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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】建機用バケット
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/345 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
E02F3/345
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020159057
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052588
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2021-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303051396
【氏名又は名称】オノデラ製作所株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 博
(72)【発明者】
【氏名】天羽 泉
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】阪口 雅信
(72)【発明者】
【氏名】鵜山 雅夫
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-091864(JP,U)
【文献】特公昭50-037921(JP,B1)
【文献】特開平11-323999(JP,A)
【文献】特許第3953654(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/28- 3/413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建機のブームに連結され、積載物の持ち上げにあたって前記積載物を保持する載置面を有する載せ板と、
前記載せ板に接続され、前記載置面に並行にスライダーの変位を案内する案内路を有する案内体と、
前記スライダーに結合され、前記載置面の一端から他端に向かって駆動されて、前記他端から前記載置面上の前記積載物を押し落とす押し板と
前記スライダーから第1方向に延び、前記載置面の一端に前記押し板を位置決めする際に前記載せ板の一端の内側に位置する第1軸線回りに巻きかけられる第1スリング材と、
前記スライダーから前記第1方向に反対向きの第2方向に延び、前記第1軸線に平行であって前記載置面の他端に前記押し板を位置決めする際に前記載せ板の他端の内側に位置する第2軸線回りに巻きかけられる第2スリング材と、
前記第1スリング材に、前記第1方向に前記スライダーを駆動する第1引っ張り力を作用し、前記第2スリング材に、前記第2方向に前記スライダーを駆動する第2引っ張り力を作用する動力源と
を備えることを特徴とする建機用バケット。
【請求項2】
請求項に記載の建機用バケットにおいて、前記動力源は、軸回りに前記第1スリング材の滑りを案内する第1ローラー、および、軸回りに前記第2スリング材の滑りを案内する第2ローラーを支持する変位部材にシリンダーロッドを連結し、前記第1軸線に同軸に前記第1ローラーを位置づける第1位置、および、前記第2軸線に同軸に前記第2ローラーを位置づける第2位置の間で前記案内路に並行に前記シリンダーロッドを動かす油圧シリンダーであることを特徴とする建機用バケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建機用バケットにおいて、前記スライダーは、前記案内体の縁で囲まれる前記案内路に受け入れられて、回転軸線に同軸に形成される環状溝で前記縁に係るローラーを備えることを特徴とする建機用バケット。
【請求項4】
建機のブームに連結され、積載物の持ち上げにあたって前記積載物を保持する載置面を有する載せ板と、
前記載せ板に接続され、前記載置面に並行に延びる案内路を有する案内体と、
前記案内路の延びる向きに任意の間隔で配置され前記案内路に案内される2つのローラーを有するスライダーと、
前記スライダーに結合され、前記載置面の一端から他端に向かって駆動されて、前記他端から前記載置面上の前記積載物を押し落とす押し板とを備え
