(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】非破壊的に材料を特性評価するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220609BHJP
G01N 29/26 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/26
(21)【出願番号】P 2019533113
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(86)【国際出願番号】 FR2017053539
(87)【国際公開番号】W WO2018115640
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-10
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュクッソ,マチュー・ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ジェンソン,フレデリク
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-347147(JP,A)
【文献】特表平11-512183(JP,A)
【文献】特開昭56-109647(JP,A)
【文献】特開平05-244691(JP,A)
【文献】特開平05-264522(JP,A)
【文献】特表2013-517097(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
A61B 8/00 - A61B 8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非破壊的に材料(2;2-1;2-2;2-3)を特性評価するための特性評価デバイス(100)であって、デバイス(100)が放射体/受信器セル(10)を備え、各セル(10)は、放射モードにおいて、特性評価するための材料(2;2-1;2-2;2-3)に向けて超音波を放射するように、および、受信モードにおいて、前記材料(2;2-1;2-2;2-3)を通して送信された超音波を受信するように構成され、非破壊的な特性評価デバイス(100)は、複数の隣接する角度セクタ(501)で構成されたリング(500;500-1;500-2;500-3;500-4)を備えることを特徴とし、各角度セクタ(501)は、リング(500;500-1;500-2;500-3;500-4)の半径方向(DR)に積み重ねられた超音波セル(10)を備え、デバイス(100)は、制御手段(3)をさらに備え、制御手段(3)は、
放射角度セクタとして角度セクタ(501)を選択するように構成された第1のセレクタモジュール(300)と、
受信角度セクタとして、隣接する角度セクタ(501)のセット(502)を選択するように構成された第2のセレクタモジュール(301)であって、放射角度セクタと直径方向で反対にある角度範囲で前記セット(502)を選択するように構成された第2のモジュールと、
受信角度セクタ内のすべてのセルを受信モードに切り替えるように構成された第1の切替えモジュール(302)と、
放射角度セクタにおいて、1度に1つのセル(10)を交互に放射モードに切り替えるように構成された第2の切替えモジュール(303)と、
を備え、制御手段(3)は、異なる角度セクタ(501)のためにモジュール(300、301、302、303)を作動させるように構成された、特性評価デバイス(100)。
【請求項2】
各角度セクタ(501)が同数のセル(10)を有する、請求項1に記載の特性評価デバイス(100)。
【請求項3】
リング(500-1;500-2;500-3;500-4)が、第1の角度範囲(A1-1;A1-2;A1-3;A1-4)および第2の角度範囲(A2-1;A2-2;A2-3;A2-4)を備え、第1の角度範囲(A1-1;A1-2;A1-3;A1-4)の各角度セクタ(501)が、第2の角度範囲(A2-1;A2-2;A2-3;A2-4)の角度セクタ(501)内のセル(10)の数より少ないいくつかのセル(10)を有する、請求項1に記載の特性評価デバイス(100)。
【請求項4】
第1の角度範囲(A1-1)の、および第2の角度範囲(A2-1)の角度セクタ(501)が、リング(500-1)の同じ内周縁から延びる、請求項3に記載の特性評価デバイス(100)。
【請求項5】
第1の角度範囲(A1-2;A1-3;A1-4)の、および第2の角度範囲(A2-2;A2-3;A2-4)の角度セクタ(501)が、リング(500-2;500-3;500-4)の同じ外周縁から延びる、請求項3に記載の特性評価デバイス(100)。
