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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20220610BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220610BHJP
   C08G 59/26 20060101ALI20220610BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G03F7/038 503
G03F7/004 512
C08G59/26
H05K3/28 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019513698
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016265
(87)【国際公開番号】W WO2018194154
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2017084274
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017178459
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】箱根 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】高本 大平
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-122287(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/004
C08G 59/26
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R全てが下記式(1-1)
【化2】
で表される有機基を表し、かつ式(1-1)中のR はn-プロピレン基を表すか、又はR の一つは上記式(1-1)で表される有機基を表し、式(1-1)中のR はメチレン基を表し、R の残り二つは式(1-4)
【化3】
で表される有機基を表し、かつ式(1-4)中のR は水素原子を表す。)
で表されるトリアジン環を有する化合物、
(B)一分子中にベンゼン骨格と二つ以上のエポキシ基を有するエポキシ当量が500g/eq.以下のエポキシ樹脂であって、
下記式(2)
【化4】
(式(2)中、Rはそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示し、複数存在するRのうちの少なくとも2つはグリシジル基である。kは平均値を示し、0乃至30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-1)、
下記式(3)
【化5】
(式(3)中、R 、R 及びR は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を示す。pは平均値を示し1乃至30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-2)、並びに
下記式(4)
【化6】
(式(4)中、n及びmは平均値を示し、nは1乃至30の範囲にある実数であり、mは0.1乃至30の範囲にある実数であり、R 及びR 10 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂(B-3)、及び
(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
該(B)エポキシ樹脂に対する該(A)式(1)で表される化合物の含有量が1乃至50質量%であり、且つ、
該(B)エポキシ樹脂が下記条件(i)
条件(i)重量平均分子量が500以上であること
を満たす、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物を含むドライフィルムレジスト。
【請求項3】
請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物又は請求項2に記載のドライフィルムレジストの硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化物を含むウエハーレベルパッケージ。
【請求項5】
基板と被着体との接着層であって、請求項3に記載の硬化物を含む接着層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びにプリント配線板の製作において有用な解像度に優れたネガ型感光性樹脂組成物に関する。本発明は更に、高温での弾性率が高く、かつ各種基板への密着性に優れた該ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー加工可能なレジストは、最近半導体やMEMS・マイクロマシンアプリケーションに広範に用いられている。このようなアプリケーションでは、フォトリソグラフィー加工は基板上でパターニング露光し、ついで、現像液で現像することで露光領域もしくは非露光領域を選択的に除去することで達成される。フォトリソグラフィー加工可能なレジスト(フォトレジスト)にはポジ又はネガタイプがあり、露光部が現像液に溶解するのがポジタイプであり、同じく不溶となるものがネガタイプである。先端のエレクトロパッケージアプリケーションやMEMSアプリケーションでは均一なスピンコーティング膜の形成能だけではなく、高アスペクト比、厚膜におけるストレートな側壁形状、基板への高密着性等が要求される。ここで、アスペクト比とは、レジスト膜厚/パターン線幅により算出され、フォトリソグラフィーの性能を示す重要な特性である。
【0003】
このようなフォトレジストとしては、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(商品名 EPON SU-8レジン、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製)及びダウケミカル製 CYRACURE UVI-6974のような光カチオン重合開始剤(この光カチオン重合開始剤は芳香族スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのプロピレンカーボネート溶液からなる)を含むネガタイプの化学増幅型フォトレジスト組成物が知られている。該フォトレジスト組成物は350~450nmの波長域に非常に低い光吸収を持つことから、厚膜フォトリソグラフィー加工可能なフォトレジスト組成物として知られている。このフォトレジスト組成物を種々の基板上にスピンコートもしくはカーテンコート等の手法で塗布し、ついでベーキングにより溶剤を揮発させることで100μmもしくはそれ以上の厚みの固体フォトレジスト層を形成することができる。さらにコンタクト露光、プロキシミティ露光又はプロジェクション露光等の各種露光方法により、フォトマスクを通してこの固体フォトレジスト層に近紫外光を照射することでフォトリソグラフィー加工を施すことができる。続いて、現像液中に浸漬し、非露光領域を溶解させることで、基板上に高解像なフォトマスクのネガイメージを形成することができる。
【0004】
フォトレジストの硬化物を半導体パッケージ等の部品として用いる場合、例えばフォトレジストの硬化物を他の部品と一括で樹脂封止する工程が半導体パッケージの製造に含まれる場合には、該硬化物には樹脂封止の際にも形状を維持できるための高温時の高い弾性率が要求されている。
【0005】
また、近年では、MEMS部品やMEMSパッケージ及び半導体パッケージ等の基板には、従来一般的に用いられてきたシリコンウエハのみならず、その用途によって様々な種類の基板、例えばシリコンナイトライドやリチウムタンタレート等が用いられることがある。従って、フォトレジストには硬化物がこれらの基板に対する密着性に優れることも要求されている。
【0006】
特許文献1には、特定構造の光カチオン重合開始剤と多官能エポキシ樹脂を含む感光性樹脂組成物が開示されている。この文献の実施例には、該感光性樹脂組成物の硬化物がシリコンウエハに対する密着性に優れることが記載されている。しかし、この文献には、高温時の弾性率やシリコンウエハ以外の基板に対する密着性については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再公表特許WO2012/008472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、解像度に優れ、その硬化物は高温時にも高い弾性率を維持すると共に、シリコンウエハ以外の各種の基板への密着性に優れるネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意、検討を重ねた結果、特定構造のトリアジン骨格を有する化合物、ベンゼン骨格を有しかつ特定のパラメータを満たす多官能エポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の諸態様に関する。
[1].
(A)下記式(1)
【化1】

