(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】スライス食品の製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20220610BHJP
B26D 7/30 20060101ALI20220610BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20220610BHJP
A22C 17/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B26D3/28 610S
B26D3/28 610M
B26D7/30
G01B11/24 K
A22C17/00
(21)【出願番号】P 2020072653
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博士
(72)【発明者】
【氏名】根来 充
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0260660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0198974(US,A1)
【文献】国際公開第2007/022782(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 7/30
G01B 11/24
A22C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロファイル測定器を用いて食品原木の断面プロファイルを測定する第1のステップと、
前記プロファイル測定器で測定された異なる位置における複数の断面プロファイルに基づいて前記食品原木の外形プロファイルである三次元位置データを生成すると共に、当該三次元位置データに基づいて前記食品原木をスライスする
スライス位置データを算出する第2のステップと、
前記算出されたスライス位置データに従い、スライサーを用いて前記食品原木をスライスする第3のステップと、を有
し、
前記第3のステップにおいて、スライスを行う際の起点となる前記食品原木の端部の位置は、前記食品原木を保持するホルダーと前記食品原木をスライスする切断刃との間の距離と、前記外形プロファイルから得られる食品原木の長さとを用いて算出することを特徴とするスライス食品の製造方法。
【請求項2】
前記プロファイル測定器は、
線状の断面を有する帯状の光を対象物に照射する投光部と、対象物からの反射光を二次元の受光素子で受光する受光部とが内蔵された3台の撮像ヘッドと、
前記受光素子の受光量分布を解析して対象物の断面プロファイルを作成するコントローラと、
前記食品原木を水平方向に搬送する2台のコンベアと、で構成され、
前記3台の撮像ヘッドは、垂直面内において、前記2台のコンベアで搬送される食品原木を取り囲むように配置され、
かつ当該2台のコンベアの間に、前記撮像ヘッドから照射された光が通過する隙間が設けられている、請求項1に記載のスライス食品の製造方法。
【請求項3】
前記第2のステップにおいて生成された食品原木の外形プロファイルを用いて、1つのパッケージに投入されるスライス食品の合計重量と略一致する切断位置と、当該パッケージに含まれる複数枚のスライス食品の各切断位置とを算出する、請求項1または2に記載のスライス食品の製造方法。
【請求項4】
前記スライス食品の重量は、予め測定された前記食品原木の重量を、当該食品原木の外形プロファイルから算出された食品原木の体積で割って密度を求め、当該密度を前記スライス食品の体積に掛けることによって求める、請求項3に記載のスライス食品の製造方法。
【請求項5】
食品原木をスライスしてスライス食品を製造する装置であって、
前記食品原木の断面プロファイルを測定するプロファイル測定器と、
当該プロファイル測定器で測定された異なる位置における複数の断面プロファイルに基づいて前記食品原木の外形プロファイルである三次元位置データを生成すると共に、当該三次元位置データに基づいて前記食品原木をスライスする
スライス位置データを算出する演算装置と、
前記演算装置で算出された
スライス位置データに従って前記食品原木をスライスするスライサーと、を備え
、
前記スライサーによってスライスを行う際の起点となる前記食品原木の端部の位置は、前記食品原木を保持するホルダーと前記食品原木をスライスする切断刃との間の距離と、前記外形プロファイルから得られる食品原木の長さとを用いて算出することを特徴とするスライス食品製造装置。
【請求項6】
前記プロファイル測定器は、
線状の断面を有する帯状の光を対象物に照射する投光部と、対象物からの反射光を二次元の受光素子で受光する受光部とが内蔵された3台の撮像ヘッドと、
前記受光素子の受光量分布を解析して対象物の断面プロファイルを作成するコントローラと、
前記食品原木を水平方向に搬送する2台のコンベアと、で構成され、
