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  • 特許-化粧品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】化粧品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20220610BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220610BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/02
A61Q1/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017118125
(22)【出願日】2017-05-29
(65)【公開番号】P2018199662
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武志
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕太
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188573(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146948(WO,A1)
【文献】特開2014-040385(JP,A)
【文献】特開2017-066085(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030841(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 33/00-40/30
B65D 83/00-76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性化粧料が収容された収容体の開放部が網状体で覆われ、該網状体を介して粘性化粧料が取り出される化粧品において、
前記網状体の目開きが20μm~300μmであって、
前記粘性化粧料は、増粘剤として(PEG-240/デシルテトラデセル-20/HDI)コポリマーを含み、粘度が、8000~20000mPa・sであり、
前記粘性化粧料の取り出し量が0.08g以上である、化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性化粧料が充填された収容体を備え、該収容体の開放部が網状体により覆われた化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スポンジ状の含浸体に化粧料を保持させ、この含浸体から化粧料を取り出す新しい形態の化粧品が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。このように含浸体に化粧料を保持させる場合、含浸体の体積がかさばるために容器が大型化するという問題があった。そこで、容器を小型化し、より携帯性を向上させるために、含浸体を用いず、化粧料が収容された収容体の開放部を膜状体で覆い、膜状体を介して化粧料を取り出す形態の化粧品が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-530252号
【文献】特表2015-512932号
【文献】特開2017-002026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収容体に収容された化粧料を使用する際には、網状体を押圧し、網状体から化粧料を染み出させ、その染み出した化粧料を取り出すことになる。使用される増粘剤の種類によっては、同一粘度であっても、網状体から化粧料が染み出さなかったり、染み出したとしても染み出す化粧料の量が多すぎたりするため、使用時に化粧料の取り出し量を調整しにくいという問題があった。
本発明は、化粧料が収容された収容体の開放部が網状体で覆われ、該網状体を介して化粧料を取り出される化粧品において、適切な量の化粧料を取り出しやすくした化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、粘性化粧料において特定の増粘剤を用いることにより、粘性化粧料が網状体から染み出す量を適度に調整することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の化粧品は、粘性化粧料が収容された収容体の開放部が網状体で覆われ、該網状体を介して粘性化粧料が取り出される化粧品において、上記粘性化粧料は、増粘剤として疎水変性ポリエーテルウレタンを含み、粘度が8000~20000mP・sであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧品は、粘性化粧料が収容された収容体の開放部が網状体で覆われており、該網状体を介して粘性化粧料が取り出されるようになっている。上記粘性化粧料は、増粘剤として疎水変性ポリエーテルウレタンを含み、粘度が8000~20000mP・sであるため、上記網状体を押圧して網状体から粘性化粧料を染み出させる際、適度な量の粘性化粧料が染み出てくる。したがって、大量の粘性化粧料を取り出すことが防止され、適量の粘性化粧料を使用することができる。また、適量の粘性化粧料が染み出すため、染み出した粘性化粧料が網状体上に残存することが少なくなり、汚染の防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】 本発明の化粧品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
