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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
G01D5/347 110S
G01D5/347 110L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018184423
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020052000
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】内藤 俊司
(72)【発明者】
【氏名】小金平 和雄
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-153080(JP,A)
【文献】特開2006-170788(JP,A)
【文献】実開昭61-079213(JP,U)
【文献】実開平02-065093(JP,U)
【文献】特開平06-074736(JP,A)
【文献】特開2008-282703(JP,A)
【文献】実開昭62-115620(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104535092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26- 5/38
H01H 19/00-21/88
H01C 10/00-10/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と受光素子とを取り付けた回路基板と、前記回路基板に対向して設置される回転体と、前記回転体を収納する収納部を有し且つ前記回路基板を前記収納部の底面上にインサート成形するケースと、を具備し、前記発光素子から出射される光を用いて、前記回転体の回転位置に応じた波形の電気信号を出力する光学式エンコーダであって、
前記回転体には、前記発光素子から発射される光を反射または透過する反射部又は透過部を設け、
一方前記回路基板は、同一基板上に、前記発光素子と、前記発光素子から出射された光を前記回転体の反射部または透過部によって反射または透過した後に受光して電気信号に変換する前記受光素子と、前記受光素子から出力される電気信号を所望の電気信号に変換して出力する信号処理回路と、を実装し、且つ前記回路基板の中央に、貫通する位置決め孔を形成すると共に、当該位置決め孔の周囲を囲む位置に複数の貫通孔を設け、
さらに前記ケースには、前記収納部の底面から前記回路基板に設けた複数の貫通孔を通して前記収納部内に立設して前記回転体を回転自在に軸支する軸部を前記ケースと一体に形成したことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダであって、
前記信号処理回路は、前記受光素子から出力される電気信号の波形を矩形波に変換する回路であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学式エンコーダであって、
前記発光素子と受光素子と信号処理回路を構成する部品は全て、前記回路基板の片面にのみ実装されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の光学式エンコーダであって、
前記発光素子から発射された光は、前記回転体に設けた反射部によって反射された後に受光素子で受光する構成であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項2に記載の光学式エンコーダであって、
前記信号処理回路は、前記受光素子から出力される電気信号の波形を整形するスイッチング機能を有する部品を有することを特徴とする光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて電気的出力信号を変化させる光学式エンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンコーダは、例えば特許文献1の図2に示す回転式電子部品(1)のように、回路基板(30)上に形成したオンオフ用パターン(35,37)上に、摺動子(60)の摺接部(61)を弾接させる構成とし、当該摺動子(60)を取り付けた回転体(50)を回転させることで、摺動子(60)の摺接部(61)をオンオフ用パターン(35,37)上で摺動させ、これによって、各端子板(46)からオンオフ波形信号を取り出す構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-122848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のエンコーダにおいては、可動接点たる摺接部(61