前記3台の撮像ヘッドは、垂直面内において、前記2台のコンベアで搬送される食品原木を取り囲むように配置され、
かつ当該2台のコンベアの間に、前記撮像ヘッドから照射された光が通過する隙間が設けられている、請求項
5に記載のスライス食品製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハム、ベーコン等の食品原木をスライスしてスライス食品を製造する方法、およびその方法を採用したスライス食品製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハムやベーコンの製品の多くは、それらの食品原木をスライスした後、パック詰めした状態で販売される。具体的には、一定の速度で回転する切断刃に対して食品原木を移送・供給することにより、先端から順次所定の厚みにスライスし、それらをパッケージに封入している。
【0003】
上述したスライス食品を製造する際、パッケージ毎の重量を表記された重量に一致させる必要があるが、食品原木の太さや断面形状が不揃いであるため、重量の調整が難しい。
【0004】
このため従来は、スライスされた食品の重量を計測して、現在切断している箇所の重量の変化傾向を検知し、その結果に基づき、以後の切断厚みを増減させることによって、合計重量を表記された重量に近づけていた(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、ベーコンのように直径寸法や断面積が不定形の食品原木のスライスを、厚みのみによって調整することには限界がある。例えば、原木の断面積が小さい部分では厚みが厚くなりすぎ、逆に、原木の断面積が大きい部分では薄くなりすぎ、スライス食品の食感や美観が損なわれる。
【0006】
上述の問題を解決するため、特許文献2に記載の方法では、スライスされた一群のスライスハムの重量を計測し、計測データが所定の値となるようにまず厚みを制御し、厚みが設定範囲を外れるときは、スライスの枚数を制御している。
【0007】
特許文献2に記載の方法を採用すれば、1パッケージ当たりの重量を表記重量に近づけられるばかりでなく、スライス食品の厚みを所定の範囲内に収め、厚みが厚くなりすぎたり薄くなりすぎたりして食感や美観が損なわれるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】:特開平11-123697号公報
【文献】:特開2001-121475号公報
【文献】:特開2012-127887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2を含めて従来の調整方法は、原木がスライスされた後の食品の重量を計測するものであるため、断面積や直径の変動が大きい場合、調整に限界があった。
【0010】
例えば、円錐状の原木の場合、スライス後の食品の重量が基準値より少ないときにはスライスの厚みを増すが、次にスライスする部分の断面積が大きいため、常に重量が大きい方にずれる。
【0011】
更に、従来の調整方法では、スライスの起点を決める方法として、一定速度で移送される原木の先端をセンサで検出するか、もしくは原木の先端をシャッターに押し付け、シャッターを下降させた後、原木を一定速度で移送していた。
【0012】
しかし、不定形の原木では、センサによる先端の検出にバラツキが生じ易く、最初にスライスされる食品の重量が大きく変動し、その影響が後々のスライスまで継続する。シャッターを用いた場合も、原木が撓むことによって同様の問題が生じるため、予期した効果が得られないことが多かった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、不定形の食品原木であっても、1枚毎のスライス食品の重量と厚み、更には1パッケージ毎の製品の重量を、簡単に所望の値に調整できる製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライス食品の製造方法は、
プロファイル測定器を用いて食品原木の断面プロファイルを測定する第1のステップと、
前記プロファイル測定器で測定された異なる位置における複数の断面プロファイルに基づいて前記食品原木の外形プロファイルである三次元位置データを生成すると共に、当該三次元位置データに基づいて前記食品原木をスライスするスライス位置データを算出する第2のステップと、
前記算出されたスライス位置データに従い、スライサーを用いて前記食品原木をスライスする第3のステップと、を有し、
前記第3のステップにおいて、スライスを行う際の起点となる前記食品原木の端部の位置は、前記食品原木を保持するホルダーと前記食品原木をスライスする切断刃との間の距離と、前記外形プロファイルから得られる食品原木の長さとを用いて算出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るスライス食品の製造方法において、前記プロファイル測定器は、
