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特許7085772ドローンシステム、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ドローンシステム、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/08 20060101AFI20220610BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20220610BHJP
   B64F 3/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C13/20 Z
B64F3/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020572227
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004926
(87)【国際公開番号】W WO2020166521
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019022942
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019135064
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0086288(KR,A)
【文献】特開2017-207815(JP,A)
【文献】特開2017-056904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 13/20
B64F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数機のドローンによって分担して行うドローンシステムであって、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している作業の少なくとも一部を帰還していないドローンに割当てて再配分し、帰還していないドローンの少なくとも1機の飛行経路を変更し、
前記変更された前記飛行経路は、帰還した前記ドローンの残作業として契約されている元の飛行経路とは異なる、ドローンシステム。
【請求項2】
複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数機のドローンによって分担して行うドローンシステムであって、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している作業の少なくとも一部を帰還していないドローンに割当てて再配分し、帰還していないドローンの少なくとも1機の飛行経路を変更し、
前記変更された飛行経路は、前記元の飛行経路に対応する残エリアに基づいて経路を再設定した上で決定される、
ドローンシステム。
【請求項3】
複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数機のドローンによって分担して行うドローンシステムであって、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している作業の少なくとも一部を帰還していないドローンに割当てて再配分し、帰還していないドローンの少なくとも1機の飛行経路を変更し、
前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更し得るものであるドローンシステム。
【請求項4】
前記減少性因子は、ドローンの駆動エネルギー量およびドローンの搭載物量からなる群から選択される少なくとも1つのものである請求項3に記載のドローンシステム。
【請求項5】
前記した少なくとも1機のドローンの前記離着陸ポートへの帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合に、当該ドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較し、少なくともその比較の結果に基づいて、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分するか否かを決定するものである請求項3又は4に記載のドローンシステム。
【請求項6】
前記したtと、tとの比較の結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するものである請求項5に記載のドローンシステム。
【請求項7】
前記した少なくとも1機のドローンの前記離着陸ポートへの帰還が、操作者の任意の帰還指令に基くものである請求項3又は4に記載のドローンシステム。
【請求項8】
前記した少なくとも1機のドローンの前記離着陸ポートへの帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合か、操作者の任意の帰還指令に基くものである場合かによって、
前記したtとtとを比較するか、あるいは比較を行わないかを切り換えるものである請求項5乃至7のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項9】
前記した少なくとも1機のドローンの前記離着陸ポートへの帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合か、操作者の任意の帰還指令に基くものである場合かによって、
前記したtとtとの比較が、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する条件とするか、あるいは
直ちに残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する条件とするか、を切り換えるものである請求項8に記載のドローンシステム。
【請求項10】
残存している全作業の再配分判断は、残存している全作業の予想所要時間から判断、もしくは前記減少性因子の予想残量から判断するもの請求項3乃至9のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項11】
前記再配分は、前記した帰還したドローンの元の経路を分担して割り当てるのではなく、残エリアから経路を新たに最適な再設定をした上で割り当てるものである請求項3乃至10のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項12】
各ドローンにおける前記減少性因子の状態は、各ドローンにおいて検知され、各ドローンより前記飛行制御部へと随時送信されるものである請求項3乃至11のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項13】
複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数機のドローンによって分担して行うドローンシステムの制御方法であって、
