(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】光学測定装置、光源装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/01 20060101AFI20220610BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G01N21/27 Z
(21)【出願番号】P 2019090730
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】506378887
【氏名又は名称】河北ライティングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 真仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 基裕
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/113751(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/142123(WO,A1)
【文献】特開昭63-182530(JP,A)
【文献】登録実用新案第3137726(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/01
G01N 21/27
G01J 3/10
H05B 35/00
H01J 61/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長において測定対象物の吸光度を測定する光学測定装置であって、
光源装置と、
前記光源装置から前記測定対象物に光を照射し、当該測定対象物からの光に基づいて前記測定対象物の光学測定を行う光学測定部とを備え、
前記光源装置は、第1の光源と、第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源を駆動する光源制御部とを有し、
前記第1の光源は、ハロゲンランプ又は白熱電球であり、かつ、照射範囲の一部が前記光学測定に利用される有効利用範囲となるものであり、
前記第2の光源は、前記第1の光源のフィラメントに短波長帯の光を照射可能な半導体光源であり、
前記光源制御部は、前記第1の光源を発熱発光駆動するとともに、前記光学測定に必要な強度となるように前記第2の光源から前記短波長帯の光を出射するように、かつ、前記第2の光源の時間変動低減手段を有して前記第2の光源を駆動し、
前記光源装置は、前記第1の光源からの光と、前記第2の光源からの光を前記フィラメントに照射することによって当該フィラメントの表面で拡散反射した光との合波光を前記測定対象物へ照射する
ことを特徴とする光
学測定装置。
【請求項2】
前記第1の光源は
、さらに、透光部を有するバルブを有し、
前記フィラメントは、前記バルブ内に収容され、
前記光源装置は、さらに、前記第1の光源の前記フィラメントと前記第2の光源との間に配置され、前記第2の光源からの光を集光し、前記第1の光源の前記バルブの前記透光部を透過して、前記第1の光源の前記フィラメントの全部又は一部分に照射する集光光学系を有し、
前記第1の光源は、発熱発光状態の前記フィラメントからの光と、前記第2の光源から前記集光光学系を透過した光を前記フィラメントに照射することによって当該フィラメントの表面で拡散反射した光との合波光を、前記バルブの前記透光部を透過して前記測定対象物へ照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の光
学測定装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、前記第1の光源の前記フィラメントに第1の電流値の電流を印加する一方で前記第2の光源を非駆動状態とする第1のモードと、前記第1の光源の前記フィラメントに前記第1の電流値よりも小さい第2の電流値の電流を印加するとともに前記第2の光源を駆動状態とすることによって前記第2の光源から出射した光を前記フィラメントに照射する第2のモードと、を切り替える制御を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光
学測定装置。
【請求項4】
前記時間変動低減手段は、前記第2の光源からの光を検出する受光部による検出結果に基づいて、前記第2の光源の発光強度が設定値となるように前記第2の光源への駆動電流を制御する
ことを特徴とする請求項
1から3
のいずれか一項に記載の光
学測定装置。
【請求項5】
前記光源装置は、さらに、前記第1の光源からの光、及び前記第2の光源からの光を検出する受光部を有し、
前記光源制御部は、前記受光部による検出結果に基づいて、前記光学測定部により前記測定対象物の吸光度の測定に用いられる波長における光強度が、光学測定に必要な強度となるように、前記第2の光源への駆動電流を制御する
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の光
学測定装置。
【請求項6】
前記集光光学系は、前記第2の光源から前記集光光学系及び前記バルブの透光部を透過して光照射される、前記第1の光源の前記フィラメントにおける照射領域が、前記光学測定部により測定に利用される、前記フィラメントにおける有効利用範囲よりも大きくなるように構成されている
ことを特徴とする
請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記第2の光源は、ピーク波長又は中心波長が異なる光を出射可能な複数の半導体光源から成ることを特徴とする請求項1から6の
いずれか一項に記載の光
学測定装置。
【請求項8】
光源装置から測定対象物に光を照射し、当該測定対象物からの光に基づいて前記測定対象物の吸光度を複数の波長において測定する光学測定装置用の光源装置であって、
第1の光源と、第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源を駆動する光源制御部とを有し、
前記第1の光源は、ハロゲンランプ又は白熱電球であり、かつ、照射範囲の一部が前記光学測定に利用される有効利用範囲となるものであり、
前記第2の光源は、前記第1の光源のフィラメントに短波長帯の光を照射可能な半導体光源であり、
前記光源制御部は、前記第1の光源を発熱発光駆動するとともに、前記光学測定装置が行う測定に必要な強度となるように前記第2の光源から前記短波長帯の光を出射するように、かつ、前記第2の光源の時間変動低減手段を有して前記第2の光源を駆動し、
前記光源装置は、前記第1の光源からの光と、前記第2の光源からの光を前記フィラメントに照射することによって当該フィラメントの表面で拡散反射した光との合波光を前記測定対象物へ照射する
ことを特徴とする光学測定装置用の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に収容された検体の光学的特性を測定する分析装置等の光学測定装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一般的な光学測定装置の光源としては、例えば、ハロゲンランプ等が使用されている。このハロゲンランプは、通電によりフィラメントが高温発光する。高温発光したフィラメントからの光のスペクトルは、黒体放射の発光原理によりフィラメントの温度によって決定される。ハロゲンランプは、白熱電球と比較してフィラメントの温度を高く設定可能であり、明るく、太陽光に近い発色光であり、連続スペクトルであり、光学測定装置用の光源として適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-2849号公報
