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特許7085785コンポジット麻布及びコンポジット麻布の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】コンポジット麻布及びコンポジット麻布の生産方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20220610BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20220610BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20220610BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20220610BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20220610BHJP
【FI】
D06M15/564
B29B11/16
B32B5/02 A
D06N3/14
D06M101:06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022503587
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033213
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020151128
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513090437
【氏名又は名称】株式会社hide kasuga 1896
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日 秀之
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-127277(JP,A)
【文献】特開2002-052987(JP,A)
【文献】実開昭57-041737(JP,U)
【文献】特開平04-370276(JP,A)
【文献】中国実用新案第205836164(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
B32B1/00-43/00
B29B11/16-15/14
C08J5/04-5/24
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹿の子織である麻布と、
ウレタンフィルムと
を有し、
前記麻布は、
前記ウレタンフィルムが含侵して一体にされ、引張荷重が前記麻布の2倍以上となる強度を備えたコンポジット層を形成していること
を特徴とするコンポジット麻布。
【請求項2】
鹿の子織である麻布に対し、表面側及び裏面側からウレタンフィルムで挟み込む挟込工程と、
前記ウレタンフィルムで挟み込まれた前記麻布に対して熱と圧力とを加えることにより、前記麻布に前記ウレタンフィルムを含侵させて一体にされ、引張荷重が前記麻布の2倍以上となる強度を備えたコンポジット層を形成する層形成工程と
を含むことを特徴とするコンポジット麻布の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポジット麻布及びコンポジット麻布の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麻布は、天然繊維によって作られた布の中でも抜群に吸水性が高い。例えば、麻には、綿の4倍の吸水性がある(例えば非特許文献1参照)。さらに、麻は、高い吸水性により、水に濡れると引張り強度が約50%又はそれ以上に増加する特徴がある。
【0003】
また、麻の繊維の引張り強度は、綿の約2倍であり、羊毛の約4倍であるため、丈夫で長持ちである。そして、麻布は、伸びにくく、テキスタイル(textile)として型崩れを起こしにくいが、皺になりやすいという特徴がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「麻の生地の特徴!吸水性の良さ以外のメリット・デメリットは?」、[online]、2020年、なにそれ倶楽部、[令和2年9月2日検索]、インターネット〈URL:https://nanisore-club.com/asa-tokutyou-5671〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の麻布は、天然繊維の織物としては強度が強くても、工業用途に利用する素材としては強度が十分でない場合があった。