前記ドローンシステムが、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している作業の少なくとも一部を帰還していないドローンに割当てて再配分し、帰還していないドローンの飛行経路を変更するステップ、を含み、
前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
前記ドローンシステムが、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を検知するステップと、前記ドローンシステムが、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するステップとを、含む、ドローンシステムの制御方法。
【請求項14】
前記ドローンシステムが、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、帰還したドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較するステップと、この結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを前記ドローンシステムが判断するステップをさらに有し、その結果により、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに前記ドローンシステムが割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するステップを実行するものである、請求項13に記載のドローンシステムの制御方法。
【請求項15】
複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数機のドローンによって分担して行うドローンシステムの制御プログラムであって、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している作業の少なくとも一部を帰還していないドローンに割当てて再配分し、帰還していないドローンの飛行経路を変更する命令を、コンピュータに実行させ、
前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を検知する命令と、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する命令とを、コンピュータに実行させるドローンシステム制御プログラム。
【請求項16】
残存している全作業を検知する命令と、帰還したドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較する命令と、この結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを判断する命令と、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する命令と、をコンピュータに実行させるものである請求項15に記載のドローンシステム制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローンシステム、ドローン、ドローンシステムの制御方法、および、ドローンシステム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
ところで、上記したような薬剤散布等の作業を行う上で、ドローンを圃場で飛行させるにあたり、比較的大規模な圃場に対応する、あるいは作業時間を短縮するといった目的の上から、複数のドローンを同時に飛翔させることも提案されている。(たとえば、特許文献3)。すなわち、各ドローンにはそれぞれ運転経路が計画され、圃場内を分担して作業するものである。
【0005】
しかしながら、このような複数のドローンを用いて圃場内を分担して作業させた場合、予め計画されたそれぞれの運転経路を変更することができないため、作業の完了時間は、最も作業の遅いドローンの操作が律速となるものであった。一般に、圃場内作業を完遂するには、各ドローンが散布する農薬等の搭載物品の補充が大抵数回必要であるため、各ドローンはその作業の持ち場と、搭載物品の補充のための離着陸ポートとの間を往復を繰返しながら作業する。また、ドローンが充電式のものである場合、バッテリの消費量は、気温や風の影響により精確に予測することができないため、可能な飛翔時間はある程度の変動が生じ、バッテリの交換ないしは充電のために離着陸ポートに帰還する必要性が生じる。このような要因によって、予め複数のドローンに対して均等に作業を分担していた場合であっても、各ドローンによる作業の進行状況に差が生じ、結局、最も作業の遅いドローンの操作が律速となるものであり、改善が望まれるところであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】国際公開 WO2014/160589
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数のドローンを用い、作業対象領域についてそれぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを自動飛行により運用して作業を行うドローンシステムにおいて、作業の効率化を図り作業時間の短縮化させるドローンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明の一の観点に係るドローンシステムは、複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数のドローンによって分担して行うドローンシステムであって、
前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更し得るものである。
【0009】
前記減少性因子は、ドローンの駆動エネルギー量(バッテリー充電量、燃料量等)およびドローンの搭載物量(散布される農薬、肥料等の薬剤量、播種される種子量等)からなる群から選択される少なくとも1つのものであってよい。
【0010】
前記した少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合に、当該ドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較し、少なくともその比較の結果に基づいて、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分するか否かを決定するものであってもよい。
【0011】
前記したtと、tとの比較の結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するものであってよい。
【0012】
前記した少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還が、操作者の任意の帰還指令に基くものである場合であってよい。
【0013】
前記した少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合か、操作者の任意の帰還指令に基くものである場合かによって、前記したtとtとを比較するか、あるいは比較を行わないかを切り換えるものであってもよい。
