(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20220609BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20220609BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B21D28/02 C
H02K15/02 E
H01F41/02 B
(21)【出願番号】P 2020507198
(86)(22)【出願日】2018-03-21
(86)【国際出願番号】 JP2018011233
(87)【国際公開番号】W WO2019180856
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥平 博信
(72)【発明者】
【氏名】堀井 英朗
(72)【発明者】
【氏名】進藤 健一
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076970(JP,A)
【文献】特開2007-324455(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071943(WO,A1)
【文献】特開2001-321850(JP,A)
【文献】特開2002-151339(JP,A)
【文献】特開2009-124828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
H02K 15/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠移送される帯状薄鋼板から所定の形状に打抜き形成された鉄心薄板同士を接着剤によって接着し且つ積層してなる積層鉄心の製造装置であって、
前記帯状薄鋼板における前記鉄心薄板の外形の一部を打ち抜く第1のパンチ及び第1のダイと、
前記第1のパンチ及び前記第1のダイによる打ち抜きによって前記帯状薄鋼板に画定された部分を含む接着剤塗布領域に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記第1のパンチ及び前記第1のダイによって打ち抜かれた部分以外の前記鉄心薄板の外形を前記帯状薄鋼板から打ち抜く第2のパンチ及び第2のダイとを備え、前記第2のダイは前記第1のパンチ及び前記第1のダイによって打ち抜かれる前記鉄心薄板の前記外形の前記一部に対応する部位に、平面視で前記外形の前記一部との間に空隙を画定する凹部を備えている積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記接着剤塗布領域は前記鉄心薄板の外形の輪郭を含み、
前記第1のパンチ及び前記第1のダイは当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く請求項1に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項3】
前記第2のダイは前記第2のパンチの下方に配置され、
更に、前記第2のダイの下方に配置され、前記第2のパンチ及び前記第2のダイによって打ち抜かれた前記鉄心薄板を積層状態で保持するスクイズリングを備え、
前記スクイズリングは、前記鉄心薄板に対して前記第1のパンチ及び前記第1のダイによる外形打抜きに対応する部位に、前記鉄心薄板の外形との間に空隙を画定する凹部を含んでいる請求項1または2に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項5】
間欠移送される帯状薄鋼板から所定の形状に打抜き形成された鉄心薄板同士を接着剤によって接着し且つ積層してなる積層鉄心の製造方法であって、
前記帯状薄鋼板における前記鉄心薄板の外形の一部を金型によって打ち抜く第1の外形打抜き工程と、
前記第1の外形打抜き工程による打ち抜きによって前記帯状薄鋼板に画定された部分を含む接着剤塗布領域に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程後に、前記第1の外形打抜き工程によって打ち抜かれた部分以外の前記鉄心薄板の外形を金型によって前記帯状薄鋼板から打ち抜く第2の外形打抜き工程とを有する積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤塗布領域は前記鉄心薄板の外形の輪郭を含み、
第1の外形打抜き工程は当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く請求項5に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤塗布領域は第2の外形打抜き工程において前記鉄心薄板の外形の輪郭から外側にはみ出すものを含み、
第1の外形打抜き工程は当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く請求項5に記載の積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造装置及び製造方法に関し、更に詳細には、積層された複数の鉄心薄板を接着剤によって接着し且つ積層してなる積層鉄心の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子や回転子に用いられる積層鉄心として、間欠移送される帯状薄鋼板から、パンチとダイとによる複数の打抜き金型を含む順送り金型によって打ち抜かれた鉄心薄板を順次積層すると共に、隣り合う鉄心薄板同士を接着剤によって接着してなる積層鉄心が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許庁公開特許公報2001-321850
【文献】日本国特許庁公開特許公報2002-151339
【文献】日本国特許庁公開特許公報2009-124828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄心薄板同士を接着剤によって接着してなる積層鉄心では、安定した積層状態を確保するために、積層鉄心の外形の輪郭近くの領域まで接着層が存在することが好ましい。しかし、積層鉄心の外形の輪郭より外方に接着剤がはみ出すと、接着剤の塗布後に行われる積層鉄心の外形打抜きの金型に接着剤が付着し、金型に接着剤が固着したり、コンタミネーションの発生の原因になったりし、金型の正常な動作が損なわれる虞がある。
