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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒およびカメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220610BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220610BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/04 E
G02B7/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017243936
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019109427
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 尚志
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199327(WO,A1)
【文献】特開2010-271607(JP,A)
【文献】特開2005-274631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向の一方側および他方側に移動可能な少なくとも1つの可動レンズ群を有するレンズ鏡筒であって、
前記可動レンズ群と一体的に移動する可動レンズ枠体と、
前記可動レンズ群および前記可動レンズ枠体を前記光軸方向に沿って駆動させるボイスコイルモータと、
前記光軸方向の一方向および他方向への前記可動レンズ枠体の移動を規制するストッパ機構と、
前記可動レンズ枠体、前記ボイスコイルモータおよび前記ストッパ機構を内部に収納する外周筒部と、
を有し、
前記ストッパ機構は、
前記ボイスコイルモータに通電させている間は、前記可動レンズ枠体に当接する当接位置から退避した退避位置と、前記ボイスコイルモータに非通電の間は、前記可動レンズ枠体に当接する当接位置とに移動するストッパ部材と、
前記ストッパ部材を、前記退避位置と前記当接位置との間で移動させる駆動機構と、
前記可動レンズ枠体が前記光軸方向の一方側の端部に移動した際に、前記ストッパ部材と共に前記可動レンズ枠体に当接する当接部材と、
を備えていて、
前記可動レンズ群に対応する第1可動レンズ群および第2可動レンズ群とを少なくとも備え、前記可動レンズ枠体に対応すると共に別途のボイスコイルモータでそれぞれ駆動される第1可動レンズ枠体および第2可動レンズ枠体を少なくとも備え、
前記第1可動レンズ群は前記第1可動レンズ枠体に支持され、前記第2可動レンズ群は前記第2可動レンズ枠体に支持され、
前記外周筒部には前記ストッパ機構が支持され、
前記第1可動レンズ枠体は前記第2可動レンズ枠体よりも前記光軸方向の一方側に配置され、
前記当接部材は、前記第1可動レンズ枠体よりも前記光軸方向の一方側に配置され、
前記第1可動レンズ枠体と前記第2可動レンズ枠体のいずれか一方のうち、互いに対向する部位には、緩衝材が配置されると共に、
前記ボイスコイルモータの駆動により、前記第1可動レンズ枠体が前記第2可動レンズ枠体と共に前記光軸方向の一方側に押し込まれた際に、前記第1可動レンズ枠体は前記当接部材と前記緩衝材との間に挟持され、前記第2可動レンズ枠体は前記緩衝材と前記ストッパ部材とで挟持される
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項記載のレンズ鏡筒であって、
前記当接部材は、弾性を備える緩衝材である、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1または2記載のレンズ鏡筒であって、
前記第2可動レンズ枠体には、前記ストッパ部材が係止される係止面を備える段状部を備える長尺状の係止用スリーブ部とが設けられている、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項記載のレンズ鏡筒であって、
前記係止用スリーブ部は、前記可動レンズ枠体のスライドをガイドするガイド軸が挿通される長軸状の筒状部よりも前記ボイスコイルモータに近接する側に設けられている、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒であって、
前記駆動機構は、ステッピングモータを備えていて、
前記ストッパ部材は、前記ステッピングモータによって回動させられる回動ストッパである、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒であって、
前記ボイスコイルモータおよび前記駆動機構の駆動を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記レンズ鏡筒が取り付けられるカメラ本体の電源オフ、または前記カメラ本体から前記レンズ鏡筒が取り外されたと判断される場合には、前記ボイスコイルモータの駆動を制御して前記第2可動レンズ枠体を前記光軸方向の一方側に移動させ、
前記光軸方向への一方側への前記第2可動レンズ枠体の移動の後に、前記制御手段は、前記駆動機構の駆動を制御して前記ストッパ部材を前記当接位置に移動させる、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒が取り付けられているカメラ本体と、
を備えることを特徴とするカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒およびカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラにおいては、レンズ等の光学素子をアクチュエータを用いて駆動するものが多い。かかるアクチュエータの中には、たとえば特許文献1に示すように、ボイスコイルモータを用いてレンズ等の光学素子を移動させることで、特に動画撮影等の際にモータ等から生じる騒音が録音されるのを防ぐ構成としているものがある。特許文献1においては、ボイスコイルモータで光学素子をメカニカル端に移動させる際に、衝突音を防ぐ構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-243877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のボイスコイルモータにおいては、リードスクリュー等をモータで回転させる構成と異なり、非通電状態では位置保持ができない。したがって、ボイスコイルモータで駆動させられる光学素子が、非通電状態では、ガイド軸に沿って移動可能な距離だけ移動してしまう、という問題がある。
【0005】