(式(1)中、Rはそれぞれ独立に有機基を表す。但し、Rの少なくとも一つはグリシジル基を有する有機基又はオキセタニル基を有する有機基を表す。)
で表されるトリアジン環を有する化合物、
(B)一分子中にベンゼン骨格と二つ以上のエポキシ基を有するエポキシ当量が500g/eq.以下のエポキシ樹脂、及び
(C)光カチオン重合開始剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
該(B)エポキシ樹脂に対する該(A)式(1)で表される化合物の含有量が1乃至50質量%であり、且つ、
該(B)エポキシ樹脂が下記条件(i)及び(ii):
条件(i)重量平均分子量が500以上であること;及び
条件(ii)軟化点が40℃以上であること
の少なくとも一方を満たす、ネガ型感光性樹脂組成物。
[2].
の少なくとも一つが、
下記式(1-1)
【化2】

(式(1-1)中、Rは炭素数1乃至8のアルキレン基を表す。)、
下記式(1-2)
【化3】

(式(1-2)中、Rは炭素数1乃至8のアルキレン基を表し、Rは炭素数1乃至6のアルキル基を表す。)、又は
下記式(1-3)
【化4】

で表される有機基である、上記[1]項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[3].
のいずれもが式(1-1)で表される有機基、式(1-2)で表される有機基又は式(1-3)で表される有機基である、上記[2]項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[4].
の少なくとも一つが、下記式(1-4)
【化5】

(式(1-4)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
で表される有機基である、上記[2]項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[5].
(B)一分子中にベンゼン骨格と二つ以上のエポキシ基を有するエポキシ当量が500g/eq.以下のエポキシ樹脂が、
下記式(2)
【化6】

(式(2)中、Rはそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示し、複数存在するRのうちの少なくとも2つはグリシジル基である。kは平均値を示し、0乃至30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-1)、
下記式(3)
【化7】

(式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を示す。pは平均値を示し1乃至30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-2)、
下記式(4)
【化8】

(式(4)中、n及びmは平均値を示し、nは1乃至30の範囲にある実数であり、mは0.1乃至30の範囲にある実数であり、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂(B-3)、
下記式(5)
【化9】

(式(5)中、qは平均値を示し、1乃至30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-4)、
下記式(6)
【化10】

で表されるフェノール誘導体と、エピハロヒドリンとの反応物であるエポキシ樹脂(B-5)、
1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と1分子中に少なくとも1個以上の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物を反応させることにより得られるエポキシ樹脂(B-6)、
下記式(7)
【化11】

(式(7)中、sは平均値を示し、1乃至10の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-7)、
下記式(8)
【化12】

(式(8)中、tは平均値を示し、0.1乃至5の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-8)、及び
下記式(9)
【化13】