特に、環状のヨーク部から径方向に突出した磁極をなすティース部等の微細部分に接着層を設ける場合は、接着剤が微細部分の外形輪郭よりはみ出さないように、接着剤を微細部分に塗布することが難しく、微細部分に接着層を設けることに限界がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接着剤が積層鉄心の外形輪郭より外側にはみ出しても、外形打抜きの金型に接着剤が付着することがなく、接着剤による金型の汚染を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態による積層鉄心の製造装置は、間欠移送される帯状薄鋼板から所定の形状に打抜き形成された鉄心薄板同士を接着剤によって接着し且つ積層してなる積層鉄心の製造装置であって、前記帯状薄鋼板における前記鉄心薄板の外形の一部を打ち抜く第1のパンチ及び第1のダイと、前記第1のパンチ及び前記第1のダイによる打ち抜きによって前記帯状薄鋼板に画定された部分を含む接着剤塗布領域に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、前記第1のパンチ及び前記第1のダイによって打ち抜かれた部分以外の前記鉄心薄板の外形を前記帯状薄鋼板から打ち抜く第2のパンチ及び第2のダイとを備えている。
【0007】
この構成によれば、接着剤が積層鉄心の外形輪郭より外側にはみ出しても、第2のダイに接着剤が付着することが回避され、第2のダイが接着剤によって汚染されることがない。この汚染回避の作用は、接着剤のはみ出しが接着剤の塗布工程において生じたものと第2のパンチ及び第2のダイによる外形打抜きの工程において生じたものとの何れにおいても得られる。
【0008】
上記積層鉄心の製造装置において、前記接着剤塗布領域は前記鉄心薄板の外形の輪郭を含み、前記第1のパンチ及び前記第1のダイは当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く。
【0009】
この構成によれば、接着剤塗布領域は前記鉄心薄板の外形の輪郭を含んでいても、第2のダイに接着剤が付着することが回避され、第2のダイが接着剤によって汚染されることがない。
【0010】
上記積層鉄心の製造装置において、好ましくは、前記第2のダイは前記第2のパンチの下方に配置され、更に、前記第2のダイの下方に配置され、前記第2のパンチ及び前記第2のダイによって打ち抜かれた前記鉄心薄板を積層状態で保持するスクイズリングを備え、前記スクイズリングは、前記鉄心薄板に対して前記第1のパンチ及び前記第1のダイによる外形打抜きに対応する部位に、前記鉄心薄板の外形との間に空隙を画定する凹部を含んでいる。
【0011】
この構成によれば、スクイズリングに接着剤が付着することが回避され、スクイズリングが接着剤によって汚染されることがない。
【0012】
上記積層鉄心の製造装置において、好ましくは、前記帯状薄鋼板の上面に当接してストリップ作用を行うストリッパプレートを更に備え、前記ストリッパプレートは、前記帯状薄鋼板の前記接着剤塗布領域に対応する位置に凹部を含む。
【0013】
この構成によれば、ストリッパプレートに接着剤が付着することが回避され、ストリッパプレートが接着剤によって汚染されることがない。
【0014】
本発明の一つの実施形態による積層鉄心の製造方法は、間欠移送される帯状薄鋼板から所定の形状に打抜き形成された鉄心薄板同士を接着剤によって接着し且つ積層してなる積層鉄心の製造方法であって、前記帯状薄鋼板における前記鉄心薄板の外形の一部を金型によって打ち抜く第1の外形打抜き工程と、前記第1の外形打抜き工程による打ち抜きによって前記帯状薄鋼板に画定された部分を含む接着剤塗布領域に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程後に、前記第1の外形打抜き工程によって打ち抜かれた部分以外の前記鉄心薄板の外形を金型によって前記帯状薄鋼板から打ち抜く第2の外形打抜き工程とを有する。
【0015】
この製造方法によれば、接着剤が積層鉄心の外形輪郭より外側にはみ出しても、第2の外形打抜き工程の金型が接着剤によって汚染されることがない。
【0016】
本発明の一つの実施形態による積層鉄心の製造方法において、前記接着剤塗布領域は前記鉄心薄板の外形の輪郭を含み、前記第1の外形打抜き工程は当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く。
【0017】
この製造方法によれば、接着剤塗布領域が鉄心薄板の外形の輪郭を含んでいても、第2の外形打抜き工程の金型が接着剤によって汚染されることがない。
【0018】
本発明の一つの実施形態による積層鉄心の製造方法において、前記接着剤塗布領域は第2の外形打抜き工程において前記鉄心薄板の外形の輪郭から外側にはみ出すものを含み、
第1の外形打抜き工程は当該接着剤塗布領域に隣接する部分の前記鉄心薄板の外形を打ち抜く。
【0019】
この製造方法によれば、第2の外形打抜き工程において接着剤が積層鉄心の外形輪郭より外側にはみ出ることが生じても、第2の外形打抜き工程の金型が接着剤によって汚染されることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明による積層鉄心の製造装置及び製造方法によれば、接着剤が積層鉄心の外形輪郭より外側にはみ出しても、外形打抜きの金型に接着剤が付着することがなく、接着剤による金型の汚染が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による製造装置によって製造される積層鉄心の一実施形態を示す斜視図
【
図2】本発明による積層鉄心の製造装置の一実施形態を示す断面図
【
図3】分割コア片における接着剤塗布領域の設定例を示す平面図
【
図4】本実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図5】本実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図6】本実施形態による製造装置に用いられるスクイズリングの平面図
【
図7】本実施形態による製造装置に用いられる接着剤塗布装置の断面図
【
図9】分割コア片における接着剤塗布領域の設定例を示す平面図
【
図10】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図11】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図12】本発明による製造装置によって製造される分割コア片の他の実施形態を示す平面図
【
図13】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図14】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図15】本発明による製造装置によって製造される鉄心薄板の他の実施形態を示す平面図
【
図16】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図17】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図18】積層鉄心における接着剤塗布領域の設定例を示す平面図
【
図19】本発明による製造装置によって製造される鉄心薄板の他の実施形態を示す平面図
【
