗真菌薬は、非晶質抗真菌薬よりも遅く気道被覆液中に溶解するとも考えられる。従って、所望の結晶化度及び二次粒子粒径を達成する結晶粒子形態の抗真菌薬を用いて、本明細書に記載の乾燥粉末を製剤化することができ、これは、肺内の許容できない毒性を回避しながら、所望の薬物動態特性を達成するように設計することができる。
【0039】
呼吸用乾燥粒子は、重量基準で約1%~約95%(wt%)の抗真菌薬を含有する。呼吸用乾燥粒子は、治療有効量が投与されて、1日に4回以上多量の乾燥粉末を吸入する必要なく、これを維持することができるように、特定の量の抗真菌薬を含有することが好ましい。例えば、呼吸用乾燥粒子は、重量基準で約10%~75%、約15%~75%、約25%~75%、約30%~70%、約40%~60%、約20%、約50%、又は約70%(wt%)の抗真菌薬を含有することが好ましい。呼吸用乾燥粒子は、重量基準で約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%(wt%)の抗真菌薬を含有し得る。特定の実施形態では、呼吸用乾燥粒子中の抗真菌薬の範囲は、重量基準で約40%~約90%、約55%~約85%、約55%~約75%、又は約65%~約85%(wt%)である。重量基準で呼吸用乾燥粒子中に存在する抗真菌薬の量は、「薬物負荷」とも呼ばれる。
【0040】
抗真菌薬は、結晶粒子形態(例えば、ナノ結晶)の呼吸用乾燥粒子中に存在する。より具体的には、約50nm~約5,000nm(Dv50)の二次粒子の形態であり、好ましくは、少なくとも50%結晶性の抗真菌薬を含む。例えば、任意の所望の薬物負荷について、二次粒子粒径は、約100nm、約300nm、約1500nm、約80nm~約300nm、約80nm~約250nm、約80nm~約200nm、約100nm~約150nm、約1200nm~約1500nm、約1500nm~約1750nm、約1200nm~約1400nm、又は約1200nm~約1350nm(Dv50)であってよい。特定の実施形態では、二次粒子は、約50nm~約2500nm、約50nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約50nm~約600nm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約50nm~約300nm、約50nm~約200nm、又は約100nm~約300nmである。さらに、任意の所望の薬物負荷及び二次粒子粒径について、抗真菌薬の結晶化度は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%結晶性であり得る。好ましくは、抗真菌薬は、約100%結晶性である。
【0041】
結晶性粒子形態の抗真菌薬は、要望されれば、安定剤を含む好適な方法を用いて、例えば、湿式粉砕、ジェットミル粉砕又は他の好適な方法により、任意の所望の二次粒子粒径に調製することができる。
【0042】
呼吸用乾燥粒子は、安定剤も含む。安定剤は、原料の湿式粉砕、噴霧乾燥の工程中、結晶性粒子形態の抗真菌薬の所望の粒径を維持することを助け、湿潤及び分散に役立つ。所望の乾燥粉末を取得するのに必要な最少量の安定剤を使用するのが好ましい。安定剤の量は、典型的に、乾燥粒子中に存在する抗真菌薬の量に関連し、約1:1(抗真菌薬:安定剤(wt:wt))~約50:1(wt:wt)の範囲であってよく、≧10:1(以上)が好ましい。例えば、乾燥粒子中の抗真菌薬:安定剤(wt:wt)の比は、≧10:1(以上)、約10:1、約20:1、又は約10:1~約20:1であってよい。特定の実施形態では、この比は、約5:1~約20:1、約7:1~約15:1、又は約9:1~約11:1である。さらに、乾燥粒子中に存在する安定剤の量は、重量基準で約0.05%~約45%(wt%)の範囲であってよい。特定の実施形態では、この範囲は、重量基準で約1%~約15%、約4%~約10%、又は約5%~約8%(wt%)である。一般に、呼吸用乾燥粒子は、約10重量%(wt%)未満、例えば、7wt%、5wt%又は1wt%の安定剤を含むことが好ましい。あるいは、呼吸用乾燥粒子は、約5wt%、約6wt%、約7wt%、約7.5wt%、約8wt%、又は約10%の安定剤を含む。特に、呼吸用乾燥粒子は、約5wt%の未満の安定剤を含むのが好ましい。本明細書に記載の乾燥粉末に使用するのに特に好ましい安定剤は、ポリソルベート80である。別の好ましい安定剤は、オレイン酸(又はその塩形態)である。界面活性剤を用いて、生成された乾燥粉末中の結晶化の開始を防ぐ従来の技術とは対照的に、本発明における界面活性剤は、貧溶媒中の結晶性薬物のコロイド懸濁液を安定化するために添加する。
【0043】
呼吸用乾燥粒子はまた、任意の好適で、所望の量の1又は複数種の賦形剤も含む。乾燥粒子は、約10wt%~約99wt%の総賦形剤含量を含有し得るが、約25wt%~約85wt%、又は約40wt%~約55wt%がより一般的である。乾燥粒子は、約1wt%、約2wt%、約4wt%、約6wt%、約8wt%、又は約10wt%未満の総賦形剤分を含有し得る。特定の実施形態では、上記の範囲は、約5%~約50%、約15%~約50%、約25%~約50%、約5%~約40%、約5%~約30%、約5%~約20%、又は約5%~約15%である。
【0044】
多種の賦形剤が当技術分野でよく知られており、本明細書に記載する乾燥粉末及び乾燥粒子に含有させることができる。本明細書に記載する乾燥粉末及び乾燥粒子に特に好ましい薬学的に許容される賦形剤として、一価及び二価金属カチオン塩、炭水化物、糖アルコール並びにアミノ酸が挙げられる。
【0045】
好適な一価金属カチオン塩として、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。本発明の呼吸用乾燥粒子中に存在し得る好適なナトリウム塩として、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0046】
好適なカリウム塩として、例えば、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、重炭酸カリウム、硝酸カリウム、過硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、グアニル酸二カリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、アスコルビン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、コハク酸カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0047】
好適な二価金属カチオン塩として、マグネシウム塩及びカルシウム塩が挙げられる。好適なマグネシウム塩として、例えば、乳酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、タウリン酸マグネシウム、オロト酸マグネシウム、マグネシウムグリシネート、ナフテン酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトナト、ギ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0048】
好適なカルシウム塩として、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0049】
好ましいナトリウム塩は、硫酸ナトリウムである。好ましいナトリウム塩は、塩化ナトリウムである。好ましいナトリウム塩は、クエン酸ナトリウムである。好ましいマグネシウム塩は、乳酸マグネシウムである。
【0050】
これに関して有用な炭水化物賦形剤として、単糖及び多糖類が挙げられる。代表的な単糖として、デキストロース(無水物及び一水和物;グルコース及びグルコース一水和物とも呼ばれる)、ガラクトース、D-マンノース、ソルボースなどが挙げられる。代表的な二糖として、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどが挙げられる。代表的な三糖として、ラフィノースなどが挙げられる。デキストラン、マルトデキストリン及びシクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどを含む他の炭水化物賦形剤を要望に応じて使用することができる。代表的な糖アルコールとして、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好ましい糖アルコールは、マンニトールである。
【0051】
好適なアミノ酸賦形剤は、標準的な医薬製造技術の下で粉末を形成する天然アミノ酸のいずれかを含み、そうしたものとして、非極性(疎水性)アミノ酸及び極性(非荷電、陽荷電及び陰荷電)アミノ酸が挙げられ、このようなアミノ酸は、医薬品グレードであり、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)により概して安全として認定されている(GRAS)。非極性アミノ酸の代表的な例として、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンが挙げられる。極性、非荷電アミノ酸の代表的な例として、シスチン、グリシン、グルタミン、セリン、トレオニン、及びチロシンが挙げられる。極性、陽荷電アミノ酸の代表的な例として、アルギニン、ヒスチジン及びリシンが挙げられる。陰荷電アミノ酸の代表的な例として、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。好ましいアミノ酸は、ロイシンである。
【0052】
本明細書に記載の乾燥粒子は、1)結晶粒子形態の抗真菌薬と、2)安定剤と、任意選択で3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する。いくつかの態様では、乾燥粒子は、一価又は二価金属カチオン塩である第1賦形剤と、アミノ酸、炭水化物又は糖アルコールである第2賦形剤と、を含有する。例えば、第1賦形剤は、ナトリウム塩又はマグネシウム塩であってよく、第2賦形剤は、アミノ酸(ロイシンなど)であってよい。より具体的な例では、第1賦形剤は、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム又は乳酸マグネシウムであってよく、第2賦形剤は、ロイシンであってよい。より具体的には、第1賦形剤は、硫酸ナトリウムであってよく、第2賦形剤は、ロイシンであってよい。別の例では、第1賦形剤は、ナトリウム塩又はマグネシウム塩であってよく、第2賦形剤は、糖アルコール(マンニトールなど)であってよい。より具体的な例では、第1賦形剤は、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム又は乳酸マグネシウムであってよく、第2賦形剤は、マンニトールであってよい。他の例では、乾燥粒子は、結晶粒子形態の抗真菌薬と、安定剤と、1種の賦形剤、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩又はアミノ酸(例えば、ロイシン)とを含む。
【0053】
一態様において、本発明は、1)結晶粒子形態の抗真菌薬と、2)安定剤と、3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関するが、ここで、抗真菌薬は、ポリエン抗真菌薬(例えば、アムホテリシンB)ではないものとする。
【0054】
1つの好ましい態様において、本発明は、1)結晶粒子形態のトリアゾール抗真菌薬と、2)安定剤と、3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0055】
一態様において、本発明は、約50%~約80%の結晶粒子形態のトリアゾール抗真菌薬と、約4%~約40%の安定剤と、約1%~約9%の1又は複数種の賦形剤;約45%~約85%の結晶粒子形態のトリアゾール抗真菌薬と、約3%~約15%の安定剤と、約3%~約40%のナトリウム塩と、約1%~約9%の1又は複数種のアミノ酸;約45%~約85%の結晶粒子形態のトリアゾール抗真菌薬と、約3%~約15%の安定剤と、約3%~約40%の硫酸ナトリウムと、約1%~約9%のロイシンとを含む呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関し;ここで、パーセンテージは全て、重量パーセンテージであり、製剤は全て、無水ベースで総計100%に達する。
【0056】
具体的な好ましい態様において、本発明は、1)結晶粒子形態のイトラコナゾールと、2)安定剤と、3)1又は複数種の賦形剤と、を含有する呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤に関する。この特に好ましい態様では、乾燥粉末製剤は、ラクトースを含まない。
【0057】
一態様において、本発明は、50%のイトラコナゾールと、35%の硫酸ナトリウムと、10%のロイシンと、5%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0058】
一態様において、本発明は、50%のイトラコナゾールと、37%の硫酸ナトリウムと、8%のロイシンと、5%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0059】
別の態様において、本発明は、60%のイトラコナゾールと、26%の硫酸ナトリウムと、8%のロイシンと、6%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0060】
別の態様において、本発明は、70%のイトラコナゾールと、15%のナトリウムと、8%のロイシンと、7%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0061】
別の態様において、本発明は、75%のイトラコナゾールと、9.5%の硫酸ナトリウムと、8%のロイシンと、7.5%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0062】
別の態様において、本発明は、80%のイトラコナゾールと、4%の硫酸ナトリウムと、8%のロイシンと、8%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0063】
別の態様において、本発明は、80%のイトラコナゾールと、10%の硫酸ナトリウムと、2%のロイシンと、8%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。
【0064】
別の態様において、本発明は、80%のイトラコナゾールと、11%の硫酸ナトリウムと、1%のロイシンと、8%のポリソルベート80と、を含む乾燥粉末製剤に関する。乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、微小で、質量が高密度であり、且つ分散性であるのが好ましい。体積中央幾何学径(VMGD)を測定するために、レーザ回析システム、例えば、Spraytecシステム(粒径分析計、Malvern Instruments)及びHELOS/RODOSシステム(乾燥分散ユニットを備えたレーザ回析センサー、Sympatec GmbH)を用いることができる。呼吸用乾燥粒子は、HELOS/RODOSシステムを用いて、最大オリフィスリング圧で1.0バールの分散圧設定(レギュレータ圧力とも呼ばれる)でのレーザ回折により測定されるVMGDが、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下、約4μm以下、約3μm以下、約1μm~約5μm、約1μm~約4μm、約1.5μm~約3.5μm、約2μm~約5μm、約2μm~約4μm、又は約2μm~約3μmである。VMGDは、約5ミクロン以下、又は約4μm以下であるのが好ましい。一態様では、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約0.5ミクロン又は約1.0ミクロンの最小VMGDを有する。
【0065】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、好ましくは、約2.0未満(例えば、約0.9~約2未満)、約1.7以下(例えば、約0.9~約1.7)、約1.5以下(例えば、約0.9~約1.5)、約1.4以下(例えば、約0.9~約1.4)、又は約1.3以下(例えば、約0.9~約1.3)である1バール/4バール分散性比及び/若しくは0.5バール/4バール分散性比を有し、好ましくは、約1.5以下(例えば、約1.0~約1.5)、並びに/又は約1.4以下(例えば、約1.0~約1.4)の1バール/4バール及び/若しくは0.5バール/4バールを有する。
【0066】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、少なくとも約0.2g/cm3、少なくとも約0.25g/cm3のタップ密度、少なくとも約0.3g/cm3、少なくとも約0.35g/cm3のタップ密度、少なくとも約0.4g/cm3のタップ密度を有するのが好ましい。例えば、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、0.4g/cm3超(例えば、0.4g/cm3超~約1.2g/cm3)のタップ密度、少なくとも約0.45g/cm3(例えば、約0.45g/cm3~約1.2g/cm3)、少なくとも約0.5g/cm3(例えば、約0.5g/cm3~約1.2g/cm3)、少なくとも約0.55g/cm3(例えば、約0.55g/cm3~約1.2g/cm3)、少なくとも約0.6g/cm3(例えば、約0.6g/cm3~約1.2g/cm3)又は少なくとも約0.6g/cm3~約1.0g/cm3のタップ密度を有する。あるいは、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約0.01g/cm3~約0.5g/cm3、約0.05g/cm3~約0.5g/cm3、約0.1g/cm3~約0.5g/cm3、約0.1g/cm3~約0.4g/cm3、又は約0.1g/cm3~約0.4g/cm3のタップ密度を有するのが好ましい。あるいは、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約0.15g/cm3~約1.0g/cm3のタップ密度を有する。
【0067】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、少なくとも0.1g/cm3、又は少なくとも0.8g/cm3の嵩密度を有する。例えば、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約0.1g/cm3~約0.6g/cm3、約0.2g/cm3~約0.7g/cm3、約0.3g/cm3~約0.8g/cm3の嵩密度を有する。
【0068】
呼吸用乾燥粒子、及び乾燥粉末(乾燥粉末が呼吸用乾燥粉末である場合)は、10ミクロン未満のMMAD、好ましくは約5ミクロン以下、又は約4ミクロン以下のMMADを有するのが好ましい。一態様では、呼吸用乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約0.5ミクロン、又は約1.0ミクロンの最小MMADを有するのが好ましい。一態様では、呼吸用乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、約2.0ミクロン、約3.0ミクロン、又は約4.0ミクロンの最小MMADを有するのが好ましい。
【0069】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、総用量の少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約45%、少なくとも約60%、約45%~約80%、又は約60%~約80%の、約5.6ミクロン未満のFPF(FPF<5.6μm)を有するのが好ましい。
【0070】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、総用量の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、約25%~約60%、又は約40%~約60%の、約3.4ミクロン未満のFPF(FPF<3.4μm)を有するのが好ましい。
【0071】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、好ましくは、最大約15重量%、最大約10重量%、最大約5重量%、最大約1重量%、若しくは約0.01%~約1%の合計水分及び/又は溶媒分を有するか、あるいは、水又は他の溶媒を実質的に含まない場合もある。
【0072】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、好ましくは、低吸入エネルギーで投与することができる。様々な吸入流量、体積の粉末の分散、及び様々な抵抗の吸入器からの粉末の分散を関連付けるために、吸入操作を実施するのに必要なエネルギーを計算することができる。吸入エネルギーは、方程式E=R2Q2Vから計算することができ、Eは、吸入エネルギー(ジュール)、Rは、吸入抵抗(kPa1/2/LPM)であり、Qは、定常流量(L/分)であり、Vは、吸入された空気量(L)である。
【0073】
健常な成人の集団は、乾燥粉末吸入器についての両FDAガイダンス資料、並びに様々なDPIによって成人が平均2.2Lの吸入量を有することを見出したTiddens et al.の論文(Journal of Aerozol Med,19(4),p.456-465,2006)に基づき、2Lの吸入量で、0.02及び0.055kPa1/2/LPMの2つの吸入器抵抗からの流量Qについて、Clarke et al.(Journal of Aerozol Med,6(2),p.99-110,1993)により測定されたピーク吸気流量(PIFR)の値を用いることにより、快適な吸入の2.9ジュールから最大吸入の22ジュールまでの範囲の吸入エネルギーを達成することができると予測される。
