(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】モジュラーボーリングシステム
(51)【国際特許分類】
B23B 29/12 20060101AFI20220609BHJP
B23B 29/03 20060101ALI20220609BHJP
B23B 31/107 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B23B29/12 Z
B23B29/03 A
B23B31/107 C
(21)【出願番号】P 2021065122
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591028072
【氏名又は名称】株式会社日研工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 弘英
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0256318(US,A1)
【文献】特開2018-079517(JP,A)
【文献】特開2009-012142(JP,A)
【文献】特開2014-014926(JP,A)
【文献】特開昭60-094246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0304905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0014647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/00 - 29/22
B23B 31/107
B23Q 11/10
B28D 1/14
B24B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク側になる末端側に配置される部材であって、先端側に開口する凹部を中心に区画する筒状の先端接続部、および前記凹部の底から末端側へ延びるシャンク側通路を有する工具シャンク側部材と、
ヘッド側になる先端側に配置される部材であって、前記工具シャンク側部材の前記凹部に嵌合する末端接続部、および前記末端接続部の末端面から先端側へ延びるヘッド側通路を有するヘッド側部材と、
前記工具シャンク側部材の前記先端接続部の外周面から前記凹部まで延びる第1サイドロックボルト孔に螺合し、前記ヘッド側部材の前記末端接続部の外周面に形成される有底の第1固定穴に進入することにより、前記ヘッド側部材と前記工具シャンク側部材を着脱可能に接続固定する第1サイドロックボルトと、
前記シャンク側通路よりも先端側に配置される部材であって、前記凹部に嵌合する末端大径部、前記末端側大径部から先端側へ突出して前記ヘッド側通路に嵌合する先端小径部、および前記末端大径部から前記先端小径部まで貫通して前記シャンク側通路および前記ヘッド側通路を連通する貫通路を有する通路接続部材と、
前記末端大径部の外周面と前記凹部の内周面の環状隙間を封止する末端シール部と、
前記先端小径部の外周面と前記ヘッド側通路の環状隙間を封止する先端シール部とを備える、モジュラーボーリングシステム。
【請求項2】
前記工具シャンク側部材の前記先端接続部は、前記第1サイドロックボルト孔よりも末端側に複数設けられて周方向等間隔に配列され、前記先端接続部の外周面から前記凹部まで延びる第2サイドロックボルト孔をさらに有し、
前記第2サイドロックボルト孔にそれぞれ螺合し、前記通路接続部材の前記末端大径部に当接することにより、前記通路接続部材を前記工具シャンク側部材に固定する複数の第2サイドロックボルトをさらに備える、請求項1に記載のモジュラーボーリングシステム。
【請求項3】
前記通路接続部材は、前記末端大径部のうち前記末端シール部よりも末端側の外周面に複数形成されて周方向等間隔に配列される有底の第2固定穴をさらに有し、
前記第2サイドロックボルトの先端が前記第2固定穴に進入する、請求項2に記載のモジュラーボーリングシステム。
【請求項4】
前記第2固定穴はテーパ穴である、請求項3に記載のモジュラーボーリングシステム。
【請求項5】
前記第2サイドロックボルト孔および前記第2サイドロックボルトの隙間が接着剤によってシールされる、請求項
2~4のいずれかに記載のモジュラーボーリングシステム。
【請求項6】
前記第2サイドロックボルトの外周面と前記第2サイドロックボルト孔の内周面との環状隙間を封止する第2サイドロックボルト孔シール部をさらに備える、請求項