【文献】特開2016-40528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ランプの長寿命化のために、例えば、フィラメントへの電流の電流値を小さくし、フィラメントの温度を低く設定したとき、通電状態のフィラメントから出射される光のうち、光学測定等に要する波長帯域の光の強度(光量)が不足する、特に約300nm~500nm等の短い波長帯域の光の強度が不足する場合がある。
【0006】
ところで特許文献2には、ハロゲンランプからの光と、紫外LED光源からの光とを、紫外域の光を反射する反射部を備えたプリズムにより合波し、その合波した光を試料に照射して試料に含まれる成分量を分析する分析装置が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の分析装置では、ハロゲンランプ、紫外LED光源等に関し、煩雑な光軸調整を要する。
例えば、
図26に示すダイクロイックミラーDMを有する光学装置では、ハロゲンランプ11zのフィラメント111zから出射された光が測定光学系レンズLE1及びダイクロイックミラーDMを介して試料91に照射され、且つ、LED光源12zから出射された光がレンズLE2を通り、試料91とレンズLE1の間に配置されたダイクロイックミラーDMにより反射されて試料に照射され、試料91を通った光が測定光学系側レンズLE3を介して計測用分光器220zに入光する。つまり、
図26に示す例では、ダイクロイックミラーDMやLED光源12z、ハロゲンランプ11zやレンズLE1,LE2,LE3等について、煩雑な光軸調整を要する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学測定装置は、少なくとも以下の構成を具備するものである。
複数の波長において測定対象物の吸光度を測定する光学測定装置であって、
光源装置と、
前記光源装置から前記測定対象物に光を照射し、当該測定対象物からの光に基づいて前記測定対象物の光学測定を行う光学測定部とを備え、
前記光源装置は、第1の光源と、第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源を駆動する光源制御部とを有し、
前記第1の光源は、ハロゲンランプ又は白熱電球であり、かつ、照射範囲の一部が前記光学測定に利用される有効利用範囲となるものであり、
前記第2の光源は、前記第1の光源のフィラメントに短波長帯の光を照射可能な半導体光源であり、
前記光源制御部は、前記第1の光源を発熱発光駆動するとともに、前記光学測定に必要な強度となるように前記第2の光源から前記短波長帯の光を出射するように、かつ、前記第2の光源の時間変動低減手段を有して前記第2の光源を駆動し、
前記光源装置は、前記第1の光源からの光と、前記第2の光源からの光を前記フィラメントに照射することによって当該フィラメントの表面で拡散反射した光との合波光を前記測定対象物へ照射する
ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の光源装置は、上記本発明に係る光学測定装置用の光源装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度を要求されない簡単な構造で、第1の光源からの光と、第2の光源からの狭帯域の光との合波光が、あたかも第1の光源からの単一の光のように取り扱える光学測定装置を提供することができる。
また、本発明によれば、精度を要求されない簡単な構造で、第1の光源からの光と、第2の光源からの狭帯域の光との合波光が、あたかも第1の光源からの単一の光のように取り扱える光学測定装置に適した光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る光源装置を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光源装置の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る光源装置を備える光学装置(光学測定装置)の一例を示す図である。
【
図4】光のピーク波長又は中心波長が異なる複数の半導体光源を備えた光源装置の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る光源装置の光源制御部により制御さされるLED用電源とハロゲンランプ用電源の一例を示す図である。
【
図6】フィラメントランプ(第1の光源)から出射される光のスペクトル分布の温度変化と半導体光源(第2の光源)から出射される光のスペクトル分布の一例を示す図である。
【
図7】ハロゲンランプの色温度3100Kのスペクトルと色温度2850Kのスペクトルの一例を示す図である。
【
図8】LED光とランプ光とを重畳させる際の光量ターゲットの一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る光源装置の一具体例を示す図である。
【
図10】フィラメントからの光の一例を説明するための図であり、(a)は高温発光状態のフィラメントの一例を示す写真であり、(b)はLED光が照射された非通電時のフィラメントの一例を示す写真であり、(c)はLED光が照射された通電による高温発光状態のフィラメントの一例を示す写真である。
【
図11】
図10(c)に示したハロゲンランプとLED光源による合波光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図12】
図10(a)に示す第1の比較例のハロゲンランプのみからの光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図13】第1の光源としてのハロゲンランプに、波長340nmLED光を照射したときの合波光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図14】ハロゲンランプと波長340nmLEDと波長460nmLEDとを有する光源装置からの合波光の測定結果の一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る、フィラメントランプのバルブでの表面反射が迷光とならない光源装置を有する光学装置の一例を示す配置図である。
【
図16】
図15に示す光学装置のフィラメントランプのフィラメントにおける、LED光による照射範囲と、光学測定部(検出装置)による光学測定に利用される利用範囲の一例を示す図である。
【
図17】比較例のフィラメントランプのバルブでの表面反射が迷光となる配置例を示す図である。
【
図18】
図15に示したフィラメントの角度とバルブの角度を調整し迷光を低減させた、本発明の実施形態に係る光源装置を有する光学装置の一例を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る光源装置の一例を示す図、詳細には(a)は平型コイルのフィラメントを有するフィラメントランプの一例を示す図、(b)はダブルエンド平型コイルを有するフィラメントランプの一例を示す図、(c)は(a)に示すフィラメントランプを備えた光源装置の一例を示す図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る光源装置の一例を示す図、詳細には(a)は丸型コイルのフィラメントを有するフィラメントランプの一例を示す図、(b)はダブルエンド丸型コイルを有するフィラメントランプの一例を示す図、(c)は(a)に示すフィラメントランプを備えた光源装置の一例を示す図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る光源装置を備えた光学装置の一例を示す上面図である。
