IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーンウィーブ バイオサイエンシズ,インコーポレイティドの特許一覧

特許7085597非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム
<>
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図1
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図2
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図3
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図4
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図5
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図6
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図7
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図8
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図9
  • 特許-非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】非複製的形質導入粒子及び形質導入粒子に基づくレポーターシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/74 20060101AFI20220609BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20220609BHJP
   C12N 15/65 20060101ALI20220609BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20220609BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220609BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220609BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220609BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220609BHJP
【FI】
C12N15/74 Z ZNA
C12N15/70 Z
C12N15/65 Z
C12Q1/6897 Z
C12N1/21
C12N7/01
C12N15/12
C12N15/113 Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020138181
(22)【出願日】2020-08-18
(62)【分割の表示】P 2017511303の分割
【原出願日】2015-08-25
(65)【公開番号】P2020198885
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/202,653
(32)【優先日】2015-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/041,539
(32)【優先日】2014-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248953
【氏名又は名称】ジーンウィーブ バイオサイエンシズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ アリエル レイ
(72)【発明者】
【氏名】マーク レーファス
(72)【発明者】
【氏名】シヤオウエン リウ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-541822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0118719(US,A1)
【文献】特表2016-520290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/74
C12N 15/70
C12N 15/65
C12Q 1/6897
C12N 1/21
C12N 7/01
C12N 15/12
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌細胞内への導入のための、レポーター核酸分子を非複製的形質導入粒子(NRTP)内にパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、
破壊されたパッケージング開始部位配列を包含する第一ターミナーゼ遺伝子を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該破壊が存在しない状態では該第一ターミナーゼ遺伝子はターミナーゼタンパク質をコードし、そして前記第一ターミナーゼタンパク質が、パッケージング開始部位配列を認識し、ここで、該破壊は第一ターミナーゼタンパク質による前記パッケージング開始部位配列の認識を妨げ、そしてここで、該破壊は第一ターミナーゼタンパク質を非機能性にし、及び
レポーター遺伝子と、破壊されていないパッケージング開始部位配列を含む第一ターミナーゼ遺伝子と第二ターミナーゼタンパク質をコードする第二ターミナーゼ遺伝子とを含むプラスミド、ここで、該破壊されていないパッケージング開始部位配列が、NRTP内への前記レポーター核酸分子を含む前記プラスミドのレプリコンのパッケージングを促進するように構成されている、
を含む細菌宿主細胞を含む、細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項2】
前記バクテリオファージゲノムが、複数の破壊されたターミナーゼ遺伝子を含み、ここで、該破壊が存在しない状態で複数の破壊されたターミナーゼ遺伝子のそれぞれが、ターミナーゼタンパク質をコードし、そして前記バクテリオファージゲノム上の複数の破壊された遺伝子がそれぞれ、前記レポーター核酸分子によってコードされた機能的な破壊されていない遺伝子によって補完される、請求項1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項3】
前記第一ターミナーゼ遺伝子の破壊が、前記パッケージング開始部位を破壊する欠失、挿入、置換、又は突然変よる、請求項1又は2に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項4】
前記第一ターミナーゼ遺伝子及び前記第二ターミナーゼ遺伝子が、条件付きプロモーターに作動可能に連結される、請求項1~のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項5】
前記条件付きプロモーターが、バクテリオファージゲノムのターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである、請求項4に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項6】
前記第一ターミナーゼ又は第二ターミナーゼ遺伝子の発現が、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化の不存在下で阻害され、且つここで、該第一ターミナーゼ遺伝子又は第二ターミナーゼ遺伝子の発現が、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化時に活性化される、請求項又はに記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項7】
前記バクテリオファージゲノムが、検出可能なマーカー又は選択可能なマーカーをコードするレポーター遺伝子を含み、ここで当該レポーター遺伝子が構成的プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項8】
前記破壊が、選択マーカーをコードする遺伝子を伴ったッケージング開始部位配列への挿入又は置換を含み、そして選択可能なマーカーが、構成的プロモーターに作動可能に結合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項9】
前記破壊が、検出可能マーカーをコードする遺伝子へのッケージング開始部位配列の挿入又は置換を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項10】
前記レポーター核酸分子が複製開始点を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項11】
前記レポーター核酸分子を含む前記プラスミドのレプリコンが、非複製的形質導入粒子内へのパッケージングに適しているコンカテマーを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項12】
前記破壊されていないパッケージング開始部位配列がコンカテマー接合部を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項13】
前記レポーター核酸分子を含むプラスミドが、レポーター核酸分子中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項14】
前記レポーター核酸分子のレプリコンを含むプラスミドが、レポーター核酸分子を含むプラスミドのレプリコン中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
【請求項15】
非複製的形質導入粒子内にレポーター核酸分子をパッケージする方法であって、請求項1~1のいずれか1項に記載の細菌細胞パッケージングシステムに、バクテリオファージゲノムの溶解期を誘導する条件を提供して、レポーター核酸分子を含むプラスミドのレプリコンをパックした非複製的形質導入粒子を生成し;そして
レポーター核酸分子を含むプラスミドのレプリコンを含む非複製的形質導入粒子を回収すること、を含む方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって生成されたレポーター核酸分子を含むプラスミドのレプリコンを含む非複製的形質導入粒子を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内の標的遺伝子を検出するための、細胞内への非複製的形質導入レポーター分子のパッケージング及び送達のための方法及び組成物に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
【0003】
本出願は、2014年8月25日に出願された米国仮特許出願第62/041,539号、及び2015年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/202,653号の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願の開示を参照により本明細書に援用する。
【0004】
配列表
本出願は、ASCII書式で電子的に提出された、且つ、その全体が参照により本明細書に援用される配列表を含む。2015年8月24日に作成された、前記ASCIIコピーは、29681PCT_CRF_SequenceListing.txtと名付けられ、サイズが37,642バイトである。
【背景技術】
【0005】
形質導入粒子は、細胞内に非ウイルス核酸を送達することが可能なウイルスに関連している。ウイルスに基づくレポーターシステムは、細胞の存在を検出するために用いられており、細胞からのレポーター分子の発現を可能とするのにウイルスの溶原期(lysogenic phase)に依存している。これらの、ウイルスに基づくレポーターシステムは、レポーター分子を発現し、標的細胞に検出可能なシグナルを放出させる複製可能な形質導入粒子を利用している。
【0006】
しかし、ウイルスの溶菌サイクルは、ウイルスに基づくレポーターアッセイに有害であることが示されている。Carriere, C. et al., Conditionally replicating luciferase reporter phages: Improved sensitivity for rapid detection and assessment of drug susceptibility of Mycobacterium tuberculosis. Journal of Clinical Microbiology, 1997. 35(12): p. 3232-3239。Carriereらは、30℃では抑制されるが37℃では活性化される溶菌サイクルを有する、M.ツベルクロシス(M. tuberculosis)/バチルス・カルメット-ゲラン(bacillus Calmette-Guerin)(BCG)ルシフェラーゼレポーターファージを開発した。このシステムを用いることで、Carriereらは、抑制された溶菌サイクルを有するファージレポーターを使用するBCGの検出を実証している。
【0007】
しかし、バクテリオファージに基づくレポーターアッセイにおいて、バクテリオファージの複製機能を抑制(除去ではない)することに関連する不都合が存在する。第一に、バクテリオファージの複製機能の制御はアッセイ条件の限定を強いる。例えば、Carriereらが使用したレポーターファージphAE40の溶菌サイクルは、前記ファージが非許容温度である30℃で細胞に感染させるために使用された場合に抑制された。標的細菌の最適温度が37℃であったという点で、この温度要求はレポーターアッセイに限定条件を課していた。これらの限定条件は最適なアッセイ遂行の妨げとなる。
【0008】
さらに、ウイルスの複製機能は制御が困難である。ウイルスの複製は、形質導入粒子がレポーターシステムとして使用される際は抑制されるべきである。例えば、Carriereらによる報告で、レポーターファージphAE40の溶菌活性が除去ではなく削減された結果、アッセイにおけるルシフェラーゼシグナルの減少が起こった。Carriereらは、完全なファージによって発現される遺伝子及びアッセイの温度制限などの、レポーターシグナルの減少結果の考えられる原因を明らかにしたが、これらは全て、ファージレポーターの溶菌サイクルが除去されなかったということに由来している。
【0009】
ファージの天然の溶原サイクルに依存するレポーターアッセイは、散発的に溶菌活性を示すことが予測され得る。さらに、ファージの溶原サイクルに依存するアッセイは、同様のファージで既に溶原化された標的細胞からの重感染免疫、並びに入ってくるウイルス核酸を標的とすることでこれらのレポーターファージの宿主範囲を制限する自然発生的な宿主制限系を引き起こす傾向があり得る。
【0010】
他の例では、形質導入粒子生成系は外来核酸分子をパッケージングするように設計されているが、形質導入粒子はしばしば、外来核酸分子と天然の子孫ウイルス核酸分子の組み合わせを含有する。前記天然ウイルスはアッセイ遂行の障害となる溶菌活性を示す可能性があり、形質導入粒子を精製するためには、前記ウイルスの溶菌活性は排除されなければならない。しかし、この精製は通常は不可能である。Reporter Plasmid Packaging System for Detection of Bacteriaという表題の米国特許出願公開第2009/0155768A号において、Schollらはこのような形質導入粒子システムの開発について記載している。前記システムの産物は、レポーター形質導入粒子及び天然バクテリオファージの組み合わせである(前記参考文献における図8)。前記著者らは形質導入粒子及び天然バクテリオファージが超遠心によって分離可能であることを示しているが、この分離は、形質導入粒子及び天然ウイルスが超遠心による分離を可能にするであろう異なる密度を示すシステムにおいてのみ可能である。この特徴は前記参考文献に記載されるバクテリオファージT7に基づくパッケージングシステムによって示されるが、これは他のウイルスシステムに一般に適用可能な特徴ではない。ウイルスのパッケージング機構は、天然ウイルス及び形質導入粒子に超遠心で分離できない区別不能な密度を示させるであろう充満した(headful)パッケージングを示すことが一般的である。また、ウイルスのパッケージングシステムは、区別不能な密度を有する天然ウイルス及び形質導入粒子をもたらす、適切なウイルス構造構築に必要なものとして、最低限のパッケージングに依存している。
【0011】
これらのことから、検出限界を増加させ偽陰性結果を生じさせることによりレポーターアッセイの遂行を制限し得る、ウイルスの溶菌機能からの有害作用、並びに、重感染免疫並びにウイルス核酸分子及びウイルス機能を標的とする宿主制限機構によって制限される可能性の影響を受けない、非複製的形質導入粒子が必要とされている。
【0012】
形質導入粒子が設計された場合であっても、形質導入粒子を用いて細胞内の標的核酸分子の存在を検出及びレポートする方法には限界がある。いくつかの方法は、細胞の破壊、並びに可溶化液中の転写物を単離及び検出するための面倒な方法を必要とする。検出方法には、抗体、アプタマー、又は核酸プローブなどの標識プローブの使用が含まれる。標的遺伝子に対する標識プローブは、意図されない標的に対する非特異的結合をもたらすか、又は高い信号雑音比を有するシグナルを生じる可能性がある。従って、細胞内の内在核酸分子を検出及びレポートするための、特異的、効果的且つ正確な方法が必要とされる。
【0013】
従って、細胞内のレポーター分子のパッケージング及び発現を可能とする非複製的形質導入粒子を生成し、一方で複製可能な子孫ウイルスを排除するための方法及びシステムが必要とされる。発現されたレポーター分子を用いて細胞内の分子を検出する効果的且つ正確な方法も必要とされる。
【発明の概要】
【0014】
