IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レンツ タンクレートの特許一覧

特許7085539コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置
<>
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図1
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図2
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図3
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図4
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図5
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図6
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図7
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図8
  • 特許-コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/04 20060101AFI20220609BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20220609BHJP
   E04C 3/26 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B28B23/04
D06M23/08
E04C3/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019520203
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017064565
(87)【国際公開番号】W WO2017220408
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】102016211176.0
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518454999
【氏名又は名称】レンツ タンクレート
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】レンツ タンクレート
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534613(JP,A)
【文献】特開平01-316219(JP,A)
【文献】特開平06-108657(JP,A)
【文献】特開平09-207117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 21/00-23/22
E04C 3/00- 3/46
E04C 5/00- 5/20
E04G 21/12-21/12
D06M 10/00-11/84
D06M 16/00-16/00
D06M 19/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張応力によってプレストレスをかけられた炭素繊維、又は、炭素繊維からなる一種類以上の繊維構造物であり引張応力をかけることができる繊維が、コンクリートマトリックス中に埋め込まれているコンクリートの構成要素の製造方法であって、
炭素繊維束(8)を含む一種類以上の繊維構造物が型(4)内に配置され、
容要素(1)内の中空空間が鉱物成分を有する急速硬化性粘稠性組成物又は急速硬化性ポリマーで充填されるように、型(4)の2つの反対側の端面に配置され、開口部(3)を通して型(4)の端部壁上に配置、支持又は接続可能な2つの収容要素(1)に、前記炭素繊維束(8)はそれぞれ互いに離間して挿入され、
前記鉱物成分を有する急速硬化性粘稠性組成物又は前記急速硬化性ポリマーの硬化後、収容要素(1)の少なくとも一方の端面において、テンション装置(7)による引張力が前記炭素繊維束(8)の長手方向に作用し、前記引張力が作用する間、続いて、前記型(4)の内部は粘稠性コンクリートで完全に充填され、
前記コンクリートの硬化後、プレストレスをかけられた前記炭素繊維束の前記引張力が硬化した前記コンクリートに大部分伝達され、続いて、前記コンクリートの構成要素が前記型から取り出され、
