(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】コンシクエントポールモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20220609BHJP
H02K 1/2706 20220101ALI20220609BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K1/2706
H02K21/14 M
(21)【出願番号】P 2021500098
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 CN2018122833
(87)【国際公開番号】W WO2020015302
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】201810784378.3
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516164151
【氏名又は名称】珠海格力▲電▼器股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】胡 余生
(72)【発明者】
【氏名】陳 彬
(72)【発明者】
【氏名】李 権鋒
(72)【発明者】
【氏名】史 進飛
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107659101(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104600939(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/34
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンシクエントポールモータであって、
ロータと、前記ロータを取り囲むように配置されるステータと、を備え、
前記ロータは、前記ロータの周方向に沿って均一な間隔で配置される複数の永久磁石の磁極を含み、
前記ステータの内側周縁においては、周方向に沿って複数のステータティースが設けられ、
前記ロータの永久磁石の磁極は、前記ロータの半径方向に沿って外側から内側に向けて順次配置される第1の永久磁石挿入孔と第2の永久磁石挿入孔を備え、
前記第1の永久磁石挿入孔の中に第1層の永久磁石が配置され、前記第2の永久磁石挿入孔の中に第2層の永久磁石が配置され
、
前記ステータティースの数はzであり、前記永久磁石の磁極の数はpであり、
前記永久磁石の磁極の第2の永久磁石挿入孔は、前記ステータの内側周縁の第2の領域に対応し、前記第2の領域におけるステータティースの数はz/2p+2であり、
前記ステータティースの前記ロータに近接する先端の両側には突起部が設けられ、前記第2の永久磁石挿入孔の一側は、第2の領域の一側におけるステータティースの外側の突起部に対応し、前記第2の永久磁石挿入孔の他側は、第2の領域の他側におけるステータティースの外側の突起部に対応する
ことを特徴とするコンシクエントポールモータ。
【請求項2】
前記永久磁石の磁極の第1の永久磁石挿入孔は、前記ステータの内側周縁の第1の領域に対応し、
前記第1の領域におけるステータティースの数はz/4p+1である
ことを特徴とする請求項1に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項3】
前記第1層の永久磁石の厚さはt1であり、
前記第2層の永久磁石の厚さはt2であり、
1.3<t1/t2<1.7である
ことを特徴とする請求項1に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項4】
前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第1の永久磁石挿入孔の断面及び前記第2の永久磁石挿入孔の断面はいずれも、順次連結する第1のセグメント、第2のセグメント及び第3のセグメントを含み、
前記第1のセグメントと前記第3のセグメントとは、前記第2のセグメントの中心線に関して対称になり、
前記第1の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中心線と前記第2の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中心線とは重なり、且つ前記ロータの軸線と交わり、
前記第1の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中には前記第1層の永久磁石が装着され、前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントの中には磁気絶縁材料が装着され、前記第2の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中には前記第2層の永久磁石が装着され、前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントの中には磁気絶縁材料が装着される
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項5】
前記第1層の永久磁石の厚さはt1であり、前記第2層の永久磁石の厚さはt2であり、
前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2であり、
4<w2/(t1+t2)<8である
ことを特徴とする請求項
