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特許7085627吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20220609BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20220609BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220609BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/534 110
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020535939
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031787
(87)【国際公開番号】W WO2020032284
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018150129
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018150124
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018150125
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185701
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185706
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平岡 隆一
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】平内 達史
(72)【発明者】
【氏名】野田 ゆいか
(72)【発明者】
【氏名】堀本 裕一朗
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099634(WO,A1)
【文献】特開2006-55833(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204302(WO,A1)
【文献】特開2005-113117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材および前記第2の基材の間に位置する吸水層と、
を有する、吸水性シートであって、
(1)前記第1の基材が、吸水層に対して吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートであり、
(2)前記第1の基材の吸水量が5~60g/mであり、かつ、第1の基材の加圧下厚みが0.15mm以上であり、
(3)前記吸水層が、粒子状吸水剤を含み、
(4)前記粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間が、55秒以下であり、
(5)前記粒子状吸水剤の加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超である、吸水性シート。
【請求項2】
前記第1の基材の吸水量が50g/m以下である、請求項1に記載の吸水性シート。
【請求項3】
前記第1の基材の加圧下厚みが0.25mm以上である、請求項1または2に記載の吸水性シート。
【請求項4】
前記ボルテックス法に準じて求めた吸水時間が45秒以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項5】
前記加圧下拡散吸水倍率30分が15g/g超である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項6】
前記第1の基材の0.05kPa荷重下での厚みが10mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項7】
吸水性シートから第1の基材および第1の基材より吸液される液が導入される側に存在する基材を除いたシート単位体積当たりの粒子状吸水剤の含有量が、50mg/cm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項8】
前記粒子状吸水剤の表面張力が、65mN/m以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項9】
前記粒子状吸水剤の平均真円度が0.70以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項10】
前記粒子状吸水剤は、不定形破砕状である、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項11】
前記吸水層が、中間シートを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項12】
前記吸水性シートが、接着剤を含み、
前記接着剤の使用量が、前記粒子状吸水剤の質量に対して、0.05~2.0倍である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の吸水性シートを液体透過性シートと、液体不透過性シートとで挟持することによりなり、前記液体透過性シートが、前記第1の基材側に位置し、前記液体不透過性シートが、前記第2の基材側に位置している、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキンや成人向け失禁用製品等の衛生材料、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途に利用されている。
【0003】
これら吸収性物品は一般に紙オムツ製造工場にて吸水性樹脂と繊維材料を混合して吸収性物品ごとに個々に型取りした吸収体として製造されており、目的に応じて種々の形状の吸収体(例えば、平面に見て砂時計型、キツネ型、楕円型等)に加工されている。これら吸収体の製造方法は個々に型取りするため任意の形に加工でき、吸収性物品ごとに繊維や吸水性樹脂の量も調整し易いため、現在の紙オムツの主流となっている。
【0004】
しかし、近年、紙オムツの製造で、2枚のシート間に吸水性樹脂を固定化した長尺の吸水性シートを衛生材料の製造工程で裁断した吸収体(通常は幅10cm前後で長さ数10cmの長方形に裁断)を用いた紙オムツが製造されるようになってきた。紙オムツメーカーは、長尺の連続吸水性シートを購入又は製造することで、紙オムツの製造工程を簡便化でき、さらにパルプを用いないことで紙オムツを薄型化することができる。吸水性シートは上下のシート(特に不織布シート)間に吸水性樹脂粒子をサンドイッチ及び固定化する構成をとり、通常長尺連続シートを製造した後に長尺連続シートを裁断して幅10cm前後で長さ数10cmの長方形とし、紙オムツに組み込む(例えば、特許文献1)。
【0005】
従来の衛生材料(紙オムツ)と違って、吸水性シートによる紙オムツはその歴史が浅いこともあり、吸水性シートに適した吸水性樹脂の開発やパラメーターの提案は殆ど行われていないのが実情であり、従来の紙オムツ向けの吸水性樹脂が吸水性シートにもそのまま使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2010/143635号
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、薄型であることが主流の吸水性シートならではの構造上、吸収された液体が吸水性シートから放出されやすいことを知見した。吸収された液体の吸水性シートからの放出には、吸収される液の導入方向に放出される、いわゆる「逆戻り」と、吸水性シートの面方向に放出される漏れがある。しかしながら、両者のいずれをも有意に低減させることは困難であった。そして、逆戻り量の発生は、無加圧下の状況で断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなると、その問題が顕著であることを見出した。
【0008】
よって、本発明は、液の導入環境が上述のようであっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減し、さらに面方向の漏れ(横漏れ)による吸水性シートからの液放出をも有意に低減することができる、新規な吸水性シートを提供することを目的とする。
【0009】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材および前記第2の基材の間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、
(1)前記第1の基材が、吸水層に対して吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートであり、(2)前記第1の基材の吸水量が5~100g/mであり、かつ、第1の基材の加圧下厚みが0.15mm以上であり、(3)前記吸水層が、粒子状吸水剤を含み、(4)前記粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間が、55秒以下であり、(5)前記粒子状吸水剤の加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超である、吸水性シートによって、上記課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
図5】加圧下厚みを測定する際に用いる装置を示した概略図である。
図6】加圧下拡散吸水倍率を測定する際に用いる装置を示した概略図である。
図7図6の測定装置の要部の概略図である。
図8図6図7の測定装置において、生理食塩水の拡散方向を説明する図である。
図9】逆戻り量の評価に用いたサンプルを示した平面図および右側面図であり、実施例で作製した吸水性シートを液体不透過性シートで包む様子を示した図である。
図10】逆戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図および正面図である。
図11】本願の実施例で用いた吸水性シートの上に液注入筒を置いた様子を示した正面図である。
図12図11において漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸水性シートに投入している様子を示した正面図である。
図13】面方向の漏れ量の評価に用いたサンプルを示した平面図および右側面図であり、実施例で作製した吸水性シートを液体不透過性シートで包む様子を示した図である。
図14】面方向の漏れ量の評価に用いた装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0012】
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性シート]
本発明における「吸水性シート」とは、長尺の2枚以上の基材間に吸水性樹脂(粒子状吸水剤)が担持された構造物をいう。上記吸水性シートは、基材同士の接着、および/または、基材と粒子状吸水剤との接着に、接着剤を用いていてもよく、ホットメルト接着剤を用いていてもよい。上記吸水性シートは、粒子状吸水剤に加えて、他の成分(繊維成分、抗菌剤、消臭剤など)を含んでいてもよい。また、上記吸水性シートは、粒子状吸水剤などを挟持する2枚の基材以外にも、他のシートを含んでもよい。
【0013】