【請求項6】
非破壊的に材料(2;2-1;2-2;2-3)を特性評価するための特性評価方法であって、方法は、請求項1から5のいずれか一項に記載の非破壊的な特性評価デバイス(100)によって実行され、
a)前記材料(2;2-1;2-2;2-3)と接して、または前記材料の周りにデバイス(100)を配置するステップと、
b)放射角度セクタとして角度セクタ(501)を選択するステップと、
c)受信角度セクタとして隣接する角度セクタ(501)のセット(502)を選択し、前記セット(502)は放射角度セクタと直径方向で反対にある角度範囲で選択されるステップと、
d)受信角度セクタのセル(10)のすべてを受信モードに切り替えるステップと、
e)前記材料(2;2-1;2-2;2-3)に向けて、放射モードのセル(10)によって超音波を放射して、前記材料(2;2-1;2-2;2-3)を
通って送信される超音波を生成するステップと、
f)前記材料(2;2-1;2-2;2-3)を
通って送信された超音波を受信モードのセル(10)が受信するステップと、
g)前記材料(2;2-1;2-2;2-3)を
通って送信された超音波を受信するステップの後に、前記材料を
通って送信された超音波を処理するステップと、
を含む、
方法。
【請求項7】
h)放射角度セクタの1つのセル(10)を放射モードに交互に切り替えるステップ
をさらに含む、請求項6に記載の特性評価方法。
【請求項8】
放射角度セクタの1つのセル(10)のみが、1度に放射モードに切り替えられることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
送信された超音波を処理する各ステップの後に、連続する角度セクタ(501)についてステップb)からf)を繰り返すことを含むことを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊的に材料を特性評価するためのデバイス、およびデバイスによって実行される非破壊的な特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊的検査(NDT:non-destructive testing)および特性評価方法は、特に自動車、保健、または実際に航空分野において、非常に重要である。これらの方法は、部品(たとえば、飛行機の翼、エンジン部品)の、構造体(たとえば、多結晶構造体、多層構造体)の、さらに一般的には材料のそれらのライフサイクル中の任意の時間における、たとえば、生産、使用、または保守中の、完全性状態を特性評価するために使用することができる。航空分野では、問題の構造体は、単一の部分またはアセンブリでも、極度に厳しい基準を満たす特性を示す必要があるので、これらの方法の使用はさらに重要である。
【0003】
様々な知られている方法は、特性評価すべき材料への、トランスデューサからの放射としての超音波励振の適用と、これに次ぐ、トランスデューサの1つまたは複数の受信要素を介する材料の信号特性の検出とにあり、その信号は、超音波励振によって生成される。
【0004】
例として、文書EP2440140号は、材料を通る超音波の伝搬によって材料が特性評価される、1次元のストリップの形での超音波トランスデューサについて説明している。しかしながら、そのようなトランスデューサは、3次元空間のすべての方向において材料を特性評価するのには適していない。しかしながら、そのような特性評価は、異方性の材料を特性評価するためには特に、必須であることが分かる。この問題に対処するために予測され得る解決法は、その場合、手動でトランスデューサを動かすこと、または実際に、様々な3次元のもしくは角度の構成を占めるようにトランスデューサを移動させるための機械的アセンブリの提供に存し得る。しかしながら、そのような解決法は、測定を行うときに、近似的且つあまり正確ではない方式でトランスデューサが配置される、複雑な機械的アセンブリを作ることを含むので、限定されることが分かり、そして、そのようなトランスデューサは、各測定方向について手動でまたは機械的に移動させられる必要があるため、そのような解決法は、材料の特性評価に長い時間を必要とする。
【0005】
