(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 31/22 20060101AFI20220609BHJP
C07C 47/02 20060101ALN20220609BHJP
C07C 45/50 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
C07C47/02
C07C45/50
(21)【出願番号】P 2019523744
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(86)【国際出願番号】 US2017060094
(87)【国際公開番号】W WO2018089285
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-23
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エイ・ブラマー
(72)【発明者】
【氏名】マリヌス・エイ・ビギ
(72)【発明者】
【氏名】リック・ビー・ワトソン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503492(JP,A)
【文献】特表2016-500123(JP,A)
【文献】特表2010-522187(JP,A)
【文献】特開昭53-007608(JP,A)
【文献】特開昭51-023212(JP,A)
【文献】米国特許第03547964(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 45/50
C07C 47/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム、ポリホスホルアミダイト配位子、およびポリホスホルアミダイト配位子分解生成物を含むヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法であって、前記ヒドロホルミル化触媒溶液が、運転中のヒドロホルミル化ユニット内で、オレフィンをヒドロホルミル化するために使用され、前記方法が、前記運転中のヒドロホルミル化ユニット内で前記触媒溶液を過酸化物と接触させることを含
み、前記ヒドロホルミル化触媒溶液を前記過酸化物と接触させるときに、前記過酸化物のモル当量が、前記ポリホスホルアミダイト配位子のモル当量未満であり、かつ、前記ポリホスホルアミダイト配位子のモル当量が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定される、方法。
【請求項2】
前記運転中のヒドロホルミル化ユニットが、反応ゾーンを含み、前記接触させることが、前記運転中のヒドロホルミル化ユニットの前記反応ゾーンに前記過酸化物を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させることが、a)前記触媒溶液の一部を分離ゾーンに導入して触媒含有液体流出物を提供することと、b)前記触媒含有液体流出物の少なくとも一部を、前記分離ゾーンから過酸化物水溶液を含む抽出ゾーンに通過させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分離ゾーンが、気化器を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処理された前記触媒溶液を、前記運転中のヒドロホルミル化ユニット内の反応ゾーンに戻すことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
追加のポリホスホルアミダイト配位子を、前記運転中のヒドロホルミル化ユニットに添加することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化物が、過酸化水素、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒溶液の温度が、前記過酸化物と接触させたときに、60℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロホルミル化触媒溶液が、少なくとも1つの生成物アルデヒドをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法に関し、特に、ポリホスホルアミダイト配位子を含むヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドは、ヒドロホルミル化を使用して、いくつかの方法でオレフィンから調製することができる。例えば、オレフィンを、ポリホスホルアミダイト修飾ロジウム触媒の存在下で、一酸化炭素および水素と反応させて、3~21個の炭素原子を含有するアルデヒドを生成することができる。
【0003】
根本的な原因は様々であるが、経時的な触媒活性の定常的な喪失が、ヒドロホルミル化プロセスで問題である。例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)によって促進されるロジウムプロセスは、ロジウムのクラスタ化および抑制性リン化合物の形成に起因する固有の失活を被ることが知られている(例えば、米国特許第4,277,627号および米国特許第4,605,780号参照)。同様に、ロジウム-ビスホスファイト触媒は、米国特許第5,874,640号に詳述されているように、リン含有分解生成物によって抑制される。したがって、触媒失活を軽減するための有効な戦略を発見して、用いることは、ヒドロホルミル化プロセス開発の重要な態様である。
【0004】
ロジウム-ポリホスホルアミダイトは、失活が問題となる別の種類のヒドロホルミル化触媒である。ロジウム-ポリホスホルアミダイト触媒を含むヒドロホルミル化プロセスにおける活性の喪失を軽減するための容易な手段が、必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
ヒドロホルミル化触媒溶液の失活を回復させる、または失活を防ぐ方法が、本明細書の実施形態に開示される。いくつかの実施形態では、この方法は、触媒の失活を遅らせるまたは軽減するために連続的に用いられる。
【0006】
一実施形態では、本発明は、ロジウム、ポリホスホルアミダイト配位子、およびポリホスホルアミダイト配位子分解生成物を含むヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法に関し、ヒドロホルミル化触媒溶液が、運転中のヒドロホルミル化ユニット(operating hydroformylation unit)においてオレフィンをヒドロホルミル化するために使用され、方法が、運転中のヒドロホルミル化ユニット内で触媒溶液を過酸化物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、過酸化物の添加後に追加のポリホスホルアミダイト配位子を、触媒溶液に添加することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、連続的に用いられ、触媒の失活を遅くするおよび/または防止することによって触媒の有効寿命を延ばす。
【0007】
これらおよび他の実施形態は、発明を実施するための形態でより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示された方法は、触媒の一部としてポリホスホルアミダイト配位子を利用するヒドロホルミル化プロセスでの使用に特に好適である。そのようなヒドロホルミル化プロセスは、成分として遷移金属およびポリホスホルアミダイト配位子を含む触媒の存在下で少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で、CO、H2および少なくとも1つのオレフィンを接触させることを含む。