細菌細胞内への導入のための、レポーター核酸分子を非複製的形質導入粒子(NRTP)内にパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、(1)破壊を包含する第一遺伝子を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該破壊が存在しない状態で、該第一遺伝子はパッケージング関連酵素活性の第一必須成分をコードし、且つ、第一パッケージング開始部位配列を含み、ここで、該パッケージング関連酵素活性は該第一パッケージング開始部位を認識し、ここで、該破壊は該必須パッケージング関連酵素活性による第一パッケージング開始部位配列の認識を妨げ、そしてここで、該破壊は必須パッケージング関連酵素活性のレベルを低減する、及び(2)レポーター遺伝子と、必須パッケージング関連酵素活性の第一成分をコードする第二遺伝子と、必須パッケージング関連酵素活性の第二成分をコードする第三遺伝子とを含むレポーター核酸分子、ここで、該第二遺伝子は破壊されていない第一パッケージング開始部位配列を含み、ここで、該第一パッケージング開始部位配列はNRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを促進するように構成されている、を含む宿主細胞を含む上記パッケージングシステムが本明細書中に開示される。
【0015】
ある実施形態において、バクテリオファージは複数の破壊された遺伝子を含み、ここで、該破壊が存在しない状態で、それぞれがパッケージング関連酵素活性の必須成分をコードしている。ある実施形態において、バクテリオファージ上の複数の破壊された遺伝子はそれぞれ、レポーター核酸分子によってコードされた機能し得る、破壊されていない遺伝子によって補完される。別の実施形態において、破壊は、欠失、挿入、突然変異、又は置換による。
【0016】
別の実施形態において、レポーター核酸分子は、小ターミナーゼ遺伝子及び巨大ターミナーゼ遺伝子を含む。さらなる実施形態において、ターミナーゼ遺伝子は、腸内細菌科バクテリオファージP1のpacA遺伝子及びpacB遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、前記バクテリオファージ遺伝子の第二セットの少なくとも1つが、配列番号1、配列番号4、又は配列番号6の配列を含む。ある実施形態において、ターミナーゼ遺伝子は、S.アウレウス(S. aureus)バクテリオファージφ11又はφ80α由来のterS遺伝子及びterL遺伝子を含む。別の実施形態において、ターミナーゼ遺伝子は、E.フェカリス(E. faecalis)バクテリオファージφEf11由来のterA遺伝子及びterB遺伝子を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、パッケージング関連酵素活性は、ターミナーゼ活性である。ある実施形態において、第二遺伝子及び第三遺伝子は、それぞれターミナーゼ遺伝子である。ある実施形態において、第二遺伝子はpacA遺伝子であり、且つここで、第三遺伝子はpacB遺伝子である。ある実施形態において、レポーター核酸分子は配列番号1の配列を含む。ある実施形態において、第二遺伝子はterA遺伝子であり、第三遺伝子はterB遺伝子である。ある実施形態において、レポーター核酸分子は配列番号6の配列を含む。ある実施形態において、第二遺伝子はterS遺伝子であり、且つここで、第三遺伝子はterL遺伝子である。ある実施形態において、レポーター核酸分子は配列番号4の配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、第二遺伝子及び第三遺伝子は、条件付きプロモーターに作動可能に連結される。ある実施形態において、条件付きプロモーターは配列番号9の配列を含む。ある実施形態において、条件付きプロモーターは、バクテリオファージゲノムのターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである。いくつかの実施形態において、第二遺伝子又は第三遺伝子の発現は、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化の不存在下で阻害され、且つここで、第二遺伝子又は第三遺伝子の発現は、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化のときに活性化される。特定の実施形態において、第二遺伝子及び第三遺伝子は、バクテリオファージゲノムの天然のターミナーゼ遺伝子であり、ここで、条件付きプロモーターはターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである。
【0019】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムはレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムは抗生物質抵抗性遺伝子をさらに含む。ある実施形態において、レポーター遺伝子は検出可能マーカー又は選択マーカーをコードする。ある実施形態において、レポーター遺伝子は:発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、rue、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)、親和性ペプチド(His-タグ、3X-FLAG)、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)から成る群から選択される。
ある実施形態において、レポーター遺伝子はターミナーゼ遺伝子を破壊する。特定の実施形態において、抗生物質抵抗性遺伝子はカナマイシン耐性遺伝子である。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は構成的プロモーターに作動可能に連結される。さらなる実施形態において、構成的プロモーターはPblastである。
【0020】
ある実施形態において、破壊は、選択マーカーをコードする遺伝子を伴った第一パッケージング開始部位配列への挿入又は置換を含む。特定の実施形態において、選択マーカーをコードする遺伝子は、構成的プロモーターに作動可能に連結される。ある実施形態において、破壊は、検出可能マーカーをコードする遺伝子への第一パッケージング開始部位配列の挿入又は置換を含む。ある実施形態において、検出可能マーカーをコードする遺伝子は:luxA、luxB、及びluxABから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、検出可能マーカーをコードする遺伝子は、構成的プロモーター、例えばPblastに作動可能に連結される。特定の実施形態において、第一遺伝子は、pacA遺伝子部位を含み、且つここで、破壊はpacA遺伝子部位に挿入したluxAB遺伝子及びkan遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムは配列番号12を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、レポーター核酸分子は複製開始点を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは、非複製的形質導入粒子内へのパッケージングに適しているコンカテマーを含む。特定の実施形態において、破壊されていない第一パッケージング開始部位配列はコンカテマー接合部を含む。いくつかの実施形態において、レプリコンは、腸内細菌科バクテリオファージP1溶菌レプリコンである。
【0022】
ある実施形態において、レプリコンは、C1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含む。ある実施形態において、レプリコンは配列番号2の配列を含む。ある実施形態において、レプリコンは、pBHR1レプリコン又はpBHR1レプリコンの誘導体である。ある実施形態において、レプリコンは配列番号3の配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子は配列番号4の配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは、S.アウレウスpT181プラスミド複製開始点に由来する。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは配列番号5の配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子は、配列番号6の配列を含む配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは、エンテロコッカスrepBプラスミド複製開始点に由来する。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは配列番号7の配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは、エンテロコッカスpDL278プラスミド複製開始点に由来する。ある実施形態において、核酸分子のレプリコンは配列番号8の配列を含む。ある実施形態において、破壊されていない第一パッケージング開始部位配列はpac部位を含む。ある実施形態において、破壊されていない第一パッケージング開始部位配列はcos部位を含む。
【0023】
ある実施形態において、バクテリオファージゲノムは腸内細菌科バクテリオファージP1を含む。ある実施形態において、バクテリオファージゲノムは、S.アウレウスバクテリオファージφ80α又はバクテリオファージφ11を含む。ある実施形態において、バクテリオファージゲノムは、E.フェカリスバクテリオファージpEF11を含む。
【0024】
ある実施形態において、細菌細胞はE.コリ(E. coli)細胞を含む。ある実施形態において、細菌細胞はS.アウレウス細胞を含む。ある実施形態において、細菌細胞はE.フェカリス細胞を含む。ある実施形態において、細菌細胞はグラム陰性細胞を含む。ある実施形態において、細菌細胞はグラム陽性細胞を含む。
【0025】
ある実施形態において、レポーター遺伝子は、検出可能マーカー又は選択マーカーをコードする。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、rue、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)、親和性ペプチド(His-タグ、3X-FLAG)、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)から成る群から選択される。
【0026】
ある実施形態において、レポーター核酸分子はアプタマーを含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子は、レポーター核酸分子中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む。
【0027】
ある実施形態において、核酸転写産物配列は、細胞転写産物に相補的である。さらなる実施形態において、核酸性転写産物はcis-抑制配列を含む。ある実施形態において、レポーター核酸分子は、プロモーターに作動可能に連結される。さらなる実施形態において、プロモーターは、細菌細胞内のレポーター核酸分子から発現されるレポーター分子の反応性に寄与するように選択される。いくつかの実施形態において、レポーター核酸分子のレプリコンは、レポーター核酸分子のレプリカ中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む。
【0028】
(1)本明細書中に開示した細菌細胞パッケージングシステムに、バクテリオファージゲノムの溶解期を誘導する条件を提供して、レポーター核酸分子をパックした非複製的形質導入粒子を生成し;そして(2)レポーター核酸分子を含む非複製的形質導入粒子を回収すること、を含む非複製的形質導入内にレポーター核酸分子をパッケージする方法もまた本明細書中に提供する。いくつかの実施形態において、非複製的形質導入粒子は、複製されたバクテリオファージゲノムを含まない。いくつかの実施形態において、非複製的形質導入粒子は、レポーター核酸分子での組み換えのためのバクテリオファージゲノムの一部を含み、ここで、該バクテリオファージゲノムの一部がレポーター遺伝子を含む。
【0029】
本明細書中に開示された方法によって精製されたレポーター核酸分子のレプリコンを含む非複製的形質導入粒子を含む組成物もまた本明細書中に提供する。
【0030】
非複製的形質導入粒子内に核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、(1)第一パッケージング開始部位配列を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一パッケージング開始部位配列はレポーターをコードする遺伝子によって破壊され、及び(2)非複製的形質導入粒子内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする第二パッケージング開始部位配列を含むレポーター核酸分子、ここで、該レポーター核酸分子は、非複製的形質導入粒子内にパッケージされるように構成されたレプリコンを形成する、を含む該細菌細胞もまた本明細書中に提供する。
【0031】
細胞内に導入するための非複製的形質導入粒子(NRTP)内にレポーター核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、(1)第一ターミナーゼ遺伝子対を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一ターミナーゼ遺伝子対のうちの少なくとも1つを破壊し、破壊されたターミナーゼ遺伝子が機能しないようにし、及び(2)レポーター遺伝子と、第一ターミナーゼ遺伝子対を補完する第二ターミナーゼ遺伝子対とを含むレポーター核酸分子、ここで、該第二ターミナーゼ遺伝子対のそれぞれに機能性があり、且つここで、該第二ターミナーゼ遺伝子対が、NRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする、を含む、宿主細胞を含む該パッケージングシステムもまた本明細書中に提供する。
【0032】
細胞内に導入するための非複製的形質導入粒子(NRTP)内にレポーター核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、(1)第一ターミナーゼ遺伝子対を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一ターミナーゼ遺伝子対のうちのたった1つを破壊し、破壊されたターミナーゼ遺伝子が機能しないようにし、及び(2)レポーター遺伝子と、第一ターミナーゼ遺伝子を補完する第二ターミナーゼ遺伝子を含むレポーター核酸分子、ここで、該第二ターミナーゼ遺伝子に機能性があり、且つここで、該第二ターミナーゼ遺伝子が、NRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする、を含む、宿主細胞を含む該パッケージングシステムもまた本明細書中に提供する。
【0033】
いくつかの非複製的形質導入粒子パッケージングシステムにおいて、プラスミドDNAに再結合されたウイルスDNAがパッケージされてもよい。斯かるシステムでは、パッケージングシステムによって作り出された溶解物は、(1)プラスミドDNAを保有する形質導入粒子、及び(2)ウイルスDNAを保有する形質導入粒子の2種類の形質導入粒子を含有する。斯かるシステムでは、後者の種類の形質導入粒子は、標的細胞の検出のためのレポーターシステムとして溶解物を使用するとき、シグナル生成に寄与しない。このように、両方の種類の形質導入粒子がシグナルを生成することができるように、レポーター遺伝子がウイルスゲノム内に組み込まれた、改良された非複製的形質導入粒子に基づくレポーターシステムが本明細書中に開示されている。
【0034】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付図面を考慮することによってより正確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ある実施形態に係る、対立遺伝子交換を用いたpacA遺伝子内へのカナマイシン耐性遺伝子の挿入によるバクテリオファージP1におけるpacA遺伝子破壊の一例を示している。
【0036】
図2図2は、ある実施形態に係る、天然pacA遺伝子プロモーター制御下のpacA及びpacB遺伝子を保有する相補レポータープラスミドの模式図を示している。
【0037】
図3図3は、破壊されたpacAを有するバクテリオファージP1を用いて溶原化されたE.コリ細胞を含むパッケージングシステムの設計及び機能の一例を示しており、該細胞はまた、ある実施形態に係る、pacA及びpacBを含有するプラスミドを保有する。
【0038】
図4図4は、カナマイシン耐性遺伝子及び細菌ルシフェラーゼluxAB遺伝子の挿入によって破壊が達成される、破壊されたpacAを有するバクテリオファージP1を用いて溶原化されたE.コリ細胞を含むパッケージングシステムの設計及び機能の一例を示しており、該細胞はまた、ある実施形態に係る、pacA及びpacBを含有するプラスミドを保有する。
【0039】
図5図5は、本発明の一実施形態に係る、生細胞内での標的遺伝子プロモーターに対する誘導因子の検出にNRTPを用いるためのシステムを示している。
【0040】
図6図6は、本発明の一実施形態に係る、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(又はE.フェカリス(E. faecalis))内のバンコマイシン耐性(vanA)遺伝子のプロモーターの誘導因子VanRを検出するために構築されたレポーター核酸分子(例えば、プラスミド)を含むレポーターシステムを示している。前記レポータープラスミドは、vanA遺伝子プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を保有している。
【0041】
図7図7は、本発明の一実施形態に係る、C.ディフィシル(C. difficile)の毒素A遺伝子及び毒素B遺伝子(それぞれtcdA及びtcdB)のプロモーターの誘導因子TcdDを検出するために構築されたレポーター核酸分子を含むレポーターシステムを示している。前記レポーター核酸分子は、tcdA遺伝子プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む。
【0042】
図8図8は、本発明の一実施形態に係る、S.アウレウスのプロテインA遺伝子(spa)のプロモーターの誘導因子SarSを検出するために構築されたレポーター核酸分子を含むレポーターシステムを示している。前記レポーター核酸分子は、spa遺伝子プロモーター(Pspa)に作動可能に連結された細菌ルシフェラーゼ遺伝子luxA及びluxBを含む。
【0043】
図9図9は、標的転写物及びレポーター転写物のcis-抑制配列の間の塩基対形成の略図を示している。
【0044】