本発明の化粧品1は、図1に示すように、開口部を有する収容体10に粘性化粧料30が収容されており、上記開口部が網状体20により覆われている。なお、図には示していないが、上記化粧品は、網状体20を覆う蓋を有していることが好ましい。なお、本発明の化粧品としては、通常の化粧品に加え、医薬部外品も含む概念である。
上記網状体20は、弾性を有し、複数の穴を有している。つまり、網状体20は、外圧を受けることにより、変性し、外圧が解除されると元の形状に戻るようになっている。この網状体20としては、綿、麻、羊毛等の天然繊維や、レーヨン、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維を編みこんだ生地、発泡ゴムや発泡ポリウレタン等の高分子から形成された多孔質をシート体等が挙げられる。
本発明の化粧品1においては、上記網状体20に外圧が掛からない場合、粘性化粧料30が網状体20を通り抜けにくいように調製されている。一方、外圧が掛かった場合、粘性化粧料30が網状体20を徐々に通り抜ける(染み出す)ように調製されている。上記網状体には伸縮性を持たせ、網状体に掛かる力に応じて穴の大きさがある程度大きくなることが好ましい。
本発明の化粧品1は、網状体20を粘性化粧料30方向に押圧し、網状体20から所望量の粘性化粧料30を網状体20の穴から染み出させ、この染み出した粘性化粧料30をパフ、指等のアプリケータにより取り出し、皮膚に塗布することにより使用する。
上記の網状体20の穴は、粘性化粧料を染み出させることを考慮すると、1~500μmであることが好ましい。
【0010】
本発明の化粧品1における化粧料30は、増粘剤として疎水変性ポリエーテルウレタンを含む。
前記疎水変性ポリエーテルウレタンは、下記式(1):
-{(O-R-OCONH-R[-NHCOO-(R-O)―R … (1)
(式中、R、R及びRは、互いに同一でも異なっても良い炭素数2~15の炭化水素基を表し、Rはウレタン結合を有しても良い炭化水素基を表し、Rは炭素数8~36の直鎖、分岐鎖又は2級の炭化水素基を表し、mは2~8の数であり、hは1または2であり、kは1~500の範囲の数であり、nは1~200の範囲の数である)で表される化合物である。
【0011】
上記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンは、例えばR-[(O-R-OH]で表される1種または2種以上のポリエーテルポリオールと、R-(NCO)h+1で表される1種または2種以上のポリイソシアネートと、HO-(R-O)-Rで表される1種または2種以上のポリエーテルモノアルコールとを反応させることにより得ることができる。
【0012】
この場合、一般式(1)中のR~Rは、用いるR-[(O-R-OH]、R-(NCO)h+1、HO-(R-O)-Rにより決定される。3者の仕込み比は、特に限定されないが、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルモノアルコール由来の水酸基と、ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の比が、NCO/OH=0.8:1~1.4:1であることが好ましい。
【0013】
その中でも、ポリエチレングリコールの両末端をデシルテトラデシルアルコールで修飾した構造を有し、平均重量分子量が約5万程度(GPC法)のものが好適に用いられる。このような疎水変性ポリエーテルウレタンの市販品として、例えば、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネートコポリマーである「アデカノールGT-700」(ADEKA(株)製)等が挙げられる。「アデカノールGT-700」は、上記一般式(1)において、R、R、Rが炭素数2、Rが炭素数6、Rが炭素数24の炭化水素基であり、m=2、h=1、k=120、n=20の化合物に相当する。
上記疎水変性ポリエーテルウレタンの含有量は、本発明の化粧品における粘性化粧料の総量に対して、0.01~3.0質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では、適度な粘性が得られにくく網状体から染み出し易くなりすぎ、3.0質量%を超えると、肌へののびなどの使用感が悪くなる場合があるからである。
【0014】
また、本発明の化粧品における粘性化粧料は、粘度が8000~20000mP・sに調整されている。この粘度は、さらに10000~20000mP・sであることがより好ましい。上記粘性化粧料の粘度が、8000mP・sより低い場合には、網状体を押圧して粘性化粧料を取り出す際に、網状体から粘性化粧料は所望されるよりもはるかに多い量染み出すため、アプリケータで取りきれずに網状体上に残ってしまう。この網状体上に残存した粘性化粧料は、網状体から離脱するため、汚染の原因になってしまう。一方、粘性化粧料の粘度が20000mP・sを超えると、網状体を押圧しても、所望量の粘性化粧料が、網状体上に染み出さず、より強い力で押圧したり、長時間押圧したりする必要があり、使用上に問題が生じる。つまり、本発明の化粧品では、上記の使用者にストレスをかけることなく、上記の広範囲の粘度にて適量の粘性化粧料を取り出すことができ、汚染の懸念を軽減することができる。