【0009】
元素周期律表およびその中の様々な族への言及はすべて、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第72版(1991-1992)CRC Press、I-11頁に掲載されているバージョンに対するものである。
【0010】
反対のことが記述されていない限り、または文脈から黙示的でない限り、全ての割合およびパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務を目的として、任意の参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示に具体的に提供される任意の定義に矛盾しない範囲で)、およびこの技術分野における一般的知識に関して、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0011】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」は互換的に使用される。用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、およびそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0012】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、サポートすることを意図すると当業者が理解することと一致して理解されるべきである。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99まで、1.01~99.99まで、40~60まで、1~55までなどを伝達することを意図している。また、本明細書において、特許請求の範囲におけるそのような列挙を含む、数値範囲および/または数値の列挙は、用語「約」を含むと読むことができる。そのような場合、「約」という用語は、本明細書に列挙されたものと実質的に同じである数値範囲および/または数値を指す。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「ppmw」は、重量百万分率を意味する。
【0014】
本発明の目的のために、他に記載がない限り、圧力は、ポンド/平方インチ(psia)(絶対圧)として表される。
【0015】
本発明の目的のために、用語「炭化水素」は、少なくとも1個の水素原子および1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むことが意図される。そのような許容される化合物はまた、1つ以上のヘテロ原子を有し得る。広義の態様において、許容される炭化水素は、非環式(ヘテロ原子を含むまたは含まない)および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環、置換または非置換であり得る芳香族および非芳香族有機化合物を含む。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが意図される。広範な態様では、許容される置換基には、非環式および環式、分岐状および非分岐状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の有機化合物の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20以上、好ましくは1~12の範囲であり得る)、ならびにヒドロキシ、ハロ、およびアミノが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じまたは異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によってどんな手法でも限定されることは意図されていない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロホルミル化」は、限定されるものではないが、1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物または1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換または非置換アルデヒドまたは1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に転化することを含む、全ての許容される非対称および非対称でないヒドロホルミル化プロセスを含むことが意図される。
【0018】
用語「反応器」および「反応ゾーン」は、互換的に使用され、ヒドロホルミル化反応の要素(オレフィン、合成ガスおよび触媒)が存在し、したがってヒドロホルミル化が進行しているプロセスの一部を含むと考えられる。例としては、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、ならびに1つの反応器を別の反応器に接続する、またはヒドロホルミル化プロセスの一部を別の接続部に接続する(例えば分離ゾーンを反応器に接続する)配管が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
用語「分離ゾーン」は、生成物アルデヒドの少なくとも一部が反応流体から除去されるプロセスの領域を含むと考えられる。好ましい実施形態では、反応流体を、高温のゾーンに通過させ、生成物アルデヒドを、塔頂で揮発させ、凝縮させて収集する。そのような分離ゾーンは、典型的には「気化器」と呼ばれ、減圧下で、または気化を補助するために流動ガスの流れを用いて運転させることができる。
【0020】
用語「触媒含有液体流出物」および「気化器テール」は、本明細書では互換的に使用され、残留生成物アルデヒド、アルデヒド縮合副生物、金属-ポリホスホルアミダイト配位子触媒、遊離ポリホスホルアミダイト、およびポリホスホルアミダイト分解生成物を含む気化器からの液体流出物を指す。
【0021】
用語「反応流体」、「反応媒体」、「プロセス流体」、および「触媒溶液」は、本明細書では互換的に使用され、これらに限定されないが、(a)金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒、(b)遊離ポリホスホルアミダイト配位子、(c)反応中に形成されたアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)アルデヒド縮合副生成物(「重質物」)、(f)任意選択で、該金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒および該遊離ポリホスホルアミダイト配位子用の溶媒、および場合により、(g)反応中に形成される1つ以上のリン酸性化合物(これは均一系でも不均一系でもよく、これらの化合物はプロセス装置の表面に付着したものを含む)、ならびに(h)対応する酸化物のようなポリホスホルアミダイト配位子分解生成物、を含む混合物を含み得る。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンへ向かう途中の流体流、(c)分離ゾーン内の流体、(d)リサイクル流、(e)反応ゾーンまたは分離ゾーンから抜き出された流体、(f)緩衝水溶液で処理された取り出された流体、(g)反応ゾーンまたは分離ゾーンに戻された処理された流体、(h)外部冷却器内の流体、ならびに(i)配位子分解生成物およびそれらの塩、を含むことができる。
【0022】