2~5のいずれかに記載のモジュラーボーリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸先端に装着され、ワークを穿孔する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリングバーやボーリングヘッドを工具シャンクに接続し、さらには必要に応じて中継部材をこれらの間に継ぎ足して全長を長くすることができる深穴加工用切削工具として、特許第6810221号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。特許文献1のモジュラーボーリングシステムは、工具シャンク側部材の先端接続部に、ヘッド側部材(または中継部材)を接続することによって、モジュラーボーリングシステムの全長を長くすることができる。工具シャンク側部材の先端接続部には、ヘッド側部材の末端部が差し込まれる凹部と、工具シャンク側部材の半径方向に延びて凹部と接続するサイドロックボルト孔が形成される。サイドロックボルト孔には外径側からサイドロックボルトがねじ込まれ、サイドロックボルトはヘッド側部材の末端部に形成される固定孔に進入することにより、ヘッド側部材を工具シャンク側部材に接続固定する。
【0003】
また特許文献1のモジュラーボーリングシステムは、工具シャンク側部材の先端接続部の中に配置されるパイプ状の部材であって、パイプの末端が工具シャンク側部材の内部に形成されるシャンク側通路に差し込まれ、パイプの先端がヘッド側部材の内部に形成されるヘッド側通路に差し込まれ、これらシャンク側通路およびヘッド側通路を隙間なく接続する通路接続部材を備える。
【0004】
特許文献1によれば、工具シャンク側部材とヘッド側部材の接続箇所でクーラントが漏れないよう、シャンク側通路からヘッド側通路へクーラントを流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のモジュラーボーリングシステムにあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。第1に、工具シャンク側部材は様々な種類があるところ、シャンク側通路の内径が、工具シャンク側部材によってまちまちで不均一である。そうするとシャンク側通路の内径に応じて複数種類の通路接続部材を揃えて置かねばならず、通路接続部材の点数において改善の余地がある。
【0007】
第2に、クーラントが接続箇所から漏れ出さないよう製造工程においてシャンク側通路の内周面を平滑に仕上げて通路接続部材との密着性を高める必要があるところ、シャンク側通路は工具シャンク側部材の先端部よりも奥(末端側)に形成されるため、工具シャンク側部材の先端からシャンク側通路までのアプローチが長くなってしまい、シャンク側通路の内周面の仕上げ研摩加工が困難になってしまう虞がある。
【0008】
第3に、ヘッド側部材の末端部に形成されてサイドロックボルトを受け入れる固定孔が、半径方向に延びてヘッド側通路と接続する。このため通路接続部材をヘッド側通路に差し込む際、通路接続部材の外周面に設けたシール部材が、固定孔とヘッド側通路の接続箇所の角に当接して損傷する虞がある。したがって当該角を丸めるための追加工が必要になり、工数および工数生産コストにおいて改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも改良されたモジュラーボーリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため本発明によるモジュラーボーリングシステムは、シャンク側(末端側)に配置される部材であって、先端側に開口する凹部を中心に区画する筒状の先端接続部、および凹部の底から末端側へ延びるシャンク側通路を有する工具シャンク側部材と、ヘッド側(先端側)に配置される部材であって、工具シャンク側部材の凹部に嵌合する末端接続部、および末端接続部の末端面から先端側へ延びるヘッド側通路を有するヘッド側部材と、工具シャンク側部材の先端接続部の外周面から凹部まで延びる第1サイドロックボルト孔に螺合し、ヘッド側部材の末端接続部の外周面に形成される有底の第1固定穴に進入することにより、ヘッド側部材と工具シャンク側部材を着脱可能に接続固定する第1サイドロックボルトと、シャンク側通路よりも先端側に配置される部材であって、凹部に嵌合する末端大径部、末端側大径部から先端側へ突出してヘッド側通路に嵌合する先端小径部、および末端大径部から先端小径部まで貫通してシャンク側通路およびヘッド側通路を連通する貫通路を有する通路接続部材と、末端大径部の外周面と凹部の内周面の環状隙間を封止する末端シール部と、先端小径部の外周面とヘッド側通路の環状隙間を封止する先端シール部とを備える。