【0015】
本発明の化粧品における粘性化粧料は、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常化粧料に配合される各種の界面活性剤、油性成分、高級アルコール、低級アルコール、ロウ類、フッ素化合物、樹脂、増粘剤、防菌防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、顔料、色素、香料等の成分を使用することができる。
なお、本発明の化粧品における粘性化粧料の剤型は、特に限定されるものではなく、乳化系であってもよく、乳化系の場合、安定性を考慮すると、水中油型であることが好ましい。
【0016】
本発明の化粧品における粘性化粧料の例としては、特に限定されないが、容器の形態から、粘性を有するジェル状またはクリーム状のファンデーション等のメーキャップ化粧料の形態であることが好ましい。
【実施例
【0017】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
<粘性化粧料の調製>
下記表1に示す組成にて、実施例(但し、実施例1は参考例である。)および比較例に係る粘性化粧料を調製し、調製した粘性化粧料の粘度を測定した。粘度は、東機産業社製BII型粘度計(機種:BHII)を用い、回転速度20rpmにて測定した。
【0019】
【表1】
【0020】
<取り出し評価>
上記実施例および比較例で調製した粘性化粧料を、直径5cm、深さ0.8cmの容器Aに13.5g充填し、網状体で覆った試料を用意した。上記網状体としては、伸縮性を有するポリエチレンテレフタレート製の繊維で織り上げられた網状体A(目開き:約300μm)、および網状体B(目開き:約20μm)の2種類を用いた。
調製した試料を網状体が上に向くように水平に保ち、網状体上に直径3cmの円形のろ紙を載せ、さらにろ紙上に200gの分銅を載せて5秒間放置した後、ろ紙および分銅を除去し、ろ紙に付着した粘性化粧料の重量を測定した。つまり、網状体を押圧した際の粘性化粧料の取り出し量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、表中の×は分銅を載せた際に網状体が沈み込み、大量の粘性化粧料が染み出してしまったため、粘性化粧料をろ紙に付着しきれなかったものを示す。大量の粘性化粧料が染み出してしまった場合には、網状体上に粘性化粧料が残存してしまい、汚染の原因となってしまう。
【0021】
上記表1に示すように、実施例1,2では、網状体を変更しても、広範の粘度にて取り出し量が0.08g以上あり、適量であった。一方、比較例をみると、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマーのいずれも、粘度が10000mP・s程度の場合には、粘性化粧料が大量に染み出しすぎたり、20000mP・s程度では、網状体に依存して粘性化粧料が適量取ることが出来なかったりするといった問題が生じた。
【実施例4】
【0022】
水中油型ゲル状ファンデーション
(配合成分) (質量%)
(1)1,3-ブチレングリコール 10.0
(2)疎水変性ポリエーテルウレタン 1.0
(商品名:アデカノールGT-700 ADEKA社製)
(3)精製水 残量
(4)ステアリン酸ソルビタン 2.0
(5)モノミリスチン酸デカグリセリル 3.0
(6)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3.0
(7)メチルパラベン 0.2
(8)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 10.0
(9)メチルポリシロキサン 4.0
(10)ベヘニルアルコール 3.0
(11)2-オクチルドデカノール 3.0
(12)トリイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
(13)d-δ-トコフェロール 0.05
(14)酸化チタン 12.0
(15)赤酸化鉄 0.2
(16)黄酸化鉄 1.0
(17)黒酸化鉄 0.1
【0023】
(製法)
水相部(1)~(7)を70℃以上で加温溶解し、均一化させる。一方、油相部(8)~(17)を70℃以上で加温溶解、混合した後、3本ローラーなどで分散処理する。ついで、水相部、油相部ともに70~80℃に調整しながら、水相に油相を添加し、ホモミキサーで乳化させた後、室温までゆっくり混合しながら冷却させ、脱泡処理する。
得られた水中油ゲル状ファンデーションの粘度を測定したところ、11000mP・sであった。
【0024】
得られた水中油型ゲル状ファンデーションを容器Aに13.5g充填し、網状体Aで覆った試料を用意し、上記取り出し評価を実施したところ、0.082gであり、取り出し量は適量であった。
【符号の説明】
【0025】
1 化粧品
10 収容体
20 網状体
30 粘性化粧料
図1