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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020551715
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2018039104
(87)【国際公開番号】W WO2020079855
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 暁
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249777(JP,A)
【文献】特開2010-154382(JP,A)
【文献】特開平03-275044(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033666(WO,A1)
【文献】特開2009-061112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、
前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、
前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、
前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、
前記配線部材は、
電気絶縁性を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え
前記複数の信号配線は、
前記樹脂層上において、前記樹脂層における長手方向の一端から他端に向けて延在する第1の信号配線と、
前記樹脂層上において、前記他端から前記一端に向けて延在する第2の信号配線と、を備える超音波プローブ。
【請求項2】
前記複数の信号配線は、
前記樹脂層の長手方向に沿う長さが互いに異なる請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記配線部材は、
前記導電層を挟んで前記樹脂層に対向する絶縁層をさらに有し、
前記複数の信号配線は、
前記絶縁層に設けられた複数のビアをそれぞれ経由することによって前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続する請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記導電層は、
前記信号配線と同一の材料、及び同一の厚みを有するダミー配線を備える請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記背面層は、
前記超音波トランスデューサと電気的に接続する請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記配線部材の少なくとも一部は、
前記第1の位置に配設されているとともに、前記複数の圧電素子と前記音響レンズ層との中間の音響インピーダンスを有する請求項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記背面層は、
前記複数の圧電素子と電気的に接続するとともに、前記複数の圧電素子よりも大きい音響インピーダンスを有するデマッチング層によって構成され、グラウンドとなるグラウンド線が電気的に接続される請求項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記背面層は、
前記複数の圧電素子に対してそれぞれ複数、設けられているとともに、前記複数の圧電素子よりも大きい音響インピーダンスを有する複数のデマッチング層によって構成され、
前記配線部材の少なくとも一部は、
前記第2の位置に配設され、
前記複数の信号配線は、
前記複数のデマッチング層を介して、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続する請求項に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
被検体内に挿入される挿入部を有する超音波内視鏡において、
前記挿入部の先端側には、
入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、
前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、
前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、
前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、
前記配線部材は、
電気絶縁性を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え
前記複数の信号配線は、
前記樹脂層上において、前記樹脂層における長手方向の一端から他端に向けて延在する第1の信号配線と、
前記樹脂層上において、前記他端から前記一端に向けて延在する第2の信号配線と、を備える超音波内視鏡。
【請求項10】
入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、
前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、
前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、
前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、
前記配線部材は、
電気絶縁性を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、
前記導電層は、
前記信号配線と同一の材料、及び同一の厚みを有するダミー配線を備える超音波プローブ。
【請求項11】
入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、
前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、