【0011】
モジュラーボーリングシステムであれば、シャンク側部材およびヘッド側部材が長短多種多様であっても、両者を接続するシャンク側部材の先端接続部の凹部は規格化され、統一された形状および寸法を有する。本発明によれば、通路接続部材の全体が、シャンク側通路よりも先端側に配置され、シャンク側部材の先端部の凹部内に収まることから、異なる種類のシャンク側部材であっても1種類の通路接続部材で通路を接続することができ、通路接続部材が共用化される。
【0012】
また通路接続部材がシャンク側通路に差し込まれないため、シャンク側通路を研摩加工する必要がない。さらに、第1固定穴は、有底であり、ヘッド側通路と接続しない。したがって、ヘッド側通路に角が生成されず、ヘッド側通路に通路接続部材を差し込んで嵌合する際、先端側シール部は損傷しない。
【0013】
また本発明によれば、シャンク側部材の先端からあまり距離を置かない箇所に研摩を追加工すれば足りることから、長尺なシャンク側部材にも適用可能である。なお本発明のシャンク側部材およびヘッド側部材は、互いに接続される末端側部材および先端側部材を表す包括的な名称であり、例えば、工具シャンクおよび中継アダプタであってもよいし、あるいは中継アダプタおよびボーリングヘッドであってもよいし、あるいは中継アダプタ同士であってもよいし、あるいは工具シャンクおよびボーリングヘッドであってもよい。
【0014】
本発明の一局面として工具シャンク側部材の先端接続部は、第1サイドロックボルト孔よりも末端側に複数設けられて周方向等間隔に配列され、先端接続部の外周面から凹部まで延びる第2サイドロックボルト孔をさらに有し、第2サイドロックボルト孔にそれぞれ螺合し、通路接続部材の末端大径部に当接することにより、通路接続部材を工具シャンク側部材に固定する複数の第2サイドロックボルトをさらに備える。かかる局面によれば、複数の第2サイドロックボルトによって通路接続部材が傾かないように固定される。したがって凹部を通過する高圧のクーラントが偏って通路接続部材を押圧する場合であっても、クーラントの液漏れが防止される。またシャンク側部材の先端からあまり距離を置かない箇所に穿孔して第2サイドロックボルト孔を追加工すれば足りることから、長尺なシャンク側部材にも適用可能である。
【0015】
本発明の好ましい局面として通路接続部材は、末端大径部のうち末端シール部よりも末端側の外周面に複数形成されて周方向等間隔に配列される有底の第2固定穴をさらに有し、かかる第2固定穴に第2サイドロックボルトの先端が進入する。かかる局面によれば、通路接続部材の固定が一層強固にされる。さらに好ましい局面として、第2固定穴はテーパ穴である。
【0016】
本発明の一局面として、第2サイドロックボルト孔および第2サイドロックボルトの隙間が接着剤によってシールされる。かかる局面によれば、クーラントが第2サイドロックボルト孔から外部へ漏れ出すことが防止される。また第2サイドロックボルトがゆるみ止めされる。本発明の他の局面として、第2サイドロックボルトの外周面と第2サイドロックボルト孔の内周面との環状隙間を封止する第2サイドロックボルト孔シール部をさらに備える。かかる局面によれば、接着剤を用いなくても、かかる局面によれば、クーラントが第2サイドロックボルト孔から外部へ漏れ出すことが防止される。しかもヘッド側部材と工具シャンク側部材の接続を解放し、第2サイドロックボルトと緩めることにより、通路接続部材を工具シャンク側部材から取り外すことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、1種類の通路接続部材によって長短様々な異なる形状のシャンク側部材およびヘッド側部材を接続することができ、部品点数が削減される。またシール部の寿命が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】同実施形態の接続箇所を示す拡大断面図である。
【
図3】同実施形態の通路接続部材を取り出して示す側面図である。
【
図4】同実施形態の通路接続部材を取り出して示す底面図である。
【
図5】同実施形態の変形例を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態になるモジュラーボーリングシステムを示す全体図であって、図中の略半分が側面を、残りの略半分が縦断面をそれぞれ表す。モジュラーボーリングシステム10は、工具シャンク11と、中継アダプタ21と、ボーリングヘッド31とを備え、軸線Oを中心軸線として延びる。以下の説明において、シャンク側になる軸線O方向一方を末端といい、ヘッド側になる軸線O方向他方を先端という。