)が回路基板(30)上を機械的に摺動する構成のため、経時的に、摺接部(61)が摩耗し、もしくは摩耗粉が回路基板(30)上に堆積してオンオフ波形信号に乱れを生じたり、接触不良やショートを生じたりする虞があり、これらのことからエンコーダの耐久性のさらなる向上が図れないという問題があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、機械的な摺接部分を無くすことで、当該摺接部分に生じる摩耗や摩耗粉などを生じさせず、これらのことから耐久性を大幅に向上することができる光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光素子と受光素子とを取り付けた回路基板と、前記回路基板に対向して設置される回転体と、前記回転体を収納する収納部を有し且つ前記回路基板を前記収納部の底面上にインサート成形するケースと、を具備し、前記発光素子から出射される光を用いて、前記回転体の回転位置に応じた波形の電気信号を出力する光学式エンコーダであって、前記回転体には、前記発光素子から発射される光を反射または透過する反射部又は透過部を設け、一方前記回路基板は、同一基板上に、前記発光素子と、前記発光素子から出射された光を前記回転体の反射部または透過部によって反射または透過した後に受光して電気信号に変換する前記受光素子と、前記受光素子から出力される電気信号を所望の電気信号に変換して出力する信号処理回路と、を実装し、且つ前記回路基板の中央に、貫通する位置決め孔を形成すると共に、当該位置決め孔の周囲を囲む位置に複数の貫通孔を設け、さらに前記ケースには、前記収納部の底面から前記回路基板に設けた複数の貫通孔を通して前記収納部内に立設して前記回転体を回転自在に軸支する軸部を前記ケースと一体に形成したことを特徴としている。
信号処理回路は、例えば、IC回路を用いた波形整形回路がこれに該当する。波形整形回路においては、例えば入力波形の電圧が所定値を超えるとスイッチがオンし、前記所定値を下回るとスイッチがオフするスイッチング回路を設置することが好ましい。スイッチング回路においては、出力信号の電流増幅を行うことが、より正確な出力信号を得るために好ましい。
本発明によれば、回路基板に取り付けた発光素子及び受光素子と、回転体に設けた反射部又は透過部との間に機械的な接触部分が無くて摩耗が生じないので、エンコーダの耐久性を大幅に向上することができる。
また、回路基板上に設けた信号処理回路によって、受光素子から出力される電気信号を所望の電気信号に変換して出力するので、発光素子と受光素子のみでは得られない正確に整形された出力波形信号を得ることが可能になる。
また、同一基板上に、発光素子と受光素子と信号処理回路とを実装したので、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0007】
また本発明は、上記特徴に加え、前記信号処理回路は、前記受光素子から出力される電気信号の波形を矩形波に変換する回路であることを特徴としている。
本発明によれば、回路基板上に設けた信号処理回路によって、受光素子から出力される電気信号の波形を、正確に整形された矩形波の出力波形信号に変換することができる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記発光素子と受光素子と信号処理回路を構成する部品は全て、前記回路基板の片面にのみ実装されていることを特徴としている。
本発明によれば、回路基板の片面のみに全部品を実装するので、両面に実装する場合に比べて実装工程が簡素化され、製造コストが削減される。また装置の薄型化を図ることもできる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記発光素子から発射された光は、前記回転体に設けた反射部によって反射された後に受光素子で受光する構成であることを特徴としている。
反射部は、例えば、前記発光素子から発射された光を反射する回転体の反射軌跡面(反射トラック面)上に、光を反射し易い部分と反射しにくい部分とを設ける、または光の反射方向を異ならせる部分を設けるなどすることによって、受光素子へ入射させる反射光の光量を変化させることによって構成される。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記信号処理回路は、前記受光素子から出力される電気信号の波形を整形するスイッチング機能を有する部品を有することを特徴としている。
本発明によれば、受光素子から出力される電気信号の波形を正確に矩形波(オンオフ波形信号)に整形することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械的な摺接部分を無くすことができ、これによって当該摺接部分に生じる摩耗や摩耗粉などを生じさせず、エンコーダの耐久性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エンコーダ1の斜視図である。