(式(9)中、rは平均値を示し、0.1乃至6の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-9)からなる群から選択される1種類又は2種類以上である、
上記[1]~[4]項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[6].
上記[1]~[5]項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を含むドライフィルムレジスト。
[7].
上記[1]~[5]項のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物又は上記[6]項に記載のドライフィルムレジストの硬化物。
[8].
上記[7]項に記載の硬化物を含むウエハーレベルパッケージ。
[9].
基板と被着体との接着層であって、上記[7]項に記載の硬化物を含む接着層。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、解像度に優れると共に現像後残渣の発生を制御する効果も高く、その硬化物は高温時にも高い弾性率を維持すると共に、シリコンウエハ以外の各種の基板への密着性に優れる。そのため、このネガ型感光性樹脂組成物は、MEMS部品、マイクロマシン部品及び半導体パッケージ部品等に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について説明する。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)前記式(1)で表されるトリアジン環を有する化合物(以下、単に「(A)成分」と記載する)を含有する。
式(1)中、Rはそれぞれ独立に有機基を表す。式(1)のRが表す有機基は、本樹脂組成物の所望の特性を阻害するものでない限り、特に限定されない。例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基及びシアノ基等の官能基、臭素原子、塩素原子、弗素原子、沃素原子等のハロゲノ基、これらの基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物又は複素環化合物から水素原子を一つ除いた残基も、式(1)のRが表す有機基の範疇に含まれる。
但し、式(1)中のRの少なくとも一つはグリシジル基を有する有機基又はオキセタニル基を有する有機基を表す。即ち、式(1)で表されるトリアジン環を有する化合物は、少なくとも一つのグリシジル基又はオキセタニル基を有する化合物である。
式(1)中のRが表すグリシジル基又はオキセタニル基を有する有機基は、グリシジル基又はオキセタニル基を有してさえすれば特に限定されないが、上記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される有機基であることが好ましい。
【0013】
式(1-1)中、Rは炭素数1乃至8のアルキレン基を表す。
式(1-1)のRが表す炭素数1乃至8のアルキレン基は、炭素数が1乃至8であれば直鎖状、分岐鎖状又は環状の何れにも限定されない。Rが表すアルキレン基はアルキル基を置換基として有していてもよい。置換基としてアルキル基を有している場合はアルキレン基の炭素数とアルキル基の炭素数の合計が1乃至8であればよい。
式(1-1)が表すアルキレン基の主鎖の炭素数は1乃至6であることが好ましい。該炭素数1乃至6のアルキレンの具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、イソヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。得られる硬化物のリソグラフィー性、接着性、耐熱性の観点から、メチレン基、エチレン基又はn-プロピレン基が好ましく、n-プロピレン基がより好ましい。
【0014】
式(1-2)中、Rは炭素数1乃至8のアルキレン基を表し、Rは炭素数1乃至6のアルキル基を表す。
式(1-2)のRが表す炭素数1乃至8のアルキレン基としては、式(1-1)のRが表す炭素数1乃至8のアルキレン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
式(1-2)のRが表す炭素数1乃至6のアルキル基は、炭素数が1乃至6であれば直鎖状、分岐鎖状又は環状の何れにも限定されない。
式(1-2)のRが表す炭素数1乃至6のアルキル基としては、炭素数1乃至6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、及び炭素数5又は6の環状のアルキル基(シクロペンチル基及びシクロヘキシル基)が挙げられる。Rは、炭素数1乃至6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることが好ましい。Rは、直鎖の炭素数1乃至4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
【0015】
また、(A)成分としては、Rに前記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される有機基と前記式(1-4)で表される有機基とを有する化合物を用いることも好ましい。式(1-4)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0016】
(A)成分として好ましい式(1)で表される化合物を以下に記載する。
(i)Rの全てが、Rがn-プロピレン基の式(1-1)で表される有機基の化合物。
(ii)Rの全てが、Rがメチレン基の式(1-1)で表される有機基の化合物。
(iii)Rの全てが、Rがメチレン基であってRがエチル基の式(1-2)で表される有機基の化合物。
(iv)Rの全てが、式(1-3)で表される有機基の化合物。
(v)Rの一つが、Rがメチレン基の式(1-1)で表される有機基であって、Rの残りの二つが、Rが水素原子の式(1-4)で表される有機基の化合物。
(vi)Rの二つが、Rがメチレン基の式(1-1)で表される有機基であって、Rの残りの一つが、Rが水素原子の式(1-4)で表される有機基の化合物。
【0017】
(A)成分は、市販品として入手することが可能である。その具体例としては、TEPIC(上記(ii))、TEPIC-VL(上記(i))、TEPIC-PAS(上記(ii)と(ii)の変性体の混合物)、TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SP、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L、TEPIC-FL及びTEPIC-UC(上記(v))等のTEPICシリーズ(日産化学社製)や、MA-DGIC(上記(iv))、DA-MGIC(上記(vi))及びTOIC(上記(iii))等(四国化成製)が挙げられる