通常、吸水性シートは、連続シート状、または、当該連続シートを巻き取ったロール状である。上記吸水性シートを使用する際には、連続シートを適当な形状(長方形など)に裁断した後に、使い捨てオムツなどの吸収体として使用する。一方、従来の高濃度吸水性樹脂の使い捨てオムツ(例えば、吸収体がパルプレスの使い捨てオムツ)は、使い捨てオムツ一枚ごとに、個々に型取りされた吸収体を使用する。したがって、このような吸収体は、本発明の吸水性シートとは技術の性質を異にする。
【0014】
[1-2.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、ERT441.2-02により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、およびERT470.2-02により規定される水可溶成分(Ext)が50質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0015】
吸水性樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体である。上記吸水性樹脂の形状は、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状などである。本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、粒子状の吸水性樹脂を用いる。
【0016】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されない。そうではなく、上述のCRCおよびExtを満足するならば、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0017】
このように、本明細書においては、吸水性樹脂そのものに加えて、吸水性樹脂組成物および中間体をも総称して「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0018】
[1-3.吸水剤、粒子状吸水剤]
本明細書において「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液(液)を吸収するための吸収ゲル化剤を意味する。ここで、上記水性液(液)とは水のみならず、水を含む液体であれば特に限定されない。本発明の一実施形態に係る吸水性シートが吸収する水性液は、尿、経血、汗、その他の体液である。
【0019】
本明細書において「粒子状吸水剤」とは、粒子状(粉末状)の吸水剤を意味する(吸水剤中に吸水性樹脂を主成分として含むため、粒子状の吸水性樹脂に相当する)。「粒子状吸水剤」の概念には、一粒の粒子状吸水剤と、複数個の粒子状吸水剤の集合体との、いずれもが包含される。本明細書において「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味する。ここで、「粒子」とは、物質の比較的小さな分割体を指し、数Å~数mmの大きさを有している(「粒子」、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会 編『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、1929頁を参照)。なお、本明細書では、「粒子状吸水剤」を単に「吸水剤」と表記することがある。
【0020】
粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子とも言う)を主成分として含む。上記粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂を、60~100質量%、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%含む。上記粒子状吸水剤の残部は、水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオンなど)などを任意に含んでもよい。なお、本願の実施例で使用した粒子状吸水剤には、吸水性樹脂が80~100質量%含まれている。
【0021】
すなわち、粒子状吸水剤中の吸水性樹脂の上限は、例えば、100質量%、99質量%、97質量%、95質量%、90質量%である。そして、好ましくは、吸水性樹脂以外に0~10質量%の成分、特に水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオン)などをさらに含む。
【0022】
なお、粒子状吸水剤の好ましい含水率は、0.2~30質量%である。上記に説明した通り、水や添加剤などの成分が吸水性樹脂と一体化している、及び/又は、混合している状態の吸水性樹脂組成物も、「粒子状吸水剤」に包含される。
【0023】
粒子状吸水剤の主成分となる吸水性樹脂の例としては、ポリアクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。このうち、好ましくは、ポリアクリル酸(塩)系樹脂が吸水性樹脂として使用される。
【0024】
[1-4.ポリアクリル酸(塩)]
本明細書において「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸および/またはその塩を指す。上記ポリアクリル酸(塩)は、主成分として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)の繰り返し単位を含み、任意成分としてグラフト成分をさらに含む、重合体である。上記ポリアクリル酸(塩)は、アクリル酸(塩)の重合、ポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解、などによって得られる。好ましくは、上記ポリアクリル酸(塩)は、アクリル酸(塩)の重合によって得られる。
【0025】
ここで、「主成分として含む」とは、ポリアクリル酸(塩)を重合する際のアクリル酸(塩)の使用量が、重合に用いられる単量体(ただし、内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%であることをいう。
【0026】
[1-5.EDANAおよびERT]
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。「ERT」は、EDANAが制定している、欧州標準(実質的な世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本明細書では、特に断りのない限り、2002年版のERTに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0027】
[1-6.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
【0028】
本明細書において、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「メートルトン(Metric ton)」を意味する。「ppm」は、「質量ppm」を意味する。「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」、「質量ppm」と「重量ppm」は、それぞれ同じ意味として扱う。
【0029】
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0030】
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」または「L」と表記する場合がある。「質量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D.(Non Detected)と表記する。
【0031】
〔2.吸水性シート〕
本発明の吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材および前記第2の基材の間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、(1)前記第1の基材が、吸水層に対して吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートであり、(2)前記第1の基材の吸水量が5~100g/mであり、かつ、第1の基材の加圧下厚みが0.15mm以上であり、(3)前記吸水層が、粒子状吸水剤を含み、(4)前記粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間が、55秒以下であり、(5)前記粒子状吸水剤の加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超である。
【0032】
かかる構成によって、無加圧下の状況で断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減し、さらに面方向の漏れ(横漏れ)による吸水性シートからの液放出をも有意に低減することができる。従来の吸水性シートでは、後述の実施例に記載の不織布(8)のように吸水量の高い不織布が液導入側の基材として用いられてきた。しかしながら、本発明者らは、従来の吸水性シートにおいては、本願の実施例における特定条件での戻り量の測定(本明細書中、「特定戻り量評価」とも称する)において、逆戻り量が顕著に多いことを見出した。つまり、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があると、通常の構成であれば、液量が設定の吸収量以上となって過剰な「戻り」が発生してしまう。これに対し、本発明では、液導入側の第1の基材の吸水量が有意に低いことで、吸水機能を担う下層の吸水層に液を効率的に送り込むことができ、また、第1の基材で吸収した液が逆戻りして肌まで上がることを抑制することできる。
【0033】
一方、吸水性シートでは、吸水層における吸水機能は主に吸水剤が担うこととなる。特に、吸水層にパルプが存在する従来の吸収性物品と構成が異なる吸水性シートでは、吸水剤の役割が一層重要となる。特に、本発明においては、第1の基材の吸水量が低いために、液導入初期の吸水層への液導入量が多くなる。本発明では、粒子状吸水剤がシート(層)状に形成されている利点を生かして、吸水層の面方向の液拡散を最大限に利用することで、吸水層への液導入量が多い場合であっても、吸水性シートからの面方向の漏れ(横漏れ)を抑制する構成となっている。具体的には、本発明においては、粒子状吸水剤の加圧下拡散吸水倍率30分が有意に高いので、液の面方向の拡散性が高く、拡散された液(例えば、尿)を、吸収速度が有意に高い、言わばタンクのような機能を果たす粒子状吸水剤が汲まなく吸収する。ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水性シートからの面方向の漏れが有意に低い。そして吸水層が吸収できなかった液が逆戻りしようとしても第1の基材の加圧下厚みが有意に厚いので、液が肌まで上がることを抑制できる。そのため、「特定戻り量評価」を優れたものとすることができるとともに、面方向の漏れを抑制することができる。ここで、一般条件での戻り量を抑制しようと設計された吸水性シートや吸収性物品が、本願の「特定戻り量評価」において必ずしも優れた結果にならないことを付言しておく。また、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、例えば、走ることを覚え始めの、膀胱がまだまだ小さな乳児が昼間等の活動的に動き回っている時間帯に使用する吸収性物品(例えば、おむつ)として好適であるが、無論使用形態がこれに限定されるわけではない。また、本明細書中に記載したメカニズム等が本願の請求の範囲の技術的範囲を限定することはない。
