(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】金属製フィルターエレメント
(51)【国際特許分類】
B01D 29/01 20060101AFI20220610BHJP
B01D 39/10 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B01D29/04 510C
B01D39/10
(21)【出願番号】P 2022048449
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清貴
(72)【発明者】
【氏名】本多 直人
(72)【発明者】
【氏名】横山 絢香
(72)【発明者】
【氏名】出口 智恵
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-85522(JP,A)
【文献】実開平2-105645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/04
B01D 39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過部材と、該ろ過部材の周縁端部に配置される端部部材との接合部を有する金属製のフィルターエレメントであって、
前記ろ過部材は、ろ材と、該ろ材の一方又は両方の面に配置される補強部材とで少なくとも構成され、前記端部部材は、前記ろ過部材の周縁端部を両面から挟んでカシメる部材であり、前記ろ過部材の周縁端部は、前記ろ材が折り返された折り返し端部を有しており、該折り返し端部は、前記端部部材に接しながら該端部部材によってカシメられている、ことを特徴とする金属製フィルターエレメント。
【請求項2】
前記折り返し端部は、前記ろ材が前記補強部材の端の上に折り返されている、又は、前記ろ材が該ろ材自体の上に折り返されている、請求項1に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項3】
ディスク型フィルターエレメント、円筒型フィルターエレメント、又は、プリーツ型フィルターエレメント、のいずれかである、請求項1又は2に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項4】
前記円筒型フィルターエレメントにおいて、前記ろ過部材は、ろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる円筒型の部材であり、溶接された溶接部が軸方向の全長にわたって形成されている、請求項3に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項5】
前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、前記ろ過部材は、ひだ折りされたろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる筒状部材であり、溶接された溶接部が軸方向の全長にわたって形成されている、請求項3に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項6】
前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、ひだ折りされたプリーツ形態は前記ろ材を折り返した後に形成されてなり、折り返された前記折り返し端部は絞り加工された後に前記端部部材によってカシメられている、請求項5に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項7】
請求項4に記載の前記円筒型フィルターエレメント又は請求項5若しくは請求項6に記載の前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、前記溶接部のうち前記端部部材でカシメられる溶接端部を覆う大きさのシール材が該溶接端部上に配置されて前記端部部材でカシメられている、金属製フィルターエレメント。
【請求項8】
前記ディスク型及び前記円筒型のフィルターエレメントの場合には、前記折り返し端部が圧縮加工されており、圧縮加工された前記折り返し端部は、前記端部部材によってカシメられており、前記プリーツ型フィルターエレメントの場合には、前記折り返し端部が絞り加工されており、絞り加工された前記折り返し端部は、前記端部部材によってカシメられている、請求項3に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項9】
前記ろ材は、金属ファイバー構造体、金属製ファインメッシュ構造体、又はそれらの組み合わせであり、前記補強部材は、金属網である、請求項1~8のいずれか1項に記載の金属製フィルターエレメント。
【請求項10】
前記端部部材は、前記折り返し端部をカシメる金属構造体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の金属製フィルターエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製フィルターエレメントに関する。さらに詳しくは、本発明は、シール性を高めたディスク型、円筒型、プリーツ型等の金属製フィルターエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製フィルターエレメントには各種のものが存在し、例えば、円盤状プレートからなるディスク型フィルターエレメント、円筒型フィルターエレメント、ろ過表面積を高めるためにひだ状に繰り返し折り返されたろ過部分を有するプリーツ型フィルターエレメント等が挙げられる。
【0003】
これら金属製のフィルターエレメントは、その耐久性、耐熱性、耐食性等の特性を活用して、液体処理(化学工業の原料・製品、高粘度流体、地下水、プール、水耕栽培、養殖、浴槽水のろ過用途等)、気体処理(スチーム、水素、水蒸気、アンモニア、炭酸ガス、揮発性有機化合物、酸素、窒素等のろ過)、固液分離処理、気液分離処理等に広く使用されている(例えば特許文献1~3)。
【0004】
なかでもプリーツ型フィルターエレメントは、ろ過表面積を高めるためにひだ状に繰り返し折り返されたろ過部分を有しており、その使用用途により、樹脂製のもの、金属製のもの、それらが複合されたもの等が様々提案されている。これらのうち、金属製のプリーツ型フィルターエレメントは、強度、耐食性及び耐熱性に優れ、圧力の高いろ過用途、特殊な液体のろ過用途、逆洗洗浄を行う用途、再生処理を行う用途等に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-191533号公報
【文献】特開2002-252012号公報
【文献】特開2013-31852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした金属製のフィルターエレメントにおいて、ろ過部材は、ろ過部材の周縁端部に配置される端部部材と接合されるが、その接合部でのシール性(気密性)が不十分な場合には、ろ過性能が低下してしまう。ろ過部材と端部部材との接合部は、一般的には、溶接、ろう付け、接着剤、圧入、カシメ等で接続される。溶接による接合は、欠陥の発生を防ぐ高度な熟練技術が必要であり、作業者によってシール性にばらつきが生じ易い。また、溶接時に溶接焼けが生じる場合には、その溶接焼けを除去するための後処理を行わなければならず、工数が多くなってしまう。また、ろう付けや接着剤による接合は、ろう材や接着剤の材質によって使用環境が限定されてしまう。圧入やカシメによる接合は工程が単純で効率的であるが、接合部で微細な隙間が生じて漏れが発生することがあり、十分なシール性が得られない場合がある。こうした課題は、ろ過部材と端部部材とを接合するディスク型フィルターエレメント、円筒型フィルターエレメント、プリーツ型フィルターエレメント等において同様である。
【0007】