【0018】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(B)一分子中にベンゼン骨格と二つ以上のエポキシ基を有するエポキシ当量が500g/eq.以下のエポキシ樹脂であって、重量平均分子量が500以上であるか及び/又は軟化点が40℃以上であるエポキシ樹脂(以下、単に「(B)成分」と記載する)を含有する。(B)成分としては、例えば長鎖ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び長鎖ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の長鎖ビスフェノール型エポキシ樹脂や、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロロヒドリン及びメチルエピクロロヒドリンのようなハロヒドリンとを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂であって、エポキシ当量、重量平均分子量、軟化点が前記の条件を満たすエポキシ樹脂が挙げられる。(B)成分は、エポキシ当量、重量平均分子量、軟化点が前記の条件を満たすエポキシ樹脂であって、ベンゼン環を有する多官能エポキシ樹脂でありさえすればこれらに限定されるものではない。
この様な(B)成分の具体例としては、KM-N-LCL、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-4400H、EPPN-201、EPPN-501、EPPN-502、XD-1000、BREN-S、NER-7604、NER-7403、NER-1302、NER-7516、NC-3000H(いずれも商品名、日本化薬株式会社製)及びエピコート157S70(商品名、三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
これらの(B)成分の中でも、硬化物の耐薬品性、プラズマ耐性及び透明性が高く、さらに硬化物が低吸湿である等の理由で、前記エポキシ樹脂(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、(B-6)、(B-7)、(B-8)及び(B-9)が好ましい。(B-1)、(B-2)及び(B-3)がより好ましく、(B-1)、(B-2)及び(B-3)を混合して用いることが更に好ましい。
【0020】
これら好ましい(B)成分のうち、エポキシ樹脂(B-5)は上記式(6)で表されるフェノール誘導体と、エピハロヒドリンとの反応物である。
エポキシ樹脂(B-5)の一般的な合成方法としては、例えば、式(6)で表されるフェノール誘導体及びエピハロヒドリン(エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等)を溶解し得る溶剤に溶解した混合溶液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ類を添加し、反応温度まで昇温して付加反応及び閉環反応を行った後、反応液の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、最後に油層から溶剤を留去する方法が挙げられる。
前記の合成反応に用いる式(6)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの使用比率によって、主成分の異なるエポキシ樹脂(B-5)が得られることが知られている。例えば、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対して過剰量のエピハロヒドリンを用いた場合、式(6)中の3つのフェノール性水酸基の全てがエポキシ化された3官能のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(B-5)が得られる。フェノール性水酸基に対するエピハロヒドリンの使用量が少なくなるのに伴い、複数のフェノール誘導体のフェノール性水酸基がエピハロヒドリンを介して結合し、残りのフェノー性水酸基がエポキシ化された重量平均分子量の大きい多官能エポキシ樹脂の含有率が増加する。
この様な多量体のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(B-5)を得る方法としては、前記のフェノール誘導体とエピハロヒドリンの使用比率で制御する方法の他に、いったん得られたエポキシ樹脂(B-5)に更にフェノール誘導体を反応させる方法も挙げられる。該方法で得られたエポキシ樹脂(B-5)も本発明の感光性樹脂の含有するエポキシ樹脂(B-5)の範疇に含まれる。
式(6)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの反応は、フェノール誘導体1モル(水酸基3モル相当)に対して、エピハロヒドリンを通常0.3乃至30モル、好ましくは1乃至20モル、より好ましくは3乃至15モルの割合で用いて行われる。
【0021】
本発明の樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂(B-5)としては、式(6)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂であれば、フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂またはフェノール誘導体の多量体のエポキシ樹脂のいずれを主成分として含有するエポキシ樹脂(B-5)でも用いることができる。エポキシ樹脂(B-5)が溶剤溶解性に優れることや、軟化点が低く取扱い易いことから、フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂、フェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂(式(6)で表されるフェノール誘導体2つがエピハロヒドリンを介して結合した構造を有するエポキシ樹脂)またはフェノール誘導体の三量体のエポキシ樹脂(式(6)で表されるフェノール誘導体3つがエピハロヒドリンを介して結合した構造を有するエポキシ樹脂)のいずれかを主成分とするエポキシ樹脂(B-5)が好ましい。フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂またはフェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(B-5)がより好ましい。
【0022】
以下に、式(6)で表されるフェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂(B-5)の具体的な構造を式(6-1)に示した。
【0023】
【化14】
【0024】
以下に、式(6)で表されるフェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂(B-5)の具体的な構造を下記式(6-2)に示した。
【0025】
【化15】
【0026】
以下に、式(6)で表されるフェノール誘導体の三量体のエポキシ樹脂(B-5)の具体的な構造を下記式(6-3)に示した。
【0027】
【化16-1】

