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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】フロート
(51)【国際特許分類】
   E01D 15/14 20060101AFI20220610BHJP
   B63B 35/34 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
E01D15/14
B63B35/34 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021529356
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011960
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591181126
【氏名又は名称】株式会社トシプラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利川 暉
(72)【発明者】
【氏名】利川 舞子
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-321176(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1363508(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-0936513(KR,B1)
【文献】特開平1-193070(JP,A)
【文献】実開昭51-130585(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 15/14
B63B 35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載面と、この搭載面とは反対側に位置する底面と、これら両面の各周縁間に設けられた外周面とを有し、これらの面で囲まれる内部が中空である合成樹脂製の外中空体と、
この外中空体と同等の合成樹脂で形成され、一端部が前記搭載面に、他端部が前記底面に、それぞれ溶着された中空の内中空体と、を備え、
前記外中空体の外周面と前記内中空体の外周面との間に中空部が存することを特徴とするフロート。
【請求項2】
請求項1に記載のフロートであって、
前記内中空体は、前記外中空体の搭載面の中央部に溶着されていることを特徴とするフロート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフロートであって、
前記内中空体の両側縁も前記外中空体の外周面に溶着されていることを特徴とするフロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のフロートに関する。
【背景技術】
【0002】
海や湖沼、ダム等の水面に浮かべられ、浮き桟橋や水上歩道等に使用されるフロートとして、外中空体と該外中空体の内部に配された内中空体とを有する二重構造のフロートが知られている(特許文献1参照)。フロートが二重構造となっていることにより、外中空体が損傷した場合であっても、内中空体によって、フロートの浮揚機能が失われないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-321176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように、外中空体の搭載面の内面と内中空体との間に中空部が存在するフロートの構造では、搭載面を支持する構造が存しないことから、耐荷重性及び耐久性に乏しいという問題があった。また、外中空体及び内中空体が異なる材質から形成されている場合には、フロートを解体して外中空体及び内中空体を別々に廃棄する必要があることから、廃棄が煩雑となるという問題があった。さらに、外中空体及び内中空体が共にリサイクル可能な材料の場合はともかく、いずれか一方がリサイクル不可の材料の場合は、廃棄時に分別処理が必要となりより一層廃棄作業が煩雑になるばかりか、リサイクル不可の材料は産業廃棄物となるため、環境負荷を高めてしまうという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、耐荷重性及び耐久性に優れ、かつ、廃棄が容易な二重構造のフロートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願記載のフロートは、搭載面と、この搭載面とは反対側に位置する底面と、これら両面の各周縁間に設けられた外周面とを有し、これらの面で囲まれる内部が中空である合成樹脂製の外中空体と、この外中空体と同等の合成樹脂で形成され、一端部が前記搭載面に、他端部が前記底面に、それぞれ溶着された中空の内中空体と、を備え、前記外中空体の外周面と前記内中空体の外周面との間に中空部が存することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記フロートにおいて、前記内中空体は、前記外中空体の搭載面の中央部に溶着されていてもよい。