特に高いろ過精度を有するろ材を使用する場合においては、ろ材が薄く強度が小さくなることから、補強部材(補強層ともいう。)をろ材の片面又は両面に設けて補強する必要がある。補強部材2をろ材1の片面S2に設けた場合(
図17(a)及び
図19(a)を参照)、ろ過方向Fが制限されて使用形態が制限されるものの、ろ材1の片面S1が周縁端部12の面S3として端部部材21に直接接しカシメられるのでシールは可能である。しかし、補強部材2をろ材1の両面S1,S2に設けた場合(
図17(b)及び
図19(b)を参照)は、補強部材2を経由(図中の矢印)した漏れが生じてしまう。補強部材2を両面S1,S2に使用することで発生する漏れは、ディスク型、円筒型、プリーツ型の各フィルターエレメントで生じ得る。
【0008】
また、円筒型とプリーツ型のフィルターエレメントでは、溶接により筒状形態にしている。しかし、その溶接部は中実であるため、その周りを通過する漏れが生じ易いことがある。さらに、溶接部において、溶接ビードに凹凸がなくシールに適したものであればよいが、実際は溶接ビードが平坦になることは少ない。また、ろ過部材と溶接部との強度が違うため、カシメによるシールは難しい。また、カシメによってろ過部材の密度は溶接ビード(ろ過部材を溶かしたもの)の密度に近づくが、カシメによっても生じた隙間を埋められないので漏れが生じやすい。
【0009】
本発明は、ろ過部材と端部部材との接合部のシール性を高めた新しいシール構造によって上記課題を解決したものであり、その目的は、シール性を高めたプリーツ型、円筒型、ディスク型等の金属製フィルターエレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に対し、フィルターエレメントのろ過性能を高めるため、ろ過部材と、ろ過部材の周縁端部に配置される端部部材との接合部の構造について検討した結果、高いシール性を実現した金属製フィルターエレメントを、高度な溶接技術を要さず、寸法管理も容易で、より安価に製造することができる新しいシール構造を開発して本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明に係る金属製フィルターエレメントは、ろ過部材と、該ろ過部材の周縁端部に配置される端部部材との接合部を有する金属製のフィルターエレメントであって、前記ろ過部材は、ろ材と、該ろ材の一方又は両方の面に配置される補強部材とで少なくとも構成され、前記端部部材は、前記ろ過部材の周縁端部を両面から挟んでカシメる部材であり、前記ろ過部材の周縁端部は、前記ろ材が折り返された折り返し端部を有しており、該折り返し端部は、前記端部部材に接しながら該端部部材によってカシメられている、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、ろ過部材の周縁端部は、ろ材が折り返された折り返し端部を有しており、その折り返し端部は端部部材に直接触れながら端部部材によってカシメられているシール構造で構成されているので、厚みが増したろ材がカシメられてろ材の変形量が増し、シール性が低下し易いろ過部材の周縁端部と端部部材との接合部でのシール性をさらに高めることができる。また、折り返し端部が端部部材に接しながらカシメられているので、補強部材を通しての漏れがない。その結果、従来のような溶接時に生じる問題(作業者によるバラツキ、溶接ヤケ、材質の劣化、溶接歪み、工程増加等)が生じることがなく、また、カシメによる機械的な工程で安定したシール性を確保でき、低コストでの製造が可能になる。また、機械的なカシメでろ過部材の周縁端部を接合してシールするので、ろう材や接着剤を使用した場合のように、使用環境が限定されてしまうことがない。
【0013】
本発明に係る金属製フィルターエレメントにおいて、前記折り返し端部は、前記ろ材が前記補強部材の端の上に折り返されている、又は、前記ろ材が該ろ材自体の上に折り返されている。
【0014】
特に高いろ過精度を有するろ材を使用する場合、ろ材が薄く強度が小さくなる。この発明によれば、そうしたろ材が補強部材の端の上に折り返されている又は該ろ材自体の上に折り返されているので、ろ材が端部部材に直接接してカシメられる。その結果、ろ過部材の周縁端部と端部部材との接合部での高いシール性を発揮できる。
【0015】
本発明に係る金属製フィルターエレメントは、ディスク型フィルターエレメント、円筒型フィルターエレメント、又は、プリーツ型フィルターエレメント、のいずれかである。
【0016】
この発明によれば、ディスク型、円筒型及びプリーツ型のいずれについても、シール性の良いフィルターエレメントとすることができる。
【0017】
前記円筒型フィルターエレメントにおいて、前記ろ過部材は、ろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる円筒型の部材であり、溶接された溶接部が軸方向の全長にわたって形成されている。
【0018】
この発明によれば、円筒型フィルターエレメントにおいても、ろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる円筒型の部材に形成された溶接部は、軸方向の全長にわたって形成されているが、高いシール性を有している。なお、「対向辺同士」には、円筒型にした場合の円形の端部になる側の辺は含まない。
【0019】
前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、前記ろ過部材は、ひだ折りされたろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる筒状部材であり、溶接された溶接部が軸方向の全長にわたって形成されている。
【0020】
この発明によれば、プリーツ型フィルターエレメントにおいては、ひだ折りされたろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる筒状部材に形成された溶接部は、軸方向の全長にわたって形成されているが、高いシール性を有している。なお、「対向辺同士」には、ろ材が折り返されている辺は含まない。
【0021】
前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、ひだ折りされたプリーツ形態は前記ろ材を折り返した後に形成されてなり、折り返された前記折り返し端部は絞り加工された後に前記端部部材によってカシメられている。
【0022】
この発明によれば、ひだ折りされたプリーツ形態はろ材を折り返した後に形成され、折り返された折り返し端部は絞り加工された後に端部部材によってカシメられている。このときの絞り加工は、折り返し端部を構成するろ材同士を密着させ且つ表面が平坦になった状態で重ね合わせるので、端部の構造形態(厚さ等の寸法やろ材の密集度等)が一定になり、シール性をより安定に高めることができる。
【0023】
円筒型及び前記プリーツ型フィルターエレメントにおいて、前記溶接部のうち前記端部部材でカシメられる溶接端部を覆う大きさのシール材が該溶接端部上に配置されて前記端部部材でカシメられている。
【0024】
この発明によれば、溶接部のうち端部部材でカシメられる溶接端部を覆う大きさのシール材がその溶接端部上に配置されて端部部材でカシメられているので、溶接端部上に設けられたシール材がより一層シール性を高めるように作用する。この手段は、特にろ過精度が高いろ材を使用したときに好ましく、凹凸になり易い中実の溶接部の周りを通過する漏れを防ぐことができ、また、強度や密度が違うろ過部材と溶接部とをカシメた場合に生じる隙間を埋めてシール性をさらに高めることができる。
【0025】
本発明に係る金属製フィルターエレメントにおいて、前記ディスク型及び前記円筒型のフィルターエレメントの場合には、前記折り返し端部が圧縮加工されており、圧縮加工された前記折り返し端部は、前記端部部材によってカシメられており、前記プリーツ型フィルターエレメントの場合には、前記折り返し端部が絞り加工されており、絞り加工された前記折り返し端部は、前記端部部材によってカシメられている。
【0026】
