(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】インク印刷機における、相互にずらして配置されたプリントヘッドの印刷要素を駆動制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
B41J2/01 209
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017026978
(22)【出願日】2017-02-16
【審査請求日】2020-02-03
(31)【優先権主張番号】10 2016 102 683.2
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516255493
【氏名又は名称】キャノン プロダクション プリンティング ホールディング ビー. ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】Canon Production Printing Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】Van der Grintenstraat 10, 5914 HH Venlo, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100194858
【氏名又は名称】田中 久子
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ヴォルフ
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171140(JP,A)
【文献】特開2014-097603(JP,A)
【文献】特開2011-073186(JP,A)
【文献】特開2010-076230(JP,A)
【文献】特開2010-149500(JP,A)
【文献】特開2010-155374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0067501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク印刷機における、相互にずらして配置された、重畳しているプリントヘッドの印刷要素を駆動制御するための方法であって、
隣接しているプリントヘッド(5)は重畳領域(10)を有しており、当該重畳領域(10)内に、2つのプリントヘッド(5)の印刷要素(DE)が位置しており、
印刷像(DB)がプリンター制御部(2)において、それぞれ、ピクセル網目スクリーン(PR)にラスタライズされ、
前記ピクセル網目スクリーン(PR)からビットマップが展開され、当該ビットマップは、ビットマップデータ列およびビットマップデータ行で配置されたビットマップデータを有しており、
各ビットマップデータ列はそれぞれ前記プリントヘッド(5)の少なくとも1つの印刷要素(DE)に割り当てられ、
前記重畳領域(10)内に位置する、前記プリントヘッド(5)の各印刷要素(DE)には、前記ビットマップの同じビットマップデータ列が割り当てられ、
ビットマップデータ列のビットマップデータに割り当てられた印刷ドットが、一方の前記プリントヘッド(5.1)の印刷要素(DE1)によっても、他方の前記プリントヘッド(5.2)の印刷要素(DE2)によっても印刷可能であるように、前記重畳領域(10)内の前記各印刷要素(DE)が駆動制御され、
前記重畳領域(10)におけるプリントヘッド(5)毎の印刷要素(DE)の数を求め、
前記一方のプリントヘッド(5.1)の前記重畳領域(10)における前記印刷要素(DE)に割り当てられている、前記ビットマップの前記ビットマップデータ列を2倍にし、これによって、前記重畳領域(10)における、前記ビットマップの各ビットマップデータを、2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の前記印刷要素(DE1,DE2)に割り当てることができ、
選択的に、前記ビットマップの前記ビットマップデータに応じた印刷ドットが、前記一方のプリントヘッド(5.1)の印刷要素(DE1)
と前記他方のプリントヘッド(5.2)の印刷要素(DE2)
との少なくとも一方によって印刷可能であり、
基準印刷像から、前記重畳領域(10)におけるトーン値曲線を求め、
前記トーン値曲線から、修正関数を導出し、当該修正関数に基づいて、前記重畳領域(10)におけるインキ着けでの損失が補償されるように、前記重畳領域(10)における前記印刷要素(DE)が駆動制御され、
前記修正関数は、計算規則としてまたはスクリーニングマトリックスとして、前記プリンター制御部(2)内に格納され、
前記重畳領域(10)における前記2つのプリントヘッド(5.1,5.2)へのピクセルの分配は、前記トーン値曲線から求められた修正関数に基づいて行われ、当該修正関数は、前記2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の隣接する印刷ドットのサブピクセル間隔を、入力量として含んでいる、ことを特徴とする、プリントヘッドの印刷要素を駆動制御するための方法。
【請求項2】
前記重畳領域(10)におけるプリントヘッド(5)毎の印刷要素(DE)の数を求め、
