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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】装飾シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220609BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220609BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20220609BHJP
   C09J 9/00 20060101ALI20220609BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B05D1/26
B29C67/00
C09J9/00
C09J201/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019535832
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 IB2017058421
(87)【国際公開番号】W WO2018122732
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/440,056
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144936(JP,A)
【文献】特開2003-103743(JP,A)
【文献】特開2012-153107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B05D 1/00- 7/26
B29C67/00- 67/08
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、紫外線硬化型インクを含む3次元形状印刷部と、
前記基材及び前記印刷部に積層されるオーバーラミネートフィルムであって、フィルム層と接着層とを含み、前記印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有する、オーバーラミネートフィルムと、を備え
前記接着層の損失係数(tanδ)のピーク温度が-20℃以上である、装飾シート。
【請求項2】
前記印刷部の少なくとも一部の厚さが7μm以上である、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記基材及び前記印刷部上に積層される前の前記オーバーラミネートフィルムの表面粗さがRa(0)と設定される場合、前記基材及び前記印刷部上に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さはRaと設定され、式(1)によって表されるオーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)が110%以上であり、
式(1)は、Ra(ratio)(%)=(Ra-Ra(0))/Ra(0)×100である、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項4】
前記オーバーラミネートフィルムの表面粗さRzが、約10μm以上である、請求項1に記載の装飾シート
【請求項5】
前記印刷部が複数の印刷層を有する、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項6】
前記複数の印刷層は、第1の印刷層と、前記第1の印刷層と実質的に同じ平面パターンを有し、前記第1の印刷層上に配置される第2の印刷層とを含む、請求項に記載の装飾シート。
【請求項7】
前記複数の印刷層は、少なくとも透明性が低いカラー層と、前記カラー層の前記透明性より高い透明性を有する立体形成層とを含む、請求項に記載の装飾シート。
【請求項8】
前記複数の印刷層は、前記第1の印刷層と、前記第1の印刷層とは異なる平面パターンを有し、前記第1の印刷層上に配置される前記第2の印刷層とを含む、請求項に記載の装飾シート。
【請求項9】
基材上で紫外線硬化型インクジェット印刷を実行し、3次元形状印刷部を形成するステップと、
前記基材及び前記印刷部上にオーバーラミネートフィルムを、前記オーバーラミネートフィルムの接着層が前記基材及び印刷部側に面するように積層するステップであって、前記オーバーラミネートフィルムは前記印刷部の3次元形状に追従した3次元形状に形成される、積層するステップとを含み、
前記接着層の損失係数(tanδ)のピーク温度が-20℃以上である、装飾シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、紫外線硬化型インクジェットプリンタを用いて印刷される印刷部が、広告掲示板等に用いられる装飾シート上に形成される。紫外線硬化型インクジェットプリンタは、少量及び多品種の印刷を実行することができ、印刷後の短い時間でインクが乾くので、印刷部の製造期間を大幅に短くすることができるか、又は樹脂、ガラス、金属などの種々の媒体に印刷することができる。
【0003】
国際公開第2012/073994号は、「薄いフィルム形状の基材に対してUVインクを使用してインクジェットプリンタによって印刷される装飾フィルムであって、この装飾フィルムは、基材上にインクジェットプリンタによって印刷されるUVインク層、UVインク層に重なり、UVインク層の上方にグラビア印刷又はスクリーン印刷によって印刷される上側印刷層、及びUVインク層と上側印刷層との間に介在する保護層から形成される」と記載している。
【発明の概要】
【0004】
紫外線硬化型インクを用いることにより、比較的厚い印刷層を得ることができるか、又は3次元形状を形成することができる。結果として、紫外線硬化型インクを用いて印刷層を形成することによって、より3次元的な装飾を有する装飾シートを形成することができる。一方、耐久性や耐候性等を高めるために、保護層によって印刷層表面を覆うことが望ましい。それゆえ、装飾シートは、印刷層の3次元形状を利用して立体感を有する表面状態を維持しながら、簡易な方法を用いて印刷層表面を覆う保護層を設けられる。
【0005】
本開示の一態様による装飾シートは、基材と、基材上に設けられ、紫外線硬化型インクを含む3次元形状印刷部と、基材及び印刷部に積層されるオーバーラミネートフィルムとを設けられる。オーバーラミネートフィルムは、フィルム層及び接着層を含み、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有する。
【0006】
本開示の態様による装飾シートの製造方法は、基材上に紫外線硬化型インクジェット印刷を実行し、3次元形状印刷部を形成するステップと、オーバーラミネートフィルムの接着層が基材及び印刷部側に面するように、基材及び印刷部にオーバーラミネートフィルムを積層するステップとを含む。これにより、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による装飾シートの一例を示す平面図である。
図2A】第1の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図2B】第1の実施形態の変形例による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図3】装飾シート製造装置の一例を概略的に示す図である。
図4】第2の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図5】第3の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図6】第4の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図7】一実施例による装飾シートの一例を示す平面図である。
図8図7の線VIII-VIIIに沿った概略的な断面図である。
図9】一実施例による装飾シートの一例を示す平面図である。
図10図9の線X-Xに沿った概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示における「3次元形状」は、立体形状を形成することを意味する。すなわち、基材に対する高さの差を有し、高さの差が少なくとも7μmであることを意味する。「3次元形状」において、基材の全面に凹凸を有する印刷部を設けることができ、高さの差が形成され、基材の一部に印刷部を設けることができ、印刷部を有する領域と、印刷部を有しない領域との間に高さの差を形成することができる。
【0009】
「追従する」は、基材からのオーバーラミネートフィルムの高さが、基材からの印刷部の高さの変化に従って変更されることを意味する。すなわち、例えば、印刷部が山部分及び谷部を有するとき、「追従する」は、印刷部の山部の位置にオーバーラミネートフィルムの山部を有し、印刷部の谷部の位置にオーバーラミネートフィルムの谷部を有することを意味する。更に、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有するか否かの評価に関して、「追従した3次元形状を有する」という評価は、例えば、オーバーラミネートフィルムを通して印刷部の3次元形状を認識できる場合に、又はオーバーラミネートフィルムの3次元形状が、印刷部の3次元形状と実質的に同じ形状、若しくはそれに類似の形状と認識される場合に可能である。「追従した3次元形状を有する」という評価は、例えば、印刷部の3次元形状として認識される山部の数に対するオーバーラミネートフィルムの3次元形状として認識される山部の数の場合に可能である。
【0010】
「透過的」は、約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上の可視範囲の光の平均透過率を意味し、無色透明であることには限定されず、半透明も含まれる。「着色された」は、無彩色又は有彩色を意味する。更に、単色には限定されず、複数の色で形成されたパターンを有する形態も含まれ、更に、半透明も含まれる。
【0011】
「印刷部」は、単一の印刷層又は複数の印刷層を含む部分であり、単一の「印刷層」は、同じ紫外線硬化型インクによって形成される層であり、異なる顔料を有する同じタイプの紫外線硬化型インクから形成される複数の層が存在する場合、印刷層は互いに異なる。すなわち、例えば、インクジェットプリンタによって印刷層が形成されている場合、同じ色の紫外線硬化型インクを同じ位置に何度も塗布することによって形成される印刷層は単層である。
【0012】
「平面パターン」は、印刷層の平面図における印刷層の形状及びサイズを意味する。「実質的に同じ平面パターン」は、印刷層の同じ形状及びサイズを有する場合であるか、又は異なる場合であっても、肉眼で差を認識できない限り、実質的に同じパターンであると推定される。「異なる平面パターン」は、印刷層の形状及びサイズが異なることを意味し、「実質的に同じ平面パターン」以外である。
【0013】
装飾シート
本開示の一態様による装飾シートは、基材と、基材上に設けられ、紫外線硬化型インクを含む3次元形状印刷部と、基材及び印刷部に積層されるオーバーラミネートフィルムとを設けられる。オーバーラミネートフィルムは、表面側にフィルム層を有し、裏面に接着層を有し、接着層を介して印刷部に積層することによって、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有する。印刷部は、例えば、インクジェット印刷によって形成される印刷層を含む。
【0014】
その態様による装飾シートは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有するオーバーラミネートフィルムを設けられるので、表面が平坦化された2次元形状の装飾シートと比べて立体感を有する装飾を与えることができる。オーバーラミネートフィルムは接着剤を有するフィルムであるので、印刷部を容易に覆うことができ、印刷部を保護し、耐久性や耐候性を改善することができる。
【0015】
その態様による装飾シートでは、印刷部の少なくとも一部の厚さが約7μm以上とすることができる。その態様による装飾シートでは、印刷部の少なくとも一部の厚さは約15μm以上とすることができる。その態様による装飾シートでは、印刷部の少なくとも一部の厚さは約20μm以上とすることができる。そのような印刷部の厚さを一定以上に設定することにより、立体感による装飾を達成することができる。
【0016】
