(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】N-ビニルラクタム系架橋重合体、化粧料、インク用吸収剤及び吸収性複合体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20220609BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220609BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220609BHJP
C08F 20/28 20060101ALI20220609BHJP
C08F 26/06 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20220609BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20220609BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220609BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220609BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B01J20/26 B
C08L101/02
C08L101/12
C08F20/28
C08F26/06
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/88
A61K8/98
A61L9/01 H
A61Q1/00
A61Q1/14
A61Q5/00
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q19/10
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2020128195
(22)【出願日】2020-07-29
(62)【分割の表示】P 2018526459の分割
【原出願日】2017-07-07
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2016136038
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016146535
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016176596
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016229398
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016255516
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017035357
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017035358
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池元 結衣
(72)【発明者】
【氏名】岡村 一弘
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315811(JP,A)
【文献】特開2015-047570(JP,A)
【文献】特開平03-104683(JP,A)
【文献】特開2015-123083(JP,A)
【文献】特開2003-201673(JP,A)
【文献】特開2012-072277(JP,A)
【文献】特開平03-095211(JP,A)
【文献】特開平07-070338(JP,A)
【文献】特開平10-101745(JP,A)
【文献】特開2015-205791(JP,A)
【文献】特開平07-090722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08F 20/28
C08F 26/06
A61L 9/01
B01J 20/26
A61K 8/02
A61K 8/73
A61K 8/88
A61K 8/98
A61Q 19/00
A61Q 1/00
A61Q 17/04
A61Q 19/10
A61Q 1/14
A61Q 5/00
A61K 8/81
A61K 8/86
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを含む吸収性複合体であって、
該ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が2.5以上、15以下であり、
該ノニオン系架橋重合体は、
N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を全構造単位(ノニオン系単量体(A)由来の構造単位(a)及びその他の単量体(E)由来の構造単位)100モル%に対して70~100モル%有し、架橋性単量
体に由来する構造単位を全構造単位100モル%に対して0.1~2モル%有
し、
該架橋性単量体は、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ペンタエリスリトール(トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、(トリ、テトラ)アリルスクロースからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする吸収性複合体。
【請求項2】
ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを含む吸収性複合体であって、
該ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が0.1以上、2未満であり、
該ノニオン系架橋重合体は、
N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を全構造単位(ノニオン系単量体(A)由来の構造単位(a)及びその他の単量体(E)由来の構造単位)100モル%に対して70~100モル%有し、架橋性単量
体に由来する構造単位を全構造単位100モル%に対して0.1~2モル%有
し、
該架橋性単量体は、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ペンタエリスリトール(トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、(トリ、テトラ)アリルスクロースからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする吸収性複合体。
【請求項3】
前記吸収基材は、親水性繊維を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の吸収性複合体。
【請求項4】
前記親水性繊維は、セルロース系繊維、ポリアミド系繊維、動物繊維、表層を親水化した疎水性の繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項
3に記載の吸収性複合体。
【請求項5】
前記吸収基材は、シート状又は袋状であることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の吸収性複合体。
【請求項6】
前記吸収性複合体は、吸収性複合体1g当たりの水の吸液能力が3~30gであることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の吸収性複合体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の吸収性複合体を含むことを特徴とする消臭剤。
【請求項8】
請求項
7に記載の消臭剤を備えることを特徴とする消臭器。
【請求項9】
請求項
7に記載の消臭剤を消臭器に組み込んで使用する方法。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれかに記載の吸収性複合体を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項11】
請求項1~
6のいずれかに記載の吸収性複合体を化粧料として使用する方法。
【請求項12】
請求項1~
6のいずれかに記載の吸収性複合体からなることを特徴とするインク用吸収体。
【請求項13】
請求項1
2に記載のインク用吸収体を用いて構成されることを特徴とする吸収材。
【請求項14】
請求項1
2に記載のインク用吸収体がインクを吸収していることを特徴とするインク吸収体。
【請求項15】
請求項1
2に記載のインク用吸収体を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項16】
請求項1
2に記載のインク用吸収体を印刷装置に組み込んで使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-ビニルラクタム系架橋重合体、化粧料、吸収性複合体及びインク用吸収剤に関する。より詳しくは、皮膚化粧料、皮膚外用剤及び頭髪化粧料、筆記具、インクジェット式記録装置等のインク吸収剤、消臭剤、芳香剤等に有用なN-ビニルラクタム系架橋重合体、化粧料、吸収性複合体及びインク用吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクタム構造を有する重合体は、親水性を有し、人体や環境への安全性が高いこと等から、様々な用途で利用されている。
特に、ラクタム構造を有する架橋重合体は、水等を吸液・保水する用途において有用であり、紙おむつ等の吸水性(吸液性)樹脂として広く用いられている。このような、吸液性樹脂に関して例えば、特許文献1~4には、環状ビニルラクタムを含む単量体成分と架橋剤とを共重合させた吸液性樹脂やその製造方法が開示されている。
また、ラクタム構造を有する架橋重合体は、界面活性剤、芳香成分、消臭成分、化粧品成分等の担持剤、保湿剤、増粘剤、分散剤等として、様々な化粧品に配合されている(特許文献5~7参照)。
【0003】
また従来、ポリアクリル酸(塩)を主成分とする吸水性材料が開発されており、オムツや生理用品などの衛生用品等の衛生分野、医療分野、土木・建築分野、食品分野、工業分野、土壌改質剤、農業・園芸分野等、多種多様な分野に利用されている。
例えば、特許文献8~10には、ポリアクリル酸(塩)を主成分とする架橋体と基材とを含む吸収性複合体、又は、インク吸収体が開示されている。
【0004】
さらに、ボールペン等の筆記具や塗布具等には、過剰なインクの吸収や、保留するインクの密度を均一にするためにインク吸収体が用いられている(特許文献11~17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-5582号公報
【文献】特開平10-101745号公報
【文献】特開2001-226431号公報
【文献】特開2012-072277号公報
【文献】特開2007-45776号公報
【文献】特表2012-520317号公報
【文献】米国特許第5139770号明細書
【文献】特開2008-86590号公報
【文献】特開2009-274302号公報
【文献】特開2000-135797号公報
【文献】特開2005-219482号公報
【文献】特開2001-301379号公報
【文献】特開平9-183231号公報
【文献】特開2000-135797号公報
【文献】特開2000-239342号公報
【文献】特開2009-274302号公報
【文献】特開2006-272734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、種々のN-ビニルラクタム系架橋重合体が開示されているが、種々の用途に適用するためには、吸液能力に優れることの他に、ゲル解砕を充分に行うことができることも重要な要素である。従来のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、吸液能力と、ゲル解砕を充分に行えることとの両立の点において、充分でなかった。さらに、化粧料用途においては、保湿性に優れることに加えて、化粧料に一般的に配合されるエタノールの吸液能力に優れ、化粧料として肌に塗布した際の肌への密着性にも優れ、かつ有効成分濃度の高い架橋重合体が求められていた。
【0007】
また添加剤として保湿剤を含有する化粧料等の種々の化粧料が開示されているが、消費者の安全志向から、より安全性が高く、さらに添加剤粒子の肌への密着性や、肌への塗布性にも優れた添加剤を含有する化粧料の開発が求められていた。
【0008】
更に、上述のとおり、種々の吸収性複合体(インク吸収体)が開示されているが、従来のポリアクリル酸(塩)を主成分とする吸収性複合体は、吸収できる液体として水、又は、水を多く含む溶液に限られ、例えば、水を過剰に含む水溶液として有機溶剤を吸液できるものの、水が蒸発し有機溶剤成分の濃度が上昇すると、吸液した液を保持しきれず、液の染み出し(はきだし)が生じる等の問題があった。そこで様々な種類の液体の吸液能力に優れた吸収性複合体の開発が求められていた。
【0009】
更に、上述のとおり、種々のインク吸収体やインク用吸収剤が開発されているものの、特許文献11~16に記載のインク吸収体やインク用吸収剤は、吸収できるインクの量や種類の点で充分とはいえず、吸液能力が充分でなかった。また、特許文献17に記載の発明は、吸収体にエマルション等を含浸、もしくは表面塗布することにより、吸収体にインクを容易に(泡立つことなく)吸収させる発明であり、エマルション等はインクを保持するために用いられるものではなく、吸収体自体の吸液能は低いものであった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、吸液能力に優れ、かつ、ゲル解砕を充分に行うことができる架橋重合体を提供することを目的とする。
本発明はまた、保湿性に優れるとともに、エタノールの吸液能力に優れ、化粧料として肌に塗布した際に、肌への密着性に優れ、かつ、有効成分濃度の高い架橋重合体を提供することも目的とする。
さらに本発明は、従来の化粧料より、人に対する安全性が高く、肌への密着性にも優れる添加剤を含有する化粧料、及び、人に対する安全性が高く、肌への塗布性を良好にすることができる添加剤を含有する化粧料を提供することも目的とする。
さらに本発明は、種々の液体の吸液能力に優れた吸収性複合体を提供することも目的とする。
さらに本発明は、従来のインク用吸収剤よりも、インクの吸液能力に優れたインク用吸収剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、吸液能力に優れ、かつ、ゲル解砕を行うことができる架橋重合体について種々検討したところ、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位の割合が特定の範囲であるN-ビニルラクタム系架橋重合体が、吸液能力に優れ、かつ、ゲル解砕を充分に行うことができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、第1の本発明に到達したものである。
【0012】
本発明者はまた、架橋重合体について種々検討したところ、アスペクト比が特定の範囲であり、特定の吸水能力を有するN-ビニルラクタム系架橋重合体が、保湿性に優れるとともに、エタノールの吸液能力に優れ、化粧料として肌に塗布した際に、肌への密着性にも優れ、かつ、有効成分濃度が高いことを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、第2の本発明に到達したものである。
【0013】
本発明者はまた、化粧料について種々検討したところ、粒子のアスペクト比が1.15~10である、環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する環状N-ビニルラクタム系架橋体が、安全性に優れ、保湿、吸油、増粘効果を発揮し、肌への密着性にも優れ、また、5質量%水分散体の粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満である環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する環状N-ビニルラクタム系架橋重合体が、安全性に優れ、保湿、吸油効果を発揮し、肌への塗布性が良好であり、これらが化粧料用途に好適に用いることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、第3の本発明に到達したものである。
【0014】
本発明者はまた、吸収性複合体について種々検討したところ、ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを含み、ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比、又は、吸収性複合体の厚みが特定の範囲である吸収性複合体が、様々な種類の液体について、優れた吸収性能を発揮することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、第4の本発明に到達したものである。
【0015】
本発明者はまた、インク用吸収剤について種々検討したところ、N-ビニルラクタム系架橋重合体が吸収できるインクの量及び種類の両面において優れた吸液能力を発揮し、インク用吸収剤として好適に用いることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、第5の本発明に到達したものである。
【0016】
すなわち第1の本発明は、N-ビニルラクタム系架橋重合体であって、該N-ビニルラクタム系架橋重合体は、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位とシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位とを有し、上記シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100モル%に対して0.12~0.48モル%であるN-ビニルラクタム系架橋重合体である。
【0017】
また第2の本発明は、N-ビニルラクタム由来の構造単位と架橋剤由来の構造単位を有するN-ビニルラクタム系架橋重合体であって、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、N-ビニルラクタム系架橋重合体1g当たりのエタノールの吸液能力が3~40gであり、下記方法により求めるアスペクト比が1.15~10である粒子の割合が、該N-ビニルラクタム系架橋重合体の合計数に対して10~100%(個数)であり、水可溶分が全重合体100質量%に対して35質量%以下であるN-ビニルラクタム系架橋重合体である。
<アスペクト比の測定方法>
光学又は電子顕微鏡により、N-ビニルラクタム系架橋重合体の一次粒子の長径及び短径を測定し、長径を短径で除した値をアスペクト比として求める。
【0018】
また第3-1の本発明は、環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する環状N-ビニルラクタム系架橋体を含む化粧料であって、上記環状N-ビニルラクタム系架橋体は、下記の条件で測定する粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満である化粧料である。
<粘度測定条件>
試料:該環状N-ビニルラクタム系架橋体の5質量%水分散体であって、16時間攪拌したもの
測定機器:B型粘度計を用いて25℃の上記試料を測定する
測定条件:ロータNo.4、回転数30rpm
また第3-2の本発明は、環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する環状N-ビニルラクタム系架橋重合体を含む化粧料であって、上記環状N-ビニルラクタム系架橋重合体は、粒子状の形態に於いて、下記方法により求めるアスペクト比が1.1~10である粒子の割合が、該環状N-ビニルラクタム系架橋重合体粒子の合計数に対して10~100%(個数)である化粧料である。
<アスペクト比の測定方法>
光学又は電子顕微鏡により、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の一次粒子の長径及び短径を測定し、長径を短径で除した値をアスペクト比として求める。
【0019】
また第4-1の本発明は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを含む吸収性複合体であって、上記ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が0.1以上、2未満である吸収性複合体である。
また、第4-2の本発明は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを含む吸収性複合体であって、上記ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が2.5以上、15以下である吸収性複合体である。
【0020】
また第5の本発明は、N-ビニルラクタム系架橋重合体を含むインク用吸収剤である。
【発明の効果】
【0021】
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、上述の構成よりなり、吸液能力に優れ、かつ、ゲル解砕を充分に行うことができるため、筆記具、インクジェット式記録装置等のインク吸収剤、消臭剤、芳香剤、化粧料等に好適に用いることができる。
第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、上述の構成よりなり、保湿性に優れるとともに、エタノールの吸液能力に優れ、化粧料として肌に塗布した際に肌への密着性にも優れ、かつ、有効成分濃度が高いため、化粧料等に好適に用いることができる。
第3の本発明の化粧料は、上述の構成よりなり、従来の化粧料より、人に対する安全性の高い添加剤を含有するものであり、皮膚化粧料、皮膚外用剤及び頭髪化粧料等に好適に用いることができる。
第4の本発明の吸収性複合体は、上述の構成よりなり、種々の液体の吸液能力に優れるため、インク等の吸収材等に好適に用いることができる。
第5の本発明のインク用吸収剤は、上述の構成よりなり、インクの吸液能力に優れるため、インクジェット式記録装置、筆記具等に好適に用いることができる。
以下に本発明を詳述する。本明細書中において単に「本発明」という場合には第1~5の本発明に共通する事項を意味するものとする。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
≪第1の本発明:N-ビニルラクタム系架橋重合体≫
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体(以下、第1の本発明の架橋重合体ともいう。)は、N-ビニルラクタム(N-ビニルラクタム系単量体)に由来する構造単位を有する。
上記「N-ビニルラクタムに由来する構造単位」とは、N-ビニルラクタム(N-ビニルラクタム系単量体)が重合して形成される構造単位と同じ構造の構造単位を表す。すなわち、N-ビニルラクタムが重合して形成される構造単位と同じ構造を有すれば、N-ビニルラクタムを重合する方法以外の方法で形成された構造単位も、N-ビニルラクタムに由来する構造単位に含まれる。
第1の本発明の架橋重合体がN-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより、水やその他の溶媒を吸収、保持することができるため、下記のような種々の用途に用いることができる。
第1の本発明の架橋重合体は、油等の溶媒を吸収することができるため、筆記具、インクジェット式記録装置等のインク吸収剤用途に好適に用いることができる。
第1の本発明の架橋重合体は、臭気成分を吸収することもでき、消臭剤用途に好適に用いることができる。また、上記架橋重合体は、芳香成分を吸液することにより、芳香作用を発揮することができ、芳香剤用途にも好適に用いることができる。
第1の本発明の架橋重合体は、水等を吸液、保持することにより保湿効果を発揮することができ、また、上記N-ビニルラクタムは非イオン性であることから、安全性にも優れ、化粧料用途にも好適に用いることができる。上記架橋重合体は、水やその他の溶媒を吸収すると、架橋構造を有することにより、膨潤しゲル化することにより、増粘効果を発揮し、化粧料に添加した場合に肌への密着性をより向上させることもできる。
【0023】
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位を有するものである。
ここで、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体とは、シアヌル酸から少なくとも2つの水素原子を引き抜いて得られる構造(以下、シアヌル酸由来の構造ともいう)と少なくとも2つの炭素炭素二重結合とを有する架橋性単量体を意味する。シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体が有する少なくとも2つの炭素炭素二重結合が他の分子の炭素炭素二重結合と反応することにより架橋構造が形成されることとなる。
シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体は、N-ビニルラクタムとの反応性が高いため、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体を用いることにより、架橋重合体における水可溶分(架橋されない重合体であって水への溶解分)を低減することができる。このため、架橋重合体における有効成分濃度が高くなり、吸液能力により優れることとなる。