図2】エンコーダ1の分解斜視図である。
図3図1のA-A概略断面図である。
図4】回路基板30を示す斜視図である。
図5】回転体60を下側から見た斜視図である。
図6】回転体60下面の反射部615の白黒面615a,615bと、2つのフォトセンサ33,35の位置関係を示す図である。
図7】回転体60を回転した際の両フォトセンサ33,35の出力波形図である。
図8】回転体60を回転した際の両フォトセンサ33,35の整形された出力波形図である。
図9】エンコーダ1-2の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態に係るエンコーダ1の斜視図、図2はエンコーダ1の分解斜視図、図3図1のA-A概略断面図である。これらの図に示すように、エンコーダ1は、回路基板30を収納したケース10と、回転体60と、カバー80とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは回路基板30から回転体60を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
図4は回路基板30を示す斜視図である。同図に示すように回路基板30は、硬質で略矩形状の絶縁基板31を有し、この絶縁基板31の中央に、貫通する位置決め孔313を形成し、その周囲を囲む位置に複数(この例では4つ)の貫通孔315を設けている。また絶縁基板31の上側の面(以下「上面」という)311の所定位置には、2つのフォトセンサ(受発光素子)33,35と、信号処理回路37とが設置され、また絶縁基板31の1辺近傍の上面には、複数本(この例では6本)の端子板39の一端が並列に当接されている。
【0015】
2つのフォトセンサ33,35は、同一形式の反射型フォトセンサ(フォトリフレクタ)であって、それぞれ発光素子と受光素子とを備えており、従ってそれぞれ発光部331,351と受光部333,353とをその上面に有している。発光部331から発射された光を受光部333が受光することで、出力電圧が発生する。同様に、発光部351から発射された光を受光部353が受光することで、出力電圧が発生する。
【0016】
信号処理回路37は、前記両フォトセンサ33,35からの出力信号を入力し、これらの入力信号(電気信号)を矩形状の電気信号(オンオフ信号)に変換し且つその電流値を増幅して出力する回路(波形整形回路)である。この信号処理回路は、IC回路や、その他の各種半導体回路などによって構成することができる。この例の場合、フォトセンサ33,35からの信号の入力波形の電圧値が所定値を超えるとスイッチがオンし、前記所定値を下回るとスイッチがオフし且つ電流値を増幅するスイッチング回路を設置している。このスイッチング回路は出力信号の電流増幅を行うので、より正確な出力信号を得ることができる。そして、信号処理回路37の出力信号は、回路基板30の1辺に並列に設けた図示しない接続パターンに引き出され、その上に当接する各端子板39に電気的に接続される。
【0017】
ケース10は、図2図3に示すように、合成樹脂を上面が開放された箱形に成形して構成されている。ケース10の上面側には、矩形凹状の収納部11が形成されている。収納部11の底面には、このケース10内にインサート成形した前記回路基板30の上面が露出し、さらに回路基板30の上面中央には、ケース10の一部を構成する円形で柱状の軸部13が立設している。軸部13の中央には円形の穴14が形成されている。言い換えれば、ケース10は、略矩形状の底部15と、底部15の周囲を囲むように立設する側壁部17と、底部15の中央から回路基板30を貫通してその上面側に突出する軸部13とを具備して構成されており、ケース10の一つの側壁部17からは、6本の端子板39の先端側部分をその外方に向けて突出している。各端子板39の回路基板30に当接した部分は、ケース10を構成する樹脂によって固定され、回路基板30の各接続パターンとの接続状態を良好に保持している。また、側壁部17の2つの角部の上面からは小突起状の位置決め部19が突出している。
【0018】
ケース10を製造するには、ケース10の形状のキャビティーを有する金型内に、回路基板30と端子板39とを収納し、その際、各端子板39の一端側の部分を回路基板30の図示しない各接続パターンに当接しておく。そしてこの状態でキャビティー内に溶融した合成樹脂を注入し、合成樹脂が固化した後に金型を取り外せば、回路基板30と端子板39をインサート成形したケース10が完成する。このときケース10の軸部13と底部15は、回路基板30に設けた4つの貫通孔315を通して接続されている。
【0019】