【0014】
前記した少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還が、前記減少性因子の補充ないし更新である場合か、操作者の任意の帰還指令に基くものである場合かによって、前記したtとtとの比較が、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断される場合には、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する条件とするか、あるいは直ちに残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する条件とするか、を切り換えるものであってもよい。
【0015】
残存している全作業の再配分判断は、残存している全作業の予想所要時間から判断、もしくは前記減少性因子の予想残量から判断するものであってよい。
【0016】
前記再配分は、前記した帰還したドローンの元の経路を分担して割り当てるのではなく、残エリアから経路を新たに最適な再設定をした上で割り当てるものであってよい。
【0017】
各ドローンにおける前記減少性因子の状態は、各ドローンにおいて検知され、各ドローンより前記飛行制御部へと随時送信されるものであってよい。
【0018】
前記離着陸ポートは、前記ドローンを積載して移動可能であって、前記ドローンと協動して動作する移動体上に設けられたものであってよい。
【0019】
上記目的を達成するため、本願発明の一の観点に係るドローンシステムの制御方法は、複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数のドローンによって分担して行うドローンシステムの制御方法であって、
前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を検知するステップと、残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを判断するステップと、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するステップとを、含む。
【0020】
前記ドローンシステムの制御方法は、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、帰還したドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較するステップと、この結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを判断するステップを有し、その結果により、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更するステップを実行するものであってよい。
【0021】
上記目的を達成するため、本願発明の一の観点に係るドローンシステム制御プログラムは、複数機のドローンと、前記複数機のドローンが個別にあるいは2機以上同時に発着可能な少なくとも1つの離着陸ポートと、それぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを飛行制御する飛行制御部とを有し、所定の領域内での作業を前記複数のドローンによって分担して行うドローンシステムの制御プログラムであって、前記複数のドローンは、それぞれの運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該因子を補充ないし更新する上では前記離着陸ポートへの帰還が必要とされる条件下で、
少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際、残存している全作業を検知する命令と、残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを判断する命令と、検知された残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する命令とを、コンピュータに実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0022】
前記制御プログラムは、残存している全作業を検知する命令と、帰還したドローンが前記減少性因子の補充ないし更新して再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較する命令と、この結果、t>tとなり、かつ残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているかどうかを判断する命令と、残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更する命令と、をコンピュータに実行させるものであってよい。
【0023】
上記目的を達成するため、本願発明の一の観点に係るドローンは、離着陸ポートより発着可能であり、飛行制御部により制御されて割り振られた飛行経路に従い飛行可能なドローンであって、運行時に消費される少なくとも1つの減少性因子を負っており、当該減少性因子の状態を検知する検知部と、検知部で得られた状態情報を前記飛行制御部へと随時送信する送信部を有し、前記ドローンは、前記飛行制御部より送られてくる飛行経路の変更に従い飛行経路を変更するものである。
【発明の効果】
【0024】
複数のドローンを用い、作業対象領域についてそれぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い各ドローンを自動飛行により運用して作業を行うドローンシステムにおいて、各ドローンの作業の進行状況に差異が生じた場合であっても、1乃至複数のドローンが一旦離着陸ポートに帰還した際に、各ドローンへの作業割当ての再配分を図ることができるため、作業の効率化が図られ、作業時間の短縮化させることができる。また、操作者が任意に1乃至複数のドローンを撤収させた場合であっても、残りの作業を滞りなく完了させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明に係るドローンシステムの第1実施形態を示す平面図である。
図2】上記ドローンシステムが有するドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンが有する薬剤散布システムの全体概念図である。
図7】上記ドローンが有する薬剤散布システムの第2実施形態を示す全体概念図である。
図8】上記ドローンが有する薬剤散布システムの第3実施形態を示す全体概念図である。
図9図6に示す薬剤散布システムの実施形態において、ドローンの作業区分の再検討を行う際の状態を示す全体概略図である。
図10図6に示す薬剤散布システムの実施形態において、ドローンの作業区分の再配分を行った状態を示す全体概略図である。
図11】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
図12】本願発明の実施形態において用いられる移動体の様子を示す概略斜視図である。