【0034】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。第1の基材11は、吸水層12に対して吸液される液(吸収される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材は、液体の排出側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。第1の基材11と第2の基材13との間に吸水層12が配置される。なお、図1では、前記第2の基材13が、吸液される液が導入される側と吸水層12を挟んで反対側にのみ位置しているが、例えば、第2の基材13の面積を前記第1の基材11よりも大きく設計し、第2の基材13を、第1の基材11を包み込むように折り重ねてもよい。そうすることで、粒子状吸水剤の脱落を抑制することができる。吸水層12は、粒子状吸水剤14から構成される。図1の形態においては、吸水層は、第1の基材に固着している粒子状吸水剤および第2の基材に固着している粒子状吸水剤から構成される。一部の粒子状吸水剤は各基材から脱離していてもよい。したがって、吸水「層」とは、シートのような連続体だけを指すのではなく、第1の基材11および第2の基材13間に一定の厚さをもって存在するものであればいずれの形態であってもよい。各基材に粒子状吸水剤を固着させる方法としては、例えば、接着剤を使用すればよい。接着剤を用いて吸水性シートを製造する方法については、〔3.〕にて詳述する。
【0036】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、従来型の吸収性物品に用いられる吸収体よりも、薄型化が可能である。上記吸水性シートを、使い捨てオムツに使用する場合、その厚さは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらにより好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下、最も好ましくは4mm以下である。一方、厚さの下限は、吸水性シートの強度および粒子状吸水剤の直径を鑑みると、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、よりさらに好ましくは0.5mm以上である。本願の実施例で使用した吸水性シートの厚みは、3~5mmであった。
【0037】
なお、本願における吸水性シートの厚みは第1の基材もしくは第1の基材と上層シートとを取り除いた後に、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定する。測定箇所は、長手方向に吸収体を3等分割し、それぞれの中央部(吸収体の端から対角線を引きその交点に位置する点)とした。例えば、長手方向が36cm、幅方向が10cmの吸水性シートの場合、測定位置は長手方向36cmの長さに対して、長手方向左端から6cmかつ幅方向が両端から5cmの点(左とする)、長手方向左端から18cmかつ幅方向が両端から5cmの点(中央とする)、長手方向左端から30cmかつ幅方向が両端から5cmの点(右とする)、の3点が測定箇所に該当する。測定点数は、各箇所について2回測定し、厚みの測定値は、合計6点の平均値とする。具体的な手順としては、吸水性シートの測定箇所に皺や歪みが生じないよう、厚みが一定の板の上に平らに貼り付け、その板を厚み測定器の下部測定子の上にセットする。次に、厚み測定器の上部測定子を吸水性シートから2~3mmの高さ位置まで近づけた後、ハンドルからゆっくりと手を離し、吸水性シートと板を合わせた厚みを測定する。吸水性シートの厚みは、式:T1=T2-T0(T0:板の厚み(mm)、T1:吸水性シートの厚み(mm)、T2:吸水性シートおよび板の厚み(mm))によって定まる。
【0038】
吸水性シートにさらに通液性、拡散性、柔軟性などを付与するために、吸水性シートの表面に適宜エンボス加工を施してもよい。エンボス加工を施す領域は、吸水性シート表面の全面でもよく、一部でもよい。連続したエンボス加工領域を、吸水性シートの長手方向に設けることにより、液を長手方向に容易に拡散させることができる。また、粒子状吸水剤は吸水性シートの全面に散布されていてもよく、一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられていてもよい。粒子状吸水剤の非存在領域を設ける場合は、吸水性シートの長手方向に、チャネル状(筋状)に設けることが好ましい。このように、エンボス加工領域および/または粒子状吸水剤の不存在領域を、長手方向に連続して設けることにより、当該領域が、大量の液を流すための通路(液体搬送通路)の役割を果たす。エンボス加工領域および/または粒子状吸水剤の不存在領域は直線状に設けても、曲線状に設けても、波型に設けてもよい。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0040】
図2は、図1の実施形態の改変例である。図2の吸水性シート20は、第1の基材11上にさらに上層シート15を有する。かような構成とすることで、粒子状吸水剤の吸水性シートからの脱落を抑制することができる。なお、上層シートの吸水量は、逆戻りを抑制する観点から、150g/m以下であることが好ましい。また、上層シートの吸水量は、面方向の漏れを抑制する観点からは、5g/m以上とすることが好ましい。
【0041】
図3は、図1の実施形態の他の改変例である。図3の吸水性シート30では、吸水層は、上層シート15に固着している粒子状吸水剤14および第2の基材に固着している粒子状吸水剤14から構成され、第1の基材11は上層シート15上に配置される。かような構成とすることで、粒子状吸水剤の吸水性シートからの脱落を抑制することができる。
【0042】
図4は、図1の実施形態の他の改変例である。図4の吸水性シート40では、第1の基材11の第2の基材13に対向する面側に局在している第1の粒子状吸水剤14aと、第2の基材13の第1の基材11に対向する面側に局在している第2の粒子状吸水剤14bと、が中間シート16を挟むように局在化している。この中間シート16内には、例えば接着剤等により固着していた吸水剤14が脱離して、中間シート16に捕捉された吸水剤が存在していてもよい。図4のように、吸水性シートを、2層構造(すなわち、第1の粒子状吸水剤の層および第2の粒子状吸水剤の層)とする場合、第1の粒子状吸水剤/第2の粒子状吸水剤の質量比は、5/95~50/50が好ましく、5/95~40/60がより好ましく、5/95~30/70がさらに好ましい。ここで、第1の粒子状吸水剤と、第2の粒子状吸水剤は、同一であっても、異なるものであってもよい。
【0043】
以下、吸水性シートを構成する各部材について詳細に説明する。
【0044】
[2-1.第1の基材、および第2の基材]
第1の基材は、吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートである。なお、吸液される液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含んでいれば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0045】
第1の基材が、透水性シートであり、かつ、吸液される側に位置することで、本発明の効果である吸水性シートの性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。本願の実施例で使用した第1の基材の透水係数は、1×10-5cm/sec以上であった。
【0046】
「吸水量」
第1の基材の吸水量は、5~100g/mである。第1の基材の吸水量が100g/mを超えると、特定戻り量評価における逆戻り量が顕著に増加する(後述の比較例3、4参照)。また、第1の基材の吸水量が5g/m未満であると、吸水性シートからの液の横漏れ(面方向の漏れ)が顕著に増加する(後述の比較例2参照)。これは、第1の基材の吸水量があまりに低いと、第1の基材の疎水的性質が強くなり、厚み方向のみならず横方向にも液を排出しやすくなり、第1の基材から液が面方向で漏れるためであると考えられる。第1の基材の吸水量は、特定戻り量評価における逆戻り量の低減の観点から、80g/m以下であることが好ましく、60g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることがさらに好ましい。また、第1の基材の吸水量は、面方向の漏れ低減の観点から、6g/m以上であることがより好ましく、7g/m以上であることがさらに好ましく、8g/m以上であることがさらにより好ましく、20g/m以上であることが特に好ましい。第1の基材の吸水量は、5~80g/mであることが好ましく、6~60g/mであることがより好ましく、7~50g/mであることがさらに好ましく、8~50g/mであることがさらにより好ましく、20~50g/mであることが特に好ましい。
【0047】
第1の基材の吸水量は、第1の基材の親水性、第1の基材を構成する材料の繊維径、密度などによって制御することができる。第1の基材の親水性を上げると吸水量は増加する傾向にある。また、繊維径を細く、または密度を密にすると、第1の基材の吸水量は上がる傾向にある。
【0048】
第1の基材の吸水量は以下のように測定する。
【0049】
第1の基材(例えば不織布)を(100±1)×(100±1)mmの大きさに切断した後、ステンレス金網に試験片をクリップで止める。次に試験片と金網を、20±2℃の生理食塩水を入れた水槽中に、水面下20mmに斜めに入れて気泡の出ないようにした後、60±1秒間放置する。その後、試験片と金網を取り出した後、金網から試験片を外す。遠心力が250Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H-122)を用いて第1の基材を3分±10秒間脱水し、脱水後の第1の基材の質量から吸水前の第1の基材の質量を引き、Wa(g)を算出する。試験片の吸水量を、次式により求める。
【0050】
【数1】
【0051】
なお、第1の基材の親水性は、基材を構成する材料の性質、親水化剤の処理などによって制御される。親水化剤の例としては、アニオン系界面活性剤(脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩など)、カチオン系界面活性剤(第4級アンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、シリコーン系界面活性剤(ポリオキシアルキレン変性シリコーンなど)、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂を含むステイン・リリース剤などが用いられる。
【0052】
「加圧下厚み」
第1の基材の加圧下厚みは、0.15mm以上である。第1の基材の加圧下厚みが0.15mm未満であると、逆戻り量が顕著に増加する(後述の比較例1参照)。加圧下厚みが0.15mm以上であることで、荷重をかけた場合であってもシート厚さが一定上に維持され、吸水層からの液の逆戻りをブロックすることができると考えられる。第1の基材の加圧下厚みは、逆戻り量低減の点から、0.25mm以上であることが好ましく、0.30mm以上であることがより好ましい。
【0053】
第1の基材の加圧下厚みは、吸水性シートの薄膜化の点から、通常3mm以下であり、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、0.7mm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
第1の基材の加圧下厚みは以下のように測定する。ここで、本明細書において、加圧下厚みとは、4.9kPaの加圧下での厚みを指す。
【0055】