線状の断面を有する帯状の光を対象物に照射する投光部と、対象物からの反射光を二次元の受光素子で受光する受光部とが内蔵された3台の撮像ヘッドと、
前記受光素子の受光量分布を解析して対象物の断面プロファイルを作成するコントローラと、
前記食品原木を水平方向に搬送する2台のコンベアと、で構成され、
前記3台の撮像ヘッドは、垂直面内において、前記2台のコンベアで搬送される食品原木を取り囲むように配置され、
かつ当該2台のコンベアの間に、前記撮像ヘッドから照射された光が通過する隙間が設けられていることが好ましい。
【0016】
また、前記第2のステップにおいて生成された食品原木の外形プロファイルを用いて、1つのパッケージに投入されるスライス食品の合計重量と略一致する切断位置と、当該パッケージに含まれる複数枚のスライス食品の各切断位置とを算出することが好ましい。
【0017】
また前記スライス食品の重量は、予め測定された前記食品原木の重量を、当該食品原木の外形プロファイルから算出された食品原木の体積で割って密度を求め、当該密度を前記スライス食品の体積に掛けることによって求めることが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成する本発明に係るスライス食品製造装置は、食品原木をスライスしてスライス食品を製造する装置であって、
前記食品原木の断面プロファイルを測定するプロファイル測定器と、
当該プロファイル測定器で測定された異なる位置における複数の断面プロファイルに基づいて前記食品原木の外形プロファイルである三次元位置データを生成すると共に、当該三次元位置データに基づいて前記食品原木をスライスするスライス位置データを算出する演算装置と、
前記演算装置で算出されたスライス位置データに従って前記食品原木をスライスするスライサーと、を備え、
前記スライサーによってスライスを行う際の起点となる前記食品原木の端部の位置は、前記食品原木を保持するホルダーと前記食品原木をスライスする切断刃との間の距離と、前記外形プロファイルから得られる食品原木の長さとを用いて算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るスライス食品の製造方法によれば、プロファイル測定器で測定した原木の断面プロファイルの集合体のデータを用いて食品原木の外形プロファイルを生成し、その外形プロファイルのデータを用いることにより、消費者の要望に応じて厚みや重量が調整されたスライス食品を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態で用いるプロファイル測定器の概略構成を示す図(a)と、当該図のA-A線で切断した断面図(b)である。
【
図2】同プロファイル測定器の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態で用いる演算装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】食品原木がスライスされる位置と切断刃との位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態で用いるスライサーの全体構成を示す図である。
【
図6】同スライサーの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】スライス食品の厚みを調整する方法の説明図(その1)である。
【
図8】スライス食品の厚みを調整する方法の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス食品の製造方法および装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
本発明に係るスライス食品製造装置は、食品原木をスライスしてスライス食品を製造するスライサーと、食品原木の断面プロファイルを測定するプロファイル測定器と、当該プロファイル測定器で測定された断面プロファイルに基づいて原木の外形プロファイルを生成すると共に、その外形プロファイルのデータに基づいて原木のスライス位置を算出する演算装置とで構成されている。最初に、プロファイル測定器の構成と機能を説明する。
【0024】
<プロファイル測定器の構成と機能>
図1(a)は、本実施の形態で用いるプロファイル測定器1の概略構成を示す正面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A線で切断した断面図、
図2は、プロファイル測定器1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0025】
プロファイル測定器1は、食品原木(以降、単に「原木」という)Wを搬送するコンベア13a、13bを囲うように配置された三角形状のフレーム11、当該フレーム11に取り付けられ、食品原木Wの断面プロファイルを測定する3台の撮像ヘッド12a~12c(以降、総称して「撮像ヘッド12」ともいう)、ならびに3台の撮像ヘッド12a~12cの動作およびコンベア13a、13bの動作を制御するコントローラ14で構成されている。
