(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】移植片及び移植片を含む外科的修復アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20220609BHJP
A61F 2/40 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61F2/08
A61F2/40
(21)【出願番号】P 2019536020
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 US2017068622
(87)【国際公開番号】W WO2018128900
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597117606
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーニー ジュニア、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュミーディング、 ラインホルト
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-517638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361155(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0249833(US,A1)
【文献】特表2003-513749(JP,A)
【文献】米国特許第07871440(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00 - 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植片であって、
生体移植片と、
前記生体移植片を支持する刺繍布と、
前記生体移植片と前記刺繍布とを互いに取り付ける縫合糸と
を含
み、
前記移植片は、第1の端部領域と第2の端部領域とを有し、
前記移植片の前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域において、前記刺繍布はより太い糸又はより密な織り方によって補強されて補強部を形成する、移植片。
【請求項2】
前記刺繍布はポリエステルから形成される、請求項1に記載の移植片。
【請求項3】
前記刺繍布は、それらの間に間隙を有するポリエステル糸から形成される、請求項1に記載の移植片。
【請求項4】
前記生体移植片は自家移植片である、請求項1に記載の移植片。
【請求項5】
前記生体移植片及び前記刺繍布はそれぞれ四辺形の形状を有する、請求項1に記載の移植片。
【請求項6】
前記移植片は、
前記第1の端部領域における第1の幅と、
前記第2の端部領域における第2の幅と、前記第1の端部領域と前記第2の端部領域との間に延びる長さとを有し、前記第1の幅は前記第2の幅より大きい、請求項1に記載の移植片。
【請求項7】
前記移植片の前記第1の端部領域は、上腕骨の穴に受け入れられる縫合糸アンカーと少なくとも1つの縫合テープとを用いて前記上腕骨に取り付けられる、請求項6に記載の移植片。
【請求項8】
前記移植片の前記第2の端部領域は、肩甲骨の関節窩の穴に受け入れられる縫合糸アンカーと少なくとも1つとを用いて前記関節窩に取り付けられる、請求項6に記載の移植片。
【請求項9】
前記第1の端部
領域は上腕骨に取り付けられ、前記第2の端部領域は肩甲骨の関節窩に取り付けられる、請求項6に記載の移植片。
【請求項10】
前記刺繍布及び前記生体移植片は同じ形状及び同じサイズを有する、請求項1に記載の移植片。
【請求項11】
前記刺繍布と前記生体移植片とを互いに取り付ける前記縫合糸は、前記移植片の各角に配置される、請求項1に記載の移植片。
【請求項12】
前記刺繍布と前記生体移植片とを互いに取り付ける前記縫合糸は、前記移植片の各角の間に配置される、請求項11に記載の移植片。
【請求項13】
外科的修復アセンブリであって、
生体移植片と、前記生体移植片を支持する刺繍布と、前記生体移植片と前記刺繍布とを互いに取り付ける縫合糸とを含む移植片であって、第1の端部領域と第2の端部領域とを有する移植片と、
第1の骨に受け入れられる第1の縫合糸アンカーと、
第2の骨に受け入れられる第2の縫合糸アンカーと
を含み、
第1の縫合糸が前記移植片の第1の端部領域を前記第1の縫合糸アンカー及び前記第1の骨に固定し、
第2の縫合糸が前記移植片の第2の端部領域を前記第2の縫合糸アンカー及び前記第2の骨に固定
し、
前記移植片の前記第1の端部領域及び前記第2の端部領域において、前記刺繍布はより太い糸又はより密な織り方によって補強されて補強部を形成する、外科的修復アセンブリ。
【請求項14】
前記第1の骨は上腕骨であり、前記第2の骨は肩甲骨の関節窩である、請求項
13に記載の外科的修復アセンブリ。
【請求項15】
前記刺繍布はポリエステルから形成される、請求項