【0008】
この特定事項により、搭載対象が搭載面に搭載されたときに最もたわみやすい中央部が内中空体によって補強される。
【0009】
また、前記フロートにおいて、前記内中空体の両側縁も前記外中空体の外周面に溶着されていてもよい。
【0010】
この特定事項により、外中空体の搭載面を支持する内中空体が外中空体の外周面によって支持されることから、フロートの耐荷重性及び耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一端部が前記搭載面に、他端部が前記底面に、それぞれ溶着された内中空体が外中空体の底面を基端として搭載面を支持する支持構造物として機能することから、耐荷重性及び耐久性に優れた二重構造のフロートが実現する。また、内中空体が外中空体と同等の合成樹脂で形成されていることから、廃棄性に優れた二重構造のフロートが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1におけるフロートを示す斜視図である。
図2】実施形態1におけるフロートの縦断面を示す断面斜視図である。
図3】複数のフロートが連結された状態を示す斜視図である。
図4】実施形態1におけるフロートの製造工程(1)を示す概略正面図である。
図5】実施形態1におけるフロートの製造工程(2)を示す概略正面図である。
図6】実施形態1におけるフロートの製造工程(3)を示す概略正面図である。
図7】実施形態1におけるフロートの製造工程(3)を示す概略平面図である。
図8】実施形態2におけるフロートを示す斜視図である。
図9】実施形態2におけるフロートの製造工程(1)を示す概略側面図である。
図10】実施形態2におけるフロートの製造工程(2)を示す概略側面図である。
図11】実施形態2におけるフロートの製造工程(3)を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品等には同一の符号を付しており、それら部品等の名称及び機能も同じである。従って、それらの部品等について重複する説明は省略している。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1におけるフロートAを示す斜視図である。図2は、実施形態1におけるフロートAの縦断面を示す断面斜視図である。図3は、複数のフロートAが連結された状態を示す斜視図である。
【0015】
フロートAは、外中空体1と、内中空体2と、を有している(図1図2参照)。
【0016】
外中空体1は、搭載面10と、底面11と、外周面12~19と、を有している(図1図2参照)。搭載面10、底面11及び外周面12~19で囲まれる内部は、中空となっている。本実施形態において、外中空体1は、変形八角柱状に形成されている。外周面12,16はそれぞれ外中空体1の前部及び後部に位置し、外周面14,18はそれぞれ外中空体1の各側部に位置している。外周面13,15,17,19は、それぞれ、外周面12,14,16,18を接続する斜面となっている。
【0017】
搭載面10は、人等の搭載対象が搭載される面であり、外中空体1の上部に設けられている。底面11は、搭載面10とは反対側、すなわち、外中空体1の下部に位置している。外周面12~19は、それぞれ搭載面10の各周縁及び底面11の各周縁間に設けられている。
【0018】
外中空体1は、合成樹脂、例えば、ポリエチレンで形成されている。
【0019】
本実施形態において、外中空体1の搭載面10の各周縁の角部の半径(角R)は、意匠上、底面11の各周縁の角部の半径(角R)よりも小さく設定されている(図2参照)。もちろん、外中空体1は、上記の形状に限られず、上下対称に形成されていてもよい。
【0020】
内中空体2は、天面20と、底面21と、外周面22~25と、を有している(図1図2参照)。天面20、底面21及び外周面22~25で囲まれる内部は、中空となっている。本実施形態において、内中空体2は、四角柱状に形成されている。
【0021】
内中空体2の上端部である天面20は、外中空体1の搭載面10に溶着されている。内中空体2の下端部である底面21は、外中空体1の底面11に溶着されている。これにより、内中空体2が外中空体1の底面11を基端として搭載面10を支持する支持構造物として機能することから、フロートAの耐荷重性及び耐久性が確保される。
【0022】
本実施形態において、内中空体2は、外中空体1の搭載面10の中央部に溶着されている。これにより、搭載対象が搭載面10に搭載されたときに最もたわみやすい中央部が内中空体2によって補強される。
【0023】
また、本実施形態において、内中空体2の両側縁231,251も外中空体1の外周面14,18に溶着されている。具体的には、内中空体2の幅が外中空体1の外周面14,18の内面間の距離と同等に設定され、内中空体2の両側縁231,251をそれぞれ含む外周面23,25が外中空体1の外周面14,18に溶着されている(図1参照)。これにより、外中空体1の搭載面10を支持する内中空体2が外中空体1の外周面14,18によって支持されることから、内中空体2の両側縁231,251が外中空体1の外周面14,18に溶着されていない場合と比較して、フロートAの耐荷重性及び耐久性が向上する。