図10図10は、形質導入細胞のコロニーからの発光量(RLU)の計測から得られたデータの表を示している。スペクチノマイシン(SpeeR)に対して耐性である細胞がプラスミドDNAによって形質導入されたのに対して、カナマイシン(KanR)に対して耐性である細胞はP1 DNAによって形質導入された。そのゲノム内に統合された、luxABを伴わないP1を含有する細胞(1505)から生じた溶解物を利用して得られたデータは、概して、発光しないKanR形質導入体をもたらした一方で、そのゲノム内に統合された、luxABを伴ったP1を含有する細胞(1525)から生じた溶解物を利用して得られたデータは、発光するKanR形質導入体をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
I.定義
特許請求の範囲及び本明細書で使用される用語は、特に記載がない限り以下に記載される通りに定義される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「レポーター核酸分子」は、DNA分子又はRNA分子を含むヌクレオチド配列を指す。レポーター核酸分子は天然分子又は人工分子又は合成分子であり得る。いくつかの実施形態において、レポーター核酸分子は、宿主細胞に対し外来性であり、プラスミド又はベクター等の外来核酸分子の一部として宿主細胞内に導入され得る。ある実施形態において、レポーター核酸分子は細胞内の標的遺伝子に相補的であり得る。他の実施形態において、前記レポーター核酸分子はレポーター分子(例えば、レポーター酵素、タンパク質)をコードするレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、レポーター核酸分子は「レポーター構築物」又は「核酸レポーター構築物」と称される。
【0047】
「レポーター分子」又は「レポーター」は、生物に検出可能な表現型又は選択可能な表現型を与える分子(例えば、核酸又はタンパク質)を指す。検出可能な表現型は、例えば比色、蛍光又は発光であり得る。レポーター分子は、発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、ruc、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)をコードする遺伝子、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)をコードする遺伝子、親和性ペプチド(Hisタグ、3X-FLAG)をコードする核酸分子、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)をコードする遺伝子をコードするレポーター遺伝子から発現され得る。レポーター分子は、細胞内への核酸分子又は外来配列(プラスミド)の取り込みの成否のマーカーとして使用され得る。レポーター分子はまた、本明細書に記載の標的遺伝子、標的核酸分子、標的細胞内分子、又は細胞の存在を示すために使用され得る。あるいはレポーター分子は、アプタマー又はリボザイム等の核酸であり得る。
【0048】
本発明のいくつかの態様では、レポーター核酸分子はプロモーターに作動可能に連結されている。本発明の他の態様では、プロモーターは、特定の細胞(例えば、特定の種)に存在し他の細胞には存在しないプロモーターの活性に基づくレポーターシステムの反応性及び交差反応性に寄与するために選択又は設計され得る。ある態様では、レポーター核酸分子は複製開始点を含む。他の態様では、複製開始点の選択は、標的細胞内でのレポーター核酸分子の複製が、特定の細胞(例えば、特定の種)に存在し他の細胞には存在しない複製開始点の活性に基づくレポーターシグナル生成に寄与する、又はそれに必要である場合、レポーターシステムの反応性及び交差反応性に同様に寄与し得る。いくつかの実施形態において、レポーター核酸分子は、ウイルス複製の間に子孫ウイルス中にコンカテマーDNAとしてパッケージングされることが可能なレプリコンを形成する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「標的転写物」は、DNA配列のヌクレオチド配列の一部、又は標的細胞によって自然発生的に形成されるmRNA分子(例えば、標的遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子)、及び一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを指す。標的転写物はまた、細胞転写物(cellular transcript)又は自然発生転写物(naturally occurring transcript)とも称され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「転写物」は、DNA又はRNA鋳型配列又は遺伝子から転写された、ある長さのヌクレオチド配列(DNA又はRNA)を指す。転写物は、RNA鋳型から転写されたcDNA配列又は鋳型DNAから転写されたmRNA配列であり得る。転写物は、タンパク質をコードしている場合もあるし、コードしていない場合もある。また、転写物は操作された核酸構築物からも転写され得る。
【0051】
レポーター核酸分子由来の転写物は「レポーター転写物」と称され得る。レポーター転写物はレポーター配列及びcis-抑制配列を含み得る。レポーター転写物は、転写物が二本鎖(例えば、分子間二本鎖領域)を形成する2つの領域を含むように、相補的な領域を形成する配列を有し得る。一方の領域は「cis-抑制配列」と称されることがあり、標的転写物及び/又はレポーター配列の一部又は全てに対して相補性を有する。転写物の第二の領域は「レポーター配列」と称され、cis-抑制配列に対して相補性を有し得る。相補性は、完全な相補性である場合もあるし、実質的な相補性である場合もある。cis-抑制配列がレポーター配列と一緒に存在する、及び/又はレポーター配列と結合すると、レポーター転写物内に高次構造が形成される場合があり、この高次構造によってレポーター分子のさらなる発現が阻止され得る。レポーター転写物は、互いに相補的であるレポーター転写物内領域が互いにハイブリダイズするように、ヘアピン構造等の二次構造を形成し得る。
【0052】
「細胞内に導入する」とは、核酸分子又は外来配列(例えば、プラスミド、ベクター、構築物)への言及である場合、当業者によって理解される通り、細胞内への取り込み又は吸収を促進することを意味する。核酸構築物又は転写物の吸収又は取り込みは、助力のない拡散プロセスもしくは能動的な細胞プロセスを介して、又は補助的な作用剤もしくは装置によって(例えば、バクテリオファージ、ウイルス、及び形質導入粒子の使用を介して)、起こり得る。この用語の意味はインビトロにおける細胞に限定されず;核酸分子は、生体の一部である「細胞内に導入」されてもよい。そのような例では、細胞内への導入は生物への送達を含み得る。例えば、インビボにおける送達において、本発明の核酸分子、構築物又はベクターは、組織部位に注入されるか、又は全身投与され得る。インビトロにおける細胞内への導入は、エレクトロポレーション及びリポフェクション等の当該技術分野において既知の方法を含む。さらなるアプローチが本明細書に記載されるか、又は当該技術分野において公知である。
【0053】
「形質導入粒子」は、細胞内に非ウイルス核酸分子を送達することが可能なウイルスを指す。前記ウイルスはバクテリオファージ、アデノウイルス等であり得る。
【0054】
「非複製的形質導入粒子」は、細胞内に非ウイルス核酸分子を送達することが可能なウイルスを指すが、それ自身の複製されたウイルスゲノムを形質導入粒子内にパッケージングできない。前記ウイルスはバクテリオファージ、アデノウイルス等であり得る。
【0055】
「プラスミド」は、細胞内の染色体DNAから物理的に分離され、前記染色体DNAとは独立して複製可能である、小型DNA分子である。プラスミドは、小型の環状二本鎖DNA分子として細菌内に存在するのが最も一般的であり、古細菌及び真核生物内に存在する場合もある。プラスミドは、適切な宿主内で自動的に複製可能であるレプリコンとみなされる。
【0056】
「ベクター」は、外来遺伝物質を、それを複製及び/又は発現可能な別の細胞内に人工的に運ぶために、ビヒクルとして使用される核酸分子である。
【0057】
「ウイルス」は、他の生物の生細胞の内側でのみ複製する小型の感染体である。ウイルス粒子(ビリオンとして知られている)は2つ又は3つの部分:i)遺伝情報を運ぶDNA分子又はRNA分子でつくられる遺伝物質;ii)これらの遺伝子を保護するタンパク質外被;及び、場合によって、iii)タンパク質外皮を取り囲む脂質外被、を含む。
【0058】
本明細書中に使用される場合、「相補体」という用語は、破壊された同一配列の存在下において破壊されていない配列を指すか、又は破壊された配列に対する破壊されていない配列の相関を指す。一実施形態において、相補体は、機能性であり且つ発現可能であり、そして、バクテリオファージ上で破壊前の破壊された遺伝子と同じ機能を有するタンパク質を発現する、細胞内のポリヌクレオチド上にコードされた遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、相補遺伝子は、破壊前の破壊されたバクテリオファージ遺伝子、すなわち、天然バクテリオファージ遺伝子に対して80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%超の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、相補遺伝子は、破壊前の破壊されたバクテリオファージ遺伝子、すなわち、天然バクテリオファージ遺伝子と同一である。いくつかの実施形態において、相補遺伝子は、バクテリオファージから欠失されたポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、相補遺伝子は、プラスミド上のバクテリオファージのパッケージング機構をコードする遺伝子を指し、そして、同じ遺伝子がバクテリオファージにおいて破壊された。従って、プラスミドは、形質導入粒子内にポリヌクレオチドをパッケージングするのに必要なパッケージング機構を提供するための変異パッケージング機構遺伝子を伴ったバクテリオファージの存在下にあることが必要である。
【0059】
本明細書中に使用される場合、「パッケージング関連酵素活性」という用語は、形質導入粒子内にポリヌクレオチドをパッケージングするためのパッケージング開始部位配列との相互作用に重要な1若しくは複数のポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、一対のターミナーゼ遺伝子が斯かる相互作用に必要であり、ここで、各ターミナーゼがパッケージング関連酵素活性をコードする。いくつかの実施形態において、酵素活性は、S.アウレウスバクテリオファージφ11又はφ80α由来のterS及び/又はterL遺伝子、E.フェカリスバクテリオファージφEf11由来のterA及びterB遺伝子、或いは腸内細菌科バクテリオファージP1のpacA及びpacB遺伝子によってコードされる。これらの実施形態において、ターミナーゼ遺伝子対のそれぞれがパッケージング関連酵素活性を発現し、両方の機能的バージョンがパッケージング開始部位を有するポリヌクレオチドのパッケージングのために必要である。いくつかの実施形態において、パッケージング関連酵素活性に関連している複数の遺伝子のうちの1つの遺伝子の破壊が、パッケージング関連酵素活性を除去する。いくつかの実施形態において、一対のターミナーゼ遺伝子の両方がバクテリオファージにおいて破壊される、従って、バクテリオファージにおいてパッケージング関連酵素活性をコードする遺伝子のセット全体を破壊する。
【0060】
「MRSA」は、メチシリン耐性S.アウレウス(Staphylococcus aureus)を指す。
【0061】
「MSSA」はメチシリン感受性S.アウレウスを指す。
【0062】
用語「改善する」とは、その予防、重症度もしくは進行の軽減、寛解、又は治癒を含む、病状(例えば、病状)の治療における治療上有益なあらゆる結果を指す。
【0063】
用語「インサイチュ(in situ)」は、生体から分離されて増殖している(例えば、組織培養液内で増殖している)生細胞において起こるプロセスを指す。
【0064】
用語「インビボ」は、生体内で起こるプロセスを指す。
【0065】
本明細書で使用される用語「哺乳動物」は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、例えば、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、及びブタが挙げられる。
【0066】
「G」、「C」、「A」及び「U」の各々は、通常、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルを含有するヌクレオチドを表す。「T」及び「dT」は本明細書では同義的に使用され、核酸塩基がチミンであるデオキシリボヌクレオチド(例えば、デオキシリボチミン)を指す。しかし、当然のことながら、用語「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」又は「デオキシリボヌクレオチド」は、以下にさらなる詳細がある改変ヌクレオチド、又は代替の置換部分も指し得る。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、及びウラシルが、このような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変化させることなく他の部分によって置換され得ることを十分に理解している。例えば、限定はされないが、イノシンを塩基として含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、又はウラシルを含むヌクレオチドと塩基対合し得る。そのため、ウラシル、グアニン、又はアデニンを含むヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含有するヌクレオチドによって置換され得る。このような置換部分を含む配列が本発明の実施形態である。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「相補的」とは、第二ヌクレオチド配列に関連して第一ヌクレオチド配列を記載するのに用いられる場合、前記第二ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、ある特定の条件下でハイブリダイズして二本鎖構造を形成する、前記第一ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの能力を指し、これは当業者によって理解される通りである。また相補的配列は、互いに結合しているものと記述され、結合親和性によって特徴付けられる。
【0068】
例えば、第一ヌクレオチド配列は、前記2つの配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ(例えば、アニーリング)する場合、第二ヌクレオチド配列に相補的であると記載され得る。ハイブリダイゼーション条件には、アニーリングステップ及び/又は洗浄ステップの、温度、イオン強度、pH、及び有機溶剤濃度が含まれる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件という用語は、その条件下では、第一ヌクレオチド配列がその標的配列(例えば、第二ヌクレオチド配列)に優先的にハイブリダイズし、他の配列にはより小さな程度にハイブリダイズする、又は全くハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は配列依存的であり、異なる環境パラメーターの下では異なる。一般的に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、所定のイオン強度及びpHで、ヌクレオチド配列の熱融解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、第一ヌクレオチド配列の50%が完全一致した標的配列にハイブリダイズする、(所定のイオン強度及びpHにおける)温度である。核酸のハイブリダイゼーションの詳細な手引きは、例えば、Tijssen (1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acid Probes part I, chap. 2, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays", Elsevier, N.Y. ("Tijssen")に記載されている。生物内で遭遇し得るような、生理的に適切な条件等の他の条件を適用され得る。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な適用に基づいて、2つの配列の相補性を試験するのに最も適した条件セットを決定することができる。
【0069】
これは、第一ヌクレオチド配列及び第二ヌクレオチド配列の全長にわたる、第二ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドに対する、第一ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの塩基対形成を含む。このような配列は、本明細書では、互いに対して「完全に相補的」であると称され得る。しかし、本明細書において第一配列が第二配列に対し「実質的に相補的」であると称される場合、これら2つの配列は完全に相補的であってもよく、あるいは、それらの最終適用に最も適した条件下でハイブリダイズする能力を保持しつつ、ハイブリダイゼーション時に一つ又は複数の、しかし通常は4つ、3つ又は2つ以下の不適正塩基対を形成してもよい。しかし、2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション時に一つ又は複数の一本鎖オーバーハングを形成するように設計されている場合、このようなオーバーハングは、相補性の決定に関してミスマッチとはみなさないものとする。例えば、21ヌクレオチド長のあるオリゴヌクレオチド及び23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドを含み、長い方のオリゴヌクレオチドは短い方のオリゴヌクレオチドに完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAであっても、本明細書に記載される目的のために、「完全に相補的」と称され得る。
【0070】