13に記載の外科的修復アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月4日に出願された米国特許出願第15/398,018号に対する優先権を主張する。
【0002】
肩関節は、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭との間に画定される。上方関節包再建(SCR)術では、生体移植片を用いて肩関節の回旋腱板の断裂を修復する。
【0003】
損傷後の肩関節内の安定性を回復するために、上腕骨及び肩甲骨の関節窩にまたがって回旋腱板を修復するように真皮同種移植片を使用することができる。しかしながら、皮膚同種移植片は広く利用可能ではない。自家移植組織は代替的な選択肢であるが、それは真皮同種移植片ほど強くない。これを補うために、より大きい自家移植組織を用いて更なる強度を提供することができる。しかしながら、より多くの組織が必要とされるので、これにより患者のドナー部位の罹患率も増大する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
移植片が生体移植片を含む。刺繍布が生体移植片を支持する。縫合糸が、生体移植片と刺繍布とを互いに取り付ける。
【0005】
一実施形態において、刺繍布はポリエステルから形成される。
【0006】
別の実施形態において、刺繍布は、それらの間に間隙が配置されたポリエステル糸から形成される。
【0007】
別の実施形態において、生体移植片は自家移植片である。
【0008】
別の実施形態において、生体移植片及び刺繍布はそれぞれ四辺形の形状を有する。
【0009】
別の実施形態において、移植片は、第1の端部領域における第1の幅と、第2の端部領域における第2の幅と、第1の端部領域と第2の端部領域との間に延びる長さとを有し、第1の幅は第2の幅より大きい。
【0010】
別の実施形態において、移植片の第1の端部領域は、上腕骨の穴に受け入れられる縫合糸アンカーと少なくとも1つの縫合テープとを用いて上腕骨に取り付けられる。
【0011】
別の実施形態において、移植片の第2の端部領域は、肩甲骨の関節窩の穴に受け入れられる縫合糸アンカーと少なくとも1つとを用いて関節窩に取り付けられる。
【0012】
別の実施形態において、第1の端部は上腕骨に取り付けられ、第2の端部領域は肩甲骨の関節窩に取り付けられる。
【0013】
別の実施形態において、刺繍布及び生体移植片は同じ形状及び同じサイズを有する。
【0014】
別の実施形態において、刺繍布と生体移植片とを互いに取り付ける縫合糸は、移植片の各角に配置される。
【0015】
別の実施形態において、刺繍付き布地と生体移植片とを互いに取り付ける縫合糸は、移植片の各角の間に配置される。
【0016】
別の実施形態において、移植片の第1の端部領域及び第2の端部領域はそれぞれ、より太い糸又はより密な織り方によって形成された補強部である。
【0017】
別の実施形態において、外科的修復アセンブリは生体移植片を含む移植片を含む。刺繍布が生体移植片を支持する。縫合糸が、生体移植片と刺繍布とを互いに取り付ける。移植片は第1の端部領域と第2の端部領域とを有する。第1の縫合糸アンカーが第1の骨に受け入れられる。第1の縫合糸が、移植片の第1の端部領域を第1の縫合糸アンカー及び第1の骨に固定する。第2の縫合糸アンカーが第2の骨に受け入れられる。第2の縫合糸が、移植片の第2の端部領域を第2の縫合糸アンカー及び第2の骨に固定する。
【0018】
別の実施形態において、第1の骨は上腕骨であり、第2の骨は肩甲骨の関節窩である。
【0019】
別の実施形態において、刺繍布はポリエステルから形成される。
【0020】
別の実施形態において、移植片の第1の端部領域及び第2の端部領域はそれぞれ、より太い糸又はより密な織り方によって形成された補強部である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連して考慮されるときに以下の詳細な説明を参照することによって理解することができる。
【
図1】刺繍布によって支持される生体移植片を含む移植片の底面図を概略的に示す。
【
図3】肩関節に取り付けられた移植片を概略的に示す。
【
図4】補強された縁を有する移植片を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び
図2は、肩を外科的に修復するのに使用される移植片10を概略的に示す。移植片10は、刺繍布14によって支持される生体移植片12を含む。移植片10は硬くはなく、ある程度の弾力性を有する。
【0023】
刺繍布14は、ポリエステル糸16から刺繍されてポリエステルパッチを作り出すことができる。ポリエステル糸16の糸セグメント間に間隙18が画定されている。ポリエステル糸16は任意の太さ又は直径を有することができる。刺繍布14の密度及び模様は様々であり得る。刺繍布14は、密な網目を有し、これは、身体に対する外傷性及び研磨性が少ない。刺繍布14の間隙18は、ポリエステル糸16間の組織の内部成長及び捕捉を促進する。治癒の間、組織は刺繍布14の間隙18内に成長し、さらに刺繍布14を身体に固定することができる。別の実施例において、刺繍布14は織布であることができる。生体移植片12及び刺繍布14は、移植片10の用途、強度及び必要とされる可撓性に応じて、多様な寸法、サイズ、及び厚さを有することができる。