【0074】
軽度、中度及び重度の成人COPD患者は、それぞれ、5.1~21ジュール、5.2~19ジュール、及び2.3~18ジュールの最大吸入エネルギーを達成することができると予測される。これもまた、吸入エネルギーの方程式の流量Qについて測定されたPIFR値の使用に基づく。各群について達成可能なPIFRは、吸入が行われる吸入器抵抗の関数である。Broedersらの論文(Eur Respir J,18,p.780-783,2001)を用いて、抵抗が各々0.21及び0.032kPa1/2/LPMの2つの乾燥粉末吸入器からの最大及び最小達成可能PIFRを予測した。
【0075】
同様に、成人喘息患者は、COPD集団及びBroedersらのPIFRデータと同じ仮定に基づき、7.4~21ジュールの最大吸入エネルギーを達成することができると予測される。
【0076】
健常な成人及び小児、COPD患者、5歳以上の喘息患者、及びCF患者は、例えば、乾燥粉末製剤を空にして、分散するのに十分な吸入エネルギーを供給することができる。
【0077】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、乾燥粉末吸入器に加えられる約5ジュール、約3.5ジュール、約2.4ジュール、約2ジュール、約1ジュール、約0.8ジュール、約0.5ジュール、又は約0.3ジュールの総吸入エネルギーを受ける受動乾燥粉末吸入器からの高い放出量、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のCEPMを特徴とする。乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子を保持する容器は、約5mg、約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg、又は約30mgを含有し得る。一態様では、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、下記の条件で、毎分約0.036sqrt(kPa)/リットルの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出されるとき、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDを特徴とする:空気流量30LPM、総質量10mgを含有するサイズ3カプセルを用いて3秒間のラン。別の態様では、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、下記の条件で、毎分約0.036sqrt(kPa)/リットルの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出されるとき、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDを特徴とする:空気流量20LPM、総質量10mgを含有するサイズ3カプセルを用いて3秒間のラン。また別の態様では、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、下記の条件で、毎分約0.036sqrt(kPa)/リットルの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出されるとき、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDを特徴とする:空気流量15LPM、総質量10mgを含有するサイズ3カプセルを用いて4秒間のラン。
【0078】
乾燥粉末は、単位用量容器を充填することができ、又は単位用量容器は、少なくとも2%充填、少なくとも5%充填、少なくとも10%充填、少なくとも20%充填、少なくとも30%充填、少なくとも40%充填、少なくとも50%充填、少なくとも60%充填、少なくとも70%充填、少なくとも80%充填、又は少なくとも90%充填されていてよい。単位用量容器は、カプセル(例えば、サイズ000、00、0E、0、1、2、3、及び4で、それぞれ、1.37ml、950μl、770μl、680μl、480μl、360μl、270μl、及び200μlの容積を有する)であってよい。カプセルは、少なくとも約2%充填、少なくとも約5%充填、少なくとも約10%充填、少なくとも約20%充填、少なくとも約30%充填、少なくとも約40%充填、又は少なくとも約50%充填であってよい。単位用量容器は、ブリスターであってよい。ブリスターは、単一ブリスター、又は複数のブリスター、例えば、7ブリスター、14ブリスター、28ブリスター若しくは30ブリスターの1セットの一部としてパッケージすることができる。1つ又は複数のブリスターは、好ましくは、少なくとも30%充填、少なくとも50%充填又は少なくとも70%充填であってよい。
【0079】
本発明の利点は、広範囲の流量にわたって良好に分散すると共に、比較的流量非依存的である粉末を生成することである。本発明の乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、広範な患者集団のために、単純な、受動DPIの使用を可能にする。
【0080】
特定の態様では、本発明は、結晶粒子形態の抗真菌薬(例えば、約80nm~約1750nm、例えば、約60nm~約175nm、約150nm~約400nm又は1200nm~約1750nmなどの粒子)と、安定剤と、任意選択で1又は複数種の賦形剤と、を含む乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子に関する。特に、乾燥粉末及び呼吸用乾燥粒子は、表1に示す以下の配合を有する。本明細書に記載する乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、好ましくは、以下:1)1バールのVMGDが、HELOS/RODOSシステムを用いて測定して、約10ミクロン以下、又は好ましくは約5ミクロン以下であり;2)1バール/4バール分散性比及び/又は0.5バール/4バール分散性比が、約1.5以下、約1.4以下若しくは約1.3以下であり;3)MMADが、約10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下であり;4)総用量のFPF<5.6μmが、少なくとも約45%若しくは少なくとも約60%であり;且つ/又は5)総用量のFPF<3.4μmが、少なくとも約25%若しくは少なくとも約40%であることを特徴とする。所望であれば、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、さらに、タップ密度が、約0.2g/cm3以上、約0.3g/cm3以上、約0.4g/cm3以上、0.4g/cm3超、約0.45g/cm3以上、又は約0.5g/cm3以上であることを特徴とする。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
上記の範囲、又は具体的に開示した製剤のいずれかにより表され、上の段落で特徴付けられる乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、容器、例えば、カプセル又はブリスター中に充填してもよい。容器がカプセルであるとき、カプセルは、例えば、サイズ2又はサイズ3カプセルであり、好ましくは、サイズ3カプセルである。カプセル材料は、例えば、ゼラチン又はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)であってよく、好ましくは、HPMCである。
【0085】
上に記載され、特徴付けられる乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、乾燥粉末吸入器(DPI)内に含有させてもよい。DPIは、カプセルベースのDPI又はブリスターベースのDPIであってよく、好ましくは、カプセルベースのDPIである。より好ましくは、乾燥粉末吸入器は、乾燥粉末吸入器(Plastiape S.p.A.,Italy)のRS01ファミリーから選択する。さらに好ましくは、乾燥粉末吸入器は、RS01 HR又はRS01 UHR2から選択する。最も好ましくは、乾燥粉末吸入器は、RS01 HRである。
【0086】
乾燥粉末及び乾燥粒子を調製する方法
呼吸用乾燥粒子及び乾燥粉末は、任意の好適な方法を用いて調製することができるが、ここで、乾燥粉末製剤は、即時分散物となり得ないものとする。乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子を調製するための多くの好適な方法は、当技術分野においてごく一般的であり、シングル及びダブルエマルジョン溶媒蒸発、噴霧乾燥、噴霧-凍結乾燥、粉砕(例えば、ジェットミル)、ブレンド、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、シンプル及び複合コアセルベーション、界面重合、超臨界二酸化炭素(CO2)、超音波照射下の結晶生成、ナノ粒子凝集体形成の使用を含む好適な方法、並びにこれらの組み合わせを含む他の好適な方法が挙げられる。呼吸用乾燥粒子は、当分野では公知のマイクロスフィア又はマイクロカプセルを製造する方法を用いて製造することができる。これらの方法は、所望の空気力学特性(例えば、空気力学粒径及び幾何粒径)を備えた呼吸用乾燥粒子の形成をもたらす条件下で使用することができる。所望であれば、粒度などの所望の特性を備えた呼吸用乾燥粒子は、篩い分けなどの好適な方法を用いて、選択することができる。
【0087】
粒度及び密度などの所望の特性を備えた呼吸用乾燥粒子を選択する好適な方法としては、湿式篩い分け、乾式篩い分け、及び空気力学分類器(例えば、サイクロン)が挙げられる。
【0088】
呼吸用乾燥粒子は、噴霧乾燥するのが好ましい。好適な噴霧乾燥技術は、例えば、K.Mastersにより“Spray Drying Handbook”,John Wiley & Sons,New York(1984)に記載されている。一般に、噴霧乾燥中、加熱空気又は窒素などの高温ガスを用いて、連続的な液体フィードを噴霧乾燥することにより形成される液滴から溶媒蒸発させる。高温空気を使用する場合には、その使用前に、空気中の水分を少なくとも部分的に除去する。窒素ガスを使用する場合には、窒素ガスは、「乾燥」状態で供給することができるため、さらなる水蒸気がガスと結合することはない。所望であれば、噴霧乾燥ランの開始前に、「乾燥」窒素を超える固定値に窒素又は空気の水分レベルを設定することができる。所望であれば、乾燥粒子を調製するのに用いられる噴霧乾燥又は他の装置(例えば、ジェットミル装置)は、呼吸用乾燥粒子の生成中にその幾何粒径を決定するインライン幾何粒度計、及び/又は呼吸用乾燥粒子の生成中にその空気力学粒径を決定するインライン空気力学粒度計を含んでもよい。
【0089】
噴霧乾燥の場合、好適な溶媒(例えば、水性溶媒、有機溶媒、水性-有機混合物又はエマルジョン)中に生成しようとする乾燥粒子の成分を含有する溶液、エマルジョン又は懸濁液を噴霧装置により乾燥容器に分布させる。例えば、ノズル又は回転噴霧器を用いて、溶液又は懸濁液を乾燥容器に分布させることができる。ノズルは、二流体ノズルであってよく、これは、内部混合セットアップ又は外部混合セットアップであってもよい。あるいは、4-又は24-羽根車を備える回転噴霧器を用いてもよい。好適な噴霧乾燥器は、回転噴霧器及び/又はノズルを装備してもよく、例として、数ある噴霧乾燥器の選択肢の中でも、Mobile Minor Spray Dryer又はModel PSD-1(いずれも、GEA Niro,Inc.(Denmark)製)、Buechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)、ProCepT Formatrix R&D噴霧乾燥器(ProCepT nv, Zelzate,Belgium)が挙げられる。実際の噴霧乾燥条件は、部分的に、噴霧乾燥溶液又は懸濁液の組成及び材料の流量に応じて変動し得る。当業者であれば、噴霧乾燥しようとする溶液、エマルジョン又は懸濁液の組成、所望の粒子特性及びその他の要因に基づいて、適切な条件を決定することができよう。一般に、噴霧乾燥器の入口温度は、約90℃~約300℃である。噴霧乾燥器の出口温度は、供給温度及び乾燥する材料の特性などの要因に応じて変動し得る。一般に、出口温度は、約50℃~約150℃である。所望であれば、生成される呼吸用乾燥粒子は、例えば、篩を用いて、体積粒度別に分別するか、又はサイクロンを用いて、空気力学粒度別に分別する、及び/又は当業者には周知の技術を用いて、密度に応じてさらに分離することができる。
【0090】
本発明の呼吸用乾燥粒子を調製するためには、概して、乾燥粉末の所望の成分を含有するエマルジョン又は懸濁液(すなわち、原料)を調製し、好適な条件下で噴霧乾燥する。好ましくは、原料中の溶解又は懸濁固形物濃度は、少なくとも約1g/L、少なくとも約2g/L、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約40g/L、少なくとも約50g/L、少なくとも約60g/L、少なくとも約70g/L、少なくとも約80g/L、少なくとも約90g/L、又は少なくとも約100g/Lである。原料は、好適な溶媒中に好適な成分(例えば、塩、賦形剤、その他の活性成分)を溶解、懸濁、又は乳化させることによって単一溶液、エマルジョン又は懸濁液を調製することにより、取得することができる。溶液、エマルジョン又は懸濁液は、配合物を形成する乾燥及び/若しくは液体成分のバルク混合又は液体成分の静的混合などの任意の好適な方法を用いて、調製することができる。例えば、静的混合を用いて、親水性成分(例えば、水溶液)と疎水性成分(例えば、有機溶液)を合わせることにより、配合物を形成することができる。次に、配合物を噴霧して、液滴を生成することができ、これを乾燥させて、呼吸用乾燥粒子を形成する。静的ミキサー中で成分を合わせた直後に噴霧ステップを実施するのが好ましい。あるいは、噴霧ステップは、バルク混合した溶液で実施する。
【0091】
原料は、粒子形態の抗真菌薬が低溶解性を有する任意の溶媒、例えば、有機溶媒又はそれらの混合物を用いて調製することができる。使用することができる好適な有機溶媒として、限定はしないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコールが挙げられる。その他の有機溶媒として、限定はしないが、テトラヒドロフラン(THF)、パーフルオロカーボン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテルなどが挙げられる。使用することができる共溶媒として、水性溶媒及び有機溶媒、例えば、限定はしないが、前述の有機溶媒が挙げられる。水性溶媒は、水と緩衝液を含む。好ましい溶媒は、水である。
【0092】
原料を調製するための溶質及び溶媒を混合するのに、様々な方法(例えば、静的混合、バルク混合)を用いることができ、これらは当技術分野で公知である。要望されれば、他の好適な混合方法を用いてもよい。例えば、混合をもたらす、又は促進する追加成分を原料に含有させることができる。例えば、二酸化炭素は、泡立ち又は発泡を起こすため、溶質及び溶媒の物理的混合を促進する上で役立ち得る。
【0093】
原料又は原料の成分は、任意の要望されるpH、粘度又はその他の特性を有してもよい。所望であれば、溶媒若しくは共溶媒又は形成された混合物に、pH緩衝剤を添加することができる。概して、混合物のpHは、約3~約8の範囲である。
【0094】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子を製造した後、例えば、サイクロンを用いた濾過又は遠心分離により分離して、好ましい粒度分布を有する粒子サンプルを提供することができる。例えば、サンプル中の呼吸用乾燥粒子の約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超が、選択された範囲内の粒径を有し得る。特定のパーセンテージの呼吸用乾燥粒子が含まれる選択範囲は、例えば、約0.1~約3ミクロンVMGDなど、本明細書に記載する粒度範囲のいずれであってもよい。
【0095】
懸濁液は、ナノ結晶性薬物を含有する乾燥粉末を製造する場合の中間体と類似するナノ懸濁液であってもよい。
【0096】
乾燥粉末は、硫酸ナトリウム及びロイシンなどのマトリックス材料に埋め込まれた薬物であってもよい。任意選択で、乾燥粒子が微小、高密度、且つ分散性となるように、乾燥粉末を噴霧乾燥してもよい。
【0097】
乾燥粉末は、他の担体又は賦形剤粒子を含まず、本明細書に記載の呼吸用乾燥粒子だけから構成することもできる(「純粉末(neat powder)」と呼ばれる)。要望されれば、乾燥粉末は、本明細書に記載の呼吸用乾燥粒子と、例えば10ミクロン超、20ミクロン~500ミクロン、並びに好ましくは25ミクロン~250ミクロンのラクトース担体粒子などの他の担体又は賦形剤粒子とのブレンドを含み得る。
【0098】
好ましい実施形態では、乾燥粉末は、担体粒子を含まない。一態様では、賦形剤及び/又は安定剤を含むマトリックスに結晶性薬物粒子を埋め込む。乾燥粉末は、均一含有率の呼吸用乾燥粉末を含んでもよく、この場合、各粒子が結晶性薬物を含有する。従って、本明細書で使用されるとき、「均一含有率」とは、全ての呼吸用粒子が、ある量の結晶粒子形態の抗真菌薬、安定剤、及び賦形剤を含有することを意味する。
【0099】
乾燥粉末は、呼吸用乾燥粒子を含むことができ、ここで、粒子の(重量基準で)少なくとも98%、少なくとも99%、又は実質的に全部が、抗真菌薬を含有する。
【0100】
乾燥粉末は、1又は複数種の賦形剤を含むマトリックス全体に分布した結晶性薬物粒子を含み得る。賦形剤は、製薬用途に好適な任意の数の塩、糖、脂質、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー、又は他の成分を含んでもよい。好ましい賦形剤として、硫酸ナトリウム及びロイシンが挙げられる。乾燥粉末は、典型的には、最初に、当業者には周知の任意の数の技法(例えば、湿式粉砕、ジェットミル粉砕)を用いて、粒径を調節するように結晶性薬物を加工することによって製造される。安定剤を用いて、結晶性薬物を貧溶媒で処理することにより、懸濁液を形成する。好ましい安定剤としては、ポリソルベート(Tween)80及びオレイン酸が挙げられる。次に、結晶性薬物の安定化した懸濁液を1又は複数種の追加賦形剤と一緒に噴霧乾燥する。得られた乾燥粒子は、賦形剤マトリックス全体にわたって分布した結晶性薬物を含み、その際、乾燥粒子の各々が均質な組成を有する。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の乾燥粉末は、結晶性薬物(例えば、イトラコナゾール)から出発することによって製造されるが、これは、通常、微結晶サイズの範囲で取得可能である。当業者には周知の任意の数の技法を用いて、ミクロ結晶性薬物の粒径をナノ結晶粒径に縮小するが、そうした技法として、限定しないが、高圧均質化、高せん断力均質化、ジェットミル粉砕、ピンミル粉砕、マイクロ流動化、又は湿式粉砕(ボールミル粉砕、パールミル粉砕若しくはビーズミル粉砕としても知られる)が挙げられる。ナノメートル(<1μm)粒径ドメインのものを含め、広範な粒度分布を達成することができるため、多くの場合、湿式粉砕が好ましい。サブミクロン粒径ドメインで特に重要になることは、界面活性剤(例えば、Tween 80)などの表面安定化成分の使用である。界面活性剤は、粉砕工程中に生成される多数の高エネルギー表面を封鎖して、凝集及び沈殿を防ぐため、粉砕工程中のサブミクロン粒子の生成、並びに物理的に安定な懸濁液の形成を可能にする。従って、界面活性剤の存在は、界面活性剤が、粒子全体の組成均質性を確実にする均質且つ安定な懸濁液の形成を可能にすることから、均質なミクロ粒子を噴霧乾燥する上で重要である。界面活性剤の使用によって、ミクロ懸濁液又はナノ懸濁液の形成が可能になる。界面活性剤を用いて、ナノ結晶性薬物(例えば、ITZ)粒子を貧溶媒中の安定なコロイド懸濁液に懸濁させる。薬剤用の貧溶媒には、コロイド懸濁液の連続貧溶媒相として、水、又はアルコール若しくはケトンなどの他の混和性溶媒と水の組合せを使用することができる。噴霧乾燥用の原料は、所望の溶媒に可溶性成分を溶解させた後、混合しながら、得られた原料中に界面活性剤安定化結晶性薬物ナノ懸濁液を分散させることによって製造され得るが、工程は、この具体的な操作順序に限定されない。
【0102】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子を分析する方法を以下の例示のセクションに記載する。
【0103】
治療用途及び方法
本発明の乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、呼吸器、例えば、嚢胞性線維症、喘息、特に重症喘息、及び重度の免疫不全患者など、呼吸器(例えば、肺)疾患の治療が必要な患者への投与に好適である。この治療は、アスペルギルス感染症を治療する上で特に有用である。この治療はまた、イトラコナゾールに対して感受性の真菌感染症の治療にも有用である。本発明の別の態様は、例えば、喘息又は嚢胞性線維症患者において、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療するものである。
【0104】
他の態様では、本発明は、アスペルギルス感染症など、呼吸気道の真菌感染症により引き起こされる、急性増悪の治療、その頻度若しくは重症度の軽減、又はその予防のための方法である。別の態様では、本発明は、アスペルギルス感染症など、呼吸器の真菌感染症により引き起こされる、増悪の治療、その頻度若しくは重症度の軽減、又はその予防のための方法である。別の態様では、本発明は、例えば、喘息又は嚢胞性線維症患者において、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)により引き起こされる、増悪の治療、その頻度若しくは重症度の軽減、又はその予防のための方法である。