4に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項6】
前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントのそれぞれと、前記ロータの外側周縁との間の最小距離はt3であり、
前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントのそれぞれと、前記ロータの外側周縁との間の最小距離はt4であり、
t3≧t4である
ことを特徴とする請求項
4に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項7】
前記第1層の永久磁石の中心と前記ロータの外側周縁との間の最小距離はtm1であり、
前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw1であり、
前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2であり、
(2×tm1)/(w2-w1)=(0.5~1)である
ことを特徴とする請求項
4に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項8】
前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw1であり、
前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2であり、
1.15<w2/w1<2.1である
ことを特徴とする請求項
4に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項9】
隣接する2つの第2の永久磁石挿入孔のうち、
1つの第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントは、他の1つの第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントと隣接し、
1つの第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、他の1つの第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw3であり、
前記第2層の永久磁石の幅はwm2であり、
1.8<wm2/w3<2.7である
ことを特徴とする請求項
4に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項10】
前記第1層の永久磁石は低残留磁束密度且つ低保磁力の永久磁石であり、
前記第2層の永久磁石は高残留磁束密度且つ高保磁力の永久磁石である
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項11】
前記第1層の永久磁石及び/又は第2層の永久磁石は、複数枚の永磁磁石から構成される
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項12】
前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第1層の永久磁石の断面はV字型又はU字型になる
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のコンシクエントポールモータ。
【請求項13】
前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第2層の永久磁石の断面は一字型又はV字型になる
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか一項に記載のコンシクエントポールモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年7月17日に出願された出願番号が「201810784378.3」であって発明の名称が「コンシクエントポールモータ」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容を本願に組み込む。
本発明はモータ技術分野に関し、特にはコンシクエントポールモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石モータは、例えば8つの永久磁石を持つ8極永久磁石モータは、ロータの中心の周りに永久磁石が周方向において配置されており、且つ、隣接する永久磁石は互いに異なる磁化方向を持っている。一方、コンシクエントポール同期モータは、4つの永久磁石を持っており、同じく周方向において均一に配置される。その中、隣接する永久磁石の磁化方向の長さが同一であり、永久磁石挿入孔は永久磁石の磁極と称される。このようなモータは、2つの永久磁石挿入孔の間にある軟質磁性材料が永久磁石の磁極により磁化されて永久磁石の磁極と反対な極性を持つため、コンシクエントポール永久磁石モータと呼ばれるようになった。このようなモータを用いることによって永久磁石の使用量を大幅に低減することができる。
【0003】