【
図22】
図21に示す光源装置を備えた光学装置の一例を示す側面図である。
【
図23】UV波長LEDによる光を白色LEDに照射し、白色LEDで反射した光と、白色LEDからの光の合波光を出射する光源装置の一例を示す図である。
【
図24】
図23に示す光源装置の合成光を説明するための図である。
【
図25】
図23に示す光源装置からの合波光の測定結果を示す図である。
【
図26】ダイクロイックミラーを有する光学装置(従来技術)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る光源装置は、第1の光源と、第1の光源による光の波長帯域よりも狭帯域の光を、第1の光源に照射可能な第2の光源とを有し、第1の光源は、当該第1の光源からの光と、第1の光源の表面で拡散反射した第2の光源からの光との合波光を被照射物へ出射するように構成されている。
また、本発明に係る光学装置は、上記光源装置と、光源装置からの合波光を用いて被照射物の光学測定を行う光学測定部とを有する。
また、この第1の光源は被照射物や光学測定部を通る光軸上に配置されている。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る光源装置は、通電により発熱発光可能なフィラメントを備える第1の光源と、第1の光源のフィラメントに、第1の光源の発熱発光による光よりも狭帯域の波長の光を照射可能な第2の光源とを有する。光源装置の第1の光源は、発熱発光状態の前記フィラメントからの光と、フィラメントの表面で拡散反射した第2の光源からの光との合波光を、フィラメントから出射するように構成されている。
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は図示の内容を含むが、これのみに限定されるものではない。尚、以後の各図の説明で、既に説明した部位と共通する部分は同一符号を付して重複説明を一部省略する。
【0014】
<第1の光源がフィラメントランプ、第2の光源が半導体光源>
図1は本発明の実施形態に係る光源装置10を示す概念図である。
図2は光源装置10の一例を示す図である。
図1、
図2に示すように、本発明の実施形態に係る光源装置10は、第1の光源11、及び第2の光源12等を有する。
第1の光源11は、例えば、通電により発熱発光可能(高温発光可能)なフィラメント111を備えるフィラメントランプである。第1の光源11としては、例えば、ハロゲンランプ、白熱電球等を採用することができる。
【0015】
第1の光源11としてのフィラメントランプは、フィラメント111、中空構造のバルブ112等を有し、バルブ112内にフィラメント111が収容されている。フィラメント111はタングステン等により形成され、バルブ112は、透光性の石英ガラスなどの所定の材料により形成されている。
中空構造のバルブ112内には、クリプトンガスやキセノンガス等の不活性ガスが封入されており、この不活性ガスには微量のハロゲン(ヨウ素、臭素等)が含有されている。
本実施形態では、第1の光源11としてハロゲンランプを採用している。
【0016】
通電による高温発光状態のハロゲンランプから出射される光の波長帯域は、例えば、約300nm~3000nmであり、連続スペクトルであり、フィラメントの温度が高いほどピーク波長が短くなるようにシフトする。具体的には、ハロゲンランプのフィラメントの温度が2500K(ケルビン)でピーク波長が約1160nmであり、フィラメント温度が2700Kでピーク波長が約1070nmであり、フィラメントの温度が3000Kでピーク波長が約970nmである。
【0017】
第2の光源12としては、例えば、LED(Light emitting diode)素子、LD(Laser Diode)素子、有機EL(OEL:Organic electro-luminescence)素子等の半導体光源を採用することができる。
第2の光源12は、第1の光源11のフィラメント111に、第1の光源の発熱発光による光よりも狭帯域の波長の光を、第1の光源11のフィラメント111に照射可能である。
第2の光源12としてLED光源を採用した場合、例えば、ピーク波長又は中心波長が350~730nmの範囲内の値であり、半値幅が約20nm~100nm程度である。また、第2の光源12として有機EL光源から出射される光の波長帯域のスペクトル幅(半値全幅)は、約70nm~100nmである。
【0018】
第2の光源12は、出射した光を第1の光源11のフィラメント111に照射するように構成されている。
図1に示す例では、第2の光源12としての半導体光源が基板に配置されている。
【0019】
図1に示す例では、第1の光源11のフィラメント111と、第2の光源12との間に集光光学系が設けられている。集光光学系は、第2の光源12から出射した光を、第1の光源11のフィラメント111の全部又は一部分に集光するように構成されている。集光光学系は、例えば集光レンズ13や反射部材(ミラー)等である。
【0020】
図1、
図2に示すように、第1の光源11は、発熱発光状態(高温発光状態)のフィラメント111からの光と、そのフィラメント111の表面で反射した第2の光源12からの光との合波光を、少なくともフィラメント111から出射するように構成されている。
【0021】
図2に示す第1の光源11としてのハロゲンランプ等のフィラメントランプは、フィラメント111、バルブ112、リード113(113a,113b)等を有する。
【0022】
フィラメント111は、シングルコイル型やダブルコイル型などである。また、バルブ112内に1つ又は複数のフィラメント111が配置されていてもよい。
図2に示す例では、長手方向に長い中空構造のバルブ112内に、長手方向に沿ってコイル状のフィラメント111が配置されている。
なお、フィラメント111の一方の端部から引き出された電気線111wが、クランク状に形成されたリード113aに電気的に接続され、他方の端部から引き出された電気線111wがリード113bに電気的に接続されている。
フィラメント111に電気的に接続されているリード113は、封止部材(不図示)を介してバルブ112の外部まで延設されている。このリード113にはランプ点灯のための電流が供給される。
【0023】
第2の光源12としての半導体光源から出射した光は、第1の光源11のフィラメント111の全部又は一部分に照射され、フィラメント111の表面で反射され、この反射光と、通電によりフィラメント111から出射された高温発光による光との合波光が、フィラメント111から被照射物(試料や光学測定部としての検出装置等)に向けて出射される。
フィラメント111で反射される反射光には、拡散反射光や鏡面反射光がある。反射光は、フィラメント111の形状や表面状態、第2の光源12からフィラメント111に照射される光の入射角度、照射領域の大きさ等により規定される。
本発明に係る光源装置10では、フィラメント111から被照射物に向けて出射される合波光に寄与する反射光の強度が大きくなるように、フィラメント111の形状や表面状態、第2の光源からのフィラメント111に照射される光の入射角度、照射領域の大きさ等が最適化されていることが好ましい。
【0024】
フィラメント111の長手方向の長さが所定の長さに設定されている。