放射体/受信器要素の配列の形で作られた超音波トランスデューサの使用は、先行技術でも知られている。例として、文書WO2015/011383は、具体的には、十字架の形でパターンを提供する検出面を形成するために、選択的にアクティブにすることができる放射体/受信器要素の配列の形でのトランスデューサについて説明している。そのようなトランスデューサは、具体的には、溶接ゾーンで反射された超音波を分析することによって溶接ゾーンを検査するために使用することができる。その配列の形状により、そのような解決法は、多数の放射体/受信器要素を必要とする。しかしながら、それらの要素の一部は、トランスデューサの検出面を形成するために常に使用される訳ではない。そのようなトランスデューサは、その場合、それを構成する多数の要素を所要として、製造コストに関して高くなることが分かる。さらに、そのようなトランスデューサ内の多数の受信器要素は、大量のデータが取得されることに関わり、具体的には後処理ユニットにそのデータを移送する間に、特性評価すべき材料の検査を遅くすることがある。
【0006】
具体的には、材料を特性評価するための今日の解決法は、同時に高信頼で、正確で、高速であって、高価ではない超音波トランスデューサが提案されることを可能にしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第2440140号明細書
【文献】国際公開第2015/011383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の欠点を修正することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを目的として、本発明は、非破壊的に材料を特性評価するための特性評価デバイスであって、本デバイスは放射体/受信器セルを備え、各セルは、放射モードでは、特性評価するための材料に向けて超音波を放射するように、および、受信モードでは、前記材料を通して送信された超音波を受信するように構成され、非破壊的な特性評価デバイスは、複数の隣接する角度セクタで構成されたリングを備え、各角度セクタは、リングの半径方向に積み重ねられた超音波セルを備え、本デバイスは制御手段をさらに備え、制御手段は:
― 放射角度セクタとして角度セクタを選択するように構成された第1のセレクタモジュールと、
― 受信角度セクタとして1セットの隣接する角度セクタを選択するように構成された第2のセレクタモジュールであり、放射角度セクタと直径方向で反対にある角度範囲に前記セットを選択するように構成された第2のモジュールと、
― 受信角度セクタ内のすべてのセルを受信モードに切り替えるように構成された第1の切替えモジュールと、
― 放射角度セクタにおいて1度に1つのセルを交互に放射モードに切り替えるように構成された第2の切替えモジュールと、
を備え、この制御手段は、異なる角度セクタのためにモジュールを作動させるように構成される、特性評価デバイスを提案する。
【0010】
有利には、非破壊的な特性評価デバイスのリングの中央は空洞である、すなわち、放射体/受信器セルがない。したがって、特性評価するための材料と接して、またはその周りにリングを設置することが可能である。加えて、そのようなデバイスの放射体/受信器セルが、個別に選択され、放射モードにまたは受信モードに切り替えるように制御され得る。したがって、ラジアル走査、およびまた特性評価するための材料の周りを回転する走査の両方を連続して、または他の組合せで実行するために本デバイスのリングを使用することが可能になる。したがって、材料は、各角度測定を行った後に材料または特性評価デバイスを動かさずに任意の角度方向において特性評価され得、これは、放射体/受信器セルを切り替えることによって可能にされる。したがって、本デバイスは、複雑な機械的アセンブリが異なる方向において材料を特性評価しようとすることを避けることを可能にし、本デバイスは、機械的アセンブリで可能なものよりも遥かに高い精度の測定結果を得ることを可能にする。次いで、検査する材料が構造対称性を示すときには必ず、そのようなデバイスは、全体のサイズの減少を示し、それを構成する放射体/受信器セルの数を減らす可能性もまた示す。したがって、製造コストも減らしつつ、そのようなデバイスは、軽量化され得、処理するデータの量は小さくなり得、測定結果の精度は高められ得る。加えて、2つの測定結果の間の遷移は、単に放射体/受信器セルを切り替えることによって実行されるので、そのようなデバイスは、材料を特性評価するための測定を行うために得られるべき時間のかなりの節約を可能にする。
【0011】
別の態様において、特性評価デバイスでは、各角度セクタは、同数のセルを有する。
【0012】
別の態様において、特性評価デバイスでは、リングは、第1の角度範囲および第2の角度範囲を備え、第1の角度範囲の各角度セクタは、第2の角度範囲の角度セクタ内のセルの数より少ない数のセルを有する。
【0013】
別の態様において、特性評価デバイスでは、第1の角度範囲のおよび第2の角度範囲の角度セクタは、リングの同じ内周縁から延びる。
【0014】