後に説明されるように、オーバーラミネートフィルムのフィルム層は、一定量以下の厚さを有し、柔軟性を与えられ、印刷部が覆われるときに、印刷部の3次元形状に追従した熱可塑性樹脂フィルムとして配置することができる。熱可塑性フィルムの具体例には後に説明される。
【0017】
その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが約90μm以下であることが好ましい。そのようなフィルム層の厚さを調整することによって、印刷部の3次元形状における追従性が容易に得られる。その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さは、約60μm以下、又は50μm以下とすることができる。その態様による装飾シートにおいて、フィルム層は保護層として機能するので、フィルム層の厚さは約5μm以上であることが好ましく、約10μm以上にできることが好ましい。
【0018】
その態様による装飾シートは、基材及び印刷部に積層される前のオーバーラミネートフィルムの表面粗さをRa(0)とし、基材及び印刷部に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さをRaとするとき、式(1)によって表されるオーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)は、約110%以上とすることが好ましい。
式1:Ra(ratio)(%)=(Ra-Ra(0))/Ra(0)×100
変化率Raの数値は、印刷部の凹凸上でオーバーラミネートフィルムが追従する度合いを示す1つの指標であり、数値が大きいほど、立体感がある装飾が得られる。
【0019】
その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムの表面粗さRzは、約10μm以上とすることができる。その態様による装飾シートにおいて、オーバーレイフィルムの表面粗さRzは、約15μm以上とすることができる。その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムの表面粗さRzは、約20μm以上とすることができる。オーバーラミネートフィルムの表面粗さRzは、印刷部の凹凸上でオーバーラミネートフィルムが追従する度合いを示す1つの指標であり、数値が大きいほど、立体感がある装飾が得られる。
【0020】
その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムのフィルム層は透過性とすることができる。その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムのフィルム層は着色することができる。
【0021】
その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムの接着層の損失係数(tanδ)のピーク温度が-20℃以上であることが望ましい。この場合、接着層の形状維持が大きいため、被覆後に、印刷部の3次元形状に追従するように覆うオーバーラミネートフィルムの3次元形状を維持することもできる。結果として、装飾シート表面の立体装飾をより安定して維持することができる。その態様による装飾シートにおいて、接着層のtanδのピーク温度は、約-15℃以上、又は約-10℃以上とすることができる。その態様による装飾シートは、接着層のtanδのピーク温度が約5℃以下であることが望ましい。この条件では、室温において良好な効率で接着性を示すことができる。その態様による装飾シートにおいて、接着層のtanδのピーク温度は、約0℃以下とすることができる。
【0022】
その態様による装飾シートにおいて、印刷部は複数の印刷層を有することができる。その態様による装飾シートにおいて、複数の印刷層は、第1の印刷層と、第1の印刷層と実質的に同じ平面パターンを有し、第1の印刷層上に配置される第2の印刷層とを含むことができる。より立体的な装飾を設けることができる。
【0023】
その態様による装飾シートにおいて、複数の印刷層は、少なくとも透明性が低いカラー層と、カラー層の透明性よりも透明性が高い立体形成層とを含むことができる。
【0024】
その態様による装飾シートにおいて、複数の印刷層は、第1の印刷層と、第1の印刷層とは異なる平面パターンを有し、第1の印刷層上に配置される第2の印刷層とを含むことができる。より複雑で、かつ多彩な装飾を与えることができる。
【0025】
その態様による装飾シートにおいて、オーバーラミネートフィルムの最も外側の表面上に表面保護層が更に存在することができる。
【0026】
本開示の態様による装飾シートの製造方法は、基材上に紫外線硬化型インクジェット印刷を実行し、3次元形状印刷部を形成するステップと、オーバーラミネートフィルムの接着層が基材及び印刷部側に面するように、基材及び印刷部にオーバーラミネートフィルムを積層するステップとを含む。これにより、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状に形成される。
【0027】
その態様による装飾シートの製造方法において、積層中に、オーバーラミネートフィルムを室温以上まで加熱することができる。オーバーラミネートフィルムが熱可塑性フィルムである場合、印刷部の3次元形状に対する追従性を更に高めることができる。加熱温度は、約35℃以上、又は約50℃以上とすることができる。一方、印刷層の3次元形状が維持されるように、加熱温度は約85℃以下にすることができる。
【0028】
以下に、本開示による装飾シートの基材、印刷部、オーバーラミネートフィルム、表面保護層が更に詳細に説明される。
【0029】
基材
例えば、基材は、グラフィックフィルム、接着層、及び剥離ライナーを設けられる。グラフィックフィルムは、接着層上に設けられ、接着層は剥離ライナー上に設けられる。
【0030】
例えば、グラフィックフィルムは、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルアミドを含む。例えば、グラフィックフィルム11は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、及びその組み合わせを含むことができ、複数の材料の積層体とすることができる。材料を含むグラフィックフィルムはインクの受容に優れているので、グラフィックフィルム上に高品質の印刷部が形成される。
【0031】
例えば、接着層は熱可塑性材料を含み、具体的には、アクリル接着剤、ポリエステル接着剤、ゴム接着剤、シリコーン接着剤又はポリウレタン接着剤などの材料を含む。
【0032】
剥離ライナーは、粘着テープなどの分野でしばしば使用されるライナーとすることができ、特定の部材に限定されない。好ましい剥離ライナーとして、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル若しくはセルロースアセテートなどのプラスチック材料、紙、又はこのタイプのプラスチック材料で被覆又は積層される別の材料が挙げられる。剥離ライナーは、更なる変更を加えることなく使用することができるが、剥離ライナーの剥離特性を改善するために、シリコーン処理を施した後に使用することができるか、又は別の方法を用いて処理することができる。
【0033】
種々の市販品を基材として使用することができ、印刷画像の形成に適したグラフィックフィルムなどの市販のフィルムを使用することができる。市販のグラフィックフィルムの例として、Scotchcal(商標)グラフィックフィルムIJ180-10、Scotchcal(商標)グラフィックフィルムIJ5331、及びScotchcal(商標)グラフィックフィルムIJ8150(上記は3M社製)が与えられる。Scotchcal(商標)グラフィックフィルムは、グラフィックフィルム、接着層、及び剥離ライナーを設けられる。グラフィックフィルム及び接着層を組み合わせた厚さは、例えば、約80μm~約90μmに設定することができる。剥離ライナーの厚さは、例えば、約10μm~約500μmに設定することができる。
【0034】
印刷部
印刷部は、紫外線硬化型インクを含み、紫外線硬化型インクジェット印刷によって形成される。紫外線硬化型インクジェット印刷は、種々の画像に対応する印刷画像データに基づいて、小さいロット単位でも印刷画像を基材上に容易に印刷することができ、屋外耐候性を有するフルカラー印刷画像を得ることができる。紫外線硬化型インクジェット印刷に使用される紫外線硬化型インクは、例えば、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色剤、及びアジュバントを設けられる。フルカラー印刷は、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク及びブラック(K)インクの4色のインクセットとして一般に提供される紫外線硬化型インクによって可能である。例として、紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)及びUJV500-160UVインクジェットプリンタ純正インク(ミマキエンジニアリング社製)が紫外線硬化型インクとして与えられる。紫外線硬化型インクとして透明インクを用いることもできる。例えば、そのようなインクとして、富士フィルム社によって製造されるインクジェットプリンタ用のUV硬化型インク(商品名:UV-IJINK LL391クリア600mL)を使用することができる。
【0035】
基材上に印刷部が形成される領域が、印刷領域である。インクジェット印刷が実行される場合、印刷部の最大厚を1回の印刷において、すなわち、1回インクを塗布する際に約7μmに設定することができる。重複印刷が実行される場合、印刷部の厚さが約7μmを超える部分を形成することができる。
【0036】
印刷部は3次元形状を有し、詳細には、基材に対して高さ方向に厚さを有する。例えば、印刷領域と印刷領域の外側の周縁領域とが基材上に形成される場合、印刷領域は、周縁領域に対して高さの差を有し、立体的な3次元形状を形成する。印刷部の表面上に山部及び谷部が形成される場合には、印刷部自体が高さの差を有し、立体的な3次元形状を形成する。
【0037】
印刷部は、複数の印刷層を含むことができる。例えば、印刷部は、第1の印刷層と、第1の印刷層と実質的に同じ平面パターンを有し、第1の印刷層上に配置される第2の印刷層とを含むことができる。印刷部は、第1の印刷層と、第1の印刷層とは異なる平面パターンを有し、第1の印刷層上に配置される第2の印刷層とを含むことができる。複数の印刷層は2つの層、すなわち、第1の印刷層及び第2の印刷層を含む事例には限定されず、3層以上を設けることができる。
【0038】
複数の印刷層は、少なくとも透明性が低いカラー層と、カラー層の透明性よりも高い透明性を有する立体形成層とを含むことができる。例えば、第1の印刷層はカラー層とすることができ、第2の印刷層は立体形成層とすることができる。3層以上の場合、カラー層を挟むために2つの立体形成層を設けることができる。
【0039】
オーバーラミネートフィルム
オーバーラミネートフィルムは、フィルム層及び接着層を設けられ、接着層を介して印刷部に積層される。オーバーラミネートフィルムが印刷層に結合されると、フィルム層は、印刷層の3次元形状に対して良好な追従性効率を示し、結合後の接着層の接着性に起因して、オーバーラミネートフィルムの流動状態を良好な効率で維持することができる。
【0040】
フィルム層は、熱可塑性樹脂が基材であり、室温以上の温度で加熱されるときに印刷部の3次元形状に追従するフィルムとすることができる。フィルム層は、熱可塑性樹脂が基材であり、約35℃以上、約80℃以下の温度で加熱されるときに印刷部の3次元形状に追従するフィルムとすることができる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル樹脂、ポリフッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が基材であるフィルム層を使用することができる。
【0041】
フィルム層の厚さは、好ましくは約90μm以下であり、印刷部の3次元形状に対する追従性が妨害されないように、60μm以下、又は約50μm以下とすることができる。フィルム層の厚さは保護層として機能するので、フィルム層の厚さは約5μm以上、また約10μm以上とすることが好ましい。
【0042】