また、フィラメント111の長手方向に直交し、フィラメント111の略中心を通る線(第1の光源11(フィラメント)と被照射物とを通る光軸LA)と、第2の光源12から出射され、フィラメント111に入射する入射方向とのなす角θが0°以上90°以下の角度範囲、好ましくは、約20°以上70°以下の角度範囲となるように規定されている。
つまり、フィラメント111の合波光の出射側から、第2の光源12からの光がフィラメント111に入射されるように、光源装置10が構成されている。
合波光が照射される被照射物は、光軸上に配置されていてもよいし、合波光のうち鏡面反射光成分の強度が大きくなる位置に被照射物が配置されてもよい。
フィラメント111の長手方向に直交し、フィラメント111の略中心を通る線に沿った方向と、合波光の出射方向とが異なっていてもよい。また、第1の光源11(フィラメント)と被照射物とを通る光軸LAは、フィラメント111の長手方向に直交しなくともよい。
【0025】
また、上述したように第1の光源11は、フィラメント111を内部に収容するバルブ112を有する。このバルブ112は、バルブ112の外側に配置された第2の光源12からの光を該バルブ112の内部へ透過する第1の透光部112Ra(透光部分)と、フィラメント111から出射される合成光をバルブ112の外部へ透過する第2の透光部112Rb(透光部分)とを有する。
なお、バルブ112は、上記第1の透光部112Raと第2の透光部112Rb以外の領域が光遮蔽部又は光反射部であってもよいし、光を透過する透光部であってもよい。
また、バルブ112の上記第1の透光部112Raと第2の透光部112Rbは、バルブ112の別々の領域に設けられていてもよいし、同じ領域に設けられていてもよいし、一部分重なるように設けられていてもよい。
【0026】
また、第1の光源11は、フィラメントランプの長軸を回転軸としてフィラメント111の回転角度を調整可能な回転角調整手段を有していてもよい。すなわち、フィラメントランプのバルブ112内にシングルコイルやダブルコイル等の所望の形状のフィラメント111が1つ又は複数配置されている場合、回転角度を最適に調整することで、半導体光源(第2の光源12)からの光を1つ又は複数のフィラメント111により反射して合波光の強度が大きくなるように調整することができる。
また、フィラメント111への第2の光源12からの光の入射角度を調整可能な入射角調整手段を、第1の光源11又は第2の光源12に設けてもよい。入射角を容易に調整することができる。
また、合波光や第1の光源11又は第2の光源12からの光を受光する受光手段(受光素子や撮像素子等)を設け、受光手段による受光結果に基づいて、合波光の所定の波長帯域の強度が大きくなるように、光源制御部が回転角調整手段や角度調整手段を制御してもよい。
【0027】
また、光源装置10は、フィラメント111による上述した拡散反射光を、被照射物へ向けて反射する反射部材をフィラメント111の周囲に配置してもよい。すなわち、反射部材としては、平板形状、放物面等の任意の形状を採用することができる。
【0028】
図3は本発明の実施形態に係る光源装置10を備える光学装置100(光学測定装置)の一例を示す図である。
光学装置100は、光源装置10、フィルタ211、レンズ212、レンズ213、レンズ214、レンズ215、光学測定部としての検出装置220等を有する。
この光学装置100は、光源装置10から出射された光(合波光)がフィルタ211、レンズ212、レンズ213を介して、容器92に収容された、被照射物としての試料91に照射された後、試料91を透過した光が、導光光学系であるレンズ214、レンズ215を介して、光学測定部としての検出装置220に入射される。
検出装置220では、ピンホール221を通過した光を、各波長に分光するグレーティング222(回折格子)により分光し、グレーティング222により分光された各波長の光を受光装置223(受光素子等)により受光し、受光装置223による受光結果を示す信号に基づいて解析装置としてのコンピュータ(不図示)により、試料に関する所定の光学測定処理が行われる。
なお、光学装置100は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明に係る光源装置10からの合波光を用いる装置であればよい。
【0029】
詳細には、
図3に示す光源装置10は、第1の光源11、第2の光源12、光学集光系としての集光レンズ13や反射部14(ミラー)、受光部15、表示入力部16、光源制御部18などを有する。
【0030】
光源制御部18は、CPUや記憶部等を備えたコンピュータであり、光源装置10の各構成要素を統括的に制御する。また、光源制御部18は、第1の光源11へ電力供給する電源回路や、第2の光源12に電力供給する電源回路を有していてもよい。
【0031】
受光部15は、例えば受光素子や撮像素子などであり、第1の光源11のフィラメント111や第2の光源12からの光を光源調整用に受光し、受光結果を示す信号を光源制御部18に出力する。
【0032】
表示入力部16は、例えば、スイッチ、ボタン、タッチパネル、表示装置などであり、入力部と表示部の機能を有する。なお、表示入力部16は入力部と表示部が別々に設けられてもよい。
【0033】
光源制御部18は、第1の光源11及び第2の光源12等を制御する。この光源制御部18は、第1の光源11のフィラメント111に第1の電流値の電流を印加し(フィラメント高温発光状態)、第2の光源12を非駆動状態とする制御を行う第1のモードと、第1の光源11のフィラメント111に第1の電流値よりも小さい第2の電流値の電流を印加し(フィラメント低温発光状態)、第2の光源12から出射した光をフィラメント111に照射する制御を行う第2のモードとを、上記入力部からの信号に応じて切り替える処理を行う。
すなわち、第1のモードでは、第1の光源11の高温発光状態のフィラメント111から高温発光による光のみが出射され、第2のモードでは、第1の光源11のフィラメント111の高温発光による光と第2の光源12からの光との合波光がフィラメント111から出射され、その第1のモードと第2のモードを簡単に切替え可能な光源装置10を提供することができる。
【0034】
図4は光のピーク波長又は中心波長が異なる複数の半導体光源を備えた光源装置10の一例を示す図である。
図4に示す第2の光源12は、ピーク波長又は中心波長が異なる光を出射可能な複数の半導体光源を備える。詳細には、例えば、半導体光源12Aは、ピーク波長又は中心波長がλa[nm]の波長帯域を含む光を出射し、半導体光源12Bは、ピーク波長又は中心波長がλb[nm]の波長帯域を含む光を出射し、半導体光源12Cは、ピーク波長又は中心波長がλc[nm]の波長帯域を含む光を出射する。
なお、
図4では、3個の半導体光源を例示したが、第2の光源12は、2個以上の半導体光源を備えていてもよい。
【0035】
光源制御部18は、複数の半導体光源のうち、何れか1つ又は2つ以上の半導体光源を駆動して、ピーク波長の異なる光を、第1の光源11のフィラメント111に照射するように制御を行う。
【0036】
図5は本発明の実施形態に係る光源装置の光源制御部18により制御されるLED用電源182(第2の光源用電源)とハロゲンランプ用電源181(第1の光源用電源)の一例を示す図である。
【0037】
例えば、生化学分析の光源装置には高い安定度(時間的な安定度等)が求められる。
第1の光源11としてのハロゲンランプは、点灯時の抵抗値は安定する為、電圧制御、電流制御のどちらでも極めて安定した強さの光を出射することができる。これは、点灯時のフィラメント温度と、設置されたランプの雰囲気温度の差が非常に大きく、装置の温度環境等が多少変化してもフィラメント温度への影響が極めて少なく、電気的特性の変化も少ないためである。