用語「アルデヒド生成物」、「所望のアルデヒド生成物」、「生成物アルデヒド」および「生成物アルデヒド(複数可)」は互換的に用いられ、ヒドロホルミル化反応から意図的に生成されたアルデヒド(複数可)を含むと考えられる。そのような生成物アルデヒドの例には、プロピオンアルデヒド(エチレンから生成される)、ブチルアルデヒド(プロピレンから生成される)およびバレルアルデヒド(1-ブテンまたは混合ブテンから生成される)が含まれる。
【0023】
用語「配位子分解(decomposition)生成物」および「配位子分解(degradation)生成物」は、本明細書では互換的に使用され、親配位子のロジウム触媒副反応によって生成される小さなリン化合物、ならびに部分酸化ポリホスホルアミダイトを含むがこれらに限定されない。
【0024】
ロジウム、ポリホスホルアミダイト配位子、およびポリホスホルアミダイト配位子分解生成物を含むヒドロホルミル化触媒溶液を処理する方法が本明細書に開示されており、ヒドロホルミル化触媒溶液は、運転中のヒドロホルミル化ユニットにおいてオレフィンをヒドロホルミル化するために使用される。いくつかの実施形態では、そのような方法は、運転中のヒドロホルミル化ユニット内で触媒溶液を過酸化物と接触させることを含む。本明細書で使用されるとき、「接触させる」は、限定することなく、溶液を、添加すること、混合すること、通過させること、またはそうでなければ溶液と接触させることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ヒドロホルミル化触媒溶液は、少なくとも1つの生成物アルデヒドをさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、運転中のヒドロホルミル化ユニットは、反応ゾーンを含み、触媒溶液を、過酸化物と接触させることは、ペルオキシドを運転中のヒドロホルミル化ユニットの反応ゾーンに添加することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、触媒溶液を過酸化物と接触させることは、a)触媒溶液の一部を、分離ゾーンに導入して触媒含有流出物を提供することと、b)触媒含有流出物の少なくとも一部を、分離ゾーンから過酸化物水溶液を含む抽出ゾーンに通過させることと、を含む。いくつかの実施形態では、分離ゾーンは、気化器を含む。いくつかの実施形態では、処理された触媒溶液を、運転中のヒドロホルミル化ユニット内の反応ゾーンに戻すことをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、過酸化物の添加後に、追加のポリホスホルアミダイト配位子を、触媒溶液に添加する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ヒドロホルミル化触媒溶液は、過酸化物と接触したときに、60℃以上の温度である。ヒドロホルミル化触媒溶液は、いくつかの実施形態では、過酸化物と接触したときに、75℃以上の温度である。
【0030】
過酸化物は、いくつかの実施形態では、過酸化水素、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、またはこれらの組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、失活したヒドロホルミル化触媒溶液を、過酸化物と接触させるとき、過酸化物のモル当量は、リンのモル当量未満である。
【0032】
水素および一酸化炭素は、石油分解および精製作業を含む任意の好適な供給源から取得し得る。合成ガス混合物は、水素およびCOの好ましい供給源である。
【0033】
合成ガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas))は、様々な量のCOおよびH2を含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、よく知られている。水素およびCOは、典型的には、合成ガスの主成分であるが、合成ガスは、CO2ならびにN2およびArなどの不活性ガスを含有し得る。H2のCOに対するモル比は大きく変動し得るが、一般に1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。合成ガスは、商業的に入手可能であり、しばしば、燃料源として、または他の化学物質の生成のための中間体として使用される。化学生成のための最も好ましいH2:COモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「過酸化物」は、過酸化水素、有機過酸化物、およびこれらの混合物を含む。過酸化物は、過酸化水素、ならびにRおよびR’の各々が炭素原子を含む少なくとも1つの過酸化物基(ROOR’)を含有する有機化合物を含むと考えられる。例示的な一群および有機過酸化物化合物には、ペルオキシエステル(例えばt-ブチルペルベンゾエート)、ペルオキシジカーボネート(例えばジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート)、ジアルキルペルオキシド(例えばジ-t-ブチルペルオキシド)、ヒドロペルオキシド(例えばt-ブチルヒドロペルオキシド)およびペルオキシケタール(例えば、1,1’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)が含まれる。
【0035】
ヒドロホルミル化プロセスに用いられ得る置換または非置換オレフィン系不飽和反応物は、2~40個、好ましくは3~20個の炭素原子を含有する光学活性(プロキラルおよびキラル)および非光学活性(アキラル)オレフィン性不飽和化合物の両方を含む。これらの化合物は、米国特許第7,863,487号に詳細に記載されている。そのようなオレフィン性不飽和化合物は、末端または内部不飽和であり、直鎖、分岐鎖または環状構造、ならびにプロペン、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得られるものなどのオレフィン混合物(例えば、米国特許第4,518,809号および同第4,528,403号に開示されているように、いわゆる二量体、三量体または四量体プロピレンなど)であり得る。
【0036】
エナンチオマーアルデヒド混合物を生成するために用いることができる不斉ヒドロホルミル化に有用なプロキラルおよびキラルオレフィンには、次式で表されるものが含まれる。
【0037】
【0038】
式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なり(ただし、R1は、R2とは異なるか、または、R3は、R4とは異なると仮定する)、水素、アルキル、置換アルキルであって、該置換は、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノなどのジアルキルアミノ、メトキシおよびエトキシなどのアルコキシ、アセトキシなどのアシルオキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、チオ、カルボニル、カルボキサミド、カルボキシアルデヒド、カルボキシル、およびカルボン酸エステルから選択される、置換アルキル、フェニルを含むアリール、フェニルを含む置換アリールであって、該置換は、アルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、例えばベンジルアミノおよびジベンジルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシおよび例えばメトキシおよびエトキシ、アシルオキシ、例えばハロ、ニトリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシアルデヒド、カルボン酸エステル、カルボニル、およびチオから選択される、置換アリール、アセトキシなどのアシルオキシ、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノのようなメトキシ、エトキシなどのアルコキシ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、アセチルアミノ、ジアセチルアミノなどのアシルアミノおよびジアシルアミノ、ニトロ、カルボニルニトリル、カルボキシル、カルボキサミド、カルボキシアルデヒド、カルボン酸エステル、およびメチルメルカプトなどのアルキルメルカプト、から選択される。この定義のプロキラルおよびキラルオレフィンはまた、R基が結合して環化合物、例えば3-メチル-1-シクロヘキセンなどを形成する上記一般式の分子を含むことが理解される。
