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特許7085562フタロニトリル反応性希釈剤とジフタロニトリル樹脂とを含有する樹脂ブレンド、プリプレグ、及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】フタロニトリル反応性希釈剤とジフタロニトリル樹脂とを含有する樹脂ブレンド、プリプレグ、及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/06 20060101AFI20220609BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20220609BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220609BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
C08G73/06
C08L79/00 Z
C08J5/24 CEZ
C08K5/315
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019551677
(86)(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018018612
(87)【国際公開番号】W WO2018175025
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/475,396
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,157
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ベンジャミン ジェイ.
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0168327(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103756312(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103694191(CN,A)
【文献】"Preparation of self-promoted hydroxy-containing phthalonitrile resins by an in situ reaction",RSC Advances,2015年,Vol.5,p.105038-105046
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00- 73/26
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のフタロニトリル官能基を含む少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂と、を含む樹脂ブレンドであって、前記少なくとも1種の希釈剤が、式Iの化合物:
【化1】
[式中、 、R 、R 、R 、及びR は、H、アリル基、C ~C 20 アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、ただし、、R、R、R、及びRの1つ以上アリル基であり、Aは酸素又は硫黄である]を含む、樹脂ブレンド。
【請求項2】
前記少なくとも1種の希釈剤が、式IIの化合物:
【化2】
[式中、R、R、R、R、R、及びAは各々、式Iに関して定義したとおりである]を含む、請求項1に記載の樹脂ブレンド。
【請求項3】
前記少なくとも1種の希釈剤が、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル、又は4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の樹脂ブレンド。
【請求項4】
少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂の前記少なくとも1種の希釈剤に対するモル比が、0.95~50(両端の値を含む)の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項5】
前記少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂が、ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項6】
レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項7】
強化連続繊維又は強化不連続繊維のうちの少なくとも1つを含むフィラーを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項8】
前記樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%~40重量%(両端の値を含む)の量のナノフィラーを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項9】
前記樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%~90重量%(両端の値を含む)の量のマイクロフィラーを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド。
【請求項10】
連続強化繊維と、前記連続強化繊維に含浸されている請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂ブレンドと、を含む、プリプレグ。
【請求項11】
布と、前記布に含浸されている請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂ブレンドと、を含む、プリプレグ。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂ブレンド中に分布している細断強化繊維を含む、成形調合物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂ブレンドの重合生成物を含む物品。
【請求項14】
基材と、前記基材上に配置されている請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂ブレンドの層と、を備える、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジフタロニトリル樹脂の加工を改善する、樹脂ブレンドを含む、樹脂ブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
耐温度性ポリマーネットワークは、ますます多くの産業市場用途に不可欠である。用途は、建築及び建設、エレクトロニクスパッケージング、エネルギー及び発電、並びに輸送の多岐にわたる。用途の環境温度が上昇すると、要件を満たすことができる入手可能な材料の数が急速に減少する。
【0003】
フタロニトリル(PN)樹脂は、重合すると、優れた熱安定性及び耐劣化性を提供するネットワーク形成樹脂の部類であるが、フタロニトリル樹脂技術の商業化及び使用は、低い加工性、高コスト及び高温オートクレーブ硬化によって妨げられている。フタロニトリル樹脂は、芳香族構造の大部分を組み込んだ多数のフタロニトリル分子の剛性がある構造により、高い融解温度を有し、フタロニトリル重合ネットワーク(重合されたネットワーク:polymerized network)の熱的性能を維持する。フタロニトリル部分はまた、剛性かつ平面状であり、結晶化する傾向がある。これらの分子構造属性は、多官能性PN樹脂の高い融解温度に寄与する。樹脂のコストの高さは、(無水物及びイミド樹脂に類似した)より高価な出発材料、並びに多段階合成経路を使用する樹脂合成によってもたらされる。重合樹脂(重合された樹脂:polymerized resin)の高いガラス転移温度は、高い使用温度における優れた熱安定性を付与するだけでなく、ほぼ完全な変換を達成するために不活性雰囲気下での高温多段階オートクレーブ硬化が必要となる要因でもある。
【発明の概要】
【0004】
ジフタロニトリル樹脂の加工の改善をもたらす樹脂ブレンドが記載されている。第1の態様において、樹脂ブレンドが提供される。樹脂ブレンドは、単一のフタロニトリル官能基を含む少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂と、を含む。少なくとも1種の希釈剤は、式Iの化合物:
【0005】
【化1】
【0006】
[式中、R、R、R、R、及びRは、H、アリル基、C~C20アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、Aは酸素又は硫黄である]を含む。
【0007】
第2の態様において、プリプレグが提供される。プリプレグは、連続強化繊維(continuous reinforcing fiber)と、連続強化繊維に含浸されている第1の態様による樹脂ブレンドと、を含む。
【0008】
第3の態様において、別のプリプレグが提供される。プリプレグは、布と、布に含浸されている第1の態様による樹脂ブレンドと、を含む。
【0009】
第4の態様において、成形調合物が提供される。成形調合物は、第1の態様による樹脂ブレンド中に分布している細断強化繊維(chopped reinforcing fiber)を含む。
【0010】
第5の態様において、物品が提供される。物品は、第1の態様による樹脂ブレンドの重合生成物を含む。
【0011】
第6の態様において、別の物品が提供される。物品は、基材と、基材上に配置されている第1の態様による樹脂ブレンドの層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】様々な重量パーセントのEuPNとブレンドされ、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンで硬化されたBMPNについての貯蔵弾性率対温度のプロットである。
【0013】
図2】比較例BのBMPN/RPN(2/1)[Δ]、実施例5の16.7%のEuPN希釈剤を含むBMPN/RPN(2/1)[□]、実施例8の33.3%のtBPPN希釈剤を含むBMPN/RPN(2/1)[+]、実施例1の33.3%のAPPN希釈剤を含むBMPN/RPN(2/1)[〇]の複素粘度対温度のプロットである。
【0014】
図3】本開示による例示的物品の概略断面図である。
【0015】
上記で特定された図は、本開示の実施形態を説明するものであるが、本明細書で言及されるとおり、他の実施形態もまた企図される。図は必ずしも原寸に比例して描かれているとは限らない。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内に含まれることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の定義された用語の用語解説に関して、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が提供されていない限り、本出願全体について適用されるものとする。
【0017】
用語解説
【0018】
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。本明細書において使用する場合、以下のようであると理解されたい。
【0019】
用語「及び/又は(and/or)」は、いずれか一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0020】
本明細書中で使用されるとき、端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含される数の全てを含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
【0021】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されていると理解するものとする。これに応じて、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして端数処理技術を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0022】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0023】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0024】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書全体を通した様々な箇所での、「1つ以上の実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、「多くの実施形態において」、又は「実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「フタロニトリル」は、2つの隣接ニトリル基を有する特徴的なベンゼン誘導体を有する、化合物を含む。図示されたフタロニトリル基において、Rは、例えば、これらに限定されるものではないが、エーテル、チオエーテル、アリール、アルキル、ハロゲン、アミン、エステル、又はアミド、ヘテロアルキル、又は(ヘテロ)ヒドロカルビルである。
【0026】
【化2】
【0027】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールMのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールTのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、「ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル」は、ビスフェノールPのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「レゾルシノールジフタロニトリルエーテル」は、レゾルシノールのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテルを指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「単官能性フタロニトリル」は、単一のフタロニトリル基を有する化合物を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「多官能性フタロニトリル」は、2つ以上のフタロニトリル基、好ましくは2つのフタロニトリル基を有する化合物を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「アルキル」は、直鎖状、分枝状、及び環状アルキル基を含み、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、アルキル基は、典型的には1~20個の炭素原子を含有する。本明細書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「アリル」は、式HC=CH-CH-を有する一価の基を含む。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアルキル」は、独立して、S、O、Si、P、及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を有する直鎖状、分枝状、及び環状アルキル基、並びに非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子を含有する。「ヘテロアルキル」は、以下に記載する「ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6-ジオキサヘプチル、3-(トリメチルシリル)-プロピル、及び4-ジメチルアミノブタニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、ヘテロアルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、6~18個の環原子を含有する芳香族であり、縮合環を含有してもよく、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄等の1~3個のヘテロ原子を含有するアリールであり、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンズチアゾリルである。別途注記のない限り、アリール及びヘテロアリール基は、一価であっても多価であってもよい。