前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、
前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、
前記配線部材は、
電気絶縁性を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、
前記背面層は、
前記超音波トランスデューサと電気的に接続し、
前記配線部材の少なくとも一部は、
前記第1の位置に配設されているとともに、前記複数の圧電素子と前記音響レンズ層との中間の音響インピーダンスを有し、
前記背面層は、
前記複数の圧電素子と電気的に接続するとともに、前記複数の圧電素子よりも大きい音響インピーダンスを有するデマッチング層によって構成され、グラウンドとなるグラウンド線が電気的に接続される超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ及び超音波内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を備えた超音波プローブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の超音波プローブ(超音波アレイ振動子)は、コンベックス型の超音波プローブによって構成されている。より具体的に、超音波プローブは、複数の圧電素子の他、音響整合層と、音響レンズ層と、バッキング材と、ケーブル配線基板とを備える。
ここで、圧電素子の外面のうち、外表面には、グラウンド電極が設けられている。また、圧電素子の外面のうち、当該外表面と表裏をなす背面側の内表面には、信号電極が設けられている。
また、ケーブル配線基板は、複数の圧電素子に設けられた各信号電極に対して当接した状態で立設されている。当該各信号電極には、当該ケーブル配線基板を経由することによって、電気信号が入力される。そして、複数の圧電素子は、当該入力した電気信号に応じて、超音波をそれぞれ出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-224104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波プローブでは、ケーブル配線基板を配置するために、複数の圧電素子の背面側に広い空間を必要とし、小型化を図ることが難しい、という問題がある。また、複数の圧電素子の背面側に直接、ケーブル配線基板を配置した場合には、当該ケーブル配線基板がバッキング材としての機能を有していないため、音響性能が低下してしまう虞がある、という問題がある。
そこで、音響性能の低下を回避しつつ、小型化を図ることができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音響性能の低下を回避しつつ、小型化を図ることができる超音波プローブ及び超音波内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波プローブは、入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、前記配線部材は、電気絶縁性を有する樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、前記複数の信号配線は、前記樹脂層上において、前記樹脂層における長手方向の一端から他端に向けて延在する第1の信号配線と、前記樹脂層上において、前記他端から前記一端に向けて延在する第2の信号配線と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る超音波内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部を有する超音波内視鏡において、前記挿入部の先端側には、入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、前記配線部材は、電気絶縁性を有する樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、前記複数の信号配線は、前記樹脂層上において、前記樹脂層における長手方向の一端から他端に向けて延在する第1の信号配線と、前記樹脂層上において、前記他端から前記一端に向けて延在する第2の信号配線と、を備える。
また、本発明に係る超音波プローブは、入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、前記配線部材は、電気絶縁性を有する樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、前記導電層は、前記信号配線と同一の材料、及び同一の厚みを有するダミー配線を備える。
また、本発明に係る超音波プローブは、入力した電気信号に応じて超音波をそれぞれ出射する複数の圧電素子を有し、前記複数の圧電素子が第1の方向に沿って並列された超音波トランスデューサと、前記複数の圧電素子から出射された前記超音波を外部に放射する音響レンズ層と、前記超音波トランスデューサを挟んで前記音響レンズ層に対向する導電性を有する背面層と、前記音響レンズ層と前記超音波トランスデューサとの間の第1の位置、または、前記背面層を挟んで前記超音波トランスデューサに対向する第2の位置に少なくとも一部が配設された配線部材と、を備え、前記配線部材は、電気絶縁性を有する樹脂層と、前記樹脂層上に設けられ、前記複数の圧電素子とそれぞれ電気的に接続するとともに前記複数の圧電素子に前記超音波をそれぞれ出射させる前記電気信号をそれぞれ供給する複数の信号配線を有する導電層と、を備え、前記背面層は、前記超音波トランスデューサと電気的に接続し、前記配線部材の少なくとも一部は、前記第1の位置に配設されているとともに、前記複数の圧電素子と前記音響レンズ層との中間の音響インピーダンスを有し、前記背面層は、前記複数の圧電素子と電気的に接続するとともに、前記複数の圧電素子よりも大きい音響インピーダンスを有するデマッチング層によって構成され、グラウンドとなるグラウンド線が電気的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る超音波プローブによれば、音響性能の低下を回避しつつ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る内視鏡システムを示す図である。