直径50mmに切り出した第1の基材(例えば、不織布)について、レオメーター(アントンパール社製、MCR301)を用いて、加圧下における厚みを測定する。具体的には、図5に示すように、レオメーターのディッシュ55(内径;51mm、深さ;10mm/アルミニウム製)に、直径50mmに切り出した第1の基材56を投入する。なお、ディッシュ55はレオメーターに固定されており、レオメーター及びディッシュ55は厳密に水平となるように設置されている。続いて、回転軸が垂直に設置されたパラレルプレート57(直径;50mm/アルミニウム製)をディッシュに嵌入した後、9.6Nの垂直荷重をかけ、4.9kPaの加圧下での第1の基材の厚みを測定する。
【0056】
第1の基材の加圧下厚みは、第1の基材を構成する材料、第1の基材の厚さ、第1の基材の秤量(密度)などによって制御することができ、これらのバランスで加圧下厚みが定まる。同じ材料であれば、厚さが厚くなるほど加圧下厚みは大きくなる傾向にある。また、同じ材料であれば、秤量(密度)が上がるほど、加圧下厚みは大きくなる傾向にある。
【0057】
第1の基材の0.05kPa荷重下での厚みとしては、10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらにより好ましく、3mm以下であることが特に好ましい。第1の基材の厚みがかような範囲にあることで、吸水性シートの薄膜化を図ることができる。また、第1の基材の0.05kPa荷重下での厚みは、機械的強度を担保する観点から、通常0.1mm以上であり、0.5mm以上であることがより好ましい。なお、0.05kPa荷重下での厚みは、上記加圧下厚みの測定方法において、0.05kPa加圧下で測定した値を採用する。
【0058】
第1の基材の目付量は、好ましくは5~100g/m、より好ましくは10~70g/mである。
【0059】
「基材を構成する材料」
第1の基材、第2の基材、下記に説明する中間シート、および上層シートを構成する材料としては、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパー及びタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。中でも、透水性の観点から、少なくとも第1の基材は、好ましくは不織布が使用され、第1の基材、第2の基材、中間シート、および上層シートのいずれも不織布であることが好ましい。
【0060】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性及び吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0061】
第1の基材として用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。また、第1の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、エアスルー法またはエアレイド法で得られたものであることが好ましく、エアスルー法で得られたもの(エアスルー不織布)であることが好ましい。エアスルー法は、PE/PPやPE/PETなどの熱融着可能な複合繊維に熱風を吹きつけて、熱融着を行うとともに、繊維の間に含まれる空気の量を増やし、嵩を高くし、密度を低くする加工のことをいう。また、エアレイド法は、空気の流れに乗せて均一分散させ、金網上に吸い取らせて不織布を作る方法であり、パルプ繊維の分散に空気を利用しているため、嵩を高くし、密度を低くすることができる。通常はエアレイドパルプである。
【0062】
また、第2の基材として用いられうる不織布としては、特に限定されるものではないが、エアレイドパルプであることが好ましい。また、上層シートとして用いられうる不織布としては、特に限定されるものではないが、エアレイドパルプであることが好ましい。
【0063】
また、第2の基材、下記に説明する中間シートおよび上層シートも、第1の基材同様、透水性を有する透水性シートであることが好ましく、それぞれ同じ種類でもよく、異なった種類でもよい。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましく、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0064】
第2の基材の0.05kPa荷重下での厚さは吸水性シートとして強度を有する範囲で薄いほどよく、0.01~2mm、さらには0.02~1mm、0.03~0.8mmの範囲で適宜選択される。その目付量は、好ましくは5~300g/m、より好ましくは8~200g/m、さらに好ましくは10~100g/m、よりさらに好ましくは11~50g/mである。
【0065】
また、上層シートの0.05kPa荷重下での厚さは吸水性シートとして強度を有する範囲で薄いほどよく、0.01~2mm、さらには0.02~1mm、0.03~0.8mmの範囲で適宜選択される。その目付量は、好ましくは5~300g/m、より好ましくは8~200g/m、さらに好ましくは10~100g/m、よりさらに好ましくは11~50g/mである。
【0066】
第1の基材、第2の基材および中間シート(例えば、不織布)の空隙率は、以下の式で測定できる。基材(または、シート)に用いられる目付量A(g/m)、基材(または、シート)の厚みB(mm)、基材(または、シート)に用いられる素材(例えば、ポレオレフィン)の密度C(g/cm
基材(または、シート)の空隙率(%)=100-{(A/10000)/(B/10)}/C*100
[2-2.吸水層]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける吸水層は、粒子状吸水剤と、場合により、中間シートとを有する。前記吸水層が、中間シートを有することによって、上記図4の形態のように第1の粒子状吸水剤と、第2の粒子状吸水剤とを、それぞれ第1の基材、第2の基材に局在させ易くなる。なお、第1の粒子状吸水剤と第2の粒子状吸水剤の局在は、以下の〔3.〕に記載のように例えば接着剤を適宜利用することによっても実現することができる。
【0067】
(粒子状吸水剤)
吸水層は、粒子状吸水剤を含む。なお、別途記載のない限り、吸水剤が複数種類の粒子状吸水剤の混合物である場合は、以下の記載は、当該混合物の物性に関する説明である。また、図4のように、異なる物性の第1の吸水剤、第2の吸水剤が存在する場合には、粒子状吸水剤の物性は、吸水層に含まれるすべての粒子状吸水剤を混合した場合の物性である。また、粒子状吸水剤の物性は、吸水性シートから、綿状パルプなどが混じらないように粒子状吸水剤のみを取り出して物性を測定してもよい。
【0068】
粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間(以下、単に吸水時間とも称する)は、55秒以下であり、かつ、粒子状吸水剤の加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超である。これらのいずれかの要件が外れると、吸水性シートからの横漏れ(面方向の漏れ)が著しくなる。粒子状吸水剤の吸水時間が55秒を超え、加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超の場合、吸水性シートの面方向の拡散は速いが、拡散した液を各点で吸水しきれず、吸水性シートから液が面方向で漏れやすくなると考えられる(後述の比較例5)。また、粒子状吸水剤の吸水時間が55秒以下で、加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g以下の場合、面方向の拡散が遅く、中心部に導入された液が集中し、中心部の吸水剤だけでは吸収しきれずに吸水性シートから液が面方向で漏れやすくなると考えられる(後述の比較例6)。
【0069】
「ボルテックス法に準じて求めた吸水時間」
ボルテックス法に準じて求めた吸水時間とは、JIS K7224-1996に記載の「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」に準じて求めた吸水時間である。具体的な測定方法は、予め調製された0.90重量%塩化ナトリウム水溶液の1000重量部に食品添加物である食用青色1号0.02重量部を添加し、液温30℃に調整する。青色に着色した0.90重量%塩化ナトリウム水溶液50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で、600rpmで攪拌する中に、粒子状吸水剤2.00gを投入し、吸水時間(秒)を測定する。終点は、JIS K 7224-1996年度「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液して試験液がスターラーチップを覆うまでの時間を吸水時間(秒)として測定する。
【0070】
粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間は、55秒以下である。粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間は、面方向の漏れ量のさらなる低減の点からは、45秒以下であることが好ましく、35秒以下であることがより好ましい。粒子状吸水剤のボルテックス法に準じて求めた吸水時間の下限は、特に限定されるものではないが、特定戻り量評価における逆戻り量を低減する観点から、10秒以上であることが好ましく、15秒以上であることがより好ましい。
【0071】
ボルテックス法に準じて求めた吸水時間は、吸水性樹脂粒子の比表面積等によって制御することができる。吸水性樹脂粒子の比表面積が大きくなると、吸水時間は短くなる傾向にある。
【0072】
「加圧下拡散吸水倍率30分(DAP30min)」
加圧下拡散吸水倍率とは、吸水性樹脂の坪量が高く、かつ、外力によって吸水性樹脂の粒子同士が密着している状態における水性液体の拡散力を加味した、吸水性樹脂の吸収量を評価するための物性値である。すなわち、AAP(粒子状吸水剤0.9gの縦拡散)と異なり、加圧下拡散吸水倍率(DAP)は粒子状吸水剤1.5gという高濃度における横拡散での2.06kPaでの加圧下吸収性能を評価する。
【0073】
上記の加圧下拡散吸水倍率は、所定条件下での測定における、吸収開始から所定時間(30分)経過後の測定値から算出される。ここで、30分経過後の測定値から測定された加圧下拡散吸水倍率を加圧下拡散吸水倍率30分(DAP30minとも称する)とする。具体的には下記に記載の方法による。
【0074】
図6および図7は、拡散吸収倍率の測定に用いる測定装置を示す概略模式図である。
【0075】
図6に示すように、測定装置は、天秤41と、この天秤41上に載置された所定容量の容器42と、外気吸入パイプ43と、導管44と、ガラスフィルタ46と、このガラスフィルタ46上に載置された測定部45とからなっている。上記の容器42は、その頂部に開口部42aを、その側面部に開口部42bをそれぞれ有しており、開口部42aに外気吸入パイプ43が嵌入される一方、開口部42bに導管44が取り付けられている。また、容器42には、所定量の生理食塩水52が入っている。外気吸入パイプ43の下端部は、生理食塩水12中に没している。上記のガラスフィルタ46は、直径70mmに形成されている。そして、容器42およびガラスフィルタ46は、導管44によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ46は、その上面が、外気吸入パイプ43の下端に対してごく僅かに高い位置になるようにして固定されている。
【0076】