一実施形態において、フィルム層に含まれる樹脂のガラス転移温度は、約90℃以下、約85℃以下、又は約80℃以下である。樹脂のガラス転移温度が約90℃以下であることに起因して、装飾接着フィルムの表面追従性を更に改善することができる。一方、フィルム層のガラス転移温度は、約30℃以上、約35℃以上、又は約40℃以上であることが望ましい。フィルム層のガラス転移温度が約30℃以上であることに起因して、フィルム層の層厚を薄くすることができ、埃の付着をより実効的に防ぐことができ、耐ブロッキング性を高めることができる。
【0043】
フィルム層がポリ塩化ビニル樹脂である場合、フィルム層は、ポリマー成分としてポリ塩化ビニルのみを含むことができ、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー及びアクリル樹脂等の付加的なポリマーを、耐衝撃性などの特性を変更する目的で、例えば約40質量%以下、約30質量%以下、又は約20質量%以下の量だけ含むことができる。ポリ塩化ビニル樹脂は、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、及びトリメリット酸エステルなどの可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、顔料などの別の添加剤を含むことができる。一実施形態において、フィルム層は、ポリ塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含み、可塑剤の量は、ポリ塩化ビニル樹脂100に対して、質量比で約20以上、又は約25以上であり、かつ約40以下、又は約35以下である。この場合、フィルム層は、3次元印刷層に対して良好な追従性効率を示すことができる。
【0044】
フィルム層がポリウレタン樹脂である場合、フィルム層はポリオールと架橋剤とを重合して得られる樹脂を含むことができる。ポリオールとして、例えば、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール等を使用することができる。一実施形態において、フィルム層は、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールから選択される少なくとも1つのポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含む。架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)、ビュレット、イソシアヌレート、又はこれらの付加物、ポリカルボジイミド等を使用することができる。一実施形態では、ポリウレタン樹脂は、非黄変ポリイソシアネート由来の単位を有する。非黄変ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。本実施形態によれば、耐候性に特に優れた装飾接着フィルムを得ることができる。耐久性及び耐候性に優れるため、アクリルポリオールと架橋剤との重合付加物であるアクリル系ウレタン樹脂を有利に使用することができる。
【0045】
フィルム層がアクリル樹脂を含む場合、フィルム層は、カルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーとのポリマーブレンドを含むことができる。そのようなポリマーブレンドを含むアクリル樹脂フィルムは、引張強度が高く、優れた伸長特性を有するので、3次元形状を有する表面に対して好ましい追従性を有する装飾フィルムを提供することができる。必要に応じて、1つ又は2つ以上のタイプのカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーと、1つ又は2つ以上のタイプのアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーとを混合することによって、ポリマーブレンドを形成することもできる。フィルム層がアクリル樹脂を含む場合、フィルム層は耐候性等に優れており、過酷な外部環境に曝される適用例に特に適している。
【0046】
フィルム層がフッ素樹脂を含む場合、フィルム層は、フッ素系モノマーを重合することによって得られるポリマーを含むことができる。フッ素系モノマーは、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びトリフッ化物エチレンクロリドなどのフッ素エチレンモノマーである。フッ素系モノマーに加えて、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどのメタクリレート、アクリル酸ブチル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリレートなどの1つ又は2つ以上のタイプの共重合性モノマーを混合することもできる。フッ素樹脂及びアクリル樹脂がブレンドされたフッ素樹脂組成物を使用することもできる。例えば、アクリルポリオール樹脂では、ポリオールの水酸基と(メタ)アクリル系ポリマー内の水酸基とがイソシアネート架橋剤とそれぞれ反応することにより、ウレタン結合に起因してアクリルポリオール樹脂が形成される。フィルム層がフッ素樹脂を含む場合、フィルム層は、優れた耐薬品性、耐候性等を有し、過酷な外部環境に曝される適用例に特に適している。
【0047】
一実施形態では、国際公開第2013/019699号(表題:「Graphic Article」、発明者:Steelmanら)及び国際公開第2013/019706号(表題:「Graphic Article」、発明者:Steelmanら)に記載の熱可塑性ポリウレタン及びセルロースエステルを含むポリマー配合物を含むフィルム層、又は国際公開第2014/123766号(表題:「Graphic Article」、発明者:Steelmanら)に記載の熱可塑性ポリウレタン及びポリビニルブチラールを含むポリマー配合物を含むフィルム層を使用することもできる。
【0048】
一実施形態では、フィルムは多層フィルム構造を有することができる。多層フィルム構造において、各フィルム層は、異なる材料とすることができるか、同じ材料を使用する異なる添加剤とすることができるか、又は同じ材料を使用するある配合比とすることができる。例えば、上記の熱可塑性樹脂の1つの材料から形成される第1のフィルム層と、第1のフィルム層以外の熱可塑性樹脂から形成される第2のフィルム層とを用いて多層フィルム構造を形成することができる。代替的には、多層フィルム構造は、1つのフィルム層に顔料を含むことができる。具体的には、フィルムは、白色層上に透過的な層を含むことができるか、又は別の顔料色上に白色層を含むことができる。
【0049】
フィルム層は透過的であってもよく、着色されていてもよい。接着層が透過的であり、フィルム層が透過的である場合は、実質的に透明なオーバーラミネートフィルムを意味する。フィルム層が着色されている場合は、有色オーバーラミネートフィルムを意味する。例えば、オーバーラミネートフィルムが透明(半透明を含む)である場合には、印刷部によって構成される文字又は図形は、オーバーラミネートフィルムを通して視覚的に認識される。
【0050】
押出フィルム、押出延伸フィルム、カレンダーフィルム、キャストフィルム、又はこれらの積層体などの、様々な形成方法によって形成されるフィルムをフィルム層として使用することができる。一実施形態において、フィルム層はキャストフィルムとすることができる。キャスト方法によれば、薄膜層を得るのは容易であり、残留内部応力が相対的に低いので、装飾接着フィルムの表面追従性を有利に高めることができる。バーコーティング及びナイフコーティングの溶媒を使用する種々のコーティング方法以外に、溶媒を使用しないホットメルトコーティング法を用いて製造されたフィルムがキャストフィルム上に含まれる。
【0051】
装飾接着フィルムの適用によれば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤、フィラー等の従来から知られている添加剤をフィルム層に添加することもできる。
【0052】
例えば、接着層は熱可塑性材料を含み、具体的には、例えば、アクリル接着剤、ポリエステル接着剤、ゴム接着剤、シリコーン接着剤、又はポリウレタン接着剤を含む。
【0053】
接着層において、動的粘弾性測定法による損失係数(tanδ)のピーク温度は、約-20℃以上であることが好ましく、約-10℃以上であることがより好ましい。ピーク温度が低いとき、接着層が熱変形した後に、元の形状に容易に戻るだけの十分な追従性が得られないと考えられる。接着層の厚さは、例えば、約5μm~約50μmとすることができる。例えば、白色顔料又は黒色顔料を接着層に添加することができる。
【0054】
接着層を形成する接着剤は、例えば、粘着性ポリマー又は架橋剤を含むことができる。架橋剤の添加量は、粘着性ポリマー又は架橋剤のタイプに応じて適切に調整できるが、例えば、粘着性ポリマー100に対して質量比で、0.02~2とすることができ、0.003~1とすることができる。架橋剤として、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、及びビスアミド化合物を使用することができる。更に、接着剤としてモノマー組成物を添加することができる。接着剤は、粘着付与剤及びUV吸収剤などの添加剤を更に含むことができる。
【0055】
接着層の損失係数tanδ(=剪断損失弾性率G”/剪断貯蔵弾性率G’)は、ARES動的粘弾性測定装置(T.A計器ジャパン社製、日本国東京都品川区)を用いて測定される。測定条件として、接着剤の乾燥厚1~3mm、接着剤の直径約7.9mm、昇温範囲-60℃~100℃、昇温速度5.0℃/秒、剪断モード周波数1.0Hzが挙げられ、これらの条件下で、剪断貯蔵弾性率G’及び剪断損失弾性率G”が測定される。損失係数tanδのピーク温度は、好ましくは約-20℃~約5℃、より好ましくは約-18℃~約0℃である。
【0056】
損失係数tanδのピーク温度が約-20℃以上である場合、被覆後に接着層の形状維持が高いので、印刷部の3次元形状に追従するように覆うオーバーラミネートフィルムの3次元形状を維持することもできる。結果として、装飾シート表面の立体装飾をより安定して維持することができる。
【0057】
一実施形態において、接着層の厚さは、フィルム層の厚さの約0.5倍又は約2倍とすることができる。接着層の厚さは、約5μm以上、10μm以上、又は他は20μm以上とすることができる。一方、接着層の厚さは、80μm以下、50μm以下、又は40μm以下とすることができる。一実施形態において、接着層の厚さは、フィルム層の厚さの約0.5倍以上、又は約1倍以上とすることができる。フィルム層に対する接着層の厚さの比が高くなるほど、オーバーラミネートフィルムの物理的特性、例えば、引張強度及び伸長率などの接着層の物理的特性の影響が大きくなり、結果として、オーバーラミネートフィルムの表面追従性をより高めることができる。接着層が厚くなるほど、凹凸表面を有する被着体に結合するときに生じるフィルム層への応力の緩和効果が大きくなる。そのようなフィルム層に関して、比較的厚い接着層に結合されるオーバーラミネートフィルムを設定することにより、印刷部の3次元形状に対する追従性を与えることができる。一実施形態では、接着層の厚さは、フィルム層の厚さの約0.5倍~約2倍とすることができる。
【0058】
オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に対するオーバーラミネートフィルムの良好な追従性を示すために、柔軟性を有することが好ましい。また、フィルム破断中の引張強度又は伸長率によってオーバーラミネートフィルムの柔軟性を表すこともできる。
【0059】
一実施形態において、オーバーラミネートフィルムの5%伸長中の引張強度は、JIS K6251に準拠して、温度20℃、初期把持間隔100mm、引張速度300mm/分の条件下で測定されるときに、約14MPa以下、約12MPa以下、又は約11MPa以下とすることができる。オーバーラミネートフィルムの印刷部への積層中の加熱条件下で、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に対してより良好な追従性を与え、結合後、それに追従する3次元形状を良好に維持することができる。
【0060】
一実施形態において、オーバーラミネートフィルムの破断時の伸長率は、JIS K6251に準拠して、温度20℃、初期把持間隔100mm、引張速度300mm/分の条件で測定されるとき、約100%以上、約120%以上、又は約150%以上である。測定された試験サンプルが切断されたときにベンチマーク間距離L1(mm)を測定し、初期把持間隔100mmを使用することによって、以下の式(2)からの伸長率を得ることができる。