【化16-2】

【0028】
なお、本発明において例えば式(2)で表されるエポキシ樹脂とは、式(2)で表されるエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂を意味するものであり(繰り返し単位数kは平均値であり)、該エポキシ樹脂を製造する際に生成する副成分や、該エポキシ樹脂の高分子量体等が含有される場合も含まれる。式(2)以外の式を引用したエポキシ樹脂も同様である。
【0029】
前記式(2)で表されるエポキシ樹脂(B-1)の具体例としては、KM-N-LCL(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量195乃至210g/eq.、軟化点78乃至86℃)、エピコート157(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、エポキシ当量180乃至250g/eq.、軟化点80乃至90℃)、EPON SU-8(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ社製、エポキシ当量195乃至230g/eq.、軟化点80乃至90℃)等が挙げられる。
前記式(3)で表されるエポキシ樹脂(B-2)の具体例としては、NC-3000シリーズ(商品名、ビフェニル-フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量270乃至300g/eq.、軟化点55乃至75℃)が挙げられる。NC-3000シリーズの好ましい例として、NC-3000Hが挙げられる。
【0030】
前記式(4)で表されるエポキシ樹脂(B-3)の具体例としては、NER-7604及びNER-7403(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールF型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量200乃至500g/eq.、軟化点55乃至75℃)、NER-1302及びNER-7516(いずれも商品名、アルコール性水酸基の一部がエポキシ化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、エポキシ当量200乃至500g/eq.、軟化点55乃至75℃)等が挙げられる。
前記式(5)で表されるエポキシ樹脂(B-4)の具体例としては、EOCN-1020(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量190乃至210g/eq.、軟化点55乃至85℃)が挙げられる。
前記式(6)で表されるフェノール誘導体と、エピハロヒドリンとの反応物であるエポキシ樹脂(B-5)の具体例としては、NC-6300(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量230乃至235g/eq.、軟化点70乃至72℃)が挙げられる。
エポキシ樹脂(B-6)としては、特許第2698499号公報に製法が記載されたポリカルボン酸エポキシ化合物が挙げられる。そのエポキシ当量及び軟化点は、エポキシ樹脂(B-6)の原料として用いるエポキシ樹脂の種類や導入する置換基の導入率によって種々調整が可能である。
【0031】
前記式(7)で表されるエポキシ樹脂(B-7)の具体例としては、EPPN-201-L(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量180乃至200g/eq.、軟化点65乃至78℃)が挙げられる。
前記式(8)で表されるエポキシ樹脂(B-8)の具体例としては、EPPN-501H(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量162乃至172g/eq.、軟化点51乃至57℃)、EPPN-501HY(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量163乃至175g/eq.、軟化点57乃至63℃)、EPPN-502H(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量158乃至178g/eq.、軟化点60乃至72℃)が挙げられる。
前記式(9)で表されるエポキシ樹脂(B-9)の具体例としては、XD-1000(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量245乃至260g/eq.、軟化点68乃至78℃)が挙げられる。
【0032】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が含有する(B)成分のエポキシ当量は150乃至500であることが好ましく、150乃至450であることがより好ましい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が含有する(B)成分の重量平均分子量は500乃至15000であることが好ましく、500乃至9000であることがより好ましい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物が含有する(B)成分の軟化点は40乃至120℃であることが好ましく、40乃至110℃、55乃至120℃、または55℃乃至110℃であることがより好ましい。
なお、本発明におけるエポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法で測定した値である。本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した重量平均分子量の値である。本発明における軟化点とは、JIS K7234に準拠した方法で測定した値である。
【0033】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(B)成分に対して1乃至50質量%であり、2乃至30質量%であることが好ましく、3乃至20質量%であることが更に好ましい。
また、別の態様において、本発明のネガ型感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(B)成分に対して1乃至30質量%、1乃至20質量%、2乃至50質量%、2乃至20質量%、3乃至50質量%、または3乃至30質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(C)光カチオン重合開始剤(以下、単に「(C)成分」と記載する)を含有する。
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(C)成分は、紫外線、遠紫外線、KrFやArFなどのエキシマレーザー、X線および電子線などの放射線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となりうる化合物である。
(C)成分としては、芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩を挙げることができる。
芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、商品名 ロードシルPI2074)、ジ(4-ターシャリブチル)ヨードニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI BBI-C1)等が挙げられる。
芳香族スルホニウム錯塩の具体例としては、4-チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製、商品名 CPI-101A)、チオフェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名 CPI-210S)、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製、商品名 SP-172)、4-チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物(ACETO Corporate USA製、商品名 CPI-6976)及びトリフェニルスルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI TPS-C1)、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(BASF社製、商品名 GSID 26-1)、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート(BASF社製、商品名 イルガキュアPAG290)等が挙げられる。これらの(C)成分のうち、本発明では感光画像形成工程において、垂直矩形加工性が高く、熱安定性が高い、芳香族スルホニウム錯塩が好ましい。これらの中でも、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0035】