【0020】
工具シャンク11は、工具シャンク11末端に形成されるシャンク部12と、工具シャンク11先端に形成される先端接続部13を有する。シャンク部12は、フランジ部分と、フランジ部分から末端に向かって突出して徐々に細くなる軸部分とを含む、所定規格の寸法および形状であり、図示しない工作機械の主軸に着脱可能に装着される。先端接続部13は、円筒状であり、平坦な環状平坦面14と、環状平坦面14の中心に形成される凹部15と、円筒部16と、を有し、中継アダプタ21の末端接続部23が着脱可能に装着される。凹部15を区画する円筒部16の周方向所定箇所には、円筒部16の半径方向に延びて円筒部16を貫通する雌ねじである第1サイドロックボルト孔17が形成される。第1サイドロックボルト孔17は凹部15と接続する。第1サイドロックボルト孔17には第1サイドロックボルト18が螺合する。
【0021】
工具シャンク11の内部には、末端のシャンク部12から先端の先端接続部13まで延びるシャンク通路19が設けられる。本実施形態のシャンク通路19は、モジュラーボーリングシステム10の中心軸線である軸線Oに重なって延びる。シャンク通路19の末端は、シャンク部12に形成される大径の末端中心孔12hの底面と接続する。シャンク通路19の先端は、中間通路20を介して、先端接続部13の凹部15の底面と接続する。シャンク通路19の内径は末端から先端まで均一(つまり断面均一)にされる。またシャンク通路19の内径は、末端中心孔12hおよび凹部15の内径よりも小さい。
【0022】
シャンク通路19および中間通路20は、同軸に配置される。ただし中間通路20の内径は、シャンク通路19の内径よりも大きく、凹部15の内径よりも小さくされる。なお図示しない変形例として、工具シャンク11のうち、シャンク部12および先端接続部13を除いた中央領域が長尺に形成されてもよい。かかる変形例では、中間通路20の軸線O方向寸法Lcが、シャンク部12の軸線O方向寸法や、先端接続部13の軸線O方向寸法よりも長くされる。これによりモジュラーボーリングシステム10は、図示しないワークに長い深穴を穿孔することができる。
【0023】
中継アダプタ21は、先端のボーリングヘッド31と末端の工具シャンク11の間に介在して、両者を接続する。このため中継アダプタ21は、上述した先端接続部13に対応する末端接続部23と、上述した先端接続部13と同一の先端接続部13を、両端それぞれに備える。なお図示はしなかったが、中継アダプタ21は、複数介在してもよく、あるいは中継アダプタ21は、末端接続部23から先端接続部13までの軸線O方向寸法が長い長尺部材であってもよい。これによりモジュラーボーリングシステム10は、図示しないワークに一層長い深穴を穿孔することができる。あるいは図示はしなかったが、モジュラーボーリングシステム10において、中継アダプタ21を介在させずにボーリングヘッド31と末端の工具シャンク11を直結してもよい。
【0024】
末端接続部23は、工具シャンク11の先端接続部13に着脱可能に連結される。末端接続部23は、環状平坦面23tと、環状平坦面23tの中心から突出する凸部25を有する。凸部25は円柱形状であり、周方向所定箇所に第1固定穴25hが形成される。凸部25が先端接続部13の凹部15に差し込まれて嵌合し、環状平坦面23tが環状平坦面14に面接触した状態で、第1固定穴25hは先端接続部13の第1サイドロックボルト孔17と連通する。第1サイドロックボルト孔17に螺合する第1サイドロックボルト18は、外径側に六角穴等の工具嵌合部を有し、外径側から第1サイドロックボルト18がねじ込まれると、第1サイドロックボルト18の内径側の先端部が第1固定穴25hに進入する。第1サイドロックボルト18の先端部はテーパ形状にされ、第1固定穴25hはテーパ穴に形成されることから、第1サイドロックボルト18の先端部外径面は第1固定穴25hのテーパ穴内径面を押圧し、くさびの作用で凸部25を凹部15内に引き込んで、環状平坦面23tを環状平坦面14に強力に押し付ける。これにより末端接続部23は先端接続部13に強固に接続固定される。
【0025】
反対に第1サイドロックボルト18が緩められると、第1サイドロックボルト18の先端部が第1固定穴25hから退出し、末端接続部23は先端接続部13から分離される。なお本実施形態の第1固定穴25hは、凸部25の半径方向に延び、平坦な底面の有底穴であり、後述する中継通路24と接続しない。