図2図2は、挿入部の先端を示す斜視図である。
図3図3は、超音波プローブを示す断面図である。
図4図4は、超音波トランスデューサと配線部材との接続構造を示す図である。
図5図5は、超音波トランスデューサと配線部材との接続構造を示す図である。
図6図6は、背面層を示す図である。
図7図7は、実施の形態2に係る超音波プローブを示す断面図である。
図8図8は、図7の一部を拡大した断面図である。
図9図9は、実施の形態1の変形例1を示す図である。
図10図10は、実施の形態1の変形例2を示す図である。
図11図11は、実施の形態1,2の変形例3を示す図である。
図12図12は、実施の形態1,2の変形例3を示す図である。
図13図13は、実施の形態1,2の変形例4を示す図である。
図14図14は、実施の形態1,2の変形例4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0011】
(実施の形態1)
〔内視鏡システムの概略構成〕
図1は、本実施の形態1に係る内視鏡システム1を示す図である。
内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断及び処置を行うシステムである。この内視鏡システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5とを備える。
超音波内視鏡2は、一部を被検体内に挿入可能とし、被検体内の体壁に向けて超音波パルス(音響パルス)を送信するとともに被検体にて反射された超音波エコーを受信することによってエコー信号を出力する機能、及び被検体内を撮像することによって画像信号を出力する機能を有する。
なお、超音波内視鏡2の詳細な構成については、後述する。
【0012】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル31(図1)を経由することによって超音波内視鏡2に電気的に接続し、超音波ケーブル31を経由することによって超音波内視鏡2に対してパルス信号を出力するとともに超音波内視鏡2からエコー信号を出力する。そして、超音波観測装置3では、当該エコー信号に対して所定の処理を施すことによって超音波画像を生成する。
【0013】
内視鏡観察装置4には、超音波内視鏡2の後述する内視鏡用コネクタ9(図1)が着脱自在に接続される。この内視鏡観察装置4は、図1に示すように、ビデオプロセッサ41と、光源装置42とを備える。
ビデオプロセッサ41は、内視鏡用コネクタ9を経由することによって超音波内視鏡2からの画像信号を入力する。そして、ビデオプロセッサ41は、当該画像信号に対して所定の処理を施すことによって内視鏡画像を生成する。
光源装置42は、内視鏡用コネクタ9を経由することによって被検体内を照明する照明光を超音波内視鏡2に対して供給する。
【0014】
表示装置5は、液晶、有機EL(Electro Luminescence)、CRT(Cathode Ray Tube)、または、プロジェクタを用いて構成され、超音波観測装置3によって生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4によって生成された内視鏡画像等を表示する。
【0015】
〔超音波内視鏡の構成〕
次に、超音波内視鏡2の構成について説明する。
超音波内視鏡2は、図1に示すように、挿入部6と、操作部7と、ユニバーサルコード8と、内視鏡用コネクタ9とを備える。
図2は、挿入部6の先端を示す斜視図である。
【0016】
なお、以下では、挿入部6の構成を説明するにあたって、挿入部6の先端側(被検体内への挿入方向の先端側)を「先端側」とのみ記載し、挿入部6の基端側(挿入部6の先端から離間する側)を「基端側」とのみ記載する。
挿入部6は、被検体内に挿入される部分である。この挿入部6は、図1または図2に示すように、先端側に設けられた超音波プローブ10と、超音波プローブ10の基端側に連結された硬性部材61と、硬性部材61の基端側に連結され湾曲可能とする湾曲部62と、湾曲部62の基端側に連結され可撓性を有する可撓管63(図1)とを備える。
【0017】
なお、挿入部6、操作部7、ユニバーサルコード8、及び内視鏡用コネクタ9の内部には、光源装置42から供給された照明光を伝送するライトガイド(図示略)、上述したパルス信号やエコー信号を伝送する振動子ケーブルCB(図3参照)、及び画像信号を伝送する信号ケーブル(図示略)が引き回されているとともに、流体を流通させるための管路(図示略)が設けられている。
【0018】
ここで、硬性部材61は、樹脂材料等から構成された硬質部材であり、挿入軸Ax(図2)に沿って延在する略円柱形状を有する。なお、挿入軸Axは、挿入部6の延在方向に沿う軸である。
この硬性部材61において、先端側の外周面には、先端に向かうにしたがって当該硬性部材61を先細形状とする傾斜面611が形成されている。
【0019】
そして、硬性部材61には、図2に示すように、基端から先端まで貫通した取付用孔(図示略)、基端から傾斜面611までそれぞれ貫通した照明用孔612、撮像用孔613、送気送水用孔614、及び処置具チャンネル615等が形成されている。
上述した取付用孔(図示略)は、超音波プローブ10が取り付けられる孔である。そして、当該取付用孔の内部には、振動子ケーブルCB(図3参照)が挿通されている。
【0020】
照明用孔612の内部には、上述したライトガイド(図示略)の出射端側と、当該ライトガイドの出射端から出射された照明光を被検体内に向けて照射する照明レンズ616(図2)とが配設されている。
撮像用孔613の内部には、被検体内に向けて照射され、当該被検体内で反射された光(被写体像)を集光する対物光学系617(図2)、及び当該対物光学系617によって集光された被写体像を撮像する撮像素子(図示略)が配設されている。そして、当該撮像素子によって撮像された画像信号は、上述した信号ケーブル(図示略)を経由することによって内視鏡観察装置4(ビデオプロセッサ41)に伝送される。
【0021】
本実施の形態1では、上述したように照明用孔612及び撮像用孔613は、傾斜面611に形成されている。このため、本実施の形態1に係る超音波内視鏡2は、挿入軸Axに対して鋭角で交差する方向を観察する斜視タイプの内視鏡として構成されている。