【0024】
自家移植組織などの生体移植片12は、患者又は死体から採取される。一実施例において、生体移植片12及び刺繍布14は両方とも四辺形の形状を有する。移植片10は、約4cm(1.58インチ)の長さLと、約2.5cm(1インチ)の第1の端部領域20における第1の幅W1と、約2.0cm(0.79インチ)の第2の端部領域22における第2の幅W2とを有する。第1の端部領域20の幅W1は、第2の端部領域22の幅W2よりも大きい寸法を有する。
図3に示すように、移植片10の第1の端部領域20は肩の上腕骨24に取り付けられ、移植片10の第2の端部領域22は肩甲骨の関節窩26に取り付けられ、回旋腱板断裂を修復する。
【0025】
刺繍布14は、生体移植片12に取り付けられる。一実施例において、刺繍布14は、縫合糸27によって生体移植片に取り付けられる。刺繍布14は、生体移植片12とほぼ同じ外形、形状、及びサイズを有する。一実施例において、刺繍布14及び生体移植片12は外周で取り付けられる。縫合糸27a、27b、27c、及び27dを移植片10の各角の近傍に配置して、刺繍布14を生体移植片12に固定することができる。角部の間の位置に縫合糸27eを配置して、刺繍布14を生体移植片12にさらに固定することもできる。
【0026】
図4に示すように、一実施例において、移植片10の第1の端部領域20及び第2の端部領域22は、追加の材料で補強されて、それぞれ補強部28及び30を形成する。追加の材料は、移植片10をそれぞれ上腕骨24及び肩甲骨の関節窩26に取り付ける際に、縫合糸36及び38(後述する)が移植片10を通り抜けるのを防ぐために、第1の端部領域20及び第2の端部領域22を補強する。一実施例において、刺繍布14を作成するときに、より太いポリエステル糸16が端部領域20及び22に使用される。別の実施例において、ポリエステル糸16の密度は端部領域20及び22においてより大きい。すなわち、端部領域20及び22は、これらの領域に強度を加えるために、刺繍布14の残りの部分よりも多くのステッチ及び少ない間隙18を含むことができる。
【0027】
図3に戻って、移植片10が準備されると、移植片10の第1の端部領域20は上腕骨24に取り付けられ、移植片10の第2の端部領域22は肩甲骨の関節窩26に取り付けられる。一実施例において、上腕骨24に2つの穴が開けられ、縫合糸アンカー34a及び34bが上腕骨24の各穴に受け入れられる。2つの第1の縫合テープ36aが第1の縫合糸アンカー34aによって上腕骨24に取り付けられ、2つの第2の縫合テープ36bが第2の縫合糸アンカー34bによって上腕骨24に取り付けられる。
【0028】
肩甲骨の関節窩26に2つの穴が開けられ、各穴に縫合糸アンカー(図示せず)が受け入れられる。2つの第1の縫合糸38aが第1の縫合糸アンカーによって肩甲骨の関節窩26に取り付けられ、2つの第2の縫合糸38bが第2の縫合糸アンカーによって肩甲骨の関節窩26に取り付けられる。
【0029】
移植片10が準備されると、2つの縫合テープ36a及び36bが移植片10の第1の端部領域20に通され、2つの縫合糸38a及び38bが移植片10の第2の端部領域22に通される。第1の縫合糸36aの一方と第2の縫合糸36bの一方は互いに取り付けられており、他方の第1の縫合糸36aと他方の第2の縫合糸38bは自由であり、取り付けられていない。第1の縫合糸36a及び第2の縫合糸36bの自由でかつ取り付けられていない糸を引っ張って、移植片10の第2の端部領域22を肩甲骨の関節窩24上に位置決めする。次に、他の第1の縫合糸36aと他の第2の縫合糸36bを結ぶ。
【0030】
移植片10の第1の端部領域20にある第1の縫合テープ36a及び第2の縫合テープ36bは次に、移植片10の第1の端部領域20を上腕骨24に固定するのに使用される。一実施例において、第1の縫合テープ36a及び第2の縫合テープ36bは、強度を増すために十字パターンで配置される。次に、縫合テープ36a及び36aを用いて、移植片10の第1の端部領域20を上腕骨24に固定する。
【0031】
刺繍布14は、生体移植片12を強化し、修復を増強する。刺繍布14は、治癒に十分な長い間、生体移植片をその位置に維持し、治癒が完了する前に移植片10が修復部位から引き離されるのを防ぐ。刺繍布14は、生体移植片12を支持するか又は部分的に支持/荷重分担することができる。刺繍布14は高い荷重を支持し、移植片10が治癒するのを可能にする。移植片10が治癒すると、刺繍布14からの支持はもはや不要である。
【0032】
前述の説明は、本発明の原理の単なる例示である。上記の教示に照らして、本発明の多くの修正及び変形が可能である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態が開示されたので、当業者であれば、一部の修正が本発明の範囲内に入ることを認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は具体的に記載されたものとは別の方法で実施され得ることを理解すべきである。そのため、本発明の真の範囲及び内容を判断するために添付の特許請求の範囲を検討すべきである。