図20】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図21】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図22】本発明による製造装置によって製造される鉄心薄板の他の実施形態を示す平面図
【
図23】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図24】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【
図25】本発明による製造装置によって製造される鉄心薄板の他の実施形態を示す平面図
【
図26】他の実施形態による積層鉄心の製造工程を示す説明図
【
図27】他の実施形態による製造装置に用いられる第2の外形打抜き用ダイの平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る好適な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0023】
先ず、本実施形態による積層鉄心の製造装置及び製造方法によって製造される積層鉄心の一つの実施形態を、
図1(A)、(B)を参照して説明する。
【0024】
図1(A)に示されているように、本実施形態の積層鉄心10は、固定子用のものであり、複数の分割コア片12の組み合わせによって構成される。各分割コア片12は、円弧状のヨーク部14と、ヨーク部14の中間部から径方向内方に延出したティース部16とを含み、略T字形をしている。
【0025】
各ヨーク部14の一端には凸部14Aが形成され、各ヨーク部14の他端には隣り合うヨーク部14の凸部14Aに嵌合する凹部14Bが形成されている。
図1(B)に示されているように、凸部14Aと凹部14Bとの嵌合によって隣り合うヨーク部14が互いに結合されることにより、複数のヨーク部14によって円環状ヨーク部が形成される。
【0026】
各ティース部16は、径方向に延在して巻線される径方向延在部16A及び径方向延在部16Aの先端の両側から各々周方向に延出した周方向延在部16Bを含む。
【0027】
次に、本実施形態による積層鉄心の製造装置及び製造方法を、
図2~
図5を参照して説明する。
【0028】
図2に示されているように、製造装置20は、順送り金型方式によるものであり、パイロット孔打抜きステーションIと、第1の外形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、接着剤塗布ステーションIVと、アイドルステーションVと、第2の外形打抜きステーションVIとを順送り方向に順に有し、帯状薄鋼板(以下、フープ材と云う)Fの順送り方向の間欠移送のもとに、アイドルステーションIII、V以外の各ステーションI、II、IV、VIにおいて各工程が実行される。アイドルステーションIII、Vでは、フープ材Fの空送りが行われる。
【0029】
製造装置20は、プレス機械の上部ラム(不図示)の下面に固定される平板状の上型ホルダ22と、同プレス機械の下部テーブル(不図示)の上面に上型ホルダ22と正対して固定される平板状の下型ホルダ24とを有する。
【0030】
上型ホルダ22の下部には、バッキングプレート26及びパンチプレート28によって、各ステーションI、II、VIに対応する位置に、パイロット孔打抜き用パンチ30と、第1の外形打抜き用パンチ(第1のパンチ)32と、第2の外形打抜き用パンチ(第2のパンチ)34とが取り付けられている。
【0031】
上型ホルダ22の下方には平板状のストリッパプレート36が吊下げボルト(不図示)によって上下方向に変位可能に取り付けられている。ストリッパプレート36は、フープ材Fの上面に当接してストリップ作用を行うものであり、各パンチ30、32、34が貫通するパンチ孔38、40、42を含む。
【0032】
下型ホルダ24の上面には平板状のダイプレート44が取り付けられている。ダイプレート44には、各打抜きステーションI、II、VIに対応する位置に、パイロット孔打抜き用ダイ46と、第1の外形打抜き用ダイ(第1のダイ)48と、第2の外形打抜き用ダイ(第2のダイ)50が取り付けられている。
【0033】
パイロット孔打抜き用パンチ30とパイロット孔打抜き用ダイ46、第1の外形打抜き用パンチ32と第1の外形打抜き用ダイ48、第2の外形打抜き用パンチ34と第2の外形打抜き用ダイ50とは、各々対応し、各々金型セットをなしている。
【0034】
下型ホルダ24には第2の外形打抜き用ダイ50と同心位置にスクイズリング52が取り付けられている。スクイズリング52は、第2の外形打抜き用ダイ50のダイ孔51に連続するスクイズ孔53を含み、フープ材Fから打ち抜かれた分割コア片12をスクイズ孔53内に上下に積層状態で保持する。
【0035】
ダイプレート44の接着剤塗布ステーションIVに対応する位置には接着剤塗布装置60が設けられている。接着剤塗布装置60は、転写式のものであり、塗布台62及びカム機構64を含む。カム機構64は、駆動装置66によって駆動され、塗布台62を上昇位置と降下位置との間に移動させる。塗布台62は、上昇位置にある場合に、分割コア片12の積層枚数を設定する計量時を除いた1回のプレス動作毎に接着剤B(
図4参照)をフープ材Fの下面の複数箇所に設定された各接着剤塗布領域Eに転写(塗布)する。
【0036】
各接着剤塗布領域Eは、
図3に示されているように、丸形で、フープ材Fから打抜き形成された分割コア片12について見れば、ヨーク部14に3箇所、径方向延在部16Aに2箇所、周方向延在部16Bの先端部に2箇所設定されている。周方向延在部16Bの各接着剤塗布領域Eは、周方向延在部16Bの先端部分の外形輪郭を含み、更に当該外形輪郭より外方にはみ出した部分を含む。このように外形輪郭を含む接着剤塗布領域Eは、以降、接着剤塗布領域Exとする。
【0037】
パイロット孔打抜きステーションIでは、パイロット孔打抜き用パンチ30とパイロット孔打抜き用ダイ46とによって、1回のプレス動作毎、換言するとフープ材Fの1回の間欠移送毎に、
図4に示されているように、フープ材Fにパイロット孔Pを打ち抜くことが行われる。パイロット孔Pはフープ材Fの間欠移送方向(順送り方向)の両側(左右両側)の縁部近傍に各々に設けられる。
【0038】
第1の外形打抜きステーションIIでは、第1の外形打抜き工程として、第1の外形打抜き用パンチ32と第1の外形打抜き用ダイ48とによってフープ材Fの1回の間欠移送毎に、周方向延在部16B及びその近傍の径方向延在部16Aに相当する部分の外側が、
図4に示されている形状をもって打ち抜かれ、フープ材Fに周方向延在部16B及びその近傍の径方向延在部16Aの外形C1に相当する部分が形成される。
【0039】
この打ち抜きによって、フープ材Fには、接着剤塗布工程前に、周方向延在部16B及びその近傍の径方向延在部16Aに相当する部分の外側に空隙Sが形成される。尚、この打ち抜きは、ティース部16が上下にふらつかないように、周方向延在部16Bとフープ材Fとの繋ぐ幅細のブリッジ部Mを残して行われる。
【0040】