(C)成分は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において単独で用いてもよく2種以上を併用しても用いてもよい。(C)成分は光を吸収する作用を持っている為、厚膜(例えば50μm以上)の場合に(C)成分を多量に(例えば15質量%を超える量で)使用したときには、硬化させる際の光を深部へ充分に透過させることが難しくなる傾向がある一方で、少量(例えば3質量%未満の量で)使用したときには充分な硬化速度を得ることが容易でない。薄膜の場合には、(C)成分の少量(例えば1質量%以上)の添加で充分な性能を発揮する。逆に、薄膜の場合に、(C)成分を多量に使用したときには、深部への光の透過に関しては問題ないが、高価な開始剤を必要以上の量で使用することになるため、経済的ではない。これらの点から、本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分の配合割合は、(A)成分と(B)成分の合計質量に対して、通常0.1乃至10質量%、好ましくは0.5乃至5質量%である。また、別の態様において、本発明の感光性樹脂組成物における(C)成分の配合割合は、(A)成分と(B)成分の合計質量に対して、0.1乃至5質量%、または0.5乃至10質量%であってよい。但し、(C)成分の、波長300乃至380nmにおけるモル吸光係数が高い場合は、感光性樹脂組成物を用いる際の膜厚に応じて適切な配合量に調整する必要がある。
【0036】
本発明のネガ感光性樹脂組成物には、(B)成分のエポキシ樹脂とは別に、パターンの性能を改良するため混和性のある(D)反応性エポキシモノマーを添加してもよい。(D)成分の反応性エポキシモノマーとしては、室温で液状のグリシジルエーテル化合物が使用できる。例えば、グリシジルエーテル化合物として、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(株式会社ADEKA製、ED506)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(株式会社ADEKA製、ED505)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(低塩素タイプ、ナガセケムテックス株式会社製、EX321L)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル(株式会社ADEKA製、EP4088L)等が挙げられる。さらに、これらエポキシモノマーは、塩素含有量が一般的に高いため、低塩素製造法又は精製工程を経た低塩素タイプのものを使用することが好ましい。これらは、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0037】
反応性エポキシモノマー成分は、レジストの反応性や硬化膜の物性を改善する目的で使用される。反応性エポキシモノマー成分は、液状のものが多く、該成分が液状である場合に感光性樹脂組成物の総量に対して20質量%よりも多く配合すると、溶剤除去後の皮膜にベタツキが生じることでマスクスティッキングが起きやすくなるなど適当でない場合がある。この点から、モノマー成分を配合する場合には、その配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して10質量%以下(かつ0質量%超)が好ましく、特に7質量%以下が好適である。
【0038】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上させるために溶剤を添加してもよい。溶剤としては、インキ、塗料等に通常用いられる有機溶剤であって、感光性樹脂組成物の各構成成分を溶解可能なものは特に制限なく用いることができる。溶剤の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレン及びテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ-ブチロラクトン等のエステル類、メタノール、エタノール、セロソルブ及びメチルセロソルブ等のアルコール類、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0039】
これら溶剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。溶剤成分は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的で加えるものである。主成分の溶解性や成分の揮発性、組成物の液粘度等を適正に保持する為の溶剤の使用量としては、ネガ型感光性樹脂組成物中に95質量%以下が好ましく、より好ましくは10乃至90質量%である。
【0040】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、基板に対する組成物の密着性を向上させる目的で、混和性のある密着性付与剤を使用してもよい。密着性付与剤としては、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができる。好ましくはシランカップリング剤が挙げられる。
【0041】
シランカップリング剤としては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これら密着性付与剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
密着性付与剤は、主成分とは未反応性のものであるため、基材界面で作用する成分以外は硬化後に残存成分として存在することになる。従って、密着性付与剤を多量に使用すると物性低下を生じることがある。基材によっては、少量でも効果を発揮する点から、物性低下を生じない範囲内での使用が適当である。密着性付与剤の使用割合は、ネガ型感光性樹脂組成物中に15質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。
【0042】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、さらに紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光カチオン重合開始剤に供与するために増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えばチオキサントン類、9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体)が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1乃至4のアルコキシ基が挙げられる。9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体は、さらに置換基を有していても良い。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1乃至4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、例えばメチル、エチル、プロピル等の炭素数1乃至4のアルキルが挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0043】
チオキサントン類の具体例としては、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン及び2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。2,4-ジエチルチオキサントン(商品名 カヤキュアーDETX-S、日本化薬株式会社製)又は2-イソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0044】
9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体としては、例えば9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジエトキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジプロポキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジメトキシ-2-クロロアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル、9,10-ジエトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル、9,10-ジメトキシアントラセン-2-カルボン酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0045】
これらの増感剤は、単独であるいは2種以上混合して用いることができる。2,4-ジエチルチオキサントン及び、9,10-ジメトキシ-2-エチルアントラセンの使用が最も好ましい。増感剤成分は、少量で効果を発揮する為、その使用割合は、(C)成分に対し30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0046】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、(C)成分に由来するイオンによる悪影響を低減する必要がある場合には、トリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム及びトリスブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム及びトリスパラメチルフェノキシアルミニウム等のフェノキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミニウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチラトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム及びジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物などのイオンキャッチャーを添加してもよい。これらのイオンキャッチャーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の全固形分(溶剤を除く全ての成分)に対して10質量%以下であってよい。