【0024】
外中空体1の外周面12~19と内中空体2の外周面22~25との間には、中空部3が存している(図1図2参照)。本実施形態において、上記のように内中空体2の両側縁231,251が外中空体1の外周面14,18に溶着されていることから、中空体3は、内中空体2によって、正面側の中空部3aと、背面側の中空部3bと、に分割されている。このような中空体3が存していることにより、外中空体1が損傷した場合であっても、内中空体2によって、フロートAの浮揚機能が失われないようになっている。
【0025】
内中空体2は、外中空体1と同等の合成樹脂で形成されている。これにより、フロートAの廃棄時に、内中空体2を外中空体1から分離する必要がなく、外中空体1及び内中空体2を一括で廃棄することが可能となる。
【0026】
上記の構造に加えて、外中空体1の外周面13,15,17,19には、複数のフロートAを前後左右に並置させた状態でこれらを互いに連結するための連結部4及び被連結部5が設けられている(図1図3参照)。連結部4及び被連結部5は、ともにフロートAの外側に延びる有孔舌片状に形成され、連結時に一方が他方の上方又は下方に位置するように相互にレベル差を付けて配置されており、互いに重ね合わされた状態で連結具が貫通されることにより互いに連結される。連結具は、例えば、図3に示すようなボルトB及びナットNであってもよいし、係止ピンLであってもよい。係止ピンLの傘の形状に合わせて、搭載面10の各周縁が調整されていてもよい。また、図3に示すように、複数フロートAのうち、任意のフロートAの連結部4及び被連結部5に、複数フロートAを外力から保護するバンパーBMを取り付けてもよい。
【0027】
続いて、本実施形態におけるフロートAを製造する製造工程の一例を説明する。
【0028】
図4図7は、実施形態1におけるフロートの各製造工程を示す概略正面図である。
【0029】
図4に示すように、製造工程(1)では、予め成形された内中空体2が、保持具9にセットされた状態で、一対の金型8,8の間に導入される。
【0030】
図5に示すように、製造工程(2)では、内中空体2の天面20及び底面21と金型8,8との間にそれぞれ板状のパリソンPが垂下される。
【0031】
図6及び図7に示すように、製造工程(3)では、金型8が閉じられることによりパリソンP及び内中空体2が金型8,8によって挟み込まれ、内中空体2は、外中空体1の搭載面10及び底面11に溶着される。この状態で金型8,8の内部空間と連通する吸引口80から真空吸引が行われると、この真空吸引によってパリソンPが金型8,8に密着することにより、外中空体1が形成される。
【0032】
(実施形態2)
図8は、実施形態2におけるフロートAを示す斜視図である。
【0033】
実施形態2におけるフロートAの内中空体2は、天面20と、底面21と、外周面26と、を有する円筒状に形成されている(図8参照)。外中空体1の外周面12~19と内中空体2の外周面26との間には、中空部3が存している(図8参照)。
【0034】
続いて、本実施形態におけるフロートAを製造する製造工程の一例を説明する。
【0035】
図9図11は、実施形態2におけるフロートAの各製造工程を示す概略側面図である。
【0036】
図9に示すように、製造工程(1)では、予め成形された内中空体2が、保持具9にセットされた状態で、一対の金型8,8の間に導入される。保持具9の先端部には、金型8,8の内部空間に圧縮空気を吹き出す吹出口90が設けられている。
【0037】
図10に示すように、製造工程(2)では、内中空体2を囲うように、円筒状のパリソンPが図示しない成形機から垂下される。
【0038】
図11に示すように、製造工程(3)では、金型8が閉じられることによりパリソンP及び内中空体2が金型8,8によって挟み込まれ、内中空体2は、外中空体1の搭載面10及び底面11に溶着される。続いて吹出口90から金型8,8の内部空間へ圧縮空気が吹き出される。この圧縮空気のブローによってパリソンPが金型8,8に密着することにより、外中空体1が形成される。
【0039】
上記の実施形態及び実施例はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態及び実施例のみにより解釈されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
A フロート
1 外中空体
10 搭載面
11 底面
2 内中空体
20 天面
21 底面
3 中空部
8 金型
9 保持具
P パリソン
【要約】
一端部が前記搭載面に、他端部が前記底面に、それぞれ溶着された内中空体が外中空体の底面を基端として搭載面を支持する支持構造物として機能することから、耐荷重性及び耐久性に優れた二重構造のフロートが実現する。また、内中空体が外中空体と同等の合成樹脂で形成されていることから、廃棄性に優れた二重構造のフロートが実現する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11