【0026】
本実施形態では1の先端接続部13に複数の第1サイドロックボルト孔17が周方向に間隔を空けて設けられる。各第1サイドロックボルト孔17は、軸線Oを中心として例えば周方向90°空けて2か所に配置される。第1固定穴25hも同様である。複数の第1サイドロックボルト18によって末端接続部23は先端接続部13に一層強固に接続固定される。
【0027】
中継アダプタ21には、中継通路24がさらに設けられる。中継通路24は、軸線O方向に延びる丸孔であり、軸線O方向に亘って内径一定である。本実施形態の中継通路24は、軸線Oと重なって延び、凸部25を貫通する。中継通路24の先端は、凹部15の底面と接続する。
【0028】
ボーリングヘッド31は、ヘッド本体32と、カートリッジ本体36と、調整機構37と、切刃チップ39とを有する。ヘッド本体32の末端には、末端接続部23が設けられる。ボーリングヘッド31の末端接続部23は、上述した中継アダプタ21の末端接続部23と同様であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
なお
図1中、ボーリングヘッド31の末端接続部23は、中継アダプタ21の先端接続部13に接続固定されるが、図示しない変形例として工具シャンク11の先続部13に接続固定されてもよい。つまり末端接続部23は、ボーリングヘッド31の末端と、中継アダプタ21の末端に設けられる。また先端接続部13は、中継アダプタ21の先端と、工具シャンク11の先端に設けられる。そして中継アダプタの個数は0~複数の範囲で適宜調整される。互いに接続される末端接続部23および先端接続部13に関して、これら接続部がそれぞれ設けられる末端側の部材と先端側の部材(工具シャンク11と、中継アダプタ21と、ボーリングヘッド31)を、単に工具シャンク側部材とヘッド側部材ともいう。
【0030】
説明をボーリングヘッド31に戻すと、ヘッド本体32の先端部にはカートリッジ本体36および調整機構37が設けられる。カートリッジ本体36は、軸線Oと交差する姿勢で変位可能に保持される。
【0031】
調整機構37はカートリッジ本体36の一方の端部に設けられ、カートリッジ本体36を軸線O直角方向に変位させる。調整機構37の調整ダイヤル38を任意のダイヤル目盛だけ回動させることにより、カートリッジ本体36は、ダイヤル目盛に対応する変位量で進退動する。
【0032】
カートリッジ本体36の他方の端部には切刃チップ39が取り付けられる。切刃チップ39はヘッド本体32よりも外径側に突出する。軸線Oを中心としてモジュラーボーリングシステム10が回転することによって、切刃チップ39はワーク(図略)を切削して穿孔する。調整ダイヤル38を一方へ回転させると、軸線Oから離れるようにして切刃チップ39が外径側へ変位し、深穴の穴径を大きくすることができる。反対に調整ダイヤル38を他方へ回転させると、軸線Oに近づくようにして切刃チップ39が内径側へ変位し、深穴の穴径を小さくすることができる。
【0033】
ボーリングヘッド31には、ヘッド通路34がさらに設けられる。ヘッド通路34は、軸線O方向に延びる丸孔であり、先端領域34uの断面積が末端領域34sの断面積よりも小さくされる。なお末端領域34sは軸線Oと重なって延びるが、先端領域34uは軸線Oからオフセットして配置される。末端領域34sの先端と先端領域34uの末端は横孔34tで連通される。
【0034】
ヘッド通路34は先端側で先端通路34vと接続する。先端通路34vは、軸線O方向位置に関しカートリッジ本体36と重なるよう設けられ、ヘッド通路34の先端領域34uよりもさらに小径(断面積小)に形成された丸孔であり、軸線Oに対して傾斜して延び、切刃チップ39へ指向する。
【0035】
シャンク通路19と、中継通路24と、ヘッド通路34、先端通路34vは、この順序で直列接続されて軸線O方向に延び、クーラント通路を構成する。
図1左に矢で示すように主軸から末端中心孔12hにクーラントが供給され、クーラントは上述したクーラント通路を流れ、先端通路34vからワークへ噴出する。なお中継アダプタ21の個数は0~複数の範囲で適宜調整されることから、末端接続部23および先端接続部13によって互いに接続される末端側の通路と先端側の通路(シャンク通路19と、中継通路24と、ヘッド通路34)を、単にシャンク側通路とヘッド側通路ともいう。
【0036】
本実施形態のシャンク通路19から末端領域34sまでは、軸線Oと重なって真っ直ぐに延び、先端へ向かうほど断面積が小さくなる。断面積が小さいほど流速が速くなり、