このような光学素子の移動は、レンズ鏡筒内部で衝突による異音を生じさせる場合があり、ユーザに不快な印象を与える虞があるため好ましくない。また、光学素子が長期に亘って繰り返しレンズ鏡筒内部で移動してしまうこと等により、レンズ鏡筒の製品寿命が短くなる虞がある。したがって、ボイスコイルモータへの非通電状態でも、レンズ鏡筒の内部で光学素子の移動を防止できるのが望ましいが、特許文献1に開示の構成では、光学素子の移動を防止することができない。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、ボイスコイルモータへの非通電状態でもレンズ鏡筒内部での光学素子の移動を防止可能なレンズ鏡筒およびカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、光軸方向の一方側および他方側に移動可能な少なくとも1つの可動レンズ群を有するレンズ鏡筒であって、可動レンズ群と一体的に移動する可動レンズ枠体と、可動レンズ群および可動レンズ枠体を光軸方向に沿って駆動させるボイスコイルモータと、光軸方向の一方向および他方向への可動レンズ枠体の移動を規制するストッパ機構と、を有し、ストッパ機構は、ボイスコイルモータに通電させている間は、可動レンズ枠体に当接する当接位置から退避した退避位置と、ボイスコイルモータに非通電の間は、可動レンズ枠体に当接する当接位置とに移動するストッパ部材と、ストッパ部材を、退避位置と当接位置との間で移動させる駆動機構と、を備えることを特徴とするレンズ鏡筒が提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、ストッパ機構は、可動レンズ枠体が光軸方向の一方側の端部に移動した際に、ストッパ部材と共に可動レンズ枠体に当接する当接部材を備えていて、ストッパ部材と当接部材とで可動レンズ枠体は挟持される、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、当接部材は、弾性を備える緩衝材である、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、可動レンズ群に対応する第1可動レンズ群および第2可動レンズ群とを少なくとも備え、可動レンズ枠体に対応する第1可動レンズ枠体および第2可動レンズ枠体を少なくとも備え、第1可動レンズ群は第1可動レンズ枠体に支持され、第2可動レンズ群は第2可動レンズ枠体に支持され、第2可動レンズ枠体にはストッパ機構が取り付けられ、第1可動レンズ枠体は第2可動レンズ枠体よりも光軸方向の一方側に配置され、当接部材は、第1可動レンズ枠体よりも光軸方向の一方側に配置され、第1可動レンズ枠体と第2可動レンズ枠体のいずれか一方のうち、互いに対向する部位には、弾性を有する緩衝材が配置されると共に、ボイスコイルモータの駆動により、第1可動レンズ枠体が第2可動レンズ枠体と共に光軸方向の一方側に押し込まれた際に、第1可動レンズ枠体は当接部材と緩衝部材との間に挟持され、第2可動レンズ枠体は緩衝部材とストッパ部材とで挟持される、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、可動レンズ枠体には、ストッパ部材が係止される係止面を備える段状部を備える長尺状の係止用スリーブ部とが設けられている、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、係止用スリーブ部は、可動レンズ枠体のスライドをガイドするガイド軸が挿通される長軸状の筒状部よりもボイスコイルモータに近接する側に設けられている、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、駆動機構は、ステッピングモータを備えていて、ストッパ部材は、ステッピングモータによって回動させられる回動ストッパである、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、ボイスコイルモータおよび駆動機構の駆動を制御する制御手段を備え、制御手段は、レンズ鏡筒が取り付けられるカメラ本体の電源オフ、またはカメラ本体からレンズ鏡筒が取り外されたと判断される場合には、ボイスコイルモータの駆動を制御して第2可動レンズ枠体を光軸方向の一方側に移動させ、光軸方向への一方側への第2可動レンズ枠体の移動の後に、制御手段は、駆動機構の駆動を制御してストッパ部材を当接位置に移動させる、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明によると、上述の各発明に係るレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒が取り付けられているカメラ本体と、を備えることを特徴とするカメラ装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、ボイスコイルモータへの非通電状態でもレンズ鏡筒内部での光学素子の移動を防止可能なレンズ鏡筒およびカメラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズ鏡筒を示す斜視図である。
図2図1に示すレンズ鏡筒を光軸に沿って切断した断面図である。
図3図1に示すレンズ鏡筒の光軸に沿って切断すると共に、図2とは周方向で90度異なる位置におけるレンズ鏡筒の断面図である。
図4図1に示すレンズ鏡筒の第1可動レンズ枠体と第2可動レンズ枠体の構成を示す分解斜視図である。
図5図1に示すレンズ鏡筒の第1可動レンズ枠体およびその周囲の構成を示す斜視図である。
図6図1に示すレンズ鏡筒の第2可動レンズ枠体およびその周囲の構成を示す斜視図である。
図7図1に示すレンズ鏡筒のガイド軸の後端側付近の構成を拡大して示す部分断面図である。
図8図1に示すレンズ鏡筒のストッパ機構付近の構成を拡大して示す部分的な斜視図であり、第2可動レンズ枠体がスライド可能な状態を示す図である。
図9図1に示すレンズ鏡筒のストッパ機構付近の構成を拡大して示す部分的な斜視図であり、第2可動レンズ枠体がスライド不能な状態を示す図である。
図10図1に示すレンズ鏡筒の制御的な構成、およびレンズ鏡筒とカメラ本体を備えるカメラ装置の制御的な構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るレンズ鏡筒10およびカメラ装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、レンズ鏡筒10の撮像光学系の光軸Lの延伸方向(X方向)において、被写体側を前側(X1側)、カメラ本体100側を後側(X2側)とする。また、光軸に直交する方向(Y方向)において、光軸Lに接近する方向を内側、光軸Lから離間する方向を外側とする。また、光軸Lを中心とする円周方向を周方向とする。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズ鏡筒10を示す斜視図である。図2は、図1に示すレンズ鏡筒10を光軸Lに沿って切断した断面図である。図3は、レンズ鏡筒10の光軸Lに沿って切断すると共に、図2とは周方向で90度異なる位置におけるレンズ鏡筒10の断面図である。
【0020】