別の態様において、特性評価デバイスでは、第1の角度範囲のおよび第2の角度範囲の角度セクタは、リングの同じ外周縁から延びる。
【0015】
別の態様において、特性評価デバイスでは、第1の角度範囲は180°以下である。
【0016】
別の態様において、特性評価デバイスでは、第1の角度範囲は、厳密に180°より大きい。
【0017】
本発明はまた、非破壊的に材料を特性評価するための特性評価方法を提供し、本方法は、前述のような非破壊的な特性評価デバイスによって実行され、本方法は:
a)前記材料と接して、またはその周りにデバイスを配置するステップと、
b)角度セクタを放射角度セクタとして選択するステップと、
c)1セットの隣接する角度セクタを受信角度セクタとして選択し、前記セットは、放射角度セクタと直径方向で反対にある角度範囲上に選択されるステップと、
d)受信角度セクタのすべてのセルを受信モードに切り替えるステップと、
e)前記材料に向けて、放射モードのセルによって超音波を放射して、それにより、前記材料を通して送信される超音波を生成するステップと、
f)前記材料を通して送信された超音波を、受信モードのセルが受信するステップと、
g)前記材料を通して送信された超音波を受信するステップの後に、前記材料を通して送信された超音波を処理するステップと、
を含む。
【0018】
別の態様において、特性評価方法は:
h)放射角度セクタの1つのセルを交互に放射モードに切り替えるステップ
をさらに含む。
【0019】
別の態様において、この方法で、放射角度セクタ1つのセルのみが、1度に放射モードに切り替えられる。
【0020】
別の態様において、送信された超音波を処理する各ステップの後に、本特性評価方法は、連続する角度セクタのためにステップb)からf)を繰り返すことを含む。
【0021】
非限定的例として与えられた本発明の具体的実施形態の以下の説明から、以下のような添付の図面を参照し、本発明の他の特性および利点が現れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】材料の非破壊的な特性評価のためのデバイスを示す図である。
【
図2A】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第1の走査における別のステップを示す図である。
【
図2B】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第1の走査における別のステップを示す図である。
【
図2C】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第1の走査における別のステップを示す図である。
【
図2D】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第1の走査における別のステップを示す図である。
【
図2E】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第1の走査における別のステップを示す図である。
【
図3A】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第2の走査における様々なステップを示す図である。
【
図3B】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第2の走査における様々なステップを示す図である。
【
図3C】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第2の走査における様々なステップを示す図である。
【
図3D】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第2の走査における様々なステップを示す図である。
【
図3E】材料を特性評価するために非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサによって実行される第2の走査における様々なステップを示す図である。
【
図4A】非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサの異なる別の実施形態を示す図である。
【
図4B】非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサの異なる別の実施形態を示す図である。
【
図4C】非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサの異なる別の実施形態を示す図である。
【