前記案内路は、前記変位の向きに並行に延びる線形域と、前記載せ板の一端に向かって前記線形域の一端から延び、前記線形域の一端から離れるに従って前記載置面から遠ざかる第1傾斜域と、前記載せ板の他端に向かって前記線形域の他端から延び、前記線形域の他端から離れるに従って前記載置面から遠ざかる第2傾斜域とを有することを特徴とする建機用バケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建機のブームに連結される建機用バケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、上下方向に先端を変位させるブームを備えるホイールローダーを開示する。ブームの先端にはサイドダンプバケットが連結される。サイドダンプバケットは、積載物の持ち上げにあたって積載物を保持する載せ板を備える。サイドダンプバケットがダンプカーの荷台またはベルトコンベア用クラッシャーに対して位置決めされると、ヒンジピン回りで載せ板の左右方向一端は持ち上げられる。建機の左右方向に載せ板が傾くことで、積載物は載せ板から滑り落ちる。こうしてホイールローダーはダンプカーまたはベルトコンベア用クラッシャーにできるだけ並列に静止しながらダンプカーの荷台またはベルトコンベア用クラッシャーに積載物を積載することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3953654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたサイドダンプ仕様のホイールローダーはトンネルや坑内の作業でしばしば利用される。しかしながら、トンネルや坑内では天井が存在することから、持ち上げられたサイドダンプバケットの一端と天井との干渉は回避されなければならない。その結果、トンネルや坑内でホイールローダーの作業域は制限されてしまう。一般に、トンネルや坑内では通路の中央から左右に遠ざかるにつれて天井の高さが減少することから、ダンプカーまたはベルトコンベア用クラッシャーとホイールローダーとが並列で駐車すると、持ち上げられたサイドダンプバケットの一端と天井とは干渉しやすい。
【0005】
本発明は、トンネルや坑内でさらに効率的な作業の実現に寄与することができる建機用バケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、建機のブームに連結され、積載物の持ち上げにあたって前記積載物を保持する載置面を有する載せ板と、前記載せ板に接続され、前記載置面に並行にスライダーの変位を案内する案内路を有する案内体と、前記スライダーに結合され、前記載置面の一端から他端に向かって駆動されて、前記他端から前記載置面上の前記積載物を押し落とす押し板とを備える建機用バケットは提供される。
【0007】
建機用バケットの使用にあたって建機用バケットは建機のブームに連結される。建機の動作に応じて載せ板の載置面に積載物は載せられる。ブームの上昇に応じて建機用バケットは例えばダンプカーの荷台またはベルトコンベア用クラッシャーに対して位置づけられる。載置面の一端から他端に向かって押し板が駆動されると、押し板は載置面の他端から積載物を押し落とすことができる。このとき、載せ板は傾かずに水平姿勢に維持されることから、サイドダンプ仕様に比べて高さの増加は回避されることができる。トンネルや坑内では拡大された作業域で建機用バケットと天井との干渉は回避されることができる。建機の作業域は広がることができる。トンネルや坑内でさらに効率的な作業が実現されることができる。
【0008】
建機用バケットは、前記スライダーから第1方向に延び、前記載置面の一端に前記押し板を位置決めする際に前記載せ板の一端の内側に位置する第1軸線回りに巻きかけられる第1スリング材と、前記スライダーから前記第1方向に反対向きの第2方向に延び、前記第1軸線に平行であって前記載置面の他端に前記押し板を位置決めする際に前記載せ板の他端の内側に位置する第2軸線回りに巻きかけられる第2スリング材と、前記第1スリング材に、前記第1方向に前記スライダーを駆動する第1引っ張り力を作用し、前記第2スリング材に、前記第2方向に前記スライダーを駆動する第2引っ張り力を作用する動力源をさらに備えてもよい。
【0009】
第1スリング材は第1軸線回りに巻きかけられることから、載置面の一端に向かって最大限に押し板が位置決めされる際に第1引っ張り力の適用にあたって第1スリング材および動力源は載せ板の一端よりも内側に配置されることができる。同様に、第2スリング材は第2軸線回りに巻きかけられることから、載置面の他端に向かって最大限に押し板が位置決めされる際に第2引っ張り力の適用にあたって第2スリング材および動力源は載せ板の他端よりも内側に配置されることができる。押し板は載せ板の一端から他端まで最大限に変位するにも拘わらず、押し板の駆動にあたって載せ板から駆動機構や伝達機構のはみ出しは回避されることができる。建機用バケットの大型化は回避されることができる。こうした建機用バケットはトンネルや坑内で効率的な作業の実現に貢献することができる。第1スリング材および第2スリング材にはチェーンやワイヤーロープ、ベルトその他が用いられることができる。
【0010】