前記一方のプリントヘッド(5.1)の前記重畳領域(10)における前記印刷要素に割り当てられている、前記ビットマップの前記ビットマップデータ列を2倍にし、これによって、前記重畳領域(10)における、前記ビットマップの各ビットマップデータを、2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の前記印刷要素(DE)に割り当てることができ、
前記重畳領域(10)における前記ビットマップのビットマップデータに応じた前記印刷ドットが、それぞれ、前記2つのプリントヘッド(5.1または5.2)のうちの1つのプリントヘッドの印刷要素(DE1またはDE2)によってのみ印刷可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記重畳領域(10)における2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の各印刷要素(DE)は交互に、前記2つのプリントヘッド(5.1,5.2)に割り当てられている、前記重畳領域(10)における前記ビットマップのビットマップデータに応じて、印刷ドットを印刷する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記重畳領域(10)における2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の各印刷要素(DE)は、ランダム生成器によって制御されて、前記2つのプリントヘッド(5.1,5.2)に割り当てられている、前記重畳領域(10)における前記ビットマップのビットマップデータに応じて、印刷ドットを印刷する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記重畳領域(10)における2つのプリントヘッド(5.1,5.2)の各印刷要素(DE)は、前記重畳領域(10)を包囲しているビットマップデータに応じて、前記2つのプリントヘッド(5.1,5.2)に割り当てられている、前記重畳領域(10)における前記ビットマップのビットマップデータに応じて、印刷ドットを印刷する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記重畳領域(10)において、前記印刷像の残りの部分を印刷するプリントヘッド(5)の印刷要素(DE)が印刷を行う、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記修正関数は、前記トーン値曲線を逆写像する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記トーン値曲線から、前記重畳領域(10)における、所定数の、前記ビットマップの行が設定され、当該行にわたって、2倍、印刷されるべきピクセルが分配される、請求項1または7記載の方法。
【請求項9】
インキ着けの損失を補償するために、前記重畳領域(10)における前記ビットマップの前記行にわたってランダムに分配されて、隣接する2つのプリントヘッド(5.1および5.2)の所定数のピクセルを印刷させる重み付けファクターが前記トーン値曲線に基づいて特定される、請求項1または7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被印刷材料、例えば枚葉紙または種々の材料から成るウェブ状の被印刷材料、例えば巻取り紙の単色または多色印刷のために、インク印刷機が使用される。このようなインク印刷機の構造は公知である(例えば、欧州特許第0788882号明細書(EP 0 788 882 B1)を参照)。例えばドロップ・オン・デマンド(DoD)原理に従って動作するインク印刷機は、印刷ユニットとして、インクチャネルを含んでいるノズルを備えた1つのプリントヘッドまたは複数のプリントヘッドを有している。このノズルのアクチュエータは、プリンター制御部によって制御されて、インク滴を被印刷材料の方向へと向かわせる。このインク滴は被印刷材料上へ導かれ、これによって被印刷材料上で印刷ドットが印刷像のために被着される。このアクチュエータは、インク滴をサーマル方式(バブルジェット)またはピエゾ方式で生成することができる。
【0002】
例えばピエゾ方式のアクチュエータを備えた印刷要素を有しているプリントヘッドの構造は、米国特許第7281778号明細書(US 7 281 778 B2)から公知である。印刷要素は、ノズルプレート内に配置されているノズルで終了するインクチャネルを含んでおり、インクチャネルに配置されているアクチュエータを提供する。被印刷材料ウェブは、ノズルプレートを通過する。印刷が行われるべき場合には、印刷のために設けられたアクチュエータが、プリンター制御部によって駆動制御される。このアクチュエータは、その後、インクチャネル内のインクに圧力波を与える。この圧力波によって、インク滴は、ノズルから被印刷材料ウェブの方向へ吐出される。
【0003】
インクジェット印刷システムでは、1つの色の複数のインクプリントヘッドが、印字バー(Druckriegel)内に隣接して、かつ、相互にずらして配置可能であり、これによって、より大きい印刷幅若しくはより高い印刷解像度または印刷速度が得られる。印字バー内の複数のプリントヘッドはこの場合には、相互に機械的に配向されることが可能でなければならない、または、プリントヘッドのノズルの印刷時点は、電子的に調整可能でなければならない。これによって、印刷ドットは被印刷材料上で、印刷制御部によって設定された目標箇所上に吐出される。
