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特許7085547マルチルーメン管状製品のための押出装置
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  • 特許-マルチルーメン管状製品のための押出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】マルチルーメン管状製品のための押出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/335 20190101AFI20220609BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220609BHJP
   B29C 48/11 20190101ALI20220609BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20220609BHJP
   B29L 31/60 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
B29C48/335
A61M25/00 500
B29C48/11
B29C48/32
B29L31:60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019528713
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 IB2017057420
(87)【国際公開番号】W WO2018100480
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】102016000120563
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】504039317
【氏名又は名称】ギマク・ディ・マッキャグナン・ジョルジオ
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】マッキャグナン,ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ガッティ,ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】カペレッティ,ティツィアーノ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-093523(JP,A)
【文献】特開2012-187550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00-25/18
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ冠状配列のマルチルーメン管状製品のための押出装置であって、
通路キャビティ(2a)と平均流出方向(2b)とを画定する本体(2)であって、前記本体(2)は押出ラインの端部に位置決め可能であり、前記通路キャビティは押出材料によって貫通可能である、本体(2)と、
前記本体(2)の第1の面に形成され、前記通路キャビティ(2a)に対する複数の入口領域を画定する入口面(3)と、
前記本体の、前記第1の面とは反対側の第2の面に形成され、前記通路キャビティ(2a)からの複数の出口領域を画定する出口面(4)と、を含み、
前記出口面(4)の中央部分に位置し、前記押出材料のダイスウェルの自然膨張流を可能にするように構成された拡張部分(4a)をさらに備え、
前記拡張部分(4a)は、それぞれ異なる中間半径を有する少なくとも2つの同心冠状円周に沿って配置された通過開口部の配列を画定し、前記少なくとも2つの同心冠状円周は前記装置(1)を通して得ることができる製品の最大直径よりも小さい2つのそれぞれの平均直径を画定
前記通過開口部の配列における異なる通過開口部を通る材料の各々の部分流は、前記平均流出方向(2b)に平行であり、互いに隣接する部分流は自然膨張によって互いに接触して再結合し、
前記拡張部分(4a)は、マトリックス配列に従ってセグメント化され相互に配列された複数のスロット(4b)を形成するように幾何学的に成形され、前記複数のスロット(4b)は、円弧状または曲線を有する所定数のスロット(4b)と、実質的に直線のセグメントを有する所定数のスロット(4b)とを備え、前記通過開口部の配列における異なる通過開口部を通る材料の各々の部分流の自然発生する再結合は、前記拡張部分(4a)の壁と接触することなく前記拡張部分(4a)内で生じる、押出装置。
【請求項2】
前記拡張部分(4a)が、円弧状または曲線を有する閉じた一連のスロット(4b)を通して前記少なくとも2つの同心冠状円周を画定する、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記拡張部分(4a)が、実質的に直線のセグメントを有するスロット(4b)の放射状配列を介して前記少なくとも2つの冠状円周、前記装置(1)を通して製造可能な製品の最大直径以下の平均直径を有する少なくとも1つの前記冠状円周に対して放射状に配置される少なくとも1つの放射状通路とを画定する、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記通路キャビティ(2a)が実質的に平行な複数の軸方向導管によって画定され、前記複数の軸方向導管が前記拡張部分(4a)を画定する前記複数のスロット(4b)の中央部分に現れる、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記拡張部分(4a)を画定する前記セグメント化された複数のスロット(