【0105】
他の態様では、本発明は、嚢胞性線維症、喘息、特に重症喘息、及び重度の免疫不全患者など、呼吸器疾患及び/又は慢性肺疾患の症状を軽減する方法である。別の態様では、本発明は、これらの患者集団におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の症状を軽減するための方法である。また別の態様では、本発明は、炎症を軽減する、ステロイドの使用を省く、又はステロイド治療の必要性を低減するための方法である。
【0106】
他の態様では、本発明は、嚢胞性線維症、喘息、特に重症喘息、及び重度の免疫不全患者など、呼吸器疾患及び/又は慢性肺疾患を有する患者の肺機能を改善するための方法である。別の態様では、本発明は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を有する患者の肺機能を改善するための方法である。
【0107】
乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、任意の好適な方法、例えば、点滴技術、及び/又は乾燥粉末吸入器(DPI)若しくは定量吸入器(MDI)などの吸入装置を用いて、それが必要な被験者の呼吸器に投与することができる。いくつかのDPIが利用可能であり、例えば、米国特許第4,995,385号明細書及び同第4,069,819号明細書に記載されている吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons,Loughborough,U.K.)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)及びDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline,Research Triangle Technology Park,North Carolina)、FlowCaps(登録商標)(Hovione,Loures,Portugal)、Inhalators(登録商標)(Boehringer-Ingelheim,Germany)、Aerolizer(登録商標)(Novartis,Switzerland)、高抵抗性、超高抵抗性、及び低抵抗性RS01(Plastiape,Italy)並びに当業者には周知のその他がある。
【0108】
次の乾燥粉末吸入器(DPI)構成:1)単回用量カプセルDPI、2)複数回用量ブリスターDPI、及び3)複数回用量レザバーDPIの概説全体について下記の学術雑誌の記事を参照により組み込む。N.Islam,E.Gladki,“Dry powder inhalers(DPIs)-A review of device reliability and innovation”,International Journal of Pharmaceuticals,360(2008):1-11.H.Chystyn,“Diskus Review”,International Journal of Clinical Practice,June 2007,61,6,1022-1036.H.Steckel,B.Muller,“In vitro evaluation of dry powder inhalers I:drug deposition of commonly used devices”,International Journal of Pharmaceuticals,154(1997):19-29。いくつかの代表的なカプセルベースのDPIユニットを以下に挙げる:RS-01(Plastiape,Italy)、Turbospin(登録商標)(RH & T,Italy)、Brezhaler(登録商標)(Novartis,Switzerland)、Aerolizer(登録商標)(Novartis,Switzerland)、Podhaler(登録商標)(Novartis,Switzerland)、HandiHaler(登録商標)(Boehringer Ingelheim,Germany)、AIR(登録商標)(Civitas,Massachusetts)、Dose One(登録商標)(Dose One,Maine)、及びEclipse(登録商標)(Rhone Poulenc Rorer)。いくつかの代表的な単位用量DPIを以下に挙げる:Conix(登録商標)(3M,Minnesota)、Cricket(登録商標)(Mannkind,California)、Dreamboat(登録商標)(Mannkind,California)、Occoris(登録商標)(Team Consulting,Cambridge,UK)、Solis(登録商標)(Sandoz)、Trivair(登録商標)(Trimel Biopharma,Canada)、Twincaps(登録商標)(Hovione,Loures,Portugal)。いくつかの代表的なブリスターベースのDPIユニットを以下に挙げる:Diskus(登録商標)(GlaxoSmithKline(GSK),UK)、Diskhaler(登録商標)(GSK)、Taper Dry(登録商標)(3M,Minnesota)、Gemini(登録商標)(GSK)、Twincer(登録商標)(University of Groningen,Netherlands)、Aspirair(登録商標)(Vectura,UK)、Acu-Breathe(登録商標)(Repirics,Minnesota,USA)、Exubra(登録商標)(Novartis,Switzerland)、Gyrohaler(登録商標)(Vectura,UK)、Omnihaler(登録商標)(Vectura,UK)、Microdose(登録商標)(Microdose Therapeutix,USA)、Multihaler(登録商標)(Cipla,India)Prohaler(登録商標)(Aptar)、Technohaler(登録商標)(Vectura,UK)、及びXcelovair(登録商標)(Mylan,Pennsylvania)。いくつかの代表的なレザバーベースのDPIユニットを以下に挙げる:Clickhaler(登録商標)(Vectura)、Next DPI(登録商標)(Chiesi)、Easyhaler(登録商標)(Orion)、Novolizer(登録商標)(Meda)、Pulmojet(登録商標)(sanofi-aventis)、Pulvinal(登録商標)(Chiesi)、Skyehaler(登録商標)(Skyepharma)、Duohaler(登録商標)(Vectura)、Taifun(登録商標)(Akela)、Flexhaler(登録商標)(AstraZeneca,Sweden)、Turbuhaler(登録商標)(AstraZeneca,Sweden)、及びTwisthaler(登録商標)(Mercl)、並びに当業者には周知のその他。
【0109】
一般に、吸入装置(例えば、DPI)は、単回吸入で最大量の乾燥粉末又は乾燥粒子を送達することができ、これは、ブリスター、カプセル(例えば、1.37ml、950μl、770μl、680μl、480μl、360μl、270μl、及び200μlのそれぞれの容積に対して、サイズ000、00、0E、0、1、2、3、及び4)又は乾燥粉末及び/若しくは呼吸用乾燥粒子を吸入器内に収容するその他の手段に関する。ブリスターは、約360マイクロリットル以下、約270マイクロリットル以下の容積を有するのが好ましく、又は約200マイクロリットル以下、約150マイクロリットル以下、又は約100マイクロリットル以下の容積を有するのがさらに好ましい。好ましくは、カプセルは、サイズ2カプセル、又はサイズ4カプセルである。より好ましくは、カプセルは、サイズ3カプセルである。従って、所望の用量又は有効量の送達は、2回以上の吸入を必要とし得る。好ましくは、それが必要な被験者に投与される各用量は、有効量の呼吸用乾燥粒子又は乾燥粉末を含有し、約4回以下の吸入を用いて投与される。例えば、各用量の乾燥粉末又は呼吸用乾燥粒子は、単回吸入、又は2、3、若しくは4回の吸入で投与することができる。乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、受動DPIを用いて、1回の吸込みで作動されるステップで投与されるのが好ましい。このタイプの装置を用いる場合、被験者の吸入のエネルギーが、呼吸用乾燥粒子を分散させると共に、粒子を呼吸器中に引き入れる。
【0110】
本発明の方法に使用するのに好適な乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子は、上気道(すなわち、中咽頭及び喉頭)、下気道(気管、それに続く気管支及び細気管支への分岐部)、並びに終末細気管支(これは、呼吸細気管支に分かれた後、最終呼吸領域である気胞又は肺深部に到る)を通過することができる。本発明の一実施形態では、呼吸用乾燥粒子の集団の大部分は、肺深部に沈着する。本発明の別の実施形態では、送達は、主として中央気道に向かう。別の実施形態では、送達は、上気道に向かう。好ましい実施形態では、呼吸用乾燥粒子の集団の大部分は、誘導気管支内に沈着する。
【0111】
要望又は指示される場合、本明細書に記載する乾燥粉末及び呼吸用乾燥粒子は、1種又は複数種の他の治療薬と一緒に投与することができる。他の治療薬は、経口、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、若しくは皮下注射)、局所投与、吸入(例えば、気管支内、鼻内若しくは口腔吸入、点鼻剤)により、直腸、膣などの任意の好適な経路により投与することができる。呼吸用乾燥粒子及び乾燥粉末は、他の治療薬の投与前、投与と実質的に同時、又は投与後に投与することができる。好ましくは、乾燥粉末及び/又は呼吸用乾燥粒子並びに他の治療薬は、それらの薬理学的活性の実質的な重複がもたらされるように投与する。
【0112】
本明細書に記載の乾燥粉末及び呼吸用乾燥粒子は、そのまま吸入されることが意図され、本発明は、即時分散物の製造における乾燥粉末製剤の使用を除外する。即時分散物は、使用前(患者に対する薬物の投与直前を意味する)に完成される調製物として当業者に知られている。本発明で使用されるとき、用語「即時分散物」は、溶液又は懸濁液が製薬業により直接製造されず、すぐに使用できる形態で市販されているが、乾燥固体組成の調製の直後、通常、患者への投与の直前に、調製される全てのケースを指す。
【0113】
例示
以下の実施例で用いられる材料及びその供給源を以下に記載する。塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、オレイン酸、水酸化アンモニウム、マンニトール、乳酸マグネシウム、及びL-ロイシンは、Sigma-Aldrich Co.(St.Louis,MO),Spectrum Chemicals(Gardena,CA),Applichem(Maryland Heights,MO),Alfa Aesar(Tewksbury,MA),Thermo Fisher(Waltham,MA),Croda Chemicals(East Yorkshire,United Kingdom)又はMerck(Darmstadt,Germany)から入手した。イトラコナゾールは、Neuland(Princeton,NJ)又はSMS Pharmaceutical ltd(Telengana State,India)から入手した。アムホテリシンBは、Synbiotics Ltd(Ahmedabad,India)から入手した。超純(ASTMタイプII)水は、浄水装置(Millipore Corp.,Billerica,MA)又は同等物から得た。
【0114】
方法:
懸濁液の体積粒径の幾何学。活性剤懸濁液の体積中央径(×50又はDv50)(体積中央幾何学径(VMGD)と呼ばれることもある)は、レーザ回折法を用いて決定した。この装置は、サンプル操作及び除去のための自動再循環システム又は固定量サンプルキュベットを装備するHoriba LA-950から構成された。脱イオン水又は脱イオン水と0.5%未満の界面活性剤(例えば、ソルベート80若しくはドデシル硫酸ナトリウムなど)のいずれかからなる分散媒に対するサンプル。懸濁液の分散を助けるために超音波エネルギーを適用することができる。レーザ伝送が正しい範囲であるとき、5の設定値でサンプルを60秒間音波処理した。次に、サンプルを測定し、粒度分布を記載した。
【0115】
乾燥粉末の幾何又は体積粒径。乾燥粉末製剤の体積中央幾何径(VMGD)とも呼ばれこともある体積中央径(×50又はDv50)は、レーザ回折法を用いて決定した。この装置は、HELOS回折計及びRODOS乾燥粉末分散器(Sympatec,Inc.,Princeton,NJ)から構成された。RODOS分散器は、粒子のサンプルにせん断力を加えるが、これは、入来する圧縮乾燥空気のレギュレータ圧力(典型的には、最高オリフィスリング圧力で1.0バールに設定されている)により制御される。圧力設定は、粉末を分散するのに用いられるエネルギーの量を変えるために変更することができる。例えば、レギュレータ圧力を0.2バールから4.0バールに変更することにより、分散エネルギーを調節することができる。粉末サンプルをマイクロスパーテルからRODOS漏斗中に分散させる。分散した粒子は、レーザビームを通過して移動し、そこで、生じた回折光パターンを、典型的には、R1レンズを用いて、一連の検出器により収集する。次に、小さい粒子ほど、大きな角度で光を回折することに基づいて、フラウンホーファ(Fraunhofer)回折モデルを用いて、全体的回折パターンを体積ベースの粒度分布に変換する。この方法を用いて、式:(Dv[90]-Dv[10)/Dv[50]により分布のスパンも決定した。このスパン値は、粒度分布の多分散性の相対示度を付与する。
【0116】
Andersen Cascade Impactorによる空気力学性能。吸入装置から分散された粉末の空気力学特性は、Mk-II 1 ACFM Andersen Cascade Impactor)(Copley Scientific Limited,Nottingham,UK)(ACI)で評価した。ACI計器は、18~25℃及び25~35%の相対湿度(RH)の制御環境条件で作動させた。この計器は、慣性衝突に基づいてエーロゾル粒子を分離する8ステージから構成される。各ステージで、エーロゾル流は、1組のノズルを通過して、対応する衝突プレートに衝突する。十分小さい慣性を有する粒子は、エーロゾル流を次のステージまで続けるが、残りの粒子はプレートに衝突することになる。連続した各ステージで、エーロゾルは、さらに高速でノズルを通過し、空気力学的に小さい粒子は、プレート上で収集される。エーロゾルが最終ステージを通過した後、フィルターが、残留する最小粒子を収集し、これは「最終収集フィルター」と呼ばれる。次に、重量測定及び/又は化学分析を実施して、粒度分布を決定することができる。また、ショートスタックカスケードインパクター(短縮(collapsed)カスケードインパクターとも呼ばれる)も、2つの空気力学粒度カットポイントを評価する作業時間短縮を可能にするために使用されている。この短縮カスケードインパクターを用いれば、微粒子及び粗粒子画分を確認するのに必要なステップ以外のステージが除外される。使用する衝突技術によって、2つ又は8つの個別の粉末画分を収集することができた。カプセル(HPMC、サイズ3;Capsugel Vcaps,Peapack,NJ)に粉末を特定の重量まで充填した後、携帯型の吸込み作動式乾燥粉末吸入器(DPI)装置、高抵抗RS01 DPI又は超高抵抗UHR2 DPI(いずれも、Plastiape,Osnago,Italy)内に配置した。カプセルに孔をあけ、60.0L/分の流量で2秒間作動するカスケードインパクターから粉末を排出させた。この流量で、8ステージについての較正カットオフ粒径は、8.6、6.5、4.4、3.3、2.0、1.1、0.5及び0.3ミクロンであり、ショートスタックカスケードインパクターで使用した2ステージについては、Andersen Cascade Impactorに基づいて、カットオフ粒径は、5.6ミクロン及び3.4ミクロンである。フィルターを装置内に配置することにより画分を収集し、重量測定又はHPLCでの化学測定で、フィルターに衝突した粉末の量を定量した。
【0117】
Next Generation Impactorによる空気力学径性能。吸入装置から分散された粉末の空気力学的特性をNext Generation Impactor(NGI)(Copley Scientific,Nottingham,UK)で評価した。NGIを使用する測定の場合、18~25℃及び25~35%の相対湿度(RH)の制御環境条件でNGI計器を作動させた。この計器は、慣性衝突に基づいてエーロゾル粒子を分離する7ステージから構成され、様々な空気流量で作動させることができる。各ステージで、エーロゾル流は、1組のノズルを通過して、対応する衝突面に衝突する。十分小さい慣性を有する粒子は、エーロゾル流を次のステージまで持続するが、残りの粒子は表面に衝突することになる。連続した各ステージで、エーロゾルは、さらに高速でノズルを通過し、空気力学的に小さい粒子は、プレート上で収集される。エーロゾルが最終ステージを通過した後、マイクロ-オリフィス収集器が、残留する最小粒子を収集する。次に、重量測定及び/又は化学分析を実施して、粒度分布を決定することができる。カプセル(HPMC、サイズ3;Capsugel Vcaps,Peapack,NJ)に粉末を特定の重量まで充填した後、携帯型の吸込み作動式乾燥粉末吸入器(DPI)装置、高抵抗RS01 DPI又は超高抵抗RS01 DPI(いずれも、Plastiape,Osnago,Italy)内に配置した。カプセルに孔をあけ、2.0L/分の吸入空気の流量で作動するカスケードインパクターから粉末を排出させた。指定の流量で、これらのステージのカットオフ粒径を計算した。湿潤フィルターを装置内に配置することにより画分を収集し、HPLCでの化学測定で、フィルターに衝突した粉末の量を定量した。
【0118】
微粒子量。微粒子量は、特定の粒度範囲内の1種又は複数種の治療薬の質量を示し、これを用いて、呼吸器内の特定の領域に到達する質量を予測することができる。微粒子量は、ACI又はNGIのいずれかによって、重量測定により、又は化学的に測定することができる。重量測定の場合、乾燥粒子は、均質であると仮定されるため、各ステージ及び収集フィルター上の粉末質量に、製剤中の治療薬の分率を掛けることにより、治療薬の質量を決定することができる。指定の流量でステージの各々に沈着した累積重量を計算し、5.0マイクロメートル径粒子に相当する累積重量を補間する。1つ又は複数のカプセル内に含まれ、インパクター中に作動される1回用量の粉末の累積重量は、5.0ミクロン未満の微粒子に等しい(FPD<5.0ミクロン)。
【0119】
質量中央空気力学径。質量中央空気力学径(MMAD)は、Andersen Cascade Impactor(ACI)により得られた情報を用いて決定した。各ステージについてステージカットオフ粒径未満の累積質量を計算した後、粉末の回収用量により正規化する。次に、ステージカットオフ粒径(50パーセンタイルを括弧で示す)の線形補間により、粉末のMMADを計算する。MMADを測定する別の方法は、Next Generation Impactor(NGI)を用いる方法である。ACIと同様に、MMADは、ステージカットオフ粒径未満の累積質量を用いて計算するが、この累積質量は、各ステージについて計算した後、粉末の回収用量により正規化する。次に、ステージカットオフ粒径(50パーセンタイルを括弧で示す)の線形補間により、粉末のMMADを計算する。
【0120】
放出幾何又は体積径。粒子が乾燥粉末吸入器から放出された後の体積中央径(Dv50)(体積中央幾何径(VMGD)と呼ばれることもある)は、Spraytec回折計(Malvern,Inc.)によるレーザ回折法を用いて決定した。粉末をサイズ3カプセル(V-Caps,Capsugel)に充填してから、カプセルベースの乾燥粉末吸入器(RS01 Model 7 High resistance,Plastiape,Italy)、すなわちDPI内に配置し、DPIをシリンダー内部に密封した。シリンダーは、システムを通る定常空気流の正圧空気源に接続するが、これは、質量流計で測定され、その持続時間は、タイマー制御電磁弁で制御された。乾燥粉末吸入器の出口を室圧に曝露させ、それによって得られるエーロゾルジェットは、開放ベンチ構成での回折粒度計(Spraytec)のレーザを通過した後、真空抽出装置により捕捉される。システムを通過する定常空気流量は、電磁弁を用いて開始した。典型的には2秒の設定時間にわたり、典型的には60L/分でDPIから定常空気流を排出させた。あるいは、DPIから排出させる空気流は、ときに15L/分、20L/分、又は30L/分で運転させた。こうして得られるエーロゾルの幾何粒度分布は、吸入時間にわたり典型的には1000Hzで採取したサンプルを用いて、光検出器で測定した散乱パターンに基づき、ソフトウェアから計算した。続いて、測定されたDv50、GSD、FPF<5.0μmを吸入時間にわたって平均した。
【0121】