【0038】
第2の光源12としてのLED素子は、基本的に電圧素子であり、LED素子の発光強度は電流値に比例するため、LED素子は電流制御となる。発光効率はLED素子の温度に強く依存するため、安定させるには精密な温度制御か、光出力をセンシングしてフィードバック制御を行うことが好ましい。
つまり、本発明に係る光源装置は、第2の光源12としてのLED素子の発光強度の時間変動を低減する手段(時間変動低減手段)を有することが好ましい。
時間変動低減手段は、LED素子の駆動電流制御を行ってもよく、詳細には、駆動電流制御は、例えばLED素子からの光を受光装置(不図示)で検出し、受光装置による検出値が設定値(一定値又は幅を持つ範囲)となるように、LED素子の駆動電流をフィードバック制御してもよい。
また、時間変動制御手段は、素子温度制御を行ってもよく、詳細には、素子温度制御としては、例えばペルティエ素子等の熱電素子を用いて、第2の光源としてのLED素子の温度が設定値(一定値又は幅を持つ範囲)となるように素子温度を制御する。
また、時間変動制御手段は、駆動電流制御と素子温度制御を組み合わせることにより、上記第2の光源12としてのLED素子の発光強度の時間変動をさらに低減してもよい。
【0039】
なお、光学測定装置では、所定の仕様では反応時間10分、試薬を入れた時の吸光度と10分経過した吸光度の違いを計測する。そのため、その10分間での発光強度の変動は吸光度の測定値の変動となって表れる。要求される吸光度(アブソーバンス)10^(-4)以下の変動は、100%透過率近辺では、2.3×10^(-4)の光強度変動に相当する。
【0040】
図6は通電により発熱発光状態のフィラメントランプ(第1の光源11)から出射される光のスペクトル分布の温度変化と、半導体光源(第2の光源12)から出射される光のスペクトル分布の一例を示す図である。
【0041】
通電により発熱発光状態のハロゲンランプから出射される光の波長帯域は、例えば、約300nm~3000nmであり、
図6は約300nm~約900nmの波長領域を示している。フィラメントの温度が高いほど、ハロゲンランプから出射される光のピーク波長が短くなるようにシフトする。
【0042】
例えば、
図6に示す例では、光学測定部としての検出装置220により測定に必要な波長帯域が、900nm、730nm、600nm、480nm付近であるとする。
長寿命化のために第1の光源11のフィラメント111を低い温度へ設定した場合、例えば3200Kから2600Kへフィラメントの温度を下げた場合、測定に必要な波長帯域の強度が低下し、充分な光学測定ができない虞がある。
本発明の光源装置10は、フィラメント111から出射される合波光の上記各波長域の強度が測定に必要な強度となるように、第2の光源12から、ピーク波長が900nm、730nm、600nm、480nm等の光をフィラメント111に照射することで、通電により発熱発光したフィラメント111から、所望の波長域の強度の合波光が出射される。
【0043】
図7はハロゲンランプの色温度3100Kのスペクトルと色温度2850Kのスペクトルの一例を示す図である。
図8はLED光とランプ光を重畳させる際の光量ターゲットの一例を示す図である。
図8の光量ターゲットは、光学測定に用いられるハロゲンランプとして不足しているスペクトル領域と、ここまで光強度を引き上げる目標値を示している。
【0044】
また、生化学自動分析装置などの光学測定部としての検出装置220は、紫外から赤外の複数の波長の光の強度を測定し、生化学分析等の光学測定を行うため、各波長で所定の光強度を必要とする。例えば、具体例として生化学自動分析装置CA-800(古野電気株式会社製)では、波長340,380,415,450,478,510,546,570,600,660,700,750,800nmの13波長について測定し(例えば、古野電気株式会社ホームページ https://www.furuno.com/jp/products/ClinicalChemistryAnalyzer/CA-800を参照)、また、日立自動分析装置3500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)では、波長340,405,450,480,505,546,570,600,660,700,750,800nmの12波長について測定する(例えばJACLaS 一般社団法人日本臨床検査機器・試薬・システム振興協会ホームページ https://jaclas.or.jp/Product/index?id=92126を参照)。なお、検出装置220は上記具体例に限られるものではない。
【0045】
例えば、ハロゲンランプの色温度3100Kを色温度2850Kに下げた場合、
図7,
図8に示すように、上記各波長での光強度が低下する。
本発明では、例えば、
図8に示すように、第1の光源のハロゲンランプ(色温度2850Kと3100Kを比較)による波長340nmでの不足分の光強度を、第2の光源のLED光で補うことができる。また、他の波長での光強度は、要求値に応じて第2の光源からのLED光で補強してもよい。
【0046】
なお、第1の光源としてのハロゲンランプが色温度3100Kで稼働し続けた場合の寿命は約1500時間であり、色温度を下げて、色温度2850Kで稼働し続けた場合の寿命は約20000時間となる。
すなわち、本発明に係る光源装置は、簡単な構成で、第1の光源の長寿化と、比較的低い色温度で第1の光源を駆動時、光測定に用いる波長での光強度の不足分を、波長第2の光源からの光により補うことができる。
【0047】
なお、上述した実施形態に限らえるものではなく、光源装置10は、測定に必要な波長帯域の光を補うように、第2の光源12の半導体光源から1つ又は複数のピーク波長の光を出射するように構成されていてもよい。
【0048】
図9は本発明の実施形態に係る光源装置の一具体例を示す図である。
本願発明者は、本発明に係る光源装置による効果を確認するために、
図9に示すように実際に光源装置を作製した。
【0049】
図9に示す例では、第2の光源12として、ピーク波長460nmの光を出射可能な複数のLED素子を、基板上に略等間隔に行列状に、且つ、外形が略円形状となるように配置した。
第1の光源11としてのフィラメントランプと第2の光源12としてのLED光源(LED素子)との間に集光レンズ13を配置し、LED光源から出射された光を集光レンズ13にて、高温発光状態の第1の光源11のフィラメントランプのフィラメントに照射する。そして、高温発光状態のフィラメントから出射した光と、LED光源からの光の反射光との合波光を撮像装置(不図示)により撮像した。また、その合波光を分光装置(不図示)により分光して、各波長の強度(相対強度)を測定した。
なお、比較のため、第1の比較例の光源装置である高温発光状態のフィラメントランプ(ハロゲンランプ)のみを準備し(LED光の照射をしていない状態)、ハロゲンランプから出射された光を同様に撮像装置(不図示)により撮像した。また、ハロゲンランプから出射された光を分光装置(不図示)により分光して、各波長の強度(相対強度)を測定した。
また、第2の光源12のLED光源からの光を、非通電状態のハロゲンランプのフィラメントに照射して、反射光を同様に撮像装置(不図示)により撮像した。
【0050】
<フィラメントからの光の放射像>
<第1の比較例>
図10(a)に示すように、通電したフィラメントが高温発光状態となった場合、フィラメントの温度に応じた光がフィラメントから出射される。なお、