4b)は、それぞれの端部において少なくとも一対で幾何学的に相互接続されている、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記拡張部分(4a)を画定する前記セグメント化された複数のスロット(4b)は、幾何学的に分離されているが、それぞれの端部において少なくとも一対で相互に近接した関係で配置されている、請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記本体(2)内で機能的に作動し、前記本体の前記複数の軸方向導管の間に挿入されて、少なくとも前記出口面(4)において前記装置を通して製造可能な前記製品の壁の間に充填剤流を入れる送気手段も設けられている、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記送気手段が、排出することができる充填材料を搬送するように構成され、前記充填材料は前記充填剤流を規定する、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば「マルチルーメン」断面(すなわち、最大外周内に複数の通過区域を画定する)などの非常に特有な幾何学的/寸法的特徴を有する管状物品を製造するための押出装置に関し、通過開口部は複数の同心クラウンに配置され、最大外径および内部通過開口部の総数(および、さらに、隣接する開口部間の角度距離、またはさらに個々の通過開口部自体の内径の観点から)の両方の観点から種々のマクロまたは微小寸法を有してもよい。
【背景技術】
【0002】
知られているように、マルチルーメン区域を有する管状製品およびマイクロ製品は、医療用途から、かなりの寸法精度が要求されかつ極めて強い構造および通過特性が要求される他の工学分野まで、様々な分野で使用できる。
【0003】
今日まで、特に小さい寸法の、または特に複雑な内部構造を有する押出管状製品の製造は、製造プロセスで使用される材料(通常はポリマー)が極端に少ない量で使用されるという事実を考慮に入れなければならず、したがって、成形ヘッド内の通過の間、熱プロファイル並びに環境外乱の全ての可能性のある要素(材料の流れの乱れ、温度勾配、成形ヘッドの周囲の大気および/または環境要素など)に対して非常に敏感である。
【0004】
環境/流出パラメータに対する非常に高い感度の問題は、押出製品(またはマイクロ製品)の幾何学的および精密なコヒーレンスの問題にも反映され、完全に直線的ではないまたは不均一な厚さおよび直線性の内壁を有するかもしれず、最も明白な場合には、それは断面において閉塞または完全な崩壊を示すことさえあり得る。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、上述の欠点を克服することを可能にし、特に、種々の通過開口部のマルチ冠状配列(multi-coronal arrangement)および/または特に小さい寸法を有し、非常に高い幾何学的/寸法的精度特性、十分に高い生産速度、および押出/成形プラントの高い信頼性および耐久性の全てを有するマルチルーメン管状製品を得ることを可能にする押出装置を立案することを意図する。
【0006】
本発明の目的に関して、押出製品(またはマイクロ製品)の断面(section)内側の通過開口部の「マルチ冠状配列」は、異なる半径を有する2つ以上の同心円周に沿った通過開口部の配列を意味することが明確にされるべきである。これらの円周は、押出製品自体の外面によって画定される最大半径の円周内に明らかに内接される。
【0007】
本発明のさらなる目的は、他の機能モジュール、例えば精密モジュールおよび/または局所温度モジュールと有利に一体化することができ、精度および信頼性の観点からさらなる動作マージンを保証するための成形/押出装置を提供することである。
【0008】
上述の技術的課題および特定の目的は、添付の特許請求の範囲の1つまたは複数に記載された、いずれにしても以下に開示される特徴を有する押出/マイクロ押出装置によって実質的に達成される。
【0009】
添付の図面に示されている、本発明による装置の、限定ではなく例としての、本発明による装置の好ましいが排他的ではない実施形態の開示を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による成形ヘッドの部分切欠きを示す。
図2図1に示した部分断面の拡大図を示す。
図3図2とは異なる角度からの図1に示した部分断面の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照すると、本発明による装置は、基本的に、通路キャビティ2aを画定する、したがって平均流出方向2bも画定する本体2を備える。通路キャビティ2aが押出材料によって貫通可能であるように、前記本体2を押出ラインの端部に配置することができる。
【0012】
本体2は、次に、(キャビティ2aに対して求心性の(afferent))複数の入口領域がある(本体2の第1の面に得られる)入口面3を画定すると共に、通路キャビティ2aから遠心性の複数の出口領域を画定する(第1の面とは反対側の、本体の2の第2の面に得られる)出口面4を画定し、有利なことに、出口面(4)と機能的に関連しかつ相互交差の相互方向における(in reciprocal directions of mutual intersection)出口面(4)を通る押出材料の自然膨張流(またはこの技術分野で現在使用されている用語では「ダイスウェル」現象に関連するいわゆる膨張流)を相互に方向付けるように構成される拡張部分(4a)をさらに備える。
【0013】