放出量(ED)は、発射又は分散イベント後に好適な吸入装置から排出する治療薬の質量を指す。EDは、USP Section 601 Aerosols,Metered-Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered-Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers,米国薬局方協会(United States Pharmacopeial convention),Rockville,MD,13th Revision,222-225,2007に基づいた方法を用いて決定することができる。カプセルの内容物は、圧力降下が4kPa及び典型的流量が60LPMのRS01 HR吸入器、又は圧力降下が4kPa及び典型的流量が39LPMのUHR2 RS01のいずれかを用いて、分散させる。放出粉末は、フィルターホルダーサンプリング装置内のフィルター上で収集する。サンプリング装置は、水などの好適な溶媒ですすいだ後、HPLC法を用いて分析する。重量測定分析の場合には、長さがより短いフィルターホルダーサンプリング装置を用いて、装置内の付着を低減し、フィルターは、DPIからフィルターへと送達された粉末の質量を決定する前及び後に計量する。次に、送達された粉末中の治療薬の含量に基づいて、治療薬の放出量を計算する。放出量は、DPIから送達された治療薬の質量として、又は充填量のパーセンテージとして記録することができる。
【0122】
熱重量分析:熱重量分析(TGA)は、Q500モデル又はDiscoveryモデル熱重量分析装置(TA Instruments,New Castle,DE)のいずれかを用いて実施した。開放アルミニウムDSCパン、又は密封アルミニウムDSCパン(試験時間前に自動的に穿孔した)のいずれかにサンプルを配置した。風袋重量は計器により事前に記載した。次の方法を使用した:周囲温度(約35℃)から200℃まで5.00℃/分で昇温させる。重量損失を140℃までの温度の関数として記載した。TGAにより、乾燥粉末内の揮発性化合物分の計算が可能になる。水のみ、又は揮発性溶媒と一緒に水を用いた製法を使用する場合には、TGAによる重量損失は、水分の正しい推定量である。
【0123】
X線粉末回析:粉末X線回析(PXRD)を用いて、製剤の結晶性を評価した。走査範囲5~45°2θ及びステップサイズ0.02℃2θにわたり、データ蓄積時間1.2秒/ステップで、1.5418Aを有するCu X線管を用いる粉末X線回析計(LINXEYE検出器を備えるD8 Discover;Bruker Corporation,Billerica,MA又は同等物)において、20~30mgの材料サンプルを分析する。
【0124】
HPLCを用いたイトラコナゾール分/純度。紫外線(UV)検出器に接続された逆相C18カラムを使用する高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法が、PUR1900製剤の同定、バルク含量、アッセイ、CUPMD及び純度分析のために開発されている。逆相カラムを30℃に平衡させ、オートサンプラーを5℃に設定する。移動相、すなわち、pH2.0の20mMリン酸ナトリウム一塩基(移動相A)及びアセトニトリル(移動相B)を19.5分のラン時間の経過にわたって、59:41(A:B)比から5:95(A:B)までの勾配溶出に使用する。検出は258nmのUVにより行い、注入量は10μLである。粉末中のイトラコナゾール分を標準曲線に対して定量する。
【0125】
既知不純物、A、B、C、D、E、F及びG(モノグラフPh.Eur.01/2011:1355に示す)の同定は、PUR1900サンプルの不純物ピークの保持時間を、不純物Aを添加したイトラコナゾールUSP不純物ミックス対照標準のそれと比較することにより確認する。不明の不純物は、イトラコナゾール主要ピークの保持時間に対する相対保持時間により、並びに検出限界(LOD)を超える面積を用いて同定及び定量する。全ての不純物は、イトラコナゾールピークに対する面積パーセントにより測定する。
【0126】
微粉化。結晶性活性剤の粒度分布は、当業者には周知のいくつかの技法を用いて調節することができ、そうした技法として、限定しないが、高圧均質化、高せん断力均質化、ジェットミル粉砕、ピンミル粉砕、マイクロ流動化、又は湿式粉砕(ボールミル粉砕、パールミル粉砕若しくはビーズミル粉砕としても知られる)が挙げられる。湿式粉砕は、ナノメートル(<1μm)粒径ドメインのものを含め、広範な粒度分布を達成することができるため、多くの場合、湿式粉砕が好ましい。
【0127】
低エネルギー湿式粉砕を用いた微粉砕。活性剤の微粉化のための1つの技法は、低エネルギー湿式粉砕(ローラミル粉砕、又はジャーミル粉砕としても知られる)によるものであった。貧溶媒(水、又は活性剤が感知できるほど可溶性ではない任意の溶媒であってよい)中で活性剤の懸濁液を調製した。次に、安定剤(限定しないが、ノニオン性界面活性剤又は両親媒性ポリマーであってよい)を粉砕媒体(限定しないが、高耐摩耗性を有し、且つ粒径範囲が0.03~0.70ミリメートルの球体であってよい)と一緒に懸濁液に添加する。続いて、ジャーミル(US Stoneware,East Palestine,OH USA)を用いて、懸濁液を含有する容器を回転させ、その間、サンプルを定期的に採取して、粒径を評価する(LA-950,HORIBA,京都、日本)。粒径が十分に減少するか、又は最小粒径に達したら、篩を通して懸濁液を漉すことにより粉砕媒体を除去した後、生成物を回収する。
【0128】
高エネルギー湿式粉砕を用いた微粉砕。活性剤の微粉化のための別の技法は、ロータ-ステータ、又は媒体攪拌ミルを用いた高エネルギー湿式粉砕であった。貧溶媒(水、又は活性剤が感知できるほど可溶性ではない任意の溶媒であってよい)中で活性剤の懸濁液を調製した。次に、安定剤(限定しないが、ノニオン性界面活性剤又は両親媒性ポリマーであってよい)を粉砕媒体(限定しないが、高耐摩耗性を有し、且つ粒径範囲が0.03~0.70ミリメートルの球体であってよい)と一緒に懸濁液に添加する。続いて、懸濁液をミルに充填し、ミルをバッチ又は再循環モードのいずれかで作動させることができる。この工程は、懸濁液と粉砕媒体とを粉砕チャンバー内で攪拌することからなり、これによって、この系へのエネルギー入力を増大すると共に、微粉化プロセスを加速する。粉砕チャンバー及び再循環容器は、ジャケット付きで、生成物の昇温を回避するために、能動的に冷却される。工程中に懸濁液の攪拌速度及び再循環速度を制御する。サンプルを定期的に採取して、粒径を評価する(LA-950、HORIBA、京都、日本)。粒径が十分に減少するか、又は最小粒径に達したら、懸濁液をミルから排出する。
【0129】
マイクロ流動化を用いた微粉砕。活性剤の微粉化のための別の技法は、マイクロ流動化によるものであった。マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)による処理は、液体及び固体の微粉化のために使用される高せん断力湿式処理ユニット作業である。このユニットは、様々な相互作用チャンバーで構成され、これらのチャンバーは、特定のオリフィス及び通路設計を有する円筒形のモジュールであり、それを流体が高圧で通過して、せん断速度を制御する。生成物は、入口タンクを介してユニットに入り、高圧ポンプにより最大400m/秒の速度で固定形状相互作用チャンバー中に送り込まれる。次に、必要であれば、効果的に冷却されてから、出力タンク内に収集される。この工程は、粒径目標を達成するために、必要に応じて反復することができる(例えば、複数回の「通過」)。レーザ回析(LA-950、HORIBA、京都、日本)を用いて、活性剤の粒径を定期的にモニターする。粒径が十分に減少するか、又は最小粒径に達したら、懸濁液をユニットから回収する。
【0130】
ジェットミル粉砕を用いた微粉砕。活性剤の微粉化のための別の技法は、ジェットミル粉砕によるものであった。ジェットミルは、流体エネルギー(圧縮空気又はガス)を使用して、可動部のない単一チャンバー内で、粉砕し、分類する。高圧空気により活性化され、粒子は加速されて、浅い粉砕チャンバー内の高速回転に付される。粒子が互いに衝突し合うにつれて、その粒径は減少する。粒子が所望の微粒子径に達するまで、遠心力は、粉砕回転領域内に比較的大きな粒子を保持する。遠心力は、所望の粒子を静的分類器に向かわせ、そこで、それらの粒子が正しい粒径に達すれば、排出が可能となる。最終粒径は、供給速度及び推進ガス圧力を変更することにより制御される。
【0131】
噴霧乾燥のための液体原料の調製。均質な粒子の噴霧乾燥のためには、目的の成分を溶液中に溶解させるか、又は均質且つ安定した懸濁液に懸濁させる必要がある。原料には、溶液の場合には溶媒として、又は懸濁液の場合には連続相として、水、又はアルコール若しくはケトンなどの他の混和性溶媒と水の組合せを使用することができる。所望の溶媒中に可溶性成分を溶解させた後、混合しながら、得られた溶液中に界面活性剤安定化活性剤含有懸濁液を分散させることによって、様々な製剤の原料を調製したが、工程は、この具体的な操作順序に限定されない。
【0132】
Niro噴霧乾燥器を用いた噴霧乾燥。サイクロン、生成物フィルター又はその両方からの粉末収集を備えるNiro Mobile Minor噴霧乾燥器(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)を用いた噴霧乾燥により乾燥粉末を生成した。液体フィードの噴霧は、ガスキャップ67147及び流体キャップ2850SSと共に、Niro(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)又はSpraying Systems(Carol Stream,IL)1/4J二流体ノズルのいずれかからの並流二流体ノズルを用いて実施したが、他の二流体ノズルセットアップも可能である。一部の実施形態では、二流体ノズルは、内部混合セットアップ又は外部混合セットアップであってもよい。別の噴霧技術は、回転噴霧又は圧力ノズルを含む。液体フィードは、ギアポンプ(Cole-Parmer Instrument Company,Vernon Hills,IL)を用いて、二流体ノズル中に直接供給するか、又は二流体ノズルへの導入の直前にスタティックミキサー(Charles Ross & Son Company,Haupppauge,NY)中に供給した。別の液体供給技術として、加圧容器からの供給がある。空気中の水分がその使用前に少なくとも部分的に除去されていれば、窒素又は空気を乾燥ガスとして使用してもよい。加圧窒素又は空気は、二流体ノズルへの噴霧ガスフィードとして使用することができる。乾燥ガス入口温度は、70℃~300℃の範囲であり、出口温度は、30℃~120℃で、液体原料の流量は、10mL/分~100mL/分である。二流体噴霧器に供給するガスは、ノズルの選択に応じて変動し得るものであり、Niro並流二流体ノズルの場合には、5kg/時~50kg/時の範囲、また、Spraying Systems1/4J二流体ノズルの場合には、30g/時~50g/時の範囲であってよい。噴霧ガス速度は、特定のガス及び液体質量比を達成するように設定することができ、この比は、形成される液滴サイズに直接影響を及ぼす。乾燥ドラム内部の圧力は、+3“WC~-6“WCの範囲であってよい。噴霧乾燥粉末は、サイクロンの出口で容器内に、カートリッジ若しくはバグハウスフィルタ上に、又はサイクロン及びカートリッジ若しくはバグハウスフィルタの両方から収集することができる。
【0133】
Buechi噴霧乾燥器を用いた噴霧乾燥。標準又は高性能サイクロンのいずれかからの粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により乾燥粉末を調製した。開放ループ(単一パス)モードでの乾燥及び噴霧ガスとして空気又は窒素のいずれかを用いて、システムを作動させた。空気を用いて作動した場合、システムは、噴霧乾燥に用いる空気の安定した温度及び湿度を確実にするために、Buechi B-296除湿器を使用した。さらに、室内の相対湿度が30%RHを超えた場合には、外部LG除湿器(モデル49007903、LG Electronics,Englewood Cliffs,NJ)を常に作動させた。窒素を用いて作動した場合、加圧窒素源を使用した。さらに、システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。液体フィードの噴霧には、直径1.5mmのBuechi二流体ノズル又は0.5mm液体インサートを備えるSchlick 970-0噴霧器(Duesen-Schlick GmbH,Coburg,Germany)を使用した。プロセスガスの入口温度は、100℃~220℃、また出口温度は、30℃~120℃であってよく、液体原料の流量は、3mL/分~10mL/分である。二流体噴霧ガスは、Buechi二流体ノズル及びSchlick噴霧器の場合、25mm~45mm(300LPH~530LPH)の範囲であり、上方の噴霧空気圧は0.3バールである。吸引器速度は、50%~100%の範囲である。
【0134】
安定性の評価:選択製剤の物理化学的安定性及びエーロゾル性能を2~8℃、25℃/60%RH、並びに材料量が許せば、International Conference on Harmonisation(ICH)Q1ガイダンスに詳述されているように、40℃/75%RHで評価した。安定性サンプルを較正チャンバー(Darwin Chambers Company Models PH024及びPH074,St.Louis.MO)内に保存した。バルク粉末サンプルを計量してアンバーガラスバイアル中に導入し、30%RHで密封してから、シリカ乾燥剤(2.0g、Multisorb Technologies,Buffalo,NY)と一緒にアルミニウムポーチ(Drishield 3000,3M,St.Paul,MN)内にインダクションシールした。さらに、カプセル中の製剤の安定性を評価するために、目標質量の粉末を手でサイズ3、HPMCカプセル(Capsugel Vcaps,Peapack,NJ)に、+/-0.2mgの誤差で、30%RHにて充填した。次に、充填したカプセルを高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル中に等分してから、シリカ乾燥剤と一緒にアルミニウムポーチ内にインダクションシールした。
【実施例】
【0135】
実施例1.硫酸ナトリウム/マンニトールを含有するポリソルベート80安定化ナノ結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
103.789gの水及び1.1662gのポリソルベート80(Spectrumロット2DI0112)中に11.662gのイトラコナゾール(NeulandロットITI0114005)を混合することにより、ナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。次に、129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1000rpmで1時間、続いて1500rpmで30分間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、124nmであった。
【0136】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、20wt%及び50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。噴霧乾燥中、原料を攪拌した。原料質量は、83.3gであり、これは、15分の製造キャンペーンを支持するものであった。表2は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0137】
【0138】
製剤I及びIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0139】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤I及びIIの場合、液体原料固形物濃度は、3.0wt%、プロセスガス入口温度は、117℃~119℃、プロセスガス出口温度は、50℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、噴霧ガス、及び液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表3に記載する。
【0140】
【0141】
B.粉末の特性決定
2つの製剤のバルク粒径の特徴は表4に見出される。製剤I及びIIそれぞれについて、1.83及び1.67という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤I及びIIそれぞれについて、1.07及び1.12という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0142】
【0143】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び20LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を2つの製剤について測定し、表5に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0144】
【0145】
8ステージアンデルセン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)(ACI-8)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表6に記載する。製剤I及びIIの微粒子用量はいずれも、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(それぞれ、38.8%及び37.1%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤I及びIIのMMADは、それぞれ3.59ミクロン及び3.17ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0146】
【0147】
製剤I及びIIの重量損失をTGAにより測定したところ、それぞれ0.48%及び0.15%であることがわかった。
【0148】
製剤I及びIIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、それぞれ102.9%及び103.1%である。
【0149】
製剤I及びIIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが両方の製剤で観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図1)
【0150】
製剤I及びIIは、2~8℃及び25℃/60℃RHで6ヶ月間保存した後、安定していることが判明した。
【0151】
実施例2.塩化ナトリウム/ロイシンを含有するポリソルベート80安定化ナノ結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
103.789gの水及び1.1662gのポリソルベート80(Spectrumロット2DI0112)中に11.662gのイトラコナゾール(NeulandロットITI0114005)を混合することにより、ナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1000rpmで1時間、続いて1500rpmで30分間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、124nmであった。
【0152】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、20wt%及び50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。噴霧乾燥中、原料を攪拌した。原料質量は、83.3gであり、これは、15分の製造キャンペーンを支持するものであった。表7は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0153】
【0154】
製剤I及びIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0155】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤I及びIIの場合、液体原料固形物濃度は、3.0%、プロセスガス入口温度は、138℃~141℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、噴霧ガス、及び液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表8に記載する。
【0156】
【0157】
B.粉末の特性決定
2つの製剤のバルク粒径の特徴は表9に見出される。製剤III及びIVそれぞれについて、1.76及び1.86という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤III及びIVそれぞれについて、1.19及び1.05という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0158】
【0159】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び20LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を2つの製剤について測定し、表10に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0160】
【0161】
8ステージアンデルセン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)(ACI-8)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表11に記載する。製剤III及びIVの微粒子用量はいずれも、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(それぞれ、55.5%及び49.4%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤III及びIVのMMADは、それぞれ3.14ミクロン及び3.30ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0162】