しかしながら、従来のコンシクエントポールモータにおいては、1対の磁極間で発生する磁力線は1枚の永久磁石のみを通過する。従来のコンシクエントポールモータにおける一枚の永久磁石の厚さは一般モータにおける1枚の永久磁石より厚いが、一般モータにおいては磁気回路が2枚の永久磁石を通過するため、コンシクエントポールモータのd軸磁路における永久磁石の厚さはやはり一般モータのd軸磁路における永久磁石の等価厚さより薄い。その結果、コンシクエントポールモータは、d軸磁路リラクタンスが小さくてd軸インダクタンスが大きいため、q軸とd軸とのインダクタンスの差が小さく、したがってリラクタンストルクが小さくて、電磁トルクの向上が制約されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のコンシクエントポールモータにおけるリラクタンストルクが小さくて電磁トルクの向上が難しい課題を解決するために、コンシクエントポールモータを提供する。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
以上の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を提案する。コンシクエントポールモータであって、ロータと、前記ロータを取り囲むように配置されるステータと、を備える。前記ロータは、前記ロータの周方向に沿って均一な間隔で配置される複数の永久磁石の磁極を含む。前記ステータの内側周縁においては、周方向に沿って複数のステータティースが設けられる。前記ロータの永久磁石の磁極は、前記ロータの半径方向に沿って外側から内側に向けて順次配置される第1の永久磁石挿入孔と第2の永久磁石挿入孔を備える。前記第1の永久磁石挿入孔の中に第1層の永久磁石が配置され、前記第2の永久磁石挿入孔の中に第2層の永久磁石が配置される。
【0006】
本発明により提供されるコンシクエントポールモータは、複数層に配置される永久磁石を用いることによって、モータのリラクタンストルクを向上させて、モータの電磁トルクを向上させることができる。
【0007】
さらに、本発明の前述実施例によるコンシクエントポールモータは、以下通りの付加的技術特徴を有することができる。
【0008】
本発明の一実施例において、前記ステータティースの数はzであり、前記永久磁石の磁極の数はpである。ここで、各前記永久磁石の磁極の第1の永久磁石挿入孔は、前記ステータの内側周縁の第1の領域に対応する。前記第1の領域におけるステータティースの数はz/4p+1である。
【0009】
以上の技術案を採用することによって、第1層の永久磁石において発生するマグネットトルクがより大きくなるとともに、第1の永久磁石挿入孔と第2の永久磁石挿入孔との間の磁束通路におけるq軸磁路のインダクタンスがより大きくなって、リラクタンストルクが向上する。
【0010】
本発明の一実施例において、前記ステータティースの数はzであり、前記永久磁石の磁極の数はpである。ここで、各前記永久磁石の磁極の第2の永久磁石挿入孔は、前記ステータの内側周縁の第2の領域に対応する。前記第2の領域におけるステータティースの数はz/2p+2である。
【0011】
以上の技術案を採用することによって、電磁トルクをより一層向上させることができる。
【0012】
本発明の一実施例において、前記ステータティースの前記ロータに近接する先端の両側には突起部が設けられる。前記第2の永久磁石挿入孔の一側は、第2の領域の一側におけるステータティースの外側の突起部に対応し、前記第2の永久磁石挿入孔の他側は、第2の領域の他側におけるステータティースの外側の突起部に対応する。
【0013】
以上の技術案を採用することによって、電磁トルクを最大化することができる。
【0014】
本発明の一実施例において、前記第1層の永久磁石の厚さはt1であり、前記第2層の永久磁石の厚さはt2である。ここで、1.3<t1/t2<1.7である。
【0015】
以上の技術案を採用することによって、耐減磁性能を満たす前提で、最も少ない永久磁石によって最も大きい電磁トルクを提供することができる。
【0016】
本発明の一実施例において、前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第1の永久磁石挿入孔の断面及び前記第2の永久磁石挿入孔の断面はいずれも、順次連結する第1のセグメント、第2のセグメント及び第3のセグメントを含む。前記第1のセグメントと前記第3のセグメントとは、前記第2のセグメントの中心線に関して対称になる。さらに、前記第1の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中心線は、前記第2の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中心線と重なり、且つ前記ロータの軸線と交わる。前記第1の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中には前記第1層の永久磁石が装着され、前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントの中には磁気絶縁材料が装着され、前記第2の永久磁石挿入孔の第2のセグメントの中には前記第2層の永久磁石が装着され、前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントの中には磁気絶縁材料が装着される。
【0017】
以上の技術案を採用することによって、永久磁石の等価厚さを維持しながら永久磁石の使用量を減らすことができる。
【0018】
本発明の一実施例において、前記第1層の永久磁石の厚さはt1であり、前記第2層の永久磁石の厚さはt2であり、前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、4<w2/(t1+t2)<8である。
【0019】
以上の技術案を採用することによって、永久磁石の等価磁束通過面積と等価厚さとの比率を妥当に維持しながら、永久磁石を十分利用してコストを低減することができる。
【0020】