【0037】
本明細書で使用する場合、「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、(ヘテロ)ヒドロカルビルアルキル及びアリール基、並びにヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルヘテロアルキル及びヘテロアリール基を含み、後者は、エーテル等の1つ又は複数のカテナリー酸素ヘテロ原子又はアミノ基を含む。ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルは、任意選択的に、エステル、アミド、ウレア、ウレタン、及びカーボネート官能基を含む、1つ又は複数のカテナリー(鎖内)官能基を含有してもよい。特に指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的には、1~60個の炭素原子を含有する。このような(ヘテロ)ヒドロカルビルのいくつかの例は、本明細書で使用する場合、上記「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」について記載したものに加えて、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、4-ジフェニルアミノブチル、2-(2’-フェノキシエトキシ)エチル、3,6-ジオキサヘプチル、3,6-ジオキサへキシル-6-フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「重合生成物」は、重合性組成物の重合反応の成績体を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「残基」は、記載されている式中の結合している官能基又は結合している基を除去(又は反応)した後に残る基の(ヘテロ)ヒドロカルビル部分を定義するために用いられる。例えば、ブチルアルデヒド、C-CHOの「残基」は、一価のアルキルC-である。フェニレンジアミンHN-C-NHの残基は、二価のアリール-C-である。
【0040】
本明細書で使用する場合、「粒子」は、最大寸法の最小寸法に対するアスペクト比が50:1未満であり、繊維を除く。本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」は、D90粒径が1マイクロメートル未満(例えば、「サブミクロン」)の粒子を指す。本明細書で使用する場合、「粒径」は、粒子の最大寸法を指す。ナノメートルスケールの粒子の粒径を測定する好適な方法としては、透過電子顕微鏡(TEM)が挙げられる。本明細書で使用する場合、「マイクロ粒子」は、D90粒径が1ミリメートル未満の粒子を指す。マイクロメートルスケールの粒子の粒径を測定する好適な方法としては、動的光散乱が挙げられる。本明細書で使用する場合、「D90」は、粒子の集団の90パーセントが特定の粒径値を下回る粒径を有することを指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ナノフィラー」は、(高さ、幅、及び長さのうちの)少なくとも2つの寸法が1マイクロメートル未満である、樹脂ブレンドに含まれる添加剤を指す。本明細書で使用する場合、「マイクロフィラー」は、(高さ、幅、及び長さのうちの)少なくとも2つの寸法が1ミリメートル未満である、樹脂ブレンドに含まれる添加剤を指す。
【0042】
ここで本開示の様々な例示的な実施形態が記述される。本開示の例示的な実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0043】
希釈剤(例えば、反応性希釈剤)は、典型的には、樹脂配合物中で使用され、モノマー樹脂又はポリマーネットワークの特性を有益な方法で変化させる。希釈剤は、樹脂の加工を改善するために、レオロジー変性剤としてモノマー樹脂配合物に添加することができる(例えば、樹脂の粘度を変化させ、熱貫流を変化させる)。また、希釈剤を添加して、ポリマーネットワークの最終用途特性(例えば、弾性率、強度、強靱性、接着性、伸長、耐化学薬品性、又は熱転移のうちの1つ以上)を改善することができる。フタロニトリル重合ポリマーネットワークの生成のための多官能性フタロニトリル樹脂及び樹脂ブレンド中の希釈剤としての単官能性フタロニトリル化合物の用途及び有用性が、本明細書で記載及び実証される。単官能性フタロニトリル化合物は、樹脂ブレンドの粘度を低下させることによって多官能性フタロニトリル樹脂中の希釈剤として作用し、これはフタロニトリル樹脂のより低温での加工に有益である。
【0044】
希釈剤は、単官能性樹脂であり、それらが添加される多官能性樹脂よりも低い分子量を有する傾向がある。(例えば、反応性)希釈剤の低分子量は、一般に、樹脂系の粘度を低下させ、重合ネットワークの特性を変えることが多い。本開示の希釈剤は、ペンダントアリルの有無に関わらず、単官能性フタロニトリルを組み込み、これは多官能性フタロニトリル樹脂と混和性である。フタロニトリル官能性芳香環の第3及び第4の炭素からの多様な化学分枝の単官能性フタロニトリル化合物は、染料及び顔料の製造における出発物質として一般に使用され、好適な希釈剤を調製するための有用な出発点であり得る。
【0045】
【化3】
【0046】
第1の態様において、樹脂ブレンドが提供される。樹脂ブレンドは、単一のフタロニトリル官能基を含む少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂と、を含む。少なくとも1種の希釈剤は、式Iの化合物:
【0047】
【化4】
【0048】
[式中、R、R、R、R、及びRは、H、アリル基、C~C20アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、Aは酸素又は硫黄である]を含む。特定の実施形態において、Aは、好ましくは酸素である。
【0049】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の希釈剤は、式IIの化合物:
【0050】
【化5】
【0051】
[式中、R、R、R、R、R、及びAは各々、式Iに関して上記で定義したとおりである]を含む。
【0052】
希釈剤がペンダントアリル基を有さない単官能性フタロニトリルを含む実施形態において、R、R、R、R、及びRは、H、C~C20アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、Aは酸素又は硫黄である。ペンダントアリル基を有さない1つの好適な単官能性フタロニトリル希釈剤としては、式IIIの化合物:
【0053】
【化6】
が挙げられる。
【0054】
ペンダントアリル基を有さない別の好適な単官能性フタロニトリル希釈剤としては、式IVの化合物:
【0055】
【化7】
が挙げられる。
【0056】
式IIIの化合物は、4-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリルと呼ばれることもあり、式IVの化合物は、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリルと呼ばれることもある。
【0057】
希釈剤がペンダントアリル基を有する単官能性フタロニトリルを含む実施形態において、R、R、R、R、及びRは、H、アリル基、C~C20アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、但し、R、R、R、R、及びRのうちの1つ以上は、アリル基であり、Aは酸素又は硫黄である。ペンダントアリル基を有する1つの好適な単官能性フタロニトリル希釈剤としては、式Vの化合物:
【0058】
【化8】
が挙げられる。
【0059】
ペンダントアリル基を有する別の好適な単官能性フタロニトリル希釈剤としては、式VIの化合物:
【0060】
【化9】
が挙げられる。
【0061】
式Vの化合物は、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル又はオイゲノールフタロニトリルと呼ばれることもある。式VIの化合物は、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル又はアリルフェノールフタロニトリルと呼ばれることもある。したがって、いくつかの実施形態において、1種以上の希釈剤は、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル、3-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル、3-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリル、3-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリル、4-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリル、3-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリル、4-(2-アリル-6-メチルフェノキシ)フタロニトリル、3-(2-アリル-6-メチルフェノキシ)フタロニトリル、4-(4-アセトフェノキシ)フタロニトリル、3-(4-アセトフェノキシ)フタロニトリル、4-フェノキシフタロニトリル、3-フェノキシフタロニトリル、4-(4-アリル-2,6-ジメトキシフェノキシ)フタロニトリル、3-(4-アリル-2,6-ジメトキシフェノキシ)フタロニトリル、4-(2,6-ジメトキシフェノキシ)フタロニトリル、3-(2,6-ジメトキシフェノキシ)フタロニトリル、4-(ノニルフェノキシ)フタロニトリル、3-(ノニルフェノキシ)フタロニトリル、4-(3-ペンタデシルフェノキシ)フタロニトリル、3-(3-ペンタデシルフェノキシ)フタロニトリル、4-(4-(メチルスルホニル)フェノキシ)フタロニトリル、3-(4-(メチルスルホニル)フェノキシ)フタロニトリル、4-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フタロニトリル、3-(3-(トリフルオロメチル)フェノキシ)フタロニトリル、4-(4-シアノフェノキシ)フタロニトリル、3-(4-シアノフェノキシ)フタロニトリル、4-(ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル、3-(ペンタフルオロフェノキシ)フタロニトリル、4-(4-(メチルメルカプト)フェノキシ)フタロニトリル、3-(4-(メチルメルカプト)フェノキシ)フタロニトリル、4-(4-メチルベンゼンチオ)フタロニトリル、3-(4-メチルベンゼンチオ)フタロニトリル、4-(4-tert-ブチルベンゼンチオ)フタロニトリル、3-(4-tert-ブチルベンゼンチオ)フタロニトリル、4-(4-クロロベンゼンチオ)フタロニトリル、3-(4-クロロベンゼンチオ)フタロニトリル、4-(ベンゼンチオール)フタロニトリル、3-(ベンゼンチオール)フタロニトリル、4-(4-ニトロフェノキシ)フタロニトリル、3-(4-ニトロフェノキシ)フタロニトリル、4-(2-ナフトキシ)フタロニトリル、3-(2-ナフトキシ)フタロニトリルの群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0062】
(例えば、反応性)希釈剤の設計及び使用は、多官能性フタロニトリルモノマー樹脂及びそれらの重合ネットワークにほとんど適用されていない。これは、モノマー樹脂を重合させるのに必要な極端な熱的条件、及びこれらの条件のための希釈剤を設計することの困難さと関係がある可能性が高い。歴史的に、フタロニトリル樹脂は、樹脂を溶融させ、加工可能な粘度を有する液体樹脂を達成するために、高加工温度(200℃付近及び200℃超)を必要しており、これは揮発及び分解(degradation:劣化)のために低分子量の反応性希釈剤には適さない温度である。加えて、樹脂のゲル化の後、後硬化温度が長時間300℃をはるかに超え400℃に近づくと、残留する未結合の希釈剤の揮発及び希釈剤の分解をもたらし、これは、重合フタロニトリルネットワークよりも熱分解の影響を受けやすい化学的性質となる場合がある。
【0063】
本開示による単官能性フタロニトリルは、フェノキシド又はベンゼンチオレートアニオンによる、フタロニトリル芳香環の第3又は第4の炭素上のニトロ基の求核置換によって合成されてもよい。求核置換は、フタロニトリル芳香環の第3又は第4の炭素上のハロゲンで実施することもできる。単官能性フタロニトリル-アリル化合物は市販されておらず、これらの材料の限られた合成が報告されている。
【0064】
希釈剤は、多官能性フタロニトリル樹脂に添加される場合、本開示の少なくとも特定の実施形態において、(1)樹脂粘度を低下させ、(2)樹脂重合の硬化サイクル時間を短縮し、(3)325℃を超える高温後硬化を回避し、及び/又は(4)多官能性フタロニトリル樹脂又は樹脂ブレンドと比較して、重合ネットワークの軟化温度を改変する。
【0065】
単官能性フタロニトリル希釈剤は、それらが添加される多官能性フタロニトリル樹脂よりも低い融解温度及び低い粘度を有する。1種以上の単官能性フタロニトリル希釈剤を多官能性フタロニトリル樹脂に添加することにより、樹脂系の粘度を低下させ、融解温度を抑制することを含む、樹脂の加工特性を改善する。単官能性フタロニトリル希釈剤は、多官能性樹脂よりも分子量が低く、これが多官能性樹脂と比較して低い樹脂粘度に変換する。希釈剤を有する多官能性樹脂の低粘度は、低樹脂粘度を必要とする用途において樹脂の加工性改善を提供し、樹脂加工温度ウェンドウを向上させ、より低温下での粘度の低下を可能にし、樹脂とフィラーとの調合及びフィラー充填容量を改善する。
【0066】
低軟化温度重合ネットワークを生成する、少なくとも1つのアリル基を含有する1つ以上の単官能性フタロニトリル希釈剤(例えば、単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤)の多官能性フタロニトリル樹脂及び樹脂ブレンドへの適用が、本明細書にて記載及び実証される。フタロニトリル重合中、アリル部分は、ポリマーネットワーク軟化温度の上昇をもたらす二次重合事象に関与し、未希釈のフタロニトリル樹脂よりも高い熱安定性を有するポリマーネットワークをもたらすことが発見された。単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤は、アリルに固有の二次重合機構に関与する能力を示す。これは、示差走査熱量測定(DSC)によって証明され、これは、アリルが存在する場合に、フタロニトリル重合を上回る反応熱の増加を示し(例えば、実施例の表3を参照)、樹脂重合中のアリル官能基の消失がFTIR分光法により観察される。アリル重合は一般的ではなく、高収率で重合するのが困難であると考えられると理解される。したがって、ポリ(アリル)ポリマーは、ほとんど開発が見られなかった。
【0067】