式2:破断中の伸長率(%)=[(L1-100)/100]×100
【0061】
オーバーラミネートフィルムは剥離ライナーを含むことができる。剥離ライナーとして、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、若しくは酢酸セルロースなどのプラスチック材料、又はこのタイプのプラスチック材料で被覆若しくは積層された紙が挙げられる。シリコーン処理などの方法を、剥離ライナー上で実行することができる。剥離ライナーの厚さは、例えば、約10μm~約500μmに設定される。
【0062】
オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さの一例は、約90μm以下である。オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さの別の例は、約60μm以下である。具体的には、オーバーラミネートフィルムがポリ塩化ビニル樹脂である場合、フィルム層の厚さが約90μm以下である場合、印刷部の凹凸が約7μm以上である場合、オーバーラミネートフィルムは良好な追従性を得ることができる。オーバーラミネートフィルムがアクリル樹脂である場合、フィルム層の厚さが50μm以下である場合、印刷部の凹凸が約7μm以上である場合、オーバーラミネートフィルムは良好な追従性を得ることができる。
【0063】
オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが薄くなることに起因して、印刷部によって構成される文字や図形において立体感を維持することが容易である。しかしながら、フィルム層の厚さが約10μm未満であるとき、オーバーラミネートフィルムの弾性、すなわち弾性率が低下し、支持体の機能が満たされないので、種々の製造プロセスにおいて干渉が生じる場合がある。フィルム層の厚さが約90μmを超えるとき、塑性変形が発生しない傾向になる場合がある。
【0064】
オーバーラミネートフィルムは、印刷部(印刷領域)の3次元形状に追従した3次元形状を有する。したがって、例えば、印刷領域上の基材の表面からのオーバーラミネートフィルムの高さは、周辺領域における基材の表面からのオーバーラミネートフィルムの高さと比べて高い。例えば、基材及び印刷部に積層されるオーバーラミネートフィルムの表面粗さRzは、約10μm以上である。
【0065】
基材及び印刷部に積層される前のオーバーラミネートフィルムの表面粗さをRa(0)とし、基材及び印刷部に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さをRaとするとき、式(1)によって表されるオーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)は、例えば、約110%以上に設定される。約200%以上、又は約400%以上も許容可能である。
【0066】
上述のように、印刷部は3次元形状を有する。すなわち、オーバーラミネートフィルムの表面粗さRaが、オーバーラミネートフィルムの表面粗さRa(0)と比べて大きくなるほど、印刷部の3次元形状に応じてオーバーラミネートフィルムの立体感が顕著になる。特に、オーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)が110%以上である場合には、印刷部の3次元形状に応じて立体感による装飾を与えるのが容易である。
【0067】
表面保護層
必要に応じて、装飾シートに表面保護層を設けることができる。表面保護層として、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリフッ素樹脂、又はポリ塩化ビニル樹脂が挙げられる。必要に応じて、表面保護層は、硬化剤又は他の添加剤を含むことができる。表面保護層の厚さは、例えば、約1μm以上、又は約2μm以上とすることができる。一方、表面保護層の厚さは、約10μm以下、又は約5μm以下とすることができる。
【0068】
装飾シート製造方法
装飾シートの製造方法は、例えば、基材上で紫外線硬化型インクジェット印刷を実行し、3次元形状印刷部を形成するステップと、オーバーラミネートフィルムの接着層が基材及び印刷部側に面するように、基材及び印刷部にオーバーラミネートフィルムを積層するステップとを含む。本製造方法の積層中に、オーバーラミネートフィルムは、印刷部分の3次元形状に追従するように覆う3次元形状に形成される。
【0069】
オーバーラミネートフィルム製造方法
オーバーラミネートフィルムによって構成されるフィルム層には、市販の熱可塑性フィルムを使用することができるが、例えば、以下の製造方法において、印刷部の3次元形状に対して良好な追従性を有するフィルムを製造することができる。表面上で剥離処理を実行したポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが準備される。上記のフィルム層として使用可能な熱可塑性樹脂を溶媒に溶かした溶液が、ナイフコータ等を用いて剥離処理されたPET表面に塗布され、乾燥することにより、フィルム層が所望の厚さに形成される。そのような塗布方法を使用することによって、約100μmの厚さ又は約50μm以下の厚さで、印刷部の3次元形状の良好な追従性を有するフィルム層を形成することができる。
【0070】
本製造方法の積層中に、オーバーラミネートフィルムは、約35℃以上、かつ約85℃以下に加熱された状態で積層される。基材の巻き出し及び巻き取りの速度、すなわち、基材の積層速度は、例えば、毎分約30cm~毎分約60cmである。例えば、装飾シート製造装置を用いて、装飾シートの製造を実行することができる。
【0071】
それらの実施形態による装飾シートの複数の態様が、図面を参照しながら以下に詳細に説明される。
【0072】
第1の実施形態
図1は、装飾シートの各形態を共に示す平面図の一例である。図2Aは、第1の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。図2Aにおいて、視認するのを容易にするために、幅方向の寸法に対する厚さ方向の寸法が、実際の形状よりも厚くなるように示されている。
【0073】
装飾シート1Aは、基材10と、基材10上に設けられる印刷部20Aと、基材10及び印刷部20Aに設けられるオーバーラミネートフィルム30とを設けられる。基材10は、グラフィックフィルム11、接着層12、及び剥離ライナー13を設けられる。
【0074】
オーバーラミネートフィルム30は、フィルム層32及び粘着層31を含む。粘着層31は、フィルム層32と基材10とを接着し、フィルム層32と印刷部20Aとを接着する。必要に応じて、装飾シート1Aはオーバーラミネートフィルム30の最も外側の表面に表面保護層40を有することができ、表面保護層40は省くこともできる。例えば、図2Bは、変形例による装飾シート1Aの断面図であり、表面保護層40は省かれている。
【0075】
印刷部20Aが設けられる印刷領域10Aと、印刷領域10Aの外側の周辺領域10Bとが、基材10上に設けられる。印刷部20Aは紫外線硬化型インクを含み、紫外線硬化型インクジェット印刷によって形成される。印刷部20Aは、例えば、3次元形状を有し、オーバーラミネートフィルム30は、印刷部20Aの3次元形状に追従した3次元形状を有する。印刷領域10A上の基材10の表面10Pからのオーバーラミネートフィルム30の高さH1は、周辺領域10Bにおける基材10の表面10Pからのオーバーラミネートフィルム30の高さH2と比べて高い。例えば、基材10及び印刷部20Aに積層されるオーバーラミネートフィルム30の表面粗さRzは、約10μm以上である。
【0076】
装飾シート製造方法
次に、装飾シート1Aの製造方法の一例についての説明が与えられる。図3は、装飾シート製造装置の一例を概略的に示す図である。例えば、装飾シート製造装置50は、基材10上に印刷部20Aを形成するためのインクジェット印刷装置60と、基材10上にオーバーラミネートフィルム30を設けるための積層装置70とを設けられる。
【0077】
インクジェット印刷装置60は、紫外線硬化型インクジェット印刷装置である。具体的には、紫外線硬化型インクジェット印刷装置として、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を使用することができる。
【0078】
積層装置70は、ロールツーロール適用装置である。具体的には、ロールツーロール適用装置として、ラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用することができる。例えば、ロールツーロール適用装置は、基材10の巻き出しを実行する基材巻き出しロール71と、基材10の巻き取りを実行する基材巻き取りロール72と、オーバーラミネートフィルム30の巻き出しを実行するオーバーラミネートフィルム巻き出しロール73と、オーバーラミネートフィルム30の剥離ライナー13の巻き取りを実行する剥離ライナー巻き取りロール74と、基材10上にオーバーラミネートフィルム30を適用するための2つのニップローラー75、すなわち、第1のニップローラー75A及び第2のニップローラー75Bとを有する。
【0079】
最初に、装飾シート製造装置50は、基材巻き出しロール71から基材10を巻き出し、インクジェット印刷装置60は、インクジェット印刷と、後続の紫外線照射プロセス(印刷プロセス)を実行することによって、印刷部20Aを形成する。次に、積層装置70はオーバーラミネートフィルム巻き出しロール73からオーバーラミネートフィルム30を巻き出し、印刷部20Aを形成した基材10に対してニップローラー75を用いて結合されるようにオーバーラミネートフィルム30を積層する(積層プロセス)。オーバーラミネートフィルム30の剥離ライナー33は、ニップローラー75を用いて基材10に結合する前に剥離される。剥離された剥離ライナー33は、剥離ライナー巻き取りロール74によって巻き取られる。装飾シート製造装置50は、基材巻き取りロール72を用いて、オーバーラミネートフィルム30が結合された基材10を巻き取る。
【0080】
積層するステップにおいて、オーバーラミネートフィルムは加熱された状態で積層される。具体的には、必要に応じて、ニップローラー75のうちの、オーバーラミネートフィルム30に接触する第1のニップローラー75Aが、例えば、約35℃~約85℃の温度範囲において加熱される。第1のニップローラー75Aがその温度範囲において加熱されるとき、オーバーラミネートフィルム30の可撓性が改善され、その3次元形状が、印刷部20Aの3次元形状に追従して形成される傾向がある。基材10の巻き出し及び巻き取り速度、つまり積層速度は、例えば、毎分約30cm~毎分約60cmである。
【0081】
第2の実施形態
図4は、第2の実施形態による装飾シートの一例であり、図2のII-II線に沿った概略的な断面図である。図4において、視認するのを容易にするために、幅方向の寸法に対する厚さ方向の寸法は、実際の形状よりも厚くなるように示されている。第2の実施形態による装飾シート1Bは、第1の実施形態の装飾シート1Aと同じ要素及び構造を与えられる。したがって、以下の説明は、異なる部品に注目しながら行われ、共通の要素及び構造は同じ参照番号を与えられ、詳細な説明は省略される。
【0082】
第2の実施形態による装飾シート1Bは、基材10と、基材10上に設けられる印刷部20Bと、基材10及び印刷部20B上に設けられるオーバーラミネートフィルム30と、必要に応じて表面保護層40とを設けられる。装飾シート1Aの印刷部20Aとは異なり、印刷部20Bは複数の印刷層を設けられる。
【0083】
例えば、複数の印刷層は、第1の印刷層22及び第2の印刷層23を含む。第2の印刷層23は、第1の印刷層22と実質的に同じ平面パターンを有し、第1の印刷層22上に配置される。装飾シート1Bの複数の印刷層22、23において、各印刷層22、23は、互いに実質的に同じ平面パターンを有する。本開示において、「同期」は、各印刷層22及び23が互いに実質的に同じ平面パターンを有することを意味する。各印刷層22、23を同期させることによって、印刷部20Bの3次元形状が顕著になり、特に、基材10からの高さ方向における形状が更に強調される。
【0084】
本実施形態において、第1の印刷層22は着色された紫外線硬化型インクを含み、着色された印刷層である。第1の印刷層22に対して、第2の印刷層23は透過的な紫外線硬化型インクを含む。第1の印刷層22は、少なくとも第2の印刷層23と比べて透明性が低く、印刷部20Bの色又はパターンに独立して影響を与えるカラー機能を優先させる層であり、カラー層の一例である。第2の印刷層23は、少なくとも、第1の印刷層22の透明性より高い透明性を有する。第2の印刷層23は、3次元形状が顕著になるように印刷部20Bの厚さを厚くする層であり、3次元形状機能を優先させる層である。第2の印刷層23は、立体形成層の一例である。