図1から図3に示すように、レンズ鏡筒10は、外周筒部20を有している。外周筒部20は、円筒状に設けられ、その円筒状の内部に光学素子等を収納しつつ固定状態または稼働状態で支持する部分である。
【0021】
この外周筒部20の前方側(X1側)には、前端固定枠21が取り付けられている。前端固定枠21の内径側には、外周部分に対し後方側(X2側)に向かい段状をなすフランジ部21aが設けられている。このフランジ部21aには、第1固定レンズ枠22の外周部分が固定され、その第1固定レンズ枠22には第1固定レンズ群41が取り付けられている。なお、第1固定レンズ枠22の外周部分には、周方向に間欠的に複数の羽部が設けられていて、その羽部がフランジ部21aに固定されている。
【0022】
一方、フランジ部21aには、第2固定レンズ枠23の外周部分も固定されていて、この第2固定レンズ枠23に第2固定レンズ群42が取り付けられている。このとき、第2固定レンズ群42は第1固定レンズ群41に近接する状態で取り付けられている。この第2固定レンズ枠23の外周部分にも、上記の第1固定レンズ枠22の外周部分と同様の複数の羽部が周方向に間欠的に設けられている。そして、第1固定レンズ枠22の羽部と第2固定レンズ枠23の羽部とが、周方向で異なる角度に位置した状態で、フランジ部21aに固定されている。
【0023】
なお、それぞれの羽部の枚数は、2枚以上であれば何枚であっても良いが、第1固定レンズ枠22の羽部の枚数と、第2固定レンズ枠23の羽部の枚数とが同一の枚数であることが好ましい。
【0024】
また、図2および図3に示すように、外周筒部20の後方側(X2側)では、第3固定レンズ群43が第3固定レンズ枠24を介して取り付けられている。このような取付状態により、後述する第1可動レンズ群44と第2可動レンズ群45とが、第2固定レンズ群42と第3固定レンズ群43との間の空間に位置する状態となっている。なお、第1可動レンズ群44と第2可動レンズ群45とは可動レンズ群に対応するが、これらのうち一方のみが可動レンズ群に対応するものとしても良い。
【0025】
なお、第1固定レンズ群41と第2固定レンズ群42を1つに纏めたレンズ群としても良く、これら以外のレンズ群を有していても良い。また、第1固定レンズ群41、第2固定レンズ群42および第3固定レンズ群43は、1枚のレンズから構成されていても良く、複数枚のレンズから構成されていても良い。
【0026】
上述した第2固定レンズ群42と第3固定レンズ群43の間には、第1可動レンズ群44と、第2可動レンズ群45とが配置されている。第1可動レンズ群44は、第1可動レンズ枠体25に取り付けられている。また、第2可動レンズ群45は、第2可動レンズ枠体28に取り付けられている。なお、第1可動レンズ枠体25および第2可動レンズ枠体28は、可動レンズ枠体に対応するが、これらのうち一方のみが可動レンズ枠体に対応するものとしても良い。また、第1可動レンズ群44および第2可動レンズ群45は、1枚のレンズから構成されていても良く、複数枚のレンズから構成されていても良い。
【0027】
図4は、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28の構成を示す分解斜視図である。図5は、第1可動レンズ枠体25およびその周囲の構成を示す斜視図である。また、図6は、第2可動レンズ枠体28およびその周囲の構成を示す斜視図である。
【0028】
図2から図4に示すように、第1可動レンズ枠体25は、第2可動レンズ枠体28よりも前方側(X1側)に配置されている。また、図4および図5に示すように、第1可動レンズ枠体25は、レンズ支持枠26と、第1スライド枠27とを有している。レンズ支持枠26は、その内周側で第1可動レンズ群44を取り付ける部材である。また、第1スライド枠27は、リング状部271を有していて、そのリング状部271の内周側にレンズ支持枠26を固定する状態で取り付けている。
【0029】
このリング状部271には、一対の第1ボイスコイル取付部272が設けられている。この第1ボイスコイル取付部272には、ボイスコイルモータ50(図5参照)を構成するコイル部51が取り付けられている。本実施の形態では、第1ボイスコイル取付部272は、リング状部271の周方向において概ね180度間隔で2箇所存在している。
【0030】
また、第1スライド枠27には、第1ガイド腕部273がリング状部271と一体的に設けられている。第1ガイド腕部273は、リング状部271の前方側(X1側)および後方側(X2側)に向かって延伸するように設けられている。この第1ガイド腕部273には、筒状部274と、図示を省略する検出用スリーブ部とが設けられている。筒状部274は、長尺の筒状部分であり、その内筒部には長尺状のガイド軸G1が挿入される。また、筒状部274に対して、リング状部271の周方向における反対側には、板状部275が径方向の外方側に突出していて、その板状部分の凹溝276には、長尺状のガイド軸G2が挿入されている。
【0031】
このように、リング状部271の周方向において概ね180度間隔で第1ボイスコイル取付部272が配置され、さらに一対のガイド軸G1,G2もリング状部271の周方向において概ね180度間隔で配置されている。それにより、第1可動レンズ枠体25は、一対のガイド軸G1,G2に沿って安定的に光軸方向(X方向)にスライド可能となっている。
【0032】
なお、図5に示すように、それぞれの第1ボイスコイル取付部272には、ボイスコイルモータ50を構成するコイル部51が取り付けられている。ボイスコイルモータ50は、コイル部51以外に、外周筒部20に取り付けられるヨーク52および磁石53を備えている。それにより、コイル部51に導通させる電流の向きおよび大きさを制御することで、第1可動レンズ枠体25の移動を制御可能となっている。また、図示を省略する検出用スリーブ部には、第1可動レンズ枠体25のスライド量を検出するための磁気センサ90(図10参照)のマグネットシート(図示省略)を取り付けるための部位が設けられている。なお、磁気センサ90は、上述したマグネットシートと非接触で対向する磁気抵抗素子やホール素子等のようなセンサ素子を備えている。なお、第1可動レンズ枠体25のスライド量を検出するセンサとしては、光学的にスライド量を検出可能なエンコーダ等のように、磁気センサ90以外のセンサを用いても良い。
【0033】
また、図5に示すように、リング状部271には、緩衝材60が取り付けられている。緩衝材60は、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28との間の衝突の際の、衝撃を緩和するものであり、エラストマーやスポンジ等のような弾性を備える材質から形成されている。図5に示す構成では、3つの緩衝材60が120度間隔で取り付けられているが、緩衝材60を取り付ける個数は幾つであっても良い。
【0034】