接着剤塗布ステーションIVでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域E、Exに接着剤Bを略円形に転写することが行われる。周方向延在部16Bの接着剤塗布領域Exは、周方向延在部16Bの外形輪郭より外方にはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙Sに位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVに示されているように、はみ出した部分には行われず、周方向延在部16Bの外形輪郭を含む領域に行われることになる。これ以外の各接着剤塗布領域Eに対する接着剤Bの転写は、各接着剤塗布領域Eと略同一形状に行われる。尚、
図4は、接着剤塗布領域Eが分かるように、フープ材Fの下面を示している。
【0041】
尚、所定回数の間欠移送毎に生じる鉄心薄板(分割コア片12)の積層枚数を設定する計量時には、接着剤塗布装置60が降下位置に降下することにより、フープ材Fに対する接着剤Bの転写は休止になる。
【0042】
第2の外形打抜きステーションVIでは、第2の外形打抜き工程として、第2の外形打抜き用パンチ34と第2の外形打抜き用ダイ50とによって、
図4に示されているように、外形C1以外のブリッジ部Mの部分を含む分割コア片12の外形C2の全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから分割コア片12が切り離される。
【0043】
第2の外形打抜き用ダイ50は、上下に貫通するダイ孔51を有し、ダイ孔51の外縁を画定する部位に、
図5に示されているように、平面視で、分割コア片12の外形C1以外の部分の外形C2と同一形状の刃部50Aと、外形C1の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)50Bと、ダイ孔51に突出してブリッジ部Mの切断を行う刃部50Cとを備えている。
【0044】
第2の外形打抜き用パンチ34及び第2の外形打抜き用ダイ50は外形C1を除く分割コア片12の外形C2を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ50が外形C1に対応する部分は凹部50Bによる空隙Sによって外形C1から離れている。
【0045】
これにより、周方向延在部16Bの接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C1の部分の端面に付着したり、周方向延在部16Bの外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ50に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ50が接着剤Bによって汚染することがない。
【0046】
ストリッパプレート36の下面には、
図2に示されているように、接着剤塗布領域Exに対応する位置、換言すると、周方向延在部16Bに対する接着剤Bの転写部分に対応する位置に、凹部36Aが形成されている。凹部36Aは、周方向延在部16Bに転写された接着剤Bが周方向延在部16Bの端面に付着したり、周方向延在部16Bの外縁の外方にはみ出したりしても、その接着剤Bがストリッパプレート36の下面に付着することを回避するための逃げ空隙を画定する。これにより、ストリッパプレート36が接着剤Bによって汚染することがない。尚、凹部36Aと同等の作用を行う凹部は、ストリッパプレート36のアイドルステーションVに対応する下面や、第2の外形打抜き用パンチ34の先端面に形成されていてもよい。
【0047】
フープ材Fから切り離された分割コア片12は、ダイ孔51内を降下してスクイズリング52のスクイズ孔53内に進入する。
【0048】
スクイズリング52は、上下に貫通するスクイズ孔53を有し、スクイズ孔53の外縁を画定する部位に、
図6に示されているように、平面視で、ダイ孔51と略同一形状であって分割コア片12の外形C2の部分の形状より僅かに小さい形状の分割コア片保持部52Aと、第1の外形打抜き用パンチ32と第1の外形打抜き用ダイ48とによって打ち抜かれた空隙Sの位置に設定され且つ空隙Sと略同一形状の凹部52Bと、分割コア片12の外形C1に当接する突起52Cとを備えている。
【0049】
スクイズリング52は分割コア片保持部52Aによって分割コア片12をスクイズ孔53内に保持する。スクイズ孔53に対して次々に分割コア片12が進入することにより、上下に隣り合う分割コア片12同士が押し付けられて積層される。
【0050】
隣り合う分割コア片12同士が押し付けられることにより、各接着剤塗布領域E、Exに転写された接着剤Bは、
図4の外形打抜きステーションVIに示されているように、押し広げられて所定厚さの接着層を形成する。これにより、周方向延在部16Bでは、その全面に亘って接着剤Bによる接着層が形成され、小さい周方向延在部16Bにおいても、強い接着強度が得られる。
【0051】
スクイズリング52に凹部52Bが形成されていることにより、外形C1に対応する部分は凹部52Bによって外形C1から離れている。これにより、周方向延在部16Bに転写された接着剤Bが周方向延在部16Bの外縁からその部分の端面に付着したり、外縁の外方にはみ出したりしても、その接着剤Bがスクイズリング52に付着することがなく、回避され、スクイズリング52が接着剤Bによって汚染することがない。
【0052】
突起52Cが分割コア片12の外形C1に当接していることにより、凹部52Bによって外形C1に対応する部分がスクイズリング52から離れていても、周方向延在部16Bがスクイズ孔53内において上下にふらつくことがない。
【0053】
分割コア片12の積層体は、スクイズ孔53の下端から外部に取り出され、必要に応じて接着剤の加熱硬化のための後処理工程が実施される。
【0054】
次に、接着剤塗布装置60の詳細を、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0055】
接着剤塗布装置60の塗布台62は、上部ブロック62Aと下部ブロック62Bとの連結体によって構成され、下型ホルダ24及びダイプレート44に形成された保持孔68に上下動可能に挿入されている。
【0056】
塗布台62の下部にはカム機構64が設けられている。カム機構64は、下部ブロック62Bの下部に固定された板カムによる固定カム74と、下部ブロック62Bの下部に
図7で見て左右方向に移動可能に設けられた板カムによる移動カム76とを含む。移動カム76は駆動装置66に連結され、駆動装置66によって
図7で見て左右方向に往復駆動される。固定カム74は下面に鋸歯山部74Aと鋸歯谷部74Bとを左右方向に交互に有した鋸歯形状部を含み、移動カム76は上面に鋸歯山部76Aと鋸歯谷部76Bとを交互に有した鋸歯形状部を含む。
【0057】
図7に示されているように、固定カム74の鋸歯山部74Aと移動カム76の鋸歯山部76Aとが整合する位置に移動カム76がある時には、塗布台62は上昇位置(転写位置)に位置する。上昇位置(転写位置)では、