図7に示すように、上記の測定部45は、濾紙47と、シート48と、支持円筒49と、この支持円筒49の底部に貼着された金網50と、重り51とを有している。そして、測定部45は、ガラスフィルタ46上に、濾紙47、シート48、支持円筒49(つまり、金網50)がこの順に載置されると共に、支持円筒49内部、即ち、金網50上に重り51が載置されてなっている。シート48は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、中央部に直径18mmの開口部を有する厚さ0.1mmのドーナツ状に形成されている。支持円筒49は、内径60mmに形成されている。金網50は、ステンレスからなり、JIS規格で400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。そして、金網50上に所定量の吸収剤組成物が均一に撒布されるようになっている。重り51は、金網50、即ち、粒子状吸水剤に対して、21g/cm(2.06kPa)の荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0077】
図6に記載のように容器42に所定量の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を入れる、容器42に外気吸入パイプ43を嵌入する、等の所定の準備動作を行う。次に、ガラスフィルタ46上に濾紙47を載置し、この濾紙47上にシート48を、その開口部がガラスフィルタ46の中心部に位置するようにして載置する。一方、これら載置動作に並行して、支持円筒49内部、即ち、金網50上に1.500±0.005gになるように秤量した(この粒子状吸水剤の質量をW3(g)とする)粒子状吸水剤全量を均一に撒布し、この粒子状吸水剤上に重り51を載置する。次いで、シート48上に、金網50、つまり、粒子状吸水剤及び重り51を載置した上記支持円筒49を、その中心部がガラスフィルタ46の中心部に一致するようにして載置する。そして、シート48上に支持円筒49を載置した時点から、30分間にわたって粒子状吸水剤が吸収した0.90質量%塩化ナトリウム水溶液52の質量W2(g)を、天秤41を用いて測定した。なお、図6及び図7に示すように、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液52は、シート48の開口部を通過した後、粒子状吸水剤の横方向(図8中、矢印で示す)にほぼ均一に拡散しながら、粒子状吸水剤に吸収される。
【0078】
そして、上記の質量W2から、下記式に従って、吸収開始から30分間経過後の加圧下拡散吸水倍率(30分値)(g/g)を算出する。
【0079】
加圧下拡散吸水倍率(g/g)=W2/W3
加圧下拡散吸水倍率30分は、10g/g超であり、面方向の漏れ防止の観点からは、15g/g超であることが好ましく、18g/g以上がより好ましく、20g/g以上がさらに好ましく、22g/g以上がさらにより好ましく、25g/g以上が特に好ましい。加圧下拡散吸水倍率30分の上限は、高ければ高いほどよいので、特に限定されないが、通常50g/g以下であることが好ましい。
【0080】
加圧下拡散吸水倍率30分は、粒子状吸水剤の表面の親水性や加圧下吸収倍率等によって制御することができる。粒子状吸水剤の表面の親水性を上げる、または、加圧下吸収倍率を上げると加圧下拡散吸水倍率30分は高くなる傾向にある。
【0081】
「表面張力」
表面張力とは、固体や液体の表面積を増加させるのに必要な仕事(自由エネルギー)を単位面積当たりで表したものである。本願でいう表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力をいう。なお、吸水剤の表面張力は、以下の手順により測定する。即ち、十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、及び粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力が、以下順に、65mN/m以上、66mN/m以上、67mN/m以上、69mN/m以上、70mN/m以上、71mN/m以上が好ましく、最も好ましくは72mN/m以上である。粒子状吸水剤の吸水性シートへの適用では従来の紙オムツよりも表面張力の影響が表れやすく、表面張力が上記の条件を満たすことにより、紙オムツでの戻り量が低減させることができる。
【0082】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力の上限には特に制限はないが、現実的には73mN/m以下である。
【0083】
「劣化可溶分」
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける、粒子状吸水剤の劣化可溶分の上限が、50%未満であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。下限としては、特に制限はないが、1%以上、3%以上、5%以上程度である。
【0084】
劣化可溶分の測定方法は以下の通りである。
【0085】
予め調製した生理食塩水に、0.05質量%となるようにL-アスコルビン酸を添加し、劣化試験液を作成した。具体的には、999.5gの生理食塩水に0.50gのL-アスコルビン酸を溶解して、劣化試験液を調製した。劣化試験液25mlを250ml容量のガラス製ビーカー容器に加え、そこに粒子状吸水剤1.0gを添加することにより膨潤ゲルを形成させた。ラップで容器に蓋をして密閉し、膨潤ゲルを37℃の雰囲気下(楠本化成社製、ETAC商標、HISPECシリーズ、HT320使用、37℃設定・風速可変器目盛30設定)に16時間静置した。16時間後、175mlの生理食塩水と長さ30mmで太さ8mmの円筒型攪拌子を投入し、劣化させた後、10分間500rpmで攪拌して膨潤ゲルから液を抽出した。この抽出液を濾紙(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過した。得られた濾液を20.0g測り取り、さらに生理食塩水30gを加え、測定溶液とした。測定方法は、生理食塩水を、0.1NのNaOH水溶液を用いてpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液を用いてpH2.7まで滴定し、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩とからなる粒子状吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量とをもとに、吸水性樹脂粒子又は吸水剤中の可溶分を以下の計算式:劣化可溶分(質量%)=0.1×(平均分子量)×200×100×([HCl]-[bHCl])/1000/1.0/20.0により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0086】
「粒子形状」
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて粒子状吸水剤は、粒子形状が不定形破砕状であることが好ましい。ここで、不定形破砕状とは、形状が一定でない破砕状の粒子である。逆相懸濁重合や気相重合で得られた球状粒子に比べて不定形破砕状では基材へ固定を容易にすることができるからである。本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤は、好ましくは水溶液重合における粉砕物である。一方、粉砕工程を経ない場合、代表的には逆相懸濁重合や重合モノマーを噴霧し重合するような液滴重合等によって得られる球状の粒子又は球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の形状が不定形破砕状であると、平均真円度の高いもの(例えば、球形のもの)と比べて吸水性シートの形状保持がなされやすい。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の平均真円度は、0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましい。
【0087】
平均真円度の算出方法は以下のとおりである。ランダムに100個以上の粒子状吸水剤を選択し、各粒子状吸水剤を電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VE-9800)(倍率50倍)で撮影して粒子状吸水剤の画像を取得し、付属の画像解析ソフトを用いて粒子ごとに周囲長および面積を算出した。以下の式:
【0088】
【数2】
【0089】
で各粒子の真円度を求め、得られた値の平均値を平均真円度として算出する。
【0090】
「粒子径」
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径であり、150~600μmであってよい。
【0091】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける、吸水性シートから第1の基材および第1の基材より吸液される液が導入される側に存在する基材を除いた単位体積当たりの粒子状吸水剤の含有量の下限が、50mg/cm以上、51mg/cm以上、52mg/cm以上、53mg/cm以上、54mg/cm以上、55mg/cm以上、57mg/cm以上、59mg/cm以上、60mg/cm以上である。また、本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける、吸水性シート単位体積当たりの粒子状吸水剤の含有量の上限としても特に制限はないが、現実的に、600mg/cm以下であり、500mg/cm以下が好ましく、400mg/cm以下がより好ましく、300mg/cm以下がさらに好ましく、150mg/cm以下が特に好ましい。粒子状吸水剤の含有量を上記の範囲とすることにより、上記吸水性シートは本発明の効果をより効果的に発揮しうる。ここで、第1の基材より吸液される液が導入される側に存在する基材とは、例えば、図2における上層シート15である。本願の実施例で使用した吸水性シートから第1の基材を除いた単位体積当たりの粒子状吸水剤の含有量は、50mg/cm以上であった。
【0092】
粒子状吸水剤の製造方法は、所望の物性を有する吸水剤の製造方法であれば、特に限定されず、例えば、実施例に記載の公報等を参酌して適宜製造することができる。
【0093】
(中間シート)
吸水層は中間シートを有していてもよい。
【0094】
中間シートを構成する材料としては、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパー及びタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。中でも、透水性の観点から、中間シートは不織布であることが好ましい。
【0095】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性及び吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0096】
〔3.吸水性シートの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法は、(1)第1の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、(2)第2の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、および、(3)中間シートに、粒子状吸水剤を散布する工程、の少なくとも1つを含む。より具体的な製造方法の一例として、下記(a)~(c)の製造方法が挙げられる。
【0097】
(a)第1の基材の上に、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)および、好ましくは接着剤を均一に散布する。第2の基材および粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)についても、同様の操作を施す。第1の基材および第2の基材を、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0098】