【0026】
図1(a)に示す3台の撮像ヘッド12a~12cは、垂直面内において、光が原木Wにまんべんなく当たるように、約120度ずつ傾けて配置されている。
【0027】
本実施の形態では、撮像ヘッド12として、株式会社キーエンス製の「超高精細インラインプロファイル測定器」(LJ-X8000シリーズ)を用いた。当該測定器の構成及び機能については、例えば特許文献3に詳細に記載されている。
【0028】
撮像ヘッド12の構成と機能について簡単に説明する。撮像ヘッド12は、対象物からの反射光のピーク位置を検出することにより三角測距方式で変位を検出するもので、図示しないが、対象物に光を照射する投光部と、対象物からの反射光を受光する受光部が内蔵されている。
【0029】
三角測距方式の測定器では、対象物の表面に光が照射され、その反射光が二次元に配列された画素を有する受光素子により受光される。そして受光素子により得られる受光量分布のピーク位置に基づいて、対象物の表面の高さを計測し、これによって対象物の位置を検出する。
【0030】
図1(a)に示すように、撮像ヘッド12の投光部から線状の断面を有する帯状の光(破線で示す)が対象物である原木W上に照射され、その反射光が二次元の受光素子で受光される。受光素子により得られる受光量分布は、必要に応じて増幅された後、コントローラ14に送付され、デジタル波形データに変換される。そして当該波形データのピーク位置に基づいて、対象物の断面プロファイルの位置データが作成される。
【0031】
図1(b)に示すように、ベーコンの原木Wは、等速で駆動される2台のコンベア13a、13bによって矢印で示す方向に搬送される。コンベア13aと13b(以降、総称して「コンベア13」ともいう)の間に若干の隙間Gが形成されており、撮像ヘッド12bおよび12cの投光部から放射された光は、この隙間Gを通過する原木Wに照射された後、受光素子で受光される。
【0032】
コンベア13として、隙間Gのない1台のコンベアを用いた場合、撮像ヘッド12bおよび12cから照射された光の一部はコンベアで遮断されるため、ベーコンWの下面の断面プロファイルを取得することができない。これに対し、
図1(b)に示すように、原木Wを搬送するコンベアを、2つに分割した場合、撮像ヘッド12bおよび12cの投光部から照射された光が原木Wに当たるため、原木Wの下面の断面プロファイルを生成することができる。
【0033】
更に、3台の撮像ヘッド12a~12cのそれぞれで測定したデータだけでは、原木Wの一部の断面プロファイルしか得られないが、3台の撮像ヘッドで測定した断面プロファイルを合成すれば、断面全体のプロファイルが得られる。
【0034】
プロファイル測定器1のコントローラ14は、3台の撮像ヘッド12a~12cで得られた信号に基づいて断面プロファイルの部分データを生成し、更に、この3つの部分断面プロファイルを合成して断面全体のプロファイルを生成する。合成方法については後述する。
【0035】
原木Wが隙間Gを通過している間、一定の時間間隔で断面プロファイルを作成すれば、例えば、原木Wの位置を0.1mmづつずらした断面プロファイルの集合体が得られる。得られた断面プロファイルの集合体のデータは演算装置2に送られ、そこで原木Wの外形プロファイルである三次元位置データが生成される。
【0036】
図2に示すコントローラ14は、コンベア駆動部131に内蔵されたエンコーダ(図示せず)の出力信号に基づいて、3台の撮像ヘッド12a~12cを駆動し、これらの撮像ヘッドで測定された原木Wの部分断面プロファイルのデータを合成して原木Wの断面プロファイルを生成する。
【0037】
コントローラ14は、制御部141、波形処理部142、プロファイル生成部143、入力・表示部144および記憶部145で構成されている。図示しないが、コントローラ14は、CPU、ROMおよびRAMで構成され、記憶部145に記憶されたプログラムを読み出してCPUで実行することにより、制御部141およびプロファイル生成部143の各機能を実現する。
【0038】
制御部141は、原木Wの部分的な断面プロファイルを得るため、コンベア駆動部131の出力信号に合わせて3台の撮像ヘッド12a~12cの投光部と受光部を動作させる。
【0039】
波形処理部142は、増幅器およびアナログ/デジタル変換器を含み、撮像ヘッド12から出力される信号を、増幅した後、デジタルの波形データに変換する。
【0040】
プロファイル生成部143は、波形処理部142から出力されたデジタル波形データに基づいて、原木Wの部分断面プロファイルである垂直面内の二次元位置データを生成する。次に、プロファイル生成部143は、3台の撮像ヘッド12a~12cから得られた部分断面プロファイルを合成して、原木Wの断面全体のプロファイルを生成する。
【0041】