図8に示されているように、上部ブロック62Aの上面62Cはダイプレート44の上面44Aより段差αだけ下方に位置する。
【0058】
移動カム76が駆動装置66によって
図7で見て左側に駆動され、固定カム74の鋸歯谷部74Bと移動カム76の鋸歯山部76Aとが互いに整合する位置に移動カム76が位置すると、塗布台62及び固定カム74が降下(下方へ退避)し、塗布台62が降下位置に位置する。降下位置(非転写位置)では、上部ブロック62Aの上面62Cはダイプレート44の上面44Aに対して段差αを超えた大きい段差をもって下方に位置する。
【0059】
上部ブロック62Aには、接着剤溜まり部78と、接着剤溜まり部78から上部ブロック62Aの水平な上面62Cまで上下方向(垂直方向)に延在して上面62Cに開口した丸孔による複数の吐出孔80とが形成されている。各吐出孔80は接着剤塗布ステーションIVに位置するフープ材Fの各接着剤塗布領域Eに個別に対応する位置に配置されている。
【0060】
上部ブロック62A内には内部ブロック82が取り付けられている。内部ブロック82及び下部ブロック62Bには接着剤溜まり部78に接着剤を供給する複数の接着剤供給通路84、86が形成されている。接着剤供給通路86には可撓性を有する接着剤供給チューブ88が接続されている。接着剤供給チューブ88は接着剤供給装置90に接続されている。接着剤供給装置90は、接着剤を所定圧力に加圧し、加圧した接着剤Bを所定流量をもって接着剤供給チューブ88及び接着剤供給通路86、84を介して接着剤溜まり部78に供給する。これにより、各吐出孔80には接着剤溜まり部78から接着剤Bが常時所定圧力をもって供給される。
【0061】
尚、本実施形態では、接着剤溜まり部78に接着剤Bを供給する接着剤供給通路84、86が複数設けられているが、これらの個数、供給位置は、接着剤溜まり部78の全域に亘って接着剤の圧力を適正な圧力に保つために必要な接着剤の供給量を確保するのに必要な個数、供給位置であればよい。
【0062】
接着剤溜まり部78の接着剤Bは各吐出孔80から塗布台62の上方に向けて吐出される。接着剤溜まり部78における接着剤Bの圧力が所定値に保たれ、且つ接着剤Bが所定の粘性を有することにより、各吐出孔80から外部に吐出した接着剤Bは、
図8に示されているように、上部ブロック62Aの上面62Cの上方に略半球状に盛り上がった盛上部Nを常時形成する。盛上部Nの高さが段差αより少し大きいことにより、塗布台62が上昇位置(転写位置)にあり、フープ材Fの下面がダイプレート44の上面44Aに接触する位置にフープ材Fが降下する時に、フープ材Fの下面に各吐出孔80における接着剤Bの盛上部Nが接触し、各接着剤塗布領域Eに対して接着剤Bが略円形に転写される。
【0063】
各接着剤塗布領域Eに対する接着剤Bの転写量は、段差α及び盛上部Nの大きさ(体積)によって制御することができる。盛上部Nの大きさは、接着剤溜まり部78における接着剤Bの圧力、接着剤Bの粘度、吐出孔80の内径等によって定量的に決まるから、これらの諸元の最適設定によって各接着剤塗布領域Eに対する接着剤Bの転写量を最適値に設定することができる。
【0064】
このような吐出孔80が用いられた転写式の接着剤の塗布では、隣り合う吐出孔80のピッチを管体によるノズル方式のものより小さくすることができ、隣り合う接着剤塗布領域Eのピッチを小さくすることができる。これにより、ティース部16が小さくても、ティース部16の複数箇所に接着剤塗布領域Eを設定することができる。このことは、複数の分割コア片12の積層接着において、ティース部16の接着強度を向上することに寄与する。
【0065】
塗布台62が降下位置(非転写位置)にある時には、上部ブロック62Aの上面62Cがダイプレート44の上面44Aに対して段差αを超えた大きい段差をもって下方に位置するから、規定された大きさの接着剤Bの盛上部Nがフープ材Fの下面に接触することがなく、フープ材Fの下面に接着剤Bが転写されることがない。したがって、分割コア片12の積層枚数を設定する計量時には、塗布台62が降下位置に移動すればよい。
【0066】
分割コア片12の接着剤塗布領域E、Exの形状は、
図9(A)~(J)に示されているように、分割コア片12の形状に合ったT字形、その他、長円形、楕円形等であってもよい。また、接着剤塗布領域E、Exの配置も、
図9(A)~(J)に示されているように、種々の配置が可能である。
【0067】
図9(D)に示されている分割コア片12の接着剤塗布領域Eaは外形輪郭を含まず、接着剤塗布において接着剤塗布領域Eaの接着剤Bが外形輪郭より外側にはみ出すことはないが、第2の外形打ち抜きステーションVIにおいて、第2の外形打抜き用パンチ34の当接によって接着剤塗布領域Eaの接着剤Bが外形輪郭より外側にはみ出すことがある。
【0068】
このような場合も、上述の第1の外形打ち行程が設けられることにより、第2の外形打抜き用ダイ50に接着剤Bが付着することが回避され、上述の実施形態と同様に、第2の外形打抜き用ダイ50が接着剤Bによって汚染されることがない。
【0069】
次に、
図9(H)に示されているように接着剤塗布領域E、Exの形状及び配置が設定された分割コア片12の製造工程を、
図10を参照して説明する。
【0070】
この実施形態では、分割コア片12の外形輪郭を含む接着剤塗布領域Exが、周方向延在部16Bの先端部に加えて、ヨーク部14の凸部14A及び凹部14Bにも設定されている。
【0071】
このことに応じて、第1の外形打抜きステーションIIにおける第1の外形打抜き工程は、フープ材Fに周方向延在部16B及びその近傍の径方向延在部16Aの外形C1に相当する部分を打ち抜くことに加えて、凸部14Aの外形C3及び凹部14Bの外形C4に相当する部分を打ち抜くことが行われる。
【0072】
この打ち抜きによって、フープ材Fには、接着剤塗布工程前に、周方向延在部16B及びその近傍の径方向延在部16Aに相当する部分の外側に空隙Sが形成されると共に、凸部14A及び凹部14Bに相当する部分の外側にも空隙Sが形成される。
【0073】
この実施形態での第2の外形打抜き用ダイ50は、
図11に示されているように、ダイ孔51の外縁を画定する部位に、平面視で、分割コア片12の外形C1、C3及びC4以外の外形輪郭の形状と同一形状の刃部50Aと、外形C1の外側の空隙Sに対応する位置に設定された凹部(非刃部)50Bと、ダイ孔51に突出してブリッジ部Mの切断を行う刃部50Cと、外形C3の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)50Dと、外形C4の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)50Eとを備えている。
【0074】
第2の外形打抜き用パンチ34及び第2の外形打抜き用ダイ50は外形C1、C3及びC4を除く分割コア片12の外形C2を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ50が外形C1、C3及びC4に対応する部分は各々凹部50B、50D、50Eによる空隙Sによって外形C1、C3或いはC4から離れている。