図13】上記移動体の、上記ドローンが載置される上面板が後方にスライドしている様子を示す概略斜視図である。
図14】上記ドローン、および上記移動体が有する機能に関する機能ブロック図である。
図15】上記ドローンシステムがドローンが一旦帰還した際に、作業の再配分を行うフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0027】
本願発明は、所定の領域内での作業を前記複数のドローンによって分担して行うドローンシステムである。前記所定の領域としては、特に限定されるものではなく、例えば、ドローンが農業用途に用いられる場合おいては、農地(圃場)が代表的なものであるが、ドローンがこれ以外の用途、例えば、何らかの撮影目的、消火作業等で用いられる場合においては、それ以外の市街地、郊外地、山間部等の様々の土地や、海域等であっても良い。なお、作業を行う領域は予めその位置および広さ等が定められていることが望ましい。
【0028】
本願発明においては、前記したように複数のドローンが使用されるが、まず、本願発明にかかるドローンシステムが有する、ドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0029】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0030】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。図2、および、図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0031】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、粉状肥料、殺虫剤、種子、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0032】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0033】
本願発明にかかるドローンシステムおいては、上記に例示したような構成を有するドローンを複数機使用し、これらの運行を制御するにおいて、各ドローンの運行時に消費され、かつこれを補充ないし更新する上では離着陸ポートへの帰還が必要とされる減少性因子の状態を、判断材料とする。この減少性因子としては、ドローンの駆動エネルギー量、ドローンの搭載物量などが挙げられる。これ以外にも例えば、モーターの連続稼動時間等の因子が考えられるが、一般的に、ドローンの駆動エネルギー量およびドローンの搭載物量が各ドローンの運行時において経時変動(減少率)が大きい因子であるので、これらの因子の状態を、判断材料とすることが好ましい。さらに、本願発明にかかるドローンシステムおいて減少性因子として、例えば、ドローンの駆動エネルギー量およびドローンの搭載物量の一方のみを判断材料とすることも可能であるが、そのいずれか一方のみであっても良い。
【0034】
なお、ドローンの駆動エネルギー量としては、より具体的には、使用されるドローンの動力手段によるが、バッテリー充電量、燃料量等であり、また、およびドローンの搭載物量は、農業用途である場合には、上記したような薬剤量(散布される農薬、除草剤、液肥、粉状肥料、殺虫剤、種子、および、水などの量、播種される種子量等)である。
【0035】
図6に本願発明に係るドローンシステムを薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、複数のドローン100a、100b、100c、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404、および移動体406aは、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。なお、本実施例においてはドローンシステムにおいて3機のドローン100a、100b、100cが運用されているが、このドローンの数としては、複数、すなわち2機以上であれば特に限定されない。移動体406aは、離着陸ポート406を有している。なお、本実施例においては、ドローン100が発着可能な離着陸ポート406が、移動体406aに設けられているが、本願発明において離着陸ポート406の設置場所としては、特にこのような移動体406a上に限られるものではなく、固定地上に設けられることももちろん可能である。また、1つの離着陸ポート406に関して、ドローン100が少なくとも1機が発着可能なものであれば良いが、離着陸ポート406に関して、2機以上のドローン100が同時に発着可能なものであっても、あるいは1つのドローンシステムに複数の離着陸ポート406が設けられていてもよい。
【0036】
各ドローン100a、100b、100cおよび移動体406aは、互いに情報の送受信を行い、協調して動作する。各ドローン100a、100b、100cは、各ドローン100a、100b、100cの飛行を制御する飛行制御部21の他、移動体406aと情報を送受信するための機能部を有している。
【0037】
操作器401は、使用者402の操作により各ドローン100a、100b、100cにそれぞれ指令を送信し、また、各ドローン100a、100b、100cから受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100a、100b、100cは自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機(図示していない)を使用してもよい。非常用操作機は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100a、100b、100cの動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0038】
圃場403は、ドローン100a、100b、100cによる薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。また圃場403における気温や風の影響等も生じ得る。このような要因から、圃場403において、各ドローン100a、100b、100cにそれぞれ担当させる区画(A区、B区、C区)を、例えば、等面積に分配しても、ドローン100a、100b、100cによる農薬散布作業、あるいはドローン100a、100b、100cにおけるバッテリー消費ないし燃料消費が均等に進むとは限らない。
【0039】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、複数のドローン100a、100b、100cの正確な位置を提供できるようになっていてもよい。基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。基地局404は、本実施の形態においては、離着陸ポート406と共に移動体406aに積載されている。