【0085】
本実施形態において、第1の印刷層22はカラー層の一例であり、第2の印刷層23は立体形成層の一例であるが、第1の印刷層22を立体形成層とすることができ、第2の印刷層23をカラー層とすることができる。第1の印刷層22の厚さは、第2の印刷層23の厚さと実質的に同じにすることができる。第1の印刷層22の厚さは、第2の印刷層23の厚さと比べて厚くすることができ、薄くすることもできる。
【0086】
第3の実施形態
図5は、第3の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。図5では、視認するのを容易にするために、幅方向の寸法に対する厚さ方向の寸法は、実際の形状よりも厚くなるように示されている。第3の実施形態による装飾シート1Cは、第1の実施形態の装飾シート1A又は第2の実施形態の装飾シート1Bと同じ要素及び構造を与えられる。したがって、以下の説明は、異なる部品に注目しながら行われ、共通の要素及び構造は同じ参照番号を与えられ、詳細な説明は省略される。
【0087】
第3の実施形態による装飾シート1Cは、基材10と、基材10上に設けられる印刷部20Cと、基材10及び印刷部20B上に設けられるオーバーラミネートフィルム30とを設けられ、必要に応じて、表面保護層40を設けられる。装飾シート1Aの印刷部20Aとは異なり、印刷部20Cには複数の印刷層を設けられる。
【0088】
例えば、複数の印刷層は、第1の印刷層24及び第2の印刷層25を含む。第2の印刷層25は、第1の印刷層24とは異なる平面パターンを有し、第1の印刷層24上に配置される。装飾シート1Cの複数の印刷層24、25において、各印刷層24、25は、互いに異なる平面パターンを有する。本開示において、「非同期」は、各印刷層24及び25が互いに異なる平面パターンを有することを意味する。各印刷層24及び25が非同期である場合、例えば、第2の印刷層25において、第1の印刷層24によって表される外観情報に完全には関連しない形状情報を与えることができる。例えば、第1の印刷層24にグレインパターンを表現することができ、第2の印刷層25には、そのグレインパターンと無関係にデザイン、会社ロゴ等を表現することができる。
【0089】
本実施形態において、第1の印刷層24は、透過的な紫外線硬化型インクを含む印刷層である。第1の印刷層24に対して、第2の印刷層25は着色された紫外線硬化型インクを含み、着色された印刷層である。第1の印刷層24は、少なくとも第2の印刷層25の透明性よりも高い透明性を有する。第1の印刷層24は、3次元形状が顕著になるように印刷部20Cの厚さが厚くされる層であり、3次元形状機能を優先させる層である。第1の印刷層24は、立体形成層の一例である。第2の印刷層25は、少なくとも第1の印刷層24と比べて透明性が低い層であり、印刷部20Cの色又はパターンに独立して影響を与えるカラー機能を優先させる。第2の印刷層25は、カラー層の一例である。
【0090】
本実施形態において、第1の印刷層24は立体形成層の一例であり、第2の印刷層25はカラー層の一例であるが、第1の印刷層24をカラー層とすることができ、第2の印刷層25を立体形成層とすることができる。第1の印刷層24の厚さは、第2の印刷層25の厚さと実質的に同じにすることができる。第1の印刷層24の厚さは、第2の印刷層25の厚さと比べて厚くすることができ、薄くすることもできる。
【0091】
第4の実施形態
図6は、第4の実施形態による装飾シートの一例であり、図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。図6では、視認するのを容易にするために、幅方向の寸法に対する厚さ方向の寸法は、実際の形状よりも厚くなるように示されている。印刷部を除き、第4の実施形態による装飾シート1Dは、第3の実施形態の装飾シート1Cと同じである。したがって、以下の説明は、異なる部品に注目しながら行われ、共通の要素及び構造は同じ参照番号を与えられ、詳細な説明は省略される。
【0092】
第4の実施形態による装飾シート1Dの第1の印刷層24は、着色された紫外線硬化型インクを含み、着色された印刷層である。第1の印刷層24に対して、第2の印刷層25は、透過的な紫外線硬化型インクを含む印刷層である。第1の印刷層24は、少なくとも第2の印刷層25より低い透明性を有する。第1の印刷層24は、印刷部20Dの色又はパターンに独立して影響を与えるカラー機能を優先させる層である。第2の印刷層25は、カラー層の一例である。第2の印刷層25は、少なくとも第1の印刷層24より低い透明性を有する。第2の印刷層25は、3次元形状が顕著になるように印刷部20Dの厚さが厚くされる層であり、3次元形状機能を優先させる層である。第2の印刷層25Dは、立体形成層の一例である。第1の印刷層24の厚さは、第2の印刷層25の厚さと実質的に同じにすることができる。第1の印刷層24の厚さは、第2の印刷層25の厚さと比べて厚くすることができ、薄くすることもできる。
【実施例
【0093】
以下に、本発明の実施例及び比較例を用いて装飾シートが更に説明されるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明では、説明の便宜上、上記の実施形態に対応する要素又は構造が、図7図8図9及び図10並びに以下に説明される本文において、上記と同じ参照番号を与えられる。
【0094】
実施例において、実施例におけるオーバーラミネートフィルムの形成において使用されるポリマー組成物、架橋剤、顔料及び粘着付与剤が表1に示される。以下の説明において、「部分」及び「パーセント」は、特に明記しない限り、質量を指している。
【0095】
【表1】
表1に記載される各略語は、以下のそれぞれの材料を示す。
MA:メチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
Vac:酢酸ビニル
AN:アクリロニトリル
2MBA:2メチルブチルアクリレート
IOA:イソオクチルアクリレート
MIBK:メチルイソブチルケトン
【0096】
接着層の損失係数tanδの測定条件
実施例において使用されるオーバーラミネートフィルムの接着層の損失係数tanδのピーク温度を、ARES動的粘弾性測定装置(T.A計器ジャパン社製、日本国東京都品川区)を用いて測定した。接着剤を、約3mmの乾燥厚を有するフィルムに形成し、フィルムを打ち抜くことによって、約7.9mmの直径を有する試験サンプルを作製した。剪断貯蔵弾性率G’及び剪断損失弾性率G”を剪断モードで1.0Hzの周波数で測定することにより、損失係数tanδのピーク温度(=剪断損失弾性率G”/剪断貯蔵弾性率G’)を得たが、その間、温度は、-20℃から150℃まで5.0℃/秒の温度上昇速度で上昇した。
【0097】
印刷部、接着層の厚さ及び表面粗さ(Ra、Rz)の測定条件
印刷部、オーバーラミネートフィルム、及び接着層のそれぞれの厚さは、厚さ測定装置ABSデジマックインジケータID-CX直立ゲージ(ミツトヨ社製)を用いて測定した。測定器具とプローブとの間に挿入された試験サンプルを測定し、各厚さを得た。表面粗さは、表面粗さ測定装置HANDYSURF E-35A(東京精密社製)を用いて測定した。試験サンプル上に配置されたピックアップ部の表面粗さ(Ra、Rz)を得た。
【0098】
実施例1
装飾シート1Aの基材10(図7及び図8を参照)は、グラフィックフィルム11、接着層12及び剥離ライナー13を設けられる。グラフィックフィルム11として、Controltuck(商標)グラフィックフィルムIJ180-10(3M社製)を使用した。グラフィックフィルムIJ180-10は、白色装飾接着シートである。
【0099】
印刷部20Aは、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を用いて、グラフィックフィルム11上にA4サイズ(垂直297mm、水平210mm)の領域内に形成した。インクとしてインクジェットプリンタ用の紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)を使用した。図7及び図8に示されるような炭素繊維織物パターンをグラフィックフィルム11上に印刷した。炭素繊維織物パターンは、縦方向に1.5mm、横方向に1.5mmの間隙を有する格子状であった。線の幅方向の格子線上に、0%~100%~0%のインク濃度を有する濃淡を与えた。描画解像度は、720×600dpiであった。この印刷方法では、副走査方向において16回単一方向に進むことによって印刷を実行した。紫外線照射レベルは高レベルであった。重ね合わせ印刷を実行し、全部で3回印刷することによって、厚さ21μmの印刷部20Aを形成した。
【0100】
以下の条件下でフィルム層及び接着層をそれぞれ作製した後に、結合することによってオーバーラミネートフィルム30を得た。ナイフコータを用いて、PETフィルム(Teijin Dupont Films社、Teijin Tetron FilmG2(商品名)の剥離処理を施した表面上に3M社製青色軟質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂溶液JS16104ORGをコーティングし、その後、乾燥させることによって、厚さ50μmのオーバーラミネートフィルムのフィルム層を得た。
【0101】
次に、以下の条件下で接着層を作製した。顔料1、アミノ基含有(メタ)アクリルポリマー1(HAP1)、及びMIBKを混合することによって、白色顔料分散液を調製した。顔料1とHAP1との質量比は固形分に換算して5:1であった。白色顔料分散液の固形分は約66%であった。白色顔料分散液と粘着性ポリマー1(ADH1)と架橋剤1(CL1)とを混合することによって白色接着剤溶液を調製した。各成分の使用量は、質量比で、ADH1が100、HAP1が8、顔料1が40であった。白色接着剤溶液にCL1を添加した。CL1は、質量比で、ADH1が100に対して0.1であった。白色接着剤溶液を、ナイフコータを用いて、片面シリコーン処理両面ポリエチレン積層剥離シート上にコーティングした。塗布層を95℃で5分間乾燥させて、30μmの厚さを有する白色粘着層31を得た。接着層のtanδのピーク温度は-5℃であった。
【0102】
ロールツーロール適用装置としてラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用し、オーバーラミネートフィルム30を基材10に結合(積層)した。オーバーラミネートフィルム30に接触している第1のニップローラー75Aを65℃に加熱し、積層速度は毎秒約35cmであった。基材10の表面に対する印刷領域10A上のオーバーラミネートフィルム30の高さは、周辺領域10B上のオーバーラミネートフィルム30の高さと比べて高く、高さの差は最大21μmであった。
【0103】
基材10及び印刷部20A上に積層されたオーバーラミネートフィルム30の表面粗さRaは4.6μmであり、表面粗さRzは20.9μmであった。オーバーラミネートフィルム30の表面粗さの変化率Ra(ratio)は557%であった。
【0104】
実施例2
印刷部の印刷回数が3~4であり、印刷部の厚さが28μmである以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。
【0105】
実施例3
オーバーラミネートフィルムが黒色低光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムの接着層が透過的であること以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1と同じようにしてオーバーラミネートフィルムのフィルム層を作製した。接着層として、白色顔料分散液を使用することなく、質量比でADH1が100、及びCL1が0.1のみを混合した接着剤溶液を使用した。
【0106】
実施例4
印刷部への印刷回数が3~4であり、印刷部の厚さが28μmであり、実施例3のオーバーラミネートフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。
【0107】
実施例5
実施例3のオーバーラミネートフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。