【0075】
これにより、この実施形態でも、周方向延在部16Bの接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C1、C3、C4の部分の端面に付着したり、周方向延在部16B、凸部14A、凹部14Bの外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ50に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ50が接着剤Bによって汚染することがない。
【0076】
次に、
図12に示されているように、接着剤塗布領域Exの形状及び配置が設定された分割コア片12の製造工程を、
図13を参照して説明する。
【0077】
図12に示されている分割コア片12はヨーク部14の周方向の2箇所にスリット状の開口14Cを有する。各開口14Cとヨーク部14の外縁との間に、分割コア片12の外形輪郭及び開口14Cの開口縁を含む接着剤塗布領域Exが設定されている。
【0078】
図13に示されているように、第1の外形打抜きステーションIIでは、第1の外形打抜き工程として、2個の開口14C及びヨーク部14の各接着剤塗布領域Ex部分の外縁の外側をスリット状に打ち抜かれ、フープ材Fにヨーク部14の各接着剤塗布領域Ex部分の外形C5に相当する部分が形成される。この打ち抜きによってフープ材Fにはヨーク部14の外側に各接着剤塗布領域Exに対応して空隙Sが形成される。
【0079】
接着剤塗布ステーションIVでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域Exに接着剤Bを略円形に転写が行われる。接着剤塗布領域Exはヨーク部14の外形輪郭より外方及び開口14Cにはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙S或いは開口14Cに位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVに示されているように、はみ出した部分には行われず、各開口14Cとヨーク部14の外縁との間の部位に行われる。
【0080】
第2の外形打抜きステーションVIでは、第2の外形打抜き工程として、外形C5以外の分割コア片12の外形C6の全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから分割コア片12が切り離される。
【0081】
第2の外形打抜き工程で用いられる第2の外形打抜き用ダイ50は、
図14に示されているように、ダイ孔51の外縁を画定する部位に、平面視で、分割コア片12の外形C5以外の部分の外形C6と同一形状の刃部50Fと、外形C5の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)50Gとを備えている。
【0082】
第2の外形打抜き用パンチ34及び第2の外形打抜き用ダイ50は外形C5を除く分割コア片12の外形C6を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ50が外形C5に対応する部分は凹部50Gによる空隙Sによって外形C5から離れている。
【0083】
これにより、ヨーク部14の接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C5の部分の端面に付着したり、ヨーク部14の外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ50に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ50が接着剤Bによって汚染することがない。
【0084】
次に、
図15に示されているように、接着剤塗布領域Exの形状及び配置が設定された回転子用の鉄心薄板100の製造工程を、
図16を参照して説明する。
【0085】
鉄心薄板100は、
図15に示されているように、中心孔102を有する中心部104と、中心部104から径方向外方に4個の突極部106と、各突極部106の先端から周方向に円弧状に延在する磁極部108とを有し、各磁極部108の先端に接着剤塗布領域Exが設定されている。
【0086】
本実施形態では、
図16に示されているように、パイロット孔打抜きステーションIと、内形・第1の外形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、接着剤塗布ステーションIVと、アイドルステーションVと、第2の外形打抜きステーションVIとが順送り方向に順に設けられている。
【0087】
内形・第1の外形打抜きステーションIIでは、中心孔102と各突極部106及び各磁極部108の内形の打ち抜きと、第1の外形打抜き工程として、各磁極部108の外縁の外側をスリット状に打ち抜いて各磁極部108の接着剤塗布領域Ex部分の外形C7に相当する部分を形成することが行われる。この打ち抜きによってフープ材Fには各磁極部108の外側に各接着剤塗布領域Exに対応して空隙Sが形成される。
【0088】
接着剤塗布ステーションIVでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域Exに接着剤Bを略円形に転写することが行われる。接着剤塗布領域Exは磁極部108の外形輪郭より外方にはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙S或いは磁極部108の内方の内形打抜き部(空隙)に位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVに示されているように、はみ出した部分には行われず、各磁極部108に行われる。
【0089】
第2の外形打抜きステーションVIでは、第2の外形打抜き工程として、外形C7以外の鉄心薄板100の外形C8の全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから鉄心薄板100が切り離される。
【0090】
第2の外形打抜き工程で用いられる第2の外形打抜き用ダイ110は、
図17に示されているように、ダイ孔111の外縁を画定する部位に、平面視で、鉄心薄板100の外形C8と同一形状の刃部110Aと、外形C7の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)110Bとを備えている。
【0091】
第2の外形打抜き用ダイ110は外形C7を除く鉄心薄板100の外形C8を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ110が外形C7に対応する部分は凹部110Bによる空隙Sによって外形C7から離れている。
【0092】