次に、第2可動レンズ枠体28およびその周辺の構成について説明する。図6に示すように、第2可動レンズ枠体28は、レンズ支持枠29と、第2スライド枠30とを有している。レンズ支持枠29は、その内周側で第2可動レンズ群45を取り付ける部材である。また、第2スライド枠30は、リング状部301を有していて、そのリング状部301の内周側にレンズ支持枠29を固定する状態で取り付けている。なお、第1スライド枠27と第2スライド枠30は、スライド枠に対応するが、これらのうち一方のみがスライド枠に対応するものとしても良い。
【0035】
なお、図4から明らかなように、第2可動レンズ枠体28は、第1可動レンズ枠体25よりも後方側(X2側)に位置している。そして、第2可動レンズ枠体28が前方側(X1側)に向かってスライドした際には、第2可動レンズ枠体28は第1可動レンズ枠体25を前方側(X1)に押し込んで移動させることが可能となっている。
【0036】
リング状部301には、第2ボイスコイル取付部302が設けられている。第2ボイスコイル取付部302には、ボイスコイルモータ55(図6参照)を構成するコイル部56が取り付けられている。なお、第2ボイスコイル取付部302も、第1ボイスコイル取付部272と同様に、リング状部301の周方向において概ね180度間隔で2箇所存在している。
【0037】
また、第2スライド枠30には、第2ガイド腕部303がリング状部301と一体的に設けられている。この第2ガイド腕部303は、リング状部301よりも前方側(X1側)に向かって延伸するように設けられている。第2ガイド腕部303には、筒状部304と、検出用スリーブ部305と、係止用スリーブ部306とが設けられている。
【0038】
筒状部304は、上述した筒状部274と同様に、長尺の筒状部分であり、その内筒部には長尺状のガイド軸G3が挿入される。また、筒状部304に対して、リング状部301の周方向における反対側には、板状部307が径方向の外方側に突出していて、その板状部分の凹溝308には、長尺状のガイド軸G4が挿入されている。
【0039】
したがって、リング状部301においても、その周方向において概ね180度間隔で第2ボイスコイル取付部302が配置され、さらに一対のガイド軸G3,G4もリング状部301の周方向において概ね180度間隔で配置されている。それにより、第2可動レンズ枠体28は、一対のガイド軸G3,G4に沿って安定的に光軸方向(X方向)にスライド可能となっている。
【0040】
なお、図6に示すように、それぞれの第2ボイスコイル取付部302には、ボイスコイルモータ55を構成するコイル部56が取り付けられている。このボイスコイルモータ55は、上述した55と同様に、コイル部56以外に、外周筒部20に取り付けられるヨーク57および磁石58を備えている。このため、コイル部56に導通させる電流の向きおよび大きさを制御することで、第2可動レンズ枠体28の移動を制御可能となっている。
【0041】
図6に示すように、筒状部304の周方向における一方側には、検出用スリーブ部305が隣接して設けられている。この検出用スリーブ部305には、第2可動レンズ枠体28のスライド量を検出するための磁気センサ95(図10参照)のマグネットシート(図示省略)を取り付けるための部位が設けられている。なお、磁気センサ95は、上述した磁気センサ90と同様のセンサであり、その説明は省略する。
【0042】
また、筒状部304の周方向における他方側には、長尺状の係止用スリーブ部306が隣接して設けられている。具体的には、係止用スリーブ部306は、筒状部304よりもボイスコイルモータ55に近接する側に設けられている。この係止用スリーブ部306は、第2可動レンズ枠体28が前方側(X1側)にスライド(移動)した際に、第2可動レンズ枠体28が後方側(X2側)に戻らないようにするための部分である。これを実現するために、係止用スリーブ部306には、光軸方向(X方向)に沿う平面部306aから窪む係止凹部309が設けられていて、その係止凹部309に後述する係止突起75cが嵌まり込む。そして、係止突起75cが係止凹部309の前側(X1側)の端面309a(係止面に対応)に当接することで、第2可動レンズ枠体28が後方側(X2側)に戻るのを防止している。なお、係止凹部309は、段状部に対応する。
【0043】
なお、ガイド軸G3の後端側(X2側)には、リング状の緩衝材65が取り付けられている。緩衝材65は、たとえばゴム等のような弾性を備える材質から形成されている。図7は、ガイド軸G3の後端側(X2側)付近の構成を拡大して示す部分断面図である。図7に示すように、緩衝材65は、外周筒部20と第2スライド枠30の間に介在し、ガイド軸G3に固定されている。この緩衝材65の存在により、第2スライド枠30(筒状部304)が外周筒部20と衝突するのを防止できる。また、緩衝材65は、弾性を備えているので、第2スライド枠30が衝突しても、衝突音の発生を防止可能となる。
【0044】
なお、緩衝材65と同様の緩衝材66(図10参照)は、ガイド軸G1の前端側(X1側)にも設けられていて、この緩衝材66がガイド軸G1に固定されている。それにより、第1スライド枠27(筒状部274)が前端固定枠21と衝突するのを防止できる。また、緩衝材66は、弾性を備えているので、第2スライド枠30が衝突しても、衝突音の発生を防止可能となる。なお、緩衝材66は当接部材に対応するが、緩衝材65も当接部材に対応するものとしても良い。
【0045】
また、図6に示すように、レンズ鏡筒10には、第2可動レンズ枠体28が前方側(X1側)にスライドした際に、第2可動レンズ枠体28を前方側(X1側)で係止させて後方側(X2側)に戻るのを防止するための、ストッパ機構70が設けられている。かかるストッパ機構70について、図8および図9に基づいて説明する。図8は、ストッパ機構70付近の構成を拡大して示す部分的な斜視図であり、第2可動レンズ枠体28がスライド可能な状態を示す図である。図9は、ストッパ機構70付近の構成を拡大して示す部分的な斜視図であり、第2可動レンズ枠体28がスライド不能な状態を示す図である。
【0046】
図8および図9に示すように、ストッパ機構70は、取付フレーム71と、駆動モータ72と、ピニオンギヤ73と、中間ギヤ74と、回動ストッパ75とを備えている。これらのうち、取付フレーム71は、光軸方向(X方向)を長手とする固定片部71aを備えていて、この固定片部71aが外周筒部20に固定されることで、ストッパ機構70の全体が外周筒部20に支持される。また、取付フレーム71には、固定片部71aに直交するように駆動支持片部71bも設けられている。駆動支持片部71bは、駆動モータ72を固定すると共に、出力ギヤ73、中間ギヤ74および回動ストッパ75が回転自在な状態で支持している。なお、取付フレーム71は、固定片部71aや駆動支持片部71b以外の片部を有していても良く、有していなくても良い。
【0047】
駆動モータ72は、後述する回動ストッパ75を回動させるための駆動力を与える部分である。この駆動モータ72としては、パルス電力の印加に基づいて位置制御可能なステッピングモータが好ましい。しかしながら、DCモータや超音波モータ等、その他のモータを用いても良く、ソレノイド等を用いても良い。なお、駆動モータ72は、駆動機構に対応する。