(b)第1の基材の上に、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)および、好ましくは接着剤を散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第2の基材および粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)についても、同様の操作を施す。第1の基材および第2の基材を、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、加熱圧着する。
【0099】
(c)第1の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を均一に散布して層を形成させる。第2の基材および粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)についても、同様の操作を施す。さらに、第1の基材および第2の基材を、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0100】
これらの方法のなかでは、製造方法の簡便さと製造効率の高さの観点から、(a)および(c)の方法が好ましい。なお、(a)~(c)の方法を併用して、吸水性シートを製造することもできる。
【0101】
また、中間シートを備えている吸水性シートの製造方法の一例として、下記(d)~(g)の製造方法がある。
【0102】
(d)第1の基材の上に、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)および、好ましくは接着剤を均一に散布する。その上に中間シートを重ねて、圧着する。さらに、上記中間シートの粒子状吸水剤に面していない側の表面に、粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)および、好ましくは接着剤を均一に散布する。その上に第2の基材を重ねて、(好ましくはホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で)圧着する。
【0103】
(e)中間シートの上に、粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)を均一に散布する。また、第2の基材の上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)を散布した面と、上記第2の基材の接着剤を散布した面とを圧着する。次に、圧着後の中間シートにおいて、上記粒子状吸水剤を散布した面と反対側の面に、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を均一に散布する。また、第1の基材の上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を散布した面と、上記第1の基材の接着剤を散布した面を圧着する。上記圧着は、ホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0104】
(f)第2の基材の上に接着剤を散布する。次に、その上に粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)を均一に散布する。次に、その上に中間シートを載せて圧着する。次に、上記中間シートの粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)と面していない方の面に、接着剤を散布する。次に、その上に粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を均一に散布する。次に、その上に第1の基材を載せて圧着する。上記圧着はホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0105】
(g)第2の基材の上に接着剤を散布する。次に、その上に粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)を均一に散布する。次に、その上に中間シートを載せて圧着する。次に、上記中間シートの粒子状吸水剤(例えば、第2の粒子状吸水剤)と面していない方の面に、粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を均一に散布する。また、第1の基材の上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの粒子状吸水剤(例えば、第1の粒子状吸水剤)を散布した面と、上記第1の基材の接着剤を散布した面を圧着する。上記圧着はホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0106】
また、図2のように第1の基材より吸液される液が導入される側に上層シートが配置された形態においては、例えば、上層シートに接着剤を散布し、当該接着剤面と第1の基材の粒子状吸水剤散布面と相対する面と、を圧着することで吸水シートを得ることができる。また、図3のように上層シートに吸水剤が固着している形態の場合、上記(a)~(g)の製造方法において、第1の基材の代わりに上層シートを用いてシートを得た後に、第1の基材に接着剤を散布し、当該接着剤面と上層シートの粒子状吸水剤散布面と相対する面と、を圧着することで吸水性シートを得ることができる。
【0107】
以上に説明した以外の工程として、吸水性シートの触感を改善し、液体吸収性能を向上させる目的で、吸水性シートにエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、第1の基材および第2の基材を圧着する際に同時に施してもよいし、シート製造後に施してもよい。
【0108】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法においては、添加剤(消臭剤、繊維、抗菌剤、ゲル安定剤など)を適宜配合してもよい。添加剤の配合量は、粒子状吸水剤の質量に対して好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは0~10質量%である。上記製造方法においては、予め添加剤を混合した粒子状吸水剤を用いてもよいし、製造工程の途中で添加剤を添加してもよい。
【0109】
製造される吸水性シートの寸法は、適宜設計されうる。通常は、横幅が3~10m、長さが数10m~数1000m(連続シートまたはロールの状態において)である。製造された吸水性シートは、目的(使用される吸収体の大きさ)に応じて裁断して用いられる。
【0110】
上記に例示した以外にも、吸水性シートの製造方法は、例えば以下の特許文献に開示されている:国際公開第2012/174026号、国際公開第2013/078109号、国際公開第2015/041784号、国際公開第2011/117187号、国際公開第2012/001117号、国際公開第2012/024445号、国際公開第2010/004894号、国際公開第2010/004895号、国際公開第2010/076857号、国際公開第2010/082373号、国際公開第2010/113754号、国際公開第2010/143635号、国際公開第2011/043256号、国際公開第2011/086841号、国際公開第2011/086842号、国際公開第2011/086843号、国際公開第2011/086844号、国際公開第2011/117997号、国際公開第2011/118409号、国際公開第2011/136087号、国際公開第2012/043546号、国際公開第2013/099634号、国際公開第2013/099635号、特開2010-115406号、特開2002-345883号、特開平6-315501号、特開平6-190003号、特開平6-190002号、特開平6-190001号、特開平2-252558号、特開平2-252560号、特開平2-252561号。これらの文献に開示されている吸水性シートの製造方法も、適宜参照される。
【0111】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、基材同士、又は基材と粒子状吸水剤とを固着させる方法としては、(i)圧着によってもよく、(ii)水、水溶性高分子、溶媒に溶解又は分散した各種バインダーによってもよく、(iii)基材自体の材質の融点で基材同士をヒートシールさせてもよい。好ましくは、接着剤を使用して固着される。
【0112】
使用される接着剤は溶液型でもよいが、溶媒除去の手間や残存する溶媒の問題、生産性の問題から、高い生産性と残存溶媒の問題がないホットメルト接着剤が好ましい。本発明でホットメルト接着剤は、予め基材又は粒子状吸水剤の表面に含有されていてもよく、別途、ホットメルト接着剤を吸水性シートの製造工程で使用してもよい。ホットメルト接着剤の形態や融点は適宜選択でき、粒子状でもよく、繊維状でよく、ネット状でもよく、フィルム状でもよく、また、加熱によって溶融させた液状でもよい。ホットメルト接着剤の溶融温度又は軟化点は50~200℃、60~180℃が好ましい。粒子状の接着剤を使用する場合、その粒子径は上記粒子状吸水剤の平均粒子径の0.01~2倍、0.02~1倍、0.05~0.5倍程度の粒子状接着剤が使用される。
【0113】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造においてホットメルト接着剤を使用する方法には、以下の例が挙げられる。基材(例えば不織布)の上に粒子状吸水剤とホットメルト接着剤との混合物とを均一に散布し、さらにもう1枚の基材を積層してから、ホットメルト接着剤の溶融温度付近で加熱圧着することにより、吸水性シートを製造することができる。
【0114】
本発明に使用するホットメルト接着剤としては、適宜選択できるが、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤及びポリエステル系接着剤等から選ばれる1種以上が適宜使用できる。
【0115】
具体的に、ポリオレフィン系接着剤として、ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンが挙げられ、スチレン系エラストマー接着剤としてはスチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられ、共重合ポリオレフィン等、ポリエステル系接着剤としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等が挙げられる。
【0116】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートおよび/またはその製造方法において、吸水性シートが、接着剤を含むことが好ましく、当該接着剤は、ホットメルト接着剤であることが好ましく、接着剤(例えばホットメルト接着剤)の使用量(含有量)は、粒子状吸水剤の合計の質量に対して、0超~3.0倍であることが好ましく、0.05~2.0倍であることがより好ましい。接着剤(特にホットメルト接着剤)の含有量が多すぎると、コスト面や吸水性シートの質量面(紙オムツの質量増)で不利となるだけでなく、粒子状吸水剤が膨潤規定を受けて吸水性シートの吸水能を低下させる可能性もある。
【0117】
〔4.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔2〕で説明されている吸水性シートを、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。ここで、液体透過性シートは、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、第2の基材側に位置している。吸収性物品の具体例としては、使い捨てオムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0118】