【0039】
不斉ヒドロホルミル化に有用な例示的な光学活性またはプロキラルオレフィン化合物は、例えば米国特許第4,329,507号、同第5,360,938号および同第5,491,266号に記載されている。
【0040】
溶媒は、有利には、ヒドロホルミル化プロセスに採用される。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨害しない任意の好適な溶媒が使用され得る。実例として、ロジウム触媒ヒドロホルミル化方法に好適な溶媒には、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号および同第5,929,289号に開示されているものが含まれる。好適な溶媒の非限定的な例には、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、およびアルデヒド縮合生成物が含まれる。溶媒の具体的な例には、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、およびベンゾニトリルが含まれる。有機溶媒はまた、飽和限界までの溶解水を含有し得る。例示的な好ましい溶媒には、ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、エステル(酢酸エチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))およびスルホランが含まれる。ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスにおいて、一次溶媒として、生成したいアルデヒド生成物に対応するアルデヒド化合物および/または例えば、米国特許第4,148,830号および米国特許第4,247,486号に記載されているように、例えばヒドロホルミル化プロセスの間にその場で生成することができるような高沸点アルデヒド液体縮合副生成物を用いることが好ましい。一次溶媒は通常、連続プロセスの性質上、アルデヒド生成物と高沸点アルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含むであろう。溶媒の量は特に決定的ではなく、反応媒体に所望の量の遷移金属濃度を提供するのに十分であることのみ必要とされる。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量を基準として、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を、用いることができる。
【0041】
一般に、金属-ポリホスホルアミダイト触媒は、その場で予備形成または形成することができ、ポリホスホルアミダイト配位子、一酸化炭素および任意選択で水素と組み合わせて金属前駆体を含む。触媒錯体は、単核、二核および/またはそれ以上の核形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造は、知られていない。
【0042】
金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であり得る。金属は、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)から選択される8、9および10族金属を含み得、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウム、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウム、特にロジウムである。これらの金属の混合物を、使用してもよい。金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体および遊離ポリホスホルアミダイト配位子を構成する許容されるポリホスホルアミダイト配位子には、トリ-、テトラ-、および高級ポリ有機リン化合物が含まれる。配位子の混合物を、金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒および/または遊離配位子に用いることができ、そのような混合物は同じでも異なっていてもよい。
【0043】
本発明の配位子として役立ち得るポリホスホルアミダイト配位子は、式I、II、III、またはIVで構成され得る。
【0044】
【0045】
【0046】
式中、各OおよびPは、それぞれ酸素原子およびリン原子であり、各R1~R30は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、芳香族環、ヘテロ芳香族環もしくはハロゲン原子、またはNR2、ORおよびSRからなる群から選択されるヘテロカルビル基であり、式中、Rは、C1~C20のヒドロカルビル基、または1~20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であり、各々独立して、Cまたはヘテロ原子から選択され、式中、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、Si、Ge、P、またはNであり、ヘテロ原子の原子価によって必要とされる場合、それら自体が置換または非置換であり得る。R1~R24は、ビアリール部分に縮合したシクロアルキルまたはアリール基、例えば以下のものを含んでいてもよい。
【0047】
【0048】
式I、II、III、またはIVについて、各アリール、ヘテロアリール、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、およびヘテロヒドロカルビレン基は、独立して非置換であるか、または1つ以上の置換基Rvで置換される。各Rvは、独立して、ハロゲン原子、ポリフルオロアルキル置換、非置換C1~C18アルキル、F3C-、FCH2O-、F2HCO-、F3CO-、R3Si、R3Ge、RO、RS、RS(O)、RS(O)2、R2P、R2N、R2C=N、NC、RC(O)O、ROC(O)、RC(O)N(R)、またはR2NC(O)であり、2つのRvが一緒になって、非置換のC1~C18アルキレンを形成し、式中、各Rは独立して、非置換C1~C18アルキルである。任意選択で、2つのRvが一緒になって環を形成し、ここで環は環式または多環式であり得る。
【0049】
式IIIについて、X1は、CH2またはOであり、一方X2は、OまたはC(R25)2であり、そして各R25は同じでも異なっていてもよく、水素、脂環式基、芳香環、複素芳香環またはハロゲン原子、もしくは、NR2、ORおよびSRからなる群から選択されるヘテロカルブル基であり、式中、Rは、C1~C20のヒドロカルビル基、または各々独立してCまたはヘテロ原子から選択される1~20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であり、式中、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、Si、Ge、P、またはNであり、ヘテロ原子の原子価によって必要とされる場合、それら自体が置換または非置換であり得る。2つのR25基が1つの縮合環を形成していてもよい。Yは、芳香環または複素芳香環であり、置換されていても無置換でもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、X1およびX2の両方を含む代わりに、式IIIは、X1およびX2のうちの1つのみを含むことができ、両方を含むことはできない。そのような実施形態では、X1またはX2の一方のみが存在する場合、炭素原子価は、水素によって満たされる。