「相補的な」配列は、本明細書で使用される場合、ハイブリダイズする能力に関する上記要求が満たすという条件で、非ワトソン・クリック塩基対並びに/又は非天然ヌクレオチド及び改変ヌクレオチドから形成される塩基対も含むか、又は全体的にそれらから形成され得る。このような非ワトソン・クリック塩基対には、限定はされないが、G:U Wobble又はHoogstein塩基対形成が含まれる。
【0071】
本明細書における用語「相補的」、「完全に相補的」及び「実質的に相補的」は、それらが使用される文脈から理解される通り、2本鎖dsRNA間の塩基一致、又はdsRNAのアンチセンス鎖及び標的配列間の塩基一致、一本鎖RNA配列の相補鎖又は一本鎖DNA配列間の塩基一致に対して使用され得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、「二本鎖構造」は、2本の逆平行の実質的に相補的な核酸配列を含む。核酸構築物内の相補的配列は、2つの転写物間で、転写物内の2つの領域間で、又は転写物と標的配列との間で、「二本鎖構造」を形成し得る。通常、各々の鎖のヌクレオチドの大部分はリボヌクレオチドであるが、本明細書で詳細に記載されているように、各々又は両方の鎖は、少なくとも1つの非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド及び/又は改変ヌクレオチドも含み得る。二本鎖構造を形成する2本の鎖は、1本の巨大なRNA分子の異なる部分であってもよく、あるいは別々のRNA分子であってもよい。2本の鎖が1つの巨大分子の一部であり、それ故に、二本鎖構造を形成している一方の鎖の3’末端及びそれぞれ他の鎖の5’末端の間の中断のないヌクレオチド鎖によって連結されている場合、連結しているRNA鎖は「ヘアピンループ」と称される。前記2本の鎖が、二本鎖構造を形成している一方の鎖の3’末端及びそれぞれ他の鎖の5’末端の間の中断のないヌクレオチド鎖以外の手段で、共有結合的に連結されている場合、連結している構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じ数のヌクレオチドを有していてもよいし、異なる数のヌクレオチドを有していてもよい。塩基対の最大数は、二本鎖の最も短い鎖におけるヌクレオチドの数から、二本鎖内に存在するあらゆるオーバーハングを引いたものとなる。通常、二本鎖構造は、15~30塩基対長又は25~30塩基対長、又は18~25塩基対長、又は19~24塩基対長、又は19~21塩基対長、又は19塩基対長、20塩基対長、又は21塩基対長である。一実施形態において、二本鎖は19塩基対長である。別の実施形態において、二本鎖は21塩基対長である。2本の異なるsiRNAが組み合わされて使用される場合、二本鎖の長さは同一になるか又は異なり得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「相補的領域」は、ある配列、例えば、本明細書で定義される標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を指す。相補的領域が標的配列に完全には相補的でない場合、ミスマッチは末端領域において最も許容され、存在する場合は、通常、1つ又は複数の末端領域、例えば、5’末端及び/又は3’末端の6、5、4、3、又は2ヌクレオチド以内に存在する。
【0074】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連における、用語「同一性」パーセントとは、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN又は当業者が利用可能な他のアルゴリズム)の1つを用いて、又は目視検査によって測定され、最大一致となるように比較及びアラインメントされた場合に、特定の割合の同一ヌクレオチド又は同一アミノ酸残基を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。適用に応じて、「同一性」パーセントは、比較されている配列のある領域にわたって(例えば、機能ドメインにわたって)存在していてもよいし、あるいは、比較される2本の配列の完全長にわたって存在していてもよい。
【0075】
配列比較では典型的に、一方の配列は試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムが使用される場合、試験配列及び参照配列がコンピューターに入力され、必要であれば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。配列比較アルゴリズムは次に、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0076】
比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(ウィスコンシン・ジェネティック・ソフトウェアパッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)(ジェネティック・コンピューター・グループ(Genetics Computer Group)、575 Science Dr.、マディソン、ウィスコンシン州))のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTAのコンピューター処理による実行によって、又は目視検査(一般的には、以下のAusubel et al.を参照)によって実行することができる。
【0077】
配列同一性パーセント及び配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、BLASTアルゴリズムはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)で記述されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。
【0078】
用語「充分な量」は、所望の効果を生むのに充分な量(例えば、細胞から検出可能なシグナルを生み出すのに十分な量)を意味する。
【0079】
用語「治療有効量」は、疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防は治療と見なされ得るため、治療有効量は「予防有効量」であり得る。
【0080】
本明細書及び添付の請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象を含むことを注意しなければならない。
II.ウイルスの溶原サイクル及び溶菌サイクル
【0081】
ウイルスは宿主細胞内で溶原サイクル及び溶菌サイクルを起こす。溶原サイクルがとられた場合、ファージ染色体は、細菌の染色体内に組み込まれるか、又は宿主内で安定なプラスミドとして自身を確立させ、そこで長期間休止状態を維持し得る。溶原菌が誘導されると、ファージゲノムは細菌染色体から切除され、溶菌サイクルを開始し、その結果、細胞の溶解及びファージ粒子の放出が起こる。溶菌サイクルは、宿主の溶解によって放出される新しいファージ粒子の生産をもたらす。
【0082】
ある特定の溶原ファージは溶菌活性を示すことがあり、溶菌活性の性質は宿主細菌によって異なり得る。この現象を説明するため、10種のMRSA臨床分離株に対する2種の溶原性S.アウレウスファージの溶菌活性をプラークアッセイにより調べた(表1)。ファージφ11は10種中10種の臨床MRSA分離株に対し溶菌活性を示し、φ80αは10種中6種の臨床MRSA分離株に対し溶菌活性を示した。従って、ファージの天然の溶原サイクルに依存するレポーターアッセイは、散発性に溶菌活性を示すこと予測することができる。
表1:10種の臨床MRSA分離株に対するS.アウレウス溶原ファージφ11及びφ80αの溶解活性(文字「x」で示される)
【表1】
【0083】
さらに、ファージに基づくレポーター等の、ウイルスに基づくレポーターアッセイは、宿主に基づくファージ耐性機構及びプロファージに由来するファージ耐性機構によって生じるファージ宿主範囲の限定による、反応性の限定(すなわち、分析包括性(analytical inclusivity))の影響を受け得る。これらの耐性機構は天然のファージ核酸を標的とし、その結果、ファージDNA及び機能の分解ないし阻害が起こり得る。このような耐性機構には、ファージDNAを切断する制限系及びファージ由来転写物を阻害するCRISPR系が含まれる。
【0084】
溶菌活性及びファージ耐性は共に、レポーターファージに基づくアッセイの妨げとなり得る。溶菌活性は、検出可能なシグナルを生み出す細胞の能力において細胞を破壊ないし阻害することにより、検出可能なシグナルの量を減少させる又は検出可能なシグナルの生成を妨げることで検出限界に影響を与えることによって、シグナルを阻害し得る。ファージ耐性機構は、ファージの宿主範囲を限定し、ファージに基づくレポーターの包括性を限定する可能性があり、同様に、検出可能なシグナルの量を減少させる又は検出可能なシグナルの生成を妨げることで検出限界に影響を与える。レポーターファージ内のファージDNAの組込みによって生じる溶菌活性及びファージ耐性は共に、これらのファージレポーターを組み入れたアッセイにおいて、偽陰性結果をもたらし得る。
III.非複製的形質導入粒子(NRTP)を作製するための方法
非複製的形質導入粒子を作製するための破壊/相補性に基づく方法
【0085】
ウイルス産生中にそこからゲノムパッケージングが開始される要素としてウイルスパッケージング機構によって認識されるウイルスゲノムの成分の破壊に基づく非複製的形質導入粒子パッケージングシステムが、本明細書中に開示されている。ある実施形態において、この破壊は、バクテリオファージからのパッケージング開始部位を破壊し、そしてまた、ターミナーゼ機能も破壊する。破壊された要素の例としては、pac型バクテリオファージのpac部位配列及びcos型バクテリオファージのcos部位配列が挙げられる。一実施形態において、ファージ内のパッケージング開始部位配列が破壊されたとき、ファージは機能的なターミナーゼを産生することができない。一例では、pac部位はpacA遺伝子配列中にコードされ、そして、ターミナーゼ機能は機能的なPacA及びPacBの両方を必要とする。実施形態において、プラスミドDNAは、前記破壊されたターミナーゼを補完し、そして、プラスミドDNA上に認識可能なパッケージング開始部位を含むことによって、ファージキャプシド内にパッケージされる。バクテリオファージは、例えば腸内細菌科バクテリオファージP1若しくはφEF11、又はS.アウレウスバクテリオファージφ80α若しくはバクテリオファージφ11などの任意のバクテリオファージである。
【0086】
パッケージング開始部位は、ウイルス産生に必須である遺伝子のコード領域中に見られることが多い。いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムの領域は、パッケージング開始部位を破壊する挿入、置換、欠失、又は突然変異によって破壊される。これを達成する破壊の例としては、これだけに限定されるものではないが、例えば抗生物質抵抗性遺伝子の配列などの別の配列を有するパッケージング開始部位配列を含むバクテリオファージゲノム上の配列を置換する対立遺伝子交換事象、又は小ターミナーゼ遺伝子及び巨大ターミナーゼ遺伝子の完全な欠失が挙げられる。ターミナーゼ遺伝子pacA及びpacBを利用する一例では、pacAはまた、pacB発現及び/又はPacA及びPacBによって媒介される全体的なターミナーゼ機能も破壊する極性効果を引き起こす様式で破壊され得る。他の例としては、S.アウレウスバクテリオファージφ11又はφ80α由来のterS及びterL遺伝子、又はE.フェカリスバクテリオファージφEf11由来のterS及びterL遺伝子も含み得るターミナーゼ遺伝子を挙げることもできる。ある実施形態において、ターミナーゼ遺伝子としては、配列番号10、pac部位を含む遺伝子配列の一部がカナマイシン耐性遺伝子によって置換されたP1 pacA遺伝子が挙げられる。図1は、対立遺伝子交換によるpacA遺伝子内のカナマイシン耐性遺伝子の挿入によって、バクテリオファージP1内のpacA遺伝子の破壊に関する一例を示している。
【0087】
一例では、パッケージング開始部位が破壊された場合、細胞のゲノムは、ウイルスゲノムと共に溶原化される。いくつかの実施形態において、細胞は、E.コリ細胞、S.アウレウス細胞、又はE.フェカリス細胞であり得る。細胞は、グラム陰性であっても、又はグラム陽性であってもよい。相補プラスミド(又はレポーター核酸分子)は、細胞内に導入され、そして、プラスミドDNAは、バクテリオファージで破壊された少なくとも1つの遺伝子、並びにパッケージング開始部位配列、及び/又は適宜追加のバクテリオファージ遺伝子及びレポーター遺伝子を含み、そして該レポーター遺伝子は、検出可能マーカー及び/又は選択可能なマーカーをコードし得る。プラスミドは、国際出願番号第PCT US2014/026536号に見られる方法を使用して構築され得るものであり、該出願の全体を参照により本明細書に援用する。いくつかの実施形態において、パッケージング開始部位配列はpac部位又はcos部位を含む。ある実施形態において、パッケージング開始部位配列は、配列番号1、配列番号4、又は配列番号6の配列を含む。プラスミドの1若しくは複数の遺伝子は、(パッケージングがバクテリオファージを誘発することによって開始されるとき、誘発され得る)誘導プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは、小ターミナーゼ遺伝子又は巨大ターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである。ある実施形態において、天然プロモーターは、バクテリオファージによって制御されていてもよく、従って、パッケージング中に誘発される条件付きプロモーターとして効果的に作用し得る。ある実施形態において、プロモーターとしては、配列番号9の配列が挙げられる。
【0088】
図2は、pacA及びpacB遺伝子を保有するプラスミドの図解を示している。図3は、破壊されたpacA遺伝子を有するバクテリオファージP1を用いて溶原化されるE.コリ細胞で構成されたパッケージングシステムの設計及び機能の例を示している。細胞はまた、pacA及びpacB遺伝子を含むプラスミドも保有する。ある実施形態において、プラスミド内のpacA及びpacB遺伝子は、腸内細菌科バクテリオファージP1由来である。突然変異ウイルスが溶菌サイクルを経るとき、そのパッケージング開始部位及び非複製的形質導入粒子が複製プラスミドDNAを保有しながら産生されるので、バクテリオファージゲノム又は(破壊された場合)相補プラスミドから生じるウイルスパッケージングタンパク質がパッケージングユニット内にプラスミドDNAのレプリコンをパッケージする。
【0089】
ある実施形態において、レプリコンは、腸内細菌科バクテリオファージP1溶菌レプリコンである。レプリコンはまた、S.アウレウスpT181プラスミド複製開始点由来であるか、エンテロコッカスrepBプラスミド複製開始点由来であるか、又はエンテロコッカスpDL278プラスミド複製開始点由来のpBHR1レプリコン又はpBHR1レプリコンの誘導体であってもよい。別の実施形態において、レプリコンとしては、kilA遺伝子のC1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びインフレーム欠失を含む。レプリコンの一例は、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号8の配列を有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、破壊/相補性は、変異したウイルスDNAと相補的な外来DNAとの間に相同性がないように設計されることが好ましい。これは、変異したウイルスDNAと相補的外来DNAとの間の相同性の欠如により、ウイルスゲノム中へのパッキング配列の再導入をもたらし得る、この2つのDNA分子の間の相同組換えの可能性が回避されるためである。相同性の欠如を達成するための、1つの戦略は、ウイルスゲノムからパッケージング開始部位配列を含有する遺伝子全体(又は複数の遺伝子)を除去して、この遺伝子をウイルスから除去されたDNA配列のみを好ましくは含有する外来DNA分子で補完するというものである。この戦略では、相補的DNA分子はウイルスから除去された遺伝子を発現するように設計される。斯かるシステムの別の例は、pac型ファージであるバクテリオファージφ80αを用いて提供される。前記ファージゲノムが宿主細菌細胞内で溶原化され、このファージゲノムには、pac型プロファージφ80αのpac部位が除去された小ターミナーゼ遺伝子が含まれている。天然pac部位を有する相補的小ターミナーゼ遺伝子を含むプラスミドが、細胞に形質転換される。溶原化されたプロファージの溶菌サイクルが誘導されると、バクテリオファージパッケージングシステムは、天然バクテリオファージDNAをパッケージングするのではなく、プラスミドDNAを子孫バクテリオファージ構造成分の中にパッケージングする。このことから、パッケージングシステムによって、プラスミドDNAを有する非複製的形質導入粒子が生産される。
【0091】
別の実施形態において、バクテリオファージゲノムの領域は、パッケージング開始部位を破壊する挿入によって破壊される。一実施形態において、破壊は、バクテリオファージゲノム中に組み込まれたレポーター遺伝子を含む。一実施形態において、破壊は、バクテリオファージゲノム中に組み込まれた耐性マーカー及びレポーター遺伝子を含む。一実施形態において、破壊は、レポーター遺伝子を用いてバクテリオファージゲノム上の配列を置換するか又は破壊する対立遺伝子交換事象によって達成される。一実施形態において、破壊は、耐性マーカー及びレポーター遺伝子を用いてバクテリオファージゲノム上の配列を置換するか又は破壊する対立遺伝子交換事象によって達成される。いくつかの実施形態において、耐性マーカー及び/又はレポーター遺伝子は、構成的プロモーターの制御下にある。
【0092】
図4は、kan及びluxAB遺伝子がpac部位配列中に挿入されることで破壊されたpacA遺伝子を有するバクテリオファージP1を含むE.コリ細胞から構成されたパッケージングシステムの設計及び機能の例を示している。図3のように、細胞はまた、pacA及びpacB遺伝子を含むプラスミドを保有する。従って、組み換えがバクテリオファージとプラスミドとの間に起こると、NRTPを形成するようにP1キャプシド内に挿入された複製プラスミドは、レポーター遺伝子を含んだままである。
【0093】