本発明の一実施例において、前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントのそれぞれと、前記ロータの外側周縁との間の最小距離はt3である。前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント及び第3のセグメントのそれぞれと、ロータの外側周縁との間の最小距離はt4である。ここで、t3≧t4である。
【0021】
以上の技術案を採用することによって、モータにおける1枚の板の耐減磁性能を向上させることができる。
【0022】
本発明の一実施例において、前記第1層の永久磁石の中心と前記ロータの外側周縁との間の最小距離はtm1である。前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw1である。前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、(2×tm1)/(w2-w1)=(0.5~1)である。
【0023】
以上の技術案を採用することによって、マグネットトルク及びリラクタンストルクの割合を妥当にして、合成トルクを向上させることができる。
【0024】
本発明の一実施例において、前記第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw1である。前記第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、前記第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、1.15<w2/w1<2.1である。
【0025】
以上の技術案においては、w1とw2の大きさを関連付けることによって、電磁トルクにおいてマグネットトルク及びリラクタンストルクが占める割合を妥当にして、合成トルクを向上させることができる。
【0026】
本発明の一実施例において、隣接する2つの第2の永久磁石挿入孔のうち、1つの第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントは、他の1つの第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントと隣接する。1つの第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部と、他の1つの第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメントの前記ロータの外側周縁に近接する端部との間の距離はw3である。前記第2層の永久磁石の幅はwm2である。ここで、1.8<wm2/w3<2.7である。
【0027】
以上の技術案を採用することによって、電磁トルクを最大化するとともに、局部的な磁気飽和により発生する余計な鉄損を小さく抑えることができる。
【0028】
本発明の一実施例において、前記第1層の永久磁石は低残留磁束密度且つ低保磁力の永久磁石であり、前記第2層の永久磁石は高残留磁束密度且つ高保磁力の永久磁石である。
【0029】
以上の技術案を採用することによって、モータ性能及び耐減磁性能を保障しながら、コストを最大限に削減することができる。
【0030】
本発明の一実施例において、前記第1層の永久磁石及び/又は第2層の永久磁石は、複数枚の永久磁石から構成される。
【0031】
以上の技術案においては、複数枚の永久磁石を利用することによって、永久磁石の加工及び装着に当たる困難さを抑えることができる。
【0032】
本発明の一実施例において、前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第1層の永久磁石の断面はV字型又はU字型になる。
【0033】
以上の技術案を採用することによって、永久磁石の磁束通過面積を増やすことができる。
【0034】
本発明の一実施例において、前記ロータの軸線に垂直な断面において、前記第2層の永久磁石の断面は一字型又はV字型になる。
【0035】
以上の技術案を採用することによって、永久磁石の磁束通過面積を増やすことができる。
【0036】
以上の付加的な実施態様による効果は、以下の説明によって明らかになるか、又は本発明が実施される際に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施例に係るコンシクエントポールモータの構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係るロータの構造模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係るロータのd軸及びq軸における磁路の模式図である。
【
図5】第1の永久磁石挿入孔に属するステータティースが電磁トルクに与える影響を示すグラフである。
【
図6】電磁トルク、トルク波動がwm2/w3に従って変化する状態を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例に係るコンシクエントポールモータと従来技術におけるモータとの、q軸インダクタンスの比較グラフである。
【
図8】本発明の実施例に係るコンシクエントポールモータと従来技術におけるモータとの、電磁トルク-電流角度の変化を示す比較グラフである。
【
図9】本発明の実施例に係るコンシクエントポールモータと従来技術におけるモータとの、トルクの比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明の原理及び特徴について説明を行う。ここで挙げられる実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものにならない。