【0051】
各Yは、同じかまたは異なり、窒素原子を介してリンに結合したインドリルまたはピロリル基であり、例えば、
【0052】
【0053】
式中、R31~R40の各々は、同じでも異なっていてもよく、水素、ヒドロカルビル基、芳香環、ヘテロ芳香環またはハロゲン原子であってもよい。
【0054】
一実施形態では、金属-ポリホスホルアミダイト触媒は、ロジウムと式I、II、IIIまたはIVの少なくとも1つのポリホスホルアミダイト配位子を含む組成物である。いくつかの実施形態において、本発明のプロセスを使用して処理された触媒は、ポリホスホルアミダイト配位子と錯体を形成したロジウムを含み、ロジウム錯体は、オレフィン、水素、および一酸化炭素のいずれかまたは全てをさらに含んでもよい。例えば、触媒の静止状態は、ロジウム-配位子ジカルボニルヒドリド錯体を含み得る。
【0055】
絶対的には、液体本体中のロジウム濃度は、遊離金属として計算して約25ppm~約1200ppmのロジウムの範囲であり得る。ロジウム濃度を測定するための分析技術は、当業者によく知られており、そして原子吸光(AA)、誘導結合プラズマ(ICP)および蛍光X線(XRF)を含み、AAが、典型的には好ましい。ポリホスホルアミダイトは、全反応混合物の重量を基準にして、約0.1パーセント~1パーセント重量の範囲、およびロジウム1モル当たり少なくとも0.1モルの遊離ポリホスホルアミダイトを与えるのに十分な量で存在する。
【0056】
一般に、最適触媒濃度は、用いられるオレフィン基質に依存するであろう。例えば、内部および分岐内部オレフィンのヒドロホルミル化速度は、直鎖状アルファオレフィンのそれより遅いことはよく知られているので、これらの場合において所望の転化率を達成するためにより多くの触媒が必要とされるであろう。工業的プロセスでは、経済的考察は、オレフィン転化率が実用的な限り高いことを必要とし、したがって、工学的設計および触媒濃度を含むプロセスパラメータはそれに従って調整されなければならない。
【0057】
金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒は、均一または不均一形態であり得る。例えば、予め形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-ポリホスホルアミダイト配位子触媒を、調製して、ヒドロホルミル化反応混合物に、導入することができる。より好ましくは、ロジウム-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒は、その場で活性触媒を形成するために反応媒体に導入することができるロジウム触媒前駆体から誘導することができる。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh2O3、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16、Rh(NO3)3などのロジウム触媒前駆体を、その場での活性触媒の形成のためにポリホスホルアミダイト配位子と共に反応混合物に導入することができる。好ましい実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートを、ロジウム前駆体として使用して、溶媒の存在下でポリホスホルアミダイト配位子と反応させて触媒ロジウム-ポリホスホルアミダイト配位子錯体前駆体を形成し、それをその場の活性触媒の形成のため過剰の(遊離)ポリホスホルアミダイト配位子と一緒に導入する。いずれの場合でも、一酸化炭素、水素およびポリホスホルアミダイト配位子は、全て金属と錯体を形成することができる配位子であり、ヒドロホルミル化反応に使用される条件下で活性金属-ポリホスホルアミダイト配位子触媒が、反応混合物中に存在すれば十分である。カルボニル、ヒドリド、およびポリホスホルアミダイト配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前またはその間にその場でのいずれかで、ロジウムに錯化することができる。
【0058】
触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒およびポリホスホルアミダイト配位子の溶液を、形成することによって調製することができる。ポリホスホルアミダイト配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって見られるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体の少なくとも1つのカルボニル配位子を、容易に置き換える。
【0059】
したがって、金属-有機リン配位子錯体触媒は、有利には、一酸化炭素と錯化した金属およびポリホスホルアミダイト配位子を含み、該配位子はキレート化および/または非キレート化様式で金属に結合(錯化)する。
【0060】
金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒に加えて、遊離ポリホスホルアミダイト配位子(すなわち、金属と錯体を形成していない配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離配位子の意義は、米国特許第3,527,809号、英国特許第1,338,225号、およびBrownらの、「Homogeneous Hydroformylation of Alkenes with Hydridocarbonyltris(triphyenylphosphine)rhodium(I) as Catalyst」、Journal of the Chemical Society,1970,2759~2761ページに教示されている。遊離ポリホスホルアミダイト配位子は、上記で論じた上記で定義済みのポリホスホルアミダイト配位子のいずれにも対応し得る。遊離ポリホスホルアミダイト配位子は、用いられる金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒のポリホスホルアミダイト配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、いかなる所与のプロセスにおいても同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~10モル以上の遊離ポリホスホルアミダイト配位子を含み得る。いくつかの実施形態において、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~5モルのポリホスホルアミダイト配位子の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、ポリホスホルアミダイト配位子については、金属1モル当たり1~3モルのポリホスホルアミダイト配位子が用いられる。ポリホスホルアミダイト配位子の該量は、存在する金属に結合(錯化)しているポリホスホルアミダイト配位子の量と存在する遊離ポリホスホルアミダイト配位子の量の両方の合計である。必要に応じて、追加のポリホスホルアミダイト配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体にいつでも任意の好適な方式で、例えば反応媒体中に遊離配位子の所定レベルを維持するために供給することができる。
