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特許7085748処理装置、CADモデルの特徴部分検出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】処理装置、CADモデルの特徴部分検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20220610BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20220610BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20220610BHJP
   G06F 113/28 20200101ALN20220610BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/15
G06F30/23
G06F113:28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018071823
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019185186
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】金森 正史
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦
(72)【発明者】
【氏名】青山 剛史
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-265050(JP,A)
【文献】特開平10-011612(JP,A)
【文献】特開平11-003439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータから、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成し、
前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求め、
前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出する
特徴部分検出部
を具備する処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置であって、
前記CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータは、STL(Standard Triangulated Language/Standard Tessellation Language)のデータである
処理装置。
【請求項3】
コンピュータが、CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を再現し、
コンピュータが、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成し、
コンピュータが、前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求め、
コンピュータが、前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出する
CADモデルの特徴部分検出方法。
【請求項4】
CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータから、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成するステップと、
前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求めるステップと、
前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機の機体の数値解析に必要な計算格子を得るための処理装置、CADモデルの特徴部分検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
計算力学分野においては、計算領域を有限の離散点に分割する作業、いわゆる計算格子生成が重要な作業である。離散点が適切な位置に配置されていない場合、計算結果に非物理的な誤差が生じることがある。計算格子とは、すなわち物体周りにくまなく張り巡らされた網目であり、物体の形をきれいに覆う必要があり、きれいに覆うことができないと、不自然な「バリ」が出て計算精度が極端に悪化する。
【0003】
特に、物体形状の稜線や物体同士の交差部のような部分(これを「特徴部分」と呼ぶ)では、その特徴部分に離散点を配置しないと、形状の特徴を表した数値計算は実施できない。
【0004】
従来、特徴部分は人間の目により発見し、その部分を正確に再現できるように格子網を生成する作業が行われてきた。しかし、モデルが複雑になるにつれて人間の作業には時間的な限界を生じ、特徴部分の自動検出が望まれてきた。
【0005】
従来技術として、モデル表面の角度や曲率を図る手法がある。CADモデルは小さな三角形や四角形などの面を無数に並べることで物体の形状を再現しており、隣り合う面同士の角度や曲率を計算し、それらがある閾値よりも大きい場合、その部分を特徴部分として検出する方法である。