この発明はディスク型、円筒型、プリーツ型のいずれであっても、ろ材が折り返された端部(折り返し端部)が加工されている場合である。この発明によれば、ディスク型及び円筒型のフィルターエレメントの場合には折り返し端部が圧縮加工(例えばプレスによる圧縮加工)され、プリーツ型フィルターエレメントの場合には折り返し端部が絞り加工されているので、折り返し端部の構造形態(厚さ等の寸法や、ろ材の集密度等)が一定になり、端部部材への取り付けが容易になるとともに、カシメ後のシール性も安定且つ向上させることができる。特にプリーツ型フィルターエレメントにおいては、折り返し端部のろ材が常に接しており且つ厚みも増すので、カシメ後のシール性をより一層安定且つ向上させることができる。
【0027】
上記したように、本発明で提案する新しいシール構造は、ディスク型、円筒型及びプリーツ型のフィルターエレメントのいずれについても適用できる。共通する技術要素は、ろ過部材の周縁端部において、ろ材が折り返された折り返し端部を有し、その折り返し端部を端部部材でカシメている点である。それらのうち、円筒型とプリーツ型のフィルターエレメントでは筒状にするための溶接が行われており、プリーツ型のフィルターエレメントではさらにひだ折りが行われているので、そうした溶接やひだ折りに対する措置を技術要素として加えている。
【0028】
本発明に係る金属製フィルターエレメントにおいて、前記ろ材は、金属ファイバー構造体、金属製ファインメッシュ構造体、又はそれらの組み合わせであり、前記補強部材は、金属網である。この発明によれば、高いシール性を実現して様々な用途に適用できる。
【0029】
本発明に係る金属製フィルターエレメントにおいて、前記端部部材は、前記折り返し端部をカシメる金属構造体である。この発明によれば、機械的なカシメ加工によりバラツキのない安定したシール性を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ろ過部材と端部部材との接合部のシール性を高めた新しいシール構造によって、シール性を高めたディスク型、円筒型、プリーツ型等の金属製フィルターエレメントを提供することができる。その結果、高いシール性を実現した金属製フィルターエレメントを、高度な溶接技術を要さず、寸法管理も容易で、より安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る金属製フィルターエレメントを構成するシール構造の一例を示す概略構成図である。
【
図2】シール構造を構成する折り返し端部の他の形態の例を示す概略構成図である。
【
図3】
図1に示すシール構造を備えたディスク型フィルターエレメントの一例を示す全体構造図である。
【
図4】
図1に示すシール構造を備えた円筒型フィルターエレメントの一例を示す全体構造図である。
【
図5】
図1に示すシール構造を備えたプリーツ型フィルターエレメントの一例を示す全体構造図である。
【
図6】
図1に示すシール構造の一例を示す詳細な説明図であり、(a)は補強部材の端からろ材が突出している形態であり、(b)は突出した先端部を折り返した形態であり、(c)は折り返し端部が端部部材に接しながらその端部部材によってカシメられている形態である。
【
図7】
図1に示すシール構造をプリーツ型フィルターエレメントに適用した一例を示す詳細な説明図(その1)であり、(a)は補強部材の端からろ材を突出させたろ過部材用原反の形態であり、(b)は突出した突出部を折り返した形態であり、(c)は折り返し端部をひだ折りした形態である。
【
図8】
図1に示すシール構造をプリーツ型フィルターエレメントに適用した一例を示す詳細な説明図(その2)であり、(d)はひだ折りされたろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接して筒状にした形態であり、(e)は周縁端部を絞り加工して折り返し端部を構成するろ材同士を密着させた状態で重ね合わせ、周縁端部の周面を平坦にした形態であり、(f)は絞り加工された折り返し端部がリング状の端部部材に接しながら該端部部材によってカシメられている形態である。
【
図9】プリーツ型フィルターエレメントについて、ひだ折りされたろ過部材用原反の対向辺同士を合わせて溶接してなる筒状のろ過部材において、溶接された溶接部が軸方向の全長にわたって形成されている形態の一例である。
【
図10】
図9の形態において、溶接部のうち端部部材でカシメられる溶接端部を覆う大きさのシール材がその溶接端部上に配置されて端部部材でカシメられている形態の一例である。
【
図11】(a)は、
図9に示す形態に絞り加工を施し、
図8(e)の溶接線の側から見た形態の一例を示す図であり、(b)は、
図10に示す形態に絞り加工を施し、
図8(e)の溶接線の側から見た形態の一例を示す図である。
【
図12】ろ材の形態例であり、(a)は金属ファイバー構造体からなるろ材の一例を示す拡大写真であり、(b)及び(c)は金属製ファインメッシュ構造体からなるろ材の例を示す拡大写真である。
【
図13】補強部材を配置したろ過部材の一例を示す拡大写真である。
【
図14】(a)ディスク型フィルターエレメントの周縁端部に接合される端部部材の一例を示す断面図であり、(b)端部部材の他の一例を示す断面図であり、(c)端部部材のさらに他の一例を示す断面図である。
【
図15】(a)は円筒型フィルターエレメントの周縁端部に接合される端部部材の一例を示す図であり、(b)はプリーツ型フィルターエレメントの周縁端部に接合される端部部材の一例を示す図であり、(c)は端部部材の一例を示す断面図である。
【
図16】ディスク型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態を説明するための説明図であり、(a)は
図1と同じ形態でろ材を折り返した場合であり、(b)はろ材を補強部材とともに折り返した場合である。
【
図17】ディスク型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態について、ろ材を折り返していない場合の接合形態を比較説明するための説明図であり、(a)はろ材の片面だけに補強部材が配置されている例であり、(b)はろ材の両面に補強部材が配置されている例であり、(c)は(b)において周縁端部の両面にシール材が設けられている例である。
【
図18】円筒型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態を説明するための説明図であり、(a)は
図1と同じ形態でろ材を折り返した場合であり、(b)はろ材を補強部材とともに折り返した場合である。
【
図19】円筒型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態について、ろ材を折り返していない場合の接合形態を比較説明するための説明図であり、(a)はろ材の片面だけに補強部材が配置されている例であり、(b)はろ材の両面に補強部材が配置されている例であり、(c)は(b)において周縁端部の両面にシール材が設けられている例である。
【
図20】円筒型フィルターエレメントの溶接部の周縁端部でのシール形態についての断面図であり、(a)は溶接部上にシール材を配置しない例であり、(b)は(a)をカシメた後の例であり、(c)は溶接部上にシール材を配置した例であり、(d)は(c)をカシメた後の例である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る金属製フィルターエレメントについて図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0033】
[金属製フィルターエレメント]
本発明に係る金属製フィルターエレメント10は、
図1~