【0022】
送気送水用孔614は、上述した管路(図示略)の一部を構成し、撮像用孔613に向けて送気または送水し、対物光学系617の外面を洗浄するための孔である。
処置具チャンネル615は、挿入部6の内部に挿通された穿刺針等の処置具(図示略)を外部に突出させる通路である。
【0023】
操作部7は、挿入部6の基端側に連結され、医師等から各種操作を受け付ける部分である。この操作部7は、図1に示すように、湾曲部62を湾曲操作するための湾曲ノブ71と、各種操作を行うための複数の操作部材72とを備える。
また、操作部7には、湾曲部62及び可撓管63の内部に設けられたチューブ(図示略)を経由することによって処置具チャンネル615に連通し、当該チューブに処置具(図示略)を挿通するための処置具挿入口73(図1)が設けられている。
【0024】
ユニバーサルコード8は、操作部7から延在し、上述したライトガイド(図示略)、振動子ケーブルCB、上述した信号ケーブル(図示略)、及び上述した管路(図示略)の一部を構成するチューブ(図示略)が配設されたコードである。
内視鏡用コネクタ9は、ユニバーサルコード8の端部に設けられている。そして、内視鏡用コネクタ9は、超音波ケーブル31が接続されるとともに、内視鏡観察装置4に挿し込まれることでビデオプロセッサ41及び光源装置42に接続する。
【0025】
〔超音波プローブの構成〕
次に、超音波プローブ10の構成について説明する。
図3は、超音波プローブ10を示す断面図である。具体的に、図3は、挿入軸Axを含み、走査面SSに対して直交する平面にて超音波プローブ10を切断した断面図である。
超音波プローブ10は、コンベックス型の超音波プローブであり、外部(図3中、上方側)に向けて凸となる円筒面状の走査面SSを有する。ここで、走査面SSは、超音波プローブ10の外表面の一部を構成する。
なお、以下では、超音波プローブ10の構成を説明するにあたって、円筒面状の走査面SSの周方向を第1の方向A1(図3)と記載し、円筒面状の走査面SSにおける円筒軸に沿う方向(図3中、紙面に直交する方向)を第2の方向A2(図4)と記載する。さらに、図3中、上方側を外表面側A3(図3)と記載し、図3中、下方側を背面側A4(図3)と記載する。
そして、超音波プローブ10は、走査面SSの法線によって構成される断面視扇状の超音波送受領域Ar(図3)内で第1の方向A1に沿って超音波を走査(送受信)する。
この超音波プローブ10は、図3に示すように、超音波トランスデューサ11と、配線部材12と、音響レンズ層13と、背面層14と、保持部材15とを備える。
【0026】
超音波トランスデューサ11は、図3に示すように、複数の圧電素子111を備える。
複数の圧電素子111は、第2の方向A2に沿って直線状に延在する長尺状の直方体によってそれぞれ構成され、図3に示すように、第1の方向A1に沿って規則的に配列されている。また、圧電素子111の外面には、第1,第2の電極111a,111b(図5図6参照)が形成されている。そして、圧電素子111は、振動子ケーブルCB、配線部材12、背面層14、及び第1,第2の電極111a,111bを経由することによって入力したパルス信号(本発明に係る電気信号に相当)を超音波パルスに変換し、被検体に向けて送信する。また、圧電素子111は、被検体によって反射された超音波エコーを電気的なエコー信号に変換し、第1,第2の電極111a,111b、背面層14、及び配線部材12を経由することによって振動子ケーブルCBに出力する。
【0027】
ここで、圧電素子111は、PMN-PT単結晶、PMN-PZT単結晶、PZN-PT単結晶、PIN-PZN-PT単結晶またはリラクサー系材料を用いて形成される。
なお、PMN-PT単結晶は、マグネシウム・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。PMN-PZT単結晶は、マグネシウム・ニオブ酸鉛及びチタン酸ジルコン酸鉛の固溶体の略称である。PZN-PT単結晶は、亜鉛・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。PIN-PZN-PT単結晶は、インジウム・ニオブ酸鉛、亜鉛・ニオブ酸鉛及びチタン酸鉛の固溶体の略称である。リラクサー系材料は、圧電定数や誘電率を増加させる目的でリラクサー材料である鉛系複合ペロブスカイトをチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に添加した三成分系圧電材料の総称である。鉛系複合ペロブスカイトは、Pb(B1、B2)Oによって表され、B1はマグネシウム、亜鉛、インジウムまたはスカンジウムのいずれかであり、B2はニオブ、タンタルまたはタングステンのいずれかである。これらの材料は、優れた圧電効果を有している。このため、小型化しても電気的なインピーダンスの値を低くすることができ、第1,第2の電極111a,111bとの間のインピーダンスマッチングの観点から好ましい。
【0028】
第1,第2の電極111a,111bは、導電性を有する金属材料または樹脂材料によってそれぞれ構成され、圧電素子111における以下の外面にそれぞれ形成されている。
第1の電極111aは、圧電素子111の外面において、外表面側A3の外面全体に形成されている。そして、第1の電極111aは、配線部材12に設けられた複数の信号配線124(図4図5参照)と電気的に接続し、圧電素子111への信号の入出力を行う信号電極として機能する。
第2の電極111bは、圧電素子111の外面において、背面側A4の外面全体に形成されている。すなわち、第1,第2の電極111a,111bは、圧電素子111を挟んで、走査面SSの法線方向に沿って互いに対向する。そして、第2の電極111bは、振動子ケーブルCBのグラウンド線GR(図3)と電気的に接続し、グラウンド電極として機能する。
【0029】
図4及び図5は、超音波トランスデューサ11と配線部材12との接続構造を示す図である。具体的に、図4は、配線部材12の一部(超音波トランスデューサ11と音響レンズ層13との間の第1の位置P1(図3)に配設された部分)を外表面側A3から見た平面図である。なお、図4では、説明の便宜上、樹脂層121の図示を省略している。図5は、図3の一部を拡大した断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、導電層122として、複数の信号配線124を一部材によって図示している。