これにより、各磁極部108の接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C7の部分の端面に付着したり、磁極部108の外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ110に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ110が接着剤Bによって汚染することがない。
【0093】
鉄心薄板100の接着剤塗布領域E、Exの形状は、
図18(A)、(B)に示されているように、円形以外の長円形等であってもよい。また、接着剤塗布領域Eの配置も、
図18(A)、(B)に示されているように、種々の配置が可能である。
【0094】
次に、
図19に示されているように、接着剤塗布領域Exの形状及び配置が設定された円環形の鉄心薄板120の製造工程を、
図20を参照して説明する。
【0095】
鉄心薄板120は、
図19に示されているように、円環形状をしていて、周方向の複数箇所に接着剤塗布領域Exが設定されている。
【0096】
本実施形態では、
図20に示されているように、パイロット孔打抜きステーションIと、第1の外形打抜きステーションIIと、アイドルステーションIIIと、内形打抜きステーションIVと、アイドルステーションVと、接着剤塗布ステーションVIと、アイドルステーションVIIと、第2の外形打抜きステーションVIIIとが順送り方向に順に設けられている。
【0097】
第1の外形打抜きステーションIIでは、第1の外形打抜き工程として、各接着剤塗布領域Exに対応する部分の外側を略矩形に打ち抜いて各接着剤塗布領域Ex部分の外形C9に相当する部分を形成することが行われる。
【0098】
この打ち抜きによって、フープ材Fには、接着剤塗布工程前に、鉄心薄板120に相当する部分の外側に各接着剤塗布領域Exに対応して空隙Sが形成される。
【0099】
内形打抜きステーションIVでは、鉄心薄板120の内形120Aを打ち抜くことが行われる。
【0100】
接着剤塗布ステーションVIでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域Exに接着剤Bを略円形に転写が行われる。接着剤塗布領域Exは鉄心薄板120の外形輪郭及び内形輪郭より外方にはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙S或いは鉄心薄板120の内形部(空隙)に位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVIIに示されているように、はみ出した部分には行われず、鉄心薄板120に行われる。
【0101】
第2の外形打抜きステーションVIIIでは、第2の外形打抜き工程として、外形C9以外の鉄心薄板120の外形C10全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから鉄心薄板120が切り離される。
【0102】
第2の外形打抜き工程で用いられる第2の外形打抜き用ダイ130は、
図21に示されているように、ダイ孔131の外縁を画定する部位に、平面視で、鉄心薄板120の外形C10と同一形状の刃部130Aと、外形C9の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)130Bとを備えている。
【0103】
第2の外形打抜き用ダイ130は外形C9を除く鉄心薄板120の外形C10を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ130が外形C9に対応する部分は凹部130Bによる空隙Sによって外形C9から離れている。
【0104】
これにより、接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C9の部分の端面に付着したり、鉄心薄板120の外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ130に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ130が接着剤Bによって汚染することがない。
【0105】
次に、
図22に示されているように、接着剤塗布領域Exの形状及び配置が設定された円環形の鉄心薄板140の製造工程を、
図23を参照して説明する。
【0106】
鉄心薄板140は、
図22に示されているように、円環形状の主部140A及び主部140Aの複数箇所から外方の突出した半円形の突部140Bを有し、各突部140Bに貫通孔142が形成されている。各突部140Bに接着剤塗布領域Exが設定されている。
【0107】
本実施形態では、
図23に示されているように、パイロット孔打抜きステーションIと、貫通孔打抜きステーションIIと、内形打抜きステーションIIIと、第1の外形打抜きステーションIVと、アイドルステーションVと、接着剤塗布ステーションVIと、アイドルステーションVIIと、第2の外形打抜きステーションVIIIとが順送り方向に順に設けられている。
【0108】
貫通孔打抜きステーションIIでは、貫通孔142を打ち抜くことが行われる。
【0109】
内形打抜きステーションIIIでは、鉄心薄板140の内形140Cを打ち抜くことが行われる。
【0110】
第1の外形打抜きステーションIVでは、第1の外形打抜き工程として、各接着剤塗布領域Exに対応する部分、換言すると、突部140Bの外側を取り囲む形状に打ち抜いて各接着剤塗布領域Ex部分の外形C11に相当する部分を形成することが行われる。
【0111】
この打ち抜きによって、フープ材Fには、接着剤塗布工程前に、鉄心薄板140に相当する部分の外側に各接着剤塗布領域Exに対応して空隙Sが形成される。
【0112】
接着剤塗布ステーションVIでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域Exに接着剤Bを略円形に転写することが行われる。接着剤塗布領域Exは突部140Bの外形輪郭より外方にはみ出した部分及び貫通孔142のはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙S或いは貫通孔142(空隙)に位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVIIに示されているように、はみ出した部分には行われず、突部140Bに行われる。
【0113】
第2の外形打抜きステーションVIIIでは、第2の外形打抜き工程として、外形C11以外の鉄心薄板140の外形C12全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから鉄心薄板140が切り離される。
【0114】
第2の外形打抜き工程で用いられる第2の外形打抜き用ダイ150は、
図24に示されているようにダイ孔151の外縁を画定する部位に、平面視で、鉄心薄板140の外形C12と同一形状の刃部150Aと、外形C11の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)150Bとを備えている。