図7に示すように、ろ過部材11と、ろ過部材11の周縁端部12に配置される端部部材21との接合部31を有するものであって、ろ過部材11は、ろ材1と、ろ材1の一方の面又は両方の面(S1及び/又はS2)に配置される補強部材2とで少なくとも構成され、端部部材21は、ろ過部材11の周縁端部12を両面S3,S4から挟んでカシメる部材であり、ろ過部材11の周縁端部12は、ろ材1が折り返された折り返し端部3aを有しており、その折り返し端部3aは、端部部材21に接しながら端部部材21によってカシメられている、ように構成した点に特徴がある。
【0034】
こうした金属製フィルターエレメント10は、ろ過部材11の周縁端部12において、ろ材1が折り返された折り返し端部3aを有しており、その折り返し端部3aは端部部材21に接しながらその端部部材21によってカシメられているシール構造で構成されているので、厚みが増したろ材1がカシメられてろ材1の変形量が増し、シール性が低下し易いろ過部材11の周縁端部12でのシール性をさらに高めることができる。また、折り返し端部3aが端部部材21に接しながらカシメられているので、補強部材2を通しての漏れがない。その結果、従来のような溶接時に生じる問題(作業者によるバラツキ、溶接ヤケ、材質の劣化、溶接歪み、工程増加等)が生じることがなく、また、カシメによる機械的な工程で安定したシール性を確保でき、低コストでの製造が可能になる。また、機械的なカシメでろ過部材11の周縁端部12をシールするので、ろう材や接着剤を使用した場合のように、使用環境が限定されてしまうことがない。
【0035】
(フィルターエレメントの型形態)
この金属製フィルターエレメント10は、ろ過部材11と端部部材21との接合部31のシール性を高めた新しいシール構造によって、シール性を高めたディスク型(
図3)、円筒型(
図4)、プリーツ型(
図5)等の金属製フィルターエレメントを提供することができる。なお、これら各種の金属製フィルターエレメント10(10A,10B,10C)は、その用途に応じて、配管やろ過ハウジング内に設置され、ろ過処理ユニットを構成している。
【0036】
これらの金属製フィルターエレメント10の特徴的なシール構造は、
図1及び
図2(a)~(d)に示す種々の形態のように、折り返し端部3aが、ろ材1が補強部材2の端の上に折り返されていてもよいし、ろ材1がろ材自体の上に折り返されていてもよい。特に高いろ過精度を有するろ材1を使用する場合、ろ材1が薄く強度が小さくなるが、折り返し端部3aは、そうしたろ材1が補強部材2の端の上に折り返されている又は該ろ材自体の上に折り返されているように構成できる。これら折り返し端部3aは、いずれも、端部部材21に直接触れた状態で端部部材21でカシメられているとともに、折り返しによって厚みが増したろ材1が補強部材2とともにカシメられてろ材1の変形量が増すので、シール性が低下し易いろ過部材1の周縁端部12と端部部材21との接合部31でのシール性が高められている。本発明では、こうした特徴的なシール構造により、接合部31で高いシール性を実現できる。
【0037】
こうしたシール構造は、ディスク型(10A)、円筒型(10B)及びプリーツ型(10C)のフィルターエレメントのいずれについても適用できる。共通する技術要素は、ろ過部材11の周縁端部12において、ろ材1が折り返された折り返し端部3aを有し、その折り返し端部3aを端部部材21でカシメている点である。それらのうち、円筒型とプリーツ型のフィルターエレメントでは筒状にするための溶接が行われており、プリーツ型フィルターエレメントではさらにひだ折りが行われているので、後述するように、そうした溶接やひだ折りに対する措置を技術要素として加えている。
【0038】
ディスク型フィルターエレメント10Aは、
図3に示すように、ディスク型のろ過部材11で構成されている。ディスク型のろ過部材11は、円盤状の本体部13と、その本体部13の周縁の端部に位置するリング状の周縁端部12とで構成されている。リング状の周縁端部12は、例えば
図14(a)に示すように、2つの部材22,23を組み合わせた複合型の端部部材21Bで接合されていてもよいし、
図14(b)(c)に示すように、1つの部材25を曲げ加工してなる端部部材21で接合されていてもよく、
図1及び
図2(a)~(d)に示すシール構造のいずれかを構成している。なお、このディスク型のろ過部材11は、後述する円筒型やプリーツ型のようにろ過部材用原反11aを溶接して円筒形にしたものとは異なり、所定形状に予め加工したろ材1と補強部材2とを重ね合わせるが、その重ね合わせの際に、補強部材2の端からろ材1が突出するように重ね合わせる。そして、その後に、その突出部3が折り返された折り返し端部3aをなすように加工し、その折り返し端部3aが、端部部材21に接しながら該端部部材によってカシメられるように加工されることが望ましいが、こうした方法に限定されない。
【0039】
円筒型フィルターエレメント10Bは、
図4に示すように、平面状のろ過部材用原反11aを円筒型にしたろ過部材11で構成されている。ろ過部材11は、筒状の本体部13と、その本体部13の軸方向(長手方向)Yの端部に位置する円形状の周縁端部12とで構成されている。円形状の周縁端部12は、リング状の端部部材21で接合されて、
図1及び
図2(a)~(d)に示すシール構造のいずれかを構成している。なお、この円筒型フィルターエレメント10Bにおいても、平面状のろ過部材用原反11aを丸め、対向辺同士11b,11bを合わせ、その合わせ部を溶接して作製される。周縁端部12は、後述するプリーツ型フィルターエレメント10Cの場合のようにひだ状に折られていない。円筒型フィルターエレメント10Bでの「対向辺同士」には、円筒型にした場合の円形の端部になる側の辺は含まない。
【0040】
プリーツ型フィルターエレメント10Cは、
図5、
図7及び
図8に示すように、平面状のろ過部材用原反11aをひだ状に繰り返し折り返してなる筒状のろ過部材11で構成されている。ろ過部材11は、筒状の本体部13と、その本体部13の軸方向(長手方向)Yの端部に位置する円形状の周縁端部12とで構成されている。円形状の周縁端部12も本体部13と同様にひだ状に折り返されており、その円形状の周縁端部12は、リング状の端部部材21で接合され、
図1及び
図2(a)~(d)に示すシール構造のいずれかを構成している。このプリーツ型フィルターエレメント10Cでは、ろ材1が折り返された折り返し端部3aがひだ折りされることになる。なお、プリーツ型フィルターエレメント10Cでは、
図7及び
図8に示すように、平面状のろ過部材用原反11aをひだ状に繰り返し折り返して筒状のろ過部材11を形成するが、その筒状のろ過部材11は、ひだ折りされた後のろ過部材用原反11aを丸め、対向辺同士11b,11bを合わせ、その合わせ部を溶接して作製される。プリーツ型フィルターエレメント10Cでの「対向辺同士」には、ろ材1が折り返されている辺は含まない。
【0041】
[各構成要素]
以下に、各構成要素を詳しく説明する。なお、以下においては、主にプリーツ型フィルターエレメント10Cの構成要素について説明するが、ディスク型フィルターエレメント10Aや円筒型フィルターエレメント10Bについての説明も適宜加えている。
【0042】
<ろ過部材>
ろ過部材11は、金属製フィルターエレメント10に目的のろ過性能を発揮させるための構成要素であり、金属製フィルターエレメント10の使用環境や使用目的に応じた材質が適用され、目的に応じた構造形態に加工されてなるものである。本発明でのろ過部材11は、
図2及び
図13に示すように、ろ材1と、そのろ材1の一方の面又は両方の面(S1及び/又はS2)に配置された補強部材2とで少なくとも構成されている。ろ材1の一方の面又は両方の面(S1及び/又はS2)とは、
図2(a)(b)に示すように、補強部材2がろ材1の片面(S1又はS2)に配置されていてもよいし、
図2(c)(d)及び
図13(b)に示すように、補強部材2がろ材1の両面(S1及びS2)に配置されていてもよいことを意味している。また、「少なくとも」としたのは、ろ過部材11の機能を阻害しない範囲で、ろ材1や補強部材2以外の「他の部材」を含んでいてもよいことを意味する。
【0043】
(ろ材)