前記動力源は、軸回りに前記第1スリング材の滑りを案内する第1ローラー、および、軸回りに前記第2スリング材の滑りを案内する第2ローラーを支持する変位部材にシリンダーロッドを連結し、前記第1軸線に同軸に前記第1ローラーを位置づける第1位置、および、前記第2軸線に同軸に前記第2ローラーを位置づける第2位置の間で前記案内路に並行に前記シリンダーロッドを動かす油圧シリンダーであればよい。油圧シリンダーの単純な伸縮動作(シリンダーロッドの出し入れ)に応じて押し板は載置面の一端から他端まで変位することができる。このとき、油圧シリンダーは載せ板の一端および他端の範囲に収められることができる。建機用バケットの大型化は回避されることができる。押し板の駆動にあたって油圧シリンダーが用いられることから、建機用バケットは既存のサイドダンプ仕様の建機にも取り付けられることができる。
【0011】
前記スライダーは、前記変位の向きに任意の間隔で配置され前記案内路に案内される2つのローラーを備えればよい。このとき、前記案内路は、前記変位の向きに並行に延びる線形域と、前記載せ板の一端に向かって前記線形域の一端から延び、前記線形域の一端から離れるに従って前記載置面から遠ざかる第1傾斜域と、前記載せ板の他端に向かって前記線形域の他端から延び、前記線形域の他端から離れるに従って前記載置面から遠ざかる第2傾斜域とを有すればよい。線形域に沿ってスライダーが変位すると、押し板は載置面に並行に変位することができる。こうして押し板は載置面上の積載物を一端から他端に向かって寄せることができる。第1傾斜域に少なくとも一方のローラーが進入すると、押し板は載せ板の一端から外向きに姿勢を変化させることができる。こうしてスライダーの位置は載せ板の一端よりも内側に規制されるにも拘わらず押し板はできるだけ外側まで位置決めされることができる。ここでは、ローラーは2つとも第1傾斜域に進入してもよい。第2傾斜域に少なくとも一方のローラーが進入すると、押し板は載せ板の他端から外向きに姿勢を変化させることができる。こうしてスライダーの位置は載せ板の他端よりも内側に規制されるにも拘わらず押し板はできるだけ外側まで位置決めされることができる。ここでは、ローラーは2つとも第2傾斜域に進入してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように開示の建機用バケットによれば、トンネルや坑内でさらに効率的な作業の実現に寄与することができる建機用バケットは提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る建機の構造を概略的に示す側面図である。
図2】建機の油圧システムの構成を示す概念図である。
図3】ブームの拡大側面図である。
図4】バケットの斜視図である。
図5】押し板駆動機構の動作を示す概念図である。
図6】バケットの動作を示す正面斜視図である。
図7】サイドダンプ仕様の建機を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ここで、車体の上下前後左右は建機に乗車したオペレーターの目線に基づき規定されるものとする。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る建機11の構造を概略的に示す。建機11は、左右の前輪12および左右の後輪13で走行自在に地面に支持される車体14を備える。左右の前輪12は共通の回転軸線15回りで回転する。左右の後輪13は共通の回転軸線16回りで回転する。前輪12の回転軸線15は、例えば後輪13の回転軸線16を含んで地面に平行な1水平面内に配置される。水平面に直交する軸線回りで前輪12の回転軸線15が変位することで車体14は旋回することができる。前輪12および後輪13の間で車体14にはキャビン17が搭載される。オペレーターはキャビン17内に着席して建機11の動作を操作することができる。建機11はいわゆるホイールローダーとして構成される。
【0016】
左右の前輪12の間で車体14には水平軸線(以下「起伏軸線」という)18回りで起伏自在にブーム19が設置される。ブーム19は左腕および右腕を備える。ブーム19には第1駆動機構21が連結される。第1駆動機構21は、一端で車体14に連結され他端でブーム19の左腕および右腕にそれぞれ連結される左右の油圧シリンダー(以下「起伏油圧シリンダー」という)22を備える。起伏油圧シリンダー22は、一端から他端に向かって延び、ピストンを収容するシリンダー体23と、他端から一端に向かって延び、ピストンに連結されるシリンダーロッド24とを有する。シリンダー体23は、起伏油圧シリンダー22の一端で、起伏軸線18よりも下方で起伏軸線18に平行に配置される第1連結軸25回りで回転自在に車体14に連結される。シリンダーロッド24は、起伏油圧シリンダー22の他端で、起伏軸線18に平行に配置される第2連結軸26回りで回転自在にブーム19に連結される。