【0048】
また、出力ギヤ73は、駆動モータ72の出力軸72aに取り付けられていて、中間ギヤ74と噛み合っている。そのため、駆動モータ72の駆動により出力ギヤ73が回転させられると、中間ギヤ74も回転させられる。また、中間ギヤ74は、回動ストッパ75のギヤ部75bと噛み合っている。なお、回動ストッパ75は、ストッパ部材に対応する。この回動ストッパ75は、円柱状の部位の一部にギヤ部75bが間欠的に形成されている間欠ギヤ部75aを備えている。
【0049】
また、回動ストッパ75には係止突起75cが設けられている。係止突起75cは、間欠ギヤ部75aのうちギヤ部75bが形成されていない外周面から径方向の外側に延伸する柱状の部位である。この係止突起75cは、上述した係止凹部309に対して挿抜自在な部分となっている。
【0050】
すなわち、図8に示すように、駆動モータ72の駆動により、係止突起75cは係止凹部309に挿入されない退避位置に位置させることが可能となっている。このとき、第2可動レンズ枠体28(第2スライド枠30)は、光軸方向(X方向)における前側(X1側)および後側(X2)のいずれにも、自在にスライド可能となっている。これに対して、図9に示すように、第2可動レンズ枠体28(第2スライド枠30)が最も前側(X1側)に移動した状態で、駆動モータ72を駆動させることで、係止突起75cは係止凹部309に挿入される当接位置に位置させることが可能となっている。このとき、係止突起75cは係止凹部309の端面309aに当接する。それにより、第2可動レンズ枠体28(第2スライド枠30)は、後側(X2側)に移動するのを防止可能となっている。
【0051】
また、レンズ鏡筒10は、レンズ制御部100を備えている。なお、レンズ制御部100は、制御手段に対応するが、後述する本体制御部120も制御手段に対応するものとしても良い。図10は、図1に示すレンズ鏡筒10の制御的な構成、およびレンズ鏡筒10とカメラ本体110を備えるカメラ装置1の制御的な構成を示す概略図である。図10に示すように、レンズ制御部100は、レンズ鏡筒10の全体的な作動を司る部分である。このレンズ制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ等の外部メモリを備えるマイクロコンピュータから構成することができる。
【0052】
このレンズ制御部100は、カメラ本体110の本体制御部120と電気的信号を送受信可能としている。そして、レンズ制御部100は、本体制御部120からの電気的な信号の受信に基づいて、ボイスコイルモータ50,55の駆動を制御することができる。しかしながら、レンズ制御部100は、本体制御部120からの電気的な信号の受信に基づかずに、ボイスコイルモータ50,55の駆動を制御するようにしても良い。
【0053】
なお、レンズ制御部100は、レンズ鏡筒10に存在しているが、カメラ本体110側に存在する構成を採用しても良い。また、本体制御部120は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ等の外部メモリを備えるマイクロコンピュータから構成することができる。
【0054】
また、図10に示すように、本体制御部120には、電源ボタン121やリリースボタン122と電気的に接続されている。そして、電源ボタン121を押下して電源オフまたは電源オンとした場合には、電源オフまたは電源オンに関する電気的な信号がレンズ制御部100に供給される。また、リリースボタン122を押下してレンズ鏡筒10がカメラ本体110から外された場合には、その旨の電気的な信号がレンズ制御部100に供給される。
【0055】
<作用について>
以上のような構成のレンズ鏡筒10およびカメラ装置1においては、カメラ装置1およびレンズ鏡筒10の使用状態では、ボイスコイルモータ50およびボイスコイルモータ55が駆動され、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)および第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)を所望の位置に移動させて、焦点合わせを行う。このとき、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)は、最も前方側(X1側)よりも後方側(X2側)に位置した状態で、焦点合わせを行う。また、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)も、レンズ制御部100でのボイスコイルモータ50の制御駆動により、所望の位置に移動させられる。
【0056】
そして、レンズ鏡筒10およびカメラ装置1を使用した後に、電源ボタン121またはリリースボタン122を押下すると、本体制御部120は電源オフに対応する信号をレンズ制御部100に送信する。すると、レンズ制御部100は、ボイスコイルモータ55を駆動させて、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)を前方側(X1側)に移動させる。
【0057】
このとき、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)は、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)によって前方側(X1側)に押し込まれる。しかしながら、第1スライド枠27のうち第2スライド枠30と対向する部位には、緩衝材60が取り付けられているので、上述の押し込みの際に、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)と第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)の衝突による異音が発生するのを防止可能となっている。
【0058】
なお、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)は、ガイド軸G1に取り付けられている緩衝材66(図10参照)が、前端固定枠21と衝突する部位まで第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)を押し込むように、ボイスコイルモータ55を駆動させ、磁気センサ95で第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)が最も前方側(X1側)に移動したことを検出したとレンズ制御部100で判断された後に、レンズ制御部100は、ボイスコイルモータ55の駆動を停止させる。すると、ボイスコイルモータ55が非通電状態となり、このボイスコイルモータ55によっては、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)の位置保持が不能な状態となる。
【0059】