言い換えれば、本発明は、異なる通過開口部を通る材料の部分流の自然発生する再結合を可能にするように、そのヘッドがその進展軸に沿って注意深く成形され較正された寸法の部分を有する押出装置を製造することを想定する。この再結合(または、より正確には、通過断面全体に放射状に分散された異なる局所的な再結合)により、マルチルーメン押出製品の通過開口部を相補的に規定することによって、従来の通過開口部を介して(すなわち、それらのキャビティが押出製品の「最終的な」形状/断面と完全に同じように対応するようなサイズで)成形を直接付与することにより規定することは不可能であろう薄肉および相互の近接比を有する分離壁を作り出すことができる。
【0014】
本発明をさらに説明するために、通常押出装置によって作られた所与の形状/断面は、所望の形状/断面に完全に相補的に成形された通過開口部から得られるという事実を参照すべきである。逆に言うと、本発明は、完成した押出製品に見いだされなければならない最終的な通路形態/断面として正確に成形されたものを提供するのではなく、ポリマー流が「固定した(bound)」断面を持つダクトを持つ構造から出てくる場合に発生する塑性状態でのポリマー流の典型的な膨張も考慮して、通過開口部の「空隙」を実現することを教示する。
【0015】
ここで本発明の構造的側面に戻ると、添付の例示的な図では、拡張部分4aは、マトリックス配列に従ってセグメント化され相互に配置された複数のスロット(4b)に従って幾何学的に成形されている。例えば、そのようなスロット4bを円弧状または曲線を有するように成形することができ、あるいはさらに実質的に直線のセグメントに従って成形してもよい。
【0016】
上に挙げた構造の様々な可能な組み合わせにより、拡張部分4a自体の壁と接触がない状態で拡張部分4aによって規定される空間において自然膨張流間に相互共通部分を生じさせること実現することが可能である(したがって、すでに上述したように、「ダイスウェル」現象を利用することが可能である)。
【0017】
なお、実現可能性のレベルでは、拡張部分4aは、典型的には円弧状または曲線を有するように成形された閉じた多角形の一連のスロット(4b)を通して、装置1を介して達成可能な製品の最大直径よりも小さい平均直径を持つ少なくとも1つの冠状円周を画定することができることに留意されたい。実際のところ、本発明を利用する押出製品のこの断面トポロジーは、押出開口部の表面とそれらから出てくる押出構造の形状/断面との間の直接的で双方向の幾何学的対応を有する成形ヘッドで得るのにかなり重要である。
【0018】
押出製品のトポロジーがさらに複雑である場合、拡張部分4aは、(例えば、実質的に直線のセグメントを有するスロット4bの放射状配列によって)装置1を介して製造可能な製品の最大直径以下の平均直径を持つ少なくとも1つの冠状円周に対して放射状に配置された少なくとも1つの放射状通路を画定する。
【0019】
さらに、本発明によれば、通路キャビティ2aが複数の実質的に平行な軸方向導管によって画定され、これらの軸方向導管が拡張部分4aを画定するスロット4bの中央部分に現れることが可能である。
【0020】
好都合なことに現時点の要求に従って、拡張部分4aを画定するセグメント化された複数のスロット4bは、それぞれの端部に対応して少なくとも対で幾何学的に相互接続され得るか、または幾何学的に分離され得るが、それぞれの端部に対応して少なくとも対で相互に近接した関係で配置され得る(押出製品の全断面において「局所的に」必要な場合にのみダイスウェル現象を効果的に利用するように)。
【0021】
構造的な観点からも、案内部3aが存在していてもよく、これはマトリックス配列に従って幾何学的に成形され、通路キャビティ2aを画定する複数の軸方向導管を通る押出材料の流れを案内するよう構成される。加えて、押出製品中の1つまたは複数の通過開口部の空の構成を画定し安定させるために「嵩高」材料を追加することが必要である。少なくとも出口面4で装置1を介して製造可能な製品の壁の間に充填剤流を入れるために(技術的実施要件によれば、この充填剤流は不活性ガスもしくは空気、または非圧縮性流体もしくは不活性個体/砂のような粒状充填剤、または例えば灰分の関連する除去を伴う熱分解を受ける適当なポリマーもしくは集合体などの犠牲材料、またはより一般的には化学的に分解され、それ故にそれと同時に除去され得る物質であり得る)、本体2内で機能的に作動し本体2の軸方向導管の間に挿入される適切な送気手段が存在し得る。
【0022】
本発明はいくつかの利点を達成する。
【0023】
初めに、成形ヘッドの独特の建設的な構造によって、非常に高い精度で動作することが可能であり、マルチ冠状放射状配列上に配置され、極めて薄い壁を有し、(半径方向の壁に関して)非常に高いレベルの平面性を有する、または(周方向の壁に関して)非常に高いレベルの曲率の一貫性を有する多種多様な通過開口部を画定する。
【0024】
同時に、装置の種々のダクトの独特の協働モードが製品の最適な押出後制御を確実にし、それは少なくともポリマー材料が化学的物理的な安定化にさらされる間、十分に安定した形態で維持される。言い換えれば、押出材料の通路と「充填剤流」専用の通路との最適な相互配列は、処理の正確さを維持することを可能にし、適切な変更で多種多様な構造をもたらす。
【0025】
さらに、本発明の多様性は、2つの同等に有利であり、おそらく組み合わせ可能な態様で見られなければならない。1つの態様は、非常に複雑なマルチルーメン内部構造(および、必ずしも多角形ではないが例えば完全な円形またはいずれにせよ曲線である種々の形状の通過開口部)を得ることの可能性に関連する。他の態様は、「単一冠状」配列を有するが極めて小さい寸法を有するマルチルーメンチューブを得ることである。
最後に、本発明は装置の低製造コストを維持することを可能にし、また高い動作寿命を得ることを可能にすることに留意されたい。これは工業プロセスが非常に効率的で非常に急速な償却を可能にし、したがって、コスト削減とそれに伴う収益性の向上を生み出す。
図1
図2
図3