【0039】
図面1-3に示すように、本実施例はコンシクエントポールモータを提供する。当該コンシクエントポールモータは、ロータ1と、前記ロータ1を取り囲むように配置されるステータ2と、を備える。前記ロータ1は、前記ロータ1の周方向に沿って均一な間隔で配置される複数の永久磁石の磁極を含む。前記ステータ2の内側周縁においては、周方向に沿って複数のステータティース11が設けられる。
【0040】
本実施例においては、まず、ロータ1の永久磁石の磁極に対して改善を行う。
図1及び
図3に示すように、前記ロータ1の永久磁石の磁極は、前記ロータ1の半径方向に沿って外側から内側に向けて設置される第1の永久磁石挿入孔3及び第2の永久磁石挿入孔4を含む。ここで、前記第1の永久磁石挿入孔3と前記ロータ1の外縁との間の距離は、前記第2の永久磁石挿入孔4と前記ロータ1の外縁との間の距離より小さい。磁束通路10は第1の永久磁石挿入孔3と第2の永久磁石挿入孔4との間にある。前記第1の永久磁石挿入孔3の中には第1層の永久磁石8が配置されており、前記第2の永久磁石挿入孔4の中には第2層の永久磁石9が配置されている。このような構造においては、複数層に配置される永久磁石によって、モータのリラクタンストルクが向上し、したがってモータの電磁トルクを向上させることができる。
【0041】
詳しく説明すると、永久磁石を複数層に配置することによって、モータのq軸インダクタンスを大幅に向上させることができる。例えば、
図4に示すモータのq軸磁路を参照すると、本実施例に係るコンシクエントポールモータは3つの明確な磁力線通路を提供するため、q軸磁力線がより通過しやすくなって、q軸リラクタンスにおけるリラクタンスが小さくなって、q軸インダクタンスが大きくなる。一般のコンシクエントポールモータと違ってd軸磁路が通過する永久磁石が1層ではなく2層になるが、永久磁石の使用量が変化していないため、永久磁石の等価厚さもほとんど変わらず、d軸磁路のインダクタンスもほとんど変わらない。加えて、本実施例では、層間において磁束通路10を形成することによって、q軸磁路のリラクタンスを大幅に低減させ、q軸インダクタンスを向上させることができるため、横軸と縦軸の磁路インダクタンスの差が大きくなって、リラクタンストルクの利用率がより高くなる。
図7は、本実施例に係るコンシクエントポールモータと従来技術におけるモータとの、q軸インダクタンスの比較グラフである。グラフから分かるように、本実施例に係るコンシクエントポールモータを用いることによって、モータのq軸インダクタンスを大幅に向上させることができる。
【0042】
以下、本実施例に係るロータ1の構造についてより詳しく説明する。
【0043】
図3に示すように、前記ロータ1の軸線に垂直な断面において、前記第1の永久磁石挿入孔3の断面及び前記第2の永久磁石挿入孔4の断面はいずれも、順次に連結する第1のセグメント5、第2のセグメント6及び第3のセグメント7を含む。前記第1のセグメント5と前記第3のセグメント7とは、前記第2のセグメント6の中線に関して対称である。前記第1の永久磁石挿入孔3の第2のセグメント6の中線は、前記第2の永久磁石挿入孔4の第2のセグメント6の中線と重なり、且つ前記ロータ1の軸線と交わる。第1のセグメント5及び第3のセグメント7は、ロータ1の外側周縁に延在するような形状特徴を有する。
【0044】
具体的に、本実施例に係る前記第1の永久磁石挿入孔3の第2のセグメント6の中には前記第1層の永久磁石8が装着されており、前記第1の永久磁石挿入孔3の第1のセグメント5及び第3のセグメント7の中には磁気絶縁材料が装着されている。前記第2の永久磁石挿入孔4の第2のセグメント6の中には前記第2層の永久磁石9が装着されており、前記第2の永久磁石挿入孔4の第1のセグメント5及び第3のセグメント7の中には磁気絶縁材料が装着されている。なお、磁気絶縁材料はすなわち磁気を遮断する材料である。d軸磁路が1層の永久磁石しか通過しない一般のコンシクエントポールモータと比べて、本実施例においてはd軸磁路が2層の永久磁石を通過するが、第1のセグメント5及び第3のセグメント7の中に磁気絶縁材料を装着することによって、永久磁石の使用量を変えなくてもよく、永久磁石の等価厚さもほとんど変わらないため、d軸磁路のインダクタンスがほとんど変わらない。それに、層間において磁束通路10を形成することによって、q軸磁路のリラクタンスを大幅に低減させ、q軸インダクタンスを向上させることができるため、横軸と縦軸の磁路インダクタンスの差が大きくなって、リラクタンストルクの利用率がより高くなる。
【0045】
好ましくは、本実施例において、前記第1層の永久磁石8の厚さはt1であり、前記第2層の永久磁石9の厚さはt2であり、ここで、1.3<t1/t2<1.7である。このような構造を採用する理由は以下の通りである。
【0046】
外部からの減磁磁界が第1層の永久磁石8に直接作用するため、永久磁石は厚ければ厚いほど耐減磁性能が強くなる。よって、第1層の永久磁石8を厚く設置すると、耐減磁性能を効果的に向上させることができる。ただし、t1の厚さが既に一定の範囲を超えた場合、その厚さを更に増やしても、耐減磁性能の向上はあいまいになり、逆に永久磁石のコストが急激に上がってしまう。永久磁石のコストを抑えるために第2層の永久磁石9の厚さt2を減らすと、耐減磁性能への影響は大きくないが、永久磁石の動作点が落ちてしまって電磁トルクが急激に降下してしまう。
【0047】
以上に鑑みて、発明者は大量の実験を行って、1.3<t1/t2<1.7であるときにt1とt2の比率が妥当になることを証明できた。耐減磁性能を満たす前提で、最も少ない永久磁石を利用して最も高い電磁トルクを得ることができる。