具体的には、各撮像ヘッド12a~12cの出力信号によって生成された部分断面プロファイルを示す2次元位置データを、各撮像ヘッド12a~12cの位置と方向を示すデータで修正して、垂直面内の絶対位置を示す2次元位置データに変換する。次に、このようにして絶対位置データに変換された3つの部分的な断面プロファイルの位置データを重ね合わせることにより、原木Wの断面全体のプロファイルを生成する。
【0042】
プロファイル生成部143は、コンベア13の移動に伴い、3台の撮像ヘッド12a~12cから出力される信号に基づいて上述の処理を繰り返し、例えば原木Wが0.1mm移動する毎に断面プロファイルを生成する。生成した断面プロファイルは、一旦、記憶部145に格納される。
【0043】
コントローラ14の入力・表示部144は、キーボードやタッチパネル式の液晶ディスプレイで構成され、撮像ヘッド12a~12cの位置と方向を示すデータを入力したり、各撮像ヘッドやコンベア駆動部131の制御に必要なデータを入力するために用いられる。またプロファイル生成部143で生成された断面プロファイルを表示するために用いられる。
【0044】
記憶部145は、ハードディスクドライブ、またはフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成され、撮像ヘッド12a~12cの位置と方向のデータや、生成された複数の断面プロファイルの二次元位置データを格納するために用いられる。
【0045】
<演算装置の構成と機能>
次に、演算装置2について説明する。演算装置2は、プロファイル測定器1で生成された原木Wの一定間隔毎の断面プロファイルの集合体に基づいて原木Wの外形プロファイルである三次元位置データを生成し、更に、その位置データに基づいて、スライサー3で原木Wをスライスする位置データを生成する。
【0046】
図3に示すように、演算装置2は、制御部201、演算部202、入力・表示部203および記憶部204で構成され、通常のパーソナルコンピュータを用いて実現される。これらのうち、制御部201および演算部202の機能は、記憶部204に記憶されたプログラムを読み出してCPUで実行することにより実現される。
【0047】
制御部201は、演算部202、入力・表示部203および記憶部204の動作を制御するために用いられる。入力・表示部203および記憶部204の機能は、前述のコントローラ14の入力・表示部144および記憶部145の機能と変わりがない。
【0048】
演算部202は、プロファイル測定器1で生成され、図示しないインターフェースを介して記憶部204に格納された原木Wの01mm毎の断面プロファイルを読み出し、それを三次元空間でつなぎ合わせて原木Wの外形プロファイルである三次元位置データを生成する。更に、演算部202は、得られた三次元位置データに基づいて、スライサー3の切断刃で原木を切断する位置を算出する。
【0049】
図4に、原木Wがスライスされる位置と、切断刃321との関係を示す。
図4は、原木Wおよびそれを保持するホルダー315を、上方から見た図である。スライサー3については後に詳述するが、ホルダー315に保持された原木Wは矢印で示す方向に移送され、C1~C5で示す断面が切断刃321の横に到達したときに、円板状の切断刃321を旋回して原木Wを切断してスライス食品を作製する。
【0050】
例えば、
図4に示すように、原木Wを切断して、同じ重さの6枚のスライス食品を作製する場合について説明する。演算装置2の演算部202は、記憶部204に格納された原木の外形プロファイルのデータを読み出して原木の体積を算出する。具体的には、0.1mm毎の断面プロファイルを三次元空間に配置して原木Wの外形プロファイルである三次元位置データを生成すると共に、その三次元位置データから原木Wの体積を算出する。
【0051】
原木Wの密度が均一であると仮定し、切断位置C1~C5を6枚のスライス食品の体積が等しくなる位置に設定すれば、6枚のスライス食品の重量は等しくなる。各スライス食品の体積は、上述した外形プロファイルの三次元位置データに基づいて簡単に算出できる。
【0052】
演算部202は、このようにして算出した切断位置C1~C5の値を一旦、記憶部204に格納する。格納された切断位置のデータは、その後、図示しないインターフェース部を介して記憶部204から読み出され、駆動用データとしてスライサー3のコントローラ34に入力される。
【0053】
<スライサーの構成と機能>
次に、スライサー3について説明する。スライサー3は、食品原木Wをスライスした後、それを重畳してスライス食品Sを作製する。
図5に、スライサー3の全体構成図、
図6に制御系のブロック図を示す。
【0054】
スライサー3は、ベース30上に設置されたサポートステーション31、スライスステーション32および整列ステーション33で構成されている。本実施の形態で用いるスライサー3は、3本のベーコンの原木Wを同時にスライスする機能を備えている。
【0055】