配線部材12は、振動子ケーブルCBの信号線(図示略)と複数の圧電素子111に設けられた各第1の電極111aとを電気的に接続する部材である。本実施の形態1では、配線部材12は、フレキシブル回路基板(FPC)によって構成されている。この配線部材12は、図3ないし図5に示すように、樹脂層121(図3図5)と、導電層122と、絶縁層123とを備える。なお、図3では、説明の便宜上、導電層122及び絶縁層123の図示を省略している。
【0030】
樹脂層121は、ポリイミド等の絶縁材料から構成された可撓性を有する長尺状のシート(基板)である。以下では、樹脂層121において、互いに表裏をなす一対のシート面を第1,第2の面121a,121b(図3図5)と記載する。この樹脂層121は、図3に示すように、第1の面121aが外表面を構成する状態で折り返される。言い換えれば、樹脂層121は、第2の面121bが内側に位置する状態で折り返される。そして、超音波トランスデューサ11及び背面層14は、折り返された樹脂層121の内側に配置される。すなわち、配線部材12の一部は、超音波トランスデューサ11と音響レンズ層13との間の第1の位置P1(図3)に配設される。
【0031】
導電層122は、図4に示すように、複数の信号配線124と、複数のダミー配線125とを備える。
複数の信号配線124は、導電性を有する金属材料または樹脂材料によって構成され、振動子ケーブルCBの信号線(図示略)と複数の圧電素子111に設けられた各第1の電極111aとの間で上述したパルス信号やエコー信号を伝送する信号配線である。これら複数の信号配線124は、図4に示すように、複数(図4の例では14本)の第1の信号配線124aと、複数(図4の例では14本)の第2の信号配線124bとを備える。
【0032】
複数の第1の信号配線124aは、第2の面121b上において、樹脂層121の長手方向の一端ER1(図3)から他端ER2(図3)に向けてそれぞれ延在するとともに、当該樹脂層121の幅方向(第2の方向A2)に沿って並列された配線パターンとしてそれぞれ構成されている。これら複数の第1の信号配線124aは、図4に示すように、樹脂層121の長手方向に沿う長さが互いに異なる。図4の例では、複数の第1の信号配線124aは、図4中、最も上方側に位置する第1の信号配線124aの当該長さが最も長く、図4中、下方側に配置されるにしたがって、当該長さが短くなる。
【0033】
複数の第2の信号配線124bは、導電性を有する金属材料または樹脂材料によって構成され、第2の面121b上において、樹脂層121の長手方向の他端ER2から一端ER1に向けてそれぞれ延在するとともに、当該樹脂層121の幅方向(第2の方向A2)に沿って並列された配線パターンとしてそれぞれ構成されている。これら複数の第2の信号配線124bは、図4に示すように、樹脂層121の長手方向に沿う長さが互いに異なる。図4の例では、複数の第2の信号配線124bは、図4中、最も下方側に位置する第2の信号配線124bの当該長さが最も長く、図4中、上方側に配置されるにしたがって、当該長さが短くなる。
【0034】
そして、第2の面121b上において、複数の第1の信号配線124aにおける他端ER2側の各端部ES1(図4)と複数の第2の信号配線124bにおける一端ER1側の各端部ES2(図4)との間には、平行四辺形型の領域Ar1が形成される。
【0035】
複数のダミー配線125は、導電性を有する金属材料または樹脂材料によって構成され、第2の面121b上の領域Ar1にそれぞれ形成されたダミーの配線パターン(いずれの部材とも電気的に接続しない配線パターン)である。本実施の形態1では、ダミー配線125は、第1,第2の信号配線124a,124bと同一の数だけ設けられているとともに、互いに対向する各端部ES1,ES2同士を結ぶ線上にそれぞれ設けられている。
本実施の形態1では、複数の信号配線124及びダミー配線125は、同一の材料によって構成されているとともに、同一の幅寸法及び厚み寸法を有する。
【0036】
絶縁層123は、ポリイミド等の絶縁材料から構成されている。この絶縁層123は、導電層122を挟んで樹脂層121(第2の面121b)に対向する位置に設けられ、導電層122の絶縁性を確保するとともに当該導電層122を保護する。この絶縁層123には、図5に示すように、各端部ES1,ES2に対向する各位置にビアVIがそれぞれ設けられている。そして、各ビアVIは、各端部ES1,ES2とそれぞれ電気的に接続するとともに、複数の圧電素子111に設けられた各第1の電極111aとそれぞれ電気的に接続する。すなわち、複数の信号配線124は、各ビアVIを経由することによって、各第1の電極111a(複数の圧電素子111)とそれぞれ電気的に接続する。
【0037】
なお、具体的な図示は省略したが、絶縁層123において、複数の第1の信号配線124aにおける一端ER1側の各端部と複数の第2の信号配線124bにおける他端ER2側の各端部に対向する各位置にもビアがそれぞれ設けられている。そして、当該各ビアは、当該各端部とそれぞれ電気的に接続するとともに、振動子ケーブルCBの信号線とそれぞれ電気的に接続する。なお、配線部材12と振動子ケーブルCBの信号線との接続位置は、図3に示すように、超音波トランスデューサ11、音響レンズ層13、及び背面層14よりも基端側に位置する。
【0038】
そして、配線部材12の一部を第1の位置P1に配設した場合には、超音波トランスデューサ11と被検体との間で音(超音波)を効率良く透過させるために、当該配線部材12を、当該超音波トランスデューサ11と被検体との間の音響インピーダンスをマッチングさせる音響整合層として機能させることが好ましい。
具体的に、配線部材12は、超音波トランスデューサ11と音響レンズ層13との中間の音響インピーダンスを有していることが好ましい。例えば、樹脂層121及び絶縁層123の各音響インピーダンスは、2~20MRaylであることが好ましい。また、樹脂層121及び絶縁層123の音響インピーダンスは、超音波トランスデューサ11側から音響レンズ層13側に向けて順に小さくなることが好ましい(例えば、絶縁層123の音響インピーダンス:9MRayl、樹脂層121の音響インピーダンス:2MRayl)。さらに、樹脂層121及び絶縁層123の各厚みは、超音波トランスデューサ11から送信され、当該樹脂層121及び絶縁層123を透過する超音波の中心周波数における波長λ(例えば、400~500μm)の1/4以下であることが好ましい。また、導電層122の厚みは、当該波長λの1/25以下であることが好ましい。