【0115】
第2の外形打抜き用ダイ150は外形C11を除く鉄心薄板140の外形C12を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ150が外形C11に対応する部分は凹部150Bによる空隙Sによって外形C11から離れている。
【0116】
これにより、接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C11の部分の端面に付着したり、突部140Bの外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ150に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ150が接着剤Bによって汚染することがない。
【0117】
次に、
図25に示されているように、接着剤塗布領域Exの形状及び配置が設定された円環形の鉄心薄板160の製造工程を、
図26を参照して説明する。
【0118】
鉄心薄板160は、
図25に示されているように、円環形状の主部160A及び主部160Aの複数箇所から外方の突出した矩形の突部160Bを有し、各突部160Bに接着剤塗布領域Exが設定されている。
【0119】
本実施形態では、
図26に示されているように、パイロット孔打抜きステーションIと、第1の外形打抜きステーションIIと、内形打抜きステーションIIIと、アイドルステーションIVと、接着剤塗布ステーションVと、アイドルステーションVIと、第2の外形打抜きステーションVIIとが順送り方向に順に設けられている。
【0120】
第1の外形打抜きステーションIIでは、第1の外形打抜き工程として、各接着剤塗布領域Exに対応する部分、換言すると、突部160Bの外側を取り囲む形状に打ち抜いて各接着剤塗布領域Ex部分の外形C13相当する部分を形成することが行われる。
【0121】
この打ち抜きによって、フープ材Fには、接着剤塗布工程前に、鉄心薄板160に相当する部分の外側に各接着剤塗布領域Exに対応して空隙Sが形成される。
【0122】
内形打抜きステーションIIIでは、鉄心薄板160の内形160Cを打ち抜くことが行われる。
【0123】
接着剤塗布ステーションVでは、接着剤塗布工程として、上昇位置にある接着剤塗布装置60によってフープ材Fの下面の各接着剤塗布領域Exに接着剤Bを略円形に転写することが行われる。接着剤塗布領域Exは突部160Bの外形輪郭より外方にはみ出した部分を含むが、はみ出した部分は空隙Sに位置し、当該部分には塗布面が存在しないので、接着剤塗布領域Exに対する接着剤Bの転写は、アイドルステーションVIに示されているように、はみ出した部分には行われず、突部160Bに行われる。
【0124】
第2の外形打抜きステーションVIIでは、第2の外形打抜き工程として、外形C13以外の鉄心薄板160の外形C14全体を打ち抜くことが行われる。これにより、フープ材Fから鉄心薄板160が切り離される。
【0125】
第2の外形打抜き工程で用いられる第2の外形打抜き用ダイ170は、
図27に示されているようにダイ孔171の外縁を画定する部位に、平面視で、鉄心薄板160の外形C14と同一形状の刃部170Aと、外形C13の外側の空隙Sに対応する位置に設けられた凹部(非刃部)170Bとを備えている。
【0126】
第2の外形打抜き用ダイ170は外形C13を除く鉄心薄板160の外形C14を打ち抜くものでよいから、第2の外形打抜き用ダイ170が外形C13に対応する部分は凹部170Bによる空隙Sによって外形C13から離れている。
【0127】
これにより、接着剤塗布領域Exに転写された接着剤Bが外形C13の部分の端面に付着したり、突部160Bの外縁から外方にはみ出したりしても、その接着剤Bが第2の外形打抜き用ダイ170に付着することがなく、第2の外形打抜き用ダイ170が接着剤Bによって汚染することがない。
【0128】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0129】
上述の実施形態では、フープ材Fに対する接着剤Bの塗布をフープ材Fの下側からフープ材Fの下面に行う実施形態を示したが、フープ材Fの上側からフープ材Fの上面に接着剤Bの塗布が行われてもよい。フープ材Fに対する接着剤Bの塗布は、転写に限られることなく、ジェット方式による塗布、ディスペンサによる塗布、その他、シルクスクリーン方式、ロール転写方式、多孔質部材等を用いたスタンプ方式による塗布でもよく、接触式及び非接触式の何れであってもよい。
【0130】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0131】
10 :積層鉄心
12 :分割コア片(鉄心薄板)
14 :ヨーク部
14A :凸部
14B :凹部
16 :ティース部
16A :径方向延在部
16B :周方向延在部
20 :製造装置
22 :上型ホルダ
24 :下型ホルダ
26 :バッキングプレート
28 :パンチプレート
30 :パイロット孔打抜き用パンチ
34 :第2の外形打抜き用パンチ(第2のパンチ)
36 :ストリッパプレート
36A :凹部
38 :パンチ孔
40 :パンチ孔
42 :パンチ孔
44 :ダイプレート
44A :上面
46 :パイロット孔打抜き用ダイ
48 :第1の外形打抜き用ダイ(第1のダイ)
50 :第2の外形打抜き用ダイ(第2のダイ)
50A :刃部
50B :凹部
50C :刃部
50D :凹部
50E :凹部
50F :刃部
50G :凹部
51 :ダイ孔
52 :スクイズリング
52A :分割コア片保持部
52B :凹部
53 :スクイズ孔
60 :接着剤塗布装置
62 :塗布台
62A :上部ブロック
62B :下部ブロック
62C :上面
64 :カム機構
66 :駆動装置
68 :保持孔
74 :固定カム
74A :鋸歯山部
74B :鋸歯谷部
76 :移動カム
76A :鋸歯山部
76B :鋸歯谷部
78 :接着剤溜まり部
80 :吐出孔
82 :内部ブロック
84 :接着剤供給通路
86 :接着剤供給通路
88 :接着剤供給チューブ
90 :接着剤供給装置
100 :鉄心薄板
102 :中心孔
104 :中心部
106 :突極部
108 :磁極部
110 :第2の外形打抜き用ダイ
110A :刃部
110B :凹部
111 :ダイ孔
120 :鉄心薄板
120A :内形
130 :第2の外形打抜き用ダイ
130A :刃部
130B :凹部
131 :ダイ孔
140 :鉄心薄板
140A :主部
140B :突部
140C :内形
142 :貫通孔
150 :第2の外形打抜き用ダイ
150A :刃部
150B :凹部
151 :ダイ孔
160 :鉄心薄板
160A :主部
160B :突部
160C :内形
170 :第2の外形打抜き用ダイ
170A :刃部
170B :凹部
171 :ダイ孔
B :接着剤
C1~C14:外形
E :接着剤塗布領域
Ex :接着剤塗布領域
F :フープ材
M :ブリッジ部
N :盛上部
P :パイロット孔
S :空隙
α :段差