フタロニトリル重合の開始は、アリル重合を活性化することが見出されている。これは、フタロニトリル重合の開始までアリルが反応することができないことによって証明される。本開示の単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤は、樹脂ブレンドを250℃の温度まで加熱し、樹脂をDSCで監視することによって示されるように、フタロニトリル重合の非存在下では容易に重合しない。単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤は、重合反応発熱の証拠を示さず、したがって安定しており、重合に対して自己触媒的ではなかった。これは、ポリ(イミノイソインドレニン)の形成をもたらすフタロニトリル重合の開始が、アリル重合に対して触媒的であるか、又はアリル部分と反応性になることを意味し得る。アリル反応のための機構は、現在知られていない。
【0068】
アリルの二次重合は、樹脂重合のためのサイクル時間に有益な影響を及ぼす。単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤は、成分樹脂として多官能性フタロニトリル樹脂に添加される場合、従来の多官能性フタロニトリル樹脂と比較して、ポリマーネットワーク形成の硬化時間を減少させ及び温度を低下させる。従来のフタロニトリル樹脂技術は、フタロニトリル樹脂の重合を完了させるために、合計24~48時間の複数の等温硬化温度を必要とする。典型的には、樹脂重合の順序は、200~250℃の温度にさらすことにより、最初の5~6時間の等温加熱を行い、その後、250℃から400℃まで上昇する複数の等温後硬化温度にさらすことを伴う[Laskoski,M.,D.D.Dominguez,and T.M.Keller,Synthesis and properties of a bisphenol A based phthalonitrile resin.Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,2005.43(18):p.4136-4143;及びKeller,T.M.and D.D.Dominguez,High temperature resorcinol-based phthalonitrile polymer.Polymer,2005.46(13):p.4614-4618]。比較して、単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤を1つの例示的な多官能性フタロニトリル樹脂、BMPNに添加することにより、樹脂系を、200℃での初期の5時間等温加熱及び300℃での単一の4時間等温後硬化にさらすことによって重合させ、合計9時間の重合サイクル時間(熱傾斜を除く)とすることができる。最終的な300℃後硬化温度の使用により、300℃超の温度で必要とされるオートクレーブを使用することなく重合を実施することが可能となる。温度の関数として1ヘルツ(Hz)で測定された重合ネットワークの線形動的機械的応答の分析は、290℃及び350℃のE’開始温度及びtan dピーク(例えばtanδピーク)温度をそれぞれ明らかにした。(下記の実施例1参照。)
【0069】
アリルの二次重合は、重合ネットワークの軟化温度に有益な影響を及ぼした。単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤は、多官能性フタロニトリル樹脂に添加される場合、多官能性フタロニトリルの原樹脂の重合ネットワークと比較して、重合ネットワークの軟化温度を上昇させた。アリル重合は、単官能性反応性希釈剤の添加によって引き起こされる架橋密度の低下を軽減し、これにより、ネットワーク軟化温度が低下し、ネットワーク熱安定性が低下する。対照的に、これは、アリルペンダント基を欠き、二次重合機構に関与することができない単官能性フタロニトリル希釈剤に当てはまることが示された。4-(4-tertブチルフェノキシ)フタロニトリルを二官能性フタロニトリル樹脂系に添加すること(すなわち、実施例8)により、55℃のポリマーネットワーク軟化温度の低下(すなわち、243℃から188℃までの低下)、及び熱重量減少によって証明されるように低い耐熱劣化性がもたらされた。比較して、オイゲノールフタロニトリル、単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤を、同じ二官能性フタロニトリル樹脂系に添加すること(すなわち、実施例7)により、重合多官能性フタロニトリル系ネットワークの軟化温度を維持するだけでなく、ネットワークの軟化温度を76℃上昇させた(すなわち、243℃から319℃までの上昇)。ネットワークのより高い軟化温度は、温度による機械的剛性の損失を軽減することによって、ポリマーの使用温度を上昇させた。対応する多官能性フタロニトリル重合ネットワークと比較して、温度の関数として熱重量減少測定によって証明されるように、ネットワークの耐熱劣化性は維持された。
【0070】
以前に改良されたフタロニトリル系の開発及び使用に対する障害は、多官能性フタロニトリル樹脂のみから形成されたネットワークよりも低い熱安定性を有するハイブリッドネットワークの生成である。これは、エポキシ-フタロニトリルハイブリッド、フェノール-フタロニトリルハイブリッド、及びベンゾオキサジン-フタロニトリルハイブリッドにも当てはまる。一部の研究は、多官能性フタロニトリル樹脂上でのアリルペンダント基の使用を用い始めている。これらの樹脂では、3,3-ジアリル-ビスフェノールAのジフタロニトリルエーテル、及びアリルペンダントを有するフタロニトリル末端ベンゾオキサジン樹脂を使用した[Xu,M.,K.Jia,andX.Liu,Self-cured phthalonitrile resin via multistage polymerization mediated by allyl and benzoxazine functional groups.High Performance Polymers,2016.28(10):p.1161-1171;及びZou,X.,et al.,Synthesis,polymerization,and properties of the allyl-functional phthalonitrile.Journal of Applied Polymer Science,2014.131(23):41203.]。3,3-ジアリル-ビスフェノールAのジフタロニトリルエーテルは、硬化剤又は触媒を添加することなく、フタロニトリル重合に対する自己触媒特性を示し、本発明のアリルペンダントを有する単官能性フタロニトリル樹脂は、硬化に対して自己触媒的ではなかった。3,3-ジアリル-ビスフェノールAのジフタロニトリルエーテルの自己触媒は、樹脂の早期重合により、モノマー樹脂の合成、加工、適用、及び貯蔵寿命にとって問題がある。3,3-ジアリル-ビスフェノールAのジフタロニトリルエーテルは、反応性フタロニトリル-アリル希釈剤を使用する樹脂よりも、加工及び重合中により高い温度を必要とする。360℃の温度までの多段階後硬化を使用して、後硬化中に分解をもたらす樹脂を重合させた。
【0071】
単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤の有用性は、より低温でのフタロニトリル樹脂の硬化及び脱オートクレーブ加工を可能にするために最近開発されている、多官能性フタロニトリル樹脂及び樹脂ブレンドに希釈剤を適用することによって更に実証される。これらの多官能性フタロニトリル樹脂系は、200~300℃の軟化温度(すなわち、E’(開始)温度)を有するポリマーネットワークをもたらし、これは、後硬化中のポリマーの早期分解、及びこれらの高温で必要とされるオートクレーブの使用のために望ましくない、最大400℃の高温長時間後硬化の必要を取り除く。200~300℃の軟化温度を有するより低温の多官能性フタロニトリル重合ネットワークは、325℃以下の最終後硬化温度で脱オートクレーブ硬化され得る。これらのフタロニトリル重合ネットワークを硬化させる場合、樹脂の完全硬化は、完全硬化ネットワークの特徴的な機械的tan dピーク温度を超える最終後硬化温度を必要とするものになっている。これらの同じ多官能性フタロニトリル樹脂及び樹脂ブレンドに、単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤を添加することにより、325℃以下の最終後硬化温度で樹脂を重合させる能力を維持したが、ネットワークの最終後硬化温度を超える軟化温度を有するポリマーネットワークも得られた。別の言い方をすれば、単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤を使用し、希釈剤の非存在下で多官能性フタロニトリル樹脂を硬化させるのと同じ温度(すなわち、ネットワークの特徴的な機械的tan dピーク温度を越える最終後硬化温度)で後硬化されるフタロニトリル樹脂系は、最終後硬化温度を超えるネットワーク軟化温度(すなわち、E’(開始)温度)を達成した。このフタロニトリル-アリル希釈剤の特徴により、ネットワークの最終後硬化温度を上昇させることなく、より高い軟化温度のフタロニトリル重合ネットワークの設計が可能になる。したがって、反応性希釈剤を用い、300℃超の軟化温度を有するネットワークを製造するフタロニトリル樹脂系は、以前の高軟化温度多官能性フタロニトリル樹脂に必要とされる長時間後硬化温度、後硬化中にポリマーの早期分解をもたらす後硬化温度を必要としないように設計することができる。
【0072】
単官能性フタロニトリル-アリル希釈剤を、アリル部分を欠く単官能性フタロニトリル希釈剤と比較する。アリル官能基を欠く単官能性フタロニトリルは、二次重合機構に関与することができない。これらの希釈剤は、軟化温度を低下させ、ネットワークの機械的特性(すなわち、剛性、強度、強靱性、接着性)を変化させる傾向がある。これらの属性は、高い軟化温度のポリマーネットワークの形成に起因して重合中に極端な温度の後硬化を必要とする多官能性フタロニトリル樹脂(例えば、レゾルシノールジフタロニトリル(RPN))中のガラス化を媒介し、ひずみを与えられた場合のネットワークの応力応答を改善するために有益であり得る。
【0073】
単官能性フタロニトリル希釈剤を多官能性フタロニトリル樹脂及び樹脂ブレンドに添加する場合、多官能性フタロニトリル樹脂(又は樹脂ブレンド)の単官能性フタロニトリルに対するモル比は、1付近か、又はそれ以上であることが好ましい。1以上の比率は、ポリマーネットワーク中の遊離低分子量重合オリゴマーの可能性を減少させる。単官能性フタロニトリルに対する多官能性フタロニトリルのフタロニトリル当量が1よりはるかに低い樹脂配合物は、硬化中に脱気する傾向がより高く、同様の温度でより測定可能な重量損失に悩まされ得る。特定の実施形態において、(例えば、少なくとも1種の)ジフタロニトリル樹脂の(例えば、少なくとも1種の)希釈剤に対するモル比は、0.95以上、0.97以上、0.99以上、1.0以上、1.5以上、2以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、又は更には30以上であり;50以下、45以下、40以下、35以下、32以下、27以下、23以下、19以下、14以下、9以下、又は更には4以下を含む。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態において、ジフタロニトリル樹脂の希釈剤に対するモル比は、例えば、0.95~50(両端の値を含む);0.95~9(両端の値を含む);1.0~50(両端の値を含む);5~50(両端の値を含む);又は1.5~14(両端の値を含む)を含む。
【0074】
特定の実施形態において、本開示による樹脂ブレンドは、(例えば、第1の)ジフタロニトリル樹脂に加えて、少なくとも1種のフタロニトリルを含む、少なくともあと1種の樹脂を含む。少なくとも1種のフタロニトリルを含む例示的な樹脂としては、例えば、ビスフェノールAのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAのビス(2,3-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAPのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールAFのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールBのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールBPのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールCのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールC2のビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールEのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールFのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールFのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールFLのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールGのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールMのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールPのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールPHのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールSのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールTのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールTMCのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、ビスフェノールZのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、カテコールのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンのビス(3,4-ジシアノフェニル)エーテル、フェノールの3,4-ジシアノフェニルエーテル、フェノールの2,3-ジシアノフェニルエーテル、4-tert-ブチルフタロニトリル、4-ブトキシフタロニトリル、4-クミルフェノールの3,4-ジシアノフェニルエーテル、2-アリルフェノールの3,4-ジシアノフェニルエーテル、及びオイゲノールの3,4-ジシアノフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、樹脂ブレンドは、25℃で固体である。
【0075】
樹脂ブレンドの少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂は、225℃未満、より好ましくは200℃未満の融解温度を有するジフタロニトリル樹脂を含むことが多い。特定の実施形態において、樹脂ブレンドの少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂は、ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂、又はこれらの組み合わせを含む。BMPN、BPPN、及びBTPNなどのジフタロニトリル樹脂の合成は、DMSO中の炭酸カリウムで触媒される、ビスフェノールのフェノール残基による4-ニトロフタロニトリルのニトロ基の求核置換によって達成することができる。反応は、窒素雰囲気下で、周囲温度にて実施することができる。