先端通路34vから切削箇所へ向けてクーラントを勢いよく噴射させることができる。
【0037】
図2は、末端接続部23と先端接続部13との接続箇所を取り出して示す拡大縦断面図である。具体的には
図2は、中継アダプタ21とボーリングヘッド31の接続箇所を示すが、工具シャンク11と中継アダプタ21の接続箇所も同様であり、あるいは工具シャンク11とボーリングヘッド31の接続箇所も同様であり、あるいは中継アダプタ21,21同士の接続箇所も同様であり、後三者については説明を省略する。かかる接続箇所には、シャンク側通路になる中継通路24とヘッド側通路になるヘッド通路34を接続する通路接続部材41が介在する。
【0038】
図3は通路接続部材41を示す側面図であり、軸線O直角方向にみた状態を表す。
図4は通路接続部材41を示す底面図であり、軸線O方向末端側からみた状態を表す。通路接続部材41は、独楽のような形状であり、末端大径部42と、末端大径部42から先端側へ突出する先端小径部43と、末端大径部42から先端小径部43まで通路接続部材41を貫通する貫通路44と有し、凹部15の中に配置される。本実施形態では、通路接続部材41全体が、凹部15の中に完全に収容される。
【0039】
末端大径部42は、通路接続部材41の末端部を占める円柱形状である。末端大径部42の外周面が凹部15の内周面に嵌合する。さらに末端大径部42の外周面と凹部15の内周面との環状隙間には末端シール部46が設けられる。かかる環状隙間は末端シール部46によって封止される。末端シール部46は例えばOリングであって、末端大径部42の外周面に形成されて周方向に延びる環状溝48に取付嵌合される。
【0040】
先端小径部43は、末端大径部42よりも小径の円柱形状であって、通路接続部材41の先端部を占める。先端小径部43の外周面が中継通路24末端の内周面に嵌合する。さらに先端小径部43の外周面と通路接続部材41の内周面との環状隙間には先端シール部47が設けられる。かかる環状隙間は先端シール部47によって封止される。先端シール部47は例えばOリングであって、中継通路24の内周面に形成されて周方向に延びる環状溝に取付嵌合される。
【0041】
本実施形態では、通路接続部材41が先端接続部13に固定される。かかる構造につき説明する。先端接続部13の外周面には、第2サイドロックボルト孔52が形成される。第2サイドロックボルト孔52は、軸線Oを中心とする半径方向に延び、凹部15と接続する。第2サイドロックボルト孔52には、第2サイドロックボルト51が螺合する。第2サイドロックボルト51は、外径側に六角穴等の工具嵌合部を有し、外径側からねじ込まれることによって第2サイドロックボルト51の内径側の先端部が凹部15内へ進入し、通路接続部材41に当接してこれを固定する。本実施形態では、第2サイドロックボルト51の先端部はテーパ形状にされる。また通路接続部材41の末端大径部42の外周面には、テーパ穴形状の第2固定穴45が形成される。第2固定穴45は有底であり、貫通路44と接続しない。第2サイドロックボルト51の先端部が第2固定穴に進入することによって、通路接続部材41は先端接続部13に強固に固定される。
【0042】
第2サイドロックボルト51を第2サイドロックボルト孔52にねじ込む際、第2サイドロックボルト51の雄ねじには接着剤が塗布される。この接着剤は硬化して、第2サイドロックボルト51がゆるみ止めされる。また雄ねじと雌ねじの隙間が封止され、凹部15内のクーラントが第2サイドロックボルト孔52から外部へ漏れ出すことが防止される。
【0043】
第2サイドロックボルト孔52は周方向等間隔に配列される。これにより通路接続部材41は、全周において、軸線O方向の移動を規制され、軸線Oに対して傾くことがない。したがって高圧のクーラントがシャンク通路19から凹部15に流入する際、クーラントの液圧が通路接続部材41に偏って作用する場合であっても、通路接続部材41は軸線Oに対して傾かないよう固定される。
【0044】
ところで本実施形態によれば、末端側のシャンク通路19と先端側の中継通路24を接続する通路接続部材41が、凹部15の中に収容され、シャンク通路19に差し込まれない。様々な種類の工具シャンク11および中継アダプタ21において、凹部15の形状および寸法は共通化されることから、1種類の通路接続部材41で多種多様なシャンク通路19とヘッド通路34の接続を共用化できる。つまり複数種類の工具シャンク11および中継アダプタ21を接続する場合であっても、複数種類の通路接続部材41を準備する必要がない。また中継通路24とヘッド通路34を接続する場合や、他の末端側通路および先端側通路を接続する場合も同様である。