【0048】
より好ましくは、本実施例は、永久磁石の磁極の幅と2層の永久磁石の等価厚さとの比率に対して規定する。
図3に示すように、前記第1層の永久磁石8の厚さはt1であり、前記第2層の永久磁石9の厚さはt2である。前記
第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、前記
第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、4<w2/(t1+t2)<8である。
【0049】
詳しく説明すると、w2は永久磁石の磁極の幅を表し、(t1+t2)は2層の永久磁石の等価厚さを表し、w2/(t1+t2)は本発明によるロータ1における永久磁石の細長比を表す。細長比を大きくする場合、永久磁石の磁束通過面積が大きくなって、より多くの磁力線が発生して、電磁トルクが向上する。ただし、等価厚さが小さくなると、永久磁石全体の耐減磁性能が弱くなる。一方、細長比を小さくする場合には逆の効果が発生する。そこで、発明者は大量の実験を行い、w2をt1、t2と関連付けることによって、4<w2/(t1+t2)<8であるときに永久磁石の等価磁束通過面積と等価厚さとの比率が妥当になることを証明できた。こうすると、永久磁石を十分に利用するとともにコストを低減することができる。
【0050】
さらに、
図3に示すように、本実施例において、前記第1の永久磁石挿入孔3の第1のセグメント5及び第3のセグメント7のそれぞれと、前記ロータ1の外側周縁との間の最小距離はt3である。前記第2の永久磁石挿入孔4の第1のセグメント5及び第3のセグメント7のそれぞれと、ロータ1の外側周縁との間の最小距離はt4である。ここで、t3≧t4である。
【0051】
以上の構造によると、第1の永久磁石挿入孔3の第1のセグメント5及び第3のセグメント7のそれぞれと、ロータ1の外側周縁との間で、幅がt3であるブリッジが形成される。第2の永久磁石挿入孔4の第1のセグメント5及び第3のセグメント7のそれぞれと、ロータ1の外側周縁との間で、幅がt4であるブリッジが形成される。なお、t3はt4に等しいか又はt4より大きい。このように配置することによって、第1層の永久磁石8の端部における漏れ磁束を減らしてマグネットトルクを小さくするとともに、アーマチュアの磁力線がブリッジをより通りやすくなってリラクタンストルクが大きくなるため、総電磁トルクを維持することができる。第2層の永久磁石9と比べて、第1層の永久磁石8においては不可逆の減磁がより発生しやすく、モータの性能に影響を与えてしまう。よって、第1層の永久磁石8の端部における漏れ磁束を増やすことによって、モータにおける1枚の板の耐減磁性能を向上させることができる。
【0052】
さらに、
図3に示すように、本実施例において、前記第1層の永久磁石8の中心と、前記ロータ1の外側周縁との間の最小距離はtm1である。前記
第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、前記
第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw1である。前記
第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、前記
第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、(2×tm1)/(
w2-w1)=(0.5~1)である。
【0053】
発明者は以上の構造に基づいて大量の実験を行った結果、この範囲内であればマグネットトルク及びリラクタンストルクの割合が妥当になって合成トルクが最大になることを証明できた。磁束通路10における磁力線は、アーマチュア磁力線、第2層の永久磁石9による磁力線及び第1層の永久磁石8による磁力線を含む。よって、磁束通路10上に分布する磁力線がより多い。研究結果によると、磁束通路10の幅はおおよそ(w2-w1)/2と表わすことができる。2tm1/(w2-w1)<0.5である場合、磁束通路10における磁力線の分布はまばらになるが、第1の永久磁石挿入孔3の外側における磁力線の分布が密になって局部的な磁気飽和が発生するため、第1層の永久磁石8によるマグネットトルクが低下する。また、通常状態において、磁束通路10における磁力線は第1の永久磁石挿入孔3の外側における磁力線より多い。2tm1/(w2-w1)>1である場合、磁束通路10における磁気飽和度が高く、リラクタンストルクが低下する。
【0054】
さらに、
図3に示すように、本実施例において、前記
第1の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、前記
第1の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw1である。前記
第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、前記
第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw2である。ここで、1.15<w2/w1<2.1である。
【0055】
発明者が以上の構造を設計した理由は以下の通りである。w1を大きくすると、磁束通路10が狭くなって、モータのq軸インダクタンスの増加量が小さくなるため、リラクタンストルクの向上には不利である。一方、w1を小さくすると、永久磁石の磁束通過面積が小さくなって、電磁トルクに含まれるマグネットトルクが低下する。加えて、一定の範囲を超過した後、磁束通路10が更に広くなっても、リラクタンストルクは明らかな向上をしない。よって、w1とw2の大きさを関連付けることによって、電磁トルクにおけるマグネットトルク及びリラクタンストルクの割合が妥当になるようにして、合成トルクを最大にすることができる。