上記架橋重合体におけるシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位の割合は、全構造単位100モル%に対して0.12~0.48モル%であり、このような割合で、上記構造単位を有することにより、高い吸液能力を維持しつつ、好適なゲル強度を有することになり、ゲル解砕をより充分に行うことができる。シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体は、また、皮膚刺激性が低く、安全性にも優れることから、第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、化粧料用途にも好適に用いることができる。上記構造単位の割合として好ましくは0.12~0.47モル%であり、より好ましくは0.13~0.47モル%であり、更に好ましくは0.15~0.47モル%であり、特に好ましくは0.15~0.45モル%であり、最も好ましくは0.16~0.45モル%である。
なお、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位の割合は、〔シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位(モル数)〕 ÷ 〔全構造単位(N-ビニルラクタムに由来する構造単位とその他の単量体(E)に由来する構造単位の合計)(モル数)〕 × 100(モル%)により算出することができる。
【0024】
上記シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体は、シアヌル酸由来の構造と少なくとも2つの炭素炭素二重結合とを有するものであれば特に制限されないが、下記式(1);
【化1】
【0025】
(式中、R1、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。mは、同一又は異なって、0~4の整数を表す。)で表される単量体であることが好ましい。
上記R1~R3におけるアルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、より好ましくは1~4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R1~R3における置換基としては、特に制限されないが、エチレン性不飽和炭化水素基;カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等の架橋剤と縮合反応可能な反応性官能基等が挙げられる。
R1~R3としては水素原子であることが好ましい。
mとしては、0又は1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
上記式(1)で表される化合物としては、シアヌル酸トリアリルが好ましい。
【0026】
上記「N-ビニルラクタム」とは、N-ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に制限されないが、下記式(2);
【0027】
【0028】
(式中、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。xは、0~4の整数を表す。yは、1~3の整数を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R1~R4におけるアルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、より好ましくは1~4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R1~R4における置換基としては、特に制限されないが、エチレン性不飽和炭化水素基;カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等の架橋剤と縮合反応可能な反応性官能基等が挙げられる。
上記式(2)におけるR1~R4の少なくとも1つが、置換基として上述の架橋剤と縮合反応可能な反応性官能基を有する炭素数1~10のアルキル基であれば、後述する(2)、(3)により架橋構造を形成することができる。
R1~R3としては水素原子であることが好ましい。R4としては水素原子又はメチル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
xとしては、0~2の整数であることが好ましく、より好ましくは0~1の整数であり、最も好ましくは0である。
yとしては、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
【0029】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-5-メチルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。N-ビニルラクタムとしては、ピロリドン環を有する不飽和単量体が好ましい。より好ましくはN-ビニルピロリドンである。
【0030】
第1の本発明の架橋重合体はまた、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位以外の架橋構造を有していてもよく、例えば下記(1)~(5)により形成することができる。
(1)シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体以外の架橋性単量体を含む単量体成分を重合して架橋構造を有する重合体を製造する
(2)反応性官能基を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られた重合体に、該反応性官能基と反応する官能基を複数有する架橋剤を反応させて架橋構造を形成する
(3)反応性官能基を有する単量体1と、該単量体1が有する反応性官能基と反応する反応性官能基を有する単量体2とを共に含む単量体成分を重合した後、該単量体1の反応性官能基と単量体2の反応性官能基とを反応させて架橋構造を形成(自己架橋)する
(4)重合体にラジカルを発生させ、ラジカルが発生した重合体間で架橋構造を形成(自己架橋)する
(5)重合体にラジカルを発生させ、ラジカルが発生した重合体と架橋性単量体を反応させて架橋構造を形成する
【0031】
上記(1)、(5)における架橋性単量体については、後述のとおりである。
第1の本発明の架橋重合体が、上記(2)又は(3)によって形成された架橋構造を有する場合、第1の本発明の架橋重合体は、上記N-ビニルラクタム系単量体又は後述するその他の単量体(E)に由来する構造単位として、反応性官能基を有する単量体に由来する構造単位を有することになる。
上記(2)、(3)における反応性官能基としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。
架橋構造が、上記(3)によって形成されたものである場合、互いに反応性を有する反応性官能基の組み合わせとしては、カルボキシル基(及びそのエステルや塩)と水酸基、スルホン酸基(及びそのエステルや塩)と水酸基、カルボキシル基(及びそのエステルや塩)とアミノ基、カルボキシル基(及びそのエステルや塩)とオキサゾリン基、スルホン酸基(及びそのエステルや塩)とアミノ基、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基、オキサゾリン基と水酸基、オキサゾリン基とメルカプト基等が挙げられる。第1の本発明の架橋重合体の架橋構造が上記(2)によって形成されたものである場合の、単量体が有する反応性官能基と、架橋剤が有する該反応性官能基と反応する官能基の組み合わせの例もこれと同様である。
上記(2)における架橋剤としては、上記反応性官能基と反応することができる官能基を複数有するものであれば特に制限されないが、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、オキサゾリン基含有ポリマー(株式会社日本触媒製 エポクロス)、ブタンジオール、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
本発明の架橋重合体において、上記(1)又は(5)により架橋構造が形成される場合の架橋性単量体は、1分子あたりに少なくとも2個の重合性のエチレン性不飽和炭化水素基を有する化合物であり、好ましくは1分子あたりに少なくとも2個のラジカル重合性のエチレン性不飽和炭化水素基を有する化合物である。
なお、ラクタム構造及び少なくとも2個のエチレン性不飽和炭化水素基を有する化合物は、N-ビニルラクタム系単量体にも、架橋性単量体にも含まれるものとする。
【0033】
上記シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体以外の架橋性単量体としては、具体的には、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の炭素数1~4のアルキレン基を有するN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド;1,4-ブチレンビス(N-ビニルアミド)等の炭素数1~6のアルキレン基を有するアルキレンビス(N-ビニルアミド);(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の炭素数1~4のアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の炭素数1~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドで変性されていてもよいトリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート等のグリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ-ト等のジペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ)(メタ)アクリレ-ト;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル等のペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン等の炭素数9~20のトリアリル化合物;炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール等の炭素数6~20のジアリル化合物;ジビニルエーテル、ジビニルケトン、トリビニルベンゼン、ジビニルエチレン尿素、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン等の炭素数4~20の(ジ、トリ)ビニル化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数2~20のジイソシアネート;ポリ(メタ)アリロキシアルカン、N,N’-ジビニル-2-イミダゾリジノン、N,N’-1,4-ブチレンビス(N-ジビニルアセトアミド)、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記架橋性単量体の中でも、残存するN-ビニルラクタム及び可溶分(架橋されない重合体分であって水への溶解分)が低下する傾向にあることから、アリル基を2個以上有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール、ジビニルエチレン尿素1,4-ブチレンビス(N-ビニルアミド)及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース等が好ましい。
より好ましくは、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースであり、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース由来の構造単位を有するN-ビニルラクタム系架橋重合体は、本発明の好ましい形態の1つである。ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースは安全性がより高いため、このような架橋重合体は、化粧料用途により好適に用いることができる。
【0034】
上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくは1分子あたり2以上、50以下、より好ましくは2以上、20以下、さらに好ましくは2以上、10以下のオキシアルキレン基を有する。上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが有するオキシアルキレン基100モル%に対し、オキシエチレン基が50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましい。
上記トリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレートが炭素数1~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドで変性されたものである場合の、トリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート1分子あたりのアルキレンオキサイドの平均付加数も同様であることが好ましい。
【0035】
上記架橋性単量体に由来する構造単位とは、上記架橋性単量体が有する重合性の炭素炭素二重結合基の少なくとも1以上が単結合になった構造単位と同じ構造の構造単位である。すなわち、上記架橋性単量体が有する重合性の炭素炭素二重結合基の少なくとも1以上が単結合になった構造単位と同じ構造であれば、例えば架橋性単量体以外の単量体を重合した後に、後架橋により形成された構造単位も架橋性単量体に由来する構造単位に含まれる。
【0036】
第1の本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタム系単量体、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体以外の架橋性単量体及び架橋剤以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)は、N-ビニルラクタム系単量体と共重合でき、ラクタム構造を有さず、エチレン性不飽和炭化水素基を1つ有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、(i)アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;(v)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(vi)(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;(vii)スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;(viii)エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;(ix)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;(x)N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;(xi)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;(xii)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;(xiii)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;(xiv)(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;(xv)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
これらの中でも、上記(i)~(x)の単量体が好ましく、より好ましくは、上記(i)(v)(vi)(vii)(ix)(x)の単量体である。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記(i)~(iii)、(x)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、炭素数1~20のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキシドがより好ましい。上記(iv)におけるアルキレンオキシドの付加モル数としては、上記(iv)の化合物1モルあたり0~50モルが好ましく、0~20モルがより好ましい。
【0037】
上記その他の単量体(E)としては、炭素数2~20の単量体が好ましい。より好ましくは、炭素数2~15の単量体であり、更に好ましくは、炭素数2~10の単量体である。なお、その他の単量体(E)がアルキレンオキシド付加物である場合は、アルキレンオキシド構造部位以外の構造部位の炭素数がこれらの値であることが好ましい。
【0038】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、N-ビニルラクタムに由来する構造単位の割合が全構造単位(N-ビニルラクタムに由来する構造単位とその他の単量体(E)に由来する構造単位)100モル%に対して、30~100モル%であることが好ましい。より好ましくは50~100モル%であり、更に好ましくは70~100モル%であり、一層好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
ただし、全構造単位に架橋性単量体に由来する構造は含まれない。
【0039】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、その他の単量体(E)に由来する構造単位の割合が全構造単位100モル%に対して、0~70モル%であることが好ましい。より好ましくは0~50モル%であり、更に好ましくは0~30モル%であり、一層好ましくは0~20モル%であり、特に好ましくは0~10モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0040】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体以外の架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位を有していてもよく、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位の割合は、全構造単位100モル%に対して0~2モル%であることが好ましい。上記割合としてより好ましくは0~1モル%であり、更に好ましくは0~0.8モル%である。
【0041】
第1の本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタム系架橋重合体1g当たりの吸水能力が15g以上(15倍以上)であることが好ましい。より好ましくは18g以上であり、更に好ましくは20g以上である。
第1の本発明の架橋重合体は、架橋重合体1g当たりの油の吸収能力が3g以上であることが好ましい。より好ましくは5g以上であり、更に好ましくは10g以上であり、更により好ましくは15g以上であり、最も好ましくは20g以上である。
なお、水及び油の吸収能力は、「(架橋重合体重量+吸収された溶液量)/架橋重合体重量」で計算される値である。架橋重合体の吸液能力は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
第1の本発明の架橋重合体は、水可溶分がN-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、18質量%以下であることが好ましい。
水可溶分は、架橋されない重合体分であって水への溶解分である。本発明の架橋重合体を約100倍の脱イオン水(導電率10μS/cm以下)中で、室温(温度23±2℃)、常圧下で16時間撹拌し、ろ過した後に得られる液中の可溶性成分量を求めた。
水可溶分がN-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、18質量%以下であれば、ゲル解砕をより充分に行うことができる。また、この場合特にニーダーを好適に用いることができる。
吸水能力が15倍以上、かつ、水可溶分がN-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、18質量%以下であるN-ビニルラクタム系架橋重合体もまた、本発明の1つである。水可溶分としてより好ましくは17質量%以下であり、更に好ましくは16質量%以下であり、更により好ましくは15質量%以下である。
【0043】
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、架橋重合体粒子の平均粒子径が、0.1~5000μmであることが好ましい。架橋重合体粒子の平均粒子径が、0.1~5000μmであれば、水等の吸液速度が向上する傾向にある。また、平均粒子径が0.1μm以上であれば、架橋重合体における水可溶分をより充分に低減することができる。架橋重合体粒子の平均粒子径としてより好ましくは0.5~3000μmであり、更に好ましくは1~1000μmである。
架橋重合体の平均粒子径は、乾式の粒子径分布測定装置(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製 型式:マスターサイザー3000 乾式)、又は、これと原理が同じであるレーザ回折・散乱法を採用した粒子径分布測定装置により測定した値である。又は、架橋重合体が直方体状などの成形体の場合は、定規で測定した値を平均粒子径とする。
【0044】
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、アスペクト比が1.15~10である粒子の割合が、該N-ビニルラクタム系架橋重合体粒子の合計数に対して10~100%(個数)であることが好ましい。アスペクト比が1.15~10である粒子の割合として好ましくは30~100%(個数)であり、更に好ましくは50~100%(個数)であり、一層好ましくは70~100%(個数)であり、特に好ましくは90~100%(個数)であり、最も好ましくは100%(個数)である。
上記粒子のアスペクト比として好ましくは1.15~7であり、より好ましくは1.15~5であり、更に好ましくは1.2~5であり、一層好ましくは1.2~3である。更に特に好ましくは1.25~3であり、最も好ましくは1.25~2.5である。
上記粒子のアスペクト比は、顕微鏡(光学又は電子)により、N-ビニルラクタム系架橋体の一次粒子の長径及び短径を測定し、長径を短径で除した値をアスペクト比として求めることができる。なお、N-ビニルラクタム系架橋体の粒子は、粒子が凝集している場合があるが、上記アスペクト比の測定は、凝集していない一次粒子について測定するものとする。また、一次粒子が重なっている場合は、重なっていない粒子のみを測定の対象とする。
上記アスペクト比は、サンプルの光学又は電子顕微鏡による画像データより、画像解析式粒度分析測定ソフトを用いて算出するものとする。「画像解析式粒度分析測定ソフト Mac-view ver.4(マウンテック社製)」や「粒子画像分析装置 モフォロギG3(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製)」、又は、これと原理が同じである画像解析ソフトや画像分析装置により測定することができる。
上記アスペクト比1.15~10である粒子の割合は、ランダムに選択した粒子100個以上について、アスペクト比を測定して求めることができる。
【0045】
<第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法>
第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造は特に制限されないが、N-ビニルラクタム系単量体とシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体とを含む単量体成分を重合する工程を行って製造することが好ましい。すなわち、N-ビニルラクタム系単量体とシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体とを含む単量体成分を重合する工程を含むN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
また、全単量体(N-ビニルラクタム、その他の単量体(E))成分100モル%に対する各単量体の含有割合は、上述の全構造単位100モル%に対する各構造単位の割合と同様である。
上記重合工程において使用する環状N-ビニルラクタム単量体の純度は90%以上であることが好ましい。より好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0046】
上記重合は、溶剤の不存在下で行ってもよいし、溶剤を使用してもよい。重合は、従来公知の種々の方法、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法、逆相乳化重合法、沈殿重合法或いは注型重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等を採用することができる。重合方法として好ましくは溶液重合法である。溶液重合を行うことにより、架橋重合体における架橋の偏りを抑制することができる。
尚、重合反応を行なう際の攪拌方法は、特に限定されるものではないが、ゲル状の架橋重合体が生成する場合には、双腕型ニーダーを攪拌装置として用い、該双腕型ニーダーの剪断力によって細分化しながら攪拌することがより好ましい。また、上記重合の工程は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0047】
上記重合工程において、N-ビニルラクタムを含む単量体成分の重合を開始する方法としては、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等を採用することができる。
【0048】