ろ材1は、ろ過部材11の必須の構成であり、下記で詳しく説明する金属ファイバー構造体、金属製ファインメッシュ構造体、又はそれらの組み合わせであることが好ましい。これら金属ファイバー構造体や金属製ファインメッシュ構造体を構成する金属材質としては、ろ過対象や使用環境に応じて選択されるが、通常は、耐食性のステンレススチール(例えば、JIS標記で言えば、SUS304,SUS316,SUS316L等)を好ましく挙げることができるが、これらに限定されず、各種の合金材料からなるものであってもよい。例えば、鉄、軟鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン、ハステロイ、インコネル等を使用することができる。
【0044】
金属ファイバー構造体は、
図12(a)に示すように、微細な金属繊維からなる構造体のことであり、金属繊維の不織布を好ましく挙げることができるが、これに限定されない。また、微細な繊維の径や長さも特に限定されず、ろ過性能に応じた径や長さのものを採用できる。一例としては、平均径で1~200μm程度の金属繊維で構成されたものを挙げることができる。金属繊維は、同じ又は同程度の繊維径や繊維長さのものであってもよいし、異なる繊維径や繊維長さのものを2種以上複合したものであってもよい。必要に応じて焼結処理してもよい。こうした金属ファイバー構造体は、目的のろ過抵抗を得ることができるように、所定の空隙率を有するように設計できるので、好ましく採用される。また、この金属ファイバー構造体は、そのろ過目的やろ過性能に応じて、単層であってもよいし、同種のものを2以上積層したものであってもよいし、繊維径や繊維長さやろ過性能の異なるものを2以上積層したものであってもよい。
【0045】
こうした金属ファイバー構造体は、繊維径や繊維長さにより「金属製の綿」のようなものとすることができ、圧縮することで容易に密にすることもでき、ろ過性能を任意にコントロールすることができる。また、後述するシール材42としても好ましく適用できるので、シール材42をろ材1と同じ金属製の綿のような金属ファイバー構造体とすることで、全体としてのシール性能をより高めることができる。なお、本出願人が既にパンフレット等で公開している金属ファイバー構造体を適用することが好ましい。
【0046】
金属製ファインメッシュ構造体は、
図12(b)(c)に示すように、微細な金属線からなる金網の構造体のことである。ファインメッシュ構造体は、金属線を織ったもので、その金属線の径は特に限定されず、ファインメッシュ構造体とした後のろ過性能に応じた径の金属線を採用できる。一例としては、平均径で10~300μm程度の金属線で構成されたものを挙げることができる。金属線は、
図12(b)(c)に示すような丸線であれば、同じ又は同程度の径のものであってもよいし、異なる径のものを2種以上複合したものであってもよい。必要に応じて焼結処理してもよい。こうしたファインメッシュ構造体は、目的のろ過抵抗を得ることができるように、所定の空隙率を有するように設計できるので、好ましく採用される。
図12(b)に例示した金属製ファインメッシュ構造体と
図12(c)に示す金属製ファインメッシュ構造体とは織り方が異なっており、
図12(c)の方がより空隙率を小さくしたものである。また、このファインメッシュ構造体は、そのろ過目的やろ過性能に応じて、
図12(b)(c)に示すような各種形態を単層としたものであってもよいし、同種のものを2以上積層したものであってもよいし、径やろ過性能の異なるものを2以上積層したものであってもよい。
【0047】
こうした金属製ファインメッシュ構造体は、上記した金属ファイバー構造体よりも径が太く、圧縮すれば容易に密になる上記「金属製の綿」のようにはならないが、本発明によれば、金属製ファインメッシュ構造体が必ず端部部材21に接し且つ厚みも増すので、カシメ後のシール性とその安定性を増すことができる。なお、本出願人が既にパンフレット等で公開しているメッシュフィルターを適用することが好ましい。
【0048】
(補強部材)
補強部材2は、ろ過精度が高いろ過部材11の必須の構成であり、
図13(a)(b)に示すように、ろ材1の一方の面又は両方の面に配置されて、ろ材1を補強する役割を担っている。補強部材2は、ろ材1を補強できる強度を備えた金網であることが好ましい。
【0049】
補強部材2は、
図1、
図2(c)(d)及び
図13(b)に示すように、ろ材1の両面(S1及びS2)に配置されてろ材1を補強してもよいし、
図2(a)(b)に示すように、片面(S1又はS2)だけに配置されてろ材1を補強してもよい。片面だけに配置される場合は、
図2(a)(c)に示すように、突出部3が折り返される側の面(S1又はS2)に配置されていることが望ましいが、
図2(b)(d)に示すように、突出部3が折り返される側の逆側の面(S1又はS2)に配置されていてもよい。なお、折り返し端部3aは、
図1、
図2(a)(c)に示すように、ろ材1からなる突出部3を補強部材2の端2aの上に折り返されていてもよいし、
図2(b)(d)に示すように、ろ材1がそのろ材1自体の上に折り返されていてもよい。補強部材2は、ろ材1が折り返された折り返し端部3aとともにカシメられるので、折り返しによって厚みが増したろ材1がそのろ材1自体の上に折り返される場合(
図2(b)(d))は、折り返し端部3aと補強部材2とが一緒にカシメられるように、補強部材2は折り返し端部3aの位置まで延びている。
図2に示すいずれの折り返し形態であっても、ろ過部材11の周縁端部12で端部部材21が直接ろ材表面と接することにより、接合部31でのシール性が高められている。
【0050】
金網は、金属線を織るか又は編むことにより形成された平面状の組織である。具体的には、縦糸となる金属線と横糸となる金属線とを一定の規則の下で交差させた織物構造の金網であることが好ましい。金網からなる補強部材2を構成する金属線の径は特に限定されず、ろ材1を補強できる強度を備えた金網の形成に応じた径の金属線を採用できる。一例としては、平均径で20~1500μm程度の金属線を挙げることができるがこれらに限定されない。金網は、同じ又は同程度の径の金属線で形成されたものであってもよいし、異なる径の金属線で形成されたものであってもよい。必要に応じて焼結処理してもよい。こうした補強部材2は、ろ材1のろ過性能を阻害せず且つ目的の強度を得ることができるように設計できるので、好ましく採用される。また、この補強部材2は、その目的の範囲内で、単層の金網であってもよいし、同種のものを2以上積層したものであってもよいし、異なるものを2以上積層したものであってもよい。なお、本出願人が既にパンフレット等で公開しているメッシュフィルターを適用することが好ましい。
【0051】
(ろ過部材用原反)
ろ過部材用原反11aは、
図7(a)に示すように、上記したろ材1と補強部材2とで少なくとも構成された平面状のものである。上記した「フィルターエレメントの型形態」の箇所で説明したように、円筒型フィルターエレメント10B及びプリーツ型フィルターエレメント10Cでは、このろ過部材用原反11aを加工してろ過部材11が作製される。なお、ディスク型フィルターエレメント10Aは上記説明箇所に記載のように、所定形状に予め加工したろ材1と補強部材2とを重ね合わせ、その重ね合わせの際に、補強部材2の端からろ材1が突出するように重ね合わせてなるろ過部材用原反11aを用いる。
【0052】
(ろ過部材の周縁端部の形態)
ろ過部材11の周縁端部12は、
図6及び
図7に示すように、ろ過部材用原反11aを加工して形成される。そして、その周縁端部12に形成された折り返し端部3aは、後述する端部部材21によってカシメられる。以下では、ろ過部材11の周縁端部12の形態を、ディスク型、円筒型、プリーツ型の順で各型のフィルターエレメントについて説明する。
【0053】
ディスク型フィルターエレメント10Aにおいては、
図3に示すように、プリーツ型や円筒型のようにろ過部材用原反11aを丸めて円筒形にしたものとは異なり円盤状であり、さらにひだ折りされていない。すなわち、先ず、円盤形状に予め加工したろ材1と補強部材2とを重ね合わせるが、ろ材1は、補強部材2の端からろ材1の一部が突出する大きさのものを準備する(