ここで、磁気センサ95において、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)が最も前方側(X1側)に移動したことを検出した後に、レンズ制御部100は、回動ストッパ75の係止突起75cが係止凹部309に入り込むように、駆動モータ72の駆動を制御する。そして、係止突起75cが係止凹部309に入り込むと、係止突起75cが端面309aに当接して、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)が後方側(X2側)に移動しようとするのが阻止される。それにより、第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)および第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)は、前方側(X1側)に位置した状態を維持可能となり、レンズ鏡筒10の内部でこれらが移動することによる騒音の発生を防ぐことができる。
【0060】
<効果について>
以上のような構成のレンズ鏡筒10およびカメラ装置1によると、次のような効果を生じさせることができる。すなわち、光軸L方向の一方側および他方側に移動可能な第2可動レンズ群45(可動レンズ群)を有するレンズ鏡筒10であって、第2可動レンズ群45(可動レンズ群)と一体的に移動する第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)と、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ群)および第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)を光軸L方向に沿って駆動させるボイスコイルモータ55と、光軸L方向の一方向および他方向への第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)の移動を規制するストッパ機構70とを有している。そして、ストッパ機構70は、ボイスコイルモータ55に通電させている間は、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)に当接する当接位置から退避した退避位置と、ボイスコイルモータ55に非通電の間は、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)に当接する当接位置とに移動する回動ストッパ75(ストッパ部材)と、回動ストッパ75(ストッパ部材)を、退避位置と当接位置との間で移動させる駆動モータ72(駆動機構)と、を備えている。
【0061】
このため、ボイスコイルモータ55に非通電の状態では、駆動モータ72(駆動機構)の駆動により、回動ストッパ75(ストッパ部材)は、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)に当接しない退避位置から、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)に当接する当接位置へと移動する。そのため、ボイスコイルモータ55が非通電の状態で、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)が移動してしまうのを防止可能となる。そのため、レンズ鏡筒10の内部で、第2可動レンズ枠体28が移動することによる異音が生じるのを防止することが可能となる。それにより、ユーザに不快な印象を与えるのを防ぐことができる。
【0062】
また、第2可動レンズ枠体28が移動するのを防止することで、第2可動レンズ群45がレンズ鏡筒10の内部で衝突するのを防止可能となる。そのため、レンズ鏡筒10の製品寿命が短くなるのを防止可能となる。
【0063】
また、本実施の形態では、ストッパ機構70は、第1可動レンズ枠体25および第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)が光軸L方向の一方側の端部(X1側の端部)に移動した際に、回動ストッパ75(ストッパ部材)と共に第1可動レンズ枠体25(可動レンズ枠体)に当接する緩衝材66(当接部材)を備えている。そして、回動ストッパ75(ストッパ部材)と緩衝材66(当接部材)とで、第1可動レンズ枠体25および第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)は挟持される。
【0064】
このため、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)と第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)とが存在する場合のように、可動レンズ枠体(可動レンズ群)が2つ以上存在していても、回動ストッパ75と緩衝材66との間にこれらを挟持させることができる。したがって、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)と第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)とが移動してしまうのを良好に防止することが可能となり、レンズ鏡筒10の内部で、衝突による異音が生じるのを防止することが可能となる。それにより、ユーザに不快な印象を与えるのを防ぐことができる。また、上述の衝突防止により、レンズ鏡筒10の製品寿命が短くなるのを防止可能となる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、当接部材は、弾性を備える緩衝材66である。このため、第1可動レンズ枠体25の前方の端部側(X1側)に際して、第2可動レンズ枠体28が前端固定枠21等のような筐体の一部に衝突するのを防ぐことができ、衝突による異音が発生するのを防止可能となる。また、第1可動レンズ枠体25を前方の端部側(X1側)に移動させる際に、第1可動レンズ枠体25を緩衝材66の弾性力に抗して第1可動レンズ枠体25を押し込むことが可能となる。そのため、回動ストッパ75(ストッパ部材)と緩衝材66(当接部材)とによる、第1可動レンズ枠体25および第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)の挟持は、これらの移動によるガタつきのない状態とすることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、可動レンズ群に対応する第1可動レンズ群44および第2可動レンズ群45とを少なくとも備え、可動レンズ枠体に対応する第1可動レンズ枠体25および第2可動レンズ枠体28を少なくとも備えている。また、第1可動レンズ群44は第1可動レンズ枠体25に支持され、第2可動レンズ群45は第2可動レンズ枠体28に支持されている。また、外周筒部20にはストッパ機構70が支持されている。また、第1可動レンズ枠体25は第2可動レンズ枠体28よりも光軸L方向の一方側(X1側)に配置され、緩衝材66(当接部材)は、第1可動レンズ枠体25よりも光軸L方向の一方側(X1側)に配置されている。また、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28のいずれか一方のうち、互いに対向する部位には、弾性を有する緩衝材60が配置されている。加えて、ボイスコイルモータ55の駆動により、第1可動レンズ枠体25が第2可動レンズ枠体28と共に光軸L方向の一方側(X1側)に押し込まれた際に、第1可動レンズ枠体25は緩衝材66(当接部材)と緩衝材60との間に挟持されると共に、第2可動レンズ枠体28は緩衝材60と回動ストッパ75(ストッパ部材)とで挟持される。