上記重合工程において、溶剤を使用する場合、溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類等から選ばれる1種または2種以上が例示される。得られる組成物の安全性の観点から、溶剤としては水を用いることが好ましく、この場合、溶媒の置換工程等を省略することもできるため、生産性も向上することとなる。
【0049】
上記重合工程において、重合を行なう際には、重合開始剤を用いることが好ましい。上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキシド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、スルホキシル酸ナトリウムとt-ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が最も好ましい。中でも、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)がより好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0050】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(N-ビニルラクタム、シアヌル酸骨格を有する架橋性単量体、上述したその他の単量体(E)及びシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体以外の架橋性単量体との合計の使用量)1モルに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましい。重合開始剤の使用量を0.1g以上とすることで、得られる架橋重合体に含まれる未反応の単量体の割合を充分に少なくすることができ、未反応の単量体に由来する、後述する式(3)で表される化合物等の副生成物の量も充分に抑制することができる。また、開始剤の使用量を10g以下とすることで、得られる架橋重合体に含まれる不純物量の割合を充分に少なくすることができる。また、開始剤の使用量をこのような割合とすることで、得られる架橋重合体の着色も抑制することができる。
すなわち、重合工程において重合開始剤が用いられ、上記重合開始剤の使用量が単量体成分1モルに対して0.1~10gであるN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
重合開始剤の使用量としては、0.1g以上、7g以下であることがより好ましく、0.1g以上、5g以下であることがさらに好ましい。
【0051】
上記重合工程において、逆相懸濁重合法を採用する場合に好適な分散剤としては、具体的には、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、エチルセルロースやセルロースアセテート等のセルロースエステル、セルロースエーテル、α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体等のカルボキシル基含有重合体等が挙げられる。これら分散剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、逆相懸濁重合法を採用する場合に供される疎水性有機溶媒は、特に限定されるものではない。
【0052】
上記重合工程において、重合時の雰囲気は、特に限定されるものではないが、不活性気体(窒素、アルゴン等)雰囲気下で重合するのが好ましい。不活性気体雰囲気下で重合することで、得られる架橋重合体の粉砕効率を向上し、また、得られる架橋重合体に含まれる未反応の単量体の割合を少なくでき、有機酸を架橋重合体に添加する場合における有機酸と架橋重合体との反応時間を短くできる等の効果が期待できる。
【0053】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、比較的低温の方が架橋重合体の分子量が大きくなるので好ましく、20℃~100℃の範囲内が重合率が向上するのでさらに好ましい。尚、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、および溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0054】
上記重合工程を行う反応容器の材質は、重合工程を行うことができるものである限り特に制限されないが、ステンレス等の材質の反応容器を用いることが好ましい。これらの熱が伝わりやすい材質の反応容器を用いて重合反応を行うことで重合反応を充分に進行させ、得られる架橋重合体中に含まれる未反応の単量体(ラクタム構造を有する不飽和単量体等)の含有量を少なくすることができる。
また、ポリプロピレン等の鉄を溶出させない材質の反応容器を用いることも好ましく、これらの材質の反応容器を用いることで、得られる架橋重合体中に含まれる鉄分の含有量を少なくすることができる。
【0055】
本発明の架橋重合体は、上記重合工程に加え、任意の工程を含んで製造してもよい。例えば、ゲル解砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、造粒工程、後架橋工程等を含んでいてもよい。
【0056】
上記架橋重合体が、溶剤を用いた重合で得られたものでゲル状である場合、すなわち溶剤を含むゲル状架橋重合体である場合、ゲル解砕工程を含んで製造することが好ましい。
ゲル解砕工程は、溶剤を含むゲル状架橋重合体を細粒化することができる限り特に制限されないが、例えば、解砕機(ニーダー、ミートチョッパー等)を用いて行うことができる。
【0057】
上記架橋重合体は、乾燥工程を含んで製造することが好ましい。
特に、上記架橋重合体が、溶剤を用いた重合で得られたものでゲル状である場合、すなわち溶剤を含むゲル状架橋重合体である場合、該ゲル状架橋重合体、又は、上記ゲル解砕工程により得られた粒子状のゲル状架橋重合体を、乾燥する工程を設けることが好ましい。なお、第1の本発明において、乾燥とは固形分の上昇操作をいい、通常、架橋重合体全体の重量に対する固形分の割合が乾燥前と比較して上昇すればよいが、好ましくは架橋重合体全体の重量100質量%に対して固形分が95質量%以上、より好ましくは96質量%以上程度まで上昇させることである。なお、固形分の上限は99質量%程度であることが好ましい。乾燥は重合と同時に行ってもよく、重合時の乾燥と重合後の乾燥とを併用してもよいが、より好ましくは、重合後に乾燥装置を用いて乾燥する乾燥工程が設けられる。なお、ここで、架橋重合体の固形分は、下記の方法により測定される値をいう。
底面の直径が約5cmの秤量缶(質量W1(g))に、約1gの架橋重合体を量り取り(質量W2(g))、150℃の定温乾燥機中において1時間静置し、乾燥させる。乾燥後の秤量缶+架橋重合体の質量(W3(g))を測定し、以下の式より固形分を求める。
固形分(質量%)=((W3(g)-W1(g))/W2(g))×100
【0058】
上記乾燥工程は、好ましくは乾燥工程の時間全体の50%以上の時間、より好ましくは実質すべての乾燥工程をとおして80℃~250℃の範囲で行われる。上記範囲であることにより、架橋重合体の諸物性がより向上する傾向にある。
なお、乾燥温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波等熱媒温度で規定できない場合は材料温度で規定する。乾燥方法としては、乾燥温度が上記範囲内であれば特に限定されるものではなく、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を好適に用いることができる。中でも、熱風乾燥を用いることがより好ましい。熱風乾燥を用いる場合の乾燥風量は、好ましくは0.01~10m/sec、より好ましくは0.1~5m/secの範囲である。乾燥温度の範囲はより好ましくは110℃~220℃、さらに好ましくは120℃~200℃の温度範囲である。また、乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよいが、実質、すべての乾燥工程は上記の温度範囲内でなされることが好ましい。
【0059】
上記製造方法において粉砕工程を含むことが好ましい。粉砕工程を行うことにより、架橋重合体の平均粒子径及びアスペクト比をより好適な範囲にすることができる。
本発明の製造方法が乾燥工程を含む場合、粉砕は乾燥前、中、後のいずれに行っても良いが、好ましくは乾燥後である。より好ましくは、ゲル解砕工程及び乾燥工程を行ったうえで、粉砕工程を行うことである。
上記粉砕工程は、粉砕機を使用して行うことが好ましい。上記粉砕機は特に限定されるものではないが、例えばロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、ピンミル、フラッシュミル、流動層式ジェットミルやターゲット式ジェットミル等のジェットミル等が用いられる。平均粒子径をより小さい範囲に粉砕するためにはターゲット式ジェットミルを用いることがより好ましい。また、粒度分布を制御するためにロールミル、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ピンミル、ジェットミルを用いることも好ましい。粒度分布を制御するため連続して2回以上粉砕することがより好ましく、連続して3回以上粉砕することがさらに好ましい。
また、2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであっても異なっていてもよい。異なる種類の粉砕機を組み合わせて使うことも可能である。
上記粉砕工程における粉砕方式は特に制限されず、常温で粉砕しても、凍結粉砕してもよい。N-ビニルラクタム系架橋重合体は、柔らかいため、凍結粉砕することが好ましいが、上記ターゲット式ジェットミルを用いることにより、常温であってもより細かく粉砕することができ、凍結粉砕の場合よりも生産コストを削減することができる。また、上記ターゲット式ジェットミルを用いることにより、後述する分級工程を省略することもでき、生産性をより向上させることができる。
【0060】
例えば本発明の架橋重合体の平均粒子径をより好適な範囲にするため、及び/又は、特定の粒度分布に制御するために、分級工程や造粒工程を設けてもよい。上記分級は、特定の目開きの篩を使用してもよい。篩で分級するために用いる分級機は特に限定されるものではないが、たとえば振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、円型振動式等)、面内運動篩(水平運動式、水平円-直線運動式、3次元円運動式等)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、音波篩等が用いられ、好ましくは振動篩、面内運動篩が用いられる。
【0061】
上記架橋重合体が上記(2)~(5)によって形成された架橋構造を有するものである場合、該架橋重合体の製造方法では、単量体成分を重合させる重合工程を行った後に当該架橋構造を形成するための後架橋工程を行うことになる。
上記後架橋工程において後架橋させる(重合後に架橋させる)方法としては、例えば、(i)重合工程で得られた重合体にUV、γ線、電子線を照射する方法、(ii)重合工程で得られた重合体に縮合剤のような反応促進剤を加えて自己架橋させる方法、(iii)重合工程で得られた重合体に熱を加えて自己架橋させる方法、(iv)重合工程で得られた重合体にラジカル発生剤を含有させた後、熱を加えて自己架橋させる方法、(v)重合工程で得られた重合体にラジカル重合性架橋剤(架橋性単量体)およびラジカル重合開始剤を含有させた後、加熱および/または光照射する方法等が挙げられる。
【0062】
本発明の架橋重合体が上記(2)によって形成された架橋構造を有するものである場合、架橋剤の使用量は、重合体が有する反応性官能基(架橋剤と反応する反応性官能基)100モル%に対して、架橋剤が有する官能基が30~100モル%となる量であることが好ましい。より好ましくは、50~100モル%である。このような割合で架橋剤を使用することで充分な架橋構造を形成することができるとともに、得られる架橋重合体中に残存する未反応の架橋剤の量も少なくすることができる。
【0063】
上記(ii)の方法において用いる反応促進剤としては、硫酸、リン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基;N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記(iv)の方法において用いるラジカル発生剤としては、上述した重合工程において用いる重合開始剤と同様のものを用いることができる。重合開始剤のうち、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、オクタノイルパーオキサイド、サクシニックパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイン酸等の過酸化物が好ましい。
【0064】
本発明の架橋重合体が上記(5)によって形成された架橋構造を有するものである場合、後架橋の際に使用する架橋性単量体の使用量は、後架橋工程前の重合体100質量%に対して、0.1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~30質量%である。このような割合で架橋性単量体を使用することで充分な架橋構造を形成することができるとともに、得られる架橋重合体中に残存する未反応の架橋性単量体の量も少なくすることができる。
【0065】
上記架橋重合体の製造において、重合反応後、得られた架橋重合体に有機酸を添加する工程を含むことが好ましい。得られた架橋重合体に有機酸を添加することにより、架橋重合体中の残存N-ビニルラクタム系単量体の量を低減することができる。
上記有機酸としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基等の酸基を有する有機化合物が挙げられる。このような有機酸としては、例えば、マロン酸、しゅう酸、コハク酸、アスパラギン酸、クエン酸、グルタミン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、グリコール酸、サリチル酸、乳酸、L-アスコルビン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ラウリルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンホスホン酸、ラウリル硫酸等が挙げられる。
【0066】
上記有機酸の使用量は、特に制限されないが、反応工程で仕込んだN-ビニルラクタム系単量体100質量%に対して0.01~5質量%であることが好ましい。有機酸の使用量が上記範囲であれば、得られる重合体中の残存N-ビニルラクタム系単量体の量を低減しつつ、有機酸(塩)の量も低減することができる。有機酸の使用量としてより好ましくは0.05~3質量%であり、更に好ましくは0.1~1質量%である。
なお上記有機酸(塩)は、上記有機酸及び有機酸の塩を表し、有機酸の塩は、主に後述する中和工程において添加する塩基と有機酸との中和物である。
【0067】
上記有機酸を架橋重合体に添加する場合における有機酸と架橋重合体との反応時間としては、特に制限されないが、10分~3時間であることが好ましい。より好ましくは30分~2時間である。
【0068】
上記架橋重合体の製造方法は、重合反応後に、架橋重合体を熟成する工程を含むことが好ましい。熟成工程を行うことにより、残存N-ビニルラクタム系単量体量を低減することができ、後述する式(3)で表される化合物等の、残存N-ビニルラクタム系単量体量に由来する副生成物の量も低減することができる。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、70~150℃であることが好ましい。熟成温度が上記範囲であれば、残存N-ビニルラクタム系単量体量をより充分に低減することができる。より好ましくは80~100℃である。
上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分~5時間であることが好ましい。より好ましくは30分~3時間である。
上記架橋重合体の製造方法が有機酸を添加する工程を含む場合、上記熟成工程は、有機酸を添加する工程の前に行うことが好ましい。
【0069】
上記熟成工程は、架橋重合体を解砕しながら行うことが好ましい。上記有機酸を添加する工程を含む場合、解砕することにより、有機酸が架橋重合体により充分に浸透することから、得られる架橋重合体中の残存N-ビニルラクタム系単量体の量をより充分に低減することができる。上記架橋重合体の解砕は、通常用いられる方法により行うことができ、例えば、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押し出し機、カッターミル等のゲル粉砕機等を用いて解砕する方法が挙げられる。
【0070】
上記架橋重合体の製造方法は、有機酸を添加する場合、上記有機酸の添加工程の後に中和工程を含むことが好ましい。中和の方法は特に制限されないが、有機酸を重合体に反応させた後に、塩基を添加することが好ましい。上記塩基としては特に制限されないが、例えば、アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン;アニリン等の芳香族アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもアンモニア、脂肪族アミン、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、より好ましくはアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0071】
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物は、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体を含むものであり、上記組成物におけるN-ビニルラクタム系架橋重合体の含有量は、特に制限されないが、組成物100質量%に対して50~100質量%であることが好ましい。より好ましくは60~100質量%であり、更に好ましくは70~100質量%である。
【0072】
N-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物は、架橋重合体以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、特に限定されないが、例えば、水可溶分(架橋されない重合体分であって水への溶解分)、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0073】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物は、重合時の副生成物として下記式(3);
【0074】
【0075】
(式(3)中、R4は、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。yは、1~3の整数を表す。)で表される化合物を含んでいてもよいが、該化合物の割合は、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、2質量%以下であることが好ましい。上記式(3)で表される化合物の割合が2質量%以下であれば、上記組成物の臭気及び/又は着色を充分に抑制することができ、化粧料用途に好適に用いることができる。
すなわち、上記式(3)で表される化合物の割合が、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、2質量%以下であるN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物もまた本発明の1つである。上記式(3)で表される化合物の割合として、より好ましくは1.5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
上記組成物における上記式(3)で表される化合物の割合は、実施例記載の方法により測定することができる。
上記式(3)におけるR4及びyは、上記式(2)におけるR4及びyと同様である。
【0076】
上記組成物におけるN-ビニルラクタム系単量体等の残存モノマーの割合は、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、200ppm以下であることが好ましい。残存モノマーの割合が、上記好ましい範囲であれば、化粧料として用いた場合に、安全性により優れることとなる。残存モノマーの割合として、より好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下である。
上記組成物における残存モノマーの割合は、実施例記載の方法により測定することができる。
【0077】
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体及び/又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物は、筆記具、インクジェット式記録装置等のインク用吸収剤、消臭剤、芳香剤、化粧料等の用途に用いることができる。
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物を含むインク用吸収剤もまた、本発明の1つである。
本発明はまた、本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体がインクを吸収しているインク含有組成物でもある。
本発明はまた、上記インク用吸収剤がインクを吸収しているインク含有組成物でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収剤を用いて構成される吸収材でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収剤を備える印刷装置でもある。
更に本発明は、インク用吸収剤を印刷装置に組み込んで使用する方法でもある。
【0078】
上記印刷装置としては、装置内にインクを収容し、収容されたインクを使用して印刷する装置であれば特に制限されないが、例えば、インクジェット式プリンタ、オフセット印刷機、グラビア印刷機等が挙げられる。
【0079】
上記インクの成分としては特に制限されないが、水、水溶性有機溶剤、染料、顔料、その他の添加剤等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
上記染料としては、ブラックアゾ化合物、銅フタロシアニン化合物、マゼンタ染料等が挙げられる。
【0080】
上記顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料や、アゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。上記顔料の粒子径は特に制限されないが、0.01~0.50μmであることが好ましい、より好ましくは、0.02~0.20μmである。
【0081】
本発明はまた、本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物を含む消臭剤でもある。
上記消臭剤が効果を発揮することができる臭気成分としては、特に制限されないが、メチルメルカプタン等のチオール類、アンモニア等のアミン類、酢酸等のカルボン酸類、ノネナール等のアルデヒド類、ジアセチル等のジケトン類等が挙げられる。すなわち、本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、様々な臭気成分に対して消臭効果を発揮することができ、この理由としては以下のようなことが考えられる。本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタム由来のラクタム環が有するN部位やカルボニル基で臭気成分を吸着することができること、及び、本発明の架橋重合体は吸湿性を有するため、吸湿した水を介して水溶性の臭気成分を吸着することができることが考えられる。本発明の架橋重合体は、上記臭気成分の中でも酢酸等のカルボン酸に対して、より優れた消臭効果を発揮する。
上記消臭剤の形態は特に制限されず、液状、ゲル状、ペースト状、粉末状、固体状等のいずれの形態であってもよい。
【0082】
本発明はまた、消臭剤を備える消臭器でもある。
上記消臭器としては特に制限されないが、例えば、本発明の消臭剤と通気口とを備えるもの、本発明の消臭剤等と空気を吸引する機構とを備えるもの等が挙げられる。
本発明は更に上記消臭剤を消臭器に組み込んで使用する方法でもある。
上記使用形態としては、例えば、消臭対象の空気を本発明の消臭剤に接触させて使用する形態が挙げられる。
上記接触方法としては例えば、本発明の消臭剤と通気口とを備える消臭器を用いて、自然な対流により空気を本発明の消臭剤に接触させる方法;本発明の消臭剤と空気を吸引する機構とを備える消臭器等を用いて、吸引した空気を本発明の消臭剤に供給することにより接触させる方法等が挙げられる。
上記消臭器が備える空気を吸引する機構としては特に制限されないが、例えばファン、エアーポンプ等が挙げられる。
上記本発明の消臭剤と空気を吸引する機構とを備える消臭器としては、例えば、空気清浄器、エアコン等が挙げられる。本発明の消臭剤がこのような空気清浄器、エアコン等に用いられる場合、ファン等の回転部材やフィルター等に用いられることが好ましい。
【0083】
本発明はまた、本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体と芳香成分とを含む芳香剤でもある。
上記芳香成分としては、特に制限されないが、揮発性を有するものが好ましく、香料、精油等が挙げられる。
【0084】
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体及び/又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物を含む化粧料もまた、本発明の1つである。