また、従来の麻布は、酸化などによって劣化が生じてしまい、強度を保つことが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、麻の特性を生かしつつ、麻の強度を向上させることができるコンポジット麻布及びコンポジット麻布の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布は、鹿の子織である麻布と、ウレタンフィルムとを有し、前記麻布は、前記ウレタンフィルムが含侵して一体にされ、引張荷重が前記麻布の2倍以上となる強度を備えたコンポジット層を形成していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布の生産方法は、麻布に対し、表面側及び裏面側からウレタンフィルムで挟み込む挟込工程と、前記ウレタンフィルムで挟み込まれた前記麻布に対して熱と圧力とを加えることにより、前記麻布に前記ウレタンフィルムを含侵させて一体にされ、引張荷重が前記麻布の2倍以上となる強度を備えたコンポジット層を形成する層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布は、前記麻布が、平織又は鹿の子織であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布の生産方法は、鹿の子織である麻布に対し、表面側及び裏面側からウレタンフィルムで挟み込む挟込工程と、前記ウレタンフィルムで挟み込まれた前記麻布に対して熱と圧力とを加えることにより、前記麻布に前記ウレタンフィルムを含侵させて一体にされ、引張荷重が前記麻布の2倍以上となる強度を備えたコンポジット層を形成する層形成工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布の生産方法は、前記麻布が、1cm当たりに並ぶ麻糸の本数が10本以上であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布の生産方法は、前記麻布が、平織又は鹿の子織であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、麻の特性を生かしつつ、麻の強度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態にかかるコンポジット麻布、及びコンポジット麻布を生産する方法を模式的に示す図である。
図2】一実施形態にかかるコンポジット麻布を生産する方法を例示するフローチャートである。
図3】一実施形態にかかるコンポジット麻布の外観を例示する写真である。
図4】コンポジット麻布の具体例に用いられる複数の麻布の具体例を示す図である。
図5図4に示した麻布に対して、引張荷重及び伸びを測定するために作成された試験片を示す写真である。
図6】実施例及び比較例の試験片を用いて、引張荷重及び伸びを測定する試験機を例示する写真である。
図7】試験機によって試験片の引張荷重及び伸びを測定している状態を例示する写真である。
図8】麻布(a)の引張荷重と、麻布(a)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重とを示すグラフである。
図9】麻布(b)の引張荷重と、麻布(b)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重とを示すグラフである。
図10】麻布(c)の引張荷重と、麻布(c)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重とを示すグラフである。
図11】麻布(d)の引張荷重と、麻布(d)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重とを示すグラフである。
図12】麻布(e)の引張荷重と、麻布(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重とを示すグラフである。
図13】麻布(a)の伸びと、麻布(a)を用いて構成されたコンポジット麻布の伸びとを示すグラフである。
図14】麻布(b)の伸びと、麻布(b)を用いて構成されたコンポジット麻布の伸びとを示すグラフである。
図15】麻布(c)の伸びと、麻布(c)を用いて構成されたコンポジット麻布の伸びとを示すグラフである。
図16】麻布(d)の伸びと、麻布(d)を用いて構成されたコンポジット麻布の伸びとを示すグラフである。
図17】麻布(e)の伸びと、麻布(e)を用いて構成されたコンポジット麻布の伸びとを示すグラフである。
図18】(a)は、比較例の生成りである麻布のSEMによる写真例である。(b)は、生成りである麻布を用いて構成された実施例のコンポジット麻布のSEMによる写真例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、一実施形態にかかるコンポジット麻布について図面を用いて説明する。なお、ここでは「麻布」と「他の部材」とを組み合わせて、「麻布」単独、又は「他の部材」単独では得られない特性を有する部分を少なくとも一部に備えるものをコンポジット麻布と称することとする。
【0016】
図1は、一実施形態にかかるコンポジット麻布、及びコンポジット麻布を生産する方法を模式的に示す図である。図1に示すように、コンポジット麻布を生産する場合、麻布1に対して、まず、表面側及び裏面側から例えばエステル(ester)系のウレタンフィルム(urethane film)2で挟み込む。
【0017】
そして、ウレタンフィルム2で挟み込まれた麻布1に対して、例えば図示しないオートクレーブによって熱と圧力とを加えることにより、麻布1にウレタンフィルム2を含侵させて一体にされたコンポジット層(コンポジット材)を形成する。ここでは、このコンポジット層がコンポジット麻布3となる。
【0018】