図5は回転体60を下側から見た斜視図である。同図及び図1図3に示すように、回転体60は合成樹脂製であり、円板状の本体部61と、本体部61の上面中央から突出する円形柱状のつまみ部(シャフト)63とを一体に成形して構成されている。本体部61の下面は、反射部形成面62となっている。本体部61の外径寸法は、前記ケース10の収納部11に収納される寸法に形成されている。本体部61下面の反射部形成面62の中央には、円形の凹部からなる軸支部611が形成されている。反射部形成面62の軸支部611の周囲を囲む位置には、円周状の反射部615が形成されている。反射部615は、円周状の反射軌跡面(反射トラック面)となる、複数組の白黒面615a,615bによって形成されている。この例の反射部615の場合、回転体60を構成する合成樹脂の色彩を黒色とし、円周状に等間隔に、白色に着色することで円周状に白黒の面615a,615b(反射面と非反射面)が連続してエンドレスに交互に表れる構成としている。反射部615を構成する白黒の各面615a,615bは何れも扇形状であり、回転体60の回転中心軸L1(図6参照)から放射状に伸びる線上に各面615a,615bの左右両側辺が位置するように形成されている。
【0020】
カバー80は、金属板製であって、略矩形状で前記ケース10の収納部11を覆う寸法形状のカバー本体部81と、カバー本体部81の対向する一対の両側辺に接続されて略直角に下方向に折り曲げられる側面部83,83とを有して構成されている。カバー本体部81の中央には、円筒状の軸受部811が形成され、その中央は貫通孔となっている。また、カバー本体部81の2つの角部近傍には、前記ケース10の位置決め部19を挿入する小孔からなる位置決め部813が形成されている。各側面部83の下辺の中央部分には、下方向に向かって突出する他部材取付部831が形成され、また他部材取付部831の両側には、下方向に向かって突出するケース取付部833が形成されている。
【0021】
次に、このエンコーダ1を組み立てるには、前記ケース10の収納部11内に回転体60の本体部61を収納する。このとき、ケース10の軸部13を、回転体60の軸支部611に挿入し、これによって回転体60を回転自在に支持すると同時に、本体部61の下面と、2つのフォトセンサ33,35の発光部331,351及び受光部333,353との間の離間距離を所定の離間距離とする。つまりケース10の軸部13と回転体60の軸支部611によって、回転体60の回転動作と、発光部331,351及び受光部333,353と反射部615間の離間距離の正確な設定と、を同時に行っている。
【0022】
次に、前記回転体60の本体部61を収納したケース10の上面にカバー80のカバー本体部81を被せてケース10の収納部11を塞ぐ。このとき同時に回転体60のつまみ部63をカバー80の軸受部811に挿入し、回転体60を回転自在に軸支する。そして、カバー80の各ケース取付部833を、ケース10の下面側に折り曲げれば、カバー80がケース10に固定され、図1に示すエンコーダ1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0023】
以上のように構成されたエンコーダ1において、まず何れかの端子板39に電圧を印可して回路基板30上の電気回路を起動しておく。これによって、両フォトセンサ33,35の発光部331,351から回転体60下面の反射部615に光が照射され、照射された部分が白の面615aの場合は当該光の多くは反射されてフォトセンサ33,35の受光部333,353に受光され、照射された部分が黒の面615bの場合は当該光の多くは反射されずフォトセンサ33,35の受光部333,353に受光されない。従って、回転体60を回転すると、受光部333,353での受光状態に応じて、両フォトセンサ33,35からの出力信号が変化する。
【0024】
図6は、回転体60下面の反射部615の白黒面615a,615bと、2つのフォトセンサ33,35との位置関係を示す図である。同図に示すように、2つのフォトセンサ33,35は、回転体60の回転中心軸L1を中心にした同一円周上にあって、且つ2つのフォトセンサ33,35にそれぞれ対向する位置にある白色の面615a(または黒色の面615b)に対して円周方向に両者が少しずれた位置となるように配置されている。
【0025】
そして回転体60のつまみ部63を回転すれば、一対のフォトセンサ33,35に対して、その上部を回転体60の反射部615が移動し、白黒面615a,615bがフォトセンサ33,35上を通過して行き、受光部333,353へ入射する光の量が変化していく。回転体60が回転した際に一方のフォトセンサ33が対向する位置にある白色の面615a(または黒色の面615b)を通過するタイミングと、他方のフォトセンサ35が対向する位置にある白色の面615a(または黒色の面615b)を通過するタイミングとが少しずれる。図7は回転体60を回転した際の両フォトセンサ33,35の出力波形を示す図である。同図に示すように、両波形には、回転体60の回転方向に向けて位相のずれが生じている。またフォトセンサ33,35の出力波形は、同図に示すように、正弦波に近い形状である。