【0017】
図2に示されるように、シリンダー体23の内部空間は一端側の第1油圧室27aおよび他端側の第2油圧室27bにピストン28で仕切られる。第1油圧室27aおよび第2油圧室27bには油圧源(例えば油圧ポンプ)29から作動油が供給される。第1油圧室27aに油圧が作用すると、他端に向かってピストン28は駆動される。シリンダー体23からシリンダーロッド24は押し出される。起伏油圧シリンダー22は伸張する。ブーム19は上昇する。第2油圧室27bに油圧が作用すると、一端に向かってピストン28は駆動される。シリンダーロッド24はシリンダー体23に押し込まれる。起伏油圧シリンダー22は収縮する。ブーム19は下降する。
【0018】
図3に示されるように、ブーム19の先端には第3連結軸31回りで首振り自在にバケット32が連結される。第3連結軸31は起伏軸線18に平行に配置される。バケット32には第2駆動機構33が連結される。第2駆動機構33は、中間位置で揺動軸34回りに揺動自在にブーム19に連結される第1リンク部材35と、第1リンク部材35およびブーム19に連結されて、ブーム19に対して相対的に第1リンク部材35の揺動を引き起こす油圧シリンダー(以下「首振り油圧シリンダー」という)36と、第1リンク部材35およびバケット32に連結されて、第1リンク部材35の揺動をバケット32の首振り運動に変換する第2リンク部材37とを備える。
【0019】
第1リンク部材35はブーム19の左腕および右腕の間に配置される。揺動軸34は起伏軸線18に平行に配置される。揺動軸34は、ブーム19の前端および後端の間に位置する中間位置でブーム19に支持される。第1リンク部材35は、揺動軸34に直交する仮想平面に沿って揺動軸34から第1方向に延びる第1体35aと、揺動軸34に直交する仮想平面に沿って揺動軸34から第1方向に反対向きの第2方向に延びる第2体35bとを有する。
【0020】
首振り油圧シリンダー36は、一端から他端に向かって延び、ピストン38を収容するシリンダー体39と、他端から一端に向かって延び、ピストン38に連結されるシリンダーロッド41とを有する。シリンダー体39は、首振り油圧シリンダー36の一端で、揺動軸34よりも後方で揺動軸34に平行に配置される第4連結軸42回りで回転自在にブーム19に連結される。シリンダーロッド41は、首振り油圧シリンダー36の他端で、揺動軸34に平行に配置される第5連結軸43回りで回転自在に第1リンク部材35の第1体35aに連結される。
【0021】
図2に示されるように、シリンダー体39の内部空間は一端側の第3油圧室44aおよび他端側の第4油圧室44bにピストン38で仕切られる。第3油圧室44aおよび第4油圧室44bには油圧源(例えば油圧ポンプ)29から作動油が供給される。第3油圧室44aに油圧が作用すると、他端に向かってピストン38は駆動される。シリンダー体39からシリンダーロッド41は押し出される。首振り油圧シリンダー36は伸張する。第4油圧室44bに油圧が作用すると、一端に向かってピストン38は駆動される。シリンダーロッド41はシリンダー体39に押し込まれる。首振り油圧シリンダー36は収縮する。
【0022】
第2リンク部材37は、一端で第6連結軸45回りに回転自在に第1リンク部材35の第2体35bに連結され、他端で第7連結軸46回りに回転自在にバケット32に連結される。第7連結軸46は第3連結軸31よりも上方に配置される。第6連結軸45および第7連結軸46はともに揺動軸34に平行に配置される。首振り油圧シリンダー36が伸張すると、バケット32は第3連結軸31回りで上向きに首振り動作を実現する。首振り油圧シリンダー36が収縮すると、バケット32は第3連結軸31回りで下向きに首振り動作を実現する。
【0023】
バケット32は、積載物の持ち上げにあたって積載物を保持する載置面47aを有する載せ板47と、載せ板47に接続され、載置面47aに並行にスライダー48の変位を案内する案内路49を有する案内体51と、スライダー48に結合され、載置面47aの一端から他端に向かって駆動されて、他端から載置面47a上の積載物を押し落とす押し板52とを備える。載せ板47は、第3連結軸31の軸心に平行に延び前向きに開放された前端から平らに広がる掬い域53aと、掬い域53aの後端から連続し第3連結軸31の軸心に平行な母線を有して上向きに湾曲しながら広がる湾曲域53bとを有する。載せ板47の左右端は開放される。ここでは、載置面47aは掬い域53aの表面に相当する。スライダー48の変位は第3連結軸31に平行に設定される。すなわち、載置面47aの一端は右端に相当し、載置面47aの他端は左端に相当する。図4に示されるように、載せ板47には、ブーム19の左腕および右腕との連結に用いられる第3連結軸31を支持する左右1対の第1軸受け54と、第2駆動機構33の第2リンク部材37との連結に用いられる第7連結軸46を支持する第2軸受け55とが形成される。