前記収容要素(1)内の前記中空空間の充填中、及び、前記鉱物成分を有する急速硬化性粘稠性組成物又は前記急速硬化性ポリマーの硬化後まで、少なくとも2つの反対側に対向する前記収容要素(1)に、圧縮力を引張方向に対して垂直に加える、
2つの収容要素(1)はそれぞれ、枢動可能に互いに連結され、引張力が異なる軸方向に作用する複数の要素(9)からなる、
コンクリートの構成要素の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮力は、硬化後にさらに増加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素繊維束(8)がスペーサー(5)及び/又は横方向締付要素(6)によって前記収容要素(1)内の所定の位置に保持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
炭素繊維を含むレイアップを用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素繊維束(8)が、平面に対して少なくとも一方向に湾曲した収容要素(1)に挿入され、その中で固定されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粒子を前記収容要素(1)内の炭素繊維表面に塗布し、そこで固着させることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
鉱物粒子を前記収容要素(1)内の炭素繊維表面に塗布し、そこで固着させることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
炭素繊維束(8)を含む1以上の繊維構造物を型(4)内に配置することができ、炭素繊維束(8)は、両端面に配置され、互いに距離を有して位置する2つの収容要素(1)に開口部を通して挿入可能であって、
前記収容要素(1)内の中空空間は、鉱物成分を有する急速硬化性組成物又は急速硬化性ポリマーで充填可能であり、少なくとも1つの前記収容要素(1)に、前記炭素繊維束(8)に引張力を加える装置が存在し、
前記収容要素(1)の側壁に圧縮力を加える装置(6)が、それぞれ少なくとも2つの反対側に対向する前記収容要素(1)に存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項9】
前記炭素繊維束(8)の位置決め及び固定のためのスペーサー(5)が、前記収容要素(1)の中に存在し、及び/又は、エラストマー系材料からなる締付コーティングが前記開口部(3)の中に存在し、炭素繊維束(8)がそれを通して前記収容要素(1)に挿入されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記収容要素(1)の内面は粗いか、又は輪郭付けられていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの構成要素の製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
コンクリートの構成要素(concrete components)に作用する引張応力(tensile force)の影響の受けやすさ(susceptibility)は、コンクリ-トの構成要素の中で作用し、プレストレストコンクリート構造の状態の形状のプレストレスト引張要素(prestressed tensile elements)によって、硬化したコンクリートマトリックスに伝達される圧縮力によって、打ち消す(countered)ことができることが、長きにわたって知られている。このようにして、必要なコンクリートの質量や、コンクリート入りの補強材(concreted-in reinforcement)の質量を減らすことができる。
【0003】
最近では、従来の鋼鉄補強材を、繊維補強材、特に炭素繊維補強材に置き換えたコンクリートの構成要素の開発が急速に進んでいる。このようにして、より小さな寸法だが、同様の安定性および強度を有するコンクリートの構成要素が利用可能になっている。これまで、炭素繊維からなる繊維構造物(textile structure)は、単にコンクリートマトリックス中に埋め込まれているだけであり、プレストレストコンクリートの構成要素によって達成可能な利点は十分には活用されていない。炭素繊維複合材料CFCのプレストレストロッドの使用は、独国特許出願公開10 2004 033 015 A1号明細書から公知である。しかしながら、引張アンカー(tensile anchors)として機能するこれらの引張ロッドは、比較的局所的に集中した引張力を発生するか、又は多数のそのような補強ロッドを使用する必要があり、その結果、ロッドに意図的に個々の応力がかかるため、加工が複雑になる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、多数の繊維束を同時に均一にプレストレスすることの可能性を創出し、コンクリート体にプレストレス力をより均一に導入することを達成することであって、これにより強度および剛性の向上につながり、プレストレスの程度をさらに増加できる場合には、同時に、コンクリートの構成要素の製造における質量を減少させる可能性がある。