【0047】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を添加することができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。増粘剤としては、例えばオルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられる。消泡剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系および高分子系等の消泡剤が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合、その使用量は本発明の感光性樹脂組成物中に、例えば、それぞれ30質量%以下が一応の目安である。この量は、使用目的に応じ適宜増減し得る。
【0048】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤を添加することができる。無機充填剤の添加量は、本発明の感光性組成物中に60質量%以下であってよい。
【0049】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、必須成分である(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、必要に応じて溶剤や各種の添加剤等を配合した後、通常の方法で混合、攪拌するだけで調製可能である。必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー又は3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過を施してもよい。
【0050】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、好ましくは溶剤を添加した溶液の状態で用いられる。溶剤に溶解した本発明のネガ型感光性樹脂組成物を使用するには、最初に、例えばシリコン、アルミニウム、銅等の金属基板、リチウムタンタレート、ガラス、シリコンオキサイド、シリコンナイトライド等のセラミック基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート等の基板上に、スピンコーターを用いて本発明のネガ型感光性樹脂組成物を0.1乃至1000μmの厚みで塗布することができる。次いで、60乃至130℃で5乃至60分間程度の加熱条件で溶剤を除去してネガ型感光性樹脂組成物層を形成した後、プリベークを施してから、所定のパターンを有するマスクを載置して紫外線を照射することができる。次いで、50乃至130℃で1乃至50分間程度の条件で加熱処理(露光後ベーク)を行った後、未露光部分に対して現像液を用いて室温乃至50℃で1~180分間程度の条件で現像処理を行ってパターンを形成することができる。最後に130乃至230℃の条件で加熱処理(ハードベーク処理)をすることで、諸特性を満足する硬化物を得ることができる。これらの処理条件は、限定されるものではなく、典型的な一例である。現像液としては、例えばγ-ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、あるいは、前記有機溶剤と水の混合液等を用いることができる。現像にはパドル型、スプレー型、シャワー型等の現像装置を用いてもよい。必要に応じて超音波照射を行ってもよい。なお、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を使用するにあたり好ましい金属基板としては、アルミニウムが挙げられる。
【0051】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、ベースフィルム上にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて該組成物を塗布した後、45乃至100℃に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去することにより、また、必要に応じてカバーフィルム等を積層することによりドライフィルムレジストとすることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚みは、2乃至100μmに調整することができる。ベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが使用される。これらフィルムは必要に応じてシリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されたフィルムを用いてもよい。このドライフィルムレジストを使用するには、例えばカバーフィルムをはがして、ハンドロール又はラミネーター等により、温度40乃至100℃、圧力0.05乃至2MPaで基板に転写し、前記溶剤に溶解したネガ型感光性樹脂組成物と同様に露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。
【0052】
前述のようにネガ型感光性樹脂組成物をドライフィルムとして供給すれば、支持体上への塗布、および乾燥の工程を省略することが可能である。それによって、より簡便に本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化物パターンの形成が可能となる。
【0053】
MEMSパッケージ及び半導体パッケージとして用いる場合は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物でMEMS又は半導体デバイスを被覆、又はMEMS又は半導体デバイスに対して中空構造を作製することにより使用できる。MEMS及び半導体パッケージの基板としては種々の形状のシリコンウエハ上に、スパッタリング又は蒸着によりアルミニウム、金、銅、クロム、チタン等の金属薄膜を10乃至5000Åの膜厚で成膜し、エッチング法等によりその金属を微細加工した基板等が用いられる。場合によっては、さらに無機の保護膜としてシリコンオキサイドやシリコンナイトライドが10乃至10000Åの膜厚で成膜されることもある。次いで基板上に、MEMS又は半導体デバイスを作製又は設置し、このデバイスを外気から遮断するために、被覆又は中空構造を作製する必要がある。本発明のネガ型感光性樹脂組成物で被覆する場合は、前記の方法で行なうことができる。また、中空構造を作製する場合は、基板上へ前記の方法で隔壁を形成させ、その上にさらに、前記の方法でドライフィルムをラミネート及び隔壁上の蓋となるようにパターニングを行なうことで、中空パッケージ構造を作製することができる。また、作製後、必要に応じて130乃至200℃で10乃至120分間、加熱処理をすることで諸特性を満足するMEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品が得られる。
【0054】
なお、「パッケージ」とは、基板、配線、素子等の安定性を保つため、外気の気体、液体の浸入を遮断するために用いられる封止方法、あるいはその製造物である。本明細書において言及される「パッケージ」とは、MEMSのような駆動部があるものや、SAWデバイス等の振動子をパッケージするための中空パッケージや、半導体基板、プリント配線版、配線等の劣化を防ぐために行う表面保護や、樹脂封止等を表す。さらに、本明細書において言及される「ウエハーレベルパッケージ」とは、ウエハーの状態で保護膜、端子、配線加工、パッケージまで行い、その後チップへ切り出すパッケージ工法、あるいはその製造物のことを表す。
【0055】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、良好な画像解像度と高温時の高い弾性率を有し、かつシリコンウエハ以外の各種の基板への密着性に優れるという優れた効果を発現する。従って、このネガ型感光性樹脂組成物は、例えば、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作等に利用される。中でも特に、MEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品において有用である。
【0056】
なお、製品としてのネガ型感光性樹脂組成物(複数成分の混合物)に含まれる(A)成分のトリアジン環を有する化合物、(B)成分の一分子中にベンゼン骨格と二つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、および(C)光カチオン重合開始剤の各成分の構造同定及び含有割合の分析は、H-NMR、13C-NMR、LC-MS測定等により、標品についての分析結果と比較対照することによって行うことができる。また、(B)成分のエポキシ樹脂の構造が判明すれば、そのエポキシ当量、重量平均分子量および軟化点を得ることができる。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例により説明する。これらの実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、本発明の範囲は以下に示す例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1乃至4、比較例1及び比較例2(感光性樹脂組成物の調製)