【0061】
ヒドロホルミル化プロセスおよびその動作条件は、よく知られている。ヒドロホルミル化プロセスは、非対称的でも非対称的でなくてもよく、好ましいプロセスは、非対称的でなく、任意のバッチ式、連続式または半連続式で行うことができ、所望の任意の触媒液体および/またはガスリサイクル作業を含むことができる。したがって、オレフィン性不飽和化合物からそのようなアルデヒドを生成するための特定のヒドロホルミル化プロセス、ならびにヒドロホルミル化プロセスの反応条件および成分は、そのプロセスで用いられるポリホスホルアミド配位子以外に、本発明の重要な特徴ではない。
【0062】
リサイクル手順は一般に、触媒およびアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体の一部を、ヒドロホルミル化反応器、すなわち反応ゾーンから連続的または断続的に抜き出すこと、およびアルデヒド生成物を、分離ゾーンで回収することを含む。分離ゾーンは、米国特許第5,430,194号および米国特許第5,681,473号に開示されているような複合膜の使用、またはそれを蒸留するより慣用的かつ好ましい方法、すなわち別個の蒸留ゾーン(「気化器」)において、常圧、減圧または高圧下で1段階以上の気化分離による使用、を含むことができ、例えば、残留物を含有する非揮発性金属触媒(「気化器テール」)は、例えば米国特許第5,288,918号に開示されるように反応ゾーンにリサイクルされる。揮発性物質の凝縮、ならびに例えばさらなる蒸留によるその分離およびさらなる回収は、任意の従来の方式で行うことができ、粗アルデヒド生成物は、必要に応じてさらなる精製および異性体分離のために、受け渡すことができ、任意の回収反応物、例えば、オレフィン系出発材料および合成ガスは、ヒドロホルミル化ゾーン(反応器)に任意の所望の方式でリサイクルすることができる。そのような膜分離の抽残液を含有する回収された金属触媒またはそのような気化分離の残渣を含有する回収された非揮発化金属触媒は、所望の任意の従来の方式で、ヒドロホルミル化ゾーン(反応器)にリサイクルすることができる。
【0063】
一実施形態では、ヒドロホルミル化反応流体は、少なくともいくらかの量の4つの異なる主成分または成分、すなわちアルデヒド生成物、金属-ポリホスホルアミダイト配位子錯体触媒、遊離ポリホスホルアミダイト配位子、ならびに該触媒および該遊離配位子用の溶媒を含有する任意の対応するヒドロホルミル化プロセスから誘導された任意に流体を含む。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて故意に用いられているかまたは該プロセスの間にその場で形成されたものなどの追加の成分を含むことができ、通常は含むであろう。そのような追加の成分の例には未反応オレフィン原料、一酸化炭素と水素ガス、飽和炭化水素などのその場で形成された副生成物、オレフィン出発材料に対応する未反応の異性化オレフィン、配位子分解化合物、および高沸点液体アルデヒド縮合副生物、ならびに他の不活性共溶媒タイプの材料もしくは用いられる場合、炭化水素添加剤が含まれる。
【0064】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性および/または非光学活性アルデヒドを生成するためにこれまで用いられてきた任意の好適な種類のヒドロホルミル化条件を含むことができる。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物の種類によって左右される。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、本プロセスは、水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満で運転されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は、1~6,900kPaが好ましく、21~5,500kPaがより好ましく、水素分圧は34~3,400kPaがより好ましく、69~2,100kPaがさらに好ましい。一般に、ガス状H2:COのモル比は、1:10~100:1以上の範囲であり得、より好ましいモル比は、1:10~10:1である。
【0065】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の運転可能な反応温度で行うことができる。有利には、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で行われる。
【0066】
ヒドロホルミル化プロセスは、当業者に知られている機器およびシステムを使用して実施することができる。そのような機器およびシステムの例は、米国特許第4,247,486号、同第5,105,018号、同第5,367,106号、同第6,642,420号、同第7,446,231号、同第8,389,774号、同第8,404,903号および同第9,067,876号、ならびにPCT出願第WO2015/047723号、同第WO2015/094781号に見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
一実施形態において、本発明において有用なヒドロホルミル化プロセスは、例えば米国特許第5,728,893号に記載されているような、多段反応器中で実施することができる。多段階反応器は、容器1つ当たり1つを超える反応ゾーンまたは理論的反応段階を作り出す内部の物理的障壁を用いて設計され得る。
【0068】
ヒドロホルミル化プロセスを連続式手法で行うことが一般に好ましい。連続式ヒドロホルミル化プロセスはその技術分野においてよく知られている。連続プロセスは、単一パスモードで実施することができ、すなわち、蒸気混合物は、未反応オレフィン系出発物質を含み、気化したアルデヒド生成物を、液体反応混合物から除去し、そこからアルデヒド生成物を回収しそしてオレフィン系出発物質(複数可)を補給し、未反応オレフィン系出発物質(複数可)をリサイクルさせることなく、次の単一パススルーのために一酸化炭素および水素を、液体反応媒体に供給する。そのような種類のリサイクル手順は、当技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,148,830号に開示されているように、所望のアルデヒド反応生成物(複数可)から分離された金属-ポリホスホルアミダイト錯体触媒流体の液体リサイクルもしくは例えば米国特許第4,247,486号に開示されているようなガスリサイクル手順、ならびに所望ならば液体およびガスリサイクル手順の両方の組み合わせを含み得る。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒リサイクルプロセスを含む。好適な液体触媒リサイクル手順の例は、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、および同第5,110,990号に開示される。
【0069】
一実施形態では、アルデヒド生成物混合物は、アルデヒド混合物が、例えば溶媒抽出、結晶化、蒸留、気化、ワイプフィルム気化、流下膜気化、相分離、濾過、またはこれらの任意の組み合わせなどの任意の好適な方法によって生成される粗反応混合物の他の成分から分離することができる。WO88/08835に記載されているように、それらが捕捉剤の使用を通して形成されるので、粗反応混合物からアルデヒド生成物を除去することが望ましい場合がある。粗反応混合物の他の成分からアルデヒド混合物を分離するための1つの方法は、膜分離によるものであり、それは例えば米国特許第5,430,194号および同第5,681,473号に記載されている。