【0040】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100a、100b、100cが撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100a、100b、100cに提供してよい。加えて、ドローン100a、100b、100cの飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0041】
小型携帯端末401aは携帯端末の例であり、例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100a、100b、100cの運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が離着陸ポート406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100a、100b、100cおよび移動体406aの動作を変更してもよい。携帯端末は、ドローン100a、100b、100cおよび移動体406aのいずれからでも情報を受信可能である。また、ドローン100a、100b、100cからの情報は、移動体406aを介して小型携帯端末401aに送信されてもよい。
【0042】
通常、各ドローン100a、100b、100cは圃場403の外部にある離着陸ポート406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に離着陸ポート406に帰還する。離着陸ポート406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0043】
なお、図7に示す第2実施形態のように、本願発明に係るドローン100a、100b、100cの薬剤散布システムは、各ドローン100a、100b、100c、操作器401、小型携帯端末401a、および営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0044】
また、図8に示す第3実施形態のように、本願発明に係るドローン100a、100b、100cの薬剤散布システムは、各ドローン100a、100b、100c、操作器401、および小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0045】
図6~図8に示すように、各ドローン100は、圃場403における当初与えられたそれぞれの担当区画(A区、B区、C区)の上空を飛行し、圃場内の作業を遂行する。
【0046】
ドローン100a、100b、100cは、移動体406aから離陸して圃場403内での作業を遂行する。ドローン100a、100b、100cは、圃場403内での作業中に、適宜作業を中断して移動体406aに帰還し、バッテリ502および薬剤の補充を行う。ドローン100a、100b、100cは所定の圃場の作業が完了すると、移動体406aに乗って別の圃場近傍まで移動した上で、移動体406aから再度離陸し、当該別の圃場における作業を開始する。このように、ドローン100a、100b、100cの別の圃場への移動は、原則的に、移動体406aに乗って行われ、移動体406aは、作業を行う圃場近傍までドローン100を運搬する。この構成によれば、ドローン100のバッテリ502を節約することができる。また、移動体406aは、ドローン100に補充可能なバッテリ502や薬剤を格納しているため、ドローン100が作業を行っている圃場近傍に移動体406aが移動して待機する構成によれば、ドローン100が補充に要する時間を短縮することができる。
【0047】
図9は、図6に示した実施例において各ドローンでの薬剤散布作業が進行し、ドローン100cが、薬剤補充や充電等が必要となり離着陸ポート406に帰還した状態を模式的に示すものである。本願発明においては、この時点、すなわち、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際に、各ドローンに対する担当区画割り当ての再検討がなされる。
【0048】
すなわち、帰還したドローン100cが前記減少性因子の補充ないし更新、この例においては薬剤補充や充電、を行って再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローン100a、100bに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較し、この結果、t>tとなるかどうか、また残存している全作業を帰還していないドローン100a、100bが処理する上で当該帰還していないドローン100b、100cの有する前記因子、すなわち薬剤量および充電量が足りているかどうかを判断する。図9においては、ドローン100cが離着陸ポート406に帰還した際における、各ドローン100a、100b、100cが担当するA区、B区、C区での作業の進行度を模式的に示しており、それぞれの区画で既に作業が終了した部分は図中ハッチングをかけた部分である。何ら限定するものではないが、理解を容易とするために、仮に数値を与えると、例えばA区画およびB区画での作業の進行度はいずれも80%、またC区画での作業の進行度は85%であるとされる。例えば、この図9に示すように、それぞれの区画における作業の進行はいずれもかなり進んでおり、残りの作業はわずかであるような場合、帰還したドローン100cが薬剤充填および充電を終えて再度戻ってきて、担当する区画(C区画)の残りの作業を行うより、残存している全作業(この例では、A区画での20%、B区画での20%およびC区画での15%)を、帰還していないドローン100a、100bに割当てて再配分して作業を行わせた方が、全体としての作業終了時間を短縮することができるからである。
【0049】
なお、実際の各ドローン100a、100b、100cによる作業の進行度は、飛翔中のドローン100a、100bに関しては、例えば、これらのドローンから受信した現在の飛行位置情報と、当初設定された飛行経路とを操作器401あるいは営農クラウド405においてコンピューター・プログラムを用いて照合することにより算出することができ、また、帰還したドローン100cに関しては、例えば、このドローンから受信した帰還する直前の作業区画(C区画)での飛行位置情報を用い、同様に当初設定された飛行経路と照合することで算出することができる。
【0050】
また、飛翔している各ドローン100a、100bの残存薬剤量や充電量は、これらのドローンから操作器によって受信した情報を利用することができる。帰還したドローン100cが前記減少性因子の補充ないし更新、この例においては薬剤補充や充電、を行って再離陸に要する時間tは、帰還したドローン100cにおける状態と、薬剤補充速度や充電速度から算出可能である。残存している全作業を帰還していないドローン100a、100bに割当てて作業をさせた場合に要する時間tは、上記した各ドローン100a、100b、100cによる作業の進行度から、残りの全作業を算出し、これを帰還していないドローン100a、100bでの作業効率を参照することで算出可能である。
【0051】