【0163】
製剤III及びIVの重量損失をTGAにより測定したところ、それぞれ0.15%及び0.08%であることがわかった。
【0164】
製剤III及びIVのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、それぞれ103.7%及び104.9%である。
【0165】
製剤III及びIVの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが両方の製剤で観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図2)
【0166】
製剤III及びIVは、2~8℃及び25℃/60℃RHで6ヶ月間保存した後、安定していることが判明した。
【0167】
実施例3.乳酸マグネシウム/ロイシンを含有するポリソルベート80安定化ナノ結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
103.789gの水及び1.1662gのポリソルベート80(Spectrumロット2DI0112)中に11.662gのイトラコナゾール(NeulandロットITI0114005)を混合することにより、ナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1000rpmで1時間、続いて1500rpmで30分間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、124nmであった。
【0168】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、20wt%及び50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。噴霧乾燥中、原料を攪拌した。原料質量は、83.3gであり、これは、15分の製造キャンペーンを支持するものであった。表12は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0169】
【0170】
製剤V及びVIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0171】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤V及びVIの場合、液体原料固形物濃度は、3.0%、プロセスガス入口温度は、171℃~173℃、プロセスガス出口温度は、80℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、噴霧ガス、及び液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表13に記載する。
【0172】
【0173】
B.粉末の特性決定
2つの製剤のバルク粒径の特徴は表14に見出される。製剤V及びVIそれぞれについて、1.70及び1.83という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤V及びVIそれぞれについて、1.02及び1.05という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0174】
【0175】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び20LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を2つの製剤について測定し、表15に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0176】
【0177】
8ステージアンデルセン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)(ACI-8)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表16に記載する。製剤V及びVIの微粒子用量はいずれも、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(それぞれ、39.6%及び44.6%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤V及びVIのMMADは、それぞれ3.97ミクロン及び3.42ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0178】
【0179】
製剤V及びVIの重量損失をTGAにより測定したところ、それぞれ5.157%及び3.087%であることがわかった。
【0180】
製剤V及びVIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、それぞれ99.7%及び100.6%である。
【0181】
製剤V及びVIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが両方の製剤で観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図3)
【0182】
製剤V及びVIは、2~8℃及び25℃/60℃RHで6ヶ月間保存した後、安定していることが判明した。
【0183】
実施例4.硫酸ナトリウム/ロイシンを含有するオレイン酸安定化ナノ結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
104.233gの水、0.582gのオレイン酸(Croda 000705097)、及び9.44gの10%水酸化アンモニウム中に11.646gのイトラコナゾール(NeulandロットITI0114005)を混合することにより、ナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1000rpmで1時間、次に1500rpmでさらに1時間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、120nmであった。
【0184】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、オレイン酸及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%及び70wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。噴霧乾燥中、原料を攪拌した。原料質量は、100~193.3gの範囲であり、これは、16~34分の製造キャンペーンを支持するものであった。表17は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0185】
【0186】
製剤VII及びVIIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0187】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤VII及びVIIIの場合、液体原料固形物濃度は、3.0%、プロセスガス入口温度は、131℃~133℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分(1.824kg/時)であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表18に記載する。
【0188】
【0189】
B.粉末の特性決定
2つの製剤のバルク粒径の特徴は表19に見出される。製剤VII及びVIIIそれぞれについて、1.94及び1.81という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤VII及びVIIIそれぞれについて、1.22及び1.11という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0190】
【0191】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び20LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を2つの製剤について測定し、表20に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0192】
【0193】
8ステージアンデルセン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)(ACI-8)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表21に記載する。製剤VII及びVIIIの微粒子用量はいずれも、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(それぞれ、56.0%及び52.6%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤VII及びVIIIのMMADは、それぞれ2.77ミクロン及び3.08ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0194】
【0195】
製剤VII及びVIIIの重量損失をTGAにより測定したところ、それぞれ0.47%及び0.33%であることがわかった。
【0196】
製剤VII及びVIIIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、それぞれ101.5%及び101.4%である。
【0197】
製剤VII及びVIIIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが両方の製剤で観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図4)
【0198】
製剤VII及びVIIIは、2~8℃及び25℃/60℃RHで6ヶ月間保存した後、安定していることが判明した。
【0199】
実施例5.対照標準液体ナノ結晶性及びミクロ結晶性イトラコナゾール製剤
結晶粒子状イトラコナゾールの液体製剤を調製した。
【0200】
製剤IXは、ポリソルベート80を含むイトラコナゾールのミクロ懸濁液である。液体中のイトラコナゾール濃度は、5mg/mLである。イトラコナゾールとポリソルベート80の比は、10:1(wgt/wgt)である。イトラコナゾール結晶の中央粒径は、1600ナノメートルである。
【0201】
製剤Xは、ポリソルベート80を含むイトラコナゾールのナノ懸濁液である。液体中のイトラコナゾール濃度は、5mg/mLである。イトラコナゾールとポリソルベート80の比は、10:1(wgt/wgt)である。イトラコナゾール結晶の中央粒径は、132ナノメートルである。
【0202】
実施例6.硫酸ナトリウム/ロイシンを含有するオレイン酸安定化ナノ結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
87.018gの水、1.519gのオレイン酸(Croda 000705097)、及び2.585gの水酸化アンモニウム(Acros B0522464)中に30.374gのイトラコナゾール(NeulandロットITI0714011)を混合することにより、ナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1800rpmで2時間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、124nmであった。
【0203】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、オレイン酸及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料質量は、1219.4gであり、これは、約3.5時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表22は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0204】
【0205】
製剤XIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0206】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XIの場合、液体原料固形物濃度は、3.0%、プロセスガス入口温度は、129℃~132℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表23に記載する。
【0207】
【0208】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表24に見出される。製剤XIについて、2.77という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XIについて、1.28という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0209】
【0210】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び20LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を製剤について測定し、表25に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0211】
【0212】
ネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表26に記載する。製剤XIの微粒子用量は、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(42%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤XIのMMADは、3.37ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0213】
【0214】
製剤XIの重量損失をTGAにより測定したところ、0.31%であることがわかった。
【0215】
製剤XIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、99.7%である。
【0216】
製剤XIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図5)
【0217】
実施例7.硫酸ナトリウム/ロイシンを含有する、様々な粒径のポリソルベート80安定化結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
87.262gの水及び3.009gのポリソルベート80中に30.090gのイトラコナゾール(Neuland ITI0114005及びITI0714011)を混合することにより、製剤XIIのナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1800rpmで1時間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、132nmであった。この工程は、以後「湿式粉砕工程#1」と呼ぶ。
【0218】
脱イオン水中に10wt%イトラコナゾールと1.0wt%ポリソルベート80を含む懸濁液として、製剤XIIIのナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。磁気攪拌棒により、ポリソルベート80を89.0%DI水に溶解させてから、やはり磁気攪拌棒を用いて、イトラコナゾールをゆっくりと添加した。一旦イトラコナゾールを全部懸濁させたら、処理中に材料を冷却するために氷水冷却コイルを用いて、30,000psiのM-110P Microfluidizerプロセッサで120パスにわたり製剤を処理した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、198nmであった。この工程は、以後「マイクロ流動工程#1」と呼ぶ。
【0219】
87.26195gの水及び3.009gのポリソルベート80中に30.090gのイトラコナゾール(Neuland ITI0114005)を混合することにより、製剤XIVのナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。129.625gの500μmポリスチレン粉砕媒体(Dow Chemical,Midland MI)を懸濁液に添加して、懸濁液を1000rpmで30分間粉砕した後、収集した。粉砕した懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、258nmであった。この工程は、以後「湿式粉砕工程#2」と呼ぶ。
【0220】
Qualification Micronizerジェットミル(Sturtevant,Hanover,MA USA)を用いて、製剤XVのナノ結晶性イトラコナゾールを調製した。フィード圧を90psigに設定し、粉砕圧を40psigに設定した。60.3gのイトラコナゾールが粉砕されるまで、イトラコナゾールをミルに継続的に供給した。粉砕されたAPIの最終中央粒径(Dv(50))は、1600nmであった。この工程は、以後「ジェットミル粉砕工程#1」と呼ぶ。続いて、製剤XVの微粉化イトラコナゾールを、脱イオン水中10wt%イトラコナゾール及び1.0wt%ポリソルベート80から構成される懸濁液に添加した。バッチサイズは、200gであった。磁気攪拌棒により、ポリソルベート80を89.0%DI水に溶解させてから、イトラコナゾールをゆっくりと添加し、懸濁液が分散し、且つ均質であることが視覚的に観察されるまで、混合した。
【0221】
原料溶液を調製し、これを用いて、結晶性イトラコナゾール、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。噴霧乾燥中、原料を攪拌した。原料質量は、166.67g~1219.4gであり、これは、30分~3.5時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表27は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0222】
【0223】
製剤XII~XVの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0224】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XII、XIV、及びXVの場合、液体原料固形物濃度は、3%、プロセスガス入口温度は、127℃~140℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.0g/分であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表28に記載する。
【0225】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XIIIの場合、液体原料固形物濃度は、3%、プロセスガス入口温度は、134℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表28に記載する。
【0226】
【0227】
B.粉末の特性決定
4つの製剤のバルク粒径の特徴は表29に見出される。製剤XII~XVについて、2.10未満という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XII~XVについて、1.25未満という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0228】
【0229】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び30LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を製剤XII、XIV、及びXVについて測定し、表30に記載した。60LPMから30LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。製剤XIIIについては、十分な材料量がなかったため、放出粒径試験は実施しなかった。
【0230】
【0231】
8ステージアンデルセン・カスケード・インパクター(Anderson Cascade Impactor)(ACI-8)又はネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表31に記載する。製剤XII~XV全ての微粒子用量は、名目用量の30%超がインパクターステージに到達することを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤XII~XVのMMADは、3.42~4.76であったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0232】
【0233】
製剤VII及びVIIIの重量損失をTGAにより測定し、表32に詳細を示す。
【0234】
【0235】
製剤VII及びVIIIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定し、表33に詳細を示す。
【0236】
【0237】