【0076】
溶媒は、本開示の少なくとも特定の実施形態による樹脂ブレンドを用いた加工助剤として使用することができる。有用な溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンなどのケトン;アセトアミド、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノンなどのアミド;テトラメチレンスルホン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、ブタジエンスルホン、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、メチルビニルスルホン、2-(メチルスルホニル)エタノール、2,2’-スルホニルジエタノールなどのスルホン;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;エチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルホルメートなどのカルボン酸エステル;並びにテトラヒドロフラン、メチレンクロライド、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ニトロメタン、グリコールサルファイト及び1,2-ジメトキシエタン(グリム)などのその他の溶媒である。
【0077】
いくつかの実施形態において、樹脂ブレンドは、空気中で300℃以下の温度にさらされる。任意選択的に、樹脂ブレンドは、大気圧で300℃以下の温度にさらされる。
【0078】
特定の実施形態において、樹脂ブレンドは、1つ以上のフィラー、例えば、強化連続繊維(reinforcing continuous fibers)又は強化不連続繊維(reinforcing discontinuous fibers)、ナノフィラー、マイクロフィラー、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含む。少なくとも1つのフィラーを組み込むために利用される典型的な調合技術としては、インペラ混合、高剪断混合、ミル加工、遠心混合、及び樹脂ブレンド中への粒子の溶液分散が挙げられる。
【0079】
特定の実施形態において、フィラーは、金属炭化物ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、シリカナノ粒子、炭素ナノ粒子、金属炭酸塩ナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、金属水酸化物ナノ粒子、金属硫酸塩ナノ粒子、チタン酸バリウムナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含むナノフィラーを含む。任意選択的に、フィラーは、カルサイトナノ粒子、シリカナノ粒子、炭化ケイ素ナノ粒子、アルミナナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、窒化アルミニウムナノ粒子、窒化ホウ素ナノ粒子、ドロマイトナノ粒子、ベーマイトナノ粒子、水酸化マグネシウムナノ粒子、硫酸カルシウムナノ粒子、硫酸バリウムナノ粒子、硫酸マグネシウムナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含むナノフィラーを含む。本明細書で使用する場合、材料の前の「ナノ」又は「マイクロ」という用語は、それぞれ、ナノ粒子又はマイクロ粒子としてのその材料の呼称と互換可能である(例えば、「ナノシリカ」は「シリカナノ粒子」と互換可能であり、「マイクロカルサイト」は「カルサイトマイクロ粒子」と互換可能であるなど)。例えば、限定するものではないが、いくつかの好適なナノ粒子としては、Nalco Company(Naperville,IL)から商標名NALCO 15827で入手可能なシリカナノ粒子;及び3M Technical Ceramics(Kempten,Germany)から商標名VSN1393で入手可能な炭化ケイ素ナノ粒子が挙げられる。
【0080】
典型的には、ナノフィラーは、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は更には25重量%以上;及び樹脂ブレンドの総重量に基づいて、40重量%以下、38重量%以下、36重量%以下、34重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、24重量%以下、22重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、又は15重量%以下の量で本開示による樹脂ブレンド中に存在する。別の言い方をすれば、ナノフィラーは、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1~40重量%、1~20重量%、3~15重量%、20~40重量%、又は25~40重量%の量で樹脂ブレンド中に存在し得る。
【0081】
特定の実施形態において、フィラーは、金属炭化物マイクロ粒子、金属酸化物マイクロ粒子、シリカマイクロ粒子、炭素マイクロ粒子、金属炭酸塩マイクロ粒子、金属窒化物マイクロ粒子、金属水酸化物ナノ粒子、金属硫酸塩マイクロ粒子、チタン酸バリウムマイクロ粒子、セノスフェア(cenospheres)、又はこれらの組み合わせを含むマイクロフィラーを含む。任意選択的に、フィラーは、カルサイトマイクロ粒子、シリカマイクロ粒子、炭化ケイ素マイクロ粒子、アルミナマイクロ粒子、酸化マグネシウムマイクロ粒子、窒化アルミニウムマイクロ粒子、窒化ホウ素マイクロ粒子、ドロマイトマイクロ粒子、ベーマイトマイクロ粒子、グラスバブルズ、又はこれらの組み合わせを含むマイクロフィラーを含む。例えば、限定するものではないが、いくつかの好適なマイクロ粒子としては、3M Company(St.Paul,MN)から3M BORON NITRIDE COOLING FILLER PLATELETSの商標名で入手可能な窒化ホウ素マイクロ粒子;3M Company(St.Paul,MN)から3M GLASS BUBBLES IM16Kの商標名で入手可能なグラスバブルズ;及びMicron Corp(新日鉄住金マテリアルズの子会社)からMICRON TA6Y1 ALUMINAの商標名で入手可能なアルミナマイクロ粒子が挙げられる。
【0082】
典型的には、マイクロフィラーは、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は更には60重量%以上;及び樹脂ブレンドの総重量に基づいて、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下、35重量%以下、又は25重量%以下の量で本開示による樹脂ブレンド中に存在する。別の言い方をすれば、マイクロフィラーは、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1~90重量%、1~50重量%、5~35重量%、20~55重量%、又は60~90重量%の量で樹脂ブレンド中に存在し得る。
【0083】
概して、本開示の任意選択的な表面改質剤は、少なくとも結合基と相溶化セグメントとを含む。相溶化セグメントは、フィラーの硬化性樹脂との相溶性を改善するように選択される。概して、相溶化基の選択は、硬化性樹脂の性質、フィラーの濃度、及び所望の相溶性の度合いを含む、多くの要因によって決まる。有用な相溶化基としては、例えば、限定するものではないが、ポリアルキレンオキシド残基(例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、及びこれらの組み合わせ)、芳香族残基(例えば、フェニル、フェニルアルキレン、置換フェニレン、及びこれらの組み合わせ)、カルボニル残基(例えば、ケトン、エステル、アミド、カルバメート、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。結合基は、粒子表面に結合し、表面改質剤をフィラーに結び付ける。カルサイト粒子の場合、表面改質剤がシリカと共有結合する多くのシリカ系ナノ粒子系とは異なり、本開示の表面改質剤は、カルサイト粒子とイオン結合又は物理的に結合する(例えば、会合する)。フィラー表面及び表面改質剤に応じて、表面改質剤は、フィラーの表面に共有結合、イオン結合又は物理的結合のうちの1つ以上をしていてもよい。
【0084】
いくつかの好適な表面改質剤は、有機酸、有機塩基、シロキサン、シラン、又はこれらの組み合わせを含む。表面改質剤の種類は、フィラーの材料に依存することになる。例えば、フィラーが、シリカナノ粒子、シリカマイクロ粒子、セノスフェア、ジルコニアナノ粒子、ジルコニアマイクロ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化マグネシウムマイクロ粒子、炭化ケイ素ナノ粒子、炭化ケイ素マイクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む場合、表面改質剤は、シラン又はシロキサンを含んでもよい。フィラーが、カルサイトナノ粒子、カルサイトマイクロ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化マグネシウムマイクロ粒子、アルミナナノ粒子、アルミナマイクロ粒子、ドロマイトナノ粒子、ドロマイトマイクロ粒子、ベーマイトナノ粒子、ベーマイトマイクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む場合、表面改質剤は有機酸又は有機塩基を含んでもよい。フィラーが、ジルコニアナノ粒子、ジルコニアマイクロ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、酸化マグネシウムマイクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む場合、表面改質剤は有機酸を含んでもよい。フィラーが、カルサイトナノ粒子、カルサイトマイクロ粒子、又はこれらの組み合わせを含む場合、表面改質剤はオルガノスルホネート及び/又はオルガノホスフェートを含んでもよい。例えば、オルガノスルホネート及びオルガノホスフェートのスルホネート末端及びホスフェート末端は、それぞれ、表面改質剤のスルホネート及びホスフェートとカルサイトのカルシウムとの間のイオン錯体の形成によって、カルサイト表面に会合する。表面改質剤の有機末端は、フタロニトリル樹脂においてカルサイトを安定化させ、液体樹脂溶融物中にカルサイトを分散し、硬化されたポリマーネットワークにおいてカルサイトを安定化させる。本開示の少なくとも特定の実施形態において、ポリプロピレンオキシド及びポリエチレンオキシドを、本明細書に記載の表面改質剤のいずれかの有機末端として使用して、モノマー樹脂及びポリマーネットワークに会合する。
【0085】
例えば、本開示によれば、フェニルシラン表面改質ナノシリカゾルを、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル反応性希釈剤を組み込んだフタロニトリル樹脂ブレンドとブレンドし、溶媒をストリッピングした。フェニルシラン改質表面は、シリカナノ粒子をフタロニトリル樹脂と相溶化させる。アルミナ、窒化ホウ素、及びグラスバブルズは、共有の米国特許仮出願第62/475,396号に記載されているように、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル反応性希釈剤を組み込んだフタロニトリル樹脂ブレンド中に前もって遠心混合された。反応性希釈剤は、樹脂粘度を低下させ、有効な分散を可能にし、より低温でのより高い粒子の充填を可能にする。カルサイト及び表面改質剤は、反応性希釈剤を有するフタロニトリル樹脂ブレンド中に、希釈剤を有さないフタロニトリル樹脂ブレンドよりも低い温度でインペラ混合及びミル加工され得る。表面改質剤は、カルサイト表面に吸収し、樹脂中のカルサイトを安定化させる。充填樹脂は、硬化剤又は触媒を添加する場合に、未充填樹脂に匹敵する可使時間を維持する。
【0086】
カルサイト充填されたフタロニトリル樹脂ブレンドの調合技術としてのインペラ混合及びミル加工は、他の調合技術と比較して、プロセスの簡便さ、容易さ、及び低コストをもたらす。インペラ混合は、カルサイトを樹脂中に分散させ、粒径をマイクロメートルの粒径まで破壊する。後続プロセスとしてのミル加工は、カルサイトをナノメートルの粒径まで破壊するとともに、表面改質剤は、カルサイトを樹脂中で安定化させる。インペラ混合にミル加工を追加することで、フィラーの低コストを、充填樹脂のコストへと有効に転化できる。例えば、反応性希釈剤を有するBMPN樹脂及びBMPN系フタロニトリルブレンドは、150℃を下回る温度で液体状態を維持することによって、従来のフタロニトリル樹脂ではなされていない混合及びミル加工を調合技術として可能にする。
【0087】
60℃付近の温度で、樹脂の粘度を低下させるために溶媒が添加されることが多い。フタロニトリル樹脂と混和可能ないくつか好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。より高い温度(例えば、120℃を超えるが200℃未満)では、混合及びミル加工を、液体樹脂溶融物に溶媒を添加することなく実施できる。高温混合及びミル加工の利点は、溶媒ストリッピングがなくなることである。
【0088】
フィラー表面用の表面改質剤は、表面改質剤の一端が優先的にフィラー表面に会合し、表面改質剤の他端が優先的にモノマー樹脂に会合し、樹脂及び重合ネットワーク中で粒子の相溶性を維持するように選択される。表面改質剤の濃度は、樹脂中の遊離表面改質剤を最小限にし、開放されたフィラー(例えば、カルサイト)表面を避けるように調整することができ、それはいずれも、200℃超でのフタロニトリル重合を触媒する。
【0089】
特定の実施形態において、フィラーは、強化連続繊維又は強化不連続繊維のうちの少なくとも1つを含む。例示的な繊維としては、炭素(例えば、グラファイト)繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、及びポリエチレン繊維が挙げられる。また、材料の組み合わせが使用されてもよい。概して、繊維の形態は、特に限定されない。例示的な連続繊維形態としては、個々の連続繊維の単方向アレイ、糸、ロービング、編組、及び不織マットが挙げられる。不連続繊維は特に限定されず、例えば、ガラス、アルミナ、アルミノシリケート、炭素、玄武岩、又はこれらの組み合わせなどの無機繊維が挙げられる。不連続繊維は、典型的には、5cm未満の平均長さを有する。不連続繊維は、例えば、細断、剪断、及びミル加工などの当該技術分野において公知の方法によって、連続繊維から形成されてもよい。典型的には、複数の不連続繊維が、10:1以上のアスペクト比を備える。
【0090】
好適な不連続繊維は、セラミック繊維などの様々な組成物を有することができる。セラミック繊維は、様々な市販のセラミックフィラメントから製造され得る。セラミック繊維を形成するのに有用なフィラメントの例としては、商標名NEXTEL(3M Company,St.Paul,MN)で販売されているセラミック酸化物繊維が挙げられる。NEXTELは、操作温度では低い伸長及び収縮率を有する連続フィラメントセラミック酸化物繊維であり、良好な耐化学薬品性、低い熱伝導率、熱ショック耐性、及び低い空隙率を提供する。NEXTEL繊維の具体的な例としては、NEXTEL 312、NEXTEL 440、NEXTEL 550、NEXTEL 610及びNEXTEL 720が挙げられる。NEXTEL 312及びNEXTEL 440は、Al、SiO、及びBを含む耐熱性アルミノホウケイ酸塩である。NEXTEL 550及びNEXTEL 720は、アルミノシリカであり、NEXTEL 610は、アルミナである。製造の際に、NEXTELフィラメントは、有機サイジング剤又は仕上げ剤でコーティングされ、これが、繊維加工の助剤として機能する。サイジング剤は、フィラメント又はセラミック繊維を700℃の温度で1~4時間熱洗浄することによって、セラミックフィラメントから除去することができる。窒化ホウ素繊維は、例えば、米国特許第3,429,722号(Economy)及び米国特許第5,780,154号(Okanoら)に記載されているようにして作製することができる。