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体及び/又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物を化粧料として使用する方法もまた、本発明の1つである。
上記化粧料は、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体及び/又はN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物以外のその他の成分を含んでいてよい。その他の成分としては特に制限されないが、例えば、油性基剤、保湿剤・感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤・噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤・抗菌剤、キレート剤、pH調整剤・酸・アルカリ、粉体類、無機塩類、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類及びその誘導体類、消炎剤・抗炎症剤、育毛用薬剤・血行促進剤・刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤・抗老化剤・ひきしめ剤・冷感剤・温感剤、創傷治癒促進剤・刺激緩和剤・鎮痛剤・細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス類、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素類、核酸類、香料、色素・着色剤・染料・顔料、水等が挙げられる。
その他の成分の具体例として、特開2007-45776号公報に記載のものと同様のものを用いることもできる。
【0085】
本発明の化粧料の製造方法は、特に制限されないが、例えば、上記架橋重合体と上記その他の成分を混合する工程を含むことが好ましい。
上記混合工程は、特に制限されず、例えば、上記架橋重合体は水等の溶媒に分散させた分散体として、その他の成分と混合することが好ましい。
上記架橋重合体の分散体は、湿式微粒化装置(吉田機械興業社製「ナノヴェイタ」)、若しくは、撹拌・混合機(吉田機械興業社製「ダマトリシステム」)、又は、これらと同様の原理で処理する湿式微粒化装置、若しくは、撹拌・混合機により処理したうえで、その他の成分と混合することが好ましい。このような処理を行うことにより、化粧料におけるゲルの凝集をより充分にほぐすことができ、化粧料の粘度安定性がより向上する。
【0086】
本発明の化粧料としては特に制限されないが、例えば、皮膚化粧料、皮膚外用剤又は頭髪化粧料等が挙げられる。本発明の化粧料に含まれる架橋体は、このような化粧料において、保湿剤、増粘剤、吸油剤等としての効果を発揮するこができる。本発明はまた、本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋体を含む保湿剤、増粘剤、又は、吸油剤でもある。
【0087】
上記皮膚化粧料としては特に制限されないが、例えば、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料;リキッドファンデーション、下地乳液、チークカラー、アイシャドウ、マスカラ、口紅等のメイクアップ化粧料;クレンジングクリーム、洗顔フォーム、液状洗顔料等の洗浄用化粧料;日焼け止め化粧料等の化粧料(医薬部外品を含む);浴用剤等の浴用化粧料が挙げられる。
上記皮膚外用剤としては、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等の外用医薬品等が挙げられる。
上記頭髪化粧料としては特に制限されないが、例えば、シャンプー、リンス、トリートメント、ワックス、スプレー、ジェル、ミスト等が挙げられる。
【0088】
本発明はまた、本発明の架橋重合体を含む皮膚化粧料、皮膚外用剤又は頭髪化粧料でもある。
【0089】
≪第2の本発明:N-ビニルラクタム系架橋重合体≫
第2の本発明の説明においては第1の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体(以下、第2の本発明の架橋重合体ともいう。)は、N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する。
第2の本発明の架橋重合体がN-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより、水及び/又は油を吸収、保持、徐放させることができ、これにより保湿効果を発揮することができる。更に、油を吸収することができるため、吸油剤としての効果を発揮することもできる。また、本発明の架橋重合体は、水やその他の溶媒を吸収すると、架橋構造を有することにより、膨潤しゲル化することにより、増粘効果を発揮し、化粧料に添加した場合に肌への密着性をより向上させることもできる。
また、上記N-ビニルラクタムは非イオン性であることから、N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する本発明の架橋重合体は、安全性にも優れ、化粧料用途に好適に用いることができる。さらに、本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより臭気成分の消臭能力にも優れることとなる。本発明において優れた消臭能力とは、臭気成分の量又は濃度の少なくとも一方を低減させる効果が高いことを意味する。
【0090】
第2の本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタム系架橋重合体1g当たりのエタノールの吸液能力が3~40gである。これにより、上記架橋重合体は、化粧料用途に好適に用いることができる。好ましくは5g以上であり、より好ましくは8g以上であり、更に好ましくは10g以上であり、より更に好ましくは12g以上であり、特に好ましくは15g以上であり、最も好ましくは20g以上である。一方、エタノールの吸液能力の上限は高い方が好ましいが、より好ましくは35g以下であり、更に好ましくは30g以下である。
【0091】
第2の本発明の架橋重合体は、N-ビニルラクタム系架橋重合体1g当たりの吸水能力が3~40gである。好ましくは5g以上であり、より好ましくは8g以上であり、更に好ましくは10g以上であり、より更に好ましくは12g以上であり、特に好ましくは15g以上であり、最も好ましくは20g以上である。一方、水の吸液能力の上限は高い方が好ましいが、より好ましくは35g以下であり、更に好ましくは30g以下である。
【0092】
第2の本発明の架橋重合体は、架橋重合体1g当たりの油の吸収能力が3g以上であることが好ましい。より好ましくは5g以上であり、より好ましくは8g以上であり、更に好ましくは10g以上であり、より更に好ましくは12g以上であり、特に好ましくは15g以上であり、最も好ましくは20g以上である。一方、油の吸液能力の上限は高い方が好ましいが、より好ましくは60g以下であり、更に好ましくは50g以下であり、最も好ましくは40g以下である。
なお、エタノール、水及び油の吸収能力は、「(架橋重合体重量+吸収された溶液量)/架橋重合体重量」で計算される値である。架橋重合体の吸液能力は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0093】
第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体を化粧品用途に用いる場合、架橋重合体粒子の平均粒子径が、0.1~100μmであることが好ましい。より好ましくは0.1~80μmであり、更に好ましくは1~40μmである。平均粒子径が、1~40μmであれば、化粧料として肌に塗布した際のざらつきを充分に抑制することができ、良好な感触が得られるので好ましい。また、水等の吸液速度が向上する傾向にある。架橋重合体粒子の平均粒子径として一層好ましくは1~30μmであり、更に一層好ましくは1~20μmであり、特に好ましくは、1~10μmである。
架橋重合体の平均粒子径は、乾式の粒子径分布測定装置(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製 型式:マスターサイザー3000 乾式)、又は、これと原理が同じであるレーザ回折・散乱法を採用した粒子径分布測定装置により測定することができる。
【0094】
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体は、上記方法により求めるアスペクト比が1.15~10である粒子の割合が、該N-ビニルラクタム系架橋重合体の合計数に対して10~100%(個数)であり、このような形状の粒子は、球状の粒子よりも肌との接触面積が大きくなるため肌への密着性に優れ、肌の表面に留まりやすくなる。
上記アスペクト比の測定方法、測定装置は第1の本発明に述べたとおりである。
アスペクト比が1.15~10である粒子の割合として好ましくは30~100%(個数)であり、より好ましくは50~100%(個数)であり、更に好ましくは70~100%(個数)であり、特に好ましくは90~100%(個数)であり、最も好ましくは100%(個数)である。
上記粒子のアスペクト比として好ましくは1.15~7であり、より好ましくは1.15~5であり、更に好ましくは1.2~5であり、特に好ましくは1.2~3である。更に特に好ましくは1.25~3であり、最も好ましくは1.25~2.5である。
また、上記環状N-ビニルラクタム系架橋体の、ランダムに選択した粒子100個以上のアスペクト比の平均値は、1.15~5であることが好ましい。より好ましくは1.15~3であり、更に好ましくは1.2~3であり、特に好ましくは1.2~2.5である。最も好ましくは1.2~2である。
【0095】
また、第2の本発明の架橋重合体の架橋構造は、架橋性単量体由来の構造単位以外の架橋構造を有していてもよく、例えば下記(6)~(10)により形成することができる。
(6)架橋性単量体を含む単量体成分を重合して架橋構造を有する重合体を製造する
(7)反応性官能基を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られた重合体に、該反応性官能基と反応する官能基を複数有する架橋剤を反応させて架橋構造を形成する
(8)反応性官能基を有する単量体1と、該単量体1が有する反応性官能基と反応する反応性官能基を有する単量体2とを共に含む単量体成分を重合した後、該単量体1の反応性官能基と単量体2の反応性官能基とを反応させて架橋構造を形成(自己架橋)する
(9)重合体にラジカルを発生させ、ラジカルが発生した重合体間で架橋構造を形成(自己架橋)する
(10)重合体にラジカルを発生させ、ラジカルが発生した重合体と架橋性単量体を反応させて架橋構造を形成する
架橋性単量体の具体例は第1の本発明において述べたとおりである。
第2の本発明の架橋重合体の架橋構造は上記(6)~(10)のいずれによって形成されたものであってもよいが、上記(6)によって形成されたものであることが好ましい。
【0096】
上記(6)、(10)における架橋性単量体としては、残存するN-ビニルラクタム及び可溶分(架橋されない重合体分であって水への溶解分)が低下する傾向にあることから、アリル基を2個以上有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、シアヌル酸トリアリル等のシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール、ジビニルエチレン尿素、1,4-ブチレンビス(N-ビニルアミド)及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース等が好ましい。
より好ましくは、シアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースであり、シアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース由来の構造単位を有するN-ビニルラクタム系架橋重合体は、本発明の好ましい形態の1つである。また、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースは安全性がより高いため、このような架橋重合体は、化粧料用途により好適に用いることができる。
【0097】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位と架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位とを有するものであり、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位の割合は、全構造単位100モル%に対して0.01~2モル%であることが好ましい。架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位の割合が0.01~2モル%であれば、上記架橋重合体は、ゲル強度がより好適な範囲となる。このため、ゲル解砕をより充分に行うことができ、平均粒子径をより小さくすることができる。また、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位の割合を調整することで、本発明の架橋重合体が有する、水などの溶媒を吸収、保持する能力を調整することができる。
上記割合としてより好ましくは0.05~1.5モル%であり、更に好ましくは0.06~1.4モル%であり、一層好ましくは0.08~1.2モル%であり、より一層好ましくは0.1~1モル%である。
上記架橋重合体がシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体由来の構造単位を有する場合、その割合は、好ましくは0.05~1.5モル%であり、更に好ましくは0.06~1.4モル%であり、一層好ましくは0.08~1.2モル%であり、より一層好ましくは0.1~1モル%であり、更に一層好ましくは0.12~0.8モル%であり、特に好ましくは0.12~0.6モル%であり、最も好ましくは0.12~0.48モル%である。
【0098】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、架橋性単量体に由来する構造単位を有する場合、全構造単位100モル%に対し、0.01~2モル%有することが好ましく、0.1~1モル%有することがより好ましい。
【0099】
第2のN-ビニルラクタム系架橋重合体の水可溶分の割合は、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、35質量%以下である。これにより重合体を目的の用途に用いた際の有効成分濃度が向上する。このような架橋重合体を化粧料として用いた場合に保湿、吸油効果に優れ、また化粧料が高粘度化することを充分に抑制することができる。
上記水可溶分の割合として、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以下である。
上記組成物における水可溶分の割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0100】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、該架橋重合体の5質量%水分散体粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満であることが好ましい。上記架橋重合体がこのような粘度であれば、化粧料として用いた場合の肌への塗布性を良好にすることができる。
すなわち、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体が、下記の条件で測定する粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満である形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
<粘度測定条件>
試料:該N-ビニルラクタム系架橋重合体の5質量%水分散体であって、16時間攪拌したもの
測定機器:B型粘度計を用いて25℃の上記試料を測定する
測定条件:ロータNo.4、回転数30rpm
上記粘度は、500mPa・s以上、10000mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは1000mPa・s以上、10000mPa・s未満であり、更に好ましくは3000mPa・s以上、9000mPa・s以下であり、特に好ましくは5000mPa・s以上、9000mPa・s以下であり、特に一層好ましくは7000mPa・s以上、9000mPa・s以下である。
上記粘度の測定は、以下の方法により行うことができる。
<粘度の測定>
容量50mlガラス製スクリュー管に、粒子状架橋重合体2.5g、脱イオン水(導電率10μS/cm以下)47.5gを正確に秤量し、回転子を入れ、密栓した。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。その後、室温(温度23±2℃)、常圧下で、マグネチックスターラーを用いて16時間撹拌し、環状N-ビニルラクタム系架橋体の5質量%水分散体を準備した。次いで、該水溶液を25℃にしたのちに、B型粘度計(東機産業株式会社製 BM型)(ロータNo.4、回転数30rpm)を用いて測定した。
【0101】
<第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法>
第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造は特に制限されないが、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分を重合する工程、及び、架橋構造を形成する工程を行って製造することが好ましい。すなわち、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分を重合する工程、及び、架橋構造を形成する工程を含むN-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。また、全単量体(N-ビニルラクタム及びその他の単量体(E))成分100モル%に対するN-ビニルラクタム、その他の単量体(E)及び架橋性単量体の含有割合は、上述の全構造単位100モル%に対するN-ビニルラクタム、その他の単量体(E)及び架橋性単量体由来の構造単位の割合と同様である。
また、架橋性単量体を用いて架橋構造を形成する場合には、上記重合工程と架橋構造形成工程が同時に行われることとなる。このような形態もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0102】
上記重合工程における重合反応時のpHは、特に制限されないが、pH5~10であることが好ましい。重合反応時のpHが5~10であれば、N-ビニルラクタム系単量体の加水分解を抑制し、上記式(3)で表される化合物等の、残存N-ビニルラクタム系単量体量に由来する副生成物の量も低減することができる。重合反応時のpHとしてより好ましくはpH7~9である。pHの調整方法は、特に制限されないが、使用する単量体成分の溶液のpHを、酸や塩基を用いて調整したうえで、反応器に添加することにより行うことが好ましい。
【0103】
上記架橋重合体が上記(7)~(10)によって形成された架橋構造を有するものである場合、該架橋重合体の製造方法では、単量体成分を重合させる重合工程を行った後に当該架橋構造を形成するための後架橋工程を行うことになる。
後架橋工程に供される重合体としては、単量体成分から製造したものを用いてもよく、市販の重合体を用いてもよい。
【0104】
第2の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物は、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体を含むものであり、上記組成物におけるN-ビニルラクタム系架橋重合体の含有量、架橋重合体以外の他の成分等は、第1の本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物と同様である。
【0105】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物における水可溶分の割合は、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、35質量%以下であることが好ましい。上記水可溶分の割合が、上記好ましい範囲であれば、組成物中の有効成分濃度がより向上し、化粧料として用いた場合に保湿、吸油効果により優れ、化粧料が高粘度化することをより充分に抑制することができる。
すなわち、水可溶分の割合が、N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、35質量%以下であるN-ビニルラクタム系架橋重合体含有組成物もまた本発明の1つである。上記水可溶分の割合として、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは25%以下である。
上記組成物における水可溶分の割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0106】
本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体はまた、臭気成分の消臭能力にも優れるものであり、消臭用途に好適に用いられる。すなわち、上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は消臭剤として好適に用いることができ、本発明のN-ビニルラクタム系架橋重合体を含む消臭剤もまた、本発明の1つである。
【0107】
≪第3の本発明:化粧料≫
第3の本発明の説明においては第1、第2の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
また以下において、単に「第3の本発明」という場合には第3-1及び第3-2の本発明に共通する事項を意味するものとする。
第3の本発明の化粧料に含まれる環状N-ビニルラクタム系架橋重合体(以下、第3の本発明の架橋重合体ともいう。)は、環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する。
イオン系のポリマーは、皮膚刺激性・腐食性があることが多く、安全性が充分でないが、上記環状N-ビニルラクタムは非イオン性であることから、第3の本発明の架橋重合体は、環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより、従来の添加剤よりも安全性に優れ、化粧料用途に好適に用いることができる。
また、第3の本発明の架橋重合体が環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより、水及び/又は油を吸収、保持、徐放させることができ、これにより保湿効果を発揮することができる。更に、油を吸液することができるため、吸油剤としての効果を発揮することもできる。また、本発明の架橋重合体は、水やその他の溶媒を吸液すると、架橋構造を有することにより、膨潤しゲル化することにより、増粘効果を発揮し、化粧料に添加した場合に肌への密着性を向上させることもできる。
【0108】
第3-1の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋体は、上記環状N-ビニルラクタム系架橋重合体は、上記の条件で測定する粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満である。
上記架橋重合体がこのような粘度であれば、化粧料の肌への塗布性を良好にすることができる。上記粘度は、500mPa・s以上、10000mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは1000mPa・s以上、10000mPa・s未満であり、更に好ましくは3000mPa・s以上、9000mPa・s以下であり、特に好ましくは5000mPa・s以上、9000mPa・s以下であり、特に一層好ましくは7000mPa・s以上、9000mPa・s以下である。
【0109】
第3-2の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体は、粒子状の形態に於いて、上記方法により求めるアスペクト比が1.15~10である粒子の割合が、該環状N-ビニルラクタム系架橋重合体粒子の合計数に対して10~100%(個数)であり、このような形状の粒子は、球状の粒子よりも肌との接触面積が大きくなるため、肌の表面にひっかかりやすく、肌への密着性に優れることとなる。なお、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の粒子は、粒子が凝集している場合があるが、上記アスペクト比の測定は、凝集していない一次粒子について測定するものとする。また、一次粒子が重なっている場合は、重なっていない粒子のみを測定の対象とする。
上記アスペクト比は、サンプルの光学又は電子顕微鏡による画像データより、画像解析式粒度分析測定ソフトを用いて算出するものとする。「画像解析式粒度分析測定ソフト Mac-view ver.4(マウンテック社製)」や「粒子画像分析装置 モフォロギG3(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製)」、又は、これと原理が同じである画像解析ソフトや画像分析装置により測定することができる。
上記アスペクト比1.15~10である粒子の割合は、ランダムに選択した粒子100個以上について、アスペクト比を測定して求めることができる。
アスペクト比が1.15~10である粒子の割合として好ましくは30~100%(個数)であり、より好ましくは50~100%(個数)であり、更に好ましくは70~100%(個数)であり、特に好ましくは90~100%(個数)であり、最も好ましくは100%(個数)である。