オートクレーブは、ウレタンフィルム2で挟み込まれた麻布1に対して、例えば140°Cで0.5Mpaの圧力を加え、例えばコンポジット麻布3がシート状のソフトコンポジット麻布になるように成形する。
【0019】
コンポジット麻布3は、麻布1が水に濡れた場合と同様又はそれ以上に、引張り強度が例えば40%~300%程度増加している。
【0020】
麻布1の素材である麻糸は、植物表皮の内側にある柔繊維、又は葉茎などから採取された繊維から作られており、不均一な微細繊維を含む吸水性が高い天然素材である。このため、麻布1にはウレタンフィルム2が十分に含侵し、麻糸の繊維の中までウレタンが絡むので、麻布1の繊維と樹脂(ウレタン)が一体化したコンポジット層(コンポジット材)が形成される。
【0021】
すなわち、コンポジット麻布3は、麻の繊維と樹脂(ウレタン)とを剥離することが困難になる。また、コンポジット麻布3は、ウレタンフィルム2で挟み込まれる前の麻布1と同等の厚さや、麻布1よりも薄く成形することも可能である。例えば、コンポジット麻布3において、麻布1が占める体積の割合は50%以上である。
【0022】
比較例として、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などにガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた繊維強化プラスチック(FRP)などは、繊維に対して樹脂が十分に入り込めないために繊維と樹脂とが一体になれず、剥がれやすいという欠点がある。
【0023】
なお、麻布1は、生成り(キナリ)であってもよいし、染め又は漂白などの処理をされていてもよいし、予め熱的に安定させた複合材料(TSC:Thermally Stable Composite)などであってもよい。
【0024】
また、麻布1は、1cm当たりに並ぶ麻糸の本数が例えば10本以上であることが望ましい。また、麻布1は、例えば平織又は鹿の子織である。ただし、麻布1を構成する麻糸、及び麻布1の織の種類等は、これらに限定されない。
【0025】
図2は、一実施形態にかかるコンポジット麻布3を生産する方法を例示するフローチャートである。図2に示すように、コンポジット麻布3を生産する場合、まず、麻布1に対し、表面側及び裏面側からウレタンフィルム2で挟み込む(S100:挟込工程)。
【0026】
次に、ウレタンフィルム2で挟み込まれた麻布1に対して熱と圧力とを加えることにより、麻布1にウレタンフィルム2を含侵させて一体にされたコンポジット層を形成する(S102:層形成工程)。
【0027】
このようにして、麻布1にウレタンフィルム2を含侵させて一体にされたコンポジット層を形成することにより、例えばシート状のコンポジット麻布3を生産することができる。
【0028】
図3は、一実施形態にかかるコンポジット麻布3の外観を例示する写真である。コンポジット麻布3は、麻布1よりも引張り強度が向上し、酸化等による劣化も防止されている。また、コンポジット麻布3は、麻布のデメリットであった皺ができず、撥水性もある。
【0029】
また、コンポジット麻布3は、ウレタンフィルム2を所定の透明度に設定すれば、麻布1の風合いを残すことも可能であり、アルコールなどの液体で消毒することも可能である。
【0030】
つまり、コンポジット麻布3は、設計値に応じて強度を調整したり、サイズ、形状を任意に設定することが可能になっており、麻布1単独、又はウレタンフィルム2単独では得られない特性を備えているため、容易に多方面の工業用途へ適用することが可能である。
【0031】
次に、コンポジット麻布3の具体例について説明する。図4は、コンポジット麻布3の具体例に用いられる複数の麻布1の具体例を示す図である。コンポジット麻布3は、例えば図4に示した麻布(a)~(e)などに相当する麻布1を用いて構成される。
【0032】
麻布(a)は、染めのない平織の麻布であり、生地の厚さが0.31mm、麻糸の太さが麻番手40/1、1cm当たりの麻糸の本数が26となっている。
【0033】
麻布(b)は、染めが有る平織の麻布であり、生地の厚さが0.16mm、麻糸の太さが麻番手12/1、1cm当たりの麻糸の本数が30となっている。
【0034】
麻布(c)は、染めが有る平織の麻布であり、生地の厚さが0.28mm、麻糸の太さが麻番手40/1、1cm当たりの麻糸の本数が20となっている。
【0035】
麻布(d)は、染めが有る平織の麻布であり、生地の厚さが0.33mm、麻糸の太さが麻番手40/1、1cm当たりの麻糸の本数が10となっている。
【0036】
麻布(e)は、染めが有る鹿の子織(裏鹿の子)の麻布であり、生地の厚さが0.38mm、麻糸の太さが麻番手80/1となっている。
【0037】
図5は、図4に示した麻布(a)~(e)に対して、引張荷重及び伸びを測定するために作成された試験片を示す写真である。麻布(a)~(e)の試験片は、コンポジット麻布3に対する比較例の試験片として用いられた。麻布(a)~(e)の試験片は、例えば幅30mm、長さ300mmに成形されている。
【0038】
また、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3は、それぞれ幅30mm、長さ300mmに成形された実施例の試験片として用いられた。なお、実施例の試験片は、麻布(a)~(e)がそれぞれウレタンフィルム2(FOR-MPシーダム社)で挟み込まれ、例えばオートクレーブによって140度に加熱され、0.5Mpaの圧力がかけられて90分保持された後、減圧されて温度が80度に下げられる条件で作成されている。