【0039】
音響レンズ層13は、図3に示すように、接着剤(図示略)による接着力やレンズ材そのものを注型した際の密着力によって、配線部材12における第1の位置P1に配設された部分において、樹脂層121の第1の面121a上に固定される。すなわち、音響レンズ層13において、外表面側A3の面は、走査面SSとなる。この走査面SSは、第1の方向A1に沿って延在した断面視円弧形状を有するとともに、第2の方向に沿って延在した断面視円弧形状を有する。すなわち、走査面SSは、外表面側A3に向けて突出した凸形状を有する。そして、音響レンズ層13は、超音波トランスデューサ11から送信され、配線部材12における第1の位置P1に配設された部分を透過した超音波パルスを収束させる。また、音響レンズ層13は、被検体により反射された超音波エコーを配線部材12における第1の位置P1に配設された部分に伝達する。
【0040】
図6は、背面層14を示す図である。具体的に、図6は、図3の一部を拡大した断面図である。
背面層14は、超音波トランスデューサ11の背面側A4(超音波トランスデューサ11を挟んで音響レンズ層13に対向する側)に設けられている。本実施の形態1では、背面層14は、超音波トランスデューサ11よりも大きい音響インピーダンスを有し、かつ、導電性を有する例えばタングステン等によって構成されたデマッチング層として機能する。すなわち、背面層14は、超音波トランスデューサ11から送信され、被検体とは逆方向(背面側A4)に向かう超音波を被検体に向けて跳ね返し、被検体に入射する超音波を増やす機能を有する。そして、背面層14は、複数の圧電素子111に設けられた各第2の電極111bと電気的に接続する。また、背面層14には、図3または図6に示すように、振動子ケーブルCBのグラウンド線GRが電気的に接続される。すなわち、複数の圧電素子111に設けられた各第2の電極111bは、背面層14を経由することによって、グラウンド線GRと電気的に接続する。
【0041】
保持部材15は、図3に示すように、保持部151と、取付部152とを備える。
保持部151は、超音波トランスデューサ11、配線部材12、音響レンズ層13、及び背面層14が一体化されたユニットを保持する部分である。この保持部151には、図3に示すように、当該ユニットを保持しつつ、音響レンズ層13の走査面SSを外部に露出させる凹部151aが形成されている。そして、凹部151aと当該ユニットとの隙間には、接着剤AD(図3)が充填される。
【0042】
取付部152は、保持部151の基端に一体形成され、硬性部材61における上述した取付用孔(図示略)に挿入され、当該硬性部材61に対して取り付けられる部分である。この取付部152には、図3に示すように、基端から凹部151aまで貫通し、振動子ケーブルCBが挿通される挿通孔152aが形成されている。
【0043】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態1に係る超音波プローブ10は、一部が第1の位置P1に配設された配線部材12を備える。そして、配線部材12は、振動子ケーブルCBの信号線(図示略)と複数の圧電素子111に設けられた各第1の電極111aとを電気的に接続する。
このため、従来のように複数の圧電素子111の背面側A4に配線基板を配置する必要がない。言い換えれば、複数の圧電素子111の背面側A4に広い空間を必要としない。すなわち、超音波プローブ10の小型化を図ることができる。
また、配線部材12は、音響整合層として機能する。さらに、背面層14は、複数の圧電素子111に設けられた各第2の電極111bと電気的に接続し、かつ、導電性を有するデマッチング層によって構成され、グラウンド線GRが電気的に接続される。
このため、配線部材12の一部を第1の位置P1に配設した場合であっても、超音波トランスデューサ11と被検体との間で超音波を効率よく透過させることができ、音響性能が低下してしまうことがない。
したがって、本実施の形態1に係る超音波プローブ10によれば、音響性能の低下を回避しつつ、小型化を図ることができる。
【0044】
また、本実施の形態1に係る超音波プローブ10では、複数の第1の信号配線124aは、一端ER1から他端ER2に向けてそれぞれ延在するとともに、樹脂層121の長手方向に沿う長さが互いに異なる。また、複数の第2の信号配線124bは、他端ER2から一端ER1に向けてそれぞれ延在するとともに、樹脂層121の長手方向に沿う長さが互いに異なる。
このため、第2の面121b上における複数の信号配線124の配線スペースが狭い場合であっても、当該複数の信号配線124を効率的に配線し、当該複数の信号配線124によって、振動子ケーブルCBの信号線(図示略)と各第1の電極111aとを電気的に接続することができる。
【0045】
また、本実施の形態1に係る超音波プローブ10では、配線部材12は、導電層122を樹脂層121及び絶縁層123によって挟持した構成を有する。そして、複数の信号配線124は、絶縁層123に設けられた複数のビアVIをそれぞれ経由することによって各第1の電極111aとそれぞれ電気的に接続する。
このため、導電層122の絶縁性を十分に確保しつつ、配線部材12によって、振動子ケーブルCBの信号線(図示略)と各第1の電極111aとを電気的に接続することができる。
【0046】
また、本実施の形態1に係る超音波プローブ10では、導電層122は、信号配線124と同一の材料によって構成されるとともに、同一の幅寸法及び厚み寸法を有するダミー配線125を備える。
このため、超音波トランスデューサ11から送信される超音波は、いずれの位置から送信された場合であっても、同一の体積の導電層122を透過することとなる。したがって、音響性能のバラつきを抑制することができる。
【0047】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図7は、本実施の形態2に係る超音波プローブ10Aを示す断面図である。具体的に、図7は、図3に対応した断面図である。なお、図7では、説明の便宜上、導電層122及び絶縁層123の図示を省略している。図8は、図7の一部を拡大した断面図である。