上記粒子のアスペクト比として好ましくは1.15~7であり、より好ましくは1.15~5であり、更に好ましくは1.2~5であり、特に好ましくは1.2~3である。更に特に好ましくは1.25~3であり、最も好ましくは1.25~2.5である。
また、上記環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の、ランダムに選択した粒子100個以上のアスペクト比の平均値は、1.15~5であることが好ましい。より好ましくは1.15~3であり、更に好ましくは1.2~3であり、特に好ましくは1.2~2.5である。最も好ましくは1.2~2である。
【0110】
第3-1の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体が、上記方法により求めるアスペクト比が1.15~10である粒子の割合が、該環状N-ビニルラクタム系架橋重合体粒子の合計数に対して10~100%(個数)であることもまた、本発明の好ましい形態の1つである。
第2の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体が、上記の条件で測定する粘度が100mPa・s以上、10000mPa・s未満であることもまた、本発明の好ましい形態の1つである。
【0111】
第3の本発明の架橋重合体の形状は、特に制限されないが、粒子状であることが好ましい。すなわち、本発明の化粧料が、粒子状の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体を含むものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0112】
また、第3の本発明の架橋重合体の架橋構造は、例えば第1、2の本発明において述べた上記(1)~(5)及び/又は(6)~(10)により形成することができる。架橋構造は(1)~(5)及び/又は(6)~(10)のいずれによって形成されたものであってもよいが、上記(1)及び/又は(6)によって形成されたものであることが好ましい。
上記(1)、(5)、(6)、(10)の架橋性単量体としては、残存するN-ビニルラクタム及び可溶分(架橋されない重合体分であって水への溶解分)が低下する傾向にあることから、アリル基を2個以上有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、シアヌル酸トリアリル等のシアヌル酸骨格を有する架橋性単量体、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース等が好ましく、シアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースがより好ましい。
【0113】
上記環状N-ビニルラクタム系架橋重合体は、架橋性単量体に由来する構造単位を、全構造単位100モル%に対し、0.0001~10モル%有することが好ましく、0.01~1モル%有することがより好ましい。
架橋性単量体の使用量を調整することで、本発明の架橋体が有する、水などの溶媒を吸収、保持する能力を調整することができる。
【0114】
第3の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の平均粒子径は、特に制限はないが、好ましくは0.1~100μmである。より好ましくは、0.1~80μmであり、さらに好ましくは、0.1~50μmであり、特に好ましくは、1~40μmである。上記範囲であることにより、本発明の水等の吸液速度が向上する傾向にある。また、化粧品に配合した際に良好な感触が得られる。
架橋体の平均粒子径は、乾式の粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3000IIシリーズ)、又は、これと原理が同じであるレーザー回折・散乱法を採用した粒子径分布測定装置により測定した値である。
【0115】
第3の本発明の架橋重合体は、水の吸液能力が3倍以上であることが好ましい。より好ましくは5倍以上であり、更に好ましくは10倍以上であり、特に好ましくは15倍であり、最も好ましくは20倍以上である。
第3の本発明の架橋重合体は、油の吸液能力が3倍以上であることが好ましい。より好ましくは5倍以上であり、更に好ましくは10倍以上であり、更により好ましくは15倍以上であり、最も好ましくは20倍以上である。
なお、水及び油の吸液能力は、「(架橋重合体重量+吸液された溶液量)/架橋重合体重量」で計算される値である。架橋重合体の吸液能力は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0116】
<第3の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法>
本発明の化粧料に含まれる環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、あるいは、上記単量体成分、架橋剤成分およびその好ましい割合は、第1の発明および第2の発明で述べたとおりである。
また、架橋性単量体を用いて架橋構造を形成する場合には、上記重合工程と架橋構造形成工程が同時に行われることとなる。このような形態もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0117】
重合工程において重合開始剤を使用する場合、重合開始剤の使用量の好ましい範囲は、第2の本発明と同様である。
【0118】
上記製造方法において粉砕工程を含む場合、上記粉砕工程は、粉砕機を使用して行うことが好ましい。
また、架橋体を平均粒子径100μm以下に粉砕する場合は、ジェットミルを用いることが好ましい。
【0119】
本発明の化粧料における環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の含有量は、特に制限されないが、化粧料100質量%に対して0.01~50質量%であることが好ましい。より好ましくは0.05~30質量%であり、更に好ましくは0.1~20質量%である。
【0120】
本発明の化粧料は、架橋構造を有しない環状N-ビニルラクタム系重合体(水可溶分)を含んでいてもよく、上記水可溶分の割合は、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、35質量%以下であることが好ましい。上記水可溶分の割合が、上記好ましい範囲であれば、本発明の化粧料における有効成分濃度がより向上し、保湿、吸油効果により優れ、化粧料が高粘度化することをより充分に抑制することができる。上記水可溶分の割合として、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以下である。
上記化粧料における水可溶分の割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0121】
本発明の化粧料は、N-ビニルラクタム系単量体等の残存モノマーの含有量が、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体100質量%に対して、200ppm以下であることが好ましい。残存モノマーの含有量が、上記好ましい範囲であれば、本発明の化粧料は安全性により優れることとなる。残存モノマーの含有量として、より好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは50ppm以下であり、最も好ましくは0ppmである。
上記化粧料における残存モノマーの割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0122】
本発明の化粧料は、上記環状N-ビニルラクタム系架橋体以外のその他の成分を含んでいてよい。その他の成分は上述のとおりである。
【0123】
≪第4の本発明:吸収性複合体≫
第4の本発明の説明においては第1~3の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
また以下において、単に「第4の本発明」という場合には第4-1及び第4-2の本発明に共通する事項を意味するものとする。
第4の本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材とを備える複合体であり、複合体とすることにより、プリンター等のインク吸収用途等の成形体が求められる用途に好適に用いることができる。
ノニオン系架橋重合体は、従来のポリアクリル酸(塩)を主成分とする架橋体と比較して、吸液速度が遅いが、吸収基材との複合体とすることにより、吸収性複合体に液体を吸液させた際に、まず、吸収基材が吸液し、拡散した液体をノニオン系架橋重合体が吸液することになる。このため、複合体化することにより、ノニオン系架橋重合体単独の場合よりも、第4の本発明の吸収性複合体は速く吸液することができる。
また、第4の本発明の吸収性複合体は吸液性に優れるため、保湿剤等の化粧料用途にも好適に用いることができる。
【0124】
第4-1の本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が0.1以上、2未満である。
上記ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比が0.1以上であれば、吸収基材が吸液した液体をノニオン系架橋重合体がより充分に受け取ることができ、吸収基材からの液体の染み出し等を充分に抑制することができる。より好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.3以上であり、より更に好ましくは0.4以上であり、特に好ましくは0.5以上であり、最も好ましくは0.7以上である。一方、質量比の上限は、より好ましくは1.9以下であり、更に好ましくは1.8以下であり、より更に好ましくは1.7以下であり、特に好ましくは1.5以下であり、最も好ましくは1.3以下である。
【0125】
第4-2の本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と該吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)が2.5以上、15以下である。上記ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比が2.5以上であれば、吸収基材が吸液した液体をノニオン系架橋重合体がより充分に受け取ることができ、吸収基材からの液体の染み出し等を充分に抑制することができる。
上記ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比にするために、あらかじめノニオン系架橋重合体が吸液して膨潤するための空間を確保しておくことが好ましい。また、ノニオン系架橋重合体の膨潤を考慮して、ノニオン系架橋重合体の量を調節することにより、内圧により吸収基材が破断することを抑制し、かつ、吸収性複合体の体積当たりの吸液量をより向上させることができる。
【0126】
第4-2の本発明のノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比(ノニオン系架橋重合体/吸収基材)は15以下である。上記質量比が15以下であれば、ノニオン系架橋重合体に対する吸収基材の量がより充分になり、吸収性複合体の吸液速度がより向上する。
上記吸収性複合体がシート状等の平面的な形状である場合、上記吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比が2.5~5であることが好ましい。より好ましくは3~5である。
上記吸収性複合体が平面的な袋状である場合、上記吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比が2.5~7であることが好ましい。より好ましくは3~5である。
吸収性複合体が角錐状等の立体的な袋状である場合、上記吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体と吸収基材との質量比が3~15であることが好ましい。より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、特に好ましくは6以上である。一方、質量比の上限は、より好ましくは13以下、更に好ましくは11以下である。
【0127】
上記吸収性複合体は、吸収性複合体1g当たりの水の吸液能力が3~30gであることが好ましい。好ましくは5g以上であり、より好ましくは10g以上である。更に好ましくは15g以上であり、特に好ましくは20g以上である。
【0128】
上記吸収性複合体は、吸収性複合体1g当たりのエタノールの吸液能力が3~30gであることが好ましい。これにより、上記吸収性複合体は、化粧料用途に好適に用いることができる。好ましくは5g以上であり、より好ましくは10g以上である。更に好ましくは15g以上であり、特に好ましくは20g以上である。
【0129】
<ノニオン系架橋重合体>
第4の本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体(以下、単に架橋重合体ともいう)を含むものである。
第4の本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体を含むことにより、高濃度の有機溶剤等についても、吸液することができる。また、架橋重合体がノニオン系であることにより、安全性にも優れることとなる。
上記ノニオン系架橋重合体は、ノニオン系単量体(A)由来の構造単位(a)を有する架橋重合体である。
上記ノニオン系単量体(A)としては、非イオン性の単量体であれば特に制限されないが、例えば、アミド系単量体;不飽和アルコール類;(ポリ)アルキレングリコール系単量体;(メタ)アクリル酸エステル類;芳香族ビニル系単量体;アルケン類;ビニルエーテル類;カルボン酸ビニル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
上記ノニオン系架橋重合体は、アミド系単量体及び/又は(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
【0130】
上記アミド系単量体としては、アミド構造とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ラクタム構造を有する単量体(以下、ラクタム系単量体(N-ビニルラクタム系単量体)ともいう。);(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド類;N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド等のビニルアセトアミド類;N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド等のN置換若しくは無置換のビニルホルムアミド類;ビニルオキサゾリドン等が挙げられる。
【0131】
上記不飽和アルコール類としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等が挙げられる。
【0132】
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、(ポリ)アルキレングリコール鎖とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであれば特に制限されず、例えば、上述の不飽和アルコール類の水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物や、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸類と(ポリ)アルキレングリコールとのエステル等が挙げられる。
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、下記式(4);
【0133】
【0134】
(式(4)中、R5~R7は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R8Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。R9は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。pは、0~5の数を表し、qは、0又は1の数である。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。)で表される構造であることが好ましい。
【0135】
上記式(4)において、R5~R7は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表すが、R5、R6の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。
【0136】
上記式(4)における-(R8O)-で表されるオキシアルキレン基は、炭素数2~18のオキシアルキレン基であり、オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
上記-(R8O)-で表されるオキシアルキレン基は、炭素数2~8のオキシアルキレン基が好ましく、より好ましくは、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。
これらのオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
【0137】
上記式(4)における-(R8O)-で表されるオキシアルキレン基が、エチレンオキシドが付加したオキシエチレン基を含むものである場合、全オキシアルキレン基100モル%中にオキシエチレン基を50~100モル%含むことが好ましい。オキシエチレン基をこのような割合で含むことで空気連行性が高くなることを抑制し、空気量の調整を容易にすることが可能となり、強度低下や耐凍結融解性の低下を抑制することができる。より好ましくは60~100モル%、更に好ましくは70~100モル%であり、特に好ましくは80~100モル%であり、最も好ましくは90~100モル%である。
【0138】
上記式(4)におけるR9は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。R9は、炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子であることが好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、最も好ましくは、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルオクチル基及び2-エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基などが挙げられる。これらの中でも、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましい。
【0139】
上記式(4)におけるpは0~5の数を表し、qは0又は1の数を表すが、p、qの好ましい組合せは、pが1又は2でqが0の組合せ、又は、pが0でqが1の組合せである。
【0140】
上記式(4)におけるnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。好ましくは1~150であり、より好ましくは1~100であり、更に好ましくは1~80であり、特に好ましくは1~50であり、最も好ましくは1~30である。
【0141】
上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0142】
上記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド等が挙げられる。
上記アルケン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
上記カルボン酸ビニル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0143】
上記ノニオン系単量体(A)の中でもアミド系単量体及び(ポリ)アルキレングリコール系単量体が好ましい。
すなわち、第4の本発明のノニオン系架橋重合体は、アミド系単量体及び/又は(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構造単位を有するものであることが好ましい。より好ましくは、アミド系単量体由来の構造単位を有するものである。
【0144】
また、第4の本発明のノニオン系架橋重合体の架橋構造は、例えば第1、2の本発明において述べた上記(1)~(5)及び/又は(6)~(10)により形成することができる。架橋構造は(1)~(5)及び/又は(6)~(10)のいずれによって形成されたものであってもよいが、上記(1)及び/又は(6)によって形成されたものであることが好ましい。
【0145】
上記(1)、(5)、(6)、(10)における架橋性単量体としては、第3の発明において述べた架橋性単量体が好ましい。
【0146】
上記ノニオン系架橋重合体は、ノニオン系単量体(A)及び架橋性単量体以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。また、ノニオン系架橋重合体がノニオン性となる限り、その他の単量体(E)としてイオン系の単量体由来の構造単位を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、例えば、(i)アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;(v)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記(i)~(iii)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)における塩としては、塩酸塩、硫酸塩等が例示される。
【0147】
上記ノニオン系架橋重合体は、ノニオン系単量体(A)に由来する構造単位(a)の割合が全構造単位(ノニオン系単量体(A)由来の構造単位(a)及びその他の単量体(E)由来の構造単位)100モル%に対して、30~100モル%であることが好ましい。より好ましくは50~100モル%であり、更に好ましくは70~100モル%であり、一層好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
ただし、全構造単位に架橋性単量体に由来する構造は含まれない。
【0148】
上記ノニオン系架橋重合体は、アミド系単量体及び/又は(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の単位を有する場合、アミド系単量体及び/又は(ポリ)アルキレングリコール系単量体に由来する構造単位の割合が全構造単位100モル%に対して、30~100モル%であることが好ましい。より好ましくは50~100モル%であり、更に好ましくは70~100モル%であり、一層好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
【0149】
上記ノニオン系架橋重合体は、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が全構造単位100モル%に対して、0~70モル%であることが好ましい。より好ましくは0~50モル%であり、更に好ましくは0~30モル%であり、一層好ましくは0~20モル%であり、特に好ましくは0~10モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0150】
上記ノニオン系架橋重合体は、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位を、全構造単位100モル%に対し、0.01~2モル%有することが好ましく、0.01~1モル%有することがより好ましく、0.05~1モル%有することが更に好ましく、0.1~1モル%有することが最も好ましい。
架橋性単量体及び/又は架橋剤の使用量を調整することで、第4の本発明のノニオン系架橋重合体の、インク等の溶液を吸液、保持する能力を調整することができる。また、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位が0.01モル%以上であれば、ノニオン系架橋重合体を製造する際の解砕がしやすくなる。
【0151】
第4の本発明のノニオン系架橋重合体の平均粒子径は、特に制限はないが、好ましくは0.1μm以上、2000μm以下である。より好ましくは、0.1μm以上、1000μm以下であり、更に好ましくは、1μm以上、1000μm以下であり、一層好ましくは3μm以上、1000μm以下であり、より一層好ましくは5μm以上、1000μm以下であり、特に好ましくは、10μm以上、1000μm以下であり、最も好ましくは50μm以上、850μm以下である。平均粒子径が上記好ましい範囲であることにより、第4の本発明ノニオン系架橋重合体の水等の吸液能力が向上する傾向にあり、また、吸液速度も好適な範囲となる。平均粒子径が0.1μm以上であれば、水等を吸液した場合にダマになることを充分に抑制することができる。さらに、シート状の吸収基材に加工する際に、シート状吸収基材からの粉体の抜け落ちを充分に抑制することができる。平均粒子径が2000μm以下であれば、シート状の吸収基材に加工する際に、粒子同士、及び、粒子と吸収基材との間の隙間を充分に抑制することができる。また、ノニオン系架橋重合体は、平均粒子径が300μm以下であり、かつ100μm未満の微粉が含まれることが好ましく、この場合シートに架橋重合体がよりつきやすくなる。
また、袋状の吸収性複合体を製造する際には、平均粒子径が100~500μmであることが好ましく、平均粒子径が100μm以上であれば、袋状の吸収基材の目から架橋重合体が漏洩することを抑制することができ、500μm以下であれば、吸液速度がより向上する傾向にある。
ノニオン系架橋重合体の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0152】
<ノニオン系架橋重合体の製造方法>