ある実施形態において、レポーター遺伝子は、検出可能マーカー又は選択マーカーをコードする。さらなる実施形態において、前記レポーター遺伝子は、発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、rue、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)、親和性ペプチド(His-タグ、3X-FLAG)、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)から成る群から選択される。ある実施形態において、レポーター遺伝子はluxAである。いくつかの実施形態において、耐性マーカーは抗生物質抵抗性遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、抵抗性マーカーはカナマイシン耐性遺伝子(kan)である。いくつかの実施形態において、構成的プロモーターはPblastを含む。いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムの破壊は、パッケージング開始部位配列を含むバクテリオファージゲノム上の配列を置換するか又は破壊する対立遺伝子交換事象によって達成される。
【0094】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージゲノムの破壊は、構成的プロモーター(Pblast)の制御下のカナマイシン耐性遺伝子(kan)及び細菌ルシフェラーゼ遺伝子(luxAB)を用いたパッケージング開始部位配列を含むバクテリオファージゲノム上の配列を置換するか又は破壊する対立遺伝子交換事象によって達成される。一実施形態において、対立遺伝子交換は、図1で示されたものと類似した様式で達成され、ここで、レポーター又はレポーター及び耐性マーカーを転移させる。
【0095】
ある実施形態において、バクテリオファージゲノム上の一対のターミナーゼ遺伝子、例えば、pacAとpacB、terAとterB、又はterSとterL)は、ターミナーゼ遺伝子のうちの1つの発現、及び/又はターミナーゼ遺伝子によって媒介される全体的なターミナーゼ機能も破壊する極性効果を引き起こす様式で破壊される。一実施形態において、pacA遺伝子座中に挿入されたkan及びluxABを含む構築物は、配列番号12に提示されている。一実施形態において、破壊されたバクテリオファージは、バクテリオファージゲノムのターミナーゼ遺伝子、例えばpacAとpacB、terAとterB、又はterSとterLを含むプラスミドを用いて補完される。一実施形態において、プラスミドは、破壊されたターミナーゼ遺伝子を有するバクテリオファージを用いて溶原化された細胞内に導入される。一実施形態において、細胞はE.コリ細胞である。一実施形態において、バクテリオファージは腸内細菌科バクテリオファージP1である。一実施形態において、プラスミド内のターミナーゼ遺伝子は、腸内細菌科バクテリオファージP1、すなわち、pacA及びpacB遺伝子由来である。突然変異ウイルスが溶菌サイクルを経るとき、そのパッケージング開始部位及び非複製的形質導入粒子が複製プラスミドDNAを保有しながら産生されるので、バクテリオファージゲノム又は(破壊された場合)相補プラスミドから生じるウイルスパッケージングタンパク質がパッケージングユニット内にプラスミドDNAのレプリコンをパッケージする。
【0096】
これらの欠失/相補システムでは、(1)プラスミドDNAを保有する非複製的形質導入粒子及び(2)P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子(後者がプラスミドDNAとP1 DNAとの間の組み換えによって作製され得る)を含めた2種類の形質導入粒子が製造され得る。P1変異体がP1ゲノム内に挿入されたluxABを含有していないある実施形態において、P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子は、これらの形質導入粒子が標的細胞内にDNAを送達するとき、シグナル産生に寄与しない。しかし、P1変異体がP1ゲノム内に挿入されたluxABを含有するある実施形態において、P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子は、これらの形質導入粒子が標的細胞内にDNAを送達するとき、シグナル産生に寄与する。
【0097】
このように、luxAB遺伝子がP1ゲノム内に挿入されるある実施形態は、改良された非複製的形質導入粒子レポーターシステムをもたらす。
【0098】
IV.レポーター
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明のNRTP及び構築物は、レポーター遺伝子を含むレポーター核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、本発明のバクテリオファージはレポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子はレポーター分子をコードし得、レポーター分子は検出可能マーカー又は選択マーカーであり得る。ある実施形態において、レポーター遺伝子は、細胞内で発現された際に検出可能なシグナルを生み出すレポーター分子をコードする。
【0100】
ある実施形態において、レポーター分子は、蛍光レポーター分子、例えば、限定はされないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化GFP、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)又はmCherry、並びに近赤外蛍光タンパク質であり得る。
【0101】
他の実施形態において、レポーター分子は、発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、ruc、nluc等)であり得る。レポーター分子には、細菌ルシフェラーゼ、真核生物ルシフェラーゼ、比色検出に適した酵素(lacZ、HRP)、免疫検出に適したタンパク質(例えば、親和性ペプチド(Hisタグ、3X-FLAG))、アプタマーとして機能する、又は酵素活性を示す核酸(リボザイム)、又は選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子(ampC、tet(M)、CAT、erm))が含まれ得る。当該技術分野において公知の他のレポーター分子をシグナル発生に用いることで、標的核酸又は標的細胞を検出することができる。
【0102】
他の態様では、レポーター分子は核酸分子を含む。いくつかの態様では、レポーター分子は、特異的な結合活性を有する、又は酵素活性を示すアプタマーである(例えば、アプタザイム(aptazyme)、DNAザイム、リボザイム)。
【0103】
レポーター及びレポーターアッセイは本明細書のセクションVにさらに記述される。
NRTP及びレポーターアッセイ
誘導因子レポーターアッセイ
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は、生細胞内の遺伝子プロモーターを標的とする外来性又は天然の誘導因子と共に使用するための、レポーター分子としてのNRTPの使用法を含む。本発明のNRTPは、セクションIII及び下記の実施例1~2に記載される方法を用いて操作することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、前記方法はNRTPをレポーターとして使用することを含み、前記NRTPは、標的細胞内の標的遺伝子の発現を制御する誘導性プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子を含むNRTPが標的細胞内に導入されると、レポーター遺伝子の発現が、レポーター核酸分子内の標的遺伝子プロモーターの誘導を介して可能となる。
【0106】
図5は、2つの遺伝子、誘導因子(502)をコードする遺伝子及び標的遺伝子(503)を有する標的細胞のゲノム遺伝子座(500)を示している。標的細胞の標的遺伝子のプロモーター(506)に作動可能に連結されたレポーター遺伝子(505)を誘導するレポーター核酸分子(504)も示されている。レポーター核酸分子(504)は、NRTPを介して細胞内に導入され得る。天然細胞において、誘導因子遺伝子(502)が発現され誘導因子タンパク質(507)が産生されると、誘導因子タンパク質(507)は標的遺伝子に作動可能に連結された標的遺伝子プロモーター(506)を誘導することが可能であるため、標的遺伝子の発現及び標的遺伝子産物(508)の産生を引き起こす。
【0107】
レポーター核酸分子(504)が標的生物内に存在すると、誘導因子(507)はレポーター核酸分子(504)内に存在する標的遺伝子プロモーター(506)を誘導するも可能であるため、レポーター遺伝子(505)の発現を引き起こし、それにより、検出可能なシグナルを生み出すことが可能なレポーター分子(509)の産生がもたらされる。
【0108】
そのため、レポーター分子(509)からの検出可能なシグナルの生成は、標的細胞内の誘導因子タンパク質(507)の存在に基づいて、細胞の存在を示すものとなる。
VanRレポーターシステム
【0109】
一実施形態において、レポーターシステムはレポーター核酸分子を含むNRTP(例えば、プラスミド)を含む。レポーター核酸分子は、エンテロコッカス・フェシウム(又はE.フェカリス)内のバンコマイシン耐性(vanA)遺伝子のプロモーターの誘導因子であるVanRを検出するように構築され得る。レポータープラスミドは、vanA遺伝子プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を有する。
【0110】
図6はVanRレポーターシステムの設計及び機能を要約したものである。図6は、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)に存在し得るトランスポゾンTn1546(601)の一領域を示している。Tn1546トランスポゾンは、vanR誘導因子遺伝子(602)及びvanA標的遺伝子(603)を含み得る。NRTP内にパッケージングされ細胞内に導入され得るレポーター核酸分子(604)も図に示されている。レポーター核酸分子(604)は、vanA遺伝子を含むvanHAXオペロンの発現を制御するプロモーターPH(606)に作動可能に連結されたレポーター遺伝子(605)を含む。天然細胞において、vanR遺伝子(602)が発現されVanRタンパク質(607)が産生されると、VanRは、Tn1546トランスポゾン内のPH(606)を誘導することが可能であるため、vanA遺伝子の発現を引き起こし、それによりVanAタンパク質(608)を産生する。レポーター核酸分子(603)(ベクター)が標的生物内に存在すると、VanRは、レポーター核酸分子(603)内のPH(606)を誘導することも可能であるため、レポーター分子(609)の発現を引き起こす。そのため、レポーター分子の産生は標的細胞内のVanRの存在を示すものとなる。
【0111】
VREアッセイの開発に適したプロモーターの例としては、vanA遺伝子プロモーター及びvanB遺伝子プロモーターが挙げられる。Arthur, M., et al., The VanS sensor negatively controls VanR-mediated transcriptional activation of glycopeptide resistance genes of Tn1546 and related elements in the absence of induction. J. Bacteriol., 1997. 179(1): p. 97-106。
TcdDレポーターシステム
【0112】
このシステムの別の実施形態において、NRTPを用いてレポーター核酸分子が細胞に導入される。レポーター核酸分子は、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)の毒素A遺伝子及び毒素B遺伝子(それぞれ、tcdA及びtcdB)のプロモーターの誘導因子であるTcdDを検出することを目的に構築され得る。レポーター核酸分子は、tcdA遺伝子プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含む。
【0113】
図7は、本発明の一実施形態に係る、TcdDレポーターシステムの設計及び機能を要約したものである。図7は、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)内に存在し得るトランスポゾンPaLoc(701)の一領域を示している。PaLocトランスポゾンは、tcdD遺伝子(702)及びtcdA標的遺伝子(703)を含有し得る。NRTPを用いて細胞内に導入されるレポーター核酸分子(704)(例えば、ベクター)も図に示されている。レポーター核酸分子(704)は、tcdA遺伝子プロモーター(PtcdA)(706)に作動可能に連結されたレポーター遺伝子(705)を含む。
【0114】
天然細胞において、tcdD遺伝子が発現されTcdDタンパク質(707)が産生されると、TcdDは、PaLocトランスポゾン(701)内のPtcdA(706)を誘導することが可能であるため、tcdA遺伝子(703)の発現を引き起こし、それにより毒素Aタンパク質(708)を産生する。
【0115】
レポーター核酸分子(704)が標的生物内に存在すると、TcdDは、レポーターベクター内のPtcdA(706)を誘導することも可能であるため、レポーター分子(709)の発現を引き起こす。そのため、レポーター分子(709)の産生は標的細胞内のTcdDの存在を示すものとなる。
【0116】
クロストリジウム・ディフィシルアッセイの開発に適したプロモーターの例としては、tcdA遺伝子プロモーター及びtcdB遺伝子プロモーターが挙げられる。Karlsson, S., et al., Expression of Clostridium difficile Toxins A and B and Their Sigma Factor TcdD Is Controlled by Temperature. Infect. Immun., 2003. 71(4): p. 1784-1793。
【0117】
標的細胞及び誘導因子:標的細胞には、真核生物標的及び原核細胞標的並びに関連誘導因子が含まれ得る。
【0118】
ベクター送達系:組み換えDNAを含有するベクターの送達は、非生物学的システム又は生物学的システムによって実行され得る。リポソーム、ウイルス様粒子、ファージ又はウイルス由来の形質導入粒子、及び接合を含むが、これらに限定はされない。
バクテリオファージに基づくSarSレポーターシステム
【0119】
本発明の別の実施形態において、レポーター核酸分子は、S.アウレウスにおけるプロテインA遺伝子(spa)のプロモーターの誘導因子であるSarSを検出することを目的に構築される。レポーター核酸分子は、NRTP内で細胞に導入することができ、spa遺伝子プロモーター(Pspa)に作動可能に連結された細菌ルシフェラーゼ遺伝子luxA及びluxBを含む。レポーター核酸分子は、例えば、NRTPを介してS.アウレウスに送達される。SarSが細胞内に存在する場合、SarSはluxAB遺伝子の発現を誘導するため、発光シグナルを生み出すことが可能なルシフェラーゼ酵素が産生される。
【0120】
図8は、本発明の一実施形態に係る、SarSレポーターシステム設計及び機能を要約したものである。図8は、sarS遺伝子(802)及びspa遺伝子(803)を含有するS.アウレウスゲノム(801)の一領域を示している。NRTPによって細胞に送達され、spa遺伝子(803)の発現を制御するプロモーターPspa(806)に作動可能に連結されたluxABレポーター遺伝子(805)を含む、レポーター核酸分子(例えば、ベクター)(804)も、図に示されている。
【0121】
天然細胞において、sarS遺伝子(802)が発現されSarSタンパク質(807)が産生されると、前記タンパク質は、S.アウレウスゲノムトランスポゾン内のPspa(806)を誘導することが可能であるため、spa遺伝子(803)の発現を引き起こし、プロテインA(808)を産生する。
【0122】
レポーター核酸分子(804)が標的生物内に存在すると、SarS(807)は、レポーター核酸分子(804)内のPspa(806)を誘導することも可能であるため、luxABの発現を引き起こし、それにより、発光シグナルを生み出し得るルシフェラーゼ酵素(809)の産生をもたらす。そのため、ルシフェラーゼの産生は標的細胞内のSarSの存在を示すものとなる。
【0123】
本明細書中に記載したNRTPsと共に使用するための他のレポーターシステムは、国際PCT公開番号:WO2014/160418に記載されており、該公開の全体を参照により本明細書に援用する。
レポーター配列のシス抑制及び標的転写物の結合による立体構造変化の機構
【0124】
本発明で使用される一般機構は、2つの機構:(1)核酸分子の二次構造における立体構造変化、及び(2)切断事象をもたらし得る、分子間の核酸分子相互作用である。立体構造変化がレポーター転写物への標的転写物の結合によって誘導されるような、シス抑制された高次構造及び抑制解除された高次構造の間の立体構造変化を起こすことが可能な、レポーター転写物を設計するための方法が本明細書に記載される。
【0125】
上記のように、レポーター転写物は、レポーター配列を含み、レポーター遺伝子のリボソーム結合部位(RBS)のシス抑制によってレポーター遺伝子配列の翻訳が阻止されるように設計され得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、以下の手段が本発明のレポーター転写物を設計するために使用され得る。
【0127】
1)RNA二次構造は、ニューヨーク州立大学オルバニー校のThe RNA Institute College of Arts and Sciencesによって維持されるサーバーで利用可能なMfold(Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction. Nucleic Acids Res. 31 (13), 3406-15, (2003))(http://mfold.rna.albany.edu/?q=mfold/RNA-Folding-Form)などの、二次構造プログラムを用いて計算される。
【0128】
2)分子間RNA相互作用は、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)大学院情報科学研究科、慶応義塾大学生命情報学科、日本(http://rna.naist.jp/ractip/)によって維持されるサーバーで利用可能な、整数計画法(Integer Programming)を用いたRNA-RNA相互作用予測(RactIP)等の、ソフトウェアプログラムを用いて計算される。
【0129】