【0005】
本発明によれば、当該目的は請求項1の特徴を有する方法によって達成される。本方法を実施するための装置は、請求項8に記載されている。本発明の有利な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項に特定されている特徴によって達成することができる。
【0006】
引張応力によってプレストレスをかけられた炭素繊維からなる少なくとも一種類の繊維構造物からなる炭素繊維がコンクリートマトリックス中に埋め込まれているコンクリートの構成要素を製造するための本発明の方法では、炭素繊維束(ロービング、rovings)又は引張応力をかけることができる他の繊維からなる一種類以上の繊維構造物が型の中に配置される。以下、炭素繊維束(carbon fiber bundle)という用語のみがこの目的のために用いられる。
【0007】
収容要素(accommodation elements)内の中空空間が、鉱物成分(mineral basis)又は急速硬化性ポリマー(rapid-curing polymer)、を有する、急速硬化性の粘稠性組成物(rapid-curing viscous composition)で充填されるように、炭素繊維束は、型の端部壁上であって、型の直径方向の2つの両端面に配置された2つの収容要素に、互いに離間した状態でこれらに寄りかかるように、又はこれらに接続するように、開口部を通して挿入される。
【0008】
組成物又はポリマーの硬化後、収容要素の少なくとも一方の端面において、テンション装置による引張力が炭素繊維束の長手方向(longitudinal direction)にかけられる。引張力が作用する間、型の内部は粘稠性コンクリートで完全に充填される。
コンクリートの硬化後、引張力が開放され、コンクリートの構成要素は型から取り外される。
もし引張力が2つの収容要素のうち1つにのみ作用する場合、他の収容要素はしっかりと固定される。
【0009】
急速硬化性の組成物としては、例えば、ポリマーコンクリートを用いることができ、急速硬化性のポリマーとしては、炭素繊維複合材料(carbon fiber composites)の製造において現在使用されている、エポキシ樹脂を用いることができる。ポリマーを用いる場合、収容要素の内表面を、離型剤、例えばシリコンオイルで被覆することが有利であり得る。収容要素の内表面に沿って引張力を非常に均一に導入するために、組成物又はポリマーは、収容要素に確実に固定(good positive locking)されるべきである。導入される引張力が、マトリックスから収容要素の壁に向けてより均一に伝達されるように、内面は粗いか、輪郭付けられていてもよく、また、収容要素におけるアンカー長さ(anchoring length)の短縮が達成されるように、過大応力(overstressing)を回避することができる。
【0010】
組成物又はポリマーの硬化は、1時間以内に終了するはずである。この時間は、コンクリートが型内で硬化するために必要な時間より短い。すなわち、数時間短い。
【0011】
収容要素内のマトリックスを硬化させた後、締付要素(clamping elements)又は圧力パンチ(pressure punches)によってかけられる圧縮力は、さらに増加されるべきである。この目的のために使用される圧縮力は、収容要素内の炭素繊維束の長さ、及び/又は、繊維構造物の炭素繊維束のすべての長さが機能するように選択されるべきであり、当該圧縮力は、応力を加えるための長手方向の引張力の10%以上である。
【0012】
続いて、炭素繊維束を引っ張るために利用されるより高い引張力が、少なくとも一方の収容要素に作用し得る。これらは、油圧シリンダー又は空気圧シリンダー、スクリュードライブ又は他のリニアドライブによってかけることができる。それぞれの場合に選択される最小引張力は、炭素繊維束の許容引張強度の60~90%に達するべきである。ここでは、それぞれのコンクリートの構成要素の構造のために考慮される応力が考慮されるべきであり、炭素繊維の強度が最大限に利用されるべきである。
【0013】
少なくとも収容要素に挿入されている繊維構造物の領域は、エポキシド又は繊維の耐久性のある包囲(durable envelopment)及び接着を保証する他の溶液によって含浸されていることが好ましい。
【0014】