なお、残存している全作業の再分担判断は、残存している全作業の予想所要時間から判断、もしくは前記減少性因子の予想残量から判断するものであってよい。すなわち、帰還していないドローン100aおよび100bでの前記減少性因子の予想残量が、残存している全作業をこれらのドローン100aおよび100bに等分に分配してもそれぞれ足りている場合には、予想所要時間から等分に分配可能であり、最も短い時間で作業を完了することができる。一方で、帰還していないドローン100aおよび100bでの前記減少性因子の予想残量が、残存している全作業をこれらのドローン100aおよび100bに等分に分配すると、いずれか一方は、これに足りないが、配分比率を変更すれば、他方によって、これを補えるような場合には、それぞれの予想残量に応じて配分比率を変えて、残存している全作業を分配することが可能である。
【0052】
図10は、上記した少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際に、各ドローンに対する担当区画割り当ての再検討がなされ、条件を満たしたことで、再配分が行われた状態を模式的に示すものである。すなわち、t>tであり、かつ残存している全作業を帰還していないドローン100a、100bが処理する上で当該帰還していないドローン100a、100bの薬剤量および充電量が足りていると判断されると、残存する全作業、すなわち圃場403内での残存領域は、新たにドローン100a、100bに対して再分配され、それぞれ新たな作業区画A1およびB1を与えられ、これに応じた飛行経路に更新され、ドローン100a、100bは、新たな飛行経路で運用される。
【0053】
一方、比較の結果、t>tとならない、または、残存している全作業を帰還していないドローン100b、100cが処理する上で当該帰還していないドローン100b、100cの有する前記因子、すなわち薬剤量および充電量が足りていない場合には、当初の作業区分(A区、B区、C区)は変更されることなく、帰還したドローン100cは薬剤補充や充電を終えたのち、再離陸して、C区の残りの作業を継続実施する。
【0054】
また、上記では、ドローン100cの前記離着陸ポート406へ帰還が、薬剤補充や充電等が必要となって行われたものであるが、ドローンの帰還が、操作者の任意の帰還指令に基くものであった場合においても、同様に、この時点、すなわち、少なくとも1機のドローンが前記離着陸ポートへ帰還した際に、各ドローンに対する担当区画割り当ての再検討がなされ得る。この場合においては、上記したような、tとtとを算出して比較するといった判断は必要なく、直ちに残存している全作業を帰還していないドローンに割当てて再配分し、各ドローンの飛行経路を変更することができる。
【0055】
図11に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0056】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0057】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0058】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0059】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。侵入者検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0060】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0061】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0062】
なお、図11に示したドローンの制御機能を表したブロック図は、ドローン1機における制御機能を表すものであるが、本発明において複数機のドローンを使用するものであり、上記説明した制御機能が、その機数分あることは理解されたい。
【0063】
●移動体の構成
図12および図13に示す移動体406aは、ドローン100が有する情報を受信して、使用者402に適宜通知し、又は使用者402からの入力を受け付けてドローン100に送信する装置である。また、移動体406aは、ドローン100を積載して移動可能である。移動体406aは、使用者402により運転可能である他、自律的に移動可能であってもよい。なお、本実施形態における移動体406aは自動車等の車両、より具体的には軽トラックを想定しているが、電車等の陸上走行可能な適宜の移動体であってもよいし、船舶や飛行体であってもよい。移動体406aの駆動源は、ガソリン、電気、燃料電池等、適宜のものであってよい。
【0064】
移動体406aは、進行方向前方に乗車席81、後方に荷台82が配置されている車両である。移動体406aの底面側には、移動手段の例である4個の車輪83が、駆動可能に配置されている。乗車席81には、使用者402が乗り込むことが可能である。
【0065】
乗車席81には、移動体406aおよびドローン100の様子を表示する表示部65が配置されている。表示部65は、画面を有する装置であってもよいし、フロントガラスに情報を投影する機構により実現されていてもよい。また、この表示部65に加えて、乗車席81を覆う車体810の背面側にも背面表示部65aが設置されていてもよい。この背面表示部65aは、車体810に対する角度が左右に変更可能であり、荷台82の後方および左右側方で作業している使用者402が画面を見て情報を取得することができる。
【0066】
移動体406aの荷台82前部左端には、丸棒の上方に円盤状の部材が連結された形状をしている基地局404が、乗車席81よりも上方に伸び出ている。なお、基地局404の形状および位置は、任意である。基地局404が荷台82の乗車席81側にある構成によれば、荷台82の後方にある構成と比較して、基地局404がドローン100の離着陸の妨げになりづらい。
【0067】
荷台82は、ドローン100のバッテリ502や、ドローン100の薬剤タンク104に補充される薬剤を格納する荷室821を有する。荷室821は、乗車席81を覆う車体810と、後方板822と、1対の側方板823、823と、上面板824とに囲まれた領域である。後方板822および側方板823は、「あおり」とも呼ばれる。後方板822の上部両端それぞれには、レール825が、側方板823の上端に沿って乗車席81背面側の車体810まで配設されている。上面板824は、ドローン100が載置され、離着陸することが可能な離着陸ポート406である発着領域となっており、レール825に沿って進行方向前後に摺動可能になっている。レール825は、上面板824の平面より上方に突出するリブとなっていて、上面板824上に乗っているドローン100が移動体406aの左右端から滑り出てしまうことを防いでいる。また、上面板824の後方にも、レール825と同程度上面側に突出するリブ8241が形成されている。
【0068】
車体810上部および後方板822の進行方向後ろ側には、ドローンシステム500が作業中である旨を表示する警告灯830が配置されていてもよい。警告灯830は、配色又は明滅等で作業中と作業中以外とを区別する表示器であってもよいし、文字又は絵柄等が表示可能であってもよい。また、車体810上部の警告灯830は、車体810上方まで伸びあがって両面に表示することが可能であってもよい。この構成によれば、荷台82にドローン100が配置されている場合であっても、後方から警告を視認することができる。また、移動体406aの進行方向前方からも、警告を視認することができる。警告灯830が前方および後方から視認できることで、区画部材407を設置する手間を一部省略することができる。