3)RNA二次構造は、RNAの二次構造の描画専用のJava(登録商標)軽量アプレットである、RNAの可視化アプレット(Visualization Applet for RNA)(VARNA)(http://varna.lri.fr/)を用いて可視化される。
【0130】
標的転写物の二次構造は、Mfoldによって算出される最も低いエネルギー配置に基づいて作製され、VARNAによって可視化され得る。
【0131】
レポーター転写物への結合に理想的であり得る標的転写物内のssRNA領域又は標的領域が同定され得る。いくつかの例では、標的転写物の二次構造は、レポーター配列の一部に結合し得るコンセンサス配列又はループ配列を含む。例えば、メチシリン耐性S.アウレウスのmecA転写物には、レポーター転写物のcis-抑制配列への結合に使用され得るコンセンサスYUNR配列(「UUGG」)を含む末端ループが存在する。標的転写物の二次構造の解析によって、cis-抑制配列への結合に適したものであり得る、これらの一つ又は複数のssRNA領域が明らかとなり得る。この後、レポーター転写物のcis-抑制配列が、これらの一つ又は複数のssRNA領域へ結合するように設計され得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、cis-抑制配列は、レポーター転写物内のレポーター配列のRBSに結合し、レポーター転写物内でステムループ構造を形成することで、cis-抑制配列がレポーター配列のRBSへのRNAポリメラーゼの結合を阻止するように、設計され得る。cis-抑制配列が標的転写物のssRNA領域に結合した後、レポーター配列のRBSが露出され、レポーター配列の翻訳が開始され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、レポーター転写物のcis-抑制配列は、レポーター配列の5’末端に配置されるように設計され、レポーター配列内にステムループ構造を生むことで、レポーター配列のRBS配列が阻止されるように設計され得る。シス抑制するステムループ構造は、Mfoldによって算出されるレポーター転写物の最も低いエネルギー配置に基づいて、RBS配列をブロックするように設計され、VARNAによって可視化され得る。標的転写物及びレポーター転写物のcis-抑制配列の間の分子間相互作用の予測は、RactIPによって算出され、VARNAによって可視化され得る。図9に示すように、標的転写物及びレポーター転写物のcis-抑制配列の間の塩基対形成を可視化するための図が描画され得る。
【0134】
前記相互作用は、標的配列及びcis-抑制配列において、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50以上のヌクレオチド間の塩基対形成を含み得る。2つの配列間の相補的結合は、完全に相補的、実質的に相補的、又は部分的に相補的であり得る。塩基対形成は、例えば、図9に示されるように、標的配列及びcis-抑制配列内の連続したヌクレオチド配列又は領域に渡るものであり得る。
転写産物
【0135】
上記のように、転写物は、DNA又はRNA鋳型配列又は遺伝子から転写されたある長さのヌクレオチド配列(DNA又はRNA)である。転写物は、RNA鋳型から転写されたcDNA配列又は鋳型DNAから転写されたmRNA配列であり得る。転写物は、操作された核酸構築物から転写され得る。転写物は、それ自体の内部に相補性を有する領域を有することで、分子内二本鎖を形成し得る2つの領域を含み得る。一方の領域は、レポーター配列に結合しレポーター配列の翻訳を阻止する「cis-抑制配列」と称され得る。転写物の第二の領域は、検出可能マーカー又は選択マーカー等のレポーター分子をコードする「レポーター配列」と称される。
【0136】
本発明の転写物は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25ヌクレオチド長であり得る転写物配列であり得る。他の実施形態において、転写物は、少なくとも25、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、1500、2000、3000、4000、5000又はより多いヌクレオチド長であり得る。cis-抑制配列及びレポーター配列は同じ長さであっても異なる長さであってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、cis-抑制配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、又はより多いスペーサーヌクレオチドによってレポーター配列から隔てられる。
ベクター
【0138】
別の態様では、本発明の転写物(例えば、アンチセンス配列及びセンス配列)は、DNAベクター又はRNAベクター内に挿入された転写単位から発現される(例えば、Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5-10; Skillern, A., et al.、国際PCT公開番号WO00/22113、Conrad、国際PCT公開番号WO00/22114、及びConrad、米国特許第6,054,299号を参照)。これらの配列は、直鎖構築物、環状プラスミド、又はウイルスベクター(例えば、バクテリオファージに基づくベクター)として導入され得、宿主ゲノム内に組み入れられ、宿主ゲノム内に組み込まれた導入遺伝子として遺伝し得る。また転写物は、染色体外プラスミドとして遺伝することを可能にするように構築され得る(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0139】
転写物配列は、発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写され得る。一実施形態において、cis-抑制配列及びレポーター配列がリンカーポリヌクレオチド配列によって連結された逆方向反復として発現されることで、転写物がステム構造及びループ構造を有する。
【0140】
組み換え発現ベクターが、本発明の転写物を発現するために使用され得る。組み換え発現ベクターは、一般的にはDNAプラスミド又はウイルスベクターである。転写物を発現するウイルスベクターは、限定はされないが、アデノ随伴ウイルス(総説として、Muzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158:97-129)); adenovirus (例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6:616)、Rosenfeld et al.(1991, Science 252:431-434)、及びRosenfeld et al. (1992), Cell 68:143-155を参照);又はアルファウイルス属、並びに当該技術分野において公知の他のウイルスに基づいて構築され得る。レトロウイルスは、種々の遺伝子を多くの様々な細胞型(例えば、上皮細胞)にインビトロ及び/又はインビボで導入するために使用されている(例えば、Eglitis, et al., Science (1985) 230:1395-1398; Danos and Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 85:6460-6464; Wilson et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3014-3018; Armentano et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:61416145; Huber et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8039-8043; Ferry et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8377-8381; Chowdhury et al., 1991, Science 254:1802-1805; van Beusechem. et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7640-19 ; Kay et al., 1992, Human Gene Therapy 3:641-647; Dai et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10892-10895; Hwu et al., 1993, J. Immunol. 150:4104-4115;米国特許第4,868,116号;同第4,980,286号;PCT出願国際公開第89/07136号;同第89/02468号;同第89/05345号;及び同第92/07573号を参照)。細胞のゲノム内に挿入された遺伝子を形質導入及び発現することが可能な組み換えレトロウイルスベクターは、組み換えレトロウイルスゲノムをPA317及びPsi-CRIP等の適切なパッケージング細胞株に形質移入することによって作製され得る(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2:5-10; Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349)。組み換えアデノウイルスベクターは、感受性宿主(例えば、ラット、ハムスター、イヌ、及びチンパンジー)内の種々様々な細胞及び組織に感染させるために使用することができ(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、感染のために有糸分裂活性を有する細胞を必要としないという利点も有する。
【0141】
発現される転写物のためにコード配列を受け入れることが可能なあらゆるウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ随伴ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、マウス白血病ウイルス);ヘルペスウイルス、及び同種ものに由来するベクターが使用可能である。ウイルスベクターの向性は、他のウイルス由来のエンベロープタンパク質又は他の表面抗原でベクターを偽型することによって、又は必要に応じて、異なるウイルスキャプシドタンパク質を置換することによって、改変することができる。
【0142】
例えば、本発明で注目されるレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラ、及び同種のものに由来する表面タンパク質で偽型され得る。本発明で注目されるAAVベクターは、様々なキャプシドタンパク質血清型を発現するように前記ベクターを操作することによって、様々な細胞を標的とするように作製することができる。様々なキャプシドタンパク質血清型を発現するAAVベクターを構築するための技術は、当該技術分野における技術の範囲内であり;例えば、Rabinowitz J E et al. (2002), J Virol 76:791-801(この開示の全体が参照によって本明細書に援用される)を参照されたい。
【0143】
本発明での使用に適した組み換えウイルスベクターの選択、ベクター内に転写物を発現させるために核酸配列を挿入するための方法、及びウイルスベクターを目的細胞に送達する方法は、当該技術分野における技術の範囲内である。例えば、Dornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301-310; Eglitis M A (1988), Biotechniques 6: 608-614; Miller A D (1990), Hum Gene Therap. 1: 5-14; Anderson W F (1998), Nature 392: 25-30; and Rubinson D A et al., Nat. Genet. 33: 401-406(これらの開示の全体が参照によって本明細書に援用される)を参照されたい。
【0144】
ウイルスベクターはAV及びAAVに由来し得る。本発明において注目される転写物を発現するのに適したAVベクター、組み換えAVベクターを構築するための方法、及びベクターを標的細胞内に送達するための方法は、Xia H et al. (2002), Nat. Biotech. 20: 1006-1010に記載されている。本発明において注目される転写物を発現するのに適したAAVベクター、組み換えAVベクターを構築するための方法、及びベクターを標的細胞内に送達するための方法は、Samulski R et al. (1987), J. Virol. 61: 3096-3101; Fisher K J et al. (1996), J.Virol, 70: 520-532; Samulski R et al.(1989), J.Virol. 63: 3822-3826;米国特許第5,252,479号;同第5,139,941号;国際特許出願第WO94/13788号;及び同第WO93/24641号(これらの開示の全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されている。
【0145】
本発明において注目されるDNAプラスミド又はウイルスベクター内の転写物発現を駆動するプロモーターは、真核生物のRNAポリメラーゼI(例えば、リボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV初期プロモーター又はアクチンプロモーター又はU1 snRNAプロモーター)、もしくは一般的にはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6 snRNA又は7SK RNAプロモーター)、又は、発現プラスミドがT7プロモーターからの転写に必要とされるT7 RNAポリメラーゼもコードするという条件で、原核生物のプロモーター、例えばT7プロモーターであり得る。プロモーターはまた、導入遺伝子発現を膵臓に配向付け得る(例えば、the insulin regulatory sequence for pancreas(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511-2515)を参照)。
【0146】
さらに、転写物の発現は、例えば、ある特定の生理的制御因子(例えば、循環グルコースレベル、又はホルモン)に感受性である制御配列等の、誘導可能な調節配列及び発現系を用いることによって、正確に制御され得る(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8:20-24)。細胞又は哺乳動物における導入遺伝子発現の調節に適した、このような誘導可能な発現系は、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質、及びイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による制御を含む。当業者であれば、dsRNA導入遺伝子の用途に応じて、適切な制御/プロモーター配列を選択することができる。
【0147】
一般的に、転写物分子を発現することが可能な組み換えベクターは下記のように送達され、標的細胞内に保持される。あるいは、転写物分子の一過性発現を与えるウイルスベクターを用いることができる。そのようなベクターは必要に応じて繰り返し投与することができる。発現された後、転写物は標的RNAに結合し、標的RNAの機能又は発現を調節する。転写物発現ベクターの送達は、全身的、例えば、静脈内投与もしくは筋内投与、患者から外植された標的細胞への投与及びそれに続く患者への再導入、又は所望の標的細胞内への導入を可能にする他のあらゆる手段であり得る。
【0148】
転写物発現DNAプラスミドは、典型的には、陽イオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン)又は非陽イオン性脂質系担体(例えば、Transit-TKO(商標))との複合体として標的細胞に形質移入される。1週間以上の期間に亘る単一のPROC遺伝子又は複数のPROC遺伝子の異なる領域を標的とするdsRNA介在性ノックダウンのための多重脂質トランスフェクション(multiple lipid transfection)も、本発明に基づいて企図されている。宿主細胞内へのベクターの導入の成否は、種々の既知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、一過性導入は、蛍光マーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP))等のレポーターによって示され得る。エキソビボにおける細胞の安定なトランスフェクションは、形質移入された細胞にハイグロマイシンB耐性等の特定の環境因子(例えば、抗生物質及び薬剤)に対する耐性を与えるマーカーを用いることで確実することができる。
【0149】
組み換えDNAを含有するベクターの送達は、非生物学的システム又は生物学的システムによって実行され得る。リポソーム、ウイルス様粒子、ファージ又はウイルス由来の形質導入粒子、及び接合を含むが、これらに限定はされない。
転写物測定法のためのレポーター
【0150】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、レポーター配列(例えば、レポーター遺伝子配列)を含む。レポーター遺伝子は、細胞内で発現された際にシグナルを生み出すレポーター分子をコードしている。いくつかの実施形態において、レポーター分子は検出可能マーカー又は選択マーカーであり得る。ある実施形態において、レポーター分子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、又は赤色蛍光タンパク質(RFP)等の蛍光レポーター分子であり得る。他の実施形態において、レポーター分子は化学発光タンパク質であり得る。
【0151】
レポーター分子は、細菌ルシフェラーゼ、真核生物ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、比色検出に適した酵素、免疫検出に適したタンパク質、免疫検出に適したペプチド、又はアプタマーとして機能するもしくは酵素活性を示す核酸であり得る。
【0152】
選択マーカーはレポーターとしても使用され得る。選択マーカーは、例えば、抗生物質耐性遺伝子であり得る。
【実施例
【0153】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は説明のみを目的として提供され、本発明の範囲をなんら限定するものではない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関する正確さを確実にする努力は為されているが、いくらかの実験誤差及び偏差は当然許容されるべきである。