上記ノニオン系架橋重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、あるいは、上記単量体成分、架橋剤成分およびその好ましい割合は、第1の発明及び第2の発明で述べたとおりである。なお、第1の発明及び第2の発明で述べた全単量体成分100モル%に対する単量体成分等の好ましい割合における「全単量体」は、「全単量体(ノニオン系単量体及びその他の単量体(E))」に読み替える。
【0153】
重合工程において重合開始剤を使用する場合、上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(ノニオン系単量体(A)と上述したその他の単量体(E)と架橋性単量体との合計の使用量)1モルに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、7g以下であることがより好ましく、0.1g以上、5g以下であることがさらに好ましい。
開始剤の使用量を0.1g以上とすることで、得られる架橋重合体に含まれる未反応の単量体の割合を充分に少なくすることができる。また、開始剤の使用量を10g以下とすることで、得られる架橋重合体に含まれる不純物量の割合を充分に少なくすることができる。また、開始剤の使用量をこのような割合とすることで、得られる架橋重合体の着色も抑制することができる。
【0154】
上記製造方法において粉砕工程を含む場合、粒度分布を制御するためにはロールミル、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ピンミル、ジェットミルを用いることがより好ましい。
また、ノニオン系架橋重合体を平均粒子径100μm以下に粉砕する場合は、ジェットミルを用いることが好ましい。
【0155】
本発明のノニオン系架橋重合体が上記(5)及び/又は(10)によって形成された架橋構造を有するものである場合、後架橋の際に使用する架橋性単量体の使用量は、後架橋工程前の重合体100質量%に対して、0.1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~30質量%である。このような割合で架橋性単量体を使用することにより、充分な架橋構造を形成することにより、顔料がインクに含まれる場合の顔料をより充分に吸収することができるとともに、得られる架橋重合体中に残存する未反応の架橋性単量体の量も少なくすることができる。
【0156】
上記製造方法において熟成工程を含む場合、熟成工程は、ノニオン系架橋重合体を解砕しながら行うことが好ましい。上記有機酸を添加する工程を含む場合、解砕することにより、有機酸が架橋重合体により充分に浸透することから、得られる重合体中に残存するN-ビニルラクタム系単量体の量をより充分に低減することができる。上記重合体の解砕は、通常用いられる方法により行うことができ、例えば、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押し出し機、カッターミル等のゲル粉砕機等を用いて解砕する方法が挙げられる。
【0157】
上記ノニオン系架橋重合体の製造方法は、有機酸を添加する場合であって、本発明の吸収性複合体として、後述する袋状の吸収性複合体を製造する場合には、上記有機酸の添加工程の後に中和工程を含むことが好ましい。
上記ノニオン系架橋重合体に水を添加し膨潤させ、基材に接着させて、後述するシート状の吸収性複合体を製造する場合には、有機酸塩が存在すると架橋重合体がシートにつきにくくなるため、中和工程を行わないことが好ましい。また、このようにシート状の吸収性複合体を製造する場合には、有機酸の添加工程及び中和工程の両方を行わなくてもよい。
【0158】
<吸収性複合体>
本発明の吸収性複合体の形態は、特に制限されないが、例えば、シート状、フレーク状等の平面的な形状;棒状(円筒や四角柱)、球状、三角錐や四角錘等の角錐状、円錐状、塊状等の立体的な形状等が挙げられる。
本発明における「シート」は、一般にシートであると認識される平面的な広がりをもった形状を意味するが、該形状の最も広い面の面積をa、その面に対する垂直方向の長さ(該形状の厚み)をbとしたときの〔a(1/2)〕/bが5以上であるような形状であることが好ましい。なお、上記形状の厚みが一定でない場合には、厚みの最大値をbとする。
本発明の吸収性複合体としては、シート状や角錐状のものが好ましい。
【0159】
吸収性複合体がシート状等の平面的な形状である場合、吸収基材及びノニオン系架橋重合体と吸液させる液体とが接触する面積が大きいため、吸収基材が瞬時に液体を吸収し、吸収基材が吸収した液体をノニオン系架橋重合体が強力に受け取り保持することになり、シート全体として液体の吸液速度がより向上し、また、液体をシート全体により充分に拡散させることができる。
また、吸収性複合体の形態がシート状の場合、液体を吸収した後にも、吸収性複合体の厚みの変化が小さく、厚みが規定されている用途に好適に用いることができる。
【0160】
上記吸収性複合体が円錐状、角錐状等の立体的な形状である場合、ノニオン系架橋重合体がシート状の吸収基材で包装され、又は、袋状の吸収基材に充填、密封された包装体であることが好ましい。このような吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体が吸液して膨潤するための空間を確保しやすく、ノニオン系架橋重合体の膨潤を考慮して、ノニオン系架橋重合体の量を調節することにより、内圧により吸収基材が破断することを抑制し、かつ、吸収性複合体の体積当たりの吸液量をより向上させることができる。
上記ノニオン系架橋重合体の膨潤後の体積は、膨潤率によるため、包装体におけるノニオン系架橋重合体架橋重合体の量は、架橋重合体や吸液する液体の種類に依存するが、吸液前のノニオン系架橋重合体の体積が、ノニオン系架橋重合体の体積が包装体の膨潤後に確保される容積100%に対して2~35%であることが好ましい。より好ましくは3~20%である。
【0161】
本発明の吸収性複合体は、ノニオン系架橋重合体が吸収基材に担持されていることが好ましい。
上記ノニオン系架橋重合体を吸収基材に担持させる方法は、特に制限されないが、ノニオン系架橋重合体を含む溶液に吸収基材を浸漬させる方法、接合材を用いて吸収基材に担持させる方法、吸収基材とノニオン系架橋重合体とを混合する方法、ノニオン系架橋重合体を基材に密着させる方法、ノニオン系架橋重合体をシート状の吸収基材で包み、又は、袋状の吸収基材に充填して密封する方法(例えば、包装体を形成する方法)等が挙げられる。なお、上記包装体とは、粉体(ノニオン系架橋重合体)が漏洩しないように吸収基材で包装された形態をいう。
【0162】
上記ノニオン系架橋重合体を含む溶液に吸収基材を浸漬させる方法における溶液は、ノニオン系架橋重合体以外の他の成分を含んでいてもよく、他の成分としては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを重合させた重合体、水、メタノール等の溶剤等が挙げられる。
【0163】
上記接合材を用いて吸収基材に担持させる方法における接合材の成分としては特に制限されないが、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム;n-ペンタンやアセトン、トルエン等の有機溶剤;LPGやジメチルエーテル等のガス;ポリビニルピロリドン等の接着性樹脂(バインダー)等が挙げられる。
接合材を用いて吸収基材に担持させる方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、接合剤およびノニオン系架橋重合体を有機溶剤や水等の分散媒に分散してなる分散液を基材表面に、噴霧(スプレー)する方法;上記分散液を刷毛塗り、またはローラを用いて塗布する方法;吸収基材に上記分散液を含浸させる方法;等を採用すればよい。或いは、接合剤を含む溶液または分散液を吸収基材表面に噴霧または塗布した後、該表面にノニオン系架橋重合体を均一に撒布し、さらにこの上に該溶液または分散液を噴霧または塗布する方法;等を採用することもできる。基材に塗布された該分散液等は、必要に応じて乾燥させればよい。これにより、吸収基材表面(外面及び/又は内面)に接合剤を介してノニオン系架橋重合体が付着される。つまり、ノニオン系架橋重合体の層が形成される。尚、吸収基材表面に、ノニオン系架橋重合体を含む樹脂層を形成する場合には、上記方法においてノニオン系架橋重合体を分散する工程や、ノニオン系架橋重合体を撒布する工程を省略すればよい。
【0164】
上記吸収基材とノニオン系架橋重合体とを混合する方法としては、特に制限されないが、例えば、木材粉砕パルプとノニオン系架橋重合体とを混合する方法やクロロプレンゴム等のエラストマーとノニオン系架橋重合体とを含む混合物を混錬した後延ばす方法、ノニオン系架橋重合体を接着性樹脂等で固める方法、不織布を作る工程内でノニオン系架橋重合体を分散する方法等が挙げられる。
【0165】
上記ノニオン系架橋重合体を吸収基材に密着させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ノニオン系架橋重合体及び/又は吸収基材に吸水させた後、該架橋重合体と吸収基材とを接触させ、脱水乾燥させる方法、吸収基材と吸収基材の間にポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂又は接着剤とノニオン系架橋重合体とをはさみ、熱ロール等により加熱融着又は圧着する方法等が挙げられる。
【0166】
上記吸収性複合体がシート状等の平面的な形状である場合、吸収基材とノニオン系架橋重合体とを備える吸収層が1層であっても、該吸収層が2層以上積層されていてもよい。
更に、例えばノニオン系架橋重合体を担持したシートと担持していないシートを交互に積層した構成のものや、ノニオン系架橋重合体の担持量が少ないものを上部に配置し、下部に行くにしたがって担持量を徐々に増やしたシートを何層にも配置する構成でも構わない。
また、材質の異なる不織布(PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、セルロース、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル等)にノニオン系架橋重合体を固定化し、2種類若しくはそれ以上の不織布を多層に積層したものでも構わない。
【0167】
上記吸収性複合体がシート状等の平面的な形状である場合、上記吸収性複合体は、厚みが0.01~50mmであることが好ましい。より好ましくは0.01~30mmであり、更に好ましくは0.01~20mmであり、特に好ましくは0.05~10mmであり、最も好ましくは0.1~5mmである。
上記吸収性複合体は、単位面積当たりの重量が0.1~3000g/m2であることが好ましい。より好ましくは0.5~2500g/m2であり、更に好ましくは1~1500g/m2である。
【0168】
<吸収基材>
上記吸収基材としては、ノニオン系架橋重合体を担持するものであれば、特に制限されず、例えば、紙、布、木材、エラストマー、樹脂フォーム、多孔性基材等が挙げられる。
上記紙は、JIS P 0001で定義される紙であり、布は、JIS L 0206で定義されるシート状繊維製品の総称である。
上記紙としては、ヒートシール紙等の接着可能な紙等が好ましい。
上記紙の秤量は特に制限されないが、15~100g/m2であることが好ましい。
【0169】
上記布としては、例えば、織物、編物、組み物、レース、網、不織布等が挙げられ、好ましくは、織物、編物、不織布であり、より好ましくは不織布である。
上記樹脂フォーム、多孔性基剤は、特に制限されないが、例えば発砲ポリウレタン、発砲ポリスチレン、無機多孔質体が挙げられる。
【0170】
上記吸収基材を構成する繊維素材としては、特に制限されないが、ポリエステル、ポリプロピレン等の疎水性の繊維やセルロース系繊維;ポリアミド系繊維;絹、羊毛等の動物繊維等の親水性の繊維;表層を親水化した疎水性の繊維が挙げられる。
上記親水性の繊維とは、公定水分率が3%以上である繊維を示す。
繊維の公定水分率は、JIS L 0105に記載の方法により測定することができる。
上記吸収基材は、親水性繊維を含むものであることが好ましく、親水性繊維としては、セルロース系繊維、ポリアミド系繊維、動物繊維、表層を親水化した疎水性の繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記吸収基材として親水性の繊維を含む場合、親水性の繊維は、液体の拡散性が高いため、ノニオン系架橋重合体が、吸収基材が吸液した液体を、より速く受け取ることにより、吸収性複合体全体としての吸液速度が向上することになる。
上記吸収基材としては、セルロース系繊維を含むものであることがより好ましい。
上記セルロース系繊維としては、例えば綿、麻等の天然繊維;レーヨン、キュプラ、リヨセル、ポリノジック等の再生繊維;アセテート、トリアセテート等の半合成繊維;パルプ等が挙げられる。
【0171】
上記吸収基材の形状は、ノニオン系架橋重合体との複合体を形成できる限り特に限定されないが、シート状又は袋状であることが好ましい。
【0172】
本発明の吸収性複合体が吸収することができる溶液としては、水、水溶性有機溶剤、インク等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、等のアルコール類又はグリコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類;2-オキサゾリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;1,1,3,3-テトラメチル尿素;ジメチルスルホキシド;及び、スルホラン等が挙げられる。
水溶性有機溶剤として好ましくは、グリセリン、グリコール類、アルコール類、ピロリドン類である。
【0173】
上記インクに含まれる成分としては、第1の本発明におけるインクの成分と同様のものが挙げられる。
【0174】
本発明はまた、本発明の吸収性複合体からなるインク用吸収体でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収体を用いて構成される吸収材でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収体がインクを吸収しているインク吸収体でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収体を備える印刷装置でもある。
更に本発明は、上記インク用吸収体を印刷装置に組み込んで使用する方法でもある。
なお、上記インク用吸収体はインクを吸収する前の状態のものを意味し、インク吸収体はインクを吸収している状態のものを意味する。
【0175】
本発明はまた、本発明の吸収性複合体を含む化粧料でもある。
更に本発明は、本発明の吸収性複合体を化粧料として使用する方法でもある。
本発明はまた、本発明の吸収性複合体を含む消臭剤でもある。
更に本発明は、上記消臭剤を備える消臭器でもある。
更に本発明は、上記消臭剤を消臭器に組み込んで使用する方法でもある。
【0176】
≪第5の本発:インク用吸収剤≫
第5の本発明の説明においては第1~第4の本発明と異なる技術的特徴について説明する。
第5の本発明のインク用吸収剤に含まれるN-ビニルラクタム系架橋重合体(環状N-ビニルラクタム系架橋重合体)(以下、本発明の架橋重合体ともいう。)は、N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有する。
第5の本発明のインク用吸収剤は、本発明の架橋重合体が環状N-ビニルラクタムに由来する構造単位を有することにより、インクを充分に吸収できるため、インクの残液を充分に抑制することができる。
従来のインク用吸収剤として例えば、ポリアクリル酸系吸液性樹脂やポリエチレンオキサイド架橋重合体は、有機溶剤を、水を過剰に含む水溶液としては吸液できるものの、水が蒸発し有機溶剤成分の濃度が上昇すると、吸液した液を保持しきれず、液の染み出し(はきだし)が生じる。これに対して、本発明のインク用吸収剤は、高濃度の有機溶剤を吸液することができ、吸液した有機溶剤を保持することができるため、液の染み出しを充分に抑制することができる。
【0177】
また、本発明の架橋重合体の架橋構造は、例えば第1、2の本発明において述べた上記(1)~(5)及び/又は(6)~(10)により形成することができる。(1)~(5)及び/又は(6)~(10)における架橋構造の好ましい形態は、第1、2の本発明と同様であり、架橋性単量体の具体例は第1、2の本発明において述べたとおりである。架橋構造は(1)~(5)及び/又は(6)~(10)のいずれによって形成されたものであってもよいが、上記(1)及び/又は(6)によって形成されたものであることが好ましい。
【0178】
上記(1)、(5)、(6)、(10)の架橋性単量体としては、第1の発明及び第2の発明において述べた架橋性単量体が好ましい。
【0179】
上記N-ビニルラクタム系架橋重合体は、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位を、全構造単位100モル%に対し、0.01~2モル%有することが好ましく、0.01~1モル%有することがより好ましく、0.05~1モル%有することが更に好ましく、0.1~1モル%有することが最も好ましい。
架橋性単量体及び/又は架橋剤の使用量を調整することで、本発明の架橋重合体の、インクを吸収、保持する能力を調整することができる。また、架橋性単量体及び/又は架橋剤に由来する構造単位が0.01モル%以上であれば、架橋重合体を製造する際の解砕がしやすくなる。
【0180】
本発明の架橋重合体の平均粒子径は、特に制限はないが、好ましくは0.1μm以上、2000μm以下である。より好ましくは、0.1μm以上、1000μm以下であり、一層好ましくは1μm以上、1000μm以下であり、より一層好ましくは3μm以上、1000μm以下であり、更に好ましくは、5μm以上、1000μm以下であり、特に好ましくは、10μm以上、1000μm以下であり、最も好ましくは50μm以上、850μm以下である。平均粒子径が上記好ましい範囲であることにより、本発明の水等の吸液能力が向上する傾向にあり、また、吸液速度も好適な範囲となる。また、平均粒子径が0.1μm以上であれば、水等を吸液した場合にママコ状態になることを充分に抑制することができる。さらに、インク吸収シートに加工した際に、シート基剤からの粉体の抜け落ちを充分に抑制することができる。
架橋重合体の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0181】
本発明の架橋重合体は、インクの吸液能力に優れるものであり、例えば、顔料インクBK(キヤノン株式会社製、BCI-350(PGBK))を用いて吸液能力を測定した場合に、吸液能力が5倍以上であることが好ましい。より好ましくは10倍以上であり、更に好ましくは15倍以上であり、さらにより好ましくは20倍以上である。
本発明の架橋重合体はまた、有機溶剤の吸液能力にも優れ、例えば、エチレングリコールの吸液能力が5倍以上であることが好ましい。より好ましくは10倍以上であり、更に好ましくは15倍以上である。
なお、架橋重合体のインク及び有機溶剤の吸液能力は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0182】
本発明の架橋重合体が脱イオン水(導電率10μS/cm以下)を自重の15倍吸液する(吸液倍率15倍)のにかかる時間は、特に制限されるものではないが、0.1~1500分であることが好ましい。より好ましくは、0.3~600分、更により好ましくは、0.5~300分、最も好ましくは1~60分である。
また、本発明の架橋重合体がプロピレングリコールを自重の4倍吸液する(吸液倍率4倍)のにかかる時間は、特に制限されるものではないが、0.1~1500分であることが好ましい。より好ましくは、0.3~600分、更により好ましくは、0.5~300分、最も好ましくは1~60分である。なお、プロピレングリコールの吸液速度の測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0183】
<第5の本発明の環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法>
本発明のインク用吸収剤に含まれる環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。また、全単量体(環状N-ビニルラクタム及びその他の単量体(E))成分100モル%に対する環状N-ビニルラクタム、その他の単量体(E)及び架橋性単量体の含有割合は、上述の全構造単位100モル%に対する環状N-ビニルラクタム、その他の単量体(E)及び架橋性単量体由来の構造単位の割合と同様である。
【0184】
重合工程において重合開始剤を使用する場合、重合開始剤の使用量の好ましい範囲は、第1の本発明と同様である。
【0185】
上記製造方法において粉砕工程を含む場合、粒度分布を制御するためにはハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ピンミル、ジェットミルを用いることがより好ましい。
また、架橋重合体を平均粒子径100μm以下に粉砕する場合は、ジェットミルを用いることが好ましい。
【0186】
本発明はまた、本発明のインク用吸収剤を用いて構成される吸収材でもある。
上記吸収材の形態は、シート、棒状(円筒や四角柱)、球状、角錐状、円錐状、フレーク状、塊状等、使用上不適合なものでなければ特に限定されないが、シートや棒状のものが好ましい。
本発明のインク用吸収剤をインクジェット式記録装置等に用いる場合、インク用吸収剤を用いて吸収材を構成することにより、インク用吸収剤の粉体が記録装置内部に漏れ出ることを充分に抑制することができ、例えばインクジェットノズルが詰まる等の不具合が生じることを充分に抑制することができる。
【0187】
上記吸収材は、基材とインク用吸収剤とを備えるものであることが好ましく、基材にインク用吸収剤が担持されていることがより好ましい。
上記吸収材が備える基材は、特に制限されず、通常用いられる材料を使用することができる。本発明のインク用吸収剤は、インクの保持力に優れるため、基材自体のインクの保持力によらず、吸収材はインクの保持力に優れ、吸収材を傾けた場合にも、液漏れを充分に抑制することができる。
上記基材としては、第4の本発明において述べたものと同様のものが挙げられる。
【0188】
上記吸収剤は、本発明のインク用吸収剤以外のその他のインク用吸収剤を含んでいてもよい。その他のインク用吸収剤としてはインクを吸収できるものであれば特に制限されないが、例えば、酸基を含む高吸水性樹脂、無機系の吸水性粉体(例えばゼオライト、各種粘土等を粉体化したもの)、有機染料や有機顔料と類似構造(例えばフタロシアニン骨格やポルフィリン骨格等)を有する粉体等が挙げられ、これらのインク用吸収剤の少なくとも1種以上と本発明のインク用吸収剤との混合物を、基剤に担持させてもよい。
【0189】
本発明のインク用吸収剤を基材に担持させる方法は、特に制限されないが、インク用吸収剤を含む樹脂溶液に基材を浸漬させる方法、接合材を用いて基材に担持させる方法、基材とインク用吸収剤とを混合する方法、インク用吸収剤を基材に加熱融着又は圧着させる方法、インク用吸収剤を基材で包み密封する方法(例えば、包装体を形成する方法)等が挙げられる。なお、上記包装体とは、粉体(インク用吸収剤)が漏洩しないように基材で包装された形態をいう。
【0190】
上記インク用吸収剤を含む樹脂溶液に基材を浸漬させる方法における樹脂溶液は、インク用吸収剤以外の他の成分を含んでいてもよく、他の成分としては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを重合させた重合体、メタノール等の溶剤等が挙げられる。
【0191】
上記接合材を用いて基材に担持させる方法における接合材の成分、接合材を用いて基材に担持させる方法、基材とインク用吸収剤とを混合する方法は、第4の発明において述べたとおりである。
【0192】
上記インク用吸収剤を基材に加熱融着させる方法としては、特に制限されないが、例えば、基材と基材の間にポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂又は接着剤とインク用吸収剤とをはさみ、熱ロール等により加熱融着又は圧着する方法等が挙げられる。
上記インク用吸収剤を基材で包み密封する方法としては、特に制限されないが、小さい区画で区切る方が、吸収材を傾けた際にインク用吸収剤の偏りが生じないためにも好ましい。
【0193】
上記吸収材は、基材100質量%に対する本発明のインク用吸収剤の割合が、10~20000質量%であることが好ましい。より好ましくは20~10000質量%であり、更に好ましくは30~500質量%である。更により好ましくは30~200質量%であり、特に好ましくは30~180質量%である。
【0194】
上記吸収材は、シート状や包装体であることが好ましい。
本発明における「シート」は、一般にシートであると認識される平面的な広がりをもった形状を意味するが、該形状の最も広い面の面積をa、その面に対する垂直方向の長さ(該形状の厚み)をbとしたときの〔a(1/2)〕/bが5以上であるような形状であることが好ましい。なお、上記形状の厚みが一定でない場合には、厚みの最大値をbとする。
シート状の基材にインク用吸収剤が担持されている場合、基材及びインク用吸収剤とインクとが接触する面積が大きいため、基材が瞬時にインクを吸収し、基材が吸収したインクをインク用吸収剤が強力に受け取り保持することになり、シート全体としてインクの吸液速度がより向上し、また、インクをシート全体により充分に拡散させることができる。
【0195】
上記包装体状の吸収材は、粉体(インク用吸収剤)が漏洩しないように平面的、もしくは立体的な袋状の基材で包装された形態をいう。基材や包装方法は、インク用吸収剤の重量の8割以上が漏洩しない素材や形態であれば特に制限されない。包装するインク用吸収剤量は、インク用吸収剤がインクを吸収した状態の体積が包装体容積以下となる量であることが好ましい。
上記包装体状の吸収材に用いられる基材としては、上述のものが挙げられ、中でも繊維素材が好ましい。また、上記繊維素材の網目の大きさ(目開き寸法)としては、本発明のインク用吸収剤の実施例記載の平均粒子径測定でのR=80%に相当する粒子径以下の大きさであることが好ましい。繊維素材の網目の大きさがこのような大きさであれば、インク用吸収剤の漏洩を充分に抑制することができる。