本実施の形態2に係る超音波プローブ10Aでは、図8に示すように、上述した実施の形態1において説明した超音波プローブ10に対して、背面層14とは異なる形状の背面層14Aを採用している。また、超音波プローブ10Aでは、図7に示すように、上述した実施の形態1において説明したように配線部材12の一部を第1の位置P1に配設することなく、当該配線部材12の一部を背面層14Aの背面側A4(背面層14Aを挟んで超音波トランスデューサ11に対向する第2の位置P2)に配設している。さらに、超音波プローブ10Aでは、第1の位置P1に音響整合層16を配設している。
【0048】
具体的に、背面層14Aは、図8に示すように、超音波トランスデューサ11の背面側において、複数の圧電素子111毎にそれぞれ設けられ、上述した実施の形態1において説明した背面層14と同様に、デマッチング層としてそれぞれ機能する。
本実施の形態2に係る配線部材12は、上述した実施の形態1において説明した配線部材12とは逆に、第2の面121bが外表面を構成する状態で折り返される。言い換えれば、配線部材12は、第1の面121aが内側に位置する状態で折り返される。そして、各ビアVIは、各背面層14Aとそれぞれ電気的に接続する。本実施の形態2では、複数の信号配線124は、各ビアVI及び各背面層14Aを経由することによって、各第2の電極111b(複数の圧電素子111)とそれぞれ電気的に接続する。すなわち、第2の電極111bは、圧電素子111への信号の入出力を行う信号電極として機能する。
【0049】
音響整合層16は、超音波トランスデューサ11と被検体との間で音(超音波)を効率良く透過させるために、超音波トランスデューサ11と被検体との間の音響インピーダンスをマッチングさせる部材である。本実施の形態2では、音響整合層16は、導電性を有する樹脂によって構成されている。すなわち、音響整合層16は、複数の圧電素子111に設けられた各第1の電極111aと電気的に接続する。そして、音響整合層16には、図7に示すように、振動子ケーブルCBのグラウンド線GRが電気的に接続される。すなわち、第1の電極111aは、グラウンド電極として機能する。
【0050】
以上説明した本実施の形態2に係る超音波プローブ10Aを採用した場合であっても、上述した実施の形態1と同様の効果を有する。
【0051】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1,2によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1,2では、超音波プローブ10(10A)は、コンベックス型の超音波プローブによって構成されていたが、これに限らず、ラジアル型の超音波プローブによって構成しても構わない。
上述した実施の形態1,2では、内視鏡システム1は、超音波画像を生成する機能、及び内視鏡画像を生成する機能の双方を有していたが、これに限らず、超音波画像を生成する機能のみを有する構成としても構わない。
【0052】
上述した実施の形態1,2において、内視鏡システム1は、医療分野に限らず、工業分野において、機械構造物等の被検体の内部を観察する内視鏡システムとしても構わない。
上述した実施の形態1,2において、超音波内視鏡2は、挿入軸Axに対して鋭角で交差する方向を観察する斜視タイプの内視鏡によって構成されていたが、これに限らない。例えば、超音波内視鏡2を、挿入軸Axに対して直角に交差する方向を観察する側視タイプの内視鏡や、挿入軸Axに沿う方向を観察する直視タイプの内視鏡として構成しても構わない。
【0053】
上述した実施の形態1,2において、圧電素子111に対して第1,第2の電極111a,111bを設ける位置は、上述した実施の形態1,2において説明した位置に限らず、その他の位置に設けても構わない。例えば、第1の電極111aは、圧電素子111における外表面側A3の外面の他、その他の外面にも設けられ、断面視L字形状を有していても構わない。同様に、第2の電極111bは、圧電素子111における背面側A4の外面の他、その他の外面にも設けられ、断面視L字形状を有していても構わない。また、圧電素子111の外面において、当該圧電素子111を挟んで第1の方向A1に沿って互いに対向する位置に第1,第2の電極111,111bをそれぞれ設けても構わない。
上述した実施の形態1において、電気安全性や第1,第2の信号配線124a,124bへのノイズの混入を回避することを目的として、配線部材12の最外面(第1の面121a)に導電性を有する層をさらに設けても構わない。
【0054】
図9は、本実施の形態1の変形例1を示す図である。具体的に、図9は、本変形例1に係る配線部材12Bの一部(第1の位置P1に配設された部分)を外表面側A3から見た斜視図である。なお、図9では、説明の便宜上、樹脂層121の図示を省略している。
本変形例1に係る配線部材12Bでは、上述した実施の形態1において説明した配線部材12に対して、導電層122とは異なる導電層122Bを採用している。
導電層122Bは、導電層122とは異なり、複数のダミー配線125を有していない。また、複数の第1の信号配線124a、及び複数の第2の信号配線124bは、図9に示すように、外表面側A3から見た場合において、超音波トランスデューサ11の中心に位置する領域ArOに重なり合わない領域にそれぞれ設けられている。
本変形例1に係る配線部材12Bを採用した場合には、外表面側A3から見た場合において、領域ArOには導電層122Bが設けられていないため、当該導電層122Bによる音響性能の低下を回避することができる。
【0055】
図10は、本実施の形態1の変形例2を示す図である。具体的に、図10は、本変形例2に係る配線部材12Cの一部(第1の位置P1に配設された部分)を外表面側A3から見た平面図である。なお、図10では、説明の便宜上、樹脂層121及び複数の第1の信号配線124aの図示を省略している。
本変形例2に係る配線部材12Cでは、上述した実施の形態1において説明した配線部材12に対して、導電層122とは異なる導電層122Cを採用している。