【0154】
本発明の実施は、特に記載がない限り、当業者の技能の範囲内の、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術及び薬理学の常法を使用する。このような技術は文献中で充分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
実施例1:対立遺伝子交換に基づく破壊/相補性パッケージングシステム
【0155】
以下は、非複製的形質導入粒子を作製するための対立遺伝子交換に基づく破壊/相補性に基づくパッケージングシステムの設計及び構築の一例である。
【0156】
パッケージングシステムを開発するために使用された材料が以下に記載される。
【0157】
菌種:
・N1706、E.コリ K-12 P1 c1-100 Tn9溶原菌
【0158】
ベクター:
・Y14439(pBHR1骨格)
【0159】
以下のGenBankアクセッション番号(N.B.、受入番号で言及される配列は、本願の優先日としてデータベースに収載されるものである)又は配列番号は、ベクター骨格及びカセット配列に使用され得る:
・X06758(細菌ルシフェラーゼ遺伝子luxAB)
・配列番号1(天然pacA遺伝子プロモーターを含む天然P1 pacA及びpacB遺伝子)
・配列番号2(C1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含有するP1溶解性レプリコン)
・配列番号11(luxAB発現を駆動するPblastプロモーター)
【0160】
NI706(pacA::Kan)pacA変異株、別名菌株1505の構築:pacA変異型配列の代表的な配列が配列番号10に示されている。突然変異は、置換されることが望ましいpacA遺伝子配列にそれら自体が隣接するpacA遺伝子配列が隣接したカナマイシン耐性遺伝子から成る対立遺伝子交換基質を構築することによって達成される。対立遺伝子交換基質は、遺伝子合成と、その後のNI706内の天然配列の置換、そして、対立遺伝子交換によるKan遺伝子の挿入によって作製できる。破壊がDNAをパッケージする変異P1ファージの能力も破壊したことが測定された。変異ファージの誘導は、変異ファージに対して天然ファージを誘導することによって生じる細胞溶解物のプラークアッセイによりP1ファージ力価を比較することによって測定される、子孫ファージの排除をもたらした。さらに、pacA遺伝子を発現する相補プラスミドが、P1変異体溶原内に導入され、そして変異ファージが形質転換体から誘導されたとき、形質導入粒子は溶解物中から回収されず、ファージが、pacA遺伝子及びpac部位を補完したにもかかわらず、相補プラスミドをパッケージできなかったことが示唆された。
【0161】
相補プラスミドの構築:
相補プラスミドは、広範なグラム陰性活性を示すpBHR1複製開始点、スペクチノマイシンに対する選択マーカー、天然pacA遺伝子プロモーター配列に作動可能に連結された天然バクテリオファージP1のpacA及びpacB遺伝子、構成的ブラスティシリン(blasticillin)プロモーター(Pblast)に作動可能に連結されたアリイビブリオ・フィシェリ(Aliivibrio fischeri)由来のluxA遺伝子及びluxB遺伝子、並びにC1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含有するP1溶解性レプリコンを含有する。
【0162】
プラスミドは、天然源からのPCRを介して、又は遺伝子合成及び従来の制限酵素に基づくクローニングもしくはギブソン構築(Gibson assembly)等の別の技術を介したベクター構築を介して、カセットを得ることを含む、当業者に公知の種々の方法で構築することができる。
【0163】
相補性に基づくパッケージングシステム:前記パッケージングシステムは、相補プラスミドで補完されたpacA変異株1505を含む。当業者に公知である通り、このシステムを構築する方法は、相補プラスミドで1505を形質転換することによって達成され得る。相補プラスミドは、10μg/mLのスペクチノマイシンの存在下で形質転換体を増殖させることによって、形質転換1505の培養物内に維持され得る。
【0164】
プラスミドDNAを保有する形質導入粒子の作製:相補プラスミドを保有する非複製的形質導入粒子は、42℃での熱誘導を介して1505形質転換体から作製され得る。42℃でのインキュベーションはP1溶菌サイクルの誘導をもたらし、P1溶菌サイクルでは、プロファージが、ファージ構造要素を産生し、溶解性レプリコンによって形成された相補プラスミドコンカテマーDNAを子孫ファージ粒子内にパッケージングする。pacA及びpacB遺伝子の両方がバクテリオファージゲノム中で破壊されたとき、形質導入粒子の産生をもたらさなかった、pacA遺伝子を発現しただけの相補プラスミドを使用した補完と異なって、pacA及びpacB遺伝子の両方を発現する相補プラスミドは、相補プラスミドの直鎖コンカテマーを保有するバクテリオファージP1粒子からそれぞれ成る、非複製的形質導入粒子を含有する細胞溶解物をもたらし、このことから、この相補プラスミドがパッケージングの破壊を首尾よく補完することを実証した。
実施例2:改良された対立遺伝子交換に基づく破壊/相補性パッケージングシステム
【0165】
ターミナーゼ遺伝子pacA及びpacBを含む腸内細菌科バクテリオファージP1を利用した実施例では、pacAは、pacB発現も、及び/又はpacA及びpacBによって媒介される全体的なターミナーゼ機能も破壊する極性効果を引き起こす様式で破壊される。kan及びluxABがpacA遺伝子座中に挿入された最終的な構築物が、配列番号12に含まれている。
【0166】
次に、pacABを破壊したバクテリオファージゲノムを、図2に示したプラスミドを用いて補完した。図4は、破壊されたpacA遺伝子を有するバクテリオファージP1で溶原化されたE.コリ細胞で構築されたパッケージングシステムの設計及び機能を示している。細胞はまた、pacA及びpacB遺伝子を含むプラスミドも含んでいた。この実施例では、プラスミド内のpacA及びpacB遺伝子を、腸内細菌科バクテリオファージP1から得た。突然変異ウイルスが溶菌サイクルにあるとき、そのパッケージング開始部位及び非複製的形質導入粒子が複製プラスミドDNAを保有して産生されたので、ウイルスパッケージングタンパク質は相補プラスミドから産生され、そしてそれが、パッケージングユニット内にプラスミドDNAのレプリコンをパッケージした。
【0167】
これらの欠失/相補システムでは、(1)プラスミドDNAを保有する非複製的形質導入粒子及び(2)P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子(後者がプラスミドDNAとP1 DNAとの間の組み換えによって作製され得る)を含めた2種類の形質導入粒子が作製された。P1変異体がpacA遺伝子中に挿入されたluxABを含有していなかったとき、P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子は、これらの形質導入粒子が標的細胞内にDNAを送達するとき、シグナル産生に寄与しなかった。しかし、P1変異体がpacA遺伝子中に挿入されたluxABを含有したとき、P1 DNAを保有する非複製的形質導入粒子は、これらの形質導入粒子が標的細胞内にDNAを送達するとき、シグナル産生に寄与した(図10を参照のこと)。
【0168】
従って、我々がP1ゲノム内にluxAB遺伝子を挿入し、そして、本明細書中に記載したNRTP作出システムを該システムと組み合わせたときに、我々は、改良された非複製的形質導入粒子レポーターシステムを提供した。
【0169】
以下は、この実施例に記載の非複製的形質導入粒子を作製するための対立遺伝子交換に基づく破壊/相補性に基づくパッケージングシステムの設計及び構築の詳細を提供する。
【0170】
パッケージングシステムを開発するために使用された材料が以下に記載される。
【0171】
菌種:
・N1706、E.コリ K-12 P1 c1-100 Tn9溶原菌
【0172】
ベクター:
・Y14439(pBHR1骨格)
【0173】
以下のGenBankアクセッション番号(N.B.、受入番号で言及される配列は、本願の優先日としてデータベースに収載されるものである)又は配列番号は、ベクター骨格及びカセット配列に使用され得る:
・X06758(細菌ルシフェラーゼ遺伝子luxAB)
・配列番号1(天然pacA遺伝子プロモーターを含む天然P1 pacA及びpacB遺伝子)
・配列番号2(C1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含有するP1溶解性レプリコン)
・配列番号11(luxAB発現を駆動するPblastプロモーター)
【0174】
NI706(pacA::KanluxAB)pacA変異株、別名菌株1525の構築を次のように実施した:
【0175】
変異pacA配列の代表的な配列が配列番号12に示されている。配列番号12に提示したpacA変異型配列を、Pblastプロモーターの制御下でカナマイシン耐性遺伝子(Kan)及びluxAB遺伝子から成る対立遺伝子交換基質を構築し、そして、pacA遺伝子配列にそれら自体が隣接するpacA遺伝子配列を隣接させることによって作製した。対立遺伝子交換基質を遺伝子合成によって作製した。次に、NI706内の天然pacA配列を、対立遺伝子交換によるKan遺伝子及びluxAB遺伝子の挿入によって置換した。破壊がDNAをパッケージする変異P1ファージの能力も破壊したことが測定された。変異ファージの誘導は、変異ファージに対して天然ファージを誘導することによって生じる細胞溶解物のプラークアッセイによりP1ファージ力価を比較することによって測定される、子孫ファージの排除をもたらした。
【0176】
相補プラスミドの構築:
相補プラスミドは、広範なグラム陰性活性を示すpBHR1複製開始点、スペクチノマイシンに対する選択マーカー、天然pacA遺伝子プロモーター配列に作動可能に連結された天然バクテリオファージP1のpacA及びpacB遺伝子、構成的ブラスティシリンプロモーター(Pblast)に作動可能に連結されたアリイビブリオ・フィシェリ由来のluxA遺伝子及びluxB遺伝子、並びにC1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含有するP1溶解性レプリコンを含有する。
【0177】
プラスミドは、天然源からのPCRを介して、又は遺伝子合成及び従来の制限酵素に基づくクローニングもしくはギブソン構築などの別の技術を介したベクター構築を介して、カセットを得ることを含む、当業者に公知の種々の方法で構築することができる。
【0178】
相補性に基づくパッケージングシステム:前記パッケージングシステムは、相補プラスミドで補完されたpacA変異株1525を含む。当業者に公知である通り、このシステムを構築する方法は、相補プラスミドで1525を形質転換することによって達成され得る。相補プラスミドは、10μg/mLのスペクチノマイシンの存在下で形質転換体を増殖させることによって、形質転換1525の培養物内に維持され得る。
【0179】
プラスミドDNAを保有する形質導入粒子の作製:相補プラスミドを保有する非複製的形質導入粒子は、42℃での熱誘導を介して1525形質転換体から作製され得る。42℃でのインキュベーションはP1溶菌サイクルの誘導をもたらし、P1溶菌サイクルでは、プロファージが、ファージ構造要素を産生し、溶解性レプリコンによって形成された相補プラスミドコンカテマーDNAを子孫ファージ粒子内にパッケージングする。pacA及びpacB遺伝子の両方を発現する相補プラスミドは、相補プラスミドの直鎖コンカテマーを保有するバクテリオファージP1粒子からそれぞれ成る、非複製的形質導入粒子を含有する細胞溶解物をもたらし、このことから、この相補プラスミドがパッケージングの破壊を首尾よく補完することを実証した。
【0180】
プラスミドDNAを保有する形質導入粒子に加えて、システムはP1 DNAを保有する形質導入粒子を生じた。P1 DNAを保有する形質導入粒子は、プラスミドDNAとP1 DNAの間の組み換えによって生じる。P1 DNAを保有する形質導入粒子の存在を、このシステムからの溶解物に標的細胞を晒し、そしてカナマイシンを組み込んだ選択培地において繁殖する形質導入細胞の存在をスクリーニングすることによって評価し、その一方で、プラスミドDNAを保有する形質導入粒子を、スペクチノマイシン耐性に基づく同様の様式によって評価した。図10は、形質導入細胞のコロニーからの発光量(RLU)を計測することで得られたデータの表を示している。スペクチノマイシン(SpeeR)に耐性であった細胞は、プラスミドDNAによって形質導入されたのに対して、カナマイシン(KanR)に耐性であった細胞は、P1 DNAによって形質導入された。1505からのデータは、P1ゲノム内に挿入されたluxABを有していないパッケージング株から得られたのに対し、1525からのデータは、P1ゲノム内に挿入されたluxABを有するパッケージング株から得られた。データから見られるように、すべてのSpeeR形質導入体が発光するのに対して、KanR形質導入体のすべてが1525から形質導入されたものについてのみ発光した。
【0181】
このように、1525は、プラスミドDNA及びウイルスDNAの両方を保有する形質導入粒子が発光可能である、改良された非複製的形質導入粒子に基づくレポーターシステムの典型である。
引用された参考文献
1. Michael G. Schmidt, D.A.S., Caroline Westwater, Joseph W. Dolan, Brian D. Hoel, Philip A. Werner, James S. Norris, Laura M. Kasman, Nucleic Acid Delivery and Expression, 2005.
2. Kreiswirth, B.N. et al., The toxic shock syndrome exotoxin structural gene is not detectably transmitted by a prophage. Nature, 1983. 305(5936): p. 709-712.
3. Ubeda, C. et al., Specificity of staphylococcal phage and SaPI DNA packaging as revealed by integrase and terminase mutations. Molecular Microbiology, 2009. 72(1): p. 98-108.
4. Otsuji, N. et al., Induction of Phage Formation in the Lysogenic Escherichia coliK-12 by Mitomycin C. Nature, 1959. 184(4692): p. 1079-1080.
5. Brantl, S. (2007) Regulatory mechanisms employed by cis-encoded antisense RNAs. Curr. Opin. Microbiol. 10, 102-109.
6. Isaacs, F.J. et al. (2004) Engineered riboregulators enable post-transcriptional control of gene expression. Nat. Biotechnol. 22, 841-847.
7. Pfeiffer, V. et al. (2009) Coding sequence targeting by MicC RNA reveals bacterial mRNA silencing downstream of translational initiation. Nat. Struct. Mol. Biol. 16, 840-846.
8. Opdyke, J.A. et al. (2004) GadY, a small-RNA regulator of acid response genes in Escherichia coli. J. Bacteriol. 186, 6698-6705.
9. Carriere, C., et al., Conditionally replicating luciferase reporter phages: Improved sensitivity for rapid detection and assessment of drug susceptibility of Mycobacterium tuberculosis. Journal of Clinical Microbiology, 1997. 35(12): p. 3232-3239.
10. Merten, O.-W. and M. Al-Rubeai, Viral Vectors for Gene Therapy : Methods and Protocols. Methods in Molecular Biology. Vol. 737. 2011.
11. Lofdahl, S., J.E. Sjostrom, and L. Philipson, CLONING OF RESTRICTION FRAGMENTS OF DNA FROM STAPHYLOCOCCAL BACTERIOPHAGE-PHI-11. Journal of Virology, 1981. 37(2): p. 795-801.
12. Charpentier, E., et al., Novel Cassette-Based Shuttle Vector System for Gram-Positive Bacteria. Appl. Environ. Microbiol., 2004. 70(10): p. 6076-6085.
13. Novick, R.P., I. Edelman, and S. Lofdahl, Small staphylococcus-auerus plasmids are transduced as linear multimers that are formed and resolved by replicative processes. Journal of Molecular Biology, 1986. 192(2): p. 209-220.
14. Westwater, C., et al., Development of a P1 phagemid system for the delivery of DNA into Gram-negative bacteria. Microbiology, 2002. 148(4): p. 943-950.