【0070】
上記のように、所望のアルデヒドは、反応混合物から回収することができる。例えば、米国特許第4,148,830号および同第4,247,486号に開示されている回収技術を使用できる。例えば、連続液体触媒リサイクルプロセスでは、反応ゾーンから除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含む)の一部、すなわち反応流体を分離ゾーン、例えば気化器/分離器に送ることができ、ここで、所望のアルデヒド生成物は、1つ以上の段階で、常圧、減圧または高圧下で液体反応流体から蒸留により分離され、凝縮されそして生成物受容器に集められ、そして所望ならばさらに精製され得る。残りの液体流出物含有非揮発性触媒は、次いで、所望により任意の他の揮発性物質、例えば未反応オレフィンを、例えば従来の方式での蒸留により凝縮アルデヒド生成物から分離した後に液体反応に溶解した水素および一酸化炭素と共に反応器に戻してもよい。一般に、ポリホスホルアミダイト配位子および反応生成物の起こり得る劣化を回避するために、減圧下および低温で触媒含有反応混合物から所望のアルデヒドを分離することが好ましい。
【0071】
より具体的には、反応流体を含有する金属-ポリホスホルアミダイト錯体触媒からの所望のアルデヒド生成物の蒸留および分離は、所望の任意の好適な温度で起こり得る。一般に、そのような蒸留は、比較的低い温度、例えば、150℃未満、より好ましくは50℃~140℃の範囲の温度で行われることが好ましい。そのようなアルデヒド蒸留は、例えば、低沸点アルデヒド(例えば、C4~C6)が含まれている場合、ヒドロホルミル化中に使用される全ガス圧力よりも実質的に低い全ガス圧力の減圧下、もしくは高沸点アルデヒド(例えば、C7以上)が含まれる場合は、真空下で行われることも一般に好ましい。例えば、一般的なやり方は、蒸留ゾーン、例えば気化器/分離器に対して反応媒体中に存在するよりもはるかに低い合成ガス濃度を含有する液体媒体中に溶解した未反応ガスの実質的な部分を気化させるため、ヒドロホルミル化反応器から取り出された液体反応生成物媒体を、減圧に供することであり、ここで、所望のアルデヒド生成物が、蒸留される。一般に、真空圧から最大で340kPaの全ガス圧の範囲の蒸留圧が、ほとんどの目的に十分である。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、触媒の失活を遅らせるまたは軽減するために、連続的に用いることができる。例えば、分離ゾーンからの触媒含有液体流出物は、過酸化物の希水溶液を含む抽出ゾーンを通過することができる。そのような実施形態では、水溶液中の過酸化物の濃度は重要ではないが、一般に、0.0001~1.0モルの溶液を用いることができ、別の実施形態では、0.001~0.5モル濃度の過酸化物溶液が用いられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、部分的に失活した触媒の性能を向上させるために用いることができる。例えば、いったんヒドロホルミル化プロセスが触媒活性の低下によりもはや生産目標を達成することができなくなると、触媒溶液は、失活した触媒溶液を過酸化物と接触させ、次いで場合によっては新鮮なポリホスホルアミダイト配位子を添加することを含む本発明の実施形態を用いて活性化することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、運転中のヒドロホルミル化プロセス内で実施され得る。例えば、希過酸化物溶液を、1つ以上の反応ゾーンに直接添加する。
【0075】
一般に、添加される過酸化物のモル当量は、ポリホスホルアミダイト配位子のモル当量未満であるべきである。市販のヒドロホルミル化プロセスでは、用いられる配位子およびそれに関連する分解生成物の多くの濃度は、31P NMRおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むがこれらに限定されない少なくとも1つの分析方法を通して日常的に決定される。運転が簡単なので、HPLCが典型的には好ましい。一実施形態では、ポリホスホルアミダイト配位子の濃度が分かれば、適量の過酸化物を、添加することができる。例えば、一実施形態では、ヒドロホルミル化プロセスにおけるポリホスホルアミダイト配位子のモル当量よりも小さい過酸化物のモル当量が、HPLCによって決定されるように反応ゾーンに添加される。後処理触媒の性能に基づいて、所望ならば、追加の過酸化物を、添加することができる。
【0076】
本発明はわずかな変動を許容するものであり、そのため、ポリホスホルアミダイト配位子のモル当量に基づいて添加される過酸化物の量が本発明を実施するのに好適な手段である。
【0077】
過酸化物処理の後、ロジウム1モル当たり1~10モル、より好ましくは、ロジウム1モル当たり1~5モル、最も好ましくは、ロジウム1モル当たり1.2~3モルの配位子のポリホスホルアミダイト配位子濃度を達成または維持するように、必要に応じて新鮮なポリホスホルアミダイト配位子を添加してもよい。ポリホスホルアミダイト配位子濃度は、HPLCによって決定されるべきであり、ロジウム含有量は原子吸光(AA)によって決定されるべきであり、そして所望の濃度を維持するために必要に応じて追加の配位子を加えることができる。
【0078】
例示的な非光学活性アルデヒド生成物としては、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-メチル1-ブチルアルデヒド、ヘキサナール、ヒドロキシヘキサナール、2-メチル1-ヘプタナール、ノナナール、2-メチル-1-オクタナール、デカナール、アジパアルデヒド、2-メチルグルタルアルデヒド、2-メチルジアルデヒド、3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド、6-ヒドロキシヘキサナール、アルケナール、例えば2-、3-および4-ペンテナール、アルキル5-ホルミルバレレート、2-メチル-1-ノナナール、2-メチル1-デカナール、3-プロピル-1-ウンデカナール、ペンタデカナール、3-プロピル-1-ヘキサデカナール、エイコサナル、2-メチル-1-トリコサナール、ペンタコサナール、2-メチル-1-テトラコサナール、ノナコサナール、2-メチル-1-オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、および、2-メチル-1-トリアコンタナールが挙げられる。
【0079】
例示的な光学活性アルデヒド生成物としては、本発明の不斉ヒドロホルミル化プロセスにより調製される(エナンチオマー)アルデヒド化合物、例えばS-2-(p-イソブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(6-メトキシ-2-ナフチル)プロピオンアルデヒド、S-2-(3)-ベンゾイルフェニル)-プロピオンアルデヒド、S-2-(3-フルオロ-4-フェニル)フェニルプロピオンアルデヒド、S-2-(2-メチルアセトアルデヒド)-5-ベンゾイルチオフェンなどが挙げられる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を、これより以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0081】
以下の実施例における全ての部および百分率は、他に示されていない限り重量による。他に示されていない限り、圧力は絶対圧力として示されている。水中のt-ブチルヒドロペルオキシド(70重量%)および過酸化水素(水の30重量%)の溶液をAldrichから購入し、さらに脱イオン水で希釈する。これらの実施例では、配位子Aが使用されている。
【0082】