図6(a))。その後、突出した突出部3を例えば補強部材2の端2aの上(又はろ材1自体の上)に折り返して折り返し端部3aとする(
図6(b))。この折り返し端部3aは、円筒型やプリーツ型のフィルターエレメント10B,10Cの場合と同様、突出部3をそのまま折り返したものであってもよいし、突出部3を折り返した後の折り返し端部3aを一定の厚さに成形したものであってもよいし、突出部3を一定の厚さに成形した後に折り返した折り返し端部3aであってもよい。その後、周縁端部12を絞り加工して折り返し端部3aを、後述するリング状の端部部材21のサイズに調整し、周縁端部12の両面S3,S4から挟んでカシメる(
図6(c))。
【0054】
円筒型フィルターエレメント10Bにおいては、
図4に示すように、ひだ折りされていないので、
図7及び
図8で説明するプリーツ型フィルターエレメント10Cの場合とは異なる。すなわち、先ず、補強部材2の端2aからろ材1の一部を突出させたろ過部材用原反11aを準備し(
図6(a))、突出した突出部3を例えば補強部材2の端2aの上(又はろ材1自体の上)に折り返して折り返し端部3aとする(
図6(b))。この折り返し端部3aは、プリーツ型フィルターエレメント10Cの場合と同様、突出部3をそのまま折り返したものであってもよいし、突出部3を折り返した後の折り返し端部3aを一定の厚さに成形したものであってもよいし、突出部3を一定の厚さに成形した後に折り返した折り返し端部3aであってもよい。
【0055】
折り返し端部3aを形成したろ過部材用原反11aは、その対向辺同士11b,11bを合わせて丸め、その合わせ部を溶接して筒状とする(図示しない)。その周縁端部12は、
図4に示すように、対向辺同士11b,11bの溶接により円筒状の本体部13と周縁端部12になっている。その後、周縁端部12をそのまま又は圧縮加工して折り返し端部3aを、後述するリング状の端部部材21のサイズに調整し、その折り返し端部3aを有する周縁端部12を両面S3,S4から挟んでカシメる(
図6(c))。
【0056】
プリーツ型フィルターエレメント10Cにおいては、補強部材2の端2aからろ材1の一部を突出させたろ過部材用原反11aを準備し(
図7(a))、突出した突出部3を例えば補強部材2の端2aの上(又は
図2(b)(d)示すようにろ材1自体の上)に折り返して折り返し端部3aとする(
図7(b))。この折り返し端部3aは、突出部3をそのまま折り返したものであってもよいし、突出部3を折り返した後の折り返し端部3aを一定の厚さに成形したものであってもよいし、突出部3を一定の厚さに成形した後に折り返した折り返し端部3aであってもよい。なお、折り返し端部3aを含む周縁端部12の厚さは、絞り加工後に端部部材21に装着可能な厚さになることが好ましい。
【0057】
折り返し端部3aを形成したろ過部材用原反11aは、その後、折り返し端部3aを含む辺に垂直な方向で繰り返し折り返すことによってひだ折りし(
図7(c))、ろ過部材用原反11aにプリーツ形態(山折りと谷折りが繰り返されるひだ形態)を形成する。ひだ折りされた後のろ過部材用原反11aは、その対向辺同士11b,11bを合わせて丸め、その合わせ部を溶接して筒状とする(
図8(d))。このとき、ひだの延びる方向(山折りの稜線が延びる方向)の軸方向(長手方向)Yの端部を「周縁端部12」という。その周縁端部12は、
図8(d)に示すように、対向辺同士11b,11bの溶接により円筒状の本体部13と周縁端部12になっている。その後、周縁端部12を絞り加工し、外側の周縁表面が平坦で、折り返し端部3aを構成するろ材1同士を密着させた状態で重ね合わされた形態とし(
図8(e))、その後、絞り加工された折り返し端部3aは、後述するリング状の端部部材21に接しながらカシメられる(
図8(f))。
【0058】
<端部部材>
端部部材21は、ろ過部材11の周縁端部12に配置され、その周縁端部12に形成された折り返し端部3aを有する周縁端部12を両面S3,S4から挟んでカシメる部材である。ディスク型フィルターエレメント10Aにおいては、端部部材21は、円盤状のろ過部材11の周縁に位置するものであり、リング状の端部部材21が用いられる。こうした端部部材21としては、
図14に例示するように、2つの部材22,23を組み合わせて構成したC字溝を全周に有した複合型の端部部材21Bであってもよいし(
図14(a))、1つの部材(24,25)を曲げ加工してなる折り曲げ型の端部部材21で接合されていてもよい(
図14(b)(c))。符号22a,23aは、端部部材21Bを構成するカシメ部である。複合型の端部部材21は、最終的には2つの部材22,23を溶接等で接合した後にカシメることが好ましい。
【0059】
円筒型フィルターエレメント10Bとプリーツ型フィルターエレメント10Cにおいては、
図15(a)(b)に示すように、ろ過部材11の周縁端部12は、円筒形状のろ過部材11の軸方向Yの片端又は両端に位置するものであり、いずれも円形形状の周縁端部となっている。「片端又は両端」としたのは、一方の側の端部に設けられていてもよいし、両方の側の端部に設けられていてもよいことを意味する。こうした形状の周縁端部12に配置される端部部材21としては、
図15(c)に例示するように、U字溝を全周に有した一体型の端部部材21Aであってもよいし、2つの部材を組み合わせて構成したU字溝を全周に有した複合型の端部部材(
図14の類型形態)であってもよい。符号21a,21b,21c,21dは、端部部材21を構成する各部であり、ここでは、カシメ部21a,21b、突き当て部21c、底部21dを示している。底部21dは開口されたものであってもよいし非開口の封止形態であってもよい。
【0060】
これら各型に用いられる端部部材21は、金属構造体であることが好ましい。こうした金属構造体とすることにより、折り返し端部3aを有する周縁端部12を両面S3,S4から挟んでカシメる機械的なカシメ加工によりバラツキのない安定した接合部31とすることができ、高いシール性を実現できる。
【0061】
<ろ過部材と端部部材との接合形態>
ろ過部材11と端部部材21とは、ろ過部材11の折り返し端部3aを、カシメ部材である端部部材21でカシメることで接合される。この接合部31でのシール性が、ろ過性能に大きく影響し、シール性が十分でない場合は十分なろ過性能が得られない。本発明では、この接合部31でのシール性を新しいシール構造によって高めた点に特徴がある。
【0062】
ディスク型フィルターエレメント10Aにおいては、溶接部が存在しないので、溶接部を備えたろ過部材11と端部部材21との接合形態は言及しない。
【0063】
円筒型フィルターエレメント10Bにおいては、プリーツ型フィルターエレメント10Cのように、ろ過部材11がプリーツ型ではない点で相違するが、その他の点では後述する
図9の形態と同様であり、上記した内容と同様である。そのため、後述する
図10に示す態様とも大差がないので、その説明は省略する。
【0064】
プリーツ型フィルターエレメント10Cにおいて、ろ過部材11は、ひだ折りされたろ過部材用原反11aの対向辺同士11b,11bを合わせて溶接してなる筒状部材である。その場合において、周縁端部12は、
図9に示すように、溶接された溶接部41(黒色部を指す。以下同じ。)が軸方向Yの全長にわたって形成されている。なお、
図11(a)は
図9に示す形態の一例を示す図であり、黒色部は溶接部41を指している。
【0065】
この形態においては、ひだ折りされたろ過部材用原反11aを丸め、対向辺同士11b,11b合わせて溶接してなる筒状部材に形成された溶接部41は、軸方向Yの全長にわたって形成されているが、いずれの場合においても高いシール性を有することができる。なお、溶接は、シーム溶接等で行われることが好ましく、シーム溶接については、TIGや抵抗溶接で行われることが好ましい。
【0066】
図10は、
図9の形態において、溶接部41のうち端部部材21でカシメられる溶接端部44を覆う大きさのシール材42がその溶接端部44上に配置されて絞り加工を行い、その後、端部部材21でカシメられている形態の一例である。また、