図4D】非破壊的な特性評価デバイスのトランスデューサの異なる別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、材料2の特性を決定するための超音波による非破壊的な特性評価のためのデバイス100を示す。デバイス100は、複数の放射体/受信器セル10を有する超音波トランスデューサ1、すなわちプローブ、を備える。各放射体/受信器セル10は、特性評価するために材料2に向けて超音波を放射するための放射モードに、あるいは前記材料2を通して送信されたおよび/またはガイドされた超音波を受信するための受信モードに、切り替え可能でもよい。トランスデューサ1は、超音波トランスデューサ1の任意のセル10を選択して放射モードに切り替えるのに、受信モードに切り替えるのに、あるいは実際にセル10を非アクティブのままにするのに適した制御手段3と関連付けられている。示されている例において、また以下でさらに詳しく説明するように、制御手段3は、1つのセル10-1(黒で印をされたセル)を放射モードに切り替え、セル10のセット20、具体的には11個のセル、を受信モード(灰色で印をされたセル)に切り替え、一方で、その他のセル10は、非アクティブのままにされてある(白で印をされたセル)。
【0024】
したがって、トランスデューサ1は、セル10で構成された超音波放射/受信面を示し、その表面の形状は平面であり、特性評価するために材料2に対して直接接触して適用され得る。他の例において、トランスデューサ1は、媒体(たとえば、プレキシガラスリレー)を介して材料2と間接的に接触することができ、または、トランスデューサ1は、超音波の伝搬を円滑にするために、検査のための材料2を囲むように沈み込ませて(in immersion)使用することができる。
【0025】
知られている方式では、放射体/受信器セル10は、圧電振動子である。トランスデューサ1の各通過セルは、制御手段3から受信された電気信号を、材料2に送信される(矢印200)超音波信号に変換する。トランスデューサ1の各受信セルは、材料2から受信された(矢印201)超音波信号を、次にプロセッサユニット4に送られる電気信号に変換し、電気信号は、たとえば、ワイヤード接続5を介してユニットに送信される。プロセッサユニット4は、受信モードのセルから到着する信号を処理するための手段を有する。例として、プロセッサユニット4は、材料2を通して伝搬された超音波の周波数に応じて位相速度変化を抽出することができ、放射体/受信器セル10とそれらを相互に関連付けることができ、3次元の画像データを生成することができ、検査下にある材料2に関する任意の欠陥のサイズおよび/または位置を検出することができ、たとえばマップの形で、検出の結果を表示することができる。材料2を通して送信される波は、ガイド波、たとえばラム波、である。有利には、これらの波は、検査のための材料2の寸法に比較しうる波長を示し、したがって、これらの波は、材料2においてガイドされる。これらの波の受信は、それで、材料2を特性評価することを可能にする。例として、各受信セルによって受信された信号を特異値に分解することと、そこから受信信号の分散曲線を推論することとがプロセッサユニット4を用いて可能である。一般的方式では、非破壊的な特性評価デバイス100は、任意の材料2、特に異方性の材料を特性評価するために使用することができる。例として、特性評価するための材料2は、一体成形の構造体、多結晶構造体(たとえば、チタン)、またはアセンブリの形の構造体でもよい。例として、特性評価するための材料2の特性は、多層材料の層の厚さ、その弾性定数、その弾性関数、腐食によるその厚さの損失、または実際にその剛性マトリックスに関し得る。
【0026】
本発明によれば、超音波トランスデューサ1はリング500の形をとり、その実施形態は、
図2Aから3Eに示されている。この例では、リング500は軸方向DAに対して定義され、それは、円周方向において隣接する複数の角度セクタ501で構成される。リング500の半径方向DRにおいて、各角度セクタ501は、放射体/受信器セル10のスタックを備える。例として、
図1では、受信モードのセル10のセット20は、放射モードのセル10-1を含む角度セクタ501-2と直径方向で反対にある角度セクタ501-1を構成する。角度セクタ501-1および501-2など、直径方向で反対にある角度セクタ501は、任意選択的に、放射モードのセル10-1によってこの例では形成されている、放射部分と、受信モードのセルのセット20によってこの例では形成されている、受信部分との間の直接の超音波伝送を防ぐバリア6によって、区切られてもよい。さらに一般的には、トランスデューサ1はその中央部分7内に放射体/受信器セル10を有さず、中央部分はすべての図に示すように、空洞である。