製剤XIIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンがこの製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図6)
【0238】
製剤XIIIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンがこの製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図7)
【0239】
製剤XIVの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンがこの製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図8)
【0240】
製剤XVの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンがこの製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図9)
【0241】
実施例8.硫酸ナトリウム/ロイシン及び低レベルのポリソルベート80を含有するポリソルベート80安定化結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
Qualification Micronizerジェットミル(Sturtevant,Hanover,MA USA)を用いて、製剤XVIのミクロ結晶性イトラコナゾールを調製した。フィード圧を90psigに設定し、粉砕圧を40psigに設定した。約60gのイトラコナゾールが粉砕されるまで、イトラコナゾール(SMS Pharma,ロットITZ-0715005)をミルに継続的に供給した。粉砕されたAPIの最終中央粒径(Dv(50))は、約1510nmであった。
【0242】
次に、製剤XVIのミクロ結晶性イトラコナゾールを、脱イオン水中10wt%イトラコナゾール及び0.25wt%ポリソルベート80から構成される懸濁液に添加した。バッチサイズは、440gであった。磁気攪拌棒により、ポリソルベート80を89.75%DI水に溶解させてから、微粉化イトラコナゾールをゆっくりと添加し、懸濁液が視覚的に分散し、且つ均質であることが観察されるまで、混合した。
【0243】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性イトラコナゾール、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料質量は、3000gであり、これは、約1時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表34は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0244】
【0245】
製剤XVIの乾燥粉末は、バッグフィルター収集を備えるNiro Mobile Minor噴霧乾燥装置(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.0mm液体インサートを備えるSchlick 940-0噴霧器を使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0246】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XVIの場合、液体原料固形物濃度は、1.2%、プロセスガス入口温度は、181℃~185℃、プロセスガス出口温度は、65℃、乾燥ガス流量は、80kg/時、噴霧ガス流量は、250g/分、噴霧ガス背圧は、30.4psig~31.4psigであり、液体原料流量は、50mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表35に記載する。
【0247】
【0248】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表36に見出される。製剤XVIIについて、1.93という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XVIIIについて、1.03という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した分散を可能にする望ましい特徴である。
【0249】
【0250】
製剤XVIの重量損失をTGAにより測定したところ、0.37%であることがわかった。
【0251】
製剤XVIの結晶化度をXRDにより評価した。イトラコナゾールの回析パターンが製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がイトラコナゾールの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図10)
【0252】
実施例9.硫酸ナトリウム/ロイシンを含有するポリソルベート80安定化ナノ結晶性アムホテリシンBの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
30mLガラスジャー内の16.96gの水及び0.190gのポリソルベート80(Acros Organics,A0365196)中に1.9gのアムホテリシンB(Synbiotics 15A02NO3)の4つの個別アリコートを添加することにより、ナノ結晶性アムホテリシンBを調製した。次に、57.88gの300μmイットリア安定化ジルコニア(YTZ)セラミック粉砕媒体(TOSOH、日本)を懸濁液に添加し、懸濁液を200rpmで21時間粉砕した後、収集した。個別のサンプルを合わせて、1ロットの懸濁液を製造した。粉砕された懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、134nmであった。
【0253】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性アムホテリシンB、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%アムホテリシンBの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、アムホテリシンB含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料質量は、250gであり、これは、約45分の製造キャンペーンを支持するものであった。表37は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0254】
【0255】
製剤XVIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7mm液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0256】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XVIIの場合、液体原料固形物濃度は、2.0%、プロセスガス入口温度は、132℃~138℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表38に記載する。
【0257】
【0258】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表39に見出される。製剤XVIIについて、2.02という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XVIIについて、1.02という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した分散を可能にする望ましい特徴である。
【0259】
【0260】
ネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表40に記載する。製剤XVIIの微粒子用量は、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(40.5%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤XVIIのMMADは、3.90ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0261】
【0262】
製剤XVIIの重量損失をTGAにより測定したところ、3.58%であることがわかった。
【0263】
製剤XVIIの結晶化度をXRDにより評価した。アムホテリシンBの回析パターンが製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がアムホテリシンBの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図11)
【0264】
実施例10.塩化ナトリウム/ロイシンを含有するポリソルベート80安定化ナノ結晶性アムホテリシンBの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
30mLガラスジャー内の16.96gの水及び0.190gのポリソルベート80(Acros Organics A0365196)中に1.9gのアムホテリシンB(Synbiotics 15A02NO3)の4つの個別アリコートを添加することにより、ナノ結晶性アムホテリシンBを調製した。次に、57.88gの300μmイットリア安定化ジルコニア(YTZ)セラミック粉砕媒体(TOSOH、日本)を懸濁液に添加し、懸濁液を200rpmで21時間粉砕した後、収集した。個別のサンプルを合わせて、1ロットの懸濁液を製造した。粉砕された懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、134nmであった。
【0265】
原料溶液を調製し、これを用いて、ナノ結晶性アムホテリシンB、ポリソルベート80及び他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%アムホテリシンBの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、アムホテリシンB含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料質量は、250gであり、これは、約45分の製造キャンペーンを支持するものであった。表41は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0266】
【0267】
製剤XVIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7mm液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0268】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XVIIIの場合、液体原料固形物濃度は、2.0%、プロセスガス入口温度は、131℃~132℃、プロセスガス出口温度は、60℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、30.4g/分であり、液体原料流量は、6.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表42に記載する。
【0269】
【0270】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表43に見出される。製剤XVIIIについて、2.27という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XVIIIについて、1.01という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した分散を可能にする望ましい特徴である。
【0271】
【0272】
ネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表44に記載する。製剤XVIIIの微粒子用量は、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(47.4%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤XVIIIのMMADは、3.91ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0273】
【0274】
製剤XVIIIの重量損失をTGAにより測定したところ、3.35%であることがわかった。
【0275】
製剤XVIIIの結晶化度をXRDにより評価した。アムホテリシンBの回析パターンが製剤に観察され、ミル粉砕又は噴霧乾燥工程がアムホテリシンBの固体状態には影響しないことを示唆している。パターンに観察された別のピークは、製剤の追加賦形剤に対応する。(
図12)
【0276】
実施例11.イトラコナゾール、硫酸ナトリウム及びロイシンの噴霧乾燥粉末製剤
A.粉末調製
水-テトラヒドロフラン(THF)共溶媒系を使用する原料溶液を調製し、これを用いて、イトラコナゾール、硫酸ナトリウム及びロイシンから構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して、好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。必要量のTHFを計量して、好適な大きさのガラス容器に導入した。イトラコナゾールをTHFに添加し、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有THF溶液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料体積は、5Lであり、これは、約8.5時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表45は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0277】
【0278】
製剤XVIIの乾燥粉末は、サイクロン粉末収集を備えるBuechi B-290 Mini Spray Dryer(BUECHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.5mmキャップ及び0.7液体チップを備えるBuechiノズルを使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0279】
以下の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XIXの場合、液体原料固形物濃度は、12.0g/L、プロセスガス入口温度は、92℃~103℃、プロセスガス出口温度は、40℃、乾燥ガス流量は、17.0kg/時、噴霧ガス流量は、2830g/分であり、液体原料流量は、10.0mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表46に記載する。
【0280】
【0281】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表47に見出される。製剤XIXについて、2.32という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XIXについて、1.12という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0282】
【0283】
患者の流量をシミュレートした毎分60リットル(LPM)及び30LPMで測定及び/又は計算した幾何学粒径並びにカプセル放出粉末質量(CEPM)を製剤について測定し、表48に記載した。60LPMから20LPMへの、CEPM及び幾何学径の小さな変化は、乾燥粉末製剤が、患者の吸入流量とは比較的無関係であることを示しており、これは、様々な流量で呼吸する患者が、比較的類似した治療用量を受けるであろうことを示唆する。
【0284】
【0285】
ネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)を用いて測定及び/又は計算した空気力学粒径、微粒子画分及び微粒子用量を表49に記載する。製剤XIXの微粒子用量は、カプセルに充填された名目用量の高いパーセンテージがインパクターステージに到達する(41.1%)ことを示し、そのため、肺に送達されることが予測される。製剤XIXのMMADは、3.80ミクロンであったが、これは、中央及び誘導気道内の付着を示す。
【0286】
【0287】
製剤XIXの重量損失をTGAにより測定したところ、0.37%であることがわかった。
【0288】
製剤XIXのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定すると、99.0%である。
【0289】
製剤XIXの結晶化度をXRDにより評価した(
図13)。イトラコナゾールのピークは全く観察されず、これは、感知可能なレベルのイトラコナゾールが製剤中に存在しないことを示している。図に示すように、製剤に観察された全てのピークは、賦形剤に対応するものである。従って、製剤XIX中のイトラコナゾールの固体状態は、非晶質として特性決定することができる。
【0290】
実施例12.イトラコナゾールを含有する乾燥粉末製剤のin vitro溶解試験
A.in vitro溶解試験
イトラコナゾールの溶解を理解するために、in vitroモデルを使用して、予測試験を実施した。薬物溶解は、細胞の取込み及び/又は肺を介した吸収にとって必須条件である。そのため、イトラコナゾールの溶解速度論は、呼吸器からのその吸収の程度を決定する上で重要な役割を果たす。エーロゾルとして呼吸器に送達されるイトラコナゾールを含有する乾燥粒子の場合、そうした粒子におけるイトラコナゾールの運命は、それら粒子の物理化学的特性に依存する。肺に局所的作用をもたらすためのエーロゾル化乾燥粒子中のイトラコナゾールの場合、イトラコナゾールが肺液及び組織中に存在し、それにより真菌感染症に作用するために、乾燥粒子は、最初に溶解を被らなければならない。しかし、一旦肺液中へのイトラコナゾールの溶解が起こると、イトラコナゾールは、透過及び全身吸収のためにさらに利用可能となり得る。イトラコナゾールの溶解速度は、周囲の液体膜及び固体-液体界面の領域中のその溶解度、濃度に比例することが予測された。溶解度は、薬物の化合物、製剤及び物理的形態に依存する。肺内の総液体量は、10~30mLであり、被覆液の量は、約5μL/cm2に相当し、これが、イトラコナゾールなどの難溶性分子の溶解、さらには後の吸収を損ない得る。
【0291】
イトラコナゾール含有乾燥粉末エーロゾルの溶解特性を理解するために、以下のin vitroモデルを使用した。ネクスト・ジェネレーション・インパクター(Next Generation Impactor)(NGI)(Copley Scientific,UK)を用い、輪郭の明らかなエーロゾル粒度分布(ASPD)カットオフでエーロゾル粒子を収集した後、モデル肺液を用いて、溶解挙動をシミュレートした。
【0292】
USP V-Paddle over disk(POD)装置での後の溶解試験のために、改変型ネクストジェネレーションインパクター(NGI)と組み合わせたUniDose(商標)(Nanopharm,Newport,United Kingdom)エーロゾル用量収集システムを用いて、インパクターステージ質量(ISM)(ネクストジェネレーションインパクターのステージ2上及びその下に収集される用量として定義される)を好適なフィルター上に均質に付着させた。
【0293】
B.in vitro溶解試験のための材料及び方法
試験で使用した材料を表50に示す。粉末製剤、カプセル及びパッケージング材料を22.5±2.5℃及び30±5%RHで平衡させた。同じ条件下で、製剤をサイズ3HPMCカプセルに封入した。粉末調製物の充填重量は、10mgであった。単位用量、カプセルベースのDPI装置(RS01,Plastiape,Osnago,Italy)内のカプセルから製剤をエーロゾル化した。
【0294】
Plastiape RS01乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて、各製剤の1カプセルを60L/分(4L吸入量)でエーロゾル化した。エーロゾル用量をUniDoseシステム内に収集した。Micro Mist(商標)Nebuliser(Hudson RCI,Temecula,CA,USA)を用い、1ミリリットルの懸濁液製剤をcNGIに15L/分でエーロゾル化した。UniDose収集システムを用いて、グラスマイクロファイバーフィルター膜上に全インパクターステージ質量(すなわち、NGIのステージ2より下)を均質に付着させたが、これは、円形(粒子又は液滴を表す)が付着する箇所として観察することができる。フィルターをディスクカセット中に配置し、USP Apparatus II POD(Paddle Over Disk,USP V)において、500ml PBS pH7.4+2.0%SDSを用い、37℃で溶解試験を実施した。全ての試験について、沈殿条件を容器内で維持した。指定された時点でサンプルを採取し、Agilent(Santa Clara,CA,USA)1260 InfinityシリーズHPLCで、薬物分について試験した。データは、240分(min)時点での未補正累積質量及び累積質量パーセンテージ(%)として表示されている。
【0295】
【0296】
C.製剤のインパクターステージ質量(ISM)のUniDose POD溶解試験の結果
製剤のISMの未補正累積質量及びパーセンテージ累積質量溶解プロットを