図11(b)は
図10に示す形態の一例を示す図であり、黒色部は溶接部41を指している。ここで用いるシール材42は、上記したろ材1に適用される金属ファイバー構造体と同じものを所定の大きさに加工して利用できる。こうすることで、同じ原材料を共有でき、コストアップになりにくい。なお、このシール材42は、ろ材1に適用される金属ファイバー構造体と異なるものであっても構わない。
【0067】
円筒型フィルターエレメント10B及びプリーツ型フィルターエレメント10Cにおいては、端部部材21でカシメられる周縁端部12にまで延びる溶接部41が設けられているが、その場合には、溶接部41のうち端部部材21でカシメられる溶接端部44を覆う大きさのシール材42が溶接端部44上に配置されて前記端部部材でカシメられている。こうすることにより、溶接端部44の上に設けられたシール材42が、より一層シール性を高めるように作用する。
【0068】
こうした金属製フィルターエレメント10(10A,10B,10C)においては、ろ材1が折り返された端部(折り返し端部3a)が加工されていることが好ましい。ディスク型フィルターエレメント10A及び円筒型フィルターエレメント10Bの場合には、折り返し端部3aが圧縮加工(例えばプレスによる圧縮加工)されており、圧縮加工された折り返し端部3aは、端部部材21に接しながらその端部部材21によってカシメられていることが好ましい。一方、プリーツ型フィルターエレメント10Cの場合には、折り返し端部3aが絞り加工されており、絞り加工された折り返し端部3aは、端部部材21に接しながらその端部部材21によってカシメられていることが好ましい。こうした加工により、折り返し端部の構造形態(厚さ等の寸法や、ろ材の集密度等)が一定になり、端部部材への取り付けが容易になるとともに、カシメ後のシール性も安定且つ向上させることができる。特にプリーツ型フィルターエレメント10Cにおいては、折り返し端部3aのろ材1が常に接しており且つ厚みも増すので、カシメ後のシール性をより一層安定且つ向上させることができる。
【0069】
<周縁端部での接合形態の対比>
本発明に係る金属製フィルターエレメント10では、周縁端部12は端部部材21でカシメられて接合するが、その接合形態について、
図16~
図20を参照してさらに詳しく説明する。なお、
図16はディスク型フィルターエレメント10Aの周縁端部12での接合形態の実施形態例であり、
図17はディスク型フィルターエレメント10Aの周縁端部12での接合形態についてろ材1を折り返していない場合の比較形態例であり、
図18は円筒型フィルターエレメント10Bの周縁端部12での接合形態の実施形態例であり、
図19は円筒型フィルターエレメント10Bの周縁端部12での接合形態についてろ材1を折り返していない場合の比較形態例であり、
図20は円筒型フィルターエレメント10Bの溶接部41の周縁端部12でのシール形態についての説明図である。
【0070】
(ディスク型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態)
ディスク型フィルターエレメント10Aでは、
図16(a)(b)に示すように、通常は矢印のろ過方向F(図示の例では上から下に向かう方向)でろ過が行われる。突出部3の折り返し方向は、補強部材2がろ材1の片面(S1又はS2)だけに設けられているか両面(S1及びS2)に設けられているかが考慮される。補強部材2がろ材1の両面(S1及びS2)に設けられている場合は、突出部3をろ過方向Fの側の面S1にある補強部材2上に折り返してもよいしろ過方向Fの逆側の面S2にある補強部材2上に折り返してもよく、特に限定されないが、突出部3をろ過方向Fの側の面S1にある補強部材2上に折り返して折り返し端部3aを形成することが好ましい(
図16(a)(b))。
【0071】
なお、
図16(b)に示すように、ろ材1が端部部材21に接してカシメられていればよいので、ろ材1は補強部材2とともに折り返してもよい。この例は、例えば補強部材2が焼結又は溶接等でろ材1と一体化している場合に好ましく適用される。なお、「他の部材」が補強部材2とともに又は補強部材2に代えて焼結又は溶接等でろ材1と一体化している場合にも、好ましく適用される。
【0072】
図17は、ディスク型フィルターエレメント10Aの周縁端部12での接合形態について、ろ材1を折り返していない場合の比較形態例である。
図17(a)は、ろ材1の片面S2だけに補強部材2が配置されている例である。ろ材1の片面S2だけに補強部材2が設けられる場合、補強部材2はろ過方向Fの側の面の反対面に設けられてろ材1を補強する必要があるので、
図17(a)の例ではろ過方向Fの側の面S1(図示では上面)の反対面S2(図示では下面)に設けられていることが望ましい。しかし、この形態であっても、ろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)が生じる場合は、片面S2(下面)だけの補強部材2ではろ材1を保護することはできない。逆洗等の逆方向の流れが生じない場合は、片面S2(下面)だけに補強部材2を設けてもよい。
図17(a)の例では、折り返し端部3aを形成していないが、端部部材21をカシメることによってろ材1と端部部材21が接触してカシメによるシール性が向上しているので、折り返し端部3aを備える本発明ほどのシール性は出ないにしても、シール性は確保することはできる。なお、
図2(b)のような形態で折り返し端部3aを形成すれば、折り返し端部3aでの厚さが増してシール性がより向上する。
【0073】
図17(b)は、ろ材1の両面S1,S2に補強部材2が配置されている例である。ろ材1の両面S1,S2に補強部材2が設けられた場合、それら補強部材2はろ過方向Fに関係なく、さらにろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)があっても、補強部材2でろ材1を保護することができるので好ましい。ただし、端部部材21で直にカシメられるのが補強部材2であるので、本発明のように端部部材21で直にろ材1の折り返し端部3aがカシメられる場合とは異なり、補強部材2を経由した図中の矢印のような漏れが生じる。
【0074】
図17(c)は、
図17(b)において周縁端部12の両面S3,S4にシール材42が設けられている例である。この形態も
図17(b)と同様、ろ過方向Fに関係なく、さらにろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)があっても、補強部材2でろ材1を保護することができるので好ましい。ただし、周縁端部12の両面S3,S4にシール材42が設けられて端部部材21とシール材42とのがシール性よくカシメられるものの、補強部材2を経由した図中の矢印のような漏れが生じる。
【0075】
(円筒型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態)
円筒型フィルターエレメント10Bにおいても、ディスク型フィルターエレメント10Aの場合と同様、
図18(a)(b)に示すように、通常は矢印のろ過方向F(図示の例では円筒の外側から内側に向かう方向)でろ過が行われる。突出部3の折り返し方向も、ディスク型フィルターエレメント10Aの場合と同様であるのでここでは詳しい説明は省略するが、突出部3をろ過方向Fの側の面S1にある補強部材2上に折り返して折り返し端部3aを形成することが好ましい(
図18(a)(b))。
【0076】
なお、
図18(b)に示す形態も、
図16(b)の形態と同様であり、ここでは詳しい説明は省略するが、例えば補強部材2が焼結又は溶接等でろ材1と一体化している場合に好ましく適用される。「他の部材」が補強部材2とともに又は補強部材2に代えて焼結又は溶接等でろ材1と一体化している場合にも、好ましく適用される。
【0077】
図19は、円筒型フィルターエレメント10Bの周縁端部12での接合形態について、ろ材1を折り返していない場合の比較形態例である。