【0027】
図2A-3Eは、材料2、この例では多結晶構造体2-1、の検査のための様々なステップを示す。
【0028】
最初のステップの間、デバイス100は、特性評価する材料2、具体的には多結晶構造体2-1、と直接的または間接的に接して配置される。別法として、本デバイスは、特性評価するための材料2の周りに沈み込ませて配置される。特性評価するための材料2の寸法よりも大きい寸法を中央部分7が示すように、リング500の寸法およびその放射体/受信器セル10の寸法は予め決定され、材料2は中央部分7に接してまたは面して設置される。同様に、放射体/受信器セル10によって使用される周波数は、検査すべき材料2のパラメータに応じて、そして調査すべき特性評価のスケールに応じて、選択される。例として、多結晶構造体2-1について、選択された超音波周波数に応じて、単一グレインのスケールにおいて、またはグレインのパケットのスケールにおいて、特性評価を実行することが可能である。しかしながら、超音波周波数は、材料2を通してガイド波(たとえば、表面波および/または実体波)を得るように、特性評価するための材料2に比較しうる寸法を示す波長を得るように選択される。
【0029】
デバイス100が一旦配置された後は、材料2は、材料2を特性評価することを可能にする2つの走査を受ける。
【0030】
ラジアルタイプである、第1の走査は、
図2Aから2Eに示されている。この走査の間、所与の角度セクタ501-3について、1つのみのセル10-2、10-3、10-4、10-5、または10-6が、交互に選択され、次いで放射モードに切り替えられる。複数の隣接するセクタ501を備えたセット502が選択され、セット502のすべてのセル10は、受信モードに切り替えられる。セット502は、常に、放射モードに切り替えられたセル10-2、10-3、10-4、10-5、または10-6を有する角度セクタ501-3と直径方向で反対にある角度範囲上に選択される。さらに、説明されたように、このセット502が少なくとも2つの隣接する角度セクタ501で常に構成されることを確実にするように注意が払われる。
【0031】
材料2を特性評価するための第1の走査は、それで、前記材料2に向けて超音波を放射するように放射モードに各セル10-2、10-3、10-4、10-5、および10-6を交互に切り替えることにあり、それにより、前記材料2を通して送信されるおよび/またはガイドされる波を生成することにある。材料2を通して送信されるおよび/またはガイドされるこれらのガイド波は、次いで、セット502の様々なセル10によって受信され、これらのセルは受信モードに切り替えられている。セル10によって受信された超音波を処理するステップは、次いで、プロセッサユニット4によって実行され得る。
【0032】
実際には、セルを選択して放射モードまたは受信モードに切り替えることは、制御手段3によって実行される。
【0033】
例として、これらの制御手段3は:
― 放射角度セクタとして角度セクタ501(たとえば、
図2A-2Eの角度セクタ501-3)を選択するように構成された第1のセレクタモジュール300と、
― 受信角度セクタとして、隣接する角度セクタ501のセット502を選択するように構成された第2のセレクタモジュール301であって、このセット502が放射角度セクタと直径方向で反対にある角度範囲をカバーするように選択される、第2のセレクタモジュール301と、
― セット502、すなわち受信角度セクタ内のすべてのセル、を受信モードに切り替えるように構成された第1の切替えモジュール302と、
― 放射角度セクタ内のセルを、交互に放射モードに切り替えるように構成された第2の切替えモジュール303と、
を備え得る。第2の切替えモジュール303は、具体的には、1度に1つのみのセルを放射モードに切り替えるように構成され得る。
【0034】
モジュール300、301、302、および303は、電子またはソフトウェア手段によって実装され、制御手段3は、リング500のあらゆる角度セクタ501のためにこれらのモジュールのうちのいくつかまたはすべてを作動させることができる。
【0035】
有利には、この第1の走査について、放射モードのセルと直径方向で反対にある角度範囲上に受信セルのセット502を選択することで、既存の1次元のトランスデューサとは異なり、材料2を通した超音波の伝搬が2つの互いに垂直な波動ベクトルに沿ってプローブされることを可能にする。2つの垂直な波動ベクトルに沿ったこの特性評価は、セット502が複数の隣接する角度セクタ501で構成されるという事実に由来する。
【0036】