図14及び15にそれぞれ示す。各粉末製剤のUniDose ISM及び溶解半減期を表50にまとめる。懸濁液中のイトラコナゾール結晶の粒径と、測定した粒度分布を用いて推定されるイトラコナゾール結晶の比表面積(SSA)も表51に示す。
【0297】
累積質量データによれば、製剤の収集されたISMは、2.1~2.6mgイトラコナゾールの範囲であった。各粒子中のイトラコナゾール負荷は50%で、名目用量は5mgのイトラコナゾール(10mgの粉末)であったことから、これらのデータは、製剤のエーロゾル化効率が、名目用量に基づき、約50%であることを示唆した。
【0298】
製剤XIXの溶解速度が最も速く、薬物の80%超が、最初の時点までに溶解した。製剤XIXの急速な溶解反応速度のために、溶解半減期を計算することができなかった。他の粉末製剤の溶解半減期は、それらの溶解反応速度で、次の順序を示した:
XI>XII>XIII>XIV>XV>純粋ITZ
【0299】
図14及び15に示すデータは、
図16aに示すように、製剤XI、XII、XIII、XIV、及びXVの粒径と、それぞれの溶解半減期との関係について評価した。これらのデータは、イトラコナゾール結晶の粒径と溶解半減期との間の良好な相関を示唆している。
図16bは、イトラコナゾール結晶の比表面積と溶解半減期との関係を示す。これらのデータは、製剤中の粒子の表面積が増加するにつれて、その溶解半減期が短くなることを示唆している。これらのデータは、原薬の粒径、従って表面積が製剤の溶解挙動に影響を与えることを明示するものである。
【0300】
実施例14に示す薬物動態データによれば、製剤XIXは、最も高い全身曝露を呈示した。これは溶解データと相関しており、この製剤が高い溶解反応速度を有することを示唆した。他の粉末製剤の溶解半減期と、Cmax又は製剤XIXのCmax応答の比として表されるCmaxとの関係を
図17及び18にそれぞれ示す。溶解半減期とCmaxとの間には反比例の関係があったが、これは、溶解速度が高いほど、全身曝露が増すことを示唆した。製剤XIXの全身応答に対するCmax比と溶解半減期との間の相関は、より強度であった。これらのデータは、イトラコナゾール製剤の全身曝露応答が、それらの溶解挙動、ひいては製剤の物理化学的特性によって調節されることを示唆している。
【0301】
【0302】
UniDose PODにより決定したナノ懸濁液製剤及びミクロ懸濁液製剤のISMの未補正累積質量パーセンテージ溶解プロットを
図19に示す。
【0303】
ナノ懸濁液製剤の溶解速度は、ミクロ懸濁液製剤よりも速かった。ナノ懸濁液製剤及びミクロ懸濁液製剤の溶解半減期は、それぞれ5.3分及び35.5分であった。
【0304】
実施例13.結晶性イトラコナゾールを含有する乾燥粉末製剤のin vitro溶解及び透過性試験
A.in vitro溶解及び透過性試験
細胞ベースのin vitro方法を用いて、呼吸上皮界面の気相液相界面を模倣することにより、生体関連(bio-relevant)溶解試験システムを使用した。収集ステージに細胞培養プレートを組み込んだ改変型ネクストジェネレーションインパクター(cNGI)を用いて、細胞培養物に材料を均質に付着させた。上皮細胞単層を介した薬物の溶解及び透過を測定した。
【0305】
B.in vitro溶解及び透過性試験のための材料及び方法
Snapwell(商標)(Corning Costar,Massachusetts,USA)透過性インサート内の気相液相界面で増殖させた上皮細胞単層をcNGIに組み込んだ。非必須アミノ酸、10%(v/v)ウシ胎児血清、1%(v/v)ペニシリン-ストレプトマイシン及び1%(v/v)ファンギゾン(Fungizone)抗真菌薬を添加した最少必須培地(MEM)中で、Calu-3細胞株(ATCC,LGC Standards,Teddington,UK)(継代32~50)を増殖させ、37℃、95%/5%Air/CO2の加湿雰囲気中にそれぞれ維持した。細胞を5×105細胞.cm-2の密度でSnapwellインサート上に播種し、培養2日目から空気に接触する条件下で12日間培養した。EVOM2 Epithelial Voltohmmeter(World Precision Instruments,Hitchin,United Kingdom)に接続したEVOM2チョップスティック型電極を用いて、経上皮電気抵抗(TEER)を測定し、450Ω.cm-2を超えるTEERを有する単層を密集とみなした。
【0306】
Calu-3 ALI細胞を含むSnapwellを改変型NGIカップに移し、NGI(Copley Scientific,Nottingham,UK)のステージ4に配置した。粉末製剤の単一カプセルをcNGIに60L/分で4秒間エーロゾル化した。Micro Mist Nebuliser(Hudson RCI,Temecula,CA,USA)を用い、1ミリリットルの懸濁液製剤をcNGIに15L/分でエーロゾル化した。
【0307】
試験で使用した材料を表49に示す。粉末製剤、カプセル及びパッケージング材料を22.5±2.5℃及び30±5%RHで平衡させた。同じ条件下で、製剤を3HPMCカプセルに封入した。粉末調製物の充填重量は、10mgであった。単位用量、カプセルベースのDPI装置(RS01,Plastiape,Osnago,Italy)内のカプセルから製剤をエーロゾル化した。Plastiape RS01乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて、各製剤の1カプセルを60L/分(4L吸入量)でエーロゾル化した。
【0308】
ステージ4からSnapwellに用量を添加後、Snapwellを6ウェルプレートに移したが、これらは、37℃で維持される2mLのPBS pH7.4+2.0%SDSを含有した。様々な時点で、側底部サンプルを採取し、Agilent(Santa Clara,CA,USA)1260 InfinityシリーズHPLCで薬物分を測定した。時間の経過により溶解した薬物の総量及び実験後の溶解細胞から、細胞に送達された総用量を測定した。
【0309】
C.イトラコナゾールの粉末製剤のcNGI組込み溶解及び透過性試験の結果
ステージ4で細胞に送達されたイトラコナゾールの粉末製剤の総回収用量の累積質量パーセンテージ(%)プロットを
図20に示す。これらのデータは、様々な製剤の溶解と透過性反応速度との間の差を示した。未処理の純粋ITZは、他の製剤よりも低い溶解及び透過性反応速度を有したが、製剤XIXは、最も高い溶解及び透過性反応速度を有した。
【0310】
様々な製剤についてのcNGIデータを理解するために、本発明者らは、データを用いて、負荷用量差を考慮に入れることにより、原薬の拡散速度を計算した。これは、下記の式:
【数1】
(Jは、フラックス(cNGI溶解/透過性プロフィールの勾配)であり、Aは、障壁の面積であり、C
0は、負荷用量である)
を用いて実施した。これらのデータを表52にまとめるが、これは、製剤の拡散速度が、下記の順序に従ったことを示す:
XIX>XI>XII>XIII>XIV>XV>純粋ITZ
【0311】
【0312】
実施例14に示す薬物動態データによれば、製剤XIXは、最も高い全身曝露を呈示した。これは、この製剤の拡散速度と相関しており、このことは、上記製剤が高い溶解及び透過性反応速度を有することを示唆した。他の粉末製剤の拡散速度と、Cmax又は製剤XIXのCmax応答の比として表されるCmaxとの関係を
図21及び22にそれぞれ示す。拡散速度とCmaxとの間には関係があったが、これは、拡散速度が高いほど、全身曝露が増すことを示唆した。製剤XIXの全身応答に対するCmax比と拡散速度との間の相関は、より強度であった。
【0313】
cNGIにより決定したナノ懸濁液製剤及びミクロ懸濁液製剤のISMの未補正累積質量パーセンテージ溶解プロットを
図23に示す。cNGIデータは、ナノ懸濁液製剤の拡散速度が、ミクロ懸濁液製剤よりも速かったことを示唆している。
【0314】
実施例14.ラットを用いた単回用量吸入PK試験
A.材料及び方法
5mg/kgの名目用量レベルで、イトラコナゾール及びその代謝物、ヒドロキシ-イトラコナゾールに対する雄ラットの全身曝露を評価するために、5つの異なるイトラコナゾール製剤の各々を60分の曝露時間にわたる単回吸入で投与した後、血液及び肺組織サンプルをラットから採取した。曝露時間の終了時、並びに曝露終了後96時間まで採取したサンプル中のイトラコナゾール及びヒドロキシ-イトラコナゾールの血漿濃度を有効なLC-MS/MS方法により測定した。
【0315】
B.結果-血漿
イトラコナゾールの最大平均血漿濃度(Cmax)と、最後の定量可能なサンプルの時点まで推定した平均血漿濃度-時間曲線下面積(AUClast)を表53にまとめる。
【0316】
【0317】
投与された用量の差について補正したCmax及びAUClast値に基づいて、製剤XIXを受けた群のCmax及びAUClast値に対する各群の最大平均血漿濃度(Cmax)及び平均血漿濃度-時間曲線下面積(AUClast)の比を表54に示す。
【0318】
【0319】
イトラコナゾールに対するラットの全身曝露の速度(Cmax)及び範囲(AUClast)は、製剤XIXへの曝露後が最も高かった。製剤XIIと製剤XIへの曝露後のCmax及びAUClastは、類似しており、製剤XIVへの曝露後ではやや低かった。製剤XVへの曝露後のCmax及びAUClastが最も低かった。ヒドロキシ-イトラコナゾールに対する全身曝露の速度及び範囲についても同様のパターンが観察されたが、製剤XIIへの曝露後のCmax及びAUClastは、製剤XIへの曝露後のものより低く、製剤XIVへの曝露後よりやや高かった。
【0320】
C.結果-肺組織
イトラコナゾールの最大平均肺組織濃度(Cmax)と、最後の定量可能サンプルの時点まで推定した平均肺組織濃度-時間曲線下面積(AUClast)を表55にまとめる。
【0321】
【0322】
投与された用量の差について補正したCmax及びAUClast値に基づいて、製剤XIXを受けた群のCmax及びAUClast値に対する各群の最大平均肺組織濃度(Cmax)及び平均肺組織濃度-時間曲線下面積(AUClast)の比を表56に示す。
【0323】
【0324】
イトラコナゾールに対するラットの肺の局所曝露の速度(Cmax)及び範囲(AUClast)は、製剤XIXへの曝露後が最も低かった。製剤XII、製剤XI及び製剤XIVへの曝露後のCmax及びAUClastは、概して類似していたが、製剤XIIへの曝露後のAUClastは、他の2つの製剤への曝露後のそれより幾分低かった。製剤XVへの曝露後、Cmaxは、製剤XIXへの曝露後のそれよりほんのわずかに高く、他の製剤の値より低かったが、AUClastは、製剤XIXへの曝露後より高く、他の製剤への曝露後とおおむね類似していた。ヒドロキシ-イトラコナゾールについてのCmax及びAUClast値は、製剤XIXへの曝露後が最も高く、製剤XII、製剤XI、製剤XIV及び製剤XVへの曝露後はそれより低かったが、これら4つの製剤全てについておおむね類似していた。
【0325】
血漿の対応する値に対する肺のAUClast値の比を表57に示す。
【0326】
【0327】
イトラコナゾールについての肺組織:血漿比は、製剤XIXへの曝露後が最も低く、製剤XII及び製剤XIへの曝露後で類似しており、製剤XIVへの曝露後では幾分高かった。製剤XVへの曝露後に最も高い比が観察された。ヒドロキシ-イトラコナゾールについての肺組織:血漿比は、各製剤への曝露後で類似しており、イトラコナゾールについて観察された比よりはるかに低かった。
【0328】
結論
イトラコナゾールに対するラットの全身曝露は、製剤XIXの投与後が最も高かった。製剤XII及び製剤XIの吸入投与後で全身曝露は類似しており、製剤XIVの投与後はやや低かった。全身曝露は、製剤XVの投与後が最も低かった。ヒドロキシ-イトラコナゾールへの全身曝露については類似のパターンが観察され、製剤XIIの投与後の全身曝露は、製剤XIの投与後より低く、製剤XIVの投与後のそれよりやや高かった。
【0329】
イトラコナゾールに対するラットの肺の局所曝露は、製剤XIXへの曝露後が最も低かった。製剤XII、製剤XI及び製剤XIVの投与後の局所曝露は概して類似していた。製剤XVの投与後、最大濃度は、製剤XIXの投与後のそれよりほんのわずかに高く、他の製剤の値より低かったが、AUClast値は、製剤XIXへの曝露後のそれより高く、他の製剤への曝露後のものとおおむね類似していた。ヒドロキシ-イトラコナゾールに対する局所曝露は、製剤XIXの投与後が最も高く、製剤XII、製剤XI、製剤XIV及び製剤XVへの曝露後はそれより低かったが、これら4つの製剤全てについておおむね類似していた。
【0330】
実施例15.28日毒性試験で使用するために調製する非晶質イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
水-テトラヒドロフラン(THF)共溶媒系を用いて原料溶液を調製し、これを用いて、イトラコナゾール、硫酸ナトリウム及びロイシンから構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。必要量のTHFを計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。イトラコナゾールをTHFに添加し、視覚的に均質になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有THF溶液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。個別の原料体積は、9.5625Lであった。14のこれらの原料を調製して、総量133.875Lに達したが、これは、約30時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表58は、乾燥粉末の調製に使用した各原料の成分を一覧で示す。
【0331】
【0332】
製剤XXの乾燥粉末は、バッグフィルター収集を備えるNiro Mobile Minor噴霧乾燥装置(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)での噴霧乾燥により、この原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.0mm液相インサートを備えるNiro噴霧器を使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0333】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XXの場合、液体原料固形物濃度は、12g/L、プロセスガス入口温度は、120℃~140℃、プロセスガス出口温度は、40℃、乾燥ガス流量は、80kg/時、噴霧ガス流量は、352.2g/分、噴霧器入口の噴霧ガス背圧は、45psig~57psigであり、液体原料流量は、75mL/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表59に記載する。製剤中のイトラコナゾールは非晶質であった。
【0334】
【0335】
B.粉末の特性決定
製剤のバルク粒径の特徴は表60に見出される。製剤XXについて、1.83という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XXについて、1.06という1バール/4バールの分散性比は、粒径が分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、広範な分散エネルギーにわたって類似した分散を可能にする望ましい特徴を示す。
【0336】
【0337】
製剤XXの重量損失をTGAにより測定したところ、0.34%であることがわかった。
【0338】
製剤XXのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定し、これは、名目用量の100.9%である。
【0339】
実施例16.28日毒性試験で使用するために調製する結晶性イトラコナゾールの乾燥粉末製剤
A.粉末調製
製剤XXIのためのナノ結晶性イトラコナゾールは、25wt%イトラコナゾール(SMS Pharma ロットITZ-0715005)と2.5wt%ポリソルベートを含む懸濁液として調製した。磁気攪拌棒を用いて、ポリソルベート80を72.5%脱イオン水中に溶解させた後、イトラコナゾールを添加し、磁気攪拌棒で攪拌することにより懸濁させた。一旦イトラコナゾールを全部懸濁させたら、90%チャンバー充填の0.2mm粉砕媒体(TOSOH、東京、日本)を用いて、Netzsch MiniCer上で製剤を処理した。以下の条件を用いて、イトラコナゾール懸濁液を製造した。ミル速度は3000RPM、入口ポンプ速度は100RPM、再循環冷却装置は10℃、入口空気圧は4.5バール、実行時間は30~40分であった。このようにして8つの懸濁液を処理し、これらを合わせることにより、最終的な懸濁液ロットを製造した。粉砕された懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、130nmであった。
【0340】
懸濁液XXIIのナノ結晶性イトラコナゾールは、脱イオン水中に10wt%イトラコナゾールと0.7wt%オレイン酸、1.5%水酸化アンモニウムを含む懸濁液として調製した。磁気攪拌棒を用いて、オレイン酸を87.8脱イオン水中に溶解させた後、水酸化アンモニウムを添加し、磁気攪拌棒により溶解させた。最後に、イトラコナゾールを添加し、攪拌棒で混合して、懸濁液を形成した。一旦イトラコナゾールを全部懸濁させたら、90%チャンバー充填の0.5mm粉砕媒体(TOSOH、東京、日本)を用いて、Netzsch MiniCer上で製剤を処理した。以下の条件を用いて、イトラコナゾール懸濁液を製造した。ミル速度は3000RPM、入口ポンプ速度は100RPM、再循環冷却装置は10℃、入口空気圧は4.5バール、実行時間は200~240分であった。このようにして8つの懸濁液を処理し、これらを合わせることにより、最終的な懸濁液ロットを製造した。粉砕された懸濁液の最終中央粒径(Dv(50))は、115nmであった。
【0341】
Qualification Micronizerジェットミル(Sturtevant,Hanover,MA USA)を用いて、製剤XXIIIのミクロ結晶性イトラコナゾールを調製した。供給圧を85psigに設定し、粉砕圧を45psigに設定した。480.0gのイトラコナゾールが粉砕されるまで、イトラコナゾールをミルに継続的に供給した。粉砕APIの最終中央粒径(Dv(50))は、1640nmであった。次に、製剤XXIIIの微粉化イトラコナゾールを、脱イオン水中の10wt%イトラコナゾールと0.25wt%ポリソルベート80から構成される懸濁液に添加した。バッチサイズは、4800gであった。磁気攪拌棒を用いて、ポリソルベート80を88.75%脱イオン水に溶解させた後、イトラコナゾールをゆっくりと添加し、懸濁液が視覚的に分散し、均質になるまで、混合した。
【0342】
原料溶液を調製し、これを用いて、結晶性イトラコナゾールと、他の追加賦形剤から構成される乾燥粉末を製造した。無水ベースで、50wt%イトラコナゾールの薬物負荷を目標とした。粒子を噴霧乾燥するために用いた原料溶液は、以下のように製造した。必要量の水を計量して好適な大きさのガラス容器に導入した。賦形剤を水に添加した後、視覚的に透明になるまで溶液を攪拌した。次に、イトラコナゾール含有懸濁液を賦形剤溶液に添加し、視覚的に均質になるまで攪拌した。続いて、原料を噴霧乾燥した。原料を噴霧乾燥しながら、攪拌した。製剤XXIの個別の原料質量は、各々7.5kgであった。これらの原料の6つを噴霧乾燥したが、これは、15時間の製造キャンペーンを支持するものであった。製剤XXIIの個別の原料質量は、各々6.0kgであった。これらの原料の3つを噴霧乾燥したが、これは、6時間の製造キャンペーンを支持するものであった。製剤XXIIIの個別の原料質量は、各々8.0kgであった。これらの原料の4つを噴霧乾燥したが、これは、約11時間の製造キャンペーンを支持するものであった。表61は、乾燥粉末の調製に使用した原料の成分を一覧で示す。
【0343】
【0344】
【0345】
製剤XXI~XXIIIの乾燥粉末は、バッグフィルター収集を備えるNiro Mobile Minor噴霧乾燥装置(GEA Process Engineering Inc.,Columbia,MD)での噴霧乾燥により、これらの原料から製造した。乾燥及び噴霧ガスとして窒素を使用する開放ループ(単一パス)モードでシステムを作動させた。液体フィードの噴霧には、1.0mm液相インサートを備えるNiro二流体ノズル噴霧器を使用した。システムの吸引器を調節して、システム圧力を-2.0”水柱に維持した。
【0346】
次の噴霧乾燥条件に従って、乾燥粉末を製造した。製剤XXI及びXXIIの場合、液体原料固形物濃度は、3%、プロセスガス入口温度は、170℃~190℃、プロセスガス出口温度は、65℃、乾燥ガス流量は、80.0kg/時、噴霧ガス流量は、250.0g/分、液体原料流量は、50.0g/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表64に記載する。製剤XXIIIの場合、液体原料固形物濃度は、1.2%、プロセスガス入口温度は、170℃~190℃、プロセスガス出口温度は、65℃、乾燥ガス流量は、80.0kg/時、噴霧ガス流量は、250.0g/分、液体原料流量は、50.0g/分であった。得られた乾燥粉末製剤を表63に記載する。
【0347】
【0348】
B.粉末の特性決定
3つの製剤のバルク粒径の特徴は表64に見出される。製剤XXI~XXIIIについて、2.05未満という1バールでのスパンは、比較的狭い粒度分布を示している。製剤XXI~XXIIIについて、1.25未満という1バール/4バールの分散性比は、それらが分散エネルギーとは比較的無関係であることを示し、これは、広範な分散エネルギーにわたり類似した粒子分散を可能にする望ましい特徴である。
【0349】
【0350】