【0091】
セラミック繊維はまた、他の好適なセラミック酸化物フィラメントから形成することもできる。そのようなセラミック酸化物フィラメントの例としては、Central Glass Fiber Co.,Ltd.から市販のもの(例えば、EFH75-01、EFH150-31)が挙げられる。約2%未満のアルカリを含有するか、又は実質的にアルカリを含まないもの(すなわち、「Eガラス」繊維)である、アルミノボロシリケートガラス繊維もまた、好ましい。Eガラス繊維は、多数の商業的供給業者から入手可能である。
【0092】
セラミック繊維は、比較的一様な長さを有するように切断又は細断することができ、これは、セラミック材料の連続フィラメントを、他の切断操作の中でも、機械的剪断操作又はレーザー切断操作で切断することによって達成することができる。このような切断操作の高度に制御された性質を考慮すると、セラミック繊維のサイズ分布は非常に狭く、複合材特性を制御することができる。例えば、CCDカメラ(Olympus DP72,Tokyo,Japan)及び分析ソフトウェア(Olympus Stream Essentials,Tokyo,Japan)を搭載した光学顕微鏡(Olympus MX61,Tokyo,Japan)を使用して、セラミック繊維の長さを測定することができる。セラミック繊維の代表試料をガラススライド上に広げ、少なくとも200個のセラミック繊維の長さを10倍で測定することによって、試料を調製することができる。
【0093】
樹脂ブレンド中に分散される不連続繊維の量は、特に限定されない。複数の繊維は、樹脂ブレンドの少なくとも1重量%、樹脂ブレンドの少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも25重量%;及び樹脂ブレンドの最大50重量%、最大45重量%、最大40重量%、又は最大35重量%の量で存在することが多い。特定の実施形態において、繊維は、樹脂ブレンドの1重量%~50重量%、又は2重量%~25重量%、又は5重量%~15重量%(両端の値を含む)の量で樹脂ブレンド中に存在する。特定の実施形態において、不連続繊維は、樹脂ブレンドの5重量%~50重量%(両端の値を含む)の量で存在する。
【0094】
例えば、カルサイトと表面改質剤とをインペラ混合し、その後カルサイトを400nm未満の寸法にミル加工することによって製造されたカルサイト充填BMPN系樹脂系は、共有の米国仮特許出願第62/475,396号に記載のとおり、繊維強化ポリマー複合材の製造に以前から用いられてきた。ナノメートル寸法の粒子は、樹脂及び粒子の繊維束への浸透(粒子を濾過することなく)を可能にする。
【0095】
反応性希釈剤を有するフタロニトリルブレンド樹脂系の低粘度は、100℃を下回る温度での繊維の含浸を可能にする。本開示は、繊維強化ポリマー複合材の製造における繊維の液体フタロニトリル樹脂含浸の製造方法としての樹脂トランスファー成形も記載する。反応性希釈剤を有するフタロニトリルブレンドによって可能になる繊維の他のインライン液体樹脂含浸法としては、引抜及びフィラメントワインディングが挙げられる。繊維強化ポリマー複合材は、カルサイト充填フタロニトリル樹脂系、シリカ充填フタロニトリル樹脂系、又は炭化ケイ素充填フタロニトリル樹脂系に用いられ得るプロセスと類似の樹脂トランスファー成形プロセスを使用した、反応性希釈剤を有するフタロニトリルブレンド樹脂系で実証されている。
【0096】
溶液分散後の溶媒ストリッピングは、樹脂ブレンドにシリカを導入するための好ましい方法であり得る。シリカのための溶液分散法は、フタロニトリル樹脂の費用と比べて低コストであり、200℃未満、更には120℃未満の温度で液体樹脂溶融物中に十分に分散した粒子が得られる。例えば、シリカは、水/アルコール懸濁液中にてフェニルトリメトキシシランで表面改質され、フタロニトリル樹脂と混和可能な溶媒(例えば、メトキシプロパノール、ブチルアセテート、アセトン、MEK、MIBK、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、ジアセトンアルコール、DMF、DMSO)に移送される。粒子ゾルを、高温(例えば、90℃)で、樹脂が低粘度の液体樹脂溶融物である未希釈のフタロニトリル樹脂に添加した。粒子ゾルは、樹脂粘度を低下させるために混和可能な溶媒で希釈した樹脂ブレンドに、より低い温度(例えば、90℃未満)で添加することができる。溶媒は、150℃未満の温度で粒子充填樹脂からストリッピングされ、ここで樹脂ブレンドは液体溶融状態のままである。粒子のフェニル処理された表面は、粒子を液体樹脂溶融物中及び硬化されたポリマーネットワーク中で安定化させる。
【0097】
アルミナ、窒化ホウ素、グラスバブルズ及びシラン表面改質されたグラスバブルズの遠心混合は、共有の米国仮特許出願第62/475,396号に記載のとおり、反応性希釈剤を有するフタロニトリルブレンド中への粒子分散の短時間で効率的な手段を提供する。粒子は、200℃未満、好ましくは100~150℃の温度で、液体樹脂中に分散され、ここで樹脂粘度及び遠心ミキサーのRPMは、分単位のオーダーで、目に見える凝集を生じることなく良好に混合した粒子を得る。
【0098】
反応性希釈剤を有する粒子充填フタロニトリル樹脂ブレンドは、200℃未満、更には150℃未満の温度で液体溶融物として加工可能であり得る。希釈剤は、樹脂の粘度を設定温度で低下させ、これは遠心混合による粒子の分散を改善し、より高い粒子充填を可能にする。
【0099】
充填樹脂からの繊維強化ポリマー繊維性複合材物品の製造は、例えば溶液分散シリカ及び場合によりミル加工されたカルサイト及び溶液分散炭化ケイ素充填フタロニトリル樹脂などの、1マイクロメートル未満、より好ましくは400ナノメートル未満の球状にマッピングされた粒子フィラーの特性サイズによって可能になる。
【0100】
本開示の少なくとも特定の実施形態による樹脂ブレンドは、1種以上の硬化剤を含む。このような硬化剤は、多くの場合、一級アミン等のアミン化合物、例えばアニリン官能性残基(aniline functional residue)を含むものを含む。所望により、様々な硬化剤の組み合わせを使用することができる。存在する場合、硬化剤は、典型的には、樹脂ブレンドの少なくとも1重量%、樹脂ブレンドの少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は更には少なくとも20重量%、及び樹脂ブレンドの最大40重量%、樹脂ブレンドの最大35重量%、最大30重量%、又は更には最大25重量%、例えば、樹脂ブレンドの0~40重量%の量で存在する。重合中の硬化剤の損失を避けるために、典型的には、より高分子量及びより低揮発性のアニリン官能性硬化剤が望ましい。ジアニリン系硬化剤は、硬化剤の重量当たりのアニリン官能性がより高いことから、有用となり得る。フタロニトリル重合を促進すると推定されるジアニリン系硬化剤の例としては、例えば、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジオキシ)ジアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェニル-1,1’-ジイルジオキシ)ジアニリン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルジオキシ)ジアニリン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-スルホニルジアニリン、4,4’-メチレン-ビス(2-メチルアニリン)、3,3’-メチレンジアニリン、3,4’-メチレンジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-(イソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(p-フェニレンオキシ)ジアニリン、及び4,4’-ジアミノベンゾフェノンが挙げられるが、これらに限定されない。一級アミンに促進されるフタロニトリル硬化反応は、200℃~250℃の温度でかなりの速度で進行する。アミン硬化されたフタロニトリル重合ネットワークは、高いガラス転移温度、良好な耐熱劣化性及び耐熱酸化劣化性によって付与される卓越した熱安定性を示し、更には本質的に不燃性で、吸湿性が低い。
【0101】
特定の他の任意選択的な添加剤も、本開示による樹脂ブレンドに含まれてもよく、例えば、強靭化剤、フィラー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。このような添加剤は、様々な機能を提供する。例えば、有機粒子などの強靭化剤は、硬化を妨げることなく、硬化後に、組成物に強度を追加し得る。1つの化合物が、2つ以上の異なる機能を形成してもよいことは、当業者に理解されよう。例えば、化合物は、強靭化剤及びフィラーの両方として機能してもよい。いくつかの実施形態において、このような添加剤は、樹脂ブレンドの樹脂と反応しない。いくつかの実施形態において、このような添加剤は、反応性官能基を、特に末端基として含んでもよい。このような反応性官能基の例としては、これらに限定されないが、アミン、チオール、アルコール、エポキシド、ビニル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
有用な強靭化剤は、ゴム相及び熱可塑性相の両方を有するポリマー化合物、例えば、重合した、ジエンゴム状コア及びポリアクリレート、ポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー;ゴム状のポリアクリレートコア及びポリアクリレート又はポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー;並びにフリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤からエポキシド中にてin situで重合されるエラストマー粒子である。
【0103】
米国特許第3,496,250号(Czerwinski)に開示されるものなど、第1の種類の有用な強靭化剤の例としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのシェル、モノビニル芳香族炭化水素、又はこれらの混合物がグラフト化されている重合されたジエンゴム状骨格又はコアを有する、グラフトコポリマーが挙げられる。例示的なゴム状骨格は、重合されたブタジエン又はブタジエン及びスチレンの重合された混合物を含む。重合メタクリル酸エステルを含む例示的なシェルは、低級アルキル(C~C)置換メタクリレートである。例示的なモノビニル芳香族炭化水素は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びエチルクロロスチレンである。グラフトコポリマーは、樹脂の重合を阻害する官能基を含有しないことが重要である。
【0104】
第2の種類の有用な強靭化剤の例は、アクリレートコア-シェルグラフトコポリマーであり、ここで、コア又は骨格は0℃未満のガラス転移温度を有するポリアクリレートポリマー、例えば、ポリメチルメタクリレート等の25℃超のガラス転移温度を有するポリメタクリレートポリマー(シェル)がグラフト化されたポリブチルアクリレート又はポリイソオクチルアクリレートである。
【0105】
第3の部類の有用な強靭化剤は、組成物の他の成分と混合する前に、25℃未満のガラス転移温度(T)を有するエラストマー粒子を含む。これらのエラストマー粒子は、フリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤から重合される。フリーラジカル重合性モノマーは、ジオール、ジアミン、及びアルカノールアミンなどの共反応性二官能性水素化合物と組み合わせた、エチレン性不飽和モノマー又はジイソシアネートである。
【0106】
有用な強靭化剤としては、コアが架橋スチレン/ブタジエンゴムであり、シェルがポリメチルアクリレートである、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コポリマーなどのコア/シェルポリマー(例えば、Rohm and Haas(Philadelphia,PA)から入手可能なACRYLOID KM653及びKM680)、ポリブタジエンを含むコア及びポリ(メチルメタクリレート)を含むシェルを有するもの(例えば、Kaneka Corporation(Houston,TX)から入手可能なKANE ACE M511、M521、B11A、B22、B31、及びM901、並びにATOFINA(Philadelphia,PA)から入手可能なCLEARSTRENGTH C223)、ポリシロキサンコア及びポリアクリレートシェルを有するもの(例えば、ATOFINAから入手可能な商標名CLEARSTRENGTH S-2001のもの、及びWacker-Chemie GmbH,Wacker Silicones(Munich,Germany)から入手可能なGENIOPERL P22)、ポリアクリレートコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能な商標名PARALOID EXL2330のもの、及び武田薬品工業(大阪)から入手可能なSTAPHYLOID AC3355及びAC3395)、MBSコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2691A、EXL2691、及びEXL2655)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
上記で使用したように、アクリルコア/シェル材料のための「コア」は、0℃未満のTを有するアクリルポリマーであることが理解され、「シェル」は、25℃より高いTを有するアクリルポリマーであることが理解されよう。
【0108】
他の有用な強靭化剤としては、B.F.Goodrich ChemicalCo.からの商標名HYCAR CTBN 1300X8、ATBN 1300X16、及びHYCAR 1072で入手可能なものなどのカルボキシ化されたアミン末端のアクリロニトリル/ブタジエン加硫性エラストマー前駆物質、商標名HYCAR CTBで入手可能なものなどのブタジエンポリマー、3M Co.(St.Paul,MN)からの分子量10,000の一級アミン末端化合物であるHCl101(すなわちポリテトラメチレンオキシドジアミン)、及びHuntsman Chemical Co.(Houston,TX)からの商標名JEFFAMINEで入手可能なものなどのアミン官能性ポリエーテルが挙げられる。有用な液体ポリ-ブタジエンヒドロキシル末端樹脂としては、Petroflex(Wilmington,DE)からLIQUIFLEXの商標名で、及びSartomer(Exton,PN)からHT45の商標名で入手可能なものが挙げられる。
【0109】
強靭化剤は、エポキシ末端化合物を含んでもよく、これは、ポリマー骨格に組み込まれ得る。典型的な、好ましい強靭化剤の一覧には、アクリルコア/シェルポリマー、スチレン-ブタジエン/メタクリレートコア/シェルポリマー、ポリエーテルポリマー、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエン、及びカルボキシル化ブタジエンが挙げられる。エポキシ樹脂を有する化合物中での鎖延長剤の提供から、上述した強靭化剤が無くとも、利点を得ることができる。しかし、特定の利点は、前に示唆したように、強靭化剤の存在又は異なる薬剤の組み合わせから得られる。
【0110】