【0108】
実施例6
印刷部への印刷回数が3~4であり、印刷部の厚さが28μmであり、実施例5のオーバーラミネートフィルムを使用したこと以外は、実施例1とおおむね同じようにして装飾シートを作製した。
【0109】
実施例7
表面保護層を設けられた実施例3のオーバーラミネートフィルムと同様に黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδピーク温度が-7℃であり、オーバーラミネートフィルムの接着層が透過的であること以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色顔料分散液を使用することなく、質量比でADH2が100、及びCL2が0.2を混合することにより、オーバーラミネートフィルムの接着層に接着剤溶液を使用した。フッ素樹脂を含む表面保護材CC-2SOL(3M社製)をコーティングした後、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは、約2μmであった。
【0110】
実施例8
印刷部への印刷回数が3~4であり、印刷部の厚さが28μmであり、実施例7と同じオーバーラミネートフィルム及び表面保護層を使用したこと以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。
【0111】
表2及び表3は、装飾シートの製造条件、装飾シートの構成、オーバーラミネートフィルムの測定結果、及び実施例1~実施例8における鮮明度の評価結果を示す表である。鮮明度評価は、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有するか否かを評価することを意味する。表2は、実施例1~実施例4を示し、表3は実施例5~実施例8を示す。鮮明度評価において、装飾シートの印刷部によって形成された縞の数に関して、生成された数と視覚的に認識可能な数が一致するか否かが調査され、数が一致するとき、「A」と評価される。すなわち、鮮明度評価は、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有するか否かを評価することを意味する。実施例1~実施例8において、鮮明度評価は全て「A」であり、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有することが示された。印刷領域上の基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さは、周辺領域における基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さと比べて高く、表1及び表2において、高さの差は「フィルム高差ΔH(μm)」(本明細書において以下、本明細書と同様)と表される。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
実施例9
装飾シートの基材として、Scotchcal(商標)透明グラフィックフィルムIJ8150(3M社製)を使用した。透明グラフィックフィルムIJ8150は透過的な装飾接着シートである。実施例9では、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を用いて、グラフィックフィルム上にA4サイズ(垂直297mm、水平210mm)の領域内に印刷部を形成した。印刷部分は、3Mのロゴデザインを表すように形成される。ロゴサイズは垂直7mm、水平15mmであった。インクとして、インクジェットプリンタ用の紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)を使用した。インク濃度はマゼンタ100%及びイエロー100%であった。描画解像度は、720×600dpiであった。この印刷方法では、副走査方向において16回単一方向に進むことによって印刷を実行した。紫外線照射レベルは高レベルであった。2回印刷することによって、厚さ28μmの印刷部を形成した。
【0115】
オーバーラミネートフィルムは実施例1と同じであり、厚さ50μmの青色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)と、厚さ30μmの白色粘着層とを含むフィルムである。実施例9では、ロールツーロール適用装置としてラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用し、基材にオーバーラミネートフィルムを接着(積層)した。オーバーラミネートフィルムに接触する第1のニップローラーは65℃に加熱し、積層速度は毎秒約35cmであった。基材及び印刷部に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さRaは4.2μmであり、表面粗さRzは23.4μmであった。オーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)は740%であった。
【0116】
実施例9では、装飾シートを上側(前側)から見たとき、及び下側(裏側)から見たときである。印刷部によって構成される文字及び図形を視覚的に認識することができる。下側(裏側)から見るときの文字及び図形と比べて、装飾シートを表側(前側)から見たときの文字や図において、文字や図形の左右が反転されたように見える鏡像外観の画像効果が確認される。
【0117】
実施例10
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μm、接着層の厚さが40μmであり、溶剤インクジェット印刷を、溶剤インク用JV5純正インク(ミマキエンジニアリング社製)を用いてオーバーラミネートフィルム上で実行すること以外は、実施例9と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂溶液0025-10ORGを使用したこと以外は、実施例1と同じようにしてオーバーラミネートフィルムのフィルム層を作製した。
【0118】
実施例10では、装飾シートを上側(前側)から見たとき、及び下側(後側)から見たときである。印刷部によって構成される文字及び図形を視覚的に認識することができる。下側(裏側)から見るときの文字及び図形と比べて、装飾シートを表側(前側)から見たときの文字や図において、文字や図形の左右が反転されたように見える鏡像外観の画像効果が確認される。印刷領域上の基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さは、周辺領域の基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さと比べて高いので、印刷領域上に配置されたオーバーラミネートフィルムが、溶剤インクジェット印刷による偽造防止のためのセキュリティマークを形成することができた。
【0119】
表4は、実施例9及び実施例10における、装飾シートの製造条件、装飾シートの構成、オーバーラミネートフィルムの測定結果及び鮮明度の評価結果を示す表である。実施例9及び実施例10によるオーバーラミネートフィルムの鮮明度は良好であり、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有することを評価することができた。
【0120】
【表4】
【0121】
実施例11
Scotchcal(商標)透明グラフィックフィルムIJ8150(3M社製)を基材として使用した。グラフィックフィルムIJ8150は透過的な装飾接着シートである。実施例11では、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を用いて、グラフィックフィルム上にA4サイズ(垂直297mm、水平210)の領域内に印刷部を形成した。この印刷部上に、径方向傾斜設計を有するカラー層を形成した。カラー層のインク濃度は、0%~100%のシアン、0%~100%のマゼンタ、0%~100%のイエローの濃淡で与え、印刷回数は1回であった。インクとして、インクジェットプリンタ用の紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)を使用した。描画解像度は、720×600dpiであった。この印刷方法では、副走査方向において16回単一方向に進むことによって印刷を実行した。紫外線照射レベルは高レベルであった。
【0122】
実施例11では、立体形成層をカラー層上に積層した。立体形成層は、図7及び図8に示されるような炭素繊維織物パターンを有する。炭素繊維織物パターンの格子をそれぞれ構成する正方形(垂直1.5mm、水平1.5mm)内に縞模様線を設け、線の幅方向のインク濃度は0%~100%~0%の濃淡で与えた。炭素繊維織物パターンの格子を単一の透明インクを用いて印刷し、印刷回数は3回であった。カラー層と立体形成層とを組み合わせる印刷部の厚さは、30μmであった。
【0123】
表5は、実施例11において使用した透明インクに含まれる材料の名前、及び透明インク内の各材料によって占められる質量%を示す表である。
【0124】
【表5】
【0125】
表5において、9740i及び9801は、紫外線硬化型インク(3M社製)である。TPOは、光重合開始剤の2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製)である。
【0126】
オーバーラミネートフィルム30は、実施例10と同じ白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルムであった。しかしながら、オーバーラミネートフィルム30の厚さは47μmに調整した。オーバーラミネートフィルム30の接着層31として、実施例1と同じ厚さ30μmを有する白色粘着層を使用した。実施例11では、溶剤インクジェットプリンタ(ミマキエンジニアリング社製)用のJV5純正インクを用いて、オーバーラミネートフィルム30上で溶剤インクジェット印刷を実行した。
【0127】
ロールツーロール適用装置及びラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用して、基材上にオーバーラミネートフィルムを結合(積層)した。オーバーラミネートフィルムに接触する第1のニップローラーを65℃に加熱し、積層速度は毎秒約35cmであった。基材及び印刷部上に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さRaは2.6μmであり、表面粗さRzは15.3μmであった。オーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)は767%であった。
【0128】
実施例11では、オーバーラミネートフィルムの高さの差に基づいて外観を確認した。すなわち、印刷領域上のオーバーラミネートフィルムの基材表面に対する高さが、周辺領域におけるオーバーラミネートフィルムの高さと比べて高くなるように外観を確認した。
【0129】
装飾シートを上側(前側)から見るとき、及び下側(裏側)から見るときに、同じ形状及び同じ色を有する印刷部によって構成される文字や図形を視覚的に認識することができる。下側(裏側)から見るときの文字及び図形と比べて、表側(前側)から装飾シートを見たときの文字や図において、文字や図形の左右が反転されたように見える鏡像外観の画像効果も確認される。印刷層は非同期であり、各印刷層が互いに異なる平面パターンを有するため、カラー層によって表される外観情報に全く関係がない形状の情報を与えることにより、立体形成層上の新たな装飾又は外観の印象がもたらされた。
【0130】
実施例12
実施例12による装飾シート1Bの基材10(図10を参照)には、グラフィックフィルム11、接着層12及び剥離ライナー13を設けた。グラフィックフィルム11として、Scotchcal(商標)グラフィックフィルムIJ5331(3M社製)を使用した。グラフィックフィルムIJ180-10は、白色装飾接着シートであった。
【0131】
実施例12では、印刷部20Bを、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を用いて、グラフィックフィルム11上のA4サイズ(垂直297mm、水平210mm)の領域内に形成した。図9及び図10に示されるような、グレインパターンを有するカラー層22を印刷部20B上に形成した。カラー層22のインク濃度は、0%~100%のシアン、0%~100%のマゼンタ、及び0%~100%のイエローの濃淡で与え、印刷回数は1回であった。インクとして、インクジェットプリンタ用の紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)を使用した。描画解像度は、720×600dpiであった。この印刷方法では、副走査方向において16回単一方向に進むことによって印刷を実行した。紫外線照射レベルは高レベルであった。