さらに、この第1の走査の間に所与の角度セクタ501内の1つの放射セルを選択して交互に切り替えることは、受信信号の処理(たとえば、特異値への分解による)後に、特性評価するための材料2を通してガイドされたモードの分散曲線を得ることを可能にする。
【0037】
第2の走査は、
図3Aから3Eに示されている。これらの図で分かるように、この第2の走査は、リング500の異なる角度セクタ501に前述の第1の走査を実行することからなる、角度走査である。異なる角度セクタ501-3、501-4、501-5、501-6、および501-7が、放射のために次々と選択され、これらのセクタ内の少なくとも1つのセル10-2、10-7、10-8、10-9、10-10が、放射モードに切り替えられる。放射のための角度セクタ501-3、501-4、501-5、501-6、および501-7と直径方向で反対にある角度セクタのセット502、502-1、502-2、502-3、および502-4が、次いで、受信セットとして選択され、それらのセルのすべてが、受信モードに切り替えられる。第2の走査は、次いで、リングの軸方向DAに関して第1の走査を回転させることによって実行される。この回転する、第2の走査は、所定の角度走査範囲で実行され、この所定の角度走査範囲は、たとえば、特性評価するための材料2に応じて選択され得る。この例では、各セット502、502-1、502-2、502-3、および502-4は4つの連続する角度セクタで構成されることを注視すべきである。しかしながら、この数は、単に例として選択されており、これらのセットは、より多数のまたは少数の角度セクタ501で構成され得る。しかしながら、第1の走査および第2の走査において、2つの互いに垂直な波動セクタに沿って、材料2を通した超音波の伝搬をプローブするために、複数の角度セクタ501を備えてセット502が常に形成されることを確実にするように注意すべきである。
【0038】
前述のように、特性評価するための材料2は、2つの走査を受ける。したがって、材料2を特性評価するために、第1の走査および第2の走査は、連続してまたは組み合わせて制御手段3によって実行され得る。例として、所与の放射セクタ(たとえば、セクタ501-3)内のすべてのセルが、順番に切り替えられてもよく、次いで、第2の走査は異なる角度セクタ501、たとえば隣接するセクタ、をその後に選択することによって、放射セクタを変更する。別の例では、第1の角度セクタのセルが放射モードで使用され、次いで、第2の走査は、第1の角度セクタのすべてのセルが必ずしも放射モードに切り替えられずに、異なる第2の角度セクタ内のセルを放射モードに切り替える。この例は
図3Aから3Eにおいて見ることができ、ここでは、各ステップにおいて、先行するセクタとは別個の角度セクタ501-3、501-4、501-5、501―6、または501-7内の1つのみのセル10--2、10--7、10--8、10-9、または10-10が選択され、順番に放射モードに切り替えられることが理解され得る。
【0039】
有利には、第2の走査は、リングの軸方向DAに対するすべての可能な角度に沿って、材料2を通してガイドされた超音波の伝搬をプローブする役割を果たす。受信信号が処理された後、この走査は、具体的には、検査された材料2の完全な剛性マトリックスを決定する役目を果たし得る。
【0040】
第2の走査の間に使用される角度走査範囲は、特性評価するための材料2に応じている。例として、ある種の材料2について、180°と等しい角度範囲に第2の走査の回転を制限することと、実際に、この角度範囲を、構造対称性を示す材料2について180°未満の角度に減らすこととが可能である。
【0041】
したがって、デバイス100内の放射体/受信器セル10の数を削減することが可能になり得る。放射体/受信器セル10の数のこのような削減は、具体的には、デバイス100の製造コストと、その重量の削減と、プロセッサユニット4に送信するために受信されるデータの量の削減とに関して有利になり得、したがって、特性評価すべき材料2のより高速な分析につながり得る。
【0042】
前述の図のリング500は、各角度セクタ501が同じ数のセルを有する特定の実施形態に対応することに注意すべきである。より少数の放射体/受信器セル10を示すリング500-1、500-2、500-3、および500-4の他の実施形態が、
図4A-4Dに示されている。説明のために、これらの図に示すように、特性評価すべき材料2は、それぞれ、溶接によって組み立てられた構造体2-2、および接着剤によって組み立てられた構造体2-3である。
【0043】