【0024】
スライダー48は、変位の向きに任意の間隔で配置され案内路49に案内される2つのローラー56を備える。図3に示されるように、個々のローラー56は、スライダー48に固定される支軸57と、転がり軸受けで支軸57に回転自在に結合されるローター58とを有する。ローター58の外周には回転軸線に同軸に環状溝58aが形成される。環状溝58aには、案内路49を区画する案内体51の縁が入り込む。環状溝58aの働きで、ローター58の回転軸線の軸方向に案内路49からローター58の抜けは防止されることができる。
【0025】
図5に示されるように、案内路49は、スライダー48の変位の向きに並行に延びる線形域49aと、載せ板47の右端に向かって線形域49aの右端から延び、線形域49aの右端から離れるに従って載置面47aから遠ざかる第1傾斜域49bと、載せ板47の左端に向かって線形域49aの左端から延び、線形域49aの左端から離れるに従って載置面47aから遠ざかる第2傾斜域49cとを有する。第1傾斜域49bおよび第2傾斜域49cは線形に延びればよい。ここでは、第1傾斜域49bの終端に円形開口59が接続される。円形開口59は、支軸57の軸方向にローター58の出し入れを実現する大きさに形成される。案内路49には、円形開口59から1つずつローラー56は挿入されることができる。案内路49に案内された2つのローラー56にスライダー48は結合されることができる。スライダー48が結合されると、円形開口59からローラー56の離脱は防止されることができる。
【0026】
スライダー48には押し板駆動機構61が連結される。押し板駆動機構61は、案内路49の線形域49aに平行に延びて、第1ローラー62および第2ローラー63を支持する変位部材64と、変位部材64に連結されるシリンダーロッド65を動かす油圧シリンダー(以下「バケット油圧シリンダー」という)66と、案内路49の線形域49aに平行に案内されながら変位部材64の動きに連動して変位する連結部材67とを備える。第1ローラー62は、第3連結軸31の軸心に直交する仮想平面内に回転軸線を有する。第2ローラー63は、第1ローラー62から第3連結軸31に平行に間隔をあけて第1ローラー62の回転軸線に平行な回転軸線を有する。第1ローラー62および第2ローラー63の外周には回転軸線に同軸に環状溝62a、63aが形成される。変位部材64の変位は第3連結軸31に平行に線形に規制される。こうした変位の規制にあたって変位部材64はガイド(図示されず)に案内されることができる。
【0027】
バケット油圧シリンダー(動力源)66は、案内体51の右端から左端に向かって延び、ピストン68を収容するシリンダー体69と、シリンダー体69の左端から貫通してピストン68に連結されるシリンダーロッド65とを有する。シリンダー体69の中心軸は第3連結軸31の軸心に平行に配置される。シリンダーロッド65は第3連結軸31に平行に変位する。シリンダー体69の内部空間は右側の第1油圧室71aおよび左側の第2油圧室71bにピストン68で仕切られる。第1油圧室71aおよび第2油圧室71bには例えば車体14に搭載される油圧源(例えば油圧ポンプ)29から作動油を供給する油圧パイプ72が接続される。第1油圧室71aに油圧が作用すると、左端に向かってピストン68は駆動される。シリンダー体69からシリンダーロッド65は押し出される。バケット油圧シリンダー66は伸張する。変位部材64は左限位置まで移動することができる。第2油圧室71bに油圧が作用すると、右端に向かってピストン68は駆動される。シリンダーロッド65はシリンダー体69に押し込まれる。バケット油圧シリンダー66は収縮する。変位部材64は右限位置まで移動することができる。
【0028】
連結部材67は第1ローラー62および第2ローラー63の間で線形に変位する。連結部材67の変位は変位部材64で案内されてもよく案内体51で案内されてもよい。連結部材67はスライダー48に連結される。連結部材67の線形移動は案内路49の線形域49aに平行にスライダー48に伝達される。線形移動の伝達にあたってスライダー48に対して軸線回りに連結部材67の首振り動作は許容される。その結果、連結部材67は単純な線形運動を実施する一方で、案内路49の第1傾斜域49bおよび第2傾斜域49cに基づく押し板52の姿勢変化は許容されることができる。
【0029】