【0067】
このため、ボイスコイルモータ55を駆動させて、第2可動レンズ枠体28を光軸L方向の前方の端部側(一方側;X1側)に移動させると、第2可動レンズ枠体28が第1可動レンズ枠体25を押し込む。このとき、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28の間には、緩衝材60が配置されているので、両者の間で、衝突による異音が生じるのを防止可能となる。
【0068】
また、ストッパ機構70の駆動モータ72(駆動機構)を作動させて、回動ストッパ75(ストッパ部材)を第2可動レンズ枠体28に当接させることで、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28は、それらの間に緩衝材60が存在する状態で、回動ストッパ75(ストッパ部材)と緩衝材66(当接部材)の間に挟持される。したがって、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)および第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)が、レンズ鏡筒10の内部で移動するのを一層良好に防止可能となり、レンズ鏡筒10の内部で、これらの衝突による異音が生じるのを防止することが可能となる。それにより、ユーザに不快な印象を与えるのを防ぐことができる。また、上述の衝突防止により、レンズ鏡筒10の製品寿命が短くなるのを防止可能となる。
【0069】
さらに、本実施の形態では、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)には、回動ストッパ75(ストッパ部材)が係止される端面309a(係止面)を備える係止凹部309(段状部)を備える長尺状の係止用スリーブ部306とが設けられている。
【0070】
このため、係止凹部309(段状部)は、長尺状の係止用スリーブ部306に設けられるので、係止凹部309(段状部)を設ける際の位置的な選択性を高めることが可能となる。また、長尺状の係止用スリーブ部306が存在せず、リング状部301やレンズ支持枠29に係止凹部(段状部)を形成する場合には、係止凹部309に回動ストッパ75が入り込むことで、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28とが挟持された際に、リング状部301やレンズ支持枠29に負荷がかかり、これらの変形等によって第2可動レンズ群45の光軸ずれを生じ易い状態となる。しかしながら、位置的な選択性の高い長尺状の係止用スリーブ部306に、係止凹部309(段状部)を設けることにより、リング状部301やレンズ支持枠29に負荷がかかって変形してしまうのを防止可能となるので、第2可動レンズ群45の光軸ずれが生じるのを良好に防止可能となる。
【0071】
また、本実施の形態では、係止用スリーブ部306は、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)のスライドをガイドするガイド軸G3が挿通される長軸状の筒状部よりもボイスコイルモータ55に近接する側に設けられている。このため、第2可動レンズ枠体28においては、係止用スリーブ部306が設けられている側の重量を大きくすることができる。そして、重量の大きな係止用スリーブ部306側の係止凹部309(段状部)に回動ストッパ75(ストッパ部材)を当接させて第2可動レンズ枠体28を停止させ、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28を挟持させた際のガタつきが生じ難い状態となる。
【0072】
すなわち、上記とは逆に、係止用スリーブ部306が筒状部304よりもボイスコイルモータ55から離れた側に設けられている場合には、ボイスコイルモータ55から離れていることで、第2可動レンズ枠体28において、係止用スリーブ部306が設けられている側の重量が小さくなる。その場合、係止用スリーブ部306の係止凹部309(段状部)に回動ストッパ75(ストッパ部材)を当接させると、ボイスコイルモータ55等の重量のある部分の慣性により、第2可動レンズ枠体28がガタ付き易くなる。しかしながら、第2可動レンズ枠体28において、係止用スリーブ部306が設けられている側の重量を大きくすることで、第2可動レンズ枠体28を停止させ、上述した第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28を挟持させた際のガタつきが生じ難い状態となる。
【0073】
さらに、本実施の形態では、ストッパ機構70の駆動モータ72(駆動機構)は、ステッピングモータであり、ストッパ部材は、駆動モータ72(ステッピングモータ)によって回動させられる回動ストッパ75である。
【0074】
このため、回動ストッパ75(ストッパ部材)の変位量(回動量)を、駆動モータ72(ステッピングモータ)のステップ数(パルス数)により容易に管理することが可能となる。ここで、駆動モータ72(駆動機構)がたとえばDCモータであり、回動ストッパ75(ストッパ部材)の変位量(回動量)を、エンコーダ等を用いて管理する場合には、レンズ鏡筒10の大型化を招く虞があるが、かかる大型化を防ぐことができる。また、駆動機構としてソレノイドを用いる場合と比較すると、駆動モータ72としてステッピングモータを用いることで、レンズ鏡筒10の小型化を図ることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、ボイスコイルモータ55および駆動モータ72(ステッピングモータ)の駆動を制御するレンズ制御部100(制御手段)を備えている。そして、レンズ制御部100(制御手段)は、レンズ鏡筒10が取り付けられるカメラ本体110の電源オフ、またはカメラ本体110からレンズ鏡筒10が取り外されたと判断される場合には、ボイスコイルモータ55の駆動を制御して第2可動レンズ枠体28を光軸L方向の一方側に移動させて、第1可動レンズ枠体25が緩衝材66(当接部材)と緩衝材60との間に挟持され、第2可動レンズ枠体28が緩衝材60と回動ストッパ75(ストッパ部材)とで挟持される挟持状態とする。また、挟持状態の後に、レンズ制御部100(制御手段)は、駆動モータ72(ステッピングモータ)の駆動を制御して、回動ストッパ75(回動ストッパ)を退避位置から当接位置に回動させることで、回動ストッパ75が係止凹部309(段状部)の端面309a(係止面)に係止される。