図4Aおよび4Bは、リング500-1、500-2が第1の角度範囲A1-1、A1-2と第2の角度範囲A2-1、A2-2との両方を有し、その両方が180°と等しい、実施形態を示す。図示された実施形態において、第1の角度範囲A1-1、A1-2の各角度セクタ501内に存在するセル10の数は、第2の角度範囲A2-1、A2-2の各角度セクタに含まれるセルの数より少ない。第1の角度範囲A1-1、A2-2の角度セクタが、セル10を選択して放射モードに切り替えるために連続して使用される場合、第2の角度範囲A2-1、A2-2の角度セクタは、放射モードのセルと直径方向で反対にある角度範囲に受信モードのセルのセットを設定するために使用される。例として、これらの図は、放射モードに切り替えられたセル10-11および10-12と、角度セクタと直径方向で反対にあるセット502-5および502-6とを示し、各セット502-5および502-6は、この例では、セルが受信モードに切り替えられる3つの角度セクタで構成される。
図4Aにおいて見られるように、第1の角度範囲A1-1のおよび第2の角度範囲A2-1の角度セクタは、リング500-1の同じ内周縁から延びる。したがって、放射モードのセルと受信モードのセルとの間の距離は、最小化される。逆に、
図4Bでは、第1の角度範囲A1-2のおよび第2の角度範囲A2-2の角度セクタは、リング500-2の同じ外周縁から延びる。放射モードのセルと受信モードのセルとの距離は、その場合、最大化される。
【0044】
図4Cおよび4Dは、第1の角度範囲A1-3またはA1-4の角度セクタがリング500-3または500-4の同じ外周縁から延びる、リング500-3または500-4の他の実施形態をそれぞれ示す。図示されていない別の例において、第1の角度範囲の角度セクタは、リング500-3または500-4の同じ内周縁から延び得る。これらの図において、第1の角度範囲A1-3、A1-4の各角度セクタ内に存在するセル10の数は、第2の角度範囲A2-3、A2-4の各角度セクタ内に存在するセル10の数より少ない。
図4Cにおいて、第1の角度範囲A1-3は、180°未満である。
図4Dにおいて、第1の角度範囲A1-4は、180°より大きい。第1の角度範囲A1-3、A1-4の角度セクタが、1つのセル10を選択して放射モードに切り替えるために連続して使用される場合、次いで、第2の角度範囲A2-3、A2-4の角度セクタは、放射モードのセルと直径方向で反対にある角度範囲に受信モードのセルのセットを形成するために使用される。例として、これらの図は、放射モードに切り替えられたセル10-13および10-14と、角度セクタのセット502-7および502-8とを示し、その各々は、この例では、セルが受信モードに切り替えられた3つの角度セクタで構成されている。
【0045】
有利には、すべての前述の実施形態は、任意の材料2を特性評価することに適用され得る。
【0046】
例として、多結晶構造体2-1を特性評価するために、これらの実施形態は、超音波トモグラフィによって構造体内のグレインの方向性を特性評価するのに十分なデータセットをトランスデューサ1の受信部分を介して収集する役割を果たす。デバイス100のパラメータ(たとえば、使用される超音波周波数)に応じて、プロセッサユニット4による受信信号の処理は、そのとき、単一グレインのまたはグレインのパケットのスケールにおいて多結晶構造体2-1を特性評価する役割を果たす。
【0047】
別の例では、組み立てられた構造体、たとえば、溶接によって組み立てられた構造体2-2または接着剤によって組み立てられた構造体2-2、にとって既存の接合(たとえば、接着剤、溶接の箇所)の品質を検査することが必須であることがある。プロセッサユニット4による受信信号の処理は、そのとき、このような構造体の剛性マトリックスを決定および評価する役割を果たす。加えて、特性評価するための材料2を通した超音波の伝搬が、すべての角度方向において(回転する、第2の走査の結果として)、2つの互いに垂直な伝搬方向(ラジアルな、第1の走査を用いて、複数の角度セクタが受信のために使用される)において、プローブされるので、提案される実施形態は、亀裂の存在、さらに一般的には、好ましい方向に向けられて、材料2に関する任意の情報を非常に正確に評価することを可能にする。
【0048】
実施形態の第3の適用例は、腐食によって薄くされることに関連する厚さの損失を示す材料2を特性評価するための画像の使用に関する。プロセッサユニット4は、材料2を通してガイドされた超音波のガイドされたモードの速度を測定し、すべての角度方向で得られた測定結果を使用することによって、プロセッサユニット4は、異なる速度で伝搬するモードを検出することができ、これらの異なる速度は、材料2における厚さの損失を明らかにする。プロセッサユニット4は、そのとき、材料2における厚さの損失を示すために、トモグラフィ再構成アルゴリズムを利用することができる。