同様に、コンクリートは、コンクリートが硬化又は型内にセットされる前に、繊維束の孔の無い覆い(pore-free envelopment)を保証する手段を用いて型に導入すべきである。
【0015】
特に、長い型の場合、繊維構造物の一層又は複数の層が所望の位置に保持されるように、型内にスペーサー又は位置決め要素を配置することが有用であり得る。
【0016】
炭素繊維束の長手方向の軸に対して少なくとも略垂直に作用する圧縮力は、有利には、少なくとも収容要素の中空空間を充填している間、好ましくは組成物又はポリマーが硬化した後まで、少なくとも2つの直径方向に対向する収容要素に、加えられるべきである。2つの側から作用する適切な圧力パンチ又は締付要素をこの目的のために用いることができる。これはまた、炭素繊維の表面と、組成物又はポリマーと、の間に十分に強い材料間結合(material-to-material bond)を確実に形成することができる。
【0017】
炭素繊維束は、スペーサー及び/又は横方向締付要素(transverse clamping elements)によって、収容要素内の所定の位置に保つことができる。スペーサーは、有利には、炭素繊維束の長手方向軸に対して平行に配置することができ、横方向締付要素はこの方向に対して垂直に整列させることができ、これは、繊維構造物に特に適した例として、炭素繊維レイアップ(carbon fiber lay-ups)を使用する場合に、特に有利である。
【0018】
複雑な形状を有するコンクリートの構成要素の場合には、プレストレスト炭素繊維束によって達成できる圧縮力を、様々な軸方向に局所的に作用させられるようにすることが必要であり得る。これらの場合、特に、これらの好ましい引張力が収容要素の様々な軸方向に作用するように、それに応じて炭素繊維束の長軸方向の炭素繊維束にも作用するように、好ましくは枢動可能に連結された複数の収容要素が型の少なくとも一方の端面に配置されることが有利であり得る。
【0019】
炭素繊維の表面と、硬化した組成物又は硬化したポリマーと、の間の材料間結合に加えて、ある程度の確実な固定もまた、達成され得るべきである。この目的のために、炭素繊維は、平面に対して少なくとも一方向に湾曲した収容要素及び/又は型に挿入することができ、そこに固定することができる。したがって、炭素繊維束はこのように湾曲した収容要素及び/又は型内で、少なくとも一つの方向の変更を行う。しかしながら、それらはまた、収容要素の中でも複数の湾曲を有する収容要素の形状においても行うこともでき、そして、硬化した組成物又はポリマーの中で適切に固定される。
【0020】
このように湾曲した収容要素の場合、適切に成形された(contoured)複数の圧力パンチ又は締付要素によって、収容要素の外壁に圧縮力を加えることができる。また、互いに隣接して配置された複数の圧力パンチ又は締付要素を利用することも可能である。
【0021】
締付要素又は圧力パンチによって加えられる圧力の結果、炭素繊維束を開口部に固定することができる。固定後、炭素繊維束を緊張させるように引張力をかけることができる。この引張力は、コンクリートが型に導入され、収容要素内の組成物又はポリマーの凝固(solidification)又は硬化後に収容要素及び炭素繊維束に作用する引張力よりも、著しく小さくなければならない。それは単に炭素繊維束を真っ直ぐにするのに役立つ。
【0022】
収容要素は、互いに圧力をかけられ得る2つ以上の部分から構成されることが有利であり、それは炭素繊維束の挿入及び固定を助けることができる。ここに、炭素繊維束を通すことができる開口部が形成される。これらの開口部は、スロット形状とすることができ、また、引張力が炭素繊維束に作用する方向に対して垂直に、又は炭素繊維束の長手方向軸に対して垂直に配向されることが好ましい。これにより、単一のスロット形状の開口部によって、繊維構造物の一層、又は、各収容要素に挿入された一平面の、すべての炭素繊維束を固定することが可能になる。この場合、上側及び/又は下側に、締付コーティング(clamping coating)を備えることができる。
【0023】
コンクリートの構成要素を製造するために繊維構造物の複数の層を利用する場合、互いに上下に配置された多数の個々の部分(individual parts)を有する分割された複数の収容要素を選択することが可能であり、ここで、個々の部分の数は、繊維布(textile fabric)の層の数よりも1つ多い。
【0024】
確実な固定を増強又は達成するために、炭素繊維の表面は、少なくともそれらが収容要素内に配置される領域において、粗面を有することができる。この目的のために、粒子、特に鉱物粒子、例えば、珪砂を、少なくとも収容要素内において炭素繊維の表面に塗布し、そこで固定することができる。
【0025】