【0132】
図10に示されるように、カラー層22より高い透明性を有する立体形成層23をカラー層22上に積層した。立体形成層23は、木目パターンを有する。立体形成層23の木目の寸法は、カラー層22内の木目の寸法と同じになるように形成し、2つのカラー層が互いに実質的に同じ平面パターンを有する複数の同期層を形成した。立体形成層23を形成する木目パターンは、単調に変換され、木目導管部が抽出される。カラー層22内の木目パターンは、実施例11と同じ単一の透明インクを使用して印刷し、印刷回数は6回であった。カラー層と立体形成層とを組み合わせる印刷部の厚さは、45μmであった。
【0133】
オーバーラミネートフィルム30は、透明低光沢アクリル樹脂を含むフィルムであった。オーバーラミネートフィルム30の厚さは13μmであった。接着層31として、実施例3と同じ厚さ30μmの透明接着層を使用した。3M社製透明軟質アクリル樹脂溶液C110-SOLを使用したこと以外は実施例1と同様の方法を用いて、アクリル樹脂を含むフィルム層を作製した。フッ素樹脂を含む表面保護材CC-2SOL(3M社製)をコーティングした後、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約4μmであった。
【0134】
実施例12では、溶剤インクジェットプリンタ(ミマキエンジニアリング社製)用のJV5純正インクを用いて、オーバーラミネートフィルム30上で溶剤インクジェット印刷を実行した。オーバーラミネートフィルム層30上に、表面保護層40を設けた。フッ素樹脂を含む表面保護材料CC-2SOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層40を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0135】
ロールツーロール適用装置及びラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用して、基材10上にオーバーラミネートフィルム30を結合(積層)した。オーバーラミネートフィルム30に接触している第1のニップローラー75Aを65℃に加熱し、積層速度は毎秒約35cmであった。基材10及び印刷部20Bに積層されたオーバーラミネートフィルム30の表面粗さRaは7.3μmであり、表面粗さRzは35.7μmであった。オーバーラミネートフィルム30の表面粗さの変化率Ra(ratio)は356%であった。
【0136】
実施例12では、オーバーラミネートフィルム30の高さの差に基づいて外観を確認した。すなわち、印刷領域10A上の基材10の表面からのオーバーラミネートフィルム30の高さが、周辺領域10Bにおける基材10の表面からのオーバーラミネートフィルム30の高さと比べて高い外観が確認される。オーバーラミネートフィルム30上で溶剤インクジェット印刷を実行したので、オーバーラミネートフィルム30上に印刷された文字又は図形を視覚的に認識することができた。印刷層が同期しており、各印刷層22及び23が互いに実質的に同じ平面パターンを有するので、印刷部20Bの3次元形状、特に基材10からの高さ方向における形状が更に強調される。印刷領域10A上に配置されたオーバーラミネートフィルム30は、溶剤インクジェット印刷による偽造防止のためのセキュリティマークを形成することができた。
【0137】
実施例13
カラー層が立体形成層に積層されること以外は、実施例12と同じ条件下で装飾シートを作製した。実施例13では、実施例12とは異なり、立体形成層をカラー層上に積層した。立体形成層は、木目パターンを有する。立体形成層を形成する木目の寸法は、カラー層の木目の寸法と同じになるように形成し、カラー層と立体形成層とが互いに実質的に同じ平面パターンを有する複数の同期層を形成した。立体形成層を形成する木目パターンは、単調に変換され、木目導管部が抽出される。立体形成層を形成する木目パターンは、実施例11と同じ単一の透明インクを用いて印刷し、印刷回数は3回であった。印刷部上に、木目模様を有するカラー層を形成した。カラー層の印刷回数は2回であった。カラー層と立体形成層とを組み合わせる印刷部の厚さは、25μmであった。
【0138】
実施例13では、立体形成層をカラー層上に積層したが、印刷層は同期しており、各印刷層が互いに実質的に同じ平面パターンを有し、印刷部の3次元形状、特に基材からの高さ方向における形状が更に強調された。外観を、オーバーラミネートフィルムの高さの差に基づいて確認した。すなわち、印刷領域上の基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さが、周辺領域における基材表面からのオーバーラミネートフィルムの高さに比べて高い外観が確認される。
【0139】
表6は、実施例11~実施例13における装飾シートの製造条件、装飾シートの構成、及びオーバーレイフィルムの測定結果を示す表である。実施例11~実施例13のオーバーレイフィルムの鮮明度は良好であり、オーバーレイフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状であったことを評価することができた。
【0140】
【表6】
【0141】
実施例14
実施例14による装飾シートの基材として、Controltac(商標)グラフィックフィルムIJ180-10(3M社製)を使用した。グラフィックフィルムIJ180-10は、白色装飾接着シートであった。実施例14では、インクジェットプリンタUJF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)を用いて、グラフィックフィルム上にA4サイズ(垂直297mm、水平210mm)の領域内に印刷部を形成した。インクとして、インクジェットプリンタ用の紫外線硬化型インクLUS-200(3M社製)を使用した。炭素繊維織物パターンをグラフィックフィルム上に印刷し、炭素繊維織物パターンは縦方向に1.5mm、横方向に1.5mmの間隙を有する格子状であった。線の幅方向の格子線上に、0%~100%~0%のインク濃度を有する濃淡を与えた。描画解像度は、720×600dpiであった。この印刷方法では、副走査方向において16回単一方向に進むことによって印刷を実行した。紫外線照射レベルは高レベルであった。印刷を3回重ね合わせることによって、厚さ21μmの印刷部を形成した。
【0142】
オーバーラミネートフィルムとして、透明高光沢アクリル樹脂を含むフィルムを使用した。オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さは50μmであった。接着層31として、実施例3と同じ厚さ30μmの透明接着層を使用した。3M社製の透明軟質アクリル樹脂溶液B75-SOLを使用したこと以外は、実施例1と類似の方法を用いてアクリル樹脂を含むフィルム層を作製した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0143】
実施例14では、ロールツーロール適用装置としてラミネーターAE-1600(ACCOブランズジャパン社製)を使用し、オーバーラミネートフィルムを基材に結合した。オーバーラミネートフィルムに接触する第1のニップローラーを65℃に加熱し、積層速度は毎秒約35cmであった。基材及び印刷部に積層されたオーバーラミネートフィルムの表面粗さRaは2.8μmであり、表面粗さRzは12.3μmであった。オーバーラミネートフィルムの表面粗さの変化率Ra(ratio)は180%であった。
【0144】
実施例15
表面保護層が設けられていないこと以外は、オーバーラミネートフィルムは透過的な高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-17℃であり、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の透明軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1900ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて透明高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。白色顔料分散液を使用することなく、質量比で、ADH3が100、CL3が2.8のみを混合することによって接着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1と類似の方法を用いて、接着層を作製した。
【0145】
実施例16
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが70μmであり、接着層の色が銀である、接着層のtanδのピーク温度が-17℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液0025-10ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。接着層として、白色顔料分散液を使用することなく、質量比で、ADH3が100、顔料2が5.7、CL3が2.8を混合することによって接着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて接着層を作製した。
【0146】
実施例17
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが透過的な高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-7℃あること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の透明軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1900ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて透明高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。接着層は、実施例7に類似の方法を用いて作製した。
【0147】
実施例18
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が灰色であり、接着層のtanδのピーク温度が-7℃あること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例17と同じ接着層を使用した。
【0148】
実施例19
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が灰色であり、接着層のtanδのピーク温度が-7℃であること以外は、実施例1と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例17と同じ接着層を使用した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0149】
実施例20
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が灰色であり、接着層のtanδのピーク温度が-7℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例17と同じ接着層を使用した。
【0150】
実施例21
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層の色が灰色であり、接着層のtanδのピーク温度が-7℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例17と同じ接着層を使用した。
【0151】
実施例22
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-14℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。白色顔料分散液を使用することなく、質量比で、ADH4が100、及びCL2が0.2を混合することによって接着剤溶液を調製したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて接着層を作製した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0152】