【0056】
さらに、
図3に示すように、本実施例において、隣接する2つの第2の永久磁石挿入孔4のうちの1つの第1のセグメント5は他の1つの第3のセグメント7と隣接する。1つの
第2の永久磁石挿入孔の第1のセグメント5の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部と、他の1つの
第2の永久磁石挿入孔の第3のセグメント7の前記ロータ1の外側周縁に近接する端部との間の距離はw3である。前記第2層の永久磁石9の幅はwm2である。ここで、1.8<wm2/w3<2.7である。
【0057】
詳しく説明すると、w3はコンシクエントポールの幅を表す。永久磁石の磁極において、第1層の永久磁石8による磁力線はコンシクエントポールを通過しないため、コンシクエントポールにおける磁力線はすべて第2層の永久磁石9により発生されるものである。つまり、本発明に係る2層式の永久磁石構造を有するコンシクエントポールモータは、1層式の永久磁石構造と比べて、コンシクエントポールの幅をより狭く設計することができ、したがって永久磁石を配置するための面積をより広く確保することができる。しかしながら、永久磁石の磁極が大きすぎると、コンシクエントポールの面積が小さすぎるようになって磁気飽和が発生することを発明者が気付いた。それで、発明者は大量の実験を行った結果、1.8<wm2/w3<2.7にすると、コンシクエントポールにおける磁力線の分布が均一になって電磁トルクを最大化するとともに、局部的な磁気飽和により招来される余計な鉄損を低減させることができることを証明できた。
図6に示すように、wm2/w3が電磁トルクに与える影響をより直感的に表現することができる。
【0058】
好ましくは、本実施例において、前記第1層の永久磁石8は低残留磁束密度及び低保磁力を有する永久磁石であり、前記第2層の永久磁石9は高残留磁束密度及び高保磁力を有する永久磁石である。なお、「低残留磁束密度」、「高残留磁束密度」、「低保磁力」及び「高保磁力」はいずれも当業者が周知する一般的技術用語である。残留磁束密度が0.5テスラであり且つ保磁力が300kA/mであるフェライト永久磁石材料はすなわち低保磁力及び低残留磁束密度を有する材料であると考えられており、残留磁束密度が1.2テスラであり且つ保磁力が1000kA/mである希土永久磁石材料はすなわち高保磁力、高残留磁束密度材料であると考えられている。第2層の永久磁石9として高残留磁束密度且つ高保磁力の永久磁石材料を用いることによって、モータの性能及び耐減磁性能を保障しながら、コストを最大限に低減させることができる。
【0059】
さらに、本実施例においては、第1層の永久磁石8及び第2層の永久磁石9の構造形式に対しても改善を行う。例えば、前記第1層の永久磁石8及び第2層の永久磁石9はいずれも複数枚の永久磁石により構成されることができる。複数枚の永久磁石を利用することによって、永久磁石の加工及び装着に当たる困難さを抑えることができる。
【0060】
もう1つの例として、永久磁石の磁束通過面積を増やすために、前記ロータ1の軸線に垂直な断面において、前記第1層の永久磁石8の断面をV字型又はU字型に設計して、前記第2層の永久磁石9の断面を一字型又はV字型に設計することができる。
【0061】
以上の構造に基づいて、発明者はさらに、各層の永久磁石の幅とティース部の位置との関係が電磁トルクの大きさに影響を与えることを気付いた。そこで、発明者は永久磁石の幅及びステータ2のティース部の位置に対して改善を行った。
【0062】
詳しく説明すると、本実施例によるステータティース11の数をzに設定し、前記永久磁石の磁極の数をpに設定する。ここで、各前記永久磁石の磁極における第1の永久磁石挿入孔3は、前記ステータ2の内側周縁の第1の領域に対応する。前記第1の領域に属するステータティース11の数はz/4p+1である。なお、「前記永久磁石の磁極における第1の永久磁石挿入孔3は、前記ステータ2の内側周縁の第1の領域に対応する」において、第1の領域とは、第1の永久磁石挿入孔3の互いに対向する両辺の、ステータ2に向けて延びる延長線と、ステータ2の内側周縁とにより囲まれる領域である。当該領域内のステータティース11の数はz/4p+1である。
【0063】
通常の場合にステータ2からロータ1に入る磁力線は
図2に示す通りである。48スロット8極のモータを例とすると、z/4p+1=4である。つまり、第1層の永久磁石8の挿入孔の幅に対応する領域範囲の中には4つのステータティース11がある。
図2には磁極を半分しか示しておらず、他の半分は磁極の中心線(すなわち図面中のd軸)に関して示された半分と対称する。この領域範囲にあるティース部の半分は、
図2による1#及び2#であり、その磁力線の方向は矢印の通りである。1#のみが第1層の永久磁石8の挿入孔に属する場合、すなわち2#、3#及び4#が
磁束通路10に対向する場合、
磁束通路10における磁力線の数が増える。第1層の永久磁石8の挿入孔が短くなるから
磁束通路10の入口(すなわち第1層の永久磁石8
の挿入孔の第3のセグメント7と第2層の永久磁石9
の挿入孔の第3のセグメント7との間)は広くなるが、磁束通路10の中間セグメント(すなわち第1層の永久磁石8の第2のセグメント6と第2層の永久磁石9の第2のセグメント6との間)は広くならず、且つこの部分の磁束通路10の飽和度が高いため、q軸インダクタンスの向上は明らかではなく、電磁トルクの向上も明らかではない。また、第1層の磁束通路10の幅が狭くなると、第1層の永久磁石8により発生される磁力線が少なくなって、第1層の永久磁石8によるマグネットトルクが急激に少なくなるため、合成する電磁トルクは逆に降下する。それとともに、第1層の永久磁石8の両端における漏れ磁束の割合が増えて、永久磁石の利用率が降下する。