【0006】
より具体的には、例えば隣り合う三角形のなす角を、各三角形の単位法線ベクトルから計算する。つまり、
として、θがある閾値θ_threshよりも大きい場合、特徴部分と判断する(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】'Hexahedra Grid Generation Method for Flow Computation' a Paulus R. Lahur of Japan Aerospace Exploration Agency, 22nd Applied Aerodynamics Conference and Exhibit, 16-19 August 2004, Providence, Rhode Island
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の手法は簡便だが、単純な例でも検出されないようなパターンが存在する。例えば、θ_thresh=60degと設定したときに、2平面が30deg程度と緩やかに交差するような特徴部分を検出することはできない。つまり、隣り合った三角形の関係だけでは、特徴部分を適切に検出することはできない。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、物体形状の特徴部分を適切に顕在化することができる処理装置、CADモデルの特徴部分検出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る処理装置は、CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータから、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成し、前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求め、前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出する特徴部分検出部を具備する。
【0011】
本発明では、離散点によって囲まれる各面を各面の法線方向に移動させることで、膨張モデル又は収縮モデルを生成し、それをラプラス方程式で解くことで、物体形状の特徴部分を強調することが可能となるので、特徴部分を適切に顕在化することができる。
【0012】
ここで、前記CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータは、STL(Standard Triangulated Language/Standard Tessellation Language)のデータであってもよい。
【0013】
本発明の一形態に係るCADモデルの特徴部分検出方法は、CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を再現し、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成し、前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求め、前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出する。
【0014】
本発明の一形態に係るプログラムは、CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる面を並べることで前記CADモデルの物体形状を表現したデータから、各面を各面の法線方向に移動させることで、前記CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成するステップと、前記膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで前記膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求めるステップと、前記求められた電位分布に基づき前記物体形状の特徴部分を検出するステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、物体形状の特徴部分を適切に顕在化することができる。これにより、従来手作業で実施することが必要であった特徴部分の取り扱いが自動化され、その結果、CADモデルを用意するだけで格子網を生成し、数値解析を実施するところまでを自動的に進めることできる。このことで、数値解析全体にかかるターンアラウンドは減少し、最適化等の手間のかかる作業を大幅に削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】STLのデータによって表現されたCADモデルとしての航空機の機体を示す斜視図である。
図3図2の符号Aの部分の拡大図である。
図4図2の符号Bの部分の拡大図である。
図5】STLのデータによって表現される三角形を示す図である。
図6】STLのデータの一例を示す図である。
図7図1に示した処理装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図8図2図4に示した三角形のうち一つの三角形に着目し、その三角形を法線ベクトル方向に移動する状態を示す図である。
図9】機体の凸部に着目した膨張モデルを示す図である。
図10】機体の凹部に着目した膨張モデルを示す図である。
図11】特徴部分を検出したCADモデルの外観を示す斜視図である。
図12】膨張させずに電位を求めた結果を示す図である。
図13】膨張させて電位を求めた結果を示す図である。
図14図2図4に示した三角形のうち一つの三角形に着目し、収縮に向かうようにその三角形を法線ベクトル方向に移動する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置を示す図である。
図1に示すように、処理装置10は、データ変換部11と、特徴部分検出部12と、数値解析部13とを有する。この処理装置10は、典型的には、コンピュータシステムに各部を構成するプログラムをインストールすることによって構成される。
【0018】
データ変換部11は、CADデータからSTLのデータに変換する。
ここで、STL(Standard Triangulated Language/Standard Tessellation Language)とは、3次元の任意の表面形状を、無数の三角形で表現するCADデータの形式の一つである。本実施形態に係るSTLのデータは、CADモデルの表面を格子網に離散化し、離散点によって囲まれる三角形を並べることでCADモデルの物体形状を表現したデータである。図2に、STLのデータによって表現されたCADモデルとしての航空機の機体の形状を示し、図3及び図4にその一部拡大部分(図2のAとB)を示す。
これらのデータは、図5に示すように、三角形ごとに、その三角形の単位法線ベクトル及びその三角形の3頂点の座標を記載したデータとなる。データフォーマットの一例を図6に示す。
【0019】
特徴部分検出部12は、各三角形を各三角形の法線方向に移動させることで、CADモデルの物体形状の膨張モデル又は収縮モデルを生成し、膨張モデル又は収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで膨張モデル又は収縮モデルの表面の電位分布を求め、求められた電位分布に基づき物体形状の特徴部分を検出する。
【0020】
数値解析部13は、例えば機体表面の抵抗を算出する。より具体的には、上記の特徴部分検出部12により検出された特徴部分を使って、物体の特徴を保ったまま計算格子を生成し、その計算格子を用いて数値流体力学解析を実施することで、機体表面の圧力分布が得られ、それを機体表面全体で積分することで抵抗を算出する。
【0021】
次に、処理装置10における処理の具体例を図7に示すフローチャートに沿って説明する。
データ変換部11において、CADデータからSTLのデータに変換し、STLのデータを用意する(ステップ71)。なお、本発明に係る処理装置では、STLのデータが予め用意される場合には、データ変換部11は不要である。
【0022】
次に、特徴部分検出部12において、CADモデルを拡大した膨張モデルを作成する(ステップ72)。
具体的には、物体表面を構成する各三角形の頂点x(ベクトル)に対して、新しい頂点の位置をx(ベクトル)+sn(ベクトル)とする。
ここで、n(ベクトル)は頂点に対応する三角形の法線ベクトルであり、sは膨張量を表す。膨張量は、各CADモデルによって切り替える必要があるが、概ね全三角形の辺の長さの最小値に対して5倍程度が望ましい。なお、後述の縮小量もこれと同程度と考えられる。
【0023】
図8図2図4に示した三角形のうち一つの三角形に着目し、その三角形を法線ベクトル方向に移動する状態を示す図である。
ここでは、s>0で、n(ベクトル)が機体の表面から外方向に向かっているとすると、x(ベクトル)+sn(ベクトル)によって、三角形は機体の表面から外方向に移動することになる。
【0024】
ここで、図9に機体の凸部に着目した膨張モデルを示し、図10に機体の凹部に着目した膨張モデルを示す。機体の凸部とは例えば図3に示した翼の端部などであり、機体の凹部とは例えば図4に示した機体の胴体と翼の境目などである。
三角形が機体の表面から外方向に移動すると(図中矢印の方向)、機体の凸部においては、図9に示すように、機体A表面で隙間なく並んでいた三角形Tはこの移動によって三角形T同士が離れるため隙間Gをもった膨張モデルEとなる。機体の凹部においては、図10に示すように、機体A表面で隙間なく並んでいた三角形Tはこの移動によって三角形T同士が近づきあうため交差Iをもった膨張モデルEとなる。
【0025】
以上の膨張モデルEを細かく見ると、凹凸が大きいほど交差I及び隙間Gが大きくなることがわかる。
【0026】
次に、膨張モデルEの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで膨張モデルEの表面の電位分布を求める(ステップ73)。
【0027】
ここで、以下の説明において、記号は以下の意味である。
φ:静電場
x(ベクトル):表面を指す位置ベクトル
n:表面の法線方向
D:解析領域
r:表面上の点iとjの距離
【0028】
静電場と電位の関係は、ラプラス方程式によって支配されることが知られている。
【0029】
表面上に一様に静電場φ(ベクトル)が分布しているものとする。
【0030】