【0076】
このため、ボイスコイルモータ55の非通電状態となるのに先立って、レンズ制御部100でのボイスコイルモータ55および駆動モータ72(ステッピングモータ)の制御駆動により、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28との上述した挟持状態を実現可能となる。それにより、第1可動レンズ枠体25(第1可動レンズ群44)および第2可動レンズ枠体28(第2可動レンズ群45)が、レンズ鏡筒10の内部で移動するのを一層良好に防止可能となり、レンズ鏡筒10の内部で、これらの衝突による異音が生じるのを防止することが可能となる。それにより、ユーザに不快な印象を与えるのを防ぐことができる。また、上述の衝突防止により、レンズ鏡筒10の製品寿命が短くなるのを防止可能となる。
【0077】
さらに、本実施の形態のカメラ装置1は、レンズ鏡筒10と、このレンズ鏡筒10が取り付けられているカメラ本体110を備えている。このため、カメラ装置1のレンズ鏡筒10では、ボイスコイルモータ55が非通電の状態で、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)が移動してしまうのを防止可能となる。そのため、レンズ鏡筒10の内部で、第2可動レンズ枠体28が移動することによる異音が生じるのを防止することが可能となる。それにより、ユーザに不快な印象を与えるのを防ぐことができる。
【0078】
また、第2可動レンズ枠体28が移動するのを防止することで、第2可動レンズ群45がレンズ鏡筒10の内部で衝突するのを防止可能となる。そのため、レンズ鏡筒10の製品寿命が短くなるのを防止可能となる。
【0079】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0080】
上述の実施の形態においては、可動レンズ群として、焦点合わせを行う第1可動レンズ群44および第2可動レンズ群45について説明している。しかしながら、可動レンズ群は、焦点合わせを行う第1可動レンズ群44および第2可動レンズ群45に限られるものではない。たとえば、ズームレンズを構成するレンズ群を、可動レンズ群としても良い。
【0081】
また、上述の実施の形態では、可動レンズ群には第1可動レンズ群44と第2可動レンズ群45が対応しているが、いずれか1つのみを有する構成でも良く、第1可動レンズ群44と第2可動レンズ群45以外の可動レンズ群を有する構成としても良い。また、可動レンズ枠体には第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28が対応しているが、いずれか1つのみを有する構成でも良く、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28以外の可動レンズ枠体を有する構成としても良い。
【0082】
また、上述の実施の形態では、ストッパ部材には回動ストッパ75が対応するものとしている。しかしながら、ストッパ部材は、回動ストッパ75以外のものであっても良い。たとえば、エラストマーのような摩擦係数の高い部材をストッパ部材に対応させても良い。この場合、駆動モータ72の駆動によって係止用スリーブ部306のいずれかの部位に押し付けることで、第2可動レンズ枠体28が移動するのを阻止する構成を採用しても良い。また、ストッパ部材は、係止突起75cに相当する部材を直線的に移動させて、係止凹部309に挿抜し、当接位置と退避位置とに移動させる構成としても良い。
【0083】
また、たとえば係止凹部309の幅を回動ストッパ75と同程度に形成する場合、係止凹部309に回動ストッパ75が入り込むと、ボイスコイルモータ55が非通電の状態で、第2可動レンズ枠体28(可動レンズ枠体)が移動してしまうのを防止可能となる。この場合には、回動ストッパ75と共に係止凹部309がストッパ部材に対応するものとしても良い。なお、係止凹部309がストッパ部材の一部に対応する場合、係止凹部309には、回動ストッパ75が入り込むのをガイドするために、回動ストッパ75の移動方向に対して傾斜するテーパ部を設けるようにしても良い。
【0084】
また、上述の実施の形態では、当接部材には緩衝材66が対応するものとしている。しかしながら、当接部材は緩衝材66に限られるものではなく、前端固定枠21や外周筒部20、その他の部材が当接部材に対応するものとしても良い。
【0085】
また、上述の実施の形態では、第1可動レンズ枠体25と第2可動レンズ枠体28の間に、緩衝材60が配置される構成を採用している。しかしながら、緩衝材60を設けずにバネ等の弾性部材を設ける構成を採用しても良い。また、緩衝材60に対応する部材を設けない構成を採用しても良い。
【0086】
また、上述の実施の形態では、段状部には係止凹部309が対応するものとしている。しかしながら、段状部には、係止凹部309以外に、突起状の部材が対応するものとしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1…カメラ装置、10…レンズ鏡筒、20…外周筒部、21…前端固定枠、21a…フランジ部、22…第1固定レンズ枠、23…第2固定レンズ枠、23…第2固定レンズ枠、24…第3固定レンズ枠、25…第1可動レンズ枠体(可動レンズ枠体に対応)、26…レンズ支持枠、27…第1スライド枠(スライド枠に対応)、28…第2可動レンズ枠体(可動レンズ枠体に対応)、29…レンズ支持枠、30…第2スライド枠(スライド枠に対応)、41…第1固定レンズ群、42…第2固定レンズ群、43…第3固定レンズ群、44…第1可動レンズ群(可動レンズ群に対応)、45…第2可動レンズ群(可動レンズ群に対応)、50,55…ボイスコイルモータ、51,…コイル部、52,57…ヨーク、53,58…磁石、60…緩衝材、65,66…緩衝材(当接部材に対応)、70…ストッパ機構、71…取付フレーム、71a…固定片部、71b…駆動支持片部、72…駆動モータ(駆動機構に対応)、72a…出力軸、73…出力ギヤ、74…中間ギヤ、75…回動ストッパ、75a…間欠ギヤ部、75b…ギヤ部、75c…係止突起、90,95……磁気センサ、100…レンズ制御部(制御手段に対応)、110…カメラ本体、120…本体制御部、121…電源ボタン、122…リリースボタン、271…リング状部、272…第1ボイスコイル取付部、273…第1ガイド腕部、274…筒状部、275…板状部、276…凹溝、301…リング状部、302…第2ボイスコイル取付部、303…第2ガイド腕部、304…筒状部、305…検出用スリーブ部、306…係止用スリーブ部、306a…平面部、307…板状部、308…凹溝、309…係止凹部(段状部)、309a…端面(係止面に対応)、G1~G4…ガイド軸、L…光軸

図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10