型の方を向いている収容要素の端面に存在し、それを通して炭素繊維束が収容要素に挿入される開口部には、それぞれ、好ましくはエラストマー材料からなる締付コーティングが存在し得る。そのような締付コーティングは、炭素繊維束を穏やかに導入するために、また、シールするために、利用することができる。
【0026】
型内で、12時間から7日間かかる場合があるコンクリートの硬化を行った後、収容要素および炭素繊維束に作用する引張力を増大させることができる。かけられた力が解放された後、コンクリートの構成要素内のプレストレスト力は、いわば、鋼要素(steel elements)が有する既知のプレストレストコンクリート要素に類似した、達成可能な引張力を増大させるために利用することができる。
【0027】
硬化したコンクリートマトリックス内の炭素繊維のプレストレスのために、圧縮力の形の応力が、分離作業によるコンクリートの構成要素の切断又は分割の後に、コンクリートに導入される。使用中に負荷が発生した場合に、コンクリートの構成要素のひび割れが無い状態を維持することができる。これはまた、完全に又は部分的にアーチ型であるコンクリートの構成要素の場合にも保証され得る。
【0028】
本発明に従って製造されるコンクリートの構成要素の総厚は、コンクリートと一緒になった繊維構造物の炭素繊維を十分な厚さで覆うことを達成するために、繊維構造物の層の厚さの少なくとも4倍、又は合計であるべきである。一層で、平均厚さが1.5mmの炭素繊維束の場合、コンクリート表面に最も近い6mmの最後の層(last layer)を被覆すべきである。コンクリート断面の少なくとも0.5%~8%の補強度を維持することが保証されるべきである。いずれにせよ、コンクリート内の空隙は避けるべきである。
【0029】
このようにして、木材の引張強度および圧縮強度よりも10倍高い強度を達成し、鋼の構成要素の強度に近い引張強度および圧縮強度を有するコンクリートの構成要素を製造することが可能である。
【0030】
互いからの距離が予め設定可能な距離で、かつ収容要素および型の内部のコンクリートの構成要素の外側表面からの距離が予め設定可能な距離で、互いの上に配置される、コンクリート中に埋め込まれた一層又は多層の繊維構造物によって、引張力によって規則正しい位置及び方向を有する繊維構造物に、一時的に外部から加えられた引張力を吸収(taking up)するために、任意の場所で長さに切断された繊維構造物の細片(strips)に圧縮応力をかけることができる。本発明に従って製造されたコンクリートの構成要素は、コンクリートの構成要素を複数の個々の構成要素に分割した後であっても、炭素繊維束の長軸方向に対して90°以外の角度で分割が行われた場合であっても、応力(stressing forces)を利用することができる。
【0031】
上述のように、レイアップは繊維構造物として有利に使用することができる。しかしながら、この目的のために、織物(woven fabrics)、ドローンループニット(drawn-loop knits)又はフォームドループニット(formed-loop knits)もまた、使用することができる。
【0032】
本発明にかかる製造は、工業的に又は現場で、すなわち直接建設現場で行うことができる。
【0033】
非常に細く、軽く、硬く、寸法安定性のあるコンクリートの構成要素を製造することが可能である。コンクリートの消費を大幅に減らすことができるので、対応する鉄筋コンクリートの構成要素と比較して、同じ耐荷重能力(load-bearing capacity)および強度で、50~80%の質量削減を達成することができる。
【0034】
本発明を以下の実施例により説明する。図又は例に見られる特徴や説明は、それぞれの図又は例とは独立して、互いに組み合わせることができる。
【0035】
図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明にかかる装置の一例を示す平面図である。
図2図1の詳細Bを示す図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図1のC-C断面図である。
図5】引張力が様々な軸方向に作用する装置の一例を示す。
図6】把持するテンション装置(gripping tensioning device)を有する収容要素の一部の平面図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8】本発明にかかる装置の一例の部分側面図である。
図9図8のE-E断面図である。
【0037】
図1は、本発明にかかる装置の一例の部分平面図を示す。この図では、収容要素1が型4の端面に配置され、当該端面に接し、及び/又は、型4を閉鎖/シールする。同様に、第2の収容要素1が反対側の端面に存在するが、これはここでは示されていない。
【0038】