(2)式を境界条件として用い、(1)式はラプラス方程式のグリーン関数を用いて次のように変形できる。
【0031】

(3)式は境界要素法の基本式であり、これを表面三角形を要素として離散化し、qを求める。
【0032】

全ての三角形においてφは一定値であり、また各三角形においてqが一定値をとると仮定すると(これは境界要素を1次要素とすることに相当)、(4)式は次のように変形できる。
【0033】

(5)式を行列形式に置き換えると次式が得られる。
【0034】

ここで、
【0035】


(6)式は未知数ベクトルqに関する連立1次方程式であり、これを解けば各三角形上のqが得られる。
【0036】
なお、以上に示した境界要素法の一例にすぎず、本発明はこれに限定されず、これ以外の境界要素法を用いても勿論かまわない。
【0037】
次に、境界要素法により求めた表面電位q(電位分布)に対して、その絶対値|q|が大きい部分を抽出する(ステップ74)。つまり、これにより電位分布に基づき物体形状の特徴部分を検出する。
【0038】
絶対値|q|を考えるのは、特徴部分が凹の部分で絶対値の大きな負の値を、凸の部分で絶対値の大きな正の値をとるためであり、凹凸の両者を同時に顕在化したいため、q単体ではなく|q|を用いる。
【0039】
ここで、図11は特徴部分を検出したCADモデルの外観を示す斜視図であり、図12に膨張させずに電位を求めた結果を示し、図13に膨張させて電位を求めた結果を示す。
図12の結果と図13の結果を比較すると、膨張させずに電位を求めた結果は特徴部分が殆ど顕在化されていない(図12)のに対して、膨張させて電位を求めた結果は凹凸部を顕在化できている(図13)ことがわかる。
【0040】
本発明は上記の実施形態に限定されず、その発明の技術的思想の範囲内で様々な変形や応用が可能である。その変形や応用による実施も本発明の技術的範囲に属する。
【0041】
例えば、上記の実施形態では、CADモデルを拡大した膨張モデルを作成していたが、CADモデルを縮小した収縮モデルを作成し、収縮モデルの表面に一様な電荷が帯電しているものとみなし、境界要素法による表面上の静電場に対するラプラス方程式を解くことで収縮モデルの表面の電位分布を求め、特徴部分の検出を行ってもよい。
【0042】
図14図2図4に示した三角形のうち一つの三角形に着目し、収縮に向かうようにその三角形を法線ベクトル方向に移動する状態を示す。例えば、s<0で、n(ベクトル)が機体の表面から外方向に向かっているとすると、x(ベクトル)+sn(ベクトル)によって、三角形は機体の表面から内方向に移動することになる。
そして、収縮させて電位を求めることで、膨張の場合と同様に、凹凸部である特徴部分を顕在化できる。
【0043】
さらに、上記の実施形態では、三角形の単位法線ベクトル及びその三角形の3頂点の座標の情報は、すべてSTLのデータをそのまま利用していたが、三角形の単位法線ベクトルについては例えば次の手順で計算することも可能である。
【0044】

ここでは「×」ベクトル同士の外積を表し、r(ベクトル)とs(ベクトル)の外積がr(ベクトル)とs(ベクトル)の両方に垂直な方向になることを利用した計算法である。
従って、本発明は、STLのデータに三角形の単位法線ベクトルが含まれていない場合であっても実施が可能である。
【0045】
さらにまた、上記の本実施形態では、三角形を並べることでCADモデルの物体形状を表現したSTLのデータを用いていたが、本発明は、四角形やそれ以上の多角形を並べることでCADモデルの物体形状を表現したデータであっても実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 処理装置
11 データ変換部
12 特徴部分検出部
13 数値解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14