図10(a)に示す例では、半導体光源からの光はフィラメントに照射されていない。
【0051】
<第2の比較例>
図10(b)に示すように、非通電時のフィラメントにLED光源から光を照射した場合、その光がフィラメントの表面で反射され、フィラメントから出射される。なお、フィラメントの全部又は一部分にLED光源からの光が照射されるように設定することが好ましい。
【0052】
<本発明に係る光源>
図10(c)は、通電により高温発光状態のフィラメントに、半導体光源(LED光源)から出射した光を照射して反射した光と、フィラメントの高温発光による光との合波光の一例を示す写真である。コイル状のフィラメントから合波光が出射しているのを確認することができた。
【0053】
図11は
図10(c)に示した本発明に係る光源装置としての通電による発熱発光状態のハロゲンランプによる光とLED光源からの光との合波光のスペクトルの一例を示す図である。
図12は
図10(a)に示す第1の比較例のハロゲンランプからの光のスペクトルの一例を示す図である。
【0054】
図12の380nm~780nmの波長領域の実線は、ハロゲンランプからの光のスペクトルを示し、
図12の300nm~380nmの波長領域の破線は、黒体放射モデルにより算出した推定カーブを示している。
【0055】
図11に示すように、本発明に係る光源装置では、通電による発熱発光状態のハロゲンランプによる光に、半導体光源であるLED光源からの、ピーク波長460nmの狭波長帯域の強度(光量)が加算され、大きくなっていることが確認された。
つまり、本発明に係る光源装置によれば、簡単な構成で、光学測定に必要な波長帯域の合波光を得ることができる。
【0056】
本願発明者は、第1の光源としてのハロゲンランプの色温度3100Kの光のスペクトルと、色温度2850Kの光のスペクトルと、ハロゲンランプの色温度2850Kのハロゲンランプのフィラメントに、第2の光源としてのLED光源から波長340nmの光を照射したときの合波光のスペクトルを、実際に測定し、
図13に示す測定結果を得ることができた。
図13に示すように、本発明に係る光源装置は、ハロゲンランプの色温度を比較的低く設定した場合(色温度2850K)であっても、第2の光源としてのLED光源からのLED光(波長340nm)を第1の光源に照射することにより、合波光の波長340nmの光強度が、ハロゲンランプ単体(色温度3100K)と比較して、同程度の光強度とすることができることを確認できた。 なお、第2の光源のLED光源から出射する光の強度を、光源制御部が適宜調整することで、合波光の上記波長の光強度を容易に制御することができる。
【0057】
また、本願発明者は、第1の光源としてのハロゲンランプと、第2の光源として波長340nmの光を出射するLEDと、波長460nmの光を出射するLEDとを有する光源装置からの合波光のスペクトルを、実際に測定し、
図14に示す測定結果を得ることができた。
すなわち、本発明に係る光源装置では、光の波長の異なるLED光源からの光をそれぞれ、第1の光源としてのハロゲンランプのフィラメントに照射した場合、第1の光源のフィラメント表面からの合波光が、
図14に示すように、上記波長それぞれで光強度を容易に増大させることを確認できた。
【0058】
図15は本発明の実施形態に係る、第1の光源11としてのフィラメントランプのバルブ112での表面反射が迷光とならない光源装置10を有する光学装置100の一例を示す配置図(上面図)である。
図15に示す光学装置100は、第2の光源12としての半導体光源から出射された光が、第1の光源11のフィラメント111に照射され、フィラメント111で拡散反射した光と、フィラメント111の発熱発光による光との合波光が、測定光学系2120(レンズ等)を介して、被照射物としての試料91に照射され、試料91を通った光が測定光学系2140(レンズ等)を介して検出装置220の細孔(アパーチャー220a)に入射するように構成されている。
【0059】
図16は、フィラメント111の部分拡大図であり、
図16に示すように、フィラメントランプのフィラメント111における、第2の光源からのLED光による照射範囲AR12(領域)は、光学測定部(検出装置220)による光学測定に利用される有効利用範囲AR220(領域)よりも大きくなるように設定されている。これによりフィラメント111に対するLED光照射の光学的調整は精度を要求されず容易に行うことができる。
また、検出装置220では、フィラメント111の有効利用範囲AR220からの光が試料91を通って光学測定に用いられるが、その有効利用範囲AR220の外側については、光学測定にほとんど寄与しない。よって、照射範囲AR12が広すぎることは光学測定としては無駄になるため、第2の光源12は、フィラメント111表面の有効利用範囲AR220と同じ範囲又はそれよりも僅かに広い範囲(照射範囲AR12)に光を照射するように構成されている。例えば、照射範囲増加による光量低下と第2の光源12の微小なズレや誤差とを考慮して、照射範囲AR12は有効利用範囲AR220に比べて縦横辺が各1.4倍以内に光を照射することが好ましい。具体的には□1mmの有効利用範囲AR220に対して□1.4mm(照射範囲AR12)で照射する。なお、上記具体例では1.4倍としたが装置構成等に応じて適宜設定してもよい。
【0060】
また、
図15に示すように、第2の光源12から出射された光の一部は、第1の光源11としてのフィラメントランプのバルブ112の表面で反射するが、測定光学系2120に入射しないように配置されていることが好ましい。
例えば、
図17に示す比較例のように、第2の光源12から出射された光の一部がバルブ112の表面で反射して、測定光学系2120に入射してしまうと、迷光として検出装置220に入射され、測定精度が低下する場合がある。
すなわち、本発明に係る光学装置では、例えば
図15に示すように、バルブ表面での反射が迷光とならないように構成されているので、高精度に光学測定を行うことができる。
【0061】
また、
図18は本発明の実施形態に係る光源装置を有する光学装置の一例を示す図であり、詳細には、
図15に示した例と比較して、フィラメント111の角度と、バルブ112の表面の角度を調整し迷光を防止している。
詳細には、
図18に示す例では、
図15の装置と比較して、被測定物としての試料91を通る光軸LAに対する、フィラメント111の表面の角度はそのままで、バルブ112の表面の角度が大きくなるように配置されている。
図18に示す第1の光源11は、例えば、バルブ112内のフィラメント111を、中空の略円柱形のバルブ112の長軸に対して斜めに配置したフィラメントランプを用いることで実現することができる。
【0062】
次に、光源装置の第1の光源11としてのフィラメントランプの具体例を説明する。
図19(a)は平型コイルのフィラメントを有するフィラメントランプの一例を示す図であり、
図19(b)はダブルエンド平型コイルを有するフィラメントランプの一例を示す図である。
また、
図19(c)は
図19(a)に示すフィラメントランプを備えた光源装置の一例を示す図である。
第1の光源11としてのフィラメントランプは、
図19(a)~
図19(c)に示すように、フィラメント111が平型コイルであってもよい。この平型コイルのフィラメント111は、包絡面が略矩形状の平坦面111fを有する。第2の光源12からの光が平型コイルのフィラメント111の平坦面111fに反射して測定光学系2120(レンズ等)に入射するように配置されることが好ましい。つまり、第2の光源12からの光がフィラメント111の平坦面111fにより反射して測定光学系2120(レンズ等)に入射する強度が最大となるように配置されることが好ましい。すなわち、具体的には、直接反射と仮定して、フィラメント111の平坦面111fの角度を設定する。