液体透過性シートおよび液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。
【実施例
【0119】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0120】
<製造例>
[製造例1]
以下の特許に記載の製造例、実施例、比較例を参考に、吸水時間および加圧下拡散吸水倍率30分を適宜調整することで、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の粒子状吸水剤(1)~(5)を得た。
【0121】
国際公開第2014/034897号
国際公開第2017/170605号
国際公開第2016/204302号
国際公開第2014/054656号
国際公開第2015/152299号
国際公開第2018/062539号
国際公開第2012/043821号
特開2010-142808号公報。
【0122】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p-メトキシフェノール200ppm)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp-メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0123】
〔アクリル酸ナトリム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20~40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0124】
<粒子状吸水剤1>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度33.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.04gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液26.65g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液32.79gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後、150μm以下の吸水性樹脂微粉末を181.5g添加したうえで、ニーダーのブレードを高速回転(130rpm)で10分間ゲル解砕してから含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~2mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(1-1)を得た。
【0125】
得られた吸水性樹脂(1-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度195℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(1-3)を得た。吸水性樹脂(1-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(1)とした。
【0126】
<粒子状吸水剤2>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度33.5質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)5.77gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液27.05g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液33.29gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後、150μm以下の吸水性樹脂微粉末を184.3g添加したうえで、ニーダーのブレードを高速回転(130rpm)で10分間ゲル解砕してから含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~2mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(2-1)を得た。
【0127】
得られた吸水性樹脂(2-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度210℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(2-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(2-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(2-3)を得た。吸水性樹脂(2-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(2)とした。
【0128】
<粒子状吸水剤3>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)5.03gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液30.68g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液37.76gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径380μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(3-1)を得た。
【0129】
得られた吸水性樹脂(3-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度210℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(3-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(3-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(3-3)を得た。吸水性樹脂(3-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(3)とした。
【0130】
<粒子状吸水剤4>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度35.5質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)2.55gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.66g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.28gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径420μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(4-1)を得た。
【0131】
得られた吸水性樹脂(4-1)100質量部に、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.8質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度200℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(4-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(4-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(4-3)を得た。吸水性樹脂(4-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(4)とした。
【0132】
<粒子状吸水剤(5)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)3.14gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液30.68g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液37.76gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径380μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(4-1)を得た。
【0133】
得られた吸水性樹脂(4-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度195℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(4-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(4-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(4-3)を得た。吸水性樹脂(4-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(4)とした。
【0134】
[市販品使い捨てオムツからの吸水性樹脂の取出し1]
市販の使い捨てオムツ(ムーニーエアフィット(Lサイズ、Lot No.201512163072)、ユニ・チャーム製、2016年5月に購入)から、吸水性樹脂を取り出した。取出しの際には、綿状パルプなどが混じらないように、吸水性樹脂のみを取り出した。取出された吸水性樹脂は、球状粒子を造粒した粒子形状であった。この吸水性樹脂を、粒子状吸水剤(T1)とした。
【0135】
粒子状吸水剤(1)~(5)および(T1)の物性を、下記表1に示した。
【0136】
【表1】
【0137】
なお、粒子状吸水剤(1)~(5)、粒子状吸水剤(T1)は、いずれも不定形破砕状であり、粒子状吸水剤の(1)~(4)の平均円形度は0.5、粒子状吸水剤(T1)の平均円形度は0.6であった。
【0138】
〔実施例〕
[実施例1]
縦10cm、横40cmに切断したパルプ繊維を主成分とする不織布(8)(エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。0.05kPa荷重下での厚さ0.61mm、目付量:42.2/m)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.3~0.5g均一に散布した(散布量:7.5~12.5g/m)。
【0139】
次に、接着剤が散布されている不織布(8)の表面に、製造例1で得られた粒子状吸水剤(1)(第2の粒子状吸水剤に相当する)を、9.0g(散布量:225g/m)均一に散布した。さらにその上に、オレフィン系樹脂を主成分とする不織布(4)(エアースルー法で作成されたもの。中間シートに相当する。0.05kPa荷重下での厚さ2.21mm、目付量:50.6g/m。厚みは無荷重下で約3mm程度(実測値2.5mm)、前記ポリオレフィンを主成分とする不織布(2)の素材の密度:0.91g/cm。))を重ね、加圧圧着した。
【0140】