【0026】
次に、前記両フォトセンサ33,35からの出力信号は、信号処理回路37に入力され、図8に示す波形に整形される。即ち、この例の場合、図7に示す波形において、所定の電圧値(振幅)に達した場合にスイッチがオンし、所定の電圧値(振幅)より低下した場合にスイッチがオフする。これによって図7に示す波形は、矩形状の出力信号(オンオフ信号)に変換され出力される。上述のように、この出力信号は電流増幅(インピーダンス変換)を行っているので、より正確な出力信号を得ることができる。そして、図8に示す出力信号は、端子板39に出力される。
【0027】
このようにして得られた出力信号を用いれば、位相がずれた一対のオンオフ波形を解析することで、回転体60の回転方向や回転速度などを測定することができる。
【0028】
上記実施形態に係るエンコーダ1では、回路基板30上に反射型のフォトセンサ(反射型の発光素子と受光素子)33,35を設置した例を示したが、フォトセンサとして透過型のフォトセンサを用いても良い。図9は透過型のフォトセンサ(透過型の発光素子と受光素子)を用いた本発明の他の実施形態に係るエンコーダ1-2の要部斜視図である。同図に示すエンコーダ1-2において、前記図1図8に示す実施形態にかかるエンコーダ1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図8に示す実施形態と同じである。
【0029】
このエンコーダ1-2に用いる回転体60-2は、その下部外周が円筒状に形成され、この円筒状の部分に等間隔に矩形状に貫通する透過部65-2が、前記回転体60に設けた反射部615の代わりに設けられている。一方、回路基板30-2の上面に設置されるフォトセンサ33-2,35-2は透過型のフォトセンサ(フォトインタラプタ)であり、中央の凹部335-2,355-2を介して、対向する両内側面に、それぞれ発光部331-2,351-2と受光部333-2,353-2とを設けている。従って、発光部331-2,351-2から発射された光が、回転体60-2の透過部65-2を透過して受光部333-2,353-2に受光することで、出力電圧が発生する。同様に、発光部331-2,351-2から発射された光が、回転体60-2の透過部65-2以外の部分に当たればこの光は受光部333-2,353-2に受光されず、出力電圧は発生しない。2つのフォトセンサ33-2,35-2が回転体60-2の透過部65-2に対向する位置は少しずれており、これによって、上記図7に示すような出力波形が得られる。その他の動作は、上記エンコーダ1の動作と同様である。なお透過部65-2は貫通孔ではなく、回転体60-2の円筒状の下辺を凹状に切り欠いた形状の凹部などで構成してもよい。
【0030】
ところで、透過型のフォトセンサ33-2,35-2を用いた場合、回転体60-2の構造が、前記反射型のフォトセンサ33,35を用いた回転体60に比べて複雑になり、また高さ寸法も大きくなる傾向にある。このため、反射型のフォトセンサ33,35を用いたエンコーダ1の方が好適である。一方、透過型のフォトセンサ33-2,35-2を用いた場合、光の透過と遮断を確実に行えるので、受光部333-2,353-2からのオンオフ出力信号がより正確な信号となる。一方、反射型のフォトセンサ33,35は、このオンオフ出力信号の欠点(不正確さ)を補うため、前記信号処理回路37を用いる必要性がより高くなる。
【0031】
なお、上記各実施形態では、何れも発光素子と受光素子を一体化したフォトセンサを用いた例を説明したが、発光素子と受光素子は別々の素子として構成し、これらをそれぞれ設置しても良い。
【0032】
以上説明したように、エンコーダ1,1-2は、フォトセンサ(発光素子と受光素子)33,35,33-2,35-2を取り付けた回路基板30,30-2と、回路基板30,30-2に対向して設置される回転体60,60-2とを具備し、フォトセンサ33,35,33-2,35-2の発光素子から出射される光を用いて、回転体60,60-2の回転位置に応じた波形の電気信号を出力する光学式エンコーダであって、回転体60,60-2には、フォトセンサ33,35,33-2,35-2の発光素子から発射される光を反射または透過する反射部615又は透過部65-2を設け、一方回路基板30,30-2は、同一基板上に、発光素子と受光素子を有するフォトセンサ33,35,33-2,35-2と、前記フォトセンサ(受光素子)33,35,33-2,35-2から出力される電気信号を所望の電気信号に変換して出力する信号処理回路37とを実装して構成されている。
【0033】
これによって、回路基板30,30-2に取り付けたフォトセンサ(発光素子と受光素子)33,35,33-2,35-2と、回転体60,60-2に設けた反射部615又は透過部65-2との間に機械的な接触部分が無くて摩耗が生じないので、エンコーダ1,1-2の耐久性を大幅に向上することができる。