導電層122Cは、導電層122とは異なり、複数のダミー配線125を有していない。また、複数の第2の信号配線124bは、図10に示すように、外表面側A3から見た場合において、複数の圧電素子111に対してなるべく重なり合わない状態で、一部が隣接する圧電素子111間に設けられている。なお、複数の第1の信号配線124aも同様である。
本変形例2に係る配線部材12Cを採用した場合であっても、上述した変形例1と同様の効果を奏する。
【0056】
図11及び図12は、実施の形態1,2の変形例3を示す図である。具体的に、図11は、本変形例3に係る配線部材12Dを第1の面121a側から見た平面図である。図12は、配線部材12Dを第2の面121b側から見た平面図である。なお、図11及び図12では、説明の便宜上、複数の第1の信号配線124aの図示を省略している。また、図12では、絶縁層123の図示を省略している。
上述した実施の形態1,2では、導電層122は、第2の面121b上にのみ設けられていた。すなわち、導電層122は、一層によって構成されていた。
これに対して本変形例3に係る配線部材12Dに設けられた導電層122Dは、二層によって構成されている。具体的に、複数の第2の信号配線124bは、図11に示すように、第1の面121a上にそれぞれ設けられた一層と、第2の面121b上にそれぞれ設けられた一層との二層によって構成されている。なお、複数の第1の信号配線124aも同様である。
本変形例3のように構成した場合には、互いに隣接する第2の信号配線124b間(互いに隣接する第1の信号配線124a間)の距離が長くなる。このため、互いに隣接する第2の信号配線124b間(互いに隣接する第1の信号配線124a間)の信号の相互干渉が抑制(クロストークの発生が抑制)される。
【0057】
図13及び図14は、実施の形態1,2の変形例4を示す図である。具体的に、図13及び図14は、内視鏡用コネクタ9内に設けられ、振動子ケーブルCBと超音波ケーブル31とを電気的に接続する接続部材200の構成を示す図である。また、図13は、FPC210の平面図である。図14は、接続部材200の側面図である。
上述した実施の形態1,2に係る内視鏡システム1において、図13及び図14に示した接続部材200を採用しても構わない。
接続部材200は、図13または図14に示すように、FPC210と、コネクタ220(図14)とを備える。
【0058】
FPC210は、図13または図14に示すように、回路基板211と、グラウンドパッド212と、複数(本変形例3では4つ)の信号パッド213と、カバー部材214とを備える。
回路基板211は、ポリイミド等の絶縁材料から構成された長尺状の基板内にグラウンド線(図示略)や複数の信号線(図示略)が設けられた回路基板である。
【0059】
グラウンドパッド212は、回路基板211上において、振動子ケーブルCB側(図13図14中、左側)の端部に設けられ、当該回路基板211内部のグラウンド線(図示略)に導通する。そして、グラウンドパッド212には、図14に示すように、振動子ケーブルCBのグラウンド線GRが電気的に接続される。
【0060】
複数の信号パッド213は、回路基板211上において、グラウンドパッド212に対して、図13及び図14中、右側に設けられている。これら複数の信号パッド213は、回路基板211の長手方向(図13図14中、左右方向)に沿ってそれぞれ延在し、当該回路基板211の幅方向(図13中、上下方向)に沿って並列されている。そして、複数の信号パッド213において、図13及び図14中、右側の各端部は、回路基板211内部の複数の信号線(図示略)にそれぞれ導通する。
【0061】
カバー部材214は、カバーレイ等の絶縁材料から構成されている。そして、カバー部材214は、複数の信号パッド213を跨ぐ状態で設けられ、当該複数の信号パッド213を図13及び図14中、左側の領域ArLと右側の領域ArRとに区画する。
【0062】
そして、複数の信号パッド213において、領域ArLには、図14に示すように、振動子ケーブルCBの複数の信号線SGがそれぞれ電気的に接続される。一方、複数の信号パッド213において、領域ArRは、複数の圧電素子111から当該複数の信号線SGに至る各電気経路の検査用のパッドとして機能する。
【0063】
なお、図13及び図14の例では、カバー部材214は、回路基板211上におけるグラウンドパッド212と複数の信号パッド213との間、及び複数の信号パッド213における図13及び図14中、右側の端部上にも設けられている。
コネクタ220は、回路基板211内部のグラウンド線(図示略)及び複数の信号線(図示略)と超音波ケーブル31とを電気的に接続するコネクタである。
【符号の説明】
【0064】
1 内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 内視鏡観察装置
5 表示装置
6 挿入部
7 操作部
8 ユニバーサルコード
9 内視鏡用コネクタ
10,10A 超音波プローブ
11 超音波トランスデューサ
12,12B~12D 配線部材
13 音響レンズ層
14,14A 背面層
15 保持部材
16 音響整合層
31 超音波ケーブル
41 ビデオプロセッサ
42 光源装置
61 硬性部材
62 湾曲部
63 可撓管
71 湾曲ノブ
72 操作部材
73 処置具挿入口
111 圧電素子
111a 第1の電極
111b 第2の電極
121 樹脂層
121a 第1の面
121b 第2の面
122,122B~122D 導電層
123 絶縁層
124 信号配線
124a 第1の信号配線
124b 第2の信号配線
125 ダミー配線
151 保持部
151a 凹部
152 取付部
152a 挿通孔
200 接続部材
210 FPC
211 回路基板
212 グラウンドパッド
213 信号パッド
214 カバー部材
220 コネクタ
611 傾斜面
612 照明用孔
613 撮像用孔
614 送気送水用孔
615 処置具チャンネル
616 照明レンズ
617 対物光学系
A1 第1の方向
A2 第2の方向
A3 外表面側
A4 背面側
AD 接着剤
Ar 超音波送受領域
Ar1,ArL,ArO,ArR 領域
Ax 挿入軸
CB 振動子ケーブル
ER1 一端
ER2 他端
ES1,ES2 端部
GR グラウンド線
P1 第1の位置
P2 第2の位置
SG 信号線
SS 走査面
VI ビア
図1
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