サポートステーション31に設けられた支持レーン311に収容された原木Wは、矢印で示すように、スライスステーション32の円板状の切断刃321に向けて移送され、一定の厚みにスライスされる。スライスされた食品は整列ステーション33のコンベア331上に落下し、コンベア332、333で整列、すなわち搬送方向およびそれと直交する方向の位置が調節された後、包装機に向けて搬送される。以下、各ステーションについて具体的に説明する。
【0056】
サポートステーション31は、支柱301および302によってベース30上に傾斜して設置された長尺のガイド部312を備え、ガイド部312には、
図4に示した形状のベーコンの原木Wを収容する、断面が船底状の3本の支持レーン311が設置されている。
【0057】
ガイド部312の上部には、上端部がホルダー315で係止された原木Wを下方に移送する送り部材313が設置されている。送り部材313は、ガイド部311の上端に取り付けられた駆動部(モータとボールネジで構成)314により、ガイド部312に沿って下方に移動する。送り部材313の移動量はコントローラ34(
図6)によって調節が可能である。
【0058】
支柱302に支持されたスライスステーション32は、原木Wをスライスする円板状の切断刃321、切断刃321を自転させながら公転させる切断刃駆動部材322を備えている。切断刃駆動部材322を用いて、切断刃321を自転させながら公転させることにより、支持レーン311上を移送されてきた原木Wは一定の厚さにスライスされる。そのため、切断刃321の回転軸323は、回転板324の一端に、切断刃駆動部材322の回転軸より所定距離離した状態で、回転自在に支承されている。
【0059】
切断刃321でスライスされた食品が落下する位置には、スライス食品Sを受け取ると共に、それを下流の包装機まで搬送する整列ステーション33が設けられている。
【0060】
整列ステーション33は、3台のコンベア331、332および333で構成されている。コンベア331~333は、所定の間隔を隔てて配置された一対のプーリに平ベルトが捲回されて構成されており、一方のプーリの軸に回転駆動用のモータが取り付けられている。
【0061】
送り部材313によって、支持レーン311上を一定のピッチで移送された3本の原木Wは、切断刃321を自転させながら公転させることにより、指定された厚さにスライスされ、コンベア331上に落下する。
【0062】
コンベア331を静止させた状態でスライスを繰り返せば、コンベア上に複数のスライス食品Sが重なった状態で積層される。一方、コンベア331を若干移動させながらスライスを繰り返すと、コンベア上にスライス食品Sがずらした状態で積層される。いずれの形態で積層するかは、パッケージへの実装状態にあわせて決定される。
【0063】
コンベア331上に積層されたスライス食品Sは、コンベア332に移送され、搬送方向と直交する方向の位置が調整される。包装機においてスライス食品Sは搬送方向と直交する方向に3列並んだ状態で包装される。そのため、パッケージには、搬送方向と直交する方向にスライス食品Sを収納する3列の凹部が均等な位置に形成されている。
【0064】
スライサー3で3本の原木Wをスライスする際には、単一の切断刃321を用いて3本の原木Wを切断する制約上、コンベア331に落下した3枚のスライス食品間のピッチは、パッケージに形成された凹部のピッチより狭い。このため、コンベア332で、スライス食品間のピッチを拡げると共に、パッケージの凹部の位置と一致させる必要がある。
【0065】
本実施の形態では、コンベア332を搬送方向と直交する方向に分割された3台の小コンベアで構成し、小コンベアで搬送する間に、スライス食品Sの各位置を、搬送方向と直交する方向にずらして、パッケージの凹部の位置と一致させている。
【0066】
コンベア333は、コンベア332によって搬送方向と直交する方向の位置が調節されたスライス食品Sを受け取り、搬送方向のスライス食品Sの位置を調節する。切断刃321が前方に傾斜していることから、スライスされた3枚のスライス食品がコンベア331上に落下する位置が異なってくる。このため、下流側に配置されたコンベアに引き渡すまでに、コンベア333でスライス食品Sの搬送方向の位置を揃える。
【0067】
図6に示すように、スライサー3のコントローラ34は、制御部341、演算部342、入力・表示部343および記憶部344で構成されている。サポートステーション31、スライスステーション32および整列ステーション33の各部材の動作は、コントローラ34の記憶部344に格納されたプログラムによって制御される。
【0068】
コントローラ34の制御部341、入力・表示部343および記憶部344の構成と機能は、プロファイル測定器1のコントローラ14の制御部141、入力・表示部144および記憶部145のそれと変わらない。
【0069】
一方、演算部342は、演算装置2で算出された切断位置C1~C5のデータを、スライサー3の送り部材313の送り量に変換するための演算を行う。