連結部材67は、第1ローラー62に巻きかけられる第1スリング材73と、第2ローラー63に巻きかけられる第2スリング材74とで変位部材64に連結される。ここでは、第1スリング材73および第2スリング材74には鋼製のチェーンが用いられる。その他、第1スリング材73および第2スリング材74にはワイヤーロープやベルトが用いられることができる。第1スリング材73は、スライダー48に結合される連結部材67から第1方向DR1に延び、第1ローラー62に巻きかけられ、案内体51の左端に結合される。第2スリング材74は、連結部材67から第1方向DR1に反対向きの第2方向DR2に延び、第2ローラー63に巻きかけられ、案内体51の右端に結合される。図5(a)に示されるように、バケット油圧シリンダー66が最大限に収縮すると、シリンダーロッド65は第1位置に位置決めされる。このとき、変位部材64は右限位置に位置する。第1ローラー62の軸線で第1軸線FXは確立される。第1ローラー62の軸線は第1軸線FXに同軸に配置される。第1軸線FXは載せ板47の右端の内側に位置する。図5(b)に示されるように、バケット油圧シリンダー66が最大限に伸張すると、シリンダーロッド65は第2位置に位置決めされる。このとき、変位部材64は左限位置に位置する。第2ローラー63の軸線で第2軸線SXは確立される。第2ローラー63の軸線は第2軸線SXに同軸に配置される。第2軸線SXは載せ板47の左端の内側に位置する。ここでは、2つの第1スリング材73はバケット油圧シリンダー66を挟んで対称的に配置される。同様に、2つの第2スリング材74はバケット油圧シリンダー66を挟んで対称的に配置される。すなわち、バケット油圧シリンダー66の軸心を含んで第1ローラー62の軸線および第2ローラー63の軸線に直交する仮想平面は対称面を形成する。
【0030】
第1ローラー62の環状溝62aは軸線回りで第1スリング材73の滑りを案内する。滑りの案内にあたって第1ローラー62は軸線回りで回転することができる。同様に、第2ローラー63の環状溝63aは軸線回りで第2スリング材74の滑りを案内する。滑りの案内にあたって第2ローラー63は軸線回りで回転することができる。バケット油圧シリンダー66が収縮すると、変位部材64の変位に応じて第1ローラー62は右端に向かって移動する。第1スリング材73の他端は案内体51の左端に固定されることから、第1ローラー62の移動に伴って第1スリング材73には第1方向DR1にスライダー48を駆動する第1引っ張り力が作用する。バケット油圧シリンダー66が伸張すると、変位部材64の変位に応じて第2ローラー63は左端に向かって移動する。第2スリング材74の他端は案内体51の右端に固定されることから、第2ローラー63の移動に伴って第2スリング材74には第2方向DR2にスライダー48を駆動する第2引っ張り力が作用する。こうして押し板52は載置面47aの右端から左端に向かって駆動される。押し板52は載置面47aの左端から載置面47a上の積載物を押し落とすことができる。
【0031】
次に建機11の動作を説明する。図6(a)に示されるように、バケット32では押し板52は載置面47aの右端に最大限に近づく位置に位置決めされる。このとき、バケット油圧シリンダー66ではシリンダーロッド65は第1位置に位置決めされる。変位部材64は右限位置に位置する。第1ローラー62は載せ板47の右端の内側に位置する第1軸線FXに同軸に位置づけられる。第1スリング材73には第1方向DR1にスライダー48を駆動する第1引っ張り力が作用する。スライダー48は案内路49内で最大限に右側に寄せられる。第1スリング材73は第1軸線FX回りに巻きかけられることから、載置面47aの右端に向かって最大限に押し板52が位置決めされる際に第1引っ張り力の適用にあたって第1スリング材73や第1ローラー62、連結部材67、変位部材64は載せ板47の右端よりも内側に配置されることができる。押し板52は載せ板47の右端まで最大限に変位するにも拘わらず、押し板52の駆動にあたって載せ板47から押し板駆動機構61のはみ出しは回避されることができる。
【0032】
図5(a)に示されるように、少なくとも1つのローラー56は案内路49の第1傾斜域49bに進入する。押し板52は載せ板47の右端に向かって外向きに姿勢を変化させる。こうしてスライダー48の位置は載せ板47の右端よりも内側に規制されるにも拘わらず押し板52は右端に向かってできるだけ外側まで位置決めされることができる。載置面47aでは積載物の搭載に用いられる範囲に最大限の広がりは確保されることができる。ここでは、ローラー56は2つとも第1傾斜域49bに進入してもよい。
【0033】
起伏油圧シリンダー22は収縮する。ブーム19は下降する。バケット32の載せ板47は最大限に地面に接近する。建機11が前進すると、地面上の積載物Mは載せ板47の掬い域53aで掬い上げられる。こうして載せ板47の載置面47aに積載物Mは載せられる。その後、ブーム19の上昇および車体14の移動に応じてバケット32は例えばダンプカーの荷台に対して位置づけられる。
【0034】