【0069】
上面板824は、手動で摺動可能であってもよいし、ラックアンドピニオン機構などを利用して自動で摺動してもよい。上面板824を後方に摺動させると、荷台82の上方から荷室821に物品を格納したり、物品を取り出したりすることができる。また、上面板824が後方に摺動している形態においては、上面板824と車体810とが十分離間するため、ドローン100が離着陸ポート406に離着陸可能である。
【0070】
上面板824には、ドローン100の足107-1,107-2,107-3,107-4が固定可能な足受部826が4個配設されている。足受部826は、例えばドローン100の4本の足107-1,107-2,107-3,107-4に対応する位置に1個ずつ設置されている、上面が円錐台状に凹んでいる円盤状の部材である。なお、足受部826の円錐台状の凹みの底と、足107-1,107-2,107-3,107-4の先端とは、互いに嵌合可能な形状になっていてもよい。足受部826上に着陸しているとき、ドローン100の足107-1,107-2,107-3,107-4は、足受部826の円錐面に沿って滑り、円錐台の底部に足107-1,107-2,107-3,107-4の先端が誘導される。ドローン100は適宜の機構により足受部826に自動又は手動で固定可能であり、移動体406aがドローン100を載せて移動する際にも、ドローン100が過度に振動したり落下することなくドローン100を安全に輸送することができる。また、移動体406aは、ドローン100が足受部826に固定されているか否かを検知可能である。
【0071】
上面板824の、略中央部には、ドローン100の離着陸の位置の目安を表示する円周灯850が配置されている。円周灯850は、略円状に配設される発光体群により形成されていて、発光体群は個別に明滅可能である。本実施形態では、円周上に約90度ごとに配置される4個の大きな発光体850aと、大きな発光体850aの間に2個ずつ等間隔に配置される小さな発光体850bとで、1の円周灯850を構成している。円周灯850は、発光体群850a、850bのうち1又は複数が点灯することで、ドローン100の離陸後の飛行方向、又は着陸する際に飛来する方向を表示する。なお、円周灯850は、部分的に明滅可能な1個の円環状の発光体により構成されていてもよい。
【0072】
1対の側方板823は、底部の辺が荷台82にヒンジで連結されていて、側方板823を外側に倒すことが可能である。図13では、進行方向左側の側方板823が外側に倒れている様子を示している。側方板823が外側に倒れると、移動体406aの側方から格納物を格納および取り出しが可能になる。側方板823は荷室821の底面と略平行に固定され、側方板823を作業台としても使用することができる。
【0073】
1対のレール825は、形態切替機構を構成する。また、側方板823と荷台82を連結するヒンジも、形態切替機構に含まれていてもよい。上面板824が荷室821の上方を覆って配置され、側方板823が起立して荷室821の側面を覆っている形態において、移動体406aは移動する。移動体406aが静止しているとき、上面板824が後方に摺動している形態、又は側方板823が倒れている形態に切り替えられ、使用者402は荷室821の内部にアプローチできる。
【0074】
ドローン100は、離着陸ポート406に着陸している状態において、バッテリ502の補充を行うことができる。バッテリ502の補充とは、内蔵されているバッテリ502の充電、およびバッテリ502の交換を含む。荷室821にはバッテリ502の充電装置が格納されていて、荷室821に格納されているバッテリ502の充電が可能である。また、ドローン100は、バッテリ502に代えてウルトラキャパシタの機構を備え、荷室821内にはウルトラキャパシタ用の充電器が格納されていてもよい。この構成においては、ドローン100が足受部826に固定されている際に、ドローン100の足を介して、ドローン100に搭載されているバッテリ502を急速充電することができる。
【0075】
ドローン100は、離着陸ポート406に着陸している状態において、薬剤タンク104に貯留される薬剤の補充を行うことができる。荷室821には、薬剤を希釈混合するための希釈混合タンク、撹拌機構、ならびに希釈混合タンクから薬剤を吸い上げて薬剤タンク104に注入せしめるポンプおよびホース等の希釈混合を行う適宜の構成要素が格納されていてもよい。また、荷室821から上面板824の上方へ伸び出て、薬剤タンク104の注入口に接続可能な補充用ホースが配管されていてもよい。
【0076】
上面板824の上面側には、薬剤タンク104から排出される薬剤を誘導する廃液溝840および廃液孔841が形成されている。廃液溝840および廃液孔841は、それぞれ2個ずつ配置されていて、ドローン100が移動体406aの左右どちらを向いて着陸しても、薬剤ノズル103の下方に廃液溝840が位置するようになっている。廃液溝840は、薬剤ノズル103の位置に沿って、移動体406aの長さ方向に沿って略真っ直ぐに形成されている、所定の幅を有する溝であり、乗車席81側に向かってわずかに傾斜している。廃液溝840の乗車席81側の端部には、それぞれ上面板824を貫通して荷室821の内部に薬液を誘導する廃液孔841が形成されている。廃液孔841は、荷室821内であって廃液孔841の略真下に設置されている廃液タンク842に連通している。
【0077】
薬剤タンク104に薬剤を注入する際、薬剤タンク104内に充満する気体、主に空気を外部に排出するエア抜き動作を行う。このとき、薬剤タンク104の排出口から薬剤が排出する動作が必要になる。また、ドローン100が作業終了後に、薬剤タンク104から薬剤を排出する動作が必要になる。上面板824に廃液溝840および廃液孔841が形成されている構成によれば、ドローン100を上面板824に配置した状態で、薬剤タンク104への薬剤注入および排出を行う際、廃液を廃液タンク842に誘導することができ、安全に薬剤注入および排出を行うことができる。
【0078】
●ドローン、および移動体が有する機能ブロックの概要
【0079】
移動体406aは、移動制御部30と、移動体位置検出部32と、エリア判別部33と、停止位置決定部34と、位置送信部35と、を備える。
【0080】
移動制御部30は、移動体406aの移動および停止を制御する機能部である。移動制御部30は、例えば移動体406aの位置座標や周囲の環境の情報等に基づいて、移動体406aを自動運転許可エリア内において自律的に移動および停止させることができる。また、移動制御部30は、例えば営農クラウド405から移動経路に関する情報を取得して、当該情報に基づいて移動体406aを移動および停止させることができる。なお、移動制御部30は、自律的に制御されていてもよいし、移動体406aの運転席又は外部から、手動で制御されてもよい。
【0081】
移動体位置検出部32は、移動体406aの現在の位置座標を検出する機能部である。移動体位置検出部32は、連続的に又は定期的に移動体406aの位置座標を検出できる。