図19(a)は、
図17(a)と同様、ろ材1の片面S2だけに補強部材2が配置されている例である。ろ材1の片面だけに補強部材2が設けられる場合、補強部材2はろ過方向Fの側の面S1の反対面に設けられてろ材1を補強する必要があるので、
図19(a)の例ではろ過方向Fの側の面S1(外側面)の反対面S2(内側面)に設けられていることが望ましい。しかし、この形態であっても、ろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)が生じる場合は、片面S2(内側面)だけの補強部材2ではろ材1を保護することはできない。逆洗等の逆方向の流れが生じない場合は、片面S2(内側面)だけに補強部材2を設けてもよい。
図19(a)の例では、折り返し端部3aを形成していないが、端部部材21をカシメることによってろ材1と端部部材21が接触してカシメによるシール性が向上しているので、折り返し端部3aを備える本発明ほどのシール性は出ないにしても、シール性は確保することはできる。なお、
図2(b)のような形態で折り返し端部3aを形成すれば、折り返し端部3aでの厚さが増してシール性がより向上する。
【0078】
なお、補強部材2がろ材1の片面だけに設けられている場合において、
図19(a)で示すようにろ材1が外側面側に配置され、補強部材2が内側面側に配置されている場合ではなく、ろ材1が内側面側に配置され、補強部材2が外側面側に配置されている場合であってもよい。しかし、この場合においては、ろ過方向Fは
図19(a)の場合とは逆に内側から外側に流れるろ過方向であることが望ましい。
【0079】
図19(b)は、
図17(b)と同様、ろ材1の両面S1,S2に補強部材2が配置されている例である。ろ材1の両面S1,S2に補強部材2が設けられた場合、それら補強部材2はろ過方向Fに関係なく、さらにろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)があっても、補強部材2でろ材1を保護することができるので好ましい。ただし、端部部材21で直にカシメられるのが補強部材2であるので、本発明のように端部部材21で直にろ材1の折り返し端部3aがカシメられる場合とは異なり、補強部材2を経由した図中の矢印のような漏れが生じる。
【0080】
図19(c)は、
図19(b)において周縁端部12の両面S3,S4にシール材42が設けられている例である。この形態も
図19(b)と同様、ろ過方向Fに関係なく、さらにろ過方向Fの逆方向の流れ(逆洗等)があっても、補強部材2でろ材1を保護することができるので好ましい。ただし、周縁端部12の両面S3,S4にシール材42が設けられて端部部材21とシール材42とのがシール性よくカシメられるものの、補強部材2を経由した図中の矢印のような漏れが生じる。
【0081】
図20は、円筒型フィルターエレメント10Bの溶接部41の周縁端部12でのシール形態についての断面図である。
図20(a)は、溶接部41上にシール材42を配置しない例であり、
図20(b)は、
図20(a)をカシメた後の例である。
図20(a)に示すように、円筒型フィルターエレメント10Bは、ろ過部材用原反11aの対向辺同士11bを合わせて溶接してなるものであるので、ろ過部材11のうち補強部材2が溶接時に溶融して溶融金属になり易い。そうした溶融金属の箇所では、補強部材2を経由しての漏れは生じにくいので、そのままでもある程度のシール性を確保できる。しかし、溶接によるつなぎ合わせ時に発生しやすい「ビード」(溶接時に発生する溶接痕の盛り上がりのこと)により、
図20(b)に示すように波打ち形状が生じて端部部材21との間に微小な隙間が生じることがある。そのため、高いろ過精度が要求される場合は好ましくない。
【0082】
図20(c)は、そうした溶接部41上にシール材42を配置した例であり、
図20(d)は、
図20(c)をカシメた後の例である。シール材42を溶接部41の上に被せてカシメることで、ビードが生じて端部部材21との間に生じることがある微小な隙間をなくすことができるので、漏れを確実になくすことができる。
【0083】
(プリーツ型フィルターエレメントの周縁端部での接合形態)
プリーツ型フィルターエレメント10Cにおいても、円筒型フィルターエレメント10Bの場合と同様である。ここでは詳しい説明を省略するが、円筒型フィルターエレメント10Bと同様、ろ材1の突出部3を折り返して厚さが増した折り返し端部3aを形成した上で端部部材21でカシメることにより、高いシール性を実現できる。特にプリーツ型フィルターエレメント10Cでは、
図8(e)に示すように、折り返し端部3aを含む周縁端部12を絞り加工することにより、ひだ折りされた折り返し端部3aの山部が倒れた状態で重なり合って厚さがさらに増した形態になるとともに厚さがほぼ一定になる。その後、端部部材21に取り付けてカシメることにより、カシメ後のシール性は高く且つ安定したものとなる。
【0084】
特にプリーツ型フィルターエレメント10Cでは、ひだ折り後に筒形状に成形されたもの(
図8(d)参照)を絞り加工することにより、
図8(e)に示すように、ひだ状に折り返されているろ材同士が互いに接触し、さらに接触したろ材同士の表面が平坦になる。また、ろ材1が折り返されていることにより厚みが増してクッション性が増す。こうした絞り加工と厚みの増の効果により、カシメによるシール性がより一層上昇する。
【0085】
なお、
図18(b)に示す形態は、プリーツ型フィルターエレメント10Cにも適用できる。特にろ材1の片面(
図18(b)ではS1側の面)で、ろ材1と補強部材2とが焼結されている場合に適用することができる。
【0086】
さらに、
図20(c)の場合と同様、
図10及び
図11(b)の形態のように溶接部41上にシール材42を配置して絞り加工することにより、補強部材2を経由した漏れやビードに由来した漏れを確実になくすことができ、極めて高く且つ安定したシール性を実現できる。
【0087】
以上説明したように、本発明に係る金属製フィルターエレメント10によれば、ろ過部材11と端部部材21との接合部31のシール性を高めた新しいシール構造によって、シール性を高めたプリーツ型、円筒型、ディスク型等の金属製フィルターエレメントを提供することができる。その結果、高いシール性を実現した金属製フィルターエレメントを、高度な溶接技術を要さず、寸法管理も容易で、より安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ろ材
2 補強部材
2a 補強部材の端
3 突出部
3a 折り返し端部
10 金属製フィルターエレメント
10A ディスク型フィルターエレメント
10B 円筒型フィルターエレメント
10C プリーツ型フィルターエレメント
11 ろ過部材
11a ろ過部材用原反
11b 対向辺同士
12 周縁端部
13 本体部
21 端部部材
21A 一体型の端部部材
21a,21b カシメ部
21c 突き当て部
21d 底部
21B 複合型の端部部材
22,23 組み合わされる2つの部材
22a,23a カシメ部
24,25 折り曲げ型の端部部材
31 接合部
41 溶接部
42 シール材
44 溶接端部
S1,S2 ろ材の面
S3,S4 周縁端部の面
Y 円筒の軸方向(長手方向)
F ろ過方向
【要約】
【課題】シール性を高めたディスク型、円筒型、プリーツ型等の金属製フィルターエレメントを提供する。
【解決手段】ろ過部材11と、ろ過部材11の周縁端部12に配置される端部部材21との接合部31を有する金属製フィルターエレメント10であって、ろ過部材11は、ろ材1と、ろ材1の一方の面又は両方の面(S1及び/又はS2)に配置される補強部材2とで少なくとも構成され、端部部材21は、ろ過部材11の周縁端部12を両面S3,S4から挟んでカシメる部材であり、ろ過部材11の周縁端部12は、ろ材1が折り返された折り返し端部3aを有しており、その折り返し端部3aは、端部部材21に接しながら端部部材21によってカシメられているように構成して上記課題を解決した。
【選択図】
図1