所望の場合、強靭化剤の様々な組み合わせを用い得る。使用する場合、強靭化剤は少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の量で樹脂ブレンド中に存在する。使用する場合、強靭化剤は35重量%以下、又は25重量%以下の量で樹脂ブレンド中に存在する。
【0111】
その他の任意選択的な添加剤又は補助剤は、所望のように、組成物に添加されてもよい。このようなその他の任意選択的な添加剤の例としては、着色剤、酸化防止安定剤、熱分解安定剤、光安定剤、流動化剤、増粘剤、艶消し剤、更なるフィラー、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑化剤、ゴム強靭化剤、及び当業者に公知のその他の添加剤が挙げられる。このような添加剤は、典型的には、実質的に非反応性である。存在する場合、これらの補助剤は、又はその他の任意選択的な添加剤は、それらの意図された目的に有効な量で加えられる。
【0112】
更なる好適なフィラー材料の例としては、強化等級カーボンブラック、フルオロプラスチック、粘土、及びこれらのいずれかの任意の割合での任意の組み合わせが挙げられる。
【0113】
本明細書で使用する場合、語句「強化等級カーボンブラック」は、約10ミクロン未満の平均粒径を有する任意のカーボンブラックを含む。強化等級カーボンブラックに関するいくつかの特に好適な平均粒径は、約9nm~約40nmの範囲である。強化等級ではないカーボンブラックとしては、平均粒径が約40nmより大きいカーボンブラックが挙げられる。カーボンナノチューブもまた、有用なフィラーである。カーボンブラックのフィラーは、典型的には、組成物の伸長、硬度、磨耗耐性、伝導度、及び加工性のバランスをとるため、用いられる。好適な例としては、MTブラックス(メディアム・サーマル・ブラック)(名称:N-991、N-990、N-908、及びN-907)、FEF N-550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。
【0114】
更なる有用なフィラーとしては、ケイソウ土、硫酸バリウム、タルク、及びフッ化カルシウムが挙げられる。任意選択的な成分の選択及び量は、特定の用途の必要性に依存する。
【0115】
有利には、本開示による樹脂ブレンドは、樹脂ブレンドを含浸させることができる任意の強化又は成形材料を含むプリプレグにおける使用に好適である。したがって、第2の態様において、連続強化繊維と、連続強化繊維に含浸されている樹脂ブレンドと、を含む、プリプレグが提供される。第3の態様において、布と、布に含浸されている樹脂ブレンドと、を含む別のプリプレグが提供される。同様に、第4の態様において、成形調合物が提供される。成形調合物は、樹脂ブレンド中に分布した細断強化繊維を含む。第2の態様、第3の態様、及び第4の態様の各々の樹脂ブレンドは、上記に詳細に記載される第1の態様による。本開示の樹脂ブレンドは、様々な従来のプロセス、例えば、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング、トウ配置、樹脂注入プロセス、圧縮成形、又は従来のプリプレグ加工によって、混成物品を作製するために使用することができる。プリプレグは、繊維(又は布地)のアレイに樹脂ブレンドを含浸させ、次いで含浸されているテープ又は布地を積層することによって調製することができる。次いで、得られたプリプレグを、圧力又は真空(又はその両方)の適用と共に、熱を適用することによって硬化させて、捕捉された空気を全て除去することができる。
【0116】
第5の態様において、物品が提供される。物品は、第1の態様による樹脂ブレンドの重合生成物を含む。重合生成物の製造方法は、単一のフタロニトリル官能基を含む少なくとも1種の希釈剤を得ることと、(少なくとも1種の)希釈剤を少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂、硬化剤、触媒(例えば、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノン-5-エン又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどの塩基;還元剤、例えば、ヒドロキノン及び1,2,3,6-テトラヒドロピリジン;金属、有機金属又は金属塩、例えば、銅、鉄、銅アセチルアセトネート、ナフテン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化銅、塩化鉄、及び/又は炭酸カルシウム)、又はこれらの組み合わせとブレンドして、樹脂ブレンドを形成することと、樹脂ブレンドを高温にさらして、完全に重合されたネットワークを形成することと、を含む。一般的に、組成物を、約50~300℃、例えば約130~300℃の温度まで約1~480分間加熱する。好適な熱源としては、誘導加熱コイル、オーブン、ホットプレート、ヒートガン、レーザーを含む赤外線源、マイクロ波源が挙げられる。
【0117】
第6の態様において、別の物品が提供される。物品は、基材と、基材上に配置されている樹脂ブレンドの層と、を備える。樹脂ブレンドは、上記に詳細に記載される第1の態様による。図3を参照すると、第1主面11と、基材10の第1主面11上に配置されている(例えば、接着されている)樹脂ブレンドの層12と、を有する基材10を備える例示的な物品100の概略断面図が示される。樹脂ブレンドの層12は、基材10の第1主面11の少なくとも一部分を被覆する。
【0118】
樹脂ブレンドの層の厚さは特に限定されず、15マイクロメートル(μm)以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、50μm以上、75μm以上、100μm以上、125μm以上、又は更には150μm以上;及び300μm以下、275μm以下、250μm以下、225μm以下、200μm以下、又は更には175μm以下の厚さを有し得る。
【0119】
物品は、典型的には、少なくとも1つの基材を別の基材又は材料に接着するのに好適な接着剤物品である。物品の基材は限定されるものではなく、例えば、紙、ポリマーフィルム、ガラス、セラミック、木材、金属、繊維強化ポリマー材料、織布、不織布マトリックス、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、基材は剥離ライナーを備える。剥離ライナーは、例えば、シート、ウェブ、テープ、及びフィルムを含む種々の形態であることができる。好適な材料の例としては、例えば、紙(例えば、クラフト紙、ポリコート紙など)、ポリマーフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエステル)、複合ライナー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。剥離ライナーは、任意選択的に、例えば、線、アートワーク、ブランド表示、及びその他の情報を含む、様々な印及び表示を含み得る。有用な剥離ライナーの一例は、フルオロアルキルシリコーンポリコート紙である。
【0120】
本開示の例示的な実施形態
【0121】
実施形態1は、樹脂ブレンドである。樹脂ブレンドは、単一のフタロニトリル官能基を含む少なくとも1種の希釈剤と、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂と、を含む。少なくとも1種の希釈剤は、式Iの化合物:
【0122】
【化10】
【0123】
[式中、R、R、R、R、及びRは、H、アリル基、C~C20アルキル基、アリール基、エーテル基、チオエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸基、スルホニル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、二級アミン基、三級アミン基、又はこれらの組み合わせから独立して選択され、Aは酸素又は硫黄である]を含む。
【0124】
実施形態2は、少なくとも1種の希釈剤が、式IIの化合物:
【0125】
【化11】
【0126】
[式中、R、R、R、R、R、及びAは各々、式Iに関して定義したとおりである]を含む、実施形態1に記載の樹脂ブレンドである。
【0127】
実施形態3は、R、R、R、R、及びRのうちの1つ以上がアリル基である、実施形態1又は実施形態2に記載の樹脂ブレンドである。
【0128】
実施形態4は、Aが酸素である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0129】
実施形態5は、少なくとも1種の希釈剤が、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリル、及び4-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリルのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0130】
実施形態6は、少なくとも1種の希釈剤が、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリルを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0131】
実施形態7は、少なくとも1種の希釈剤が、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリルを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0132】
実施形態8は、少なくとも1種の希釈剤が、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリルを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0133】
実施形態9は、少なくとも1種の希釈剤が、4-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリルを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0134】
実施形態10は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂の少なくとも1種の希釈剤に対するモル比が、0.95以上である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0135】
実施形態11は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂の少なくとも1種の希釈剤に対するモル比が、1.0以上である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0136】
実施形態12は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂の少なくとも1種の希釈剤に対するモル比が、0.95~50(両端の値を含む)の範囲である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0137】
実施形態13は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂が、ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル樹脂、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0138】
実施形態14は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂が、ビスフェノールMジフタロニトリルエーテル樹脂を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0139】
実施形態15は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂が、ビスフェノールPジフタロニトリルエーテル樹脂を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0140】
実施形態16は、少なくとも1種のジフタロニトリル樹脂が、ビスフェノールTジフタロニトリルエーテル樹脂を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0141】
実施形態17は、レゾルシノールジフタロニトリルエーテル樹脂を更に含む、実施形態1~16のいずれか一つに記載の樹脂ブレンドである。
【0142】
実施形態18は、フィラーを更に含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0143】
実施形態19は、フィラーが、強化連続繊維又は強化不連続繊維のうちの少なくとも1つを含む、実施形態18に記載の樹脂ブレンドである。
【0144】
実施形態20は、フィラーが、金属炭化物ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、シリカナノ粒子、炭素ナノ粒子、金属炭酸塩ナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、金属水酸化物ナノ粒子、金属硫酸塩ナノ粒子、チタン酸バリウムナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含むナノフィラーを含む、実施形態18又は実施形態19に記載の樹脂ブレンドである。
【0145】
実施形態21は、フィラーが、カルサイトナノ粒子、シリカナノ粒子、炭化ケイ素ナノ粒子、アルミナナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、酸化マグネシウムナノ粒子、窒化アルミニウムナノ粒子、窒化ホウ素ナノ粒子、ドロマイトナノ粒子、ベーマイトナノ粒子、水酸化マグネシウムナノ粒子、硫酸カルシウムナノ粒子、硫酸バリウムナノ粒子、硫酸マグネシウムナノ粒子、又はこれらの組み合わせを含むナノフィラーを含む、実施形態18~20のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0146】
実施形態22は、フィラーが、金属炭化物マイクロ粒子、金属酸化物マイクロ粒子、シリカマイクロ粒子、炭素マイクロ粒子、金属炭酸塩マイクロ粒子、金属窒化物マイクロ粒子、金属水酸化物ナノ粒子、金属硫酸塩マイクロ粒子、チタン酸バリウムマイクロ粒子、セノスフェア、又はこれらの組み合わせを含むマイクロフィラーを含む、実施形態18~21のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0147】
実施形態23は、フィラーが、カルサイトマイクロ粒子、シリカマイクロ粒子、炭化ケイ素マイクロ粒子、アルミナマイクロ粒子、酸化マグネシウムマイクロ粒子、窒化アルミニウムマイクロ粒子、窒化ホウ素マイクロ粒子、ドロマイトマイクロ粒子、ベーマイトマイクロ粒子、グラスバブルズ、又はこれらの組み合わせを含むマイクロフィラーを含む、実施形態18~22のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0148】
実施形態24は、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%~40重量%(両端の値を含む)の量のナノフィラーを含む、実施形態18~23のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0149】
実施形態25は、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、1重量%~90重量%(両端の値を含む)の量のマイクロフィラーを含む、実施形態18~23のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0150】