【0196】
上記吸収シートはまた、基材とインク用吸収剤とを備える吸収層が1層であっても、該吸収層が2層以上積層されていてもよい。
更に、例えばインク用吸収剤を担持したシートと担持していないシートを交互に積層した構成のものや、インク用吸収剤の担持量が少ないものを上部に配置し、下部に行くにしたがって担持量を徐々に増やしたシートを何層にも配置する構成でも構わない。
また、材質の異なる不織布(PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、セルロース、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル等)にインク用吸収剤を固定化し、2種類若しくはそれ以上の不織布を多層に積層したものでも構わない。
【0197】
上記吸収シートは、厚みが0.01~50mmであることが好ましい。より好ましくは0.01~30mmであり、更に好ましくは0.01~20mmであり、特に好ましくは0.05~10mmであり、最も好ましくは0.1~5mmである。
上記吸収シートは、単位面積当たりの重量が0.1~3000g/m2であることが好ましい。より好ましくは0.5~2500g/m2であり、更に好ましくは1~1500g/m2である。
【0198】
本発明はまた、本発明のインク用吸収剤がインクを吸収しているインク含有組成物でもある。
上記インクの成分としては特に制限されないが、水、水溶性有機溶剤、染料、顔料、その他の添加剤等が挙げられる。
【実施例】
【0199】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<吸収性複合体の溶媒(脱イオン水を含む)及び溶液吸液能力の評価>
吸収性複合体を温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で重量測定後(W4(g))、容器に入れ、溶液(脱イオン水の場合は導電率10μS/cm以下)中に室温(温度23±2℃)、常圧で24時間浸漬した。なお、吸液速度が遅い油等の場合は40℃で24時間浸漬した後、10分放冷した。次いで、吸収性複合体の端をピンセットでつかんでティーバッグを引き上げ、吸収性複合体の一面を下にしてキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に乗せて5秒間静置した。次いで、反対の面を下にしてキムタオルの上に乗せて5秒間静置することにより液切りを行った後、上記吸収性複合体の質量(W5(g))を測定した。次式に従って算出した吸液倍率を吸液能力とした。
吸液倍率(g/g)=W5(g)/W4(g)
【0200】
吸収性複合体中のノニオン系架橋重合体は以下の通り評価した。
<重合体の溶媒(脱イオン水を含む)及び溶液吸液能力の評価>
架橋重合体約0.1gを正確に秤量し(質量W7(g))、4cm×5cmの不織布製のティーバッグの中に入れ、ヒートシールにより封入した。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。このティーバッグを、ガラス製で規定容量が50mLのスクリュー管に入れ、溶媒又は溶液(脱イオン水の場合は導電率10μS/cm以下)中に室温(温度23±2℃)、常圧で24時間浸漬した。なお、吸液速度が遅い油等の場合は40℃で24時間浸漬した後、10分放冷した。次いで、ティーバッグの端をピンセットでつかんでティーバッグを引き上げ、ティーバッグの一面を下にしてキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に乗せて5秒間静置した。次いで、反対の面を下にしてキムタオルの上に乗せて5秒間静置することにより液切りを行った後、上記ティーバッグの質量(W8(g))を測定した。別途、同様の操作を架橋重合体を用いないで行い、そのときのティーバッグの質量(W6(g))をブランクとして求めた。次式に従って算出した吸液倍率を吸液能力とした。
吸液倍率(g/g)=(W8(g)-W6(g))/W7(g)
【0201】
<ジアセチル消臭能力試験>
蓋つきガラス製シャーレ(内径27mm)を用意し、架橋重合体を0.50g秤量した。また、ブランクとして空のシャーレを用意した。
シャーレに蓋をして、それぞれコック付きサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製 テドラーバッグ 容量3L 型式AAK)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。その後、各バッグにジアセチル含有窒素ガスをガスタイトシリンジを用いて5mL量り入れた。各バッグ内のシャーレの蓋を開け2時間静置した後、気体検知管(株式会社ガステック製 No.92 アセトアルデヒド用)を用い、気体採取器(株式会社ガステック製 型式GV-100S)でバッグ内の気体100mLを3回吸引して、ジアセチル濃度の低減率を比較した。なお、測定値は、検知管の説明書に記載の換算スケールを用いてジアセチル濃度に換算した。
ジアセチルの低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度-試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
【0202】
<酢酸消臭能力試験>
蓋つきガラス製シャーレ(内径27mm)を用意し、架橋重合体を0.50g秤量した。また、ブランクとして空のシャーレを用意した。
シャーレに蓋をして、それぞれコック付きサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製 テドラーバッグ 容量3L 型式AAK)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。その後、各バッグに酢酸含有空気をガスタイトシリンジを用いて5mL量り入れた。各バッグ内のシャーレの蓋を開け2時間静置した後、気体検知管(株式会社ガステック製 No.81 酢酸用)を用い、気体採取器(株式会社ガステック製 型式GV-100S)でバッグ内の気体100mLを1回吸引して、酢酸濃度を測定した。検知管による実測値をもとに、低減率を算出した。
酢酸の低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度-試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
【0203】
<アスペクト比の測定>
光学顕微鏡により、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体粒子の長径及び短径を測定し、長径を短径で除した値をアスペクト比とした。サンプルの光学顕微鏡による画像データより、「粒子画像分析装置 モフォロギG3(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製)」を用いてアスペクト比を算出した。任意に選定した粒子100個以上について測定し、アスペクト比の平均値、および、粒子をアスペクト比の小さい順に並び替えた際に、個数割合で10%、50%、90%にあたる粒子のアスペクト比を算出した。
アスペクト比の測定に関しては、上記の装置以外に、サンプルの光学または電子顕微鏡による画像データより「画像解析式粒度分析測定ソフト Mac-view ver.4(マウンテック社製)」を用いて測定することもできる。
【0204】
<残存モノマー(N-ビニルラクタム系単量体)、及び、副生成物(上記式(3)で表される化合物)の定量>
容量110mlのスクリュー管に、粒子状架橋重合体約1g(質量W9(g))、脱イオン水(導電率10μS/cm以下)約100g(質量W10(g))を正確に秤量し、回転子を入れ、密栓した。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。その後、室温(温度23±2℃)、常圧下で、マグネチックスターラーを用いて16時間以上撹拌(回転数 600rpm)した。上記操作により、粒子状架橋重合体の残存モノマー(N-ビニルラクタム系単量体)、及び、副生成物(上記式(3)で表される化合物)を抽出した。この抽出液を、以下の条件で、液体クロマトグラフで定量分析した。
装置:資生堂社製「NANOSPACE SI-2」
カラム:資生堂社製「CAPCELLPAK C18 UG120」、20℃
溶離液:LC用メタノール(和光純薬工業株式会社製)/超純水=1/24(質量比)、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム 0.04質量%添加
流速:100μL/min
含有量(ppm)=測定値(ppm)×(W9(g)+W10(g))/W9(g)
【0205】
<水可溶分の測定>
容量110mlガラス製スクリュー管に、粒子状架橋重合体約1g(質量W11(g))、脱イオン水(導電率10μS/cm以下)約100g(質量W12(g))を正確に秤量し、回転子を入れ、密栓した。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。その後、室温(温度23±2℃)、常圧下で、マグネチックスターラーを用いて16時間以上撹拌(回転数 600rpm)後、定性濾紙(アドバンテック社製 型式:No.2)で濾過し、可溶性成分抽出液を得た。
次に、底面の直径が約5cmのアルミカップ(質量W13(g))に、約10gの上記抽出液を量り取り(質量W14(g))、120℃の定温乾燥機中において2時間静置し、乾燥させた。乾燥後のアルミカップ+可溶性成分の質量(W15(g))を測定し、以下の式より水可溶分を求めた。
水可溶分(質量%)=((W15(g)-W13(g))/(W14(g)×W11(g)/W12(g)))×100
【0206】
<平均粒子径の測定>
乾式の粒子径分布測定装置(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製 型式:マスターサイザー3000 乾式)により測定した累積50%値を、平均粒子径とした。測定条件は以下に示す。
<測定条件>
乾式レーザー回折散乱法
分散圧力:1bar
粒子屈折率:1.52
粒子吸収率:0.01
粒子形状:非球形
溶媒名:空気(AIR)
測定範囲:0.1~3500μm
【0207】
<粘度の測定>
50mlガラス製スクリュー管に、粒子状架橋重合体2.5g、脱イオン水(導電率10μS/cm以下)47.5gを正確に秤量し、回転子を入れ、密栓した。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。その後、室温(温度23±2℃)、常圧下で、マグネチックスターラーを用いて16時間撹拌し、環状N-ビニルラクタム系架橋重合体の5質量%水分散体を準備した。次いで、該水溶液を25℃にしたのちに、B型粘度計(東機産業株式会社製 BM型)(ロータNo.4、回転数30rpm)を用いて測定した。
【0208】
<製造例1>
N-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製、以下、VPとも称する)130.0部、架橋剤としてシアヌル酸トリアリル(以下、CTAとも称する)0.52部(VPに対し0.18モル%)、脱イオン水304.6部を卓上型ニーダー(株式会社中央理化製 PNV-1H型)に仕込んだ。次いで、100ml/分で30分間窒素置換を行った。次いで、窒素導入を30ml/分にし、56℃まで昇温した。液温を56℃に安定させた後、開始剤として2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(以下、「VA-044」とも称する)の15質量%水溶液を1.96部(VPとCTAの合計の使用量1モルに対し0.25g)添加し重合を開始した。重合反応が進み、ゲルが生成した後、ニーダーのブレードを回転させてゲルを解砕しながら、90℃で60分間熟成を行い、重合を終了した。次いで、マロン酸の1質量%水溶液を65.0部、3分かけて添加し、90℃で60分間撹拌した。さらに、ジエタノールアミンの2質量%水溶液を32.5部、3分かけて添加し、30分間撹拌した。次いで、得られたゲルを120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μm及び500μmのJIS標準篩を使用して分級し、500μmの篩を通過し、250μmの篩上に残留した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(1))とした。得られたVP架橋重合体(1)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、448μmであった。また、上記方法で測定した脱イオン水吸液倍率は22倍、エタノール吸液倍率は21倍、リノール酸吸液倍率は31倍、エチレングリコール吸液倍率は22倍、プロピレングリコール吸液倍率は25倍、顔料BKインク吸液倍率は22倍、染料BKインク吸液倍率は21倍、染料インクC吸液倍率は23倍、染料Y吸液倍率は20倍、染料M吸液倍率は23倍であった。リノール酸のみ40℃で測定し、その他の溶液は室温で測定した。インクはキヤノン株式会社製、BCI-351(染料BK、C、M、Y)、BCI-350(PGBK(顔料BK))を使用した。
【0209】
<製造例2>
90℃で60分間熟成を行い、重合を終了させるまでは、製造例1の通り行った。次いで、得られたゲルを120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μmのJIS標準篩を使用して分級し、250μmの篩を通過した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(2))とした。得られたVP架橋重合体(2)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、121μmであった。
【0210】
<製造例3>
90℃で60分間熟成を行い、重合を終了させるまでは、製造例1の通り行った。次いで、マロン酸の1質量%水溶液を65.0部、3分かけて添加し、90℃で60分間撹拌した。次いで、得られたゲルを120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μmのJIS標準篩を使用して分級し、250μmの篩を通過した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(3))とした。得られたVP架橋重合体(3)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、110μmであった。
【0211】
<製造例4>
VPを1000.0部、架橋性単量体としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー株式会社製、商品名:ネオアリルP-30M、ジエタノールアミンでpH6以上にして使用)を15.0部(VPに対し0.65モル%)、脱イオン水を2368.33部、卓上型ニーダー(株式会社中央理化社製 PNV-5H型)に仕込んだ。次いで、400ml/分で40分間窒素置換を行った。次いで、窒素導入を30ml/分にし、56℃まで昇温した。液温を56℃に安定させた後、開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(以下、「V-50」とも称する)の15質量%水溶液を47.37部(VPとペンタエリスリトールトリアリルエーテルの合計の使用量1モルに対し0.78g)添加し、重合を開始した。重合反応が進み、ゲルが生成した後、ニーダーのブレードを回転させてゲルを解砕しながら、90℃で60分間熟成を行い、重合を終了した。次いで、マロン酸の1.4質量%水溶液を500.0部、3分かけて添加し、90℃で60分間撹拌した。さらに、ジエタノールアミンの2.8質量%水溶液を250.0部、3分かけて添加し、30分間撹拌した。次いで、得られたゲルを120℃で3時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚、外形サイズ206×267×40H(mm)ステンレスバット8枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μm及び500μmのJIS標準篩を使用して分級し、500μmの篩を通過し、250μmの篩上に残留した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(4))とした。得られたVP架橋重合体(4)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、393μmであった。また、上記方法で測定した脱イオン水吸液倍率は22倍、エタノール吸液倍率は19倍、リノール酸吸液倍率は31倍、エチレングリコール吸液倍率は22倍、プロピレングリコール吸液倍率は25倍であった。リノール酸のみ40℃で測定し、その他の溶液は室温で測定した。
【0212】
<製造例5>
90℃で60分間熟成を行い、重合を終了させるまでは、製造例4の通り行った。次いで、得られたゲルを120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚、外形サイズ206×267×40H(mm)ステンレスバット8枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μmのJIS標準篩を使用して分級し、250μmの篩を通過した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(5))とした。得られたVP架橋重合体(5)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、93μmであった。
【0213】
<製造例6>
90℃で60分間熟成を行い、重合を終了させるまでは、製造例4の通り行った。次いで、マロン酸の1.4質量%水溶液を500.0部、3分かけて添加し、90℃で60分間撹拌した。次いで、得られたゲルを120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ232×297×50H(mm)ステンレスバット2枚、外形サイズ206×267×40H(mm)ステンレスバット8枚使用)を行うことにより、VP架橋重合体乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕し、目開き250μmのJIS標準篩を使用して分級し、250μmの篩を通過した粉体を粒子状のVP架橋重合体(本発明のVP架橋重合体(6))とした。得られたVP架橋重合体(6)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、87μmであった。
【0214】
<製造例7>
メトキシポリエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製NKエステルAM-90G、EO付加モル数9モル、以下「AM-90G」ともいう)を27g、不純物としてエチレングリコールジアクリレートを0.2質量%含有するアクリル酸2-ヒドロキシエチル(日本触媒社製)(以下、HEAとも称する)3g、純水70gを250mlPP製容器に仕込んだ。次いで、マグネチックスターラーで撹拌を開始し、100ml/分で30分間窒素置換を行った。次いで、撹拌を継続しながら40℃まで昇温した。液温を40℃に安定させた後、開始剤としてV-50の20質量%水溶液を0.1g添加し重合を開始した。重合反応が進み、ゲルが生成した後、90℃で30分間熟成を行い、重合を終了した。得られたゲルを卓上ニーダー(中央理化社製PNV-1H型)で解砕し、120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ206×267×40H(mm)ステンレスバット1枚使用)を行うことにより、PEGアクリレート/HEA架橋重合体(ポリエチレンオキサイド架橋重合体(7))を得た。上記方法で室温で測定した脱イオン水吸液倍率は15倍、エタノール吸液倍率は6倍であった。
【0215】
<比較製造例1>
アクリル酸(日本触媒社製、80質量%水溶液)(以下、AAとも称する)30.0部、水酸化ナトリウム(48質量%水溶液)12.14部、架橋性単量体としてポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製NKエステルA-400、EO付加モル数9モル)(以下、A-400とも称する)0.021部(AAに対し0.01モル%)、脱イオン水42.2部を250mlポリプロピレン製容器に仕込んだ。(AAと水酸化ナトリウムを混合した後に、A-400と脱イオン水を添加した。)次いで、マグネチックスターラーで撹拌を開始し、100ml/分で30分間窒素置換を行った。次いで窒素導入を30ml/分にし、撹拌を継続しながら、開始剤として過硫酸ナトリウムの15質量%水溶液を0.33部(AAとA-400の合計の使用量1モルに対し0.12g)およびL-アスコルビン酸の0.5質量%水溶液を0.04部添加し、重合を開始した。重合反応が進み、ゲルが生成した後、90℃で30分間熟成を行い、重合を終了した。得られたゲルを卓上ニーダー(中央理化社製PNV-1H型)で解砕した後に、120℃で2時間乾燥(ヤマト科学社製 精密恒温器 型式DF42 開口度最大、外形サイズ206×267×40H(mm)ステンレスバット1枚使用)を行うことにより、AA系架橋重合体(比較架橋重合体(1))乾燥物を得た。次いで、得られた架橋重合体を粉砕機で粉砕して、粒子状の比較架橋重合体(1)を得た。
得られた比較架橋重合体(1)の平均粒子径を上記の方法で測定すると、52.1μmであった。また、上記方法で測定したエタノール吸液倍率は1倍、リノール酸吸液倍率は1倍、エチレングリコール吸液倍率は1倍、プロピレングリコール吸液倍率は1倍、顔料BKインク吸液倍率は20倍、染料BKインク吸液倍率は16倍、染料インクC吸液倍率は25倍、染料Y吸液倍率は22倍、染料M吸液倍率は22倍であった。リノール酸のみ40℃で測定し、その他の溶液は室温で測定した。インクはキヤノン株式会社製、BCI-351(染料BK、C、M、Y)、BCI-350(PGBK(顔料BK))を使用した。
【0216】
<実施例1>
実施例1として製造例5で得られたVP架橋重合体(5)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(1)を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。VP架橋重合体(5)0.05gを1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。もう一方の不織布(不織布B)に水を散布した後、VP架橋重合体(5)が散布された不織布Aの上に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(1)を得た。該不織布には、VP架橋重合体(5)が6g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.1であった。
【0217】
<実施例2>
実施例2として製造例6で得られたVP架橋重合体(6)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(2)を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。VP架橋重合体(6)0.3gを1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。もう一方の不織布(不織布B)に水を散布した後、VP架橋重合体(6)が散布された不織布Aの上に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で30分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(2)を得た。吸収性複合体(2)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(6)が54g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.4であった。
【0218】
<実施例3>
実施例3として製造例3で得られたVP架橋重合体(3)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(3)を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。VP架橋重合体(3)0.5gを1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。次いで、VP架橋重合体の上から水を霧吹きで散布した後、もう一方の不織布(不織布B)を重ね合わせ、圧着した。その後、アイロンを用いて圧着乾燥させ、シート状の吸収性複合体(3)を得た。吸収性複合体(3)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(3)が90g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.7であった。
【0219】
<実施例4>
実施例4として製造例2で得られたVP架橋重合体(2)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(4)を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。水で膨潤させたVP架橋重合体ゲル(VP架橋重合体(2)0.3gにイオン交換水2.7gを添加したゲル)を1枚の不織布(不織布A)の上に均一に塗布した。もう一方の不織布(不織布B)にも同様に水で膨潤させたVP架橋重合体ゲルを塗布した。次いで、不織布A、不織布Bのゲル面を内側に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(4)を得た。吸収性複合体(4)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(2)が110g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.9であった。