【0070】
図6に示すように、コントローラ34は、各ステーションに設置された位置センサ35や回転センサ36の出力信号に基づいて、各ステーションを駆動するモータ37やアクチュエータ38の動作タイミングを調節して、上述の動作を実現する。
【0071】
<原木のスライス方法>
次に、前述の
図4ならびに新たな
図7および
図8を用いて、本実施の形態における原木のスライス方法について説明する。
【0072】
最初に、
図4を参照して、スライスの起点を決める方法について説明する。前述したように、従来の方法では、一定速度で移送される原木の先端をセンサで検出するか、もしくは原木の先端をシャッターに押し付け、シャッターを下降させた後、原木を一定速度で移送していた。
【0073】
しかし、不定形の原木では、センサによる先端の検出にバラツキが生じ、その影響が後々のスライスまで継続していた。またシャッターを用いた場合も、原木が撓むことによって同様の問題が生じるため、予期した効果が得られないことが多かった。
【0074】
一方、本実施の形態では、演算装置2によって得られた原木Wの外形プロファイルの三次元位置データにおいて、移送方向における原木Wの長さL1が算出されている。またホルダー315と切断刃321との間の距離L2は送り部材313(
図5)の位置によって予め決められている。
【0075】
従って、スライスの起点となる原木の先端と切断刃321との間の距離Lは式(L2-L1)で求められる。この値Lを起点とし、その値に切断位置C1~C5の値を加算すれば、原木Wを、演算装置2で算出した正確な位置でスライスすることができる。
【0076】
次に、
図7および
図8を参照して、スライス食品の厚みを調整する方法について説明する。スライス食品の厚みの調整方法として、スライスされた食品の重さを等しくする方法がある。
【0077】
具体的には、ベーコンの原木をスライスして1つのパッケージに5枚のスライス食品(厚み合計8、8mm、重量合計50g)を投入する場合、
図7(a)に示すように、それぞれのスライス食品の重さを等しくすると、スライス食品の厚みが、1.3mm~2.2mmまで分布する。
【0078】
これは、ベーコンの原木の断面積が場所によって大きく変化することに起因するが、このことによってスライス食品を食べたときの食感に違いが生じ、またスライス食品の美観を損ね、消費者に悪印象を抱かせる原因となる。
【0079】
そのような場合、
図7(b)に示すように、パッケージに投入される5枚のスライス食品の厚みと重さ(厚み合計8、8mm、重量合計50g)を変えず、それぞれのスライス食品の厚みを統一(1.76mm)することによって、食感に違いが出ることを避けることができる。
【0080】
これに伴い、原木Wの切断位置を変える必要がある。演算装置2において、原木の外形プロファイルのデータを用い、
図7(a)では、5枚のスライス食品の体積が等しくなる切断位置を算出する。一方、
図7(b)では、5枚のスライス食品の合計の厚み(8.8mm)を5等分すれば、切断位置が算出できる。
【0081】
図8を用いて、別の厚みの制御方法について説明する。具体的には、ベーコンの食品原木をスライスして1つのパッケージに5枚のスライス食品(厚み合計9.7mm、重量合計50g)を投入する場合、
図8(a)に示すように、それぞれのスライス食品の重さを等しくすると、スライス食品の厚みが、1.2mm~3.0mmまで分散する。3.0mmの厚みのベーコンと1.2mmの厚みのベーコンでは食感が大きく異なる。
【0082】
このような場合、
図7(b)に示すように、5枚のスライス食品の厚みを等しくすると、1枚の厚みは1.94mmとなるが、この厚みであると、最適な食感を得られない場合がある。そのような場合、
図8(b)に示すように、全体の厚みと重量を維持しながら(厚み合計8、8mm、重量合計50g)、スライス食品の枚数を1枚増やして7枚にすることで、1枚のスライス食品の厚みが増えるのを防止して(1.38mm)、消費者に最適な食感を提供することができる。
【0083】
この場合も、
図7(b)と同様に、演算装置2で生成した原木の外形プロファイルのデータから9.7mmの厚みのデータを切り出し、その厚みを7等分することによって切断位置を簡単に算出できる。
【0084】
上述したように、本発明に係るスライス食品の製造方法によれば、プロファイル測定器で測定した原木の断面プロファイルを用いて原木の外形プロファイルを生成し、かつその外形プロファイルのデータを用いることにより、消費者の要望に応じて厚みや重量が調整されたスライス食品を簡単に製造できる。
【符号の説明】
【0085】
C1~C5 切断位置
W 原木
1 プロファイル測定器
2 演算装置
3 スライサー
11 フレーム
12a~12c 撮像ヘッド
13a、13b コンベア
14、34 コントローラ
35 位置センサ
36 回転センサ
37 モータ
38 アクチュエータ