図6(b)に示されるように、載置面47aの右端から左端に向かって押し板52は駆動される。案内路49の線形域49aに沿ってスライダー48が変位すると、押し板52は載置面47aに並行に変位する。こうして押し板52は右端から左端に向かって載置面47a上の積載物Mを寄せることができる。押し板52の駆動にあたって、バケット油圧シリンダー66ではシリンダーロッド65は第1位置から第2位置に変位する。シリンダーロッド65が第2位置に位置決めされると、変位部材64は左限位置に位置する。第2ローラー63は載せ板47の左端の内側に位置する第2軸線SXに同軸に位置づけられる。第2スリング材74には第2方向DR2にスライダー48を駆動する第2引っ張り力が作用する。スライダー48は案内路49内で最大限に左側に寄せられる。第2スリング材74は第2軸線SX回りに巻きかけられることから、載置面47aの左端に向かって最大限に押し板52が位置決めされる際に第2引っ張り力の適用にあたって第2スリング材74や第2ローラー63、連結部材67、変位部材64は載せ板47の左端よりも内側に配置されることができる。押し板52は載せ板47の左端まで最大限に変位するにも拘わらず、押し板52の駆動にあたって載せ板47から押し板駆動機構61のはみ出しは回避されることができる。バケット32の大型化は回避されることができる。こうしたバケット32はトンネルや坑内で効率的な作業の実現に貢献することができる。
【0035】
図5(b)に示されるように、少なくとも1つのローラー56は案内路49の第2傾斜域49cに進入する。押し板52は載せ板47の左端から外向きに姿勢を変化させることができる。こうしてスライダー48の位置は載せ板47の左端よりも内側に規制されるにも拘わらず押し板52はできるだけ外側まで位置決めされることができる。押し板52は完全に載置面47aを横切ることができる。ここでは、ローラー56は2つとも第2傾斜域49cに進入してもよい。
【0036】
押し板52は載置面47aの左端から積載物Mを押し落とす。積載物Mはダンプカーの荷台に落下する。このとき、載せ板47は傾かずに水平姿勢に維持されることから、サイドダンプ仕様に比べて高さの増加は回避されることができる。トンネルや坑内では拡大された作業域でバケット32と天井との干渉は回避されることができる。建機11の作業域は広がることができる。トンネルや坑内でさらに効率的な作業が実現されることができる。
【0037】
積載物Mの落下に応じて、押し板52は載置面47aの右端に復帰する。押し板52の復帰にあたって、バケット油圧シリンダー66ではシリンダーロッド65は第2位置から第1位置に変位する。シリンダーロッド65が第1位置に位置決めされると、変位部材64は右限位置に位置する。第1ローラー62は載せ板47の右端の内側に位置する第1軸線FXに同軸に位置づけられる。第1スリング材73には第1方向DR1にスライダー48を駆動する第1引っ張り力が作用する。スライダー48は案内路49内で最大限に右側に寄せられる。起伏油圧シリンダー22は収縮する。ブーム19は下降する。バケット32の載せ板47は最大限に地面に接近する。こうして積載物Mの掬い上げの準備は整えられることができる。
【0038】
本実施形態では、バケット油圧シリンダー66は、第1軸線FXに同軸に第1ローラー62を位置づける第1位置、および、第2軸線SXに同軸に第2ローラー63を位置づける第2位置の間で案内路49の線形域49aに平行にシリンダーロッド65を動かす。バケット油圧シリンダー66の単純な伸縮動作(シリンダーロッド65の出し入れ)に応じて押し板52は載置面47aの右端から左端まで変位することができる。このとき、バケット油圧シリンダー66は載せ板47の右端および左端の範囲に収められることができる。バケット32の大型化は回避されることができる。押し板52の駆動にあたって油圧シリンダーが用いられることから、バケット32は図7に示される既存のサイドダンプ仕様の建機11aに取り付けられることができる。建機11aにバケット32が取り付けられる場合には、サイドダンプバケット76の油圧シリンダー77に接続される油圧パイプ72がバケット油圧シリンダー66に接続し直されればよい。
【符号の説明】
【0039】
11…建機、19…ブーム、32…建機用バケット(バケット)、47…載せ板、47a…載置面、48…スライダー、49…案内路、49a…線形域、49b…第1傾斜域、49c…第2傾斜域、51…案内体、52…押し板、56…ローラー、62…第1ローラー、63…第2ローラー、64…変位部材、65…シリンダーロッド、66…動力源(バケット油圧シリンダー)、73…第1スリング材、74…第2スリング材、DR1…第1方向、DR2…第2方向、FX…第1軸線、SX…第2軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7