【0083】
一般的な手順
ヒドロホルミル化試験装置の説明-垂直に取り付けられた攪拌機と反応器の底部近くに位置する円形の管状スパージャーとを備えた1リットルのステンレス鋼攪拌タンク反応器からなる液体リサイクル反応器システム。スパージャーは、反応器内の液体本体に、所望のガス流を提供するのに十分な大きさの複数の穴を含む。スパージャーは、オレフィンおよび/または合成ガスを、反応器に供給するために使用され、未反応ガスをリサイクルするためにも使用することができる。反応器は、反応器温度を制御する手段としてシリコーン油シェルを有する。反応器はまた、所望の液体レベルを維持するための空気式液体レベルコントローラおよび未反応ガスを除去するための吹き出し口を含む。液体反応溶液の一部を、減圧下の加熱容器からなる気化器に連続的に送り込む。気化器からの流出流は、気化器の底部に位置する気液分離器に送られ、そこで気化したアルデヒドは、液体反応溶液の不揮発性成分から分離される。気化したアルデヒド生成物は、凝縮されて、生成物受容器に収集される。空気圧液体レベルコントローラは、分離器の底部において、リサイクルされるべき触媒を含む所望の不揮発性成分レベルを制御する。触媒の失活速度は、一定の全反応器圧力を維持しながら、ヒドロホルミル化反応器内で観察されたプロピレン分圧の増加に基づいて計算され、これらの条件下でのプロピレン分圧の増加は、プロピレン転化率の低下を示す。
【0084】
ガラス反応器の説明-ヒドロホルミル化の実施例および比較実験は、温度およびガス流を正確に制御するための手段を備えた90mL流通Fisher Porter反応器中で行われる。流通反応器内での混合は、反応器の底部にあるスパージャーを介した連続的なガス流によって行われる。この反応器設計は、米国特許第5,731,472号に詳細に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。特に断らない限り、ヒドロホルミル化条件は、100℃で約110psia1:1の合成ガス、10~11psiaのプロピレン、165psiaの全圧(残余窒素)である。反応器オフガスは、分圧および生成物選択性を決定するため、およびダルトンの法則を使用して反応速度を計算することを可能にするためにオンラインGCによって分析される。反応速度は、単位時間当たりの触媒溶液の体積当たりに生成されるアルデヒドのモル数(モル/L-時間)として表され、この値は、プロピレン供給速度(速度/オレフィン)における小さくて避けられない変動の影響を緩和するのを助けるためにプロピレン分圧でさらに除算される。生成物選択性は、直鎖状(normal)アルデヒド対分岐状(iso)アルデヒド(N:I)の比、ならびに直鎖状アルデヒドのパーセンテージとして表される。
【0085】
以下の失活触媒溶液のアリコートを、いくつかの実施例に使用する。
触媒溶液A-ロジウムおよび配位子Aを含む触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニットに装入し、様々な条件下で一定期間、プロピレンのヒドロホルミル化に使用する。実験の過程で、触媒によって示されるヒドロホルミル化速度は、同等の濃度および反応条件下で、新鮮なロジウム-配位子A触媒の約50%まで低下する。総リン含有量は、XRF(0.0038M)によって決定される。
【0086】
過酸化物濃度は、触媒溶液中のモル濃度として表される。
【0087】
比較実験Aおよび実施例1
触媒溶液A(20mL)を、10mLのテトラグライムと共に2つのLPオキソガラス反応器の各々に添加し、過剰のブチルアルデヒドを、1:1の合成ガスを一晩流しながら100℃でストリッピングすると、溶液の体積は、約17mLおよび最終ロジウム濃度は、おおよそ185ppmとなる。ヒドロホルミル化は、各反応器で開始される。24時間の運転後、水中の過酸化水素溶液(0.3重量%、0.003Mの最終過酸化物濃度)を、連続ヒドロホルミル化条件下で実施例4の反応器に注入する。さらに3.5時間後、ヒドロホルミル化条件下で実施例4の反応器に、過酸化水素の第2の同程度の注入を行う。追加の配位子Aは、いずれの反応器にも添加されない。得られた触媒性能を、表1に要約する。
【0088】
【0089】
表1の結果は、本発明の処理が、触媒性能を向上させ、触媒の失活を軽減することができ、さらに処理が、連続ヒドロホルミル化条件下で実施できることを示している。
【0090】
比較実験Bおよび実施例2~4
触媒溶液A(20mL)を、10mLのテトラグライムと共に4つのガラス反応器の各々に添加し、過剰のブチルアルデヒドを、1:1の合成ガスを一晩流しながら100℃でストリッピングすると、溶液の体積は、約17mLおよび最終ロジウム濃度は、おおよそ185ppmとなる。ヒドロホルミル化は、各反応器で開始され、水中の希t-ブチルヒドロペルオキシド溶液の1mL注入を、実施例2~4の反応器の各々に対して行い、各反応器は、以下の表2に示すように異なる濃度のt-ブチルヒドロペルオキシド溶液を受け、比較実験Bの反応器に、1mLの脱イオン水を注入し、24時間の運転後、過酸化物溶液の追加のおよび同等の注入が実施例2~4の反応器の各々に行われ、追加の1mLの脱イオン水を、比較実験Bの反応器に添加し、追加の配位子Aは、反応器のいずれにも添加されない。得られた触媒性能を、表2に要約する。
【0091】
【0092】
表2の結果もまた、本発明のプロセスの実施形態を使用して、有機過酸化物を用いた作動ヒドロホルミル化プロセスにおいて触媒性能を改善する能力を示す。
【0093】
比較実験Cおよび実施例5
触媒溶液A(20mL)を、室温で希過酸化水素(0.044M最終濃度)と共に2時間撹拌し、その後それを、10mLのテトラグライムと共にガラス反応器に装入する(実施例5)。第2の反応器に、20mLの触媒溶液Aおよび10mLのテトラグライムを、過酸化物処理なしで充填する(比較実験C)。配位子A(ロジウム1モル当たり約1.5モル)を、各反応器に添加しそしてヒドロホルミル化を開始する。処理溶液(実施例5)のヒドロホルミル化速度は、比較実験Cの約2倍である。
【0094】
比較実験Dおよび実施例6
ロジウム(170ppm)、配位子A(ロジウム1モル当たり約1.2モル)、ブチルアルデヒドおよびブチルアルデヒド重質物を含む触媒溶液を、ヒドロホルミル化試験ユニットに充填し、プロピレンの連続的ヒドロホルミル化に利用する。気化器テール流を、液-液抽出ゾーンに通し(気化器テール流速約100g/時)、過酸化水素(0.0128M)およびリン酸ナトリウム(0.004M、pH6.8)を含む水溶液と接触させる。抽出ゾーンを出る触媒含有気化器テールは、ヒドロホルミル化反応器に戻される。触媒失活速度は、プロピレン分圧の増加を測定することによって追跡される(実施例6)。7日後、抽出ゾーンは、迂回され、気化器テール流は、水性抽出液と接触することなく直接ヒドロホルミル化反応器に戻され、触媒失活速度を、再び7日間測定する(比較実験D)。得られた触媒性能を、表3に要約する。
【0095】
【0096】
表3の結果は、本発明の実施形態により、一日当たり1.9psia(比較実験D)から一日当たり0.8psia(実施例6)までのプロピレン分圧の増加によって測定される触媒失活速度を著しく遅くする能力を示す。過酸化物を添加しなかったことを除いて、実施例6の手順に従って追加の比較実験を行ったことに留意する必要があり、これらの場合、触媒失活の速度は、気化器テールを、リン酸ナトリウム水溶液と接触させることによって変化しなかった。
【0097】
まとめると、本明細書に提示された結果は、ロジウム、ポリホスホルアミダイトおよびポリホスホルアミダイト分解生成物を含むヒドロホルミル化触媒によって示される失活速度が、大幅に低下し、さらに同様の組成のエージングおよび失活ヒドロホルミル化触媒の性能は、本発明のプロセスの実施形態により改善し得ることを示す。