次に、粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布(4)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.3~0.5g均一に散布した(散布量:7.5~12.5g/m)。さらにその上に、製造例1で得られた粒子状吸水剤(1)(第1の粒子状吸水剤に相当)を、3.0g(散布量:75g/m)均一に散布した。
【0141】
最後に、粒子状吸水剤(1)の上にオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(1)(エアースルー法で作成されたもの。第1の基材に相当する。0.05kPa荷重下での厚さ0.54mm、目付量:19.1g/m。)を重ね、加圧圧着した。このようにして、吸水性シート(1)を得た。
【0142】
なお、本実施例で使用した不織布(1)、(4)、(7)は、いずれも透水性シートであり、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であった。また、第1の基材を除いた吸水性シート単位体積当たりの粒子状吸水剤の含有量は50mg/cm以上であった。さらに、接着剤の使用量は、粒子状吸水剤の質量に対して、0.05~2倍であった。
【0143】
[実施例2]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(2)(エアースルー法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:20g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(2)を得た。
【0144】
[実施例3]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(3)(エアースルー法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:24g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(3)を得た。
【0145】
[実施例4]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりに不織布(4)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(4)を得た。
【0146】
[実施例5]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(5)(エアースルー法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:68g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(5)を得た。
【0147】
[実施例6]
実施例4において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(2)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例4と同様にして吸水性シート(6)を得た。
【0148】
[実施例7]
実施例4において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(3)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例4と同様にして吸水性シート(7)を得た。
【0149】
[実施例8]
実施例4において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(T1)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例4と同様にして吸水性シート(8)を得た。
[比較例1]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(6)(スパンボンド法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:19g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(9)を得た。
【0150】
[比較例2]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(7)(スパンボンド法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:21g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(10)を得た。
【0151】
[比較例3]
実施例1において、第1の基材として不織布(1)の代わりにオレフィン系樹脂を主成分とする不織布(8)(エアースルー法で作成されたもの。第1の基材に相当する。目付量:42.2g/m。)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(11)を得た。
【0152】
[比較例4]
実施例1において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(T1)、第1の基材として不織布(1)の代わりに不織布(8)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例1と同様にして吸水性シート(12)を得た。
【0153】
[比較例5]
実施例4において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(4)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例4と同様にして吸水性シート(13)を得た。
【0154】
[比較例6]
実施例4において、粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(5)を用いて吸水性シートを作成したこと以外は実施例4と同様にして吸水性シート(14)を得た。
【0155】
なお、不織布(1)~(8)の物性を表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
〔吸水性シートの評価方法〕
<逆戻り量>
図9に示されるように縦10cm、横40cmに切断した吸水性シートを、縦14cm、横40cmの液体不透過性シートで上部に開口部ができるように包んだ。液体不透過性シートで包んだ吸水性シートを平面に置き、その上に液注入筒(図10)を図11に示されるように吸水性シートの中央に置いた。この状態で、流速7ml/秒で液投入が可能な漏斗を使用して液注入筒へ23℃の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液80gを投入した(図12)。液を投入してから10分後、予め重量を測定した濾紙(型式No.2、ADVANTEC製;直径110mmの円形のもの)20枚を、吸水性シートの中央に載せ、直径100mmの円形の錘(1200g)をさらに載せて、1分間保持した。その後、錘を除去し、濾紙の重量増分から逆戻り量1回目(g)を測定した。錘を除去(逆戻り量を測定)してから1分後、同様の操作(液を投入→投入10分後、濾紙および錘(1200g)を載せて、1分間保持→錘を除去、逆戻り量の測定)を繰り返し、逆戻り量2回目(g)、逆戻り量3回目(g)を測定した。各吸水性シート、各比較吸水性シートの逆戻り量3回目(g)を表3に示す。なお、逆戻り量3回目(g)が小さければ小さいほど、優れていると評価する
なお、下記表3において、以下の評価基準も併記する。
【0158】
◎:3.0g未満
○:3.0g以上3.5g未満
×:3.5g以上。
【0159】
<横漏れ量>
横漏れ量は、図14に示す装置を使用して測定した。
【0160】
概略としては、市販の実験設備用の架台60とパイプ61を用いて、アクリル板63を傾斜させて固定した後、板上に固定した吸水性シートに鉛直上方から漏斗で生理食塩水を投入し、漏れ量を計量する機構である。以下に詳細な仕様を示す。
【0161】
アクリル板63は傾斜面方向の長さが400mmで、架台60によって水平に対して成す角45°になるよう固定した。アクリル板63は幅100mm、厚さ3mmであった。アクリル板63の表面は滑らかなので、板に液体が滞留したり吸収されたりすることはなかった。架台60を用いて、漏斗64を傾斜アクリル板63の鉛直上方に固定した。漏斗64は7mL/秒で液が投入されるものを使用した。
【0162】
アクリル板63の下部には、金属製トレイ65を設置されており、漏れとして流れ落ちる試験液をすべて受けとめ、その質量を0.1gの精度で記録した。
【0163】
このような装置を用いた傾斜における漏れ試験は以下の手順で行った。図13に示すように、長さ200mm・幅100mmのサイズの短冊状で、長手方向が不織布の縦方向となるように切断した吸水性シート66を、アクリル板63上に貼り付けた。
【0164】
吸水性シートの上端から6cm下方向の箇所に目印をつけ、漏斗の投入口を、目印から鉛直上方距離10±2mmになるように固定した。
【0165】
滴下漏斗64に生理食塩水50mLを一度に投入した。試験液が吸水性シート66に吸収されずに傾斜したアクリル板63を流れ、金属製トレイ65に入った液量を測定し、面方向の漏れ量(mL)とした。
【0166】
結果を表3に示す。
【0167】
なお、下記表3において、以下の評価基準も併記する。
【0168】
◎:20g未満
○:20g以上25g未満
△:25g以上28g未満
×:28g以上。
【0169】
【表3】
【0170】
以上の結果より、実施例1~8の吸水性シートは、比較例1~6の吸水性シートと比較して、特定戻り量評価における逆戻り量が顕著に少なく、また、吸水性シートからの液の面方向の漏れも顕著に低下したものであった。
【0171】
一方、第1の基材の加圧下厚みが0.15mm未満である比較例1、または、第1の基材の吸水量が100g/mを超える比較例3、4は、特定戻り量評価における逆戻り量が著しく悪化した。また、第1の基材の吸水量が5g/m未満である比較例2は、面方向の漏れが著しいものであった。さらに、粒子状吸水剤の吸水時間が55秒を超え、加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g超の比較例5、または、粒子状吸水剤の吸水時間が55秒以下で、加圧下拡散吸水倍率30分が10g/g以下である比較例6は、面方向の漏れが著しいものであった。
【0172】
本出願は、2018年8月9日に出願された、日本特許出願 特願2018-150124号、特願2018-150125号、特願2018-150129号、2018年9月28日に出願された、特願2018-185701号、特願2018-185706号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
【符号の説明】
【0173】
10、20、30、40 吸水性シート
11 第1の基材、
12 吸水層、
13 第2の基材、
14 粒子状吸水剤、
14a 第1の粒子状吸水剤、
14b 第2の粒子状吸水剤、
15 上層シート、
16 中間シート、
41 天秤、
42 容器、
42a、42b 開口部、
43 外気吸入パイプ、
45 測定部、
46 ガラスフィルタ、
47 濾紙、
48 シート、
49 支持円筒、
50 金網、
51 重り、
52 塩化ナトリウム水溶液、
55 ディッシュ、
56 第1の基材、
57 パラレルプレート、
60 架台、
61 パイプ、
63 アクリル板、
64 漏斗、
65 金属製トレイ、
66 吸水性シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14