【0039】
図6は、実施例及び比較例の試験片を用いて、引張荷重及び伸びを測定する試験機を例示する写真である。実施例及び比較例の試験片は、JISに準拠した試験方法により、引張荷重及び伸びを測定された。
【0040】
例えば、試験機は、インストロン型の島津製作所製のオートグラフ(250kN)などである。試験機は、例えばロードセルとして20kN及び1kNが用いられ、フルスケールが1000N/FSとされている。
【0041】
ここで、実施例及び比較例の試験片には、試験機によるつかみ部が、例えば幅30mm、長さ50mm、厚さ0.5mm程度の厚紙が例えば木工用ボンドなどの接着剤により接着されることによって設けられている。
【0042】
図7は、試験機によって試験片の引張荷重及び伸びを測定している状態を例示する写真である。測定では、標点間距離が200mmとされ、引張速度が200mm/sとされて、最大荷重(N)と伸び(%)が求められた。なお、実施例それぞれ及び比較例それぞれの試験片は、ばらつきが考慮され、いずれも5本以上が測定された。
【0043】
図8図12は、麻布(a)~(e)の引張荷重(比較例)と、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3の引張荷重(実施例)とを示すグラフである。実施例それぞれ及び比較例それぞれの試験片は、縦方向(縦)及び横方向(横)それぞれの方向で引張荷重を測定された。
【0044】
図8図12に示したように、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3(実施例)は、比較例の麻布(a)~(e)に対し、縦方向の引張荷重が約1.4倍~4.0倍まで強くなっている。また、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3(実施例)は、比較例の麻布(a)~(e)に対し、横方向の引張荷重が約1.1倍~4.0倍まで強くなっている。特に、麻布(a)を用いて構成されたコンポジット麻布3(実施例)は、麻糸の繊維の束が太く、縦方向及び横方向のいずれも600N以上の強度があった。
【0045】
図13図17は、麻布(a)~(e)の伸び(比較例)と、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3の伸び(実施例)とを示すグラフである。実施例それぞれ及び比較例それぞれの試験片は、縦方向(縦)及び横方向(横)それぞれの方向で伸びを測定された。
【0046】
図13図17に示したように、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3(実施例)は、比較例の麻布(a)~(e)に対し、縦方向の伸びが約0.91倍~0.31倍まで減少した。また、麻布(a)~(e)を用いて構成されたコンポジット麻布3(実施例)は、比較例の麻布(a)~(e)に対し、横方向の伸びが約0.53倍~0.98倍まで減少した。
【0047】
特に、麻布(e)の比較例は、鹿の子織であるため、横方向に150%以上伸びてしまった。麻布(a)~(d)の比較例は、平織であるため、伸びは10%から20%程度であった。
【0048】
図18は、比較例の麻布、及び実施例のコンポジット麻布3それぞれの走査電子顕微鏡(SEM)による写真例である。図18(a)は、比較例の生成りである麻布(a)の走査電子顕微鏡(SEM)による写真例である。図18(b)は、生成りである麻布(a)を用いて構成された実施例のコンポジット麻布3のSEMによる写真例である。なお、画像の倍率は、×200である。
【0049】
図18(b)に示した実施例のSEMによる写真では、ウレタンフィルム2の樹脂が麻布1の繊維の中までほぼ100%含侵していることが分かる。麻布(a)以外を用いて構成された実施例のコンポジット麻布3も、ウレタンフィルム2の樹脂が麻布1の繊維にほぼ100%含侵していることが確認された。
【0050】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、コンポジット麻布3は、麻布1にウレタンフィルム2が含侵して一体にされたコンポジット層を形成しているので、麻の特性を生かしつつ、麻の強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・麻布、2・・・ウレタンフィルム、3・・・コンポジット麻布
【要約】
本発明の一態様にかかるコンポジット麻布は、麻布と、ウレタンフィルムとを有し、麻布は、ウレタンフィルムが含侵して一体にされたコンポジット層を形成していることを特徴とする。また、本発明の一態様にかかるコンポジット麻布の生産方法は、麻布に対し、表面側及び裏面側からウレタンフィルムで挟み込む挟込工程と、ウレタンフィルムで挟み込まれた麻布に対して熱と圧力とを加えることにより、麻布にウレタンフィルムを含侵させて一体にされたコンポジット層を形成する層形成工程とを含むことを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
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