【0064】
3つのティース部1#、2#及び3#が第1の永久磁石挿入孔3に属する場合、第1層の永久磁石8の面積が大きくなって、第1層の永久磁石8により発生するトルクが大きくなる。しかし、磁束通路10の入口は狭くなるため、磁束通路10に入る磁力線が少なくなって、q軸インダクタンスが低下して、電磁トルクが低下する。
【0065】
発明者は実験を通じて以下の内容を判明できた。第1層の永久磁石8の挿入孔に対応するステータティース11の数がz/4p+1であるとき、第1層の永久磁石8がより大きいマグネットトルクを発生するとともに、q軸磁路(
磁束通路10を含む)がより大きいインダクタンスを発生し、したがってリラクタンストルクが向上する。なお、ティース数が電磁トルク成分に与える影響は
図5に示す通りである。
【0066】
さらに、
図2に示すように、本実施例において、いずれの前記永久磁石の磁極の第2の永久磁石挿入孔4も、前記ステータ2の内側周縁の第2の領域に対応する。図面から分かるように、第2の領域は上述の第1の領域を含む。前記第2の領域に属するステータティース11の数はz/2p+2である。好ましくは、前記ステータティース11の前記ロータ1に近接する端部の両側には突起部12が設けられ、前記第2の永久磁石挿入孔4の一側は第2の領域の一側にあるステータティース11の外側の突起部12に対応し、前記第2の永久磁石挿入孔4の他側は第2の領域の他側にあるステータティース11の外側の突起部12に対応する。ここで、「対応する」とは、永久磁石挿入孔の両側(具体的に、両側とは上述の第1のセグメント及び第3のセグメントである)のステータに向けて延びると、延長部分がステータティースの突起部と交わることができることを指す。
【0067】
半分の第2層の永久磁石9に属するステータティース11は
図2に示すように1#~4#を含む。第2層の永久磁石9の挿入孔は、4#ティースの外側の突起部12の位置に合わせられており、その上の磁力線の方向は矢印の通りである。他の半分はd軸に関して示された半分と対称する。q軸は一般のモータにおける隣接する磁極の境界線であって、その両側が異なる磁極になる。しかし、本発明においては、永久磁石の磁極がq軸を超えるように設計している。その理由は、q軸の両側にあるステータティース11の3#のティース中心における磁力線分布と、ステータティース11の4#のティース中心における磁力線分布とは、互いに平行になり、いずれも永久磁石の磁極のロータ1による磁力線と共同で正のトルクを発生することができる。しかし、ティース4#の外側の突起部12からの磁力線はコンシクエントポールの方に向かうため、永久磁石の磁極とこのような磁力線と作用したら、負のトルクが発生してしまって、電磁トルクが低下してしまう。永久磁石の磁極に対応するアーマチュア磁力線を最大限に向上させるとともに負のトルクを発生させないよう、本発明においては、第2層の永久磁石9の挿入孔の第3のセグメント7とティース4#の外側の突起部12との位置を合わせるように設計することによって、電磁トルクを最大化する。
【0068】
さらに、
図8に示すように、本実施例に係るコンシクエントポールモータにおける電磁トルク-電流角度の変化は、従来技術より顕著に優れている。また、
図9に示すように、本実施例に係るコンシクエントポールモータのトルクも従来技術より顕著に優れている。
【0069】
なお、本発明についての説明において、用語の「内」、「外」、「半径方向」、「周方向」、「軸方向」などにより指示される方向又は位置関係は、図面により示される方向又は位置関係であり、本発明の説明の便宜上に使用する用語に過ぎず、対応する装置が必ず特定の方向を有するか、又は必ず特定の方向に従って構造又は操作されることを指示/暗示するための用語ではないため、本発明に対する制限になると理解されてはいけない。
【0070】
他に、用語の「第1」、「第2」は説明の便宜上に使用する用語に過ぎず、重要性を指示/暗示する用語として理解されてはいけなく、指示される技術特徴の数として理解されてもいけない。つまり、「第1」、「第2」により限定されている特徴は、1つ又は複数の当該特徴を有することができる。本発明の説明において、別途で明確且つ具体的に限定されていなければ、「複数」の意味は2つ以上である。
【0071】
本発明において、別途で明確に規定又は限定されていなければ、用語の「装着」、「連結」、「接続」などは広義的に理解されるべきである。例えば、固定的連結であってもよく、分解可能な連結であってもよく、一体化であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて、これらの用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0072】
なお、以上で本発明の実施例を示して説明を行ったが、以上の実施例は例示的なものに過ぎず、本発明に対する制限ではない。当業者であれば、本発明の保護範囲内で以上の実施例に基づいてを変化、変更、置換、変形を実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
図面における符号により示される部品のリストは以下の通りである。
1 ロータ
2 ステータ
3 第1の永久磁石挿入孔
4 第2の永久磁石挿入孔
5 第1のセグメント
6 第2のセグメント
7 第3のセグメント
8 第1層の永久磁石
9 第2層の永久磁石
10 磁束通路
11 ステータティース
12 突起部