【0063】
図20は(a)は丸型コイルのフィラメント111を有する第1の光源11としてのフィラメントランプの一例を示す図である。
図20(b)はフィラメント111としてダブルエンド丸型コイルを有するフィラメントランプの一例を示す図である。
図20(c)は
図20(a)に示すフィラメントランプを備えた光源装置の一例を示す図である。
第1の光源11としてのフィラメントランプは、
図20(a)~
図20(c)に示すように、フィラメント111が丸型コイルであってもよい。
【0064】
図21は本発明の一実施形態に係る光源装置10を備えた光学装置100の一例を示す上面図である。
図22は
図21に示す光源装置10を備えた光学装置100の側面図である。
【0065】
図21,
図22に示す光源装置10は、上下方向に所定距離だけ離れて配置された第2の光源12(12a,12b)としてのLED光源を有する。第2の光源12a,12bそれぞれから出射された異なる波長の光が、集光光学系の集光レンズ13(13a,13a)を介して、第1の光源11としてのフィラメントランプのフィラメント111に照射される。第1の光源11から、フィラメント111の発熱発光による光と、第2の光源12a,12bからの光の拡散反射の光との合波光が、測定光学系2120(レンズ等)を介して、被照射物(試料)や、光学測定部(検出装置220)に入射される。
また、第2の光源12は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば、複数の半導体光源を上下方向に沿って配置してもよい。
【0066】
<第1の光源が白色光の半導体光源、第2の光源が狭帯域光を出射する半導体光源>
次に、本発明の一実施形態に係る光学装置の光源装置10Cを説明する。
本実施形態では、
図23に示すように、点灯している第1の光源11(11W)としての白色LEDに、第2の光源12としてのUV波長LED等からの狭帯域の光を照射し、第1の光源11Wで反射した光と、点灯している第1の光源11W自体の発光による光との合波光を、測定光学系2120(レンズ等)などを介して、被照射物(不図示)や光学測定部(検出装置220)に出射する。
つまり、点灯している白色LEDの発光面に、UV波長のLED光を照射し、白色にUV散乱光を加えた合波光が、第1の光源11Wから被照射物に出射される。
【0067】
図24は
図23に示す光源装置10Cの合成光を説明するための図である。
光源装置10Cの第1の光源11Wとしての白色LEDは、例えば、
図23に示すように、青色発光する青色LED115を有し、青色LED115の発光面側(光出射面側)に、複数の蛍光体粒子117を含む透光性の封止部材116が設けられている。
封止部材116はポリマー樹脂等の透光性樹脂材から構成されている。
蛍光体粒子117としては、黄色蛍光体、黄色蛍光体と赤色蛍光体、緑色蛍光体と赤色蛍光体などを採用することができる。
蛍光体粒子117は、平均粒径約10μmの略球形である。空気(屈折率約1)と、封止部材116(屈折率1.3~1.5)や蛍光体粒子117は異なる屈折率であり、その界面で一定量の光が屈折率に応じて反射される。入射角によってはその界面で全反射が生じる。
【0068】
第1の光源11Wは、点灯時、青色LED115から出射された青色光が蛍光体粒子117に照射され、蛍光体粒子117が励起され、黄色、赤色、緑色など所定の波長の光を出射し、第1の光源11Wから白色光を出射する。
また、第2の光源12からの光は、直接または集光光学系(集光レンズ13)等を介して、第1の光源11Wに照射され、蛍光体粒子117で拡散反射される。
すなわち、第1の光源11Wは、蛍光体粒子117で拡散反射された第2の光源12からの光と、青色LED115から出射された光と、蛍光体粒子117で励起された光との合波光が出射される。
【0069】
なお、第1の光源11Wは、青色LED115の代わりに、青色よりも短い波長のLED光源を採用してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、封止部材116に複数の蛍光体粒子117が含有されていたが、これに限られるものではなく、例えば、青色LEDの発光面に直接塗布されていてもよい。
【0071】
本願発明者は、実際に、第1の光源11Wとしての白色LEDと、第2の光源12としてのUV波長LEDの波長340nmの光を出射するUV波長LEDとを有する光源装置を作製し、この光源装置から出射される合波光を受光装置で受光して、スペクトル解析を行った。
図25は
図23に示す光源装置からの合波光の測定結果を示す図である。
図25において、横軸に波長を示し、縦軸に分光放射照度を示している。
合波光は、白色LED単体のスペクトルと比較して、波長340nm付近で光の強度が増大したものとなっている。つまり、第2の光源12からの波長340nmの光と白色LED単体の光との合波光を確認することができた。
【0072】
以上、説明したように、本発明の一実施形態に係る光源装置10は、第1の光源11(フィラメントランプや半導体光源等)と、第1の光源11による光の波長帯域よりも狭帯域の光を、第1の光源11に照射可能な第2の光源12(半導体光源)とを有し、第1の光源11は、当該第1の光源11からの光と、第1の光源11の表面で拡散反射した第2の光源12からの光との合波光を被照射物へ出射するように構成されている。
また、光源装置の第1の光源11は被照射物を通る光軸(LA)上に配置されている。
すなわち、煩雑な光軸調整を行う必要がなく、簡単な構造で、第1の光源11からの光と、第2の光源12からの狭帯域の光との合波光を被照射物へ出射可能な光源装置を提供することができる。
つまり、精度を要求されない簡単な構造で、第1の光源からの光と、第2の光源からの狭帯域の光との合波光が、あたかも第1の光源からの単一の光のように取り扱える光源装置を提供することができる。
また、その光源装置を備えた光学装置を提供することができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態に係る光源装置10は、通電により発熱発光可能(高温発光可能)なフィラメント111を備える第1の光源11(ハロゲンランプ、白熱電球等のフィラメントランプ)と、第1の光源11のフィラメント111に、第1の光源の発熱発光による光よりも狭帯域の波長の光を照射可能な第2の光源12(LED素子、LD素子、有機EL素子等の半導体光源)とを有する。第1の光源11は、発熱発光状態(高温発光状態)のフィラメント111からの光と、そのフィラメント111の表面で拡散反射した第2の光源12からの光との合波光を、少なくともフィラメント111から出射するように構成されている。
フィラメントランプのスペクトルは、黒体放射の発光原理によりフィラメント111の温度によって決定される。例えば、フィラメント111へ通電する電流の電流値を通常規定値(または最大規定値)よりも小さくし、第1の光源11の通電による発熱発光状態のフィラメント111からの光に関し、所望の波長域の光の強度が弱い(光量が少ない)場合であっても、本発明に係る光源装置10では、第2の光源12により出射された所望の波長域の光が、発熱発光状態のフィラメントの表面で反射され、その反射光と、フィラメント111の高温発光による光との合波光を、フィラメント111から出射することができるので、簡単な構成により、第1の光源11の通電されたフィラメントの発熱発光による光に、第2の光源12による所望の波長域の光の強度を補った合成波の光を出射可能な光源装置10を提供することができる。