実施例23
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-14℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例22と同じ接着層を使用した。
【0153】
実施例24
表面保護層が設けらず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-14℃である以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例22と同じ接着層を使用した。
【0154】
実施例25
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層のtanδのピーク温度が-14℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例22と同じ接着層を使用した。
【0155】
実施例26
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-6℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。質量比で、ADH5が100、及びCL2が0.15を使用したこと以外は、実施例22に類似の方法を用いて接着層を作製した。
【0156】
実施例27
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-6℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例26と同じ接着層を使用した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0157】
実施例28
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-6℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例26と同じ接着層を使用した。
【0158】
実施例29
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層のtanδのピーク温度が-6℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例26と同じ接着層を使用した。
【0159】
実施例30
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が白色であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例1と同じ接着層を使用した。
【0160】
実施例31
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が白色である以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例1と同じ接着層を使用した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0161】
実施例32
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層の色が白色であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例1と同じ接着層を使用した。
【0162】
実施例33
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層の色が白色であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。実施例1と同じ接着層を使用した。
【0163】
実施例34
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色、積層温度85℃あること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例11と同じフィルム層を使用した。
【0164】
実施例35
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色、積層温度75℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例34と同じフィルム層を使用した。
【0165】
実施例36
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色であり、積層温度が65℃である以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例34と同じフィルム層を使用した。
【0166】
実施例37
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色であり、積層温度が55℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例34と同じフィルム層を使用した。
【0167】
実施例38
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色であり、積層温度が45℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例34と同じフィルム層を使用した。
【0168】
実施例39
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが47μmであり、接着層の色が白色、積層温度が35℃であること以外は、実施例14と同様に装飾シートを作製した。具体的には、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)及び接着層を含む、実施例34と同じフィルム層を使用した。
【0169】
比較例1
オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層のtanδのピーク温度が-22℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。着色顔料分散液を使用することなく、質量比で、ADH6が100と、CL3が3.6とを混合することによって接着剤溶液が調製したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて接着層を作製した。ポリウレタン樹脂から形成される表面保護材料SCLSOL(3M社製)をコーティングした後に、乾燥させることによって表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは約2μmであった。
【0170】
比較例2
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-22℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。比較例1と同じ接着層を使用した。
【0171】
比較例3
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、接着層のtanδのピーク温度が-22℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。比較例1と同じ接着層を使用した。
【0172】
比較例4
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが86μmであり、接着層のtanδのピーク温度が-22℃であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の黒色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1500ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、黒色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。比較例1と同じ接着層を使用した。
【0173】
比較例5
表面保護層が設けられず、オーバーラミネートフィルムが白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)であり、オーバーラミネートフィルムのフィルム層の厚さが100μmであり、接着層の色が白色であること以外は、実施例14と同じようにして装飾シートを作製した。具体的には、3M社製の白色軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液JS1000ORGを使用したこと以外は、実施例1に類似の方法を用いて、白色高光沢の塩化ビニル樹脂(PVC)を含むフィルム層を作製した。比較例1と同じ接着層を使用した。
【0174】
表7~表15は、実施例14~実施例39及び比較例1~比較例5における、装飾シートの製造条件、装飾シートの構成、オーバーラミネートフィルムの測定結果及び鮮明度の評価結果を示す表である。表7は実施例14~実施例17を示し、表8は実施例18~実施例21を示し、表9は実施例22~実施例25を示し、表10は実施例26~実施例29を示し、表11は実施例30~実施例33を示し、表12は実施例34~36を示し、表13は、実施例37~実施例39を示す。表14は比較例1~比較例4を示し、表15は比較例5を示す。鮮明度評価では、装飾シートの印刷部によって形成される縞の数に関して、生成された数と視覚的に認識可能な数とが一致しているか否かを調査した。数が一致する場合、「A」と評価され、数が一致しない場合、「B」を評価される。
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】
【表10】
【0179】
【表11】
【0180】
【表12】
【0181】
【表13】
【0182】
【表14】
【0183】
【表15】
【0184】
表7~表15の実施例14~実施例39、比較例1~比較例5の結果から、実施例14~実施例39のオーバーラミネートフィルムの鮮明度が良好であり、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有すると評価することができた。一方、比較例1~比較例5によるオーバーラミネートフィルムの鮮明度は良好であったということはできず、オーバーラミネートフィルムが印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有すると評価することはできなかった。
【0185】
具体的には、例えば、比較例1~比較例5では、接着層のtanδのピーク温度は-22℃であり、-20℃より低い温度であり、結果として、鮮明度の評価は「B」と指示される。比較例1~比較例5において、オーバーラミネートフィルムの厚さが100μmであり、結果として、鮮明度の評価は「B」と指示された。すなわち、接着層のtanδのピーク温度が-20℃未満であるとき、又はオーバーラミネートフィルムの厚さが100μmであるとき、少なくとも装飾シートの印刷部によって形成される縞の数に関して、生成される数及び視覚的に認識可能な数が一致せず、鮮明度が低下することが示される。表面粗さの変化率Ra(ratio)は100%未満であり、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有していなかったことが示された。
【0186】
具体的には、実施例34~実施例39の結果から、積層温度が35℃~85℃の温度範囲にあるとき、鮮明度の評価は「A」と指示された。すなわち、オーバーラミネートフィルムは、印刷部の3次元形状に追従した3次元形状を有することが示された。
参照符号リスト
【0187】
1A、1B、1C、1D 装飾シート
10 基材
10A 印刷領域
10B 周辺領域
10P 表面
20A、20B、20C、20D 印刷部
22 第1の印刷層
23 第2の印刷層
30 オーバーラミネートフィルム
40 表面保護層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10