【0004】
プリントヘッドを相互に、印字バー上に配置する際には、印刷時に、印刷像内に隙間が生じてはならない、ということに留意されなければならない。この目的を達成するために、隣接する2つのプリントヘッドのノズルが重畳領域に位置するように、プリントヘッドを相互にずらして配置することが公知である。独国特許出願公開第102010036957号明細書(DE 10 2010 036 957 A1)から、2つのプリントヘッドのこの種の配置が公知である。プリントヘッド内で、ノズルが複数の行で配置されており、ここで、隣接する行のノズルは相互にずらして、ノズルの射出時に、被印刷材料の搬送方向においてこれらのノズルが、直に隣接して配置されているように位置している。プリントヘッドの行のこれらのノズルは、この場合に、それぞれ斜めに位置している。
【0005】
欧州特許出願公開第1375146号明細書(EP 1 375 146 A1)には、ずらして、かつ、相互にある角度で配置されているプリントヘッドを有するインク印刷機において、それぞれ2つのプリントヘッドの重畳領域内に、2つのプリントヘッドの印刷要素が配置されていることが記載されている。この場合には、印刷動作時に、印刷要素の駆動制御によって、重畳領域内に、例えば、ノイズとなるストリップが生じることが回避されるべきである。このような問題を検討するために、3つの解決策が調査された。
・第1の解決方法では、重畳領域において、2つのプリントヘッドの印刷要素が印刷を行う。このような手法では、印刷像が重畳領域において濃くなってしまう。このような動作様式は、印刷像が面状の場合に使用される。
・第2の解決方法では、重畳領域において、2つのプリントヘッドの印刷要素が交互に吐出する。このような動作様式では、重畳領域において印刷像が、均斉のとれていないものになってしまう。
・第3の解決方法では、2つのプリントヘッドの重畳領域において、これら複数のプリントヘッドのうちの1つのプリントヘッドの印刷要素のみが吐出する。このような動作様式は、線の印刷時に有利であると見なされる。
【0006】
オフセット印刷に相応して、デジタル印刷では、印刷像は、公知のラスタライズ方法に従って、ピクセル網目スクリーンで表示され得る。プリンター制御部では、ビットマップデータから成るビットマップが、このピクセル網目スクリーンに相当する。ビットマップデータは、ピクセル網目スクリーンにおける個々のピクセルに、「1(被印刷材料上に印刷ドットを生成する)」が割り当てられているのか、または、「0(被印刷材料上に印刷ドットを生成しない)」が割り当てられているのかを示す。このような場合には、プリンター制御部内に、印刷像がビットマップとして格納される。ここで個々のビットマップデータ(印刷データとも称する)は、このビットマップデータに割り当てられている印刷要素が、インク滴を吐出するか否かを示す。この種のラスタライズされた印刷像のグレー値またはトーン値は、印刷ドットを有するPEL(printed element)と、印刷ドットを有してないPELとの比によって規定される。
【0007】
従って、高出力印刷システムは、複数の、相互にずらして配置されたプリントヘッドのアレイから成る。これは、プリントヘッドの境界を超えた、プリントヘッドの幅の何倍もの、シームレスな印刷を可能にする。ビットマップの形態で準備された印刷データは、プリンター制御部内の所定の座標系において、印刷要素に割り当てられ、行毎に印刷される。ここで、プリントヘッド相互の正確な調整には技術的に手間がかかる。なぜなら、10μmのオーダのずれによって既に、均一にインキ着けされた面において視認可能なストリップが形成され得るからである。
【0008】
印刷方向での調整が、さらに、滴形成時のタイミングの整合によって電子的に補償可能であるのに対し、特に、印刷方向に対して横向きの調整はこれまで、機械的な調整によってしか実現されていない。これは、高精度の機械要素、並びに、個々のプリントヘッド組み込み時および交換時の時間のかかる調整プロセスを必要とする。
【0009】
本発明によって解決されるべき課題は、インク印刷機におけるプリントヘッドアレイ内のプリントヘッドの動作方法を提供することである。ここでこのプリントヘッドアレイは、相互にずらされ、重畳している複数のプリントヘッドを有している。ここでは、重畳領域における、隣接するプリントヘッドの重畳作用を最小化することができる。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部分に記載されている方法によって解決される。
【0011】
印刷データに対するラスタライズプロセスにおける新たな修正方法に基づいて、重畳しているプリントヘッドのこれまでの機械的な調整作業は、これらのプリントヘッドに対するビットマップデータでの、局部的に制限された修正によって置き換えられる。この場合には、複数のプリントヘッドは相互に機械的に固定して、かつ、相互に、所定の重畳領域を伴って、印字バー上に組み込み可能である。
【0012】
印刷像は、プリンター制御部内に、行および列で配置されたビットマップデータから成るビットマップとして格納される。ここで、ビットマップの各列には、