15. Norris, J.U., et al., Tissue-Specific and Pathogen-Specific Toxic Agents and Ribozymes. 1999.
16. Maiques, E., et al., Role of Staphylococcal Phage and SaPI Integrase in Intra- and Interspecies SaPI Transfer. J. Bacteriol., 2007. 189(15): p. 5608-5616.
17. Frees, D., et al., Clp ATPases are required for stress tolerance, intracellular replication and biofilm formation in Staphylococcus aureus. Molecular Microbiology, 2004. 54(5): p. 1445-1462.
18. Arnaud, M., A. Chastanet, and M. Debarbouille, New Vector for Efficient Allelic Replacement in Naturally Nontransformable, Low-GC-Content, Gram-Positive Bacteria. Appl. Environ. Microbiol., 2004. 70(11): p. 6887-6891.
19. Tormo, M.A., et al., Staphylococcus aureus Pathogenicity Island DNA Is Packaged in Particles Composed of Phage Proteins. J. Bacteriol., 2008. 190(7): p. 2434-2440.
20. Arthur, M., et al., The VanS sensor negatively controls VanR-mediated transcriptional activation of glycopeptide resistance genes of Tn1546 and related elements in the absence of induction. J. Bacteriol., 1997. 179(1): p. 97-106.
21. Karlsson, S., et al., Expression of Clostridium difficile Toxins A and B and Their Sigma Factor TcdD Is Controlled by Temperature. Infect. Immun., 2003. 71(4): p. 1784-1793.
22. Daniel Sobek, J.R., Enzyme detection system with caged substrates, 2007, Zymera, Inc.
23. Samie Jaffrey, J.P., Coupled recognition/detection system for in vivo and in vitro use, 2010, Cornell University.
24. Good, L., Translation repression by antisense sequences. Cellular and Molecular Life Sciences, 2003. 60(5): p. 854-861.
25. Sabine, B., Antisense-RNA regulation and RNA interference. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Gene Structure and Expression, 2002. 1575(1-3): p. 15-25.
[1] 細菌細胞内への導入のための、レポーター核酸分子を非複製的形質導入粒子(NRTP)内にパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、破壊を包含する第一遺伝子を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該破壊が存在しない状態で、該第一遺伝子はパッケージング関連酵素活性の第一必須成分をコードし、且つ、第一パッケージング開始部位配列を含み、ここで、該パッケージング関連酵素活性は該第一パッケージング開始部位を認識し、ここで、該破壊は該必須パッケージング関連酵素活性による第一パッケージング開始部位配列の認識を妨げ、そしてここで、該破壊は必須パッケージング関連酵素活性のレベルを低減する、及び
レポーター遺伝子と、必須パッケージング関連酵素活性の第一成分をコードする第二遺伝子と、必須パッケージング関連酵素活性の第二成分をコードする第三遺伝子とを含むレポーター核酸分子、ここで、該第二遺伝子は破壊されていない第一パッケージング開始部位配列を含み、ここで、該第一パッケージング開始部位配列はNRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを促進するように構成されている、
を含む宿主細胞を含むパッケージングシステム。
[2] 前記バクテリオファージが、複数の破壊された遺伝子を含み、ここで、該破壊が存在しない状態で、それぞれがパッケージング関連酵素活性の必須成分をコードしている、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[3] 前記バクテリオファージ上の複数の破壊された遺伝子がそれぞれ、レポーター核酸分子によってコードされた機能し得る、破壊されていない遺伝子によって補完される、項目2に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[4] 前記破壊が、欠失、挿入、突然変異、又は置換による、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[5] 前記パッケージング関連酵素活性が、ターミナーゼ活性である、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[6] 前記第二遺伝子及び第三遺伝子が、それぞれターミナーゼ遺伝子である、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[7] 前記第二遺伝子がpacA遺伝子であり、且つここで、前記第三遺伝子がpacB遺伝子である、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[8] 前記レポーター核酸分子が配列番号1の配列を含む、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[9] 前記第二遺伝子がterA遺伝子であり、且つ、前記第三遺伝子がterB遺伝子である、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[10] 前記レポーター核酸分子が配列番号6の配列を含む、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[11] 前記第二遺伝子がterS遺伝子であり、且つここで、前記第三遺伝子がterL遺伝子である、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[12] 前記レポーター核酸分子が配列番号4の配列を含む、項目6に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[13] 前記第二遺伝子及び第三遺伝子が、条件付きプロモーターに作動可能に連結される、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[14] 前記条件付きプロモーターが配列番号9の配列を含む、項目13に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[15] 前記条件付きプロモーターが、バクテリオファージゲノムのターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである、項目13に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[16] 前記第二遺伝子又は第三遺伝子の発現が、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化の不存在下で阻害され、且つここで、該第二遺伝子又は第三遺伝子の発現が、バクテリオファージの溶菌サイクルの活性化時に活性化される、項目13に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[17] 前記第二遺伝子及び第三遺伝子が、バクテリオファージゲノムの天然のターミナーゼ遺伝子であり、ここで、前記条件付きプロモーターがターミナーゼ遺伝子の天然プロモーターである、項目13に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[18] 前記バクテリオファージゲノムがレポーター遺伝子を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[19] 前記バクテリオファージゲノムが抗生物質抵抗性遺伝子をさらに含む、項目18に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[20] 前記レポーター遺伝子が検出可能マーカー又は選択マーカーをコードする、項目18又は19に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[21] 前記レポーター遺伝子が:発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、rue、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)、親和性ペプチド(His-タグ、3X-FLAG)、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)から成る群から選択される、項目18又は19に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[22] 前記レポーター遺伝子がターミナーゼ遺伝子を破壊する、項目18又は19に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[23] 前記抗生物質抵抗性遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子である、項目19に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[24] 前記レポーター遺伝子が構成的プロモーターに作動可能に連結される、項目18又は19に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[25] 前記構成的プロモーターがPblastである、項目24に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[26] 前記破壊が、選択マーカーをコードする遺伝子を伴った第一パッケージング開始部位配列への挿入又は置換を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[27] 前記選択マーカーをコードする遺伝子が、構成的プロモーターに作動可能に連結される、項目26に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[28] 前記破壊が、検出可能マーカーをコードする遺伝子への第一パッケージング開始部位配列の挿入又は置換を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[29] 前記検出可能マーカーをコードする遺伝子が:luxA、luxB、及びluxABから成る群から選択される、項目28に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[30] 前記検出可能マーカーをコードする遺伝子が、構成的プロモーターに作動可能に連結される、項目28又は29に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[31] 前記構成的プロモーターがPblastである、項目30に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[32] 前記第一遺伝子が、pacA遺伝子部位を含み、且つここで、破壊はpacA遺伝子部位に挿入したluxAB遺伝子及びkan遺伝子を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[33] 前記バクテリオファージゲノムが配列番号12を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[34] 前記レポーター核酸分子が複製開始点を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[35] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが、非複製的形質導入粒子内へのパッケージングに適しているコンカテマーを含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[36] 前記破壊されていない第一パッケージング開始部位配列がコンカテマー接合部を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[37] 前記レプリコンが、腸内細菌科バクテリオファージP1溶菌レプリコンである、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[38] 前記レプリコンが、C1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[39] 前記レプリコンが配列番号2の配列を含む。、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[40] 前記レプリコンが、pBHR1レプリコン又はpBHR1レプリコンの誘導体である、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[41] 前記レプリコンが配列番号3の配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[42] 前記レポーター核酸分子が配列番号4の配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[43] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが、S.アウレウスpT181プラスミド複製開始点に由来する、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[44] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが配列番号5の配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[45] 前記レポーター核酸分子が、配列番号6の配列を含む配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[46] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが、エンテロコッカスrepBプラスミド複製開始点に由来する、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[47] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが配列番号7の配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[48] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが、エンテロコッカスpDL278プラスミド複製開始点に由来する、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[49] 前記核酸分子のレプリコンが配列番号8の配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[50] 前記破壊されていない第一パッケージング開始部位配列がpac部位を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[51] 前記破壊されていない第一パッケージング開始部位配列がcos部位を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[52] 前記バクテリオファージゲノムが腸内細菌科バクテリオファージP1を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[53] 前記バクテリオファージゲノムが、S.アウレウスバクテリオファージφ80α又はバクテリオファージφ11を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[54] 前記バクテリオファージゲノムが、E.フェカリスバクテリオファージpEF11を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[55] 前記細菌細胞がE.コリ細胞を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[56] 前記細菌細胞がS.アウレウス細胞を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[57] 前記細菌細胞がE.フェカリス細胞を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[58] 前記細菌細胞がグラム陰性細胞を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[59] 前記細菌細胞がグラム陽性細胞を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[60] 前記レポーター遺伝子が、検出可能マーカー又は選択マーカーをコードする、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[61] 前記レポーター遺伝子が、発光反応を媒介する酵素(luxA、luxB、luxAB、luc、rue、nluc)、比色反応を媒介する酵素(lacZ、HRP)、蛍光タンパク質(GFP、eGFP、YFP、RFP、CFP、BFP、mCherry、近赤外蛍光タンパク質)、親和性ペプチド(His-タグ、3X-FLAG)、及び選択マーカー(ampC、tet(M)、CAT、erm)から成る群から選択される、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[62] 前記レポーター核酸分子がアプタマーを含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[63] 前記レポーター核酸分子が、レポーター核酸分子中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[64] 前記核酸転写産物配列が、細胞転写産物に相補的である、項目63に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[65] 前記核酸性転写産物がcis-抑制配列を含む、項目63に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[66] 前記レポーター核酸分子が、プロモーターに作動可能に連結される、項目1に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[67] 前記プロモーターが、細菌細胞内のレポーター核酸分子から発現されるレポーター分子の反応性に寄与するように選択される、項目66に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[68] 前記レポーター核酸分子のレプリコンが、レポーター核酸分子のレプリカ中の第二配列に相補的な核酸転写産物配列を含む、項目1~67のいずれか1項に記載の細菌細胞パッケージングシステム。
[69] 非複製的形質導入内にレポーター核酸分子をパッケージする方法であって、項目1~68のいずれか1項に記載の細菌細胞パッケージングシステムに、バクテリオファージゲノムの溶解期を誘導する条件を提供して、レポーター核酸分子をパックした非複製的形質導入粒子を生成し;そしてレポーター核酸分子を含む非複製的形質導入粒子を回収すること、を含む方法。
[70] 前記非複製的形質導入粒子が、複製されたバクテリオファージゲノムを含まない、項目69に記載の方法。
[71] 前記非複製的形質導入粒子が、レポーター核酸分子での組み換えのためのバクテリオファージゲノムの一部を含み、ここで、該バクテリオファージゲノムの一部がレポーター遺伝子を含む、項目69に記載の方法。
[72] 項目69~71のいずれか1項に記載の方法によって精製されたレポーター核酸分子のレプリコンを含む非複製的形質導入粒子を含む組成物。
[73] 非複製的形質導入粒子内に核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、該細菌細胞が、第一パッケージング開始部位配列を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一パッケージング開始部位配列はレポーターをコードする遺伝子によって破壊され、及び非複製的形質導入粒子内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする第二パッケージング開始部位配列を含むレポーター核酸分子、ここで、該レポーター核酸分子は、非複製的形質導入粒子内にパッケージされるように構成されたレプリコンを形成する、を含む細菌細胞パッケージングシステム。
[74] 細胞内に導入するための非複製的形質導入粒子(NRTP)内にレポーター核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、第一ターミナーゼ遺伝子対を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一ターミナーゼ遺伝子対のうちの少なくとも1つを破壊し、破壊されたターミナーゼ遺伝子が機能しないようにし、及びレポーター遺伝子と、第一ターミナーゼ遺伝子対を補完する第二ターミナーゼ遺伝子対とを含むレポーター核酸分子、ここで、該第二ターミナーゼ遺伝子対のそれぞれに機能性があり、且つここで、該第二ターミナーゼ遺伝子対が、NRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする、を含む宿主細胞を含むパッケージングシステム。
[75] 細胞内に導入するための非複製的形質導入粒子(NRTP)内にレポーター核酸分子をパッケージングするための細菌細胞パッケージングシステムであって、第一ターミナーゼ遺伝子対を含むバクテリオファージゲノム、ここで、該第一ターミナーゼ遺伝子対のうちのたった1つを破壊し、破壊されたターミナーゼ遺伝子が機能しないようにし、及びレポーター遺伝子と、第一ターミナーゼ遺伝子を補完する第二ターミナーゼ遺伝子を含むレポーター核酸分子、ここで、該第二ターミナーゼ遺伝子に機能性があり、且つここで、該第二ターミナーゼ遺伝子が、NRTP内へのレポーター核酸分子のレプリコンのパッケージングを容易にする、を含む宿主細胞を含むパッケージングシステム。
【配列表フリーテキスト】
【0182】
>配列番号1 pacA及びpacB(太字:プロモーター、下線:pacA、書式なし:pacB)
【化1】
>配列番号2 C1リプレッサーにより制御されるP53プロモーター、プロモーターP53アンチセンス、repL遺伝子、及びkilA遺伝子のインフレーム欠失を含有するP1溶解性レプリコン
【化2】
>配列番号3 pBHR1 rep(太字:ORF)
【化3】
>配列番号4 φ80α terS及びterL遺伝子(太字:terS ORF、下線:terL ORF)
【化4】
>配列番号5 pT181
【化5-1】
【化5-2】
>配列番号6 Efl1 terA及びterB(太字:terA ORF、下線:terB ORF)
【化6】
>配列番号7 repB
【化7】
>配列番号8 pDL278
【化8】
>配列番号9 nisinプロモーター
【化9】
>配列番号10 kanR(書式なし:pacA遺伝子配列、下線:対立遺伝子交換基質内に含まれたpacA遺伝子配列、太字:kan遺伝子プロモーター、イタリック体:kan遺伝子)を用いたpac部位及びpacA遺伝子の破壊
【化10】
>配列番号11 Pblastプロモーター
【化11】
>配列番号12 kan遺伝子及びluxAB遺伝子を挿入したP1 pacA遺伝子座(小文字は天然配列である、大文字は挿入配列である)
【化12-1】
【化12-2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
0007085597000001.app