型4の端面に配置された収容要素1の端面には開口部3が存在し、炭素繊維からなるレイアップの炭素繊維束8がこれらの開口部を通して収容要素1の内部に挿入される。レイアップの炭素繊維束8のためのスペーサー5が、さらに収容要素1内に存在する。収容要素1の両側には横方向締付6があり、それによって、収容要素1の対応する外壁に作用する圧縮力をかけることができる。
【0039】
エラストマーからなる締付コーティングは、各開口部3に存在する。締付コーティングは、収容要素1を型4の内部から密封し、炭素繊維束8に締め付け作用を及ぼす。収容要素1内での炭素繊維束8のわずかなプレストレスは、収容要素1が、スクリュードライブ又は圧力シリンダー7によって、ここで左に引き寄せられるときに、この締付作用によって達成することができる。
【0040】
収容要素1内で炭素繊維束8の特定の程度のプレストレスを達成した後、中空空間を、適切な粘稠度の鉱物成分を有する粘稠性組成物としてのポリマーコンクリートによって充填することができる。約1時間後、ポリマーコンクリートは十分に硬化され、ポリマーコンクリートと炭素繊維束8との間の確実な材料間結合を達成することができる強度を有する。炭素繊維束8は、圧力シリンダー7を引き戻す(drawing back)ことによって、緊張させることができる。レイアップの炭素繊維束8が導かれ、他の収容要素1(不図示)に入るために通る型4の内部は、コンクリートで完全に充填することができるので、実質的に空隙は形成されない。
【0041】
型4にコンクリートを充填する前に、炭素繊維束8は、シリンダー7の作動によって引張力を受ける。ここで、収容要素1に接続されているヨーク形状の要素9及びフランジであってもよいピン10は、型4から離れる方向に移動する。少なくとも型4の内部で炭素繊維束8に作用する引張力は、例えば、50mmの断面で50kN~100kNの範囲である。
【0042】
これらのプレストレス力(prestressing forces)は、一方の側からのみかけ、他方の収容要素1を固定したまま、一方の収容要素1にのみ圧縮力をかけることで十分であり得る。
【0043】
図2は、図1の詳細を拡大して示している。収容要素1の端面2は、後の時点でコンクリートが型から流れ出ることを防ぐために、型4の端面で閉じられている。それぞれ締付コーティングが存在する開口部3は、収容要素1の端面2に存在し、開口部3を通して炭素繊維束8が型4を通り、そこから収容要素1の内部へと導かれる。締付コーティングは、例えばポリウレタンから構成することができる。開口部3の内径は、締付コーティングの厚さと組み合わせて、炭素繊維束8の外形断面寸法よりも小さい自由断面が得られるように製造される。
【0044】
図3に示すように、図1のA-A断面は、繊維構造物の一例としての炭素繊維レイアップの炭素繊維束8のためのスペーサー5が、収容要素1の内部に存在し得ることを明確にしている。
【0045】
図4に示す断面C-Cもまた、収容要素1の側壁上の横方向締付要素6の配置を明確にしている。横方向締付要素6の代わりに、収容要素1の両側に力を加える圧力パンチを用いることも可能である。
【0046】
図5は、比較的幾何学的に複雑なコンクリートの構成要素でさえ、本発明によって製造可能であることを示すことを意図している。ここでは、炭素繊維製の複数のレイアップが型内に存在する。これらの炭素繊維束8は異なる軸方向に配向されているので、それらはこのそれぞれの軸方向に対応して加えられる引張力によって、プレストレスをかけられる。適切に湾曲しているか又はねじれているヨーク形状の要素9において、引張力は、収容要素1内においてポリマーコンクリートが十分に硬化したとき、スクリュードライブ又はシリンダー7によって、様々な位置における炭素繊維束8の配向に対応する、それぞれ力が加わる位置に割り当てられた軸方向に作用することができる。
【0047】
しかしながら、複数のヨーク形状の要素9を互いに枢動可能に連結することも可能である。ここで、結合はピン10を用いて形成することができる。その場合、個々のヨーク形状の要素9の向きは、ヨーク形状の要素9に作用する各張力の方向に依存する。
【0048】
図6は、図5に示す装置の部分平面図を示す。
【0049】
図7は、図6のD-D断面に対応する。
【0050】
図8は、装置の側面断面図を示す。図9に示すE-E断面から、1以上の湾曲を有し、また、対応する湾曲した収容要素1を有してもよい型4を用いることができ、このようにして波状、あるいは湾曲した、炭素繊維束8がコンクリートの中にプレストレスト形状(prestressed form)で埋め込まれているコンクリートの構成要素を製造することが可能となる。ここでは、複数の横方向締付要素6が、型4及び収容要素1に沿って配置されているので、2つの対向する側から圧縮力が加えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9