【0034】
特にこのエンコーダ1においては、回路基板30の上面中央から突出するケース10の軸部13が、回転体60の下面中央に設けた凹状の軸支部611に回動自在に軸支されるが、両者の接触面積は小さいので、摩耗の少ない構造となっている。同時にこの軸部13の上面は軸支部611の底面に当接することで回転体60を上下方向に支えるので、回路基板30の上面と回転体60の下面の間の隙間寸法を正確に所望の寸法とすることができる。これによって、フォトセンサ(発光素子)33,35の発光部331,351から発射された光を反射部615で反射してフォトセンサ(受光素子)33,35の受光部333,353に受光する機構を、精度よく構成することができ、精度のよい出力信号を得ることができる。
【0035】
また上記エンコーダ1によれば、回路基板30上に設けた信号処理回路17によって、フォトセンサ(受光素子)33,35から出力される電気信号を所望の電気信号に変換して出力するので、フォトセンサ(発光素子と受光素子)33,35のみでは得られない正確に整形された出力波形信号を得ることが可能になる。
【0036】
また、同一基板上に、フォトセンサ(発光素子と受光素子)33,35と信号処理回路37とを実装したので、複数の基板上に上記各部品を実装する場合に比べ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0037】
また、上記信号処理回路37は、フォトセンサ(受光素子)33,35から出力される電気信号の波形を矩形波に変換する回路であり、さらにフォトセンサ(受光素子)33,35から出力される電気信号の波形を整形するスイッチング機能を有する部品を有している。即ち、回路基板30上に設けた信号処理回路37によって、フォトセンサ(受光素子)33,35から出力される電気信号の波形を、正確に整形された矩形波の出力波形信号に変換することができる。
【0038】
また、上記エンコーダ1においては、フォトセンサ(発光素子と受光素子)33,35と信号処理回路37を構成する部品を全て、回路基板の片面にのみ実装しているので、回路基板の両面に実装する場合に比べて実装の工程が簡素化され、製造コストが削減される。また例えば、フォトセンサ33,35を回路基板30の上面側に実装し、信号処理回路37を回路基板30の下面側に実装した場合、回路基板30の厚みが厚くなるが、信号処理回路37をフォトセンサ33,35と同一面側に設置したので、元々回転体60との間に設けなければならないフォトセンサ33,35と回転体60との間の隙間を利用して信号処理回路37を設置できる。従ってエンコーダ1の厚みの薄型化を図ることができる。
【0039】
ところで上記エンコーダ1では、反射部615に着色することで、反射部615の色彩(濃淡を含む)を変化させたが、色彩(濃淡を含む)の変更の代わりに(またはそれと共に)、反射部に凹凸や傾斜面を設けることで、光の反射方向や反射位置を変更し、これによって受光素子に入射する反射光の光量を変化させても良い。言い換えれば、反射部は、例えば、発光素子からの光を反射する回転体の反射軌跡面(反射トラック面)上に、光を反射し易い部分と反射しにくい部分とを設ける、または光の反射方向や反射位置を異ならせる部分を設けるなどすることによって、受光素子へ入射させる反射光の光量を変化させることによって構成される。要は、発光素子の発光部から発射された光が受光素子の受光部に入射する光量を、回転体の回転位置に応じて変化させる構成であれば、どのような構成であっても良い。
【0040】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、発光素子と受光素子は1組のみ又は3組以上設置しても良い。また上記実施形態では回路基板として硬質の回路基板を用いたが、可撓性を有するフレキシブル回路基板を用いても良い。また回路基板上には、発光素子、受光素子、信号処理回路以外の各種電子部品を実装しても良い。これらの実装部品も、発光素子などを載置した面側(回転体の反射部に対向する面側)に実装することが好ましい。また発光素子から発射された光は、1カ所の反射部で反射されるのみでなく、複数箇所で反射された後に受光素子に受光する構成としても良い。
【0041】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 エンコーダ(光学式エンコーダ)
10 ケース
30 回路基板
31 絶縁基板
33 フォトセンサ(発光素子、受光素子)
331 発光部
333 受光部
35 フォトセンサ(発光素子、受光素子)
351 発光部
353 受光部
37 信号処理回路
60 回転体
615 反射部
80 カバー
65-2 透過部
図1
図2
図3
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図9