製剤XXII~XXIIIの重量損失をTGAにより測定し、詳細を表65に示す。
【0351】
【0352】
製剤XXI~XXIIIのイトラコナゾール分をHPLC-UVで測定し、詳細を表66に示す。
【0353】
【0354】
実施例17.ラットを用いた28日吸入毒性試験A及びB
A.材料及び方法
血漿及び肺薬物動態、並びに局所組織毒性の可能性の両方を評価するために、2つの個別の28日試験を実施した。第1の試験、28日試験Aでは、5つの動物群に、空気若しくはプラセボ対照又は製剤XXの3つの用量のうちの1つのいずれかを28日間毎日投与した。第2の試験、28日試験Bでは、7つのラット群に、結晶性ナノ粒子イトラコナゾールの3つの製剤のうちの1つを28日間毎日、又は1つの群については3日毎に投与した。群及び達成用量の詳細を表67及び68に示す。
【0355】
【0356】
【0357】
両試験とも、雄及び雌ラットにおけるイトラコナゾールの肺及び全身曝露並びに蓄積を評価するために、各製剤の最初と最後の吸入投与後、ラットから血液及び肺組織サンプルを採取した。さらに、投与による微視的病理変化を評価するために、喉頭、気管、気管分岐部(竜骨)及び肺を含む肺組織サンプルを最後の投与から24時間後に、全ての動物から採取した。サンプル中のイトラコナゾールの血漿及び肺濃度を有効なLC-MS/MS方法により測定した。
【0358】
B.結果-血漿
雄及び雌ラットにおける1日及び28日目のイトラコナゾールの最大平均血漿濃度(Cmax)と、最後の定量可能なサンプルの時点まで推定した平均血漿濃度-時間曲線下面積(AUC0-last)を、非晶質イトラコナゾールを用いた28日試験Aからのものは表69に、また、結晶性イトラコナゾールを用いた28日試験Bからのものは表70にまとめる。
【0359】
【0360】
【0361】
様々な製剤の間の絶対達成用量に差はあるものの、PUR1920のピーク(Cmax)及び総(AUC0-last)全身曝露は、単回用量(1日目)及び反復投与後(28日目)の両方で、結晶性製剤のいずれよりも高いことが明らかである。下の表71は、各試験からの15mg/kg/日の目標用量を用いた両28日試験からの製剤各々についてのイトラコナゾールの用量補正平均Cmax及びAUC0-lastをまとめる。補正は、測定された曝露を各日の各試験について実際に達成された用量で割ることによって実施した。
【0362】
【0363】
1日目のラットにおけるイトラコナゾール全身曝露の用量補正Cmax及びAUC0-lastは、製剤XXへの曝露後が最も高かった。28日目までに、製剤XXは、特に雌で、結晶性製剤XXIよりも概して高い用量補正Cmax及びAUC0-lastを示したが、一部の製剤については、その差はそれほど顕著ではなく、雄のAUC0-lastの値はやや高かった。これらのデータは、所与の達成された送達肺用量について、結晶性製剤の吸入の結果起こる全身曝露が、製剤XXより概して低いことを明らかにする。しかし、全身曝露が、肺内の材料の溶解速度と肺組織の透過性の両方に依存することを考慮すれば、経時的に、結晶性製剤は、差を縮める、又は排除する上で適切な溶解及び組織の透過性を確かに示しており、これにより、結晶性製剤が肺において単に不溶性付着物ではないという信頼がもたらされる。
【0364】
C.結果-肺組織
同じ時点の対応する平均血漿濃度値に対する比として表される、各群における1日目及び28日目トラフ平均肺組織濃度(先行用量の終了から23時間後)を表72に示す。
【0365】
【0366】
イトラコナゾールの肺組織:血漿比は、製剤XXへの曝露後で最も低く、1日目及び28日目の両方で結晶性製剤の全てが一貫してはるかに高かった。これらのデータは、結晶性製剤が、試験した用量で、より低い全身曝露と共に実質的に高い肺曝露を提供し、全身曝露の不要な作用の可能性を最小限に抑えながら、作用部位での曝露を増大することを示している。
【0367】
D.結果-肺病理
28日試験Aにおいて、製剤XXに関する顕微鏡所見が、呼吸器組織中に≧5mg/kg/日で存在した。全ての用量で最小から若干の肉芽腫性炎が存在し、マクロファージ及び多核巨細胞は、往々にして、細胞質内スピキュールを含有していた。28日の回収期間が含まれる最も高い用量では、これらは部分的にしか回収されなかった。記録された病理は、その分散提示、さらには、回収期間中に十分に分解しなかったことから、全ての用量で有害とみなされた。病理として指摘されたスピキュール形成は、イトラコナゾールであると考えられ、これは、非晶質材料が肺被覆液及び間質空間を過飽和させるとき形成され、これによって、複数回の用量後にAPIの結晶化を招くことが理論上想定される。同じ製剤を用いても曝露時間が短ければ、このような所見は示されなかった。
【0368】
28日試験Bにおいて、製剤XXI及びXXIIIは、製剤XXIの40mg/kg/日、すなわち、このレベルで投与された唯一の製剤でのみ肺に泡沫状マクロファージの最小有害蓄積を伴った。同等用量レベルで製剤XXI~XXIIIを投与されたラット間に所見の頻度及び重症度に明瞭な差はなかった。全体として、試験した結晶性製剤の3つ全てについて、無毒性量(No Observed Adverse Effect Level)(NOAEL)は、約15mg/kg/日であった。
【0369】
ラットの呼吸器における非晶質組成物に関する病理学的所見は、結晶性製剤により誘導されるものとは異なる特徴を有し、後者の群の所見は、粘膜内の肉芽腫性炎に対する気道の管腔内の蓄積材料に対するクリアランス応答により多く関連していた。加えて、非晶質製剤に関する所見は、呼吸器内でより多くの領域に関与し、これらは、低用量で有害であった。
【0370】
結論
全身曝露、すなわち、イトラコナゾールに対する血漿レベルは、製剤XXの投与後が最も高かった。製剤XXI~XXIIIの吸入投与後の全身曝露は概して低かったが、投与の28日目までに、それらの差は、単回用量後より小さくなった。しかし、肺曝露は、製剤XXと比較して、製剤XXI~XXIIIで顕著に且つ一貫して高かった。肺及び全身曝露を比較すると、製剤XXの比は、全身よりも肺曝露の方が好ましかった。しかし、肺:血漿比は、結晶性製剤XXI~XXIIIの各々の方が実質的に高かった。これらのデータは、結晶性製剤の方が、実質的に高いイトラコナゾールの局所濃度をもたらすが、全身曝露については製剤XXと同じかそれより低くなることを示している。
【0371】
製剤XXのイトラコナゾールの非晶質性は、1日目の有意に高い全身曝露によって証明されるように、溶解度の増加、及び肺から全身循環への急速な輸送を招く。製剤XXの投与はまた、粘膜内にスピキュール付着物の形態で局所毒性も引き起こして肉芽腫性炎を招いたが、これは、全ての試験用量で、さらには5mg/kg/日という低用量でも有害であった。製剤XXI~XXIII中に結晶性ナノ粒子を使用すると、肺滞留は実質的に高くなり、非晶質製剤よりも高い局所曝露をもたらし、全身曝露は概して同じか、若しくは低かった。曝露プロフィールにおけるこの変化は、肺内の効果を高める利点を有し、全身イトラコナゾール曝露の不要な作用は、製剤XXほど悪くなく、恐らくさらに最小限に抑えられる。加えて、製剤XXI~XXIIIは、実質的に高い局所曝露にもかかわらず、有害な微視的病理所見の可能性がはるかに低いことも示した。
【0372】
in vitro及びin vivo実施例のまとめ
乾燥粉末製剤内のイトラコナゾールの物理的形態の作用についての研究は、in vitro溶解及び透過性試験並びにin vivo単回及び複数回用量薬物動態及び毒性試験による反復漸進を包含した。in vitro溶解試験によって、イトラコナゾールの物理的形態、並びに製剤内の結晶性粒子の大きさは、溶解速度、さらには送達される材料が肺を通過し、全身循環中に入ると予想される速度を決定する上でも重要な役割を果たすことが実証された。これらのデータは、肺及び全身曝露両方の重要な局面を制御して、両効力のモジュレーション、さらには恐らく有害所見のモジュレーションも可能にする能力を証明している。これらのin vitro所見は、in vivoの単回用量吸入PK試験でもテストされ、吸入により送達されると、結晶性イトラコナゾールナノ粒子を含む粉末は、単回用量後に、非晶質イトラコナゾール含有製剤と比較して、より長い滞留を達成し、高い肺:血漿比、並びに低いピーク及び総全身曝露をもたらすことが確認された。28日吸入毒性試験を要約する実施例はさらに、乾燥粉末製剤中の非晶質及び結晶性イトラコナゾールを用いた異なる曝露反応速度が、肺及び全身曝露に関して、複数の投与日数にわたって維持されることも実証した。加えて、複数の投与日数後、非晶質及び結晶性材料の微視的病理効果を調べたところ、これらの所見の性質及び重症度の両方に差が存在することは明らかであり、結晶性材料は、より少ない有害所見を、しかもより高い肺曝露でのみ示した。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]a)二次粒子の形態の結晶粒子状の抗真菌薬と、b)安定剤と、c)1又は複数種の賦形剤と、を含有する均質な呼吸用乾燥粒子を含む乾燥粉末。
[2]前記二次粒子が、約50nm~約5,000nm(Dv50)である、[1]に記載の乾燥粉末。
[3]前記二次粒子が、約50nm~約800nm(Dv50)である、[1]に記載の乾燥粉末。
[4]前記二次粒子が、約50nm~約300nm(Dv50)である、[1]に記載の乾燥粉末。
[5]前記二次粒子が、約50nm~約200nm(Dv50)である、[1]に記載の乾燥粉末。
[6]前記二次粒子が、約100nm~約300nm(Dv50)である、[2]に記載の乾燥粉末。
[7]前記抗真菌薬が、約1重量%~約95重量%の量で存在する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[8]前記抗真菌薬が、約40重量%~約90重量%の量で存在する、[1]~[7]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[9]前記抗真菌薬が、約55重量%~約85重量%の量で存在する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[10]前記抗真菌薬が、約55重量%~約75重量%の量で存在する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[11]前記抗真菌薬が、約65重量%~約85重量%の量で存在する、[1]~[10]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[12]前記抗真菌薬が、約40重量%~約60重量%の量で存在する、[1]~[11]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[13]前記抗真菌薬が、少なくとも50%結晶性である、[1]~[12]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[14]前記抗真菌薬:安定剤(wt:wt)の比が、約1:1~50:1である、[1]~[13]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[15]前記抗真菌薬:安定剤(wt:wt)の比が、10:1以上、約10:1、又は約20:1である、[1]~[14]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[16]前記抗真菌薬:安定剤(wt:wt)の比が、約5:1~約20:1、約7:1~約15:1、又は約9:1~約11:1である、[1]~[15]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[17]前記安定剤が、約0.05重量%~約45重量%の量で存在する、[1]~[16]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[18]前記安定剤が、約4重量%~約10重量%の量で存在する、[1]~[17]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[19]前記1又は複数種の賦形剤が、約10重量%~約99重量%の量で存在する、[1]~[18]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[20]前記1又は複数種の賦形剤が、約5重量%~約50重量%の量で存在、[19]に記載の乾燥粉末。
[21]前記賦形剤が、ナトリウム塩である、[20]に記載の乾燥粉末。
[22]前記1又は複数種の賦形剤が、一価金属カチオン塩、二価金属カチオン塩、アミノ酸、糖アルコール、又はそれらの組合せを含む、[1]~[21]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[23]前記1又は複数種の賦形剤が、ナトリウム塩及びアミノ酸を含む、[1]~[22]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[24]前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムからなる群から選択され、前記アミノ酸が、ロイシンである、[23]に記載の乾燥粉末。
[25]前記ナトリウム塩が、塩化ナトリウムであり、前記アミノ酸が、ロイシンである、[24]に記載の乾燥粉末。
[26]前記ナトリウム塩が、硫酸ナトリウムであり、前記アミノ酸が、ロイシンである、[24]に記載の乾燥粉末。
[26]前記1又は複数種の賦形剤が、マグネシウム塩及びアミノ酸を含む、[1]~[26]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[27]前記マグネシウム塩が、乳酸マグネシウムであり、前記アミノ酸が、ロイシンである、[26]に記載の乾燥粉末。
[28]前記抗真菌薬が、トリアゾール抗真菌薬である、[1]~[27]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[29]前記トリアゾール抗真菌薬が、イトラコナゾールである、[28]に記載の乾燥粉末。
[30]前記抗真菌薬が、ポリエン抗真菌薬ではないことを条件とする、[1]~[27]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[31]前記安定剤が、ポリソルベート80であり、10wt%以下の量で存在する、[1]~[30]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[32]前記安定剤が、オレイン酸であり、10wt%以下の量で存在する、[1]~[31]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[33]前記安定剤が、ポリソルベート80であり、7wt%以下の量で存在する、[1]~[32]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[34]前記安定剤が、オレイン酸であり、7wt%以下の量で存在する、[1]~[33]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[35]前記安定剤が、ポリソルベート80であり、3wt%以下の量で存在する、[1]~[34]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[36]前記安定剤が、オレイン酸であり、3wt%以下の量で存在する、[1]~[35]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[37]前記呼吸用乾燥粒子が、約10ミクロン以下の体積中央幾何学径(VMGD)を有する、[1]~[36]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[38]前記呼吸用乾燥粒子が、約5ミクロン以下の体積中央幾何学径(VMGD)を有する、[1]~[36]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[39]前記呼吸用乾燥粒子が、約0.2g/cc以上のタップ密度を有する、[1]~[38]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[40]前記呼吸用乾燥粒子が、0.2g/cc~10g/ccのタップ密度を有する、[1]~[38]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[41]前記乾燥粉末が、約1ミクロン~約5ミクロンのMMADを有する、[1]~[40]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[42]前記乾燥粒子が、レーザ回析により測定して、約1.5未満の1/4バール分散比(1/4バール)を有する、[1]~[41]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[43]前記乾燥粒子が、レーザ回析により測定して、約1.5未満の0.5/4バール分散性比(0.5/4バール)を有する、[1]~[41]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[44]前記乾燥粉末が、総用量約25%以上の5ミクロン未満のFPFを有する、[1]~[43]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[45]前記乾燥粉末が、カプセルベースの受動乾燥粉末吸入器を用いて、患者に送達される、[1]~[44]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[46]前記呼吸用乾燥粒子が、以下の条件:総質量10mgを含有するサイズ3カプセルを用いて3秒間にわたり吸入流量30LPMで、毎分約0.036sqrt(kPa)/リットルの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出されるとき、少なくとも80%のカプセル放出粉末質量を有し、前記総質量は、呼吸用乾燥粒子からなり、ここで、前記吸入器から放出される前記呼吸用乾燥粒子の体積中央幾何学径が、レーザ回析により測定して、5ミクロン以下である、[1]~[45]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。
[47]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、それが必要な患者の呼吸器に投与することを含む、真菌感染症の治療方法。
[48]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、嚢胞性線維症患者の呼吸器に投与することを含む、嚢胞性線維症患者の真菌感染症の治療方法。
[49]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、嚢胞性線維症患者の呼吸器に投与することを含む、喘息患者の真菌感染症の治療方法。
[50]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、それが必要な患者の呼吸器に投与することを含む、アスペルギルス症の治療方法。
[51]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、それが必要な患者の呼吸器に投与することを含む、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療方法。
[52]呼吸器疾患の急性増悪を治療する、又はその頻度若しくは重症度を軽減する方法であって、有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末をそれが必要な患者の呼吸器に投与することを含み、前記急性増悪が真菌感染症である方法。
[53]有効量の[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末を、それが必要な免疫不全患者の呼吸器に投与することを含む、免疫不全患者の真菌感染症の治療方法。
[54]個体の真菌感染症の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記真菌感染症が治療される、乾燥粉末。
[55]嚢胞性線維症患者の真菌感染症の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記嚢胞性線維症患者の真菌感染症が治療される、乾燥粉末。
[56]喘息患者の真菌感染症の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記喘息患者の真菌感染症が治療される、乾燥粉末。
[57]個体のアスペルギルス症の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記アスペルギルス症が治療される、乾燥粉末。
[58]個体のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)が治療される、乾燥粉末。
[59]個体の呼吸器疾患の急性増悪の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記個体の呼吸器に投与することを含み、これにより前記急性増悪が治療される、乾燥粉末。
[60]免疫不全患者の真菌感染症の治療に使用するための[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末であって、前記使用は、有効量の前記乾燥粉末を、前記免疫不全患者の呼吸器に投与することを含み、これにより前記真菌感染症が治療される、乾燥粉末。
[61]任意選択の賦形剤と共に界面活性剤安定化懸濁液を噴霧乾燥するステップを含む工程により製造され、これにより組成的に均質な乾燥粉末が製造される、[1]~[46]のいずれか1項に記載の乾燥粉末。