【0220】
<実施例5>
実施例5として製造例2で得られたVP架橋重合体(2)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(5)を作成した。
パルプ系不織布(ライレックスペーパーウエス、材質パルプ)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。VP架橋重合体(2)0.5gを1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。もう一方の不織布(不織布B)に水を散布した後、VP架橋重合体(2)が散布された不織布Aの上に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(5)を得た。吸収性複合体(5)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(2)が100g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、1.1であった。
【0221】
<実施例6>
実施例6として製造例3で得られたVP架橋重合体(3)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(6)を作成した。
ポリエステル系不織布を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。VP架橋重合体(3)0.5gを1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。もう一方の不織布(不織布B)に水を散布した後、VP架橋重合体(3)が散布された不織布Aの上に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(6)を得た。吸収性複合体(6)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(3)が78g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.6であった。
【0222】
<実施例7>
実施例7として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(7)を作成した。
合成ゴム系接合剤(住友スリーエム株式会社製;商品名「3M スプレーのり99」)を用いた。該接合剤の成分は、スチレンブタジエンゴム等の合成ゴム10重量%、n-ペンタンやアセトン、トルエン等の有機溶剤40重量%、LPGやジメチルエーテル等のガス(スプレー用)50重量%である。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。1枚の不織布(不織布A)の表面(片面)に、合成ゴム(固形分)の付着量が0.17gとなるように該接合剤を均一にスプレー撒布した。その上に、0.5gのVP架橋重合体(1)を均一に撒布し、さらにこの上から、合成ゴムの付着量が0.17gとなるように該接合剤を均一にスプレー撒布したもう一方の不織布(不織布B)を重ねて圧着した。その後、乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(7)を得た。吸収性複合体(7)は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(1)が100g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.8であった。
【0223】
<実施例8>
実施例8として製造例3で得られたVP架橋重合体(3)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(8)を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに4枚切り取った。VP架橋重合体(3)0.4g(計1.6g)を4枚の不織布(不織布A~D)の上に均一に散布した。次いで、VP架橋重合体の上から水を霧吹きで散布した後、架橋重合体面を内側に重ね合わせ、圧着した。(不織布A-B、C-Dをそれぞれ圧着した。)その後、圧着した不織布の上から同様に、VP架橋重合体(3)0.4g(計0.8g)を2セットの圧着された不織布A-B、C-Dの上から均一に散布した。次いで、VP架橋重合体の上から水を霧吹きで散布した後、架橋重合体面を内側に重ね合わせ、圧着した。(不織布A-B-C-Dとなるように圧着した。)その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体(8)を得た。吸収性複合体(8)は、4枚の不織布の間の面に樹脂層が形成された積層型になっていた。また、該不織布には、VP架橋重合体(3)が428g/m2の割合で付着しており、VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、1.7であった。
【0224】
<比較例1>
比較例1として比較製造例1で得られた比較架橋重合体(1)を用いて、下記のシート状吸収性複合体を作成した。
パルプ・ポリプロピレン系不織布(TRUSCO不織布ロールウエス、材質パルプ・ポリプロピレン)を100mm×50mmの大きさに2枚切り取った。比較架橋重合体(1)0.5g(250μm以下の粒子径に分級したもの)を1枚の不織布(不織布A)の上に均一に散布した。もう一方の不織布(不織布B)に水を散布した後、比較架橋重合体(1)が散布された不織布Aの上に重ね合わせ、圧着した。その後、乾燥機を用いて150℃で60分間乾燥させ、シート状の吸収性複合体を得た。吸収性複合体は、2枚の不織布の間の面に樹脂層が形成されていた。また、該不織布には、比較架橋重合体(1)が78g/m2の割合で付着しており、比較架橋重合体(1)/不織布基材(質量比)は、0.6であった。
【0225】
<実施例9>
実施例9として製造例4で得られたVP架橋重合体(4)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(9)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し、40mm×50mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(4)0.2gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、袋状の吸収性複合体(9)を得た。吸収性複合体(9)はVP架橋重合体(4)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、2.5であった。
【0226】
<実施例10>
実施例10として製造例4で得られたVP架橋重合体(4)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(10)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートパックMW 公定秤量50.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し40mm×50mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(4)0.2gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、袋状の吸収性複合体(10)を得た。吸収性複合体(10)はVP架橋重合体(4)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、1.0であった。
【0227】
<実施例11>
実施例11として製造例4で得られたVP架橋重合体(4)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(11)を作成した。
不織布(ユニチカ製エスコット 材質:コットン・PET・PP)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し40mm×50mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(4)0.2gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、袋状の吸収性複合体(11)を得た。吸収性複合体(11)はVP架橋重合体(4)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、1.0であった。
【0228】
<実施例12>
実施例12として製造例4で得られたVP架橋重合体(4)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(12)を作成した。
不織布(ダイワボウポリテック社製 材質:レーヨン)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し40mm×50mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(4)0.2gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、袋状の吸収性複合体(12)を得た。吸収性複合体(12)はVP架橋重合体(4)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、1.4であった。
【0229】
<実施例13>
実施例13として製造例4で得られたVP架橋重合体(4)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(13)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し、50mm×80mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(4)0.8gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、袋状の吸収性複合体(13)を得た。吸収性複合体(13)はVP架橋重合体(4)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、4.8であった。
【0230】
<実施例14>
実施例14として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(14)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)を用いて2つに区切られた袋全ての区画にVP架橋重合体(1)を各0.3g、全体で0.6g入れ、ヒートシーラーで密封し、2区画に区切られた80mm×50mmの袋状の吸収性複合体(14)を得た。(40mm×50mmの2区画になっていた。)吸収性複合体(14)はVP架橋重合体(1)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、3.5であった。
【0231】
<実施例15>
実施例15として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(15)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートパックMW 公定秤量50.0g/m2品)を用いて2つに区切られた袋全ての区画にVP架橋重合体(1)を各0.3g、全体で0.6g入れ、ヒートシーラーで密封し、2区画に区切られた80mm×50mmの袋状の吸収性複合体(15)を得た。(40mm×50mmの2区画になっていた。)吸収性複合体(15)はVP架橋重合体(1)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、1.5であった。
【0232】
<実施例16>
実施例16として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(16)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)を用いて4つに区切られた袋全ての区画にVP架橋重合体(1)を各0.15g、全体で0.6g入れ、ヒートシーラーで密封し、4区画に区切られた80mm×50mmの袋状の吸収性複合体(16)を得た。(40mm×25mmの4区画になっていた。)吸収性複合体(16)はVP架橋重合体(1)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、3.6であった。
【0233】
<実施例17>
実施例17として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(17)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し44mm×52mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(1)0.75gを袋の中に入れ、残りの一方をヒートシールし、テトラ(三角錐)型の袋状の吸収性複合体(17)を得た。吸収性複合体(17)はVP架橋重合体(1)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、7.9であった。
【0234】
<実施例18>
実施例18として製造例1で得られたVP架橋重合体(1)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(18)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し44mm×52mmの大きさの袋状にした後に、VP架橋重合体(1)0.9gを袋の中に入れ、残りの一方をヒートシールし、テトラ(三角錐)型の袋状の吸収性複合体(18)を得た。吸収性複合体はVP架橋重合体(1)粉末の飛散はほとんどなく10%未満であり、VP架橋重合体/基材(質量比)は、9.2であった。
【0235】
<実施例19>
実施例19として製造例7で得られたポリエチレンオキサイド架橋重合体(7)を用いて、下記の袋状吸収性複合体(19)を作成した。
片面ヒートシール紙(日本製紙パピリア社製 ヒートロンGSP 公定秤量20.0g/m2品)の三方をヒートシール(熱圧着シール)し44mm×52mmの大きさの袋状にした後に、ポリエチレンオキサイド架橋重合体(7)1.2gを袋の中に入れ残りの一方をヒートシールし、テトラ(三角錐)型の袋状の吸収性複合体(19)を得た。吸収性複合体(19)はポリエチレンオキサイド架橋重合体(7)の飛散はほとんどなく10%未満であり、ポリエチレンオキサイド架橋重合体/基材(質量比)は、12.2であった。
【0236】
<シート状吸収性複合体の脱イオン水、エタノール、エチレングリコールの吸液能力>
実施例1~8、比較例1で得られたシート状吸収性複合体の脱イオン水の吸液能力を評価は下記の評価法の通り行った。また、エタノール、エチレングリコール吸液能は、上記の吸収性複合体の溶媒(脱イオン水を含む)及び溶液吸液能力の評価に従い、室温で測定した。
(評価法)
シート状吸収性複合体を半分に切断し50mm×50mmとし、正確に質量(W16(g))を測定した。この吸収性複合体をシャーレにのせ、脱イオン水(導電率10μS/cm以下)を薄くひいた。(吸収性複合体の上部が空気に触れている状態とした。)室温(温度23±2℃)、常圧で静置し、2時間後に吸収性複合体の端をピンセットでつかんで引き上げ、吸収性複合体の一面を下にしてキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に乗せて5秒間静置した。次いで、反対の面を下にしてキムタオルの上に乗せて5秒間静置することにより液切りを行った後、上記吸収性複合体の質量(W17(g))を測定した。次式に従って算出した吸液倍率を脱イオン水の吸液能力とした。
吸液倍率(g/g)=W17(g)/W16(g)
結果を表1に示す。下記の結果より、本発明のシート状吸収性複合体は、架橋重合体/基材の質量比が小さいと、脱イオン水の吸液能力が小さくなる傾向があることが分かる。また、実施例3と7を比較して、疎水性の合成ゴム系接合材を用いない方が、良好な吸液能力を示すことが分かる。実施例8で得られた積層型シート状吸収性複合体の水膨潤後の厚みは6mmであった。また、比較例1で得られた吸収性複合体の水膨潤後の厚みは10mm以上で、水膨潤架橋体のシートからのはがれが確認された。
【表1】
【0237】
<袋状吸収性複合体の脱イオン水、エタノール、エチレングリコールの吸液能力>
実施例9~19で得られた袋状吸収性複合体の脱イオン水、エタノール、エチレングリコールの吸液能力は、上記の吸収性複合体の溶媒(脱イオン水を含む)及び溶液吸液能力の評価に従い、室温で測定した。結果を表2に示す。
【0238】
【0239】
<シート状吸収性複合体のプロピレングリコール、インクの吸液能力>
実施例1~8、比較例1で得られたシート状吸収性複合体のプロピレングリコール、インクの吸液能力を評価した。評価は下記の通り行った。
(評価法)
シート状吸収性複合体を半分に切断し50mm×50mmとし、シャーレにのせた。シャーレに各種溶液(プロピレングリコール、キヤノン製BCI-351(染料BK)、BCI-350(PGBK(顔料BK)))を吸収性複合体重量の4倍の重量分添加し、蓋をした。室温(温度23±2℃)、常圧で静置し、2時間後にシャーレ内部の様子を観察し残液(流動性の液体)の有無を評価した。結果は表3に示す。なお、表3中○は残液なし、×は残液ありを示す。また、インク(染料、顔料)に関しては、シャーレの蓋を外し、50℃の乾燥機でインク中の水分を蒸発させ、吸液ゲルからの液の吐き出しの有無を評価した。結果を表3に示す。なお、表3中、○は液の吐き出しなし、×は液の吐き出しありを示す。
下記の結果より、本発明のシート状吸収性複合体は、グリコールやインクを吸液・保持できることが分かる。
【0240】
【0241】
<袋状吸収性複合体のプロピレングリコール、インクの吸液能力>
実施例9~19で得られた袋状吸収性複合体のプロピレングリコール、インクの吸液能力を評価した。評価は下記の通り行った。
(評価法)
袋状吸収性複合体をシャーレにのせた。シャーレに各種溶液(プロピレングリコール、キヤノン製BCI-351(染料BK)、BCI-350(PGBK(顔料BK)))を吸収性複合体重量の9倍の重量分添加し、蓋をした。室温(温度23±2℃)、常圧で静置し、8時間後にシャーレ内部の様子を観察し残液(流動性の液体)の有無を評価した。結果は表4に示す。なお、表4中○は残液なし、×は残液ありを示す。また、インク(染料、顔料)に関しては、シャーレの蓋を外し、50℃の乾燥機でインク中の水分を蒸発させ、吸液ゲルからの液の吐き出しの有無を評価した。結果を表4に示す。なお、表4中、○は液の吐き出しなし、×は液の吐き出しありを示す。
下記の結果より、本発明の袋状吸収性複合体は、グリコールやインクを吸液・保持できることが分かる。
【0242】
【0243】
<水の拡散性の評価>
実施例3、5、6で得られたシート状吸収性複合体(3)、(5)、(6)に対し、下記の水の拡散性の評価を行った。また、吸収基材のみ(パルプ・ポリプロピレン系不織布、パルプ系不織布、ポリエステル系不織布、いずれも100mm×20mmに切断)についても同様の評価を行った。
(評価法)
100mm×50mmのシート状吸収性複合体を100mm×20mmに切断した。100mmの辺を地面に垂直になるように上から吸収性複合体、不織布を吊り下げた。下から5mmを色つきの水に浸漬させ、室温(温度23±2℃)、常圧で静置し、24時間後にシートに色つきの水がついた長さを確認した。
結果を表5に示す。なお、長さは100mm(10cm)が最長である。下記の結果より、吸収基材としてのパルプ・ポリプロピレン系不織布、パルプ系不織布は、水の拡散性が良好であり、本発明の吸収性複合体(3)、(5)は、吸収基材の拡散性が高いのに起因して、ポリエステル系不織布を用いた吸収性複合体(6)よりも、吸収性複合体の拡散性が良好であった。
【0244】
【0245】
<吸液速度の評価>
実施例3、14で得られた吸収性複合体(3)、(14)、比較例1で得られた吸収性複合体に対し、下記の評価を行った。また、架橋重合体のみ(製造例3、1で得られたVP架橋重合体(3)、(1)、比較架橋重合体(1))についても、同様の評価を行った。
(評価法)
吸収性複合体をシャーレ(直径100mm)にのせた。吸収性複合体の上から、吸収性複合体重量の4倍の重量のプロピレングリコールを添加し、残液がなくなる時間(吸液速度)を評価した。比較例1で得られた吸収性複合体はプロピレングリコールを吸液しないので、代わりに、吸収性複合体重量の20倍の水を添加し、残液がなくなる時間(吸液速度)を評価した。また、架橋重合体のみについても同様の評価を行った。なお、架橋重合体はシャーレ上で均一に分散させた。結果を表6に示す。
実施例3、14の吸収性複合体は、架橋重合体のみと比較して、吸液速度が速くなった。一方、比較架橋重合体(1)を用いた比較吸収性複合体は、架橋重合体のみと比較して、吸液速度は変わらなかった。この結果から、本願発明のノニオン系架橋重合体と吸収基材との組み合わせには、従来技術であるポリアクリル酸(塩)を主成分とする架橋重合体にはない特段の相乗効果があることが判明した。
【0246】
【0247】
<実施例20>
実施例20として製造例2で得られたVP架橋重合体(2)を用いて、下記のシート状吸収性複合体(20)を作成した。
VP架橋重合体(2)50重量部と、木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブ(シート状の繊維)に成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPaで5秒間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cm2のシートを得た。次いで、上記シートをフェイスマスク状に切断し、ヒートシール性のあるフェイスマスク状ナイロン性不織布2枚で挟み込み、不織布の端を熱融着で貼着することにより、シート状吸収性複合体(20)を得た。VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.1であった。
シート状吸収性複合体(20)と、VP架橋重合体を添加せず同様に作成したフェイスマスクを、表7の化粧水に浸漬させた。顔に貼り付けて効果を確認したところ、VP架橋重合体を含有したシート状吸収性複合体の方が保湿効果が長持ちした。
【0248】
【0249】
<実施例21>
ウェブを圧力196.14kPaで5秒間プレスし、シートを得るまでは実施例20の通りに行った。続いて、液不透過性のポリプロピレンからなる、いわゆる背面シート(液不透過性シート)、上記シート(10×8cmに切断)、および、コットン製不織布の表面シート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着することにより、シート状吸収性複合体(21)を得た。VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.1であった。
シート状吸収性複合体(21)と、VP架橋重合体を添加せず同様に作成したシートを、液透過性シートの面を脇に当てて効果を確認したところ、VP架橋重合体を含有したシート状吸収性複合体の方が皮脂や汗を吸収し、汗や体臭の消臭能力に優れていた。
【0250】
<実施例22>
ウェブを圧力196.14kPaで5秒間プレスし、シートを得るまでは実施例20の通りに行った。続いて、パルプ・ポリプロピレン製不織布2枚で挟み込み、両面テープを用いてこの順に互いに貼着することにより、シート状吸収性複合体(22)を得た。VP架橋重合体/不織布基材(質量比)は、0.2であった。
シート状吸収性複合体(22)は、消臭能力に優れ、汚れ成分(油成分、皮脂、汗等)の拭き取り能に優れていた。
【0251】
<実施例23>
シート状吸収性複合体(8)を用いて、下記消臭剤を作成した。
シート状吸収性複合体(8)を市販の芳香液に1時間以上含浸させた後に、シート状吸収性複合体の長辺を地面と垂直にして吊り下げ、下から1cmを芳香液に含浸させた状態で室内に放置したところ、上記シート状吸収性複合体は、芳香が長持ちし、消臭性に優れていた。
【0252】
<比較例2>
比較例2として不織布(アドバンテック東洋株式会社製、不織布濾紙T-811、厚さ:1.15mm、質量:110g/m2、材質:ポリエステル)に対し、インクの混合液の吸液能力を下記の測定方法に従って測定した。測定した結果、吸液倍率は6(g/g)であった。また、加圧による液の染み出しも確認された。
上記の結果より、不織布はインク吸液能が低く、また加圧による液の染み出しも確認されたことから、液を強力に保持していないと考えられる。この結果から本発明のインク用吸収剤と基剤としてポリエステル系不織布とを用いて作成した吸収シートの吸液能(例えば実施例6)は、本発明のVP架橋重合体による寄与が大きいことが明らかである。
(評価法)
ガラス製で規定容量が50mLのスクリュー管に、各種インクの混合液(BCI-351(BK、C、M、Y)、BCI-350(PGBK)を等量混合した溶液)を3g室温で量り取った。
4cm×5cmに切り取った不織布を正確に秤量し(質量W18(g))、インクの混合液が入ったスクリュー管に入れた。上記操作は、温度23±2℃及び相対湿度50±5%、常圧の室内で行った。室温(温度23±2℃)、常圧下で静置し、この不織布を、24時間後に端をピンセットでつかんで引き上げ、不織布の一面を下にしてキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に乗せて5秒間静置した。次いで、反対の面を下にしてキムタオルの上に乗せて5秒間静置することにより液切りを行った後、上記不織布の質量(W19(g))を測定した。次式に従って算出した吸液倍率を各種インクの混合液の吸液能力とした。
吸液倍率(g/g)=W19(g)/W18(g)