【0045】
また通路接続部材41が末端側のシャンク通路19に差し込まれないため、シャンク通路19の内周面を仕上げ研摩加工する必要がない。換言するとシャンク側部材の先端からあまり距離を置かない箇所、つまり凹部15内周面に仕上げ研摩加工を追加すれば足りることから、長尺なシャンク側部材にも適用可能である。
【0046】
さらに、第1固定穴25hは、有底であり、中継通路24やヘッド通路34と接続しないので、中継通路24やヘッド通路34に鋭利な角が生成されない。したがって例えば図示はしなかったが、通路接続部材41の先端小径部43外周に先端シール部を附設して、かかる先端小径部43を中継通路24やヘッド通路34に差し込んで嵌合する場合、先端シール部は損傷しない。
【0047】
次に上述した実施形態の変形例を説明する。
図5は変形例を示す縦断面図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では上述した末端シール部46(
図2)に代えて、末端シール部49を設ける。末端シール部49は、末端シール部46を第2固定穴45よりも末端側に移設したものであって、他の構成については末端シール部46と同じである。
【0048】
変形例の末端シール部49は、凹部15と第2サイドロックボルト孔52の間を遮断することから、シャンク通路19から凹部15へ流れるクーラントが第2サイドロックボルト孔52に進入することがない。したがって、第2サイドロックボルト51を第2サイドロックボルト孔52に単に螺合させて上述した接着剤を使用しない場合や、第2サイドロックボルト51を第2サイドロックボルト孔52に螺合させないであっても、クーラントが第2サイドロックボルト孔52から外部へ漏れ出すことが防止される。
【0049】
次に本発明の他の実施形態を説明する。
図6は本発明の他の実施形態を示す拡大断面図である。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態では上述した末端シール部46(
図2)に代えて、第2サイドロックボルト51と第2サイドロックボルト孔52との環状隙間にシール部53を設ける。かかる環状隙間はシール部53によって封止される。シール部53は例えばOリングであって、第2サイドロックボルト51の外周面に形成されて周方向に延びる環状溝に取付嵌合される。またシール部53は、第2サイドロックボルト51の雄ねじよりも凹部15に近い側に設置される。
【0050】
図6に示す実施形態によれば、第2サイドロックボルト51と第2サイドロックボルト孔52の環状隙間を接着剤等で封止しなくても、シール部53が該環状隙間を封止する。したがってクーラントが第2サイドロックボルト孔52から漏れ出すことが防止される。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、工作機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0053】
10 モジュラーボーリングシステム、 11 工具シャンク、
13 先端接続部、 15 凹部、 17 第1サイドロックボルト孔、
18 第1サイドロックボルト、 19 シャンク通路、
20 中間通路、 21 中継アダプタ、 23 末端接続部、
24 中継通路、 25 凸部、 25h 第1固定穴、
31 ボーリングヘッド、 34 ヘッド通路、 41 通路接続部材、
42 末端大径部、 43 先端小径部、 44 貫通路、
45 第2固定穴、 46 末端シール部、 47 先端シール部、
51 第2サイドロックボルト、 52 第2サイドロックボルト孔、 O 軸線。
【要約】
【課題】高圧クーラントを供給可能なモジュラーボーリングシステムを提供する。
【解決手段】モジュラーボーリングシステムは、先端側のボーリングヘッドと末端側の工具シャンクを着脱可能に接続固定する第1サイドロックボルト19と、工具シャンクの通路よりも先端側に配置される部材であって、凹部15に嵌合する末端大径部42、末端側大径部42から先端側へ突出してボーリングヘッドのヘッド通路34に嵌合する先端小径部43、および末端大径部42から先端小径部43まで貫通して工具シャンクの通路およびヘッド通路34を連通する貫通路44を有する通路接続部材41と、末端大径部42の外周面と凹部15の内周面の環状隙間を封止する末端シール部46と、先端小径部43の外周面とヘッド通路34の環状隙間を封止する先端シール部47とを備える。
【選択図】
図2