実施形態26は、触媒、硬化剤、強靭化剤、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1種の添加剤を更に含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0151】
実施形態27は、硬化剤が、一級アミンを含む、実施形態26に記載の樹脂ブレンドである。
【0152】
実施形態28は、一級アミン硬化剤が、アニリン官能性残基を含む、実施形態27に記載の樹脂ブレンドである。
【0153】
実施形態29は、硬化剤が、樹脂ブレンドの総重量に基づいて、0~40重量%の量で存在する、実施形態26~28のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドである。
【0154】
実施形態30は、プリプレグである。プリプレグは、連続強化繊維と、連続強化繊維に含浸されている実施形態1~29のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドと、を含む。
【0155】
実施形態31は、プリプレグである。プリプレグは、布と、布に含浸されている実施形態1~29のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドと、を含む。
【0156】
実施形態32は、成形調合物である。成形調合物は、実施形態1~29のいずれか1つに記載の樹脂ブレンド中に分布している細断強化繊維を含む。
【0157】
実施形態33は、物品である。物品は、実施形態1~29のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドの重合生成物を含む。
【0158】
実施形態34は、物品である。物品は、基材と、基材上に配置されている実施形態1~29のいずれか1つに記載の樹脂ブレンドの層と、を備える。
【0159】
実施形態35は、基材が、剥離ライナーを備える、実施形態34に記載の物品である。
【実施例
【0160】
材料及び方法
【0161】
使用した化学物質を供給元とともに表1に示す。全ての材料は民間の供給元から入手し、受領した状態で使用した。
【0162】
【表1】
【0163】
PS-ナノシリカの調製方法
249.5kgのNALCO15827を、撹拌しながらケトルに添加した。203.2kgの1-メトキシ-2-プロパノール中の2.105kgのトリメトキシフェニルシランのプレミックスを、NALCO15827を入れたケトル内にポンプで送り、30分間混合した。溶液を、149℃の反応温度及び20.4気圧(2.07MPa)の圧力で、米国特許第8,394,977号に記載されているように、高温管反応器内にポンプで送った。混合物を149℃で35分間保持し、次いで周囲温度まで冷却した。熱重量分析(TGA)により測定された固形分含有量は、24重量%のPS-ナノシリカであった。
【0164】
複素剪断粘度の測定方法
平行板形状の応力制御レオメータTA instruments Discovery Series HR-2(TA Instruments(New Castle,DE)から入手)を使用して、複素剪断粘度を測定した。ツーリングは、上部の40ミリメートル(mm)のトッププレートと下部の温度制御ペルチェプレートを利用した。上部プレートと下部プレートとの間の間隙は0.5mmであった。粘度は、1%ひずみ振動を1Hzの周波数で6秒間(3秒間のコンディショニングステップと3秒間の測定ステップとに分けて)適用することによって測定した。
【0165】
示差走査熱量計(DSC)による硬化反応発熱量の測定方法
TA Instruments QシリーズDSC(TA Instruments(New Castle,DE)から入手)を使用して、一定の昇温速度適用下における材料の動的熱流を測定した。約5ミリグラム(mg)の樹脂を、アルミニウムDSCパン内に量り取った。試料パンをDSC装置内に入れ、試料の熱流を、毎分指定された摂氏温度(℃/分)の昇温速度にて、動的DSC測定で測定した。
【0166】
動的機械分析器(DMA)による動的機械的特性の測定方法
TA Instruments QシリーズDMA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手)を使用して、低ひずみ線形粘弾性を測定した。動的機械測定は、単一片持ち梁形状(single cantilever beam geometry)を使用して実施した。1ヘルツ(Hz)の周波数で20マイクロメートル(μm)の制御された変形振幅にて、連続振動力を適用したときの、低ひずみ同相及び位相外れの変形応答を測定し、測定中に昇温して、得られる貯蔵弾性率及び損失弾性率、並びに損失正接を計算した。温度を3℃/分で上昇させた。
【0167】
熱重量分析(TGA)による重量損失の測定方法
TA Instruments QシリーズTGA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手)を使用して、一定の昇温速度適用下における材料の動的重量損失を測定した。約5mgの試料を白金パンにのせ、TGA内に入れた。試料の質量損失を、窒素雰囲気下にて、1℃/分の熱傾斜で測定した。
【0168】
フーリエ変換赤外(FTIR)吸光度分光法の測定方法
Thermo Scientific Nicolet 6700 FTIR分光計にSmart iTRアクセサリを使用して(Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)から入手)、減衰全反射(ATR)によって赤外吸光度を測定した。ニトリルの炭素-窒素三重結合伸縮及びアリルの炭素-炭素二重結合伸縮を特定する分光吸光度フィーチャを、フタロニトリルモノマー系(樹脂+希釈剤)及び重合ポリマーネットワークについて測定した。
【0169】
核磁気共鳴(NMR)スペクトル法の測定方法
Bruker Ultrashield 500+NMRスペクトル計(Bruker(Billerica,MA)から入手)を使用して、プロトン及び炭素化学シフトを測定した。プロトン及び炭素の化学シフトは、TMSを基準にして列挙される。プロトン共鳴周波数の吸収の積分により、観察されたプロトンの数を特定した。プロトン及び炭素の化学シフト及びプロトンピークの積分を使用して、材料生成物を同定した。
【0170】
調製例
比較例A~E
比較例A~E(CE-A~CE-E)は、表2に指定された量及び温度で最初にフタロニトリル成分を溶融ブレンドすることによって調製した。CE-Bフタロニトリル樹脂の複素剪断粘度を図2に示す。次いで、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンを、表2に従って樹脂ブレンドに添加した。得られた樹脂を空気循環オーブンに入れ、以下のように硬化させた。
【0171】
CE-A:200℃で5時間、及び250℃で24時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0172】
CE-B:200℃で5時間、及び300℃で24時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0173】
CE-C:200℃で5時間、300℃で24時間、及び325℃で6時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0174】
CE-D:200℃で5時間、及び300℃で24時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;並びに
【0175】
CE-E:200℃で5時間、300℃で24時間、及び325℃で6時間、設定値間で3℃/分で上昇させる。
【0176】
全ての比較例の樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。次いで、固体試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)、軟化温度(E’(開始))及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップに切断した。CE-A~CE-Eのデータを表5に示す。
【0177】
CE-Bの重合反応に続いて、代表的な5mg試料についてDSC測定を行った。試料を、0.25℃/分の加熱速度で熱傾斜にかけ、温度の関数として熱流を測定した。重合の質量比熱は、材料のベースライン熱流を基準とした反応発熱量を積分することによって計算した。重合熱を表7に示す。
【0178】
【表2】
【0179】
調製例1(PE-1)、APPN
APPN、アリルフェノールフタロニトリル(すなわち、4-(2-アリルフェノキシ)フタロニトリル)を、4-ニトロフタロニトリル及び2-アリルフェノールの求核置換反応から誘導した。5000ミリリットル(mL)の三つ口反応フラスコに、400g(2.31mol)の4-ニトロフタロニトリル、310.0g(2.31mol)の2-アリルフェノール、400g(2.89mol)の無水KCO、及び2250gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を、ワットマン#4濾紙を有するブフナー漏斗に通して濾過して、未溶解塩を除去した。濾過した溶液を、4000mLの冷メタノール/水(質量で60/40)にゆっくりと添加し、-25℃未満の温度まで冷却し、これを、テフロン撹拌羽根を取り付けたガラス撹拌シャフトによって機械的に撹拌した。メタノール/水溶液の温度を、反応溶液の添加中に-15℃未満に維持した。反応溶液の添加により、生成物の沈殿がもたらされた。生成物を、ワットマン#4濾紙を有する卓上型ブフナー型フィルタを使用して真空濾過により回収し、2000mLの周囲温度メタノール/水(質量で60/40)で洗浄した。液体を回収し、120℃に設定した対流式オーブンで乾燥させた。冷却すると、樹脂が結晶化した。生成物は、495g(82.3%)で、示差走査熱量測定法で測定したときに63℃の融解温度を有し、赤外及びNMR分析で、所望の化合物であると同定した。
【0180】
DSC T=63℃.FTIR(ATR;cm-1):2231(-CN),1639(-C=C),1247(C-O-C).H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含有するCDCl;δ,ppm):7.72(d,1H),7.37(d,1H),7.31(m,2H),7.21(s,1H),7.19(d,1H),6.99(d,1H),5.84(m,1H),5.02(d,1H),4.96(d,1H),3.28(d,2H).13C NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含有するCDCl;δ,ppm):161.79,151.19,135.42,135.36,132.42,131.62,128.54,126.77,121.09,120.91,120.86,117.62,116.75,115.43,115.01,108.56,34.08.
【0181】
調製例2(PE-2)、EuPN
EuPN、オイゲノールフタロニトリル(すなわち、4-(2-メトキシ-4-アリルフェノキシ)フタロニトリル)を、4-ニトロフタロニトリル及びオイゲノール(すなわち、2-メトキシ-4-アリルフェノール)の求核置換反応から誘導した。5000mLの三つ口反応フラスコに、400g(2.31mol)の4-ニトロフタロニトリル、379.4g(2.31mol)のオイゲノール、400g(2.89mol)の無水KCO、及び2500gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を、ワットマン#4濾紙を有するブフナー漏斗に通して濾過して、未溶解塩を除去した。濾過した溶液を、4000mLの氷冷メタノール/水(質量で60/40、1400gの氷に2080gのメタノールを注ぐことによって調製)にゆっくりと添加し、これを、テフロン撹拌羽根を取り付けたガラス撹拌シャフトによって機械的に撹拌した。反応溶液の添加により、生成物の沈殿がもたらされた。生成物を、ワットマン#4濾紙を有する卓上型ブフナー型フィルタを使用して真空濾過により回収し、2000mLの周囲温度メタノール/水(質量で60/40)で洗浄した。生成物ケーキをすくい取ってアルミニウムパンに入れ、130℃に設定した対流式オーブンに一晩入れて乾燥させた。冷却すると、樹脂が結晶化した。生成物は、528g(78.7%)で、示差走査熱量測定法で測定したときに100℃の融解温度を有し、赤外及びNMR分析で、所望の化合物であると同定した。
【0182】
DSC T=100℃.FTIR(ATR;cm-1):2227(-CN),1636(-C=C),1244(C-O-C).H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):7.69(d,1H),7.18(d,1H),7.17(s,1H),7.02(d,1H),6.88(s,1H),6.85(d,1H),5.99(m,1H),5.16(d,1H),5.13(d,1H),3.77(s,3H),3.43(d,2H).13C NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):161.94,151.03,140.01,139.48,136.65,135.14,122.33,121.47,120.46,120.34,117.29,116.60,115.62,115.23,113.34,108.18,55.76,40.07.
【0183】
調製例3(PE-3)、tBPPN
tBPPN、4-tertブチルフェノールフタロニトリル(すなわち、4-(4-tert-ブチルフェノキシ)フタロニトリル)を、4-ニトロフタロニトリル及び4-tert-ブチルフェノールの求核置換反応から誘導した。5000mLの三つ口反応フラスコに、300g(1.73mol)の4-ニトロフタロニトリル、260.3g(1.73mol)の4-tert-ブチルフェノール、300g(2.17mol)の無水KCO、及び1900gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を、ワットマン#4濾紙を有するブフナー漏斗に通して濾過して、未溶解塩を除去した。濾過した溶液を、3000mLの氷冷メタノール/水(質量で60/40、1050gの氷に1560gのメタノールを注ぐことによって調製)にゆっくりと添加し、これを、テフロン撹拌羽根を取り付けたガラス撹拌シャフトによって機械的に撹拌した。反応溶液の添加により、生成物の沈殿がもたらされた。生成物を、ワットマン#4濾紙を有する卓上型ブフナー型フィルタを使用して真空濾過により回収し、1500mLの周囲温度メタノール/水(質量で60/40)で洗浄した。生成物ケーキをすくい取ってアルミニウムパンに入れ、130℃に設定した対流式オーブンに一晩入れて乾燥させた。冷却すると、樹脂が結晶化した。生成物は、429g(89.6%)で、示差走査熱量測定法で測定したときに120℃の融解温度を有し、赤外及びNMR分析で、所望の化合物であると同定した。
【0184】
DSC T=120℃.FTIR(ATR;cm-1):2231(-CN),1243(C-O-C).H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):H NMR(500MHz,CDCl3with0.05%v/vTMS;δ,ppm):7.71(d,1H),7.47(d,2H),7.26(s,1H),7.25(d,1H),7.00(d,2H),1.36(s,9H).13C NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):162.12,151.02,149.45,135.33,127.55,121.33,121.22,120.10,117.52,115.49,115.07,108.47,34.62,31.40.