【0082】
エリア判別部33は、移動体406aの位置が、移動体406a上にドローン100が着陸可能な範囲、すなわち着陸許可エリアにあるか否かを判定する機能部である。エリア判別部33は、連続的に又は定期的に移動体406aの位置を判別できる。エリア判別部33は、あらかじめ設定されている着陸許可エリアの情報と、RTK-GPS等により得られる移動体406aの位置座標とを比較することにより、移動体406aの属するエリアを判別する。また、エリア判別部33は、移動体406aの停止位置が決定された場合において、当該停止位置が属するエリアも判別してもよい。
【0083】
停止位置決定部34は、何らかのアクシデントが生じた際等その情報を受けて、移動体406aの停止位置を決定する機能部である。停止位置決定部34は、当該情報の受信があると、移動体406aを停止させる。停止位置決定部34は、当該情報の受信があった時点で、すぐに移動体406aの動作を停止してもよい。この構成によれば、すぐに動作を停止できるので、高い安全性を担保することができる。
【0084】
停止位置決定部34は、移動体406aの属するエリアに基づいて、停止位置を決定してもよい。停止位置決定部34は、移動体406aの位置が移動許可エリア901にある場合、最も近接する着陸許可エリア902まで移動させて停止することを決定してもよい。この構成によれば、ドローン100が圃場403から帰還した際にも、確実に移動体406a上に着陸することができる。
【0085】
位置送信部35は、移動体406aが停止した位置をドローン100の移動体停止位置受信部22に送信する機能部である。当該停止した位置は、操作器401および小型携帯端末401aに受信され、操作器401および小型携帯端末401aの表示部に適宜表示されてもよい。また、位置送信部35は、エリア判別部33により判別される、当該停止位置の属するエリアの種類、すなわち移動体406aの停止位置が、ドローン100が着陸可能な範囲であるか否かの情報を合わせて送信してもよい。
【0086】
ドローン100は、飛行制御部21と、移動体停止位置受信部22と、着陸位置決定部23と、を備える。
【0087】
飛行制御部21は、モータ102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。
【0088】
移動体停止位置受信部22は、位置送信部35から送信される、移動体406aの停止位置を受信する機能部である。また、移動体停止位置受信部22は、移動体406aの停止位置が、ドローン100の着陸可能な範囲であるか否かの情報を合わせて受信する。なお、ドローンシステム500内に移動体406aが複数含まれている場合は、移動体停止位置受信部22は、各移動体を識別可能な識別情報と共に、各移動体の位置および停止位置の属するエリアの種類を受信する。また、移動体停止位置受信部22は、ドローン100が着陸予定の移動体の位置および属するエリアの種類の情報のみを受け取ってもよい。
【0089】
着陸位置決定部23は、移動体406aの停止位置に基づいて、ドローン100の着陸する位置を決定する機能部である。着陸位置決定部23は、移動体406aが停止している位置座標を参照し、当該位置座標における移動体406a上に着陸することを決定する。
【0090】
着陸位置決定部23は、ドローン100の飛行中であって、ドローン100の作業エリア、すなわち圃場403から退出する退出点において、ドローン100の着陸位置を決定する。なお、これに代えて、着陸位置決定部23は、圃場403内での作業中にドローン100の着陸位置を決定してもよい。また、着陸位置決定部23は、所定時間以内にドローン100の着陸又は圃場403からの退出が予定されていることに基づいて、着陸位置を決定する処理を実行してもよい。
【0091】
なお、着陸位置決定部23は、ドローンシステム500内に移動体406aが複数含まれている場合は、当該着陸位置決定部23を有するドローン100の着陸が予定されている移動体の停止位置に基づいて、ドローン100の着陸位置を決定してもよい。また、着陸位置決定部23は、着陸が予定されている移動体上に着陸できない場合、他方の移動体上に着陸してもよい。
【0092】
●フローチャート
以上説明した実施例の特徴ある構成部分の動作を説明する。図15に示すように、まず、移動体406aの離着陸ポート406へのドローン100cの帰還を検知する(S1)。
【0093】
離着陸ポート406へのドローン100cの帰還に基づいて、この帰還が、減少性因子の補充ないし更新(薬剤補充や充電)目的によるものか否かを判断する(S2)。
【0094】
S1で帰還が、減少性因子の補充ないし更新目的によるものであった場合、薬剤補充や充電、を行って再離陸に要する時間tと、その時点で残存している全作業を帰還していないドローン100a、100bに割当てて作業をさせた場合に要する時間tと算出して比較し、この結果、t>tとなるか否かを判断する(S3)。
【0095】
一方、S2で帰還が、減少性因子の補充ないし更新目的によるものではなく、操作者の任意の操作による場合は、S3をスキップする。
【0096】
S3で、t>tとなる条件が満たされた場合、さらに、残存している全作業を帰還していないドローンが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りているか否かを判定する(S4)
【0097】
S2で帰還が、減少性因子の補充ないし更新目的によるものではなかった場合も、上記S4の判定を行う。
【0098】
S4で、残存している全作業を帰還していないドローが処理する上で当該帰還していないドローンの有する前記因子が足りていると判断された場合は、残存している作業を、帰還していないドローン100a,100bへ再配分する処理を行い(S5)、これを帰還していないドローン100a,100bへと指示し(S6)、残存している作業を帰還していないドローン100a,100bにて処理する。
【0099】
一方、S3またはS4で条件を満たさなかった場合は、帰還したドローン100cへの補充を指示し(S7)、補充完了後、帰還したドローン100c(S8)を再離陸させ、残存している作業を当初の区分に従い、3機のドローン100a,100b,100cにて処理する。
【0100】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途のドローン全般に適用可能である。特に、自律的に動作する機械に適用可能である。
【0101】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本願発明にかかるドローンシステムにおいては、複数のドローンを用い、作業対象領域についてそれぞれのドローンに割り振られた飛行経路に従い作業を行うにおいて、各ドローンの作業の進行状況に差異が生じた場合であっても、各ドローンへの作業割当ての再配分を図ることができるため、作業の効率化が図られ、作業時間の短縮化させることができる。また、操作者が任意に1乃至複数のドローンを撤収させた場合であっても、残りの作業を滞りなく完了させることが可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15