表1に記載の配合量(単位は質量部)に従い、(A)トリアジン環を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光カチオン重合開始剤および他の成分を、攪拌機付きフラスコで60℃、2時間攪拌混合して本発明及び比較用のネガ型感光性樹脂組成物を得た。
【0059】
(感光性樹脂層の塗布、乾燥、露光、現像)
シリコン(Si)ウエハ基板及びシリコンウエハ上にシリコンナイトライド(SiN)を1000Åの膜厚でプラズマCVD成膜した基板の各々の上に、スピンコーターを用いて実施例1乃至4、比較例1及び比較例2の各ネガ型感光性樹脂組成物を、膜厚(乾燥後の膜厚)が20μmとなるよう塗布した後、ホットプレートを用いて120℃×2分間の条件で乾燥して各ネガ型感光性樹脂組成物層を設けた。このネガ感光性樹脂組成物層を設けた基板に、ホットプレートを用いて65℃×5分間、次いで95℃×15分間の条件でプリベークを施し、更にi線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を施した。露光後の基板にホットプレートを用いて95℃×6分間の露光後ベーク(PEB)を施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて浸漬法により23℃×6分間の現像処理を行い、これに対して200℃のオーブン(窒素雰囲気下)で60分間ハードベーク処理を行い、Siウエハ基板及びSiNを製膜した基板上に硬化したネガ型感光性樹脂組成物のパターンを得た。
【0060】
(ネガ型感光性樹脂組成物の感度評価)
前記のシリコン(Si)ウエハ基板上でのパターン露光において、マスクの転写精度が最良となる露光量を最適露光量とし、それぞれのネガ型感光性樹脂組成物の感度を評価した。この評価結果で最適露光量の値が小さい組成物ほど感度が高いことを意味する。結果を下記表1に示した。
【0061】
(ネガ型感光性樹脂組成物の解像性評価)
前記のネガ型感光性樹脂組成物の感度評価で得られた最適露光量によるパターン露光において、ラインアンドスペースが1:1で残渣なく解像されたレジストパターン中、基板へ密着している最も細いパターンの幅を測定してネガ型感光性樹脂組成物の解像性を評価した。結果を下記表1に示した。
評価基準
○(良好):最も細いパターン幅が10μm以下であった。
×(不良):最も細いパターン幅が10μmを超えた。
【0062】
(ネガ型感光性樹脂組成物のSi及びSiNへの密着力評価)
ここでいう密着力とは、シェアツールを用いてパターン側面部から力を加え、基板からパターンが剥離した時点でのシェア強度(せん断強度)である。この値が高い方が基板と樹脂組成物との密着力が高く、好ましい。具体的には、各基板上に、前記で得られた最適露光量で100μm×100μm(膜厚は20μm)のブロック状のレジストパターンを形成し、ボンディングテスター(レスカ社製)を使用し、100μmのシェアツールを用いて50μm/secの速さで基板からの高さ3μmの位置に横方向から負荷を与えた時の破壊荷重を計測した。結果を下記表1に示した。
【0063】
(ネガ型感光性樹脂組成物の耐熱性評価)
前記のネガ型感光性樹脂組成物の感度評価で得られた最適露光量でネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を作製し、DMA測定装置(TAインスツルメント社製 RSA-G2)を用いて、引張モード、1Hz、Ramp rate 3℃/secの条件で、175℃での弾性率を測定した。結果を下記表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
尚、表1における(A-1)乃至(G)はそれぞれ以下のとおりである。
(A-1):商品名 TEPIC-VL、日産化学工業株式会社製、エポキシ当量135g/eq.(式(1)で表わされるトリアジン環を有する化合物であって、Rの全てが、Rがn-プロピレン基の式(1-1)で表される有機基の化合物)
(A-2):商品名 TEPIC-UC、日産化学工業株式会社製、エポキシ当量195g/eq.(式(1)で表わされるトリアジン環を有する化合物であって、Rの一つが、Rがメチレン基の式(1-1)で表される有機基であって、Rの残りの二つが、Rが水素原子の式(1-4)で表される有機基の化合物)
(B-1):商品名 KM-N-LCL 日本化薬株式会社製、エポキシ当量210g/eq.、軟化点85℃、重量平均分子量8000、平均繰り返し数k=4(式(2)で表わされるエポキシ樹脂)
(B-2):商品名 NC-3000H、日本化薬社株式会製、エポキシ当量285g/eq.、軟化点65℃、重量平均分子量700、平均繰り返し数p=2(式(3)で表わされるエポキシ樹脂)
(B-3):商品名 NER-7604、日本化薬株式会社製、エポキシ当量347g/eq.、軟化点71℃、重量平均分子量9000、平均繰り返し数n=4、m≦1(式(4)で表わされるエポキシ樹脂)
(B-4):商品名 jER-1007 三菱化学株式会社製、エポキシ当量2000g/eq.、重量平均分子量2900
(C-1):光酸発生剤(トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート、商品名 PAG290、BASF社製)
(D-1):商品名 EX-321L、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量140g/eq.(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)
(D-2):商品名 EP-4088L 株式会社ADEKA製、エポキシ当量165g/eq.(ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル)
(E):シランカップリング剤(商品名 S-510、チッソ株式会社製)
(F):レベリング剤(商品名 フタージェント222F、株式会社ネオス製)
(G):溶剤(エチレングリコールジメチルエーテル、商品名 ハイソルブMMM、東邦化学工業株式会社製)
【0066】
表1の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物(実施例1乃至4)は比較例1及び2のネガ型感光性樹脂組成物に比べて175℃での弾性率が高く、かつSi及びSiNへの密着性も高い(少なくとも匹敵する)ことは明らかである。
【0067】
(ネガ型感光性樹脂組成物のLT及びAlへの密着力評価)
前記の感度評価及びSi並びにSiNへの密着力評価と同様の方法で、実施例1と比較例1のネガ型感光性樹脂組成物のLT(リチウムタンタレート)基板及びAl(アルミニウム)基板への密着力を評価した。結果を下記表2に示した。尚、表2中の数値の単位は「MPa」である。
【0068】
【表2】
【0069】
表2の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物(実施例1)は比較例1のネガ型感光性樹脂組成物に比べてLT及びAlへの密着性も高いことは明らかである。
【0070】
(現像後残渣評価用サンプルの作製)
ここでいう現像後残渣とは、現像後に未露光部分に残存する、本来は現像処理により除去されなければならないネガ型感光性樹脂組成物の溶け残りのことである。
PETフィルム上に、アプリケーターを用いて実施例1、実施例3、実施例4、比較例1及び比較例2の各ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した後、ホットプレートを用いて120℃×2分間の条件で溶剤を乾燥して厚み20μmの各ネガ型感光性樹脂組成物層(ドライフィルム)を設けた。前記で得られた各ネガ型感光性樹脂組成物層の上に、PETフィルムを、ラミネーターを用いて60℃、0.3MPaの条件で貼り付けて得られた評価用のサンプルを、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下に2週間さらした。
【0071】
(現像後残渣の評価)
上記で得られた評価用サンプルから片面のPETフィルムを剥がして露出したネガ型感光性樹脂組成物層を、シリコン(Si)ウエハ基板上に、ラミネーターを用いて60℃、0.3MPaの条件で貼り合せた後、ホットプレート上で65℃×5分間の熱処理を行った。次に、残り片面のPETフィルムを剥がして得られたネガ型感光性樹脂組成物層付きのシリコン(Si)ウエハ基板に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて浸漬法により23℃×6分間の現像処理を行った。現像処理後のシリコン(Si)ウエハ基板の未露光部分を顕微鏡(ニコン社製 ECLIPS L150)を用いて50倍の倍率で観察し、残渣が無い場合を○(良好)、残渣が有る場合を×(不良)とした。結果を下記表3に示した。
【0072】
【表3】
【0073】
表3の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物(実施例1、実施例3、実施例4)は比較例1及び比較例2のネガ型感光性樹脂組成物に比べて現像後残渣の発生を抑制する効果が高いことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、様々な基板に対して密着性の高いパターン形成が可能であり、かつ現像後残渣の発生を制御する効果も高いことから、MEMSパッケージ部品や半導体パッケージ等の分野に適している。特にSAW/BAWフィルタなどのポリマーキャッピングにおいて、本発明の感光性樹脂組成物は、高温での弾性率と様々な材質への密着性を併有することから、モールディング時におけるキャビティ形成に有利であり、最終的な製品をより薄くすることが可能であり、デザインの自由度を広げることが期待できる。