【0185】
調製例4(PE-4)、mCPN
m-CPN、m-クレゾールフタロニトリル(すなわち、4-(3-メチルフェノキシ)フタロニトリル)を、4-ニトロフタロニトリル及びm-クレゾールの求核置換反応から誘導した。5000mLの三つ口反応フラスコに、300g(1.73mol)の4-ニトロフタロニトリル、187.4g(1.73mol)のm-クレゾール、300g(2.17mol)の無水KCO、及び1700gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を、ワットマン#4濾紙を有するブフナー漏斗に通して濾過して、未溶解塩を除去した。濾過した溶液を、3000mLの氷冷メタノール/水(質量で60/40、1050gの氷に1560gのメタノールを注ぐことによって調製)にゆっくりと添加し、これを、テフロン撹拌羽根を取り付けたガラス撹拌シャフトによって機械的に撹拌した。反応溶液の添加により、生成物の沈殿がもたらされた。生成物を、ワットマン#4濾紙を有する卓上型ブフナー型フィルタを使用して真空濾過により回収し、1500mLの周囲温度メタノール/水(質量で60/40)で洗浄した。生成物ケーキをすくい取ってアルミニウムパンに入れ、130℃に設定した対流式オーブンに一晩入れて乾燥させた。冷却すると、樹脂が結晶化した。生成物は、340g(83.9%)で、示差走査熱量測定法で測定したときに95℃の融解温度を有し、赤外及びNMR分析で、所望の化合物であると同定した。
【0186】
DSC T=95℃.FTIR(ATR;cm-1):2228(-CN),1247(C-O-C).H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):H NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):7.72(d,1H),7.35(t,1H),7.25(s,1H),7.24(d,1H),7.13(d,1H),6.89(s,1H),6.87(d,1H),2.40(s,3H).13C NMR(500MHz,0.05%(体積/体積)のTMSを含むCDCl;δ,ppm):161.95,153.47,141.19,135.35,130.37,127.11,121.42,121.38,121.20,117.58,117.56,115.45,115.02,108.60,21.39.
【0187】
実施例1~12(EX-1~EX-12)
実施例1~12(EX-1~EX-12)は、表3に指定された量及び温度で最初に多官能性フタロニトリル成分を溶融ブレンドすることによって調製した。次いで、樹脂を冷却した後、希釈剤フタロニトリル成分を表3に列挙した量で添加し、均質になるまで撹拌した。EX-1、EX-5、及びEX-8のフタロニトリル樹脂の各々の複素剪断粘度を図2に示す。次いで最後に、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンの樹脂100部に対して4部(pph)を150℃で樹脂ブレンドに添加し、均質になるまで撹拌した(それぞれ175℃及び190℃で撹拌したEX-11及びEX-12を除いて)。得られた樹脂を空気循環オーブンに入れ、以下のように重合した。
【0188】
EX-1~EX-7:175℃で3時間、200℃で3時間、及び300℃で4時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0189】
EX-8及びEX-9:175℃で3時間、200℃で3時間、及び300℃で24時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0190】
EX-10及びEX-11:175℃で3時間、200℃で3時間、300℃で4時間、及び325℃で2時間、設定値間で3℃/分で上昇させる;
【0191】
EX-12:175℃で3時間、200℃で3時間、及び300℃で24時間、及び325℃で4時間、設定値間で3℃/分で上昇させる。
【0192】
EX-1~EX-12の各々についての重合反応に続いて、代表的な5mg試料についてDSCを行い、所定の加熱スケジュールにわたって反応の重合熱の完了を示した。モノマー樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)、軟化温度(E’(開始))及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップに切断した。EX-1~EX-12のデータを表5に示す。
【0193】
EX-1及びEX-8の重合反応に続いて、2つの代表的な5mg試料についてDSC測定を行った。第1の試料は、空気対流式オーブン内に配置された樹脂系のための所定の加熱スケジュールに従い、反応の重合熱の完了を示した。第2の試料を、0.25℃/分の加熱速度で熱傾斜にかけ、温度の関数として熱流を測定した。重合の質量比熱は、材料のベースライン熱流を基準とした反応発熱量を積分することによって計算した。重合熱を表7に示す。
【0194】
実施例13~19(EX-13~EX-19)
実施例13~19(EX-13~EX-19)を、各々、表4に指定された量及び温度で最初にフタロニトリル成分を溶融ブレンドすることによって調製した。次いで、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンを、表4により指定された温度にて、樹脂ブレンドに添加し、撹拌した。得られた樹脂を空気循環オーブンに入れ、以下のように重合した。
【0195】
EX-13~EX-19:175℃で3時間、200℃で3時間、及び300℃で4時間、設定値間で3℃/分で上昇させる。
【0196】
重合反応に続いて、代表的な5mg試料についてDSCを行い、所定の加熱スケジュールにわたって反応の重合熱の完了を示した。モノマー樹脂は、熱硬化性のネットワーク重合を起こして、硬質の剛性固体になった。固体を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)、軟化温度(E’(開始))及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップに切断した。EX-13~EX-19のデータを表6に示す。3℃/分で昇温させながら測定したEX-13~EX-19の各々の貯蔵弾性率を図1にプロットする。
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】
【0199】
実施例20(EX-20)
質量比2/1のBMPN及びRPN 640gを、200mm×260mmのアルミニウムパン内に量り取り、200℃に設定した空気対流式オーブンで溶融した。樹脂ブレンドを均質になるまで撹拌した。BMPN/RPNブレンドを、オーブンの温度を下げることによって150℃まで冷却した。320gのAPPNをBMPN/RPNブレンドに添加し、均質になるまで撹拌した。38.4gの4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンを樹脂ブレンドに添加し、均質になるまで150℃で樹脂中に撹拌した。樹脂を、加熱されたポンプと、押出機出口で100mm幅のダイとを装着した4ゾーン二軸押出機に注いだ。各押出機ゾーンを120℃まで加熱した。ポンプ温度を105℃に設定し、ダイ温度を65℃に設定した。ダイを出る樹脂を、2つのポリエチレンテレフタレート(PET)剥離ライナーの間に供給し、2つのローラーを通過させて、押出樹脂を均一なコーティングに広げた。ライン速度を較正して、5mil(0.13mm)の樹脂フィルム厚を得た。
【0200】
実施例21(EX-21)
実施例20のフタロニトリル樹脂ブレンドを使用して、実験室関連環境においてプリプレグを調製した。実施例20のフタロニトリル樹脂ブレンドフィルムから1つのPET剥離ライナーを除去し、フィルムを第2の剥離ライナー上に担持されたままにした。フタロニトリルフィルムを、70℃の温度に加熱した9インチ×9インチ(22.9cm×22.9cm)のホットプレート上に剥離ライナー側を下にして置き、ここでフタロニトリル樹脂は10パスカル秒(Pa・s)の粘度を有した。HexForce C-370-8HS-6K-8HBG-IM IM7(370g/mの面密度)の連続炭素繊維布地(Hexel Corporation(Stamford,CT))の4.5インチ×6.5インチ(11.4cm×16.5cm)試験片をフタロニトリルフィルム上に置いた。第2のPET剥離ライナーを炭素繊維布地の上に置き、PET剥離ライナー、フタロニトリルフィルム、炭素繊維布地、及びPET剥離ライナーの積層体を作製した。炭素繊維布地に、Marshalltown 2インチの硬いゴムシームローラーの補助により、フタロニトリル樹脂フィルムを含浸させた。手の圧力をローラーに適用した。連続ローラーストーク(stokes)を、上部剥離ライナーを横切って使用して、布地から空気を押し出し、布地に樹脂を含浸させた。最終物品は、2つの剥離ライナーの間に実施例20のフタロニトリル樹脂ブレンドを含浸させている連続炭素繊維布地からなった。
【0201】
実施例22(EX-22)
400gのBMPN、RPN、及びAPPN樹脂を所定の質量比でブレンドし、実施例7に記載の方法で調製した。樹脂100部に対して4部(pph)の4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンを、135℃で樹脂ブレンドに添加し、均質になるまで撹拌し、周囲温度まで放冷した。樹脂ブレンド系を、2100ccシリーズRTMインジェクタ(Radius Engineering,Inc.(Souths Salt Lake,UT)から)のインジェクタシリンダに添加した。固体樹脂を、135℃のインジェクタシリンダで溶融し、撹拌用エアミキサーヘッドを用いて真空下(0.1Torr(13.33Pa)未満)で脱気した。対称な擬似等方性層構成で積層した、6K HEXTOW IM7 CARBON FIBER(Hexcel Corp.(Stamford,CT)からの、商標名HEXTOW IM7 CARBON FIBER)の5つのハーネスサチン織布地の14個の層を、閉じた金属成形型に配置した。2部品成形型の内部寸法は、330mm×330mm×4mmであった。成形型は、約180kNの型締力(約870kPaの型締力)を有するホットプレスに保持した。成形型を0.1Torr(13.33Pa)未満の絶対圧力まで真空引きし、175℃の注入温度まで予熱した。注入は、135℃まで加熱されたインジェクタシリンダ、インジェクタシリンダから175℃まで加熱された成形型までの加熱線、175℃の成形型温度で行われた。成形型充填プロセス中に、0.1Torr(13.3Pa)未満の真空を適用した。成形型出口で樹脂を検出したときに、出口弁を閉じた。樹脂を100psi(690kPa)の圧力まで注入した。パネルを175℃で3時間、205℃で3時間硬化させた。パネルを成形型から取り出し、300℃の空気対流式オーブン内で4時間後硬化させた。パネルは、低空隙率を有する良好な全体的品質を示した。布地特性及び測定されたパネル厚に基づいて、繊維体積分率は67%と算出された。
【0202】
実施例23(EX-23)
240gのBMPN、RPN、及びAPPN樹脂を質量比でブレンドし、実施例7に記載の方法で5Lの丸底フラスコ中で調製し、90℃まで放冷した。5Lの丸底フラスコを、90℃に設定された油浴温度を有するビュッヒ(Buchi)ロータリーエバポレーター上に配置した。質量で1/1の1-メトキシ-2-プロパノール/ブチルアセテート溶媒系中の283.5gのPS-ナノシリカ懸濁液(水のPS-ナノシリカゾルをストリッピングし、ブチルアセテートを逆添加することによって調製した0.378質量分率のシリカ)を、90℃に予熱し、フタロニトリル樹脂ブレンドに添加した。1-メトキシ-2-プロパノール及びブチルアセテート溶媒を、PS-ナノシリカ/フタロニトリル混合物から90℃の浴温度にてストリッピングし、フラスコ圧力を制御して、溶液の突沸を防止した。初期圧力を500mbarに設定し、3時間にわたって50mbarまで徐々に減圧させた。3時間後、溶媒の大部分は、PS-ナノシリカ/樹脂ブレンドからストリッピングされていた。浴温度を140℃まで上昇させ、更に3時間ストリッピングした。フラスコをロータリーエバポレーターから取り外し、ナノシリカ充填樹脂を、ゴムスパチュラで吐き出して掻き取りすることによってフラスコから取り出した。PS-ナノシリカの重量を除いた樹脂ブレンドの重量に基づいて、4,4’-(1,3-フェニレンジオキシ)ジアニリンの100部に対して4部(pph)を、PSナノシリカ充填樹脂ブレンドに135℃で添加し、均質になるまで撹拌した。樹脂を135℃に加熱された真空チャンバ内で脱気して、捕捉された空気を除去した。樹脂を、175℃の温度に予熱した一方の端部で開いた1/8”厚のプラーク成形型に注いだ。プラークは、FREKOTE 55NC型離型剤で前処理された。プラークを175℃で3時間、205℃で3時間硬化させた。部分的に硬化した樹脂プラークを成形型から取り外し、300℃で更に12時間後硬化させた。ナノシリカ充填量は、TGA重量損失測定により29重量%であると決定された。単一片持ち梁形状における剛性(E’)、軟化温度(E’(開始))及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試験片をプラークから切り取った。25℃で測定された剛性は3625MPaであり;E’(開始)温度は314℃であり;tanδピーク温度は362℃であった。
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
【表7】
【0206】
本明細書ではいくつかの例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の修正形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが、諒解されるであろう。更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度に、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的な実施形態について説明してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3