また、本発明に係る光源装置10は、第2の光源12から出射した光を第1の光源11のフィラメント111に照射し、そのフィラメント111で反射した光と、通電により発熱発光状態のフィラメント111からの光との合波光がフィラメント111から出射されるので、例えば、LED光のみを反射するミラーやダイクロイックフィルター等により、LED光とフィラメントからの光を合波する光源装置(比較例)と比較して、光学アライメント等のための複雑な構造を設ける必要がなく、また、光軸合わせ等の調整を行う必要がなく、簡単な構成、合波光をフィラメント111から出射することができる。
つまり、本発明に係る光源装置10では、発光位置が単一なため、すなわち、フィラメント111の位置で発光光と反射光の合波光が出射されるため、例えば複数光源による光軸ずれの問題がない。
【0074】
また、例えば、比較例として、複数の光源を備え、ダイクロイックフィルター等により異なる波長の光を合波して、合波光を出射する装置では、波長帯域ごとの置き換えになるので、異なる波長の光の境界付近の波長領域で強度の落ち込みが生じる虞がある(フィルタ起因)。
一方、本発明に係る光源装置10では、上述したように、第2の光源12からの光を、第1の光源11のフィラメント111に照射して反射させることで、その反射光と第1の光源11からの高温発光による光との合波光が出射されるので、合波光の波長領域の強度は、反射光の波長領域の強度と、高温発光のフィラメントからの光の波長領域の強度との単純な加算となるので、上記比較例のような強度の落ち込みが生じない。
【0075】
また、第1の光源11として、ハロゲンランプや白熱電球などのフィラメントランプを採用した場合、フィラメントランプの寿命を延ばすために、フィラメント温度を下げた場合、特に短い波長帯域の強度が小さくなる。本発明の実施形態に係る光源装置10では、上記第2の光源12を有するので、その強度の小さい波長帯域の強度を補うことができる。
すなわち、簡単な構成で、光学的要請を満たし、且つ長寿命の光源装置10を実現することができる。
【0076】
また、本発明の実施形態に係る光源装置10は、第1の光源11のフィラメント111と、第2の光源12との間に配置され、第2の光源12から出射した光を、フィラメント111の全部又は一部分に集光する集光光学系(集光レンズ13や反射部14(ミラー)等)を有する。
すなわち、簡単な構成で、第2の光源12から出射された光をフィラメント111に確実に照射することができ、所望の合波光を得ることができる。
【0077】
また、本発明の実施形態に係る光源装置10の第2の光源12は、所望の波長域の光を出射可能なLED光源、LD光源、有機EL光源等の半導体光源であるので、第1の光源11としてのフィラメントランプと、第2の光源12としての半導体光源により、簡単な構成の光源装置10を安価に製造することができる。
【0078】
また、本発明の実施形態に係る光源装置において、第1の光源11は、白色光を出射する半導体光源(LED光源、LD光源、有機EL光源等の半導体光源)であり、第2の光源12は、第1の光源11による光の波長帯域よりも狭帯域の光を、第1の光源11に照射可能な半導体光源とすることで、簡単な構成で、所望の波長帯域の合波光を出射可能な光源装置を安価に製造することができる。
【0079】
また、本発明の実施形態に係る光源装置10の第2の光源12は、ピーク波長又は中心波長が異なる光を出射可能な複数の半導体光源を備えてもよい。
すなわち、第2の光源12は、例えば光学測定に必要なピーク波長又は中心波長の光を出射する1つ又は複数の半導体光源からそれぞれ出射された光をフィラメント111に照射することで、第1の光源11のフィラメント111から所望の合波光を出射することができる。
【0080】
本発明の実施形態に係る光学装置100は、光源装置10と、光源装置10からの合波光を用いて被照射物の光学測定を行う光学測定部(検出装置220)とを有する。
すなわち、上記光源装置10から出射される合波光の波長帯域の強度が光学測定部による光学測定に充分な強度となるように設定することで、光学測定部(検出装置220)により高精度に光学測定を行うことができる光学装置100を提供することができる。
また、第1の光源11は、被照射物(測定対象)と光学測定部(検出装置220)を通る光軸(LA)上に配置されていることが好ましい。
【0081】
なお、第2の光源12としての半導体光源から出射された光がフィラメント111に照射されることによる、フィラメント111の温度が上がる寄与はゼロ又は僅かである。
【0082】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、上述の各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。
また、各図の記載内容はそれぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【0083】
なお、第2の光源12としての半導体光源は、高熱により寿命が短くなるので、第2の光源12と第1の光源11との間に、第2の光源からの光は透光し、第1の光源11からの熱を遮断もしくは低減するような熱遮断手段、例えば透光性を有する断熱部材やフィルタ等を設けてもよい。また、この熱遮断手段は、半導体光源からの光をフィラメント111に集光するための集光光学系、例えば、集光レンズや反射部材等に断熱機能をもたせてもよい。
【0084】
また、第2の光源12と第1の光源11との間に導光部材を設け、第2の光源12から出射された光を導光部材により第1の光源11のフィラメント111へ導いてもよい。この導光部材は、例えば、樹脂製等の導光板や、光ファイバなどであってもよい。
【0085】
また、本発明に係る光源装置10は、第2の光源12から出射し、バルブ112により反射した光が、上記フィラメント111から出射した合波光と合波して、被照射物へ照射するように構成されていてもよい。
すなわち、簡単な構成で、合波光の強度を大きくすることができる。
【0086】
また、本発明に係る光源装置10は、第2の光源12から出射された光がフィラメント111へ照射される領域を、縮小又は拡大調整可能な照射領域調整手段を有してもよい。照射領域調整手段は、例えば、焦点距離が調整自在な1つ又は複数の光学レンズ系であってもよい。
また、本発明に係る光源装置は、第1の光源11のフィラメントからの合波光の強度、又は照射領域を検出する光検出部を有し、光源制御部は、光検出部からの検出信号に基づいて、照射領域調整手段により、照射領域を調整してもよい。すなわち、合波光の所定の波長域の強度を最適に調整することができる。
【0087】
また、本発明に係る光源装置10は、第1の光源11と第2の光源12との間に透光性の断熱手段を有してもよい。すなわち、断熱手段により第2の光源12の半導体光源の熱劣化を防止することができる。集光レンズ13や反射部14に断熱手段の機能を設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…光源装置
11…第1の光源(フィラメントランプ、半導体光源)
12…第2の光源(LED光源、LD光源、有機EL光源等の半導体光源)
13…集光レンズ(集光光学系、照射領域調整手段)
14…反射部
15…受光部
16…表示入力部(表示部及び入力部)
18…光源制御部
91…試料(被照射物)
100…光学装置(光学測定装置等)
111…フィラメント
112…バルブ
112Ra…第1の透光部
112Rb…第2の透光部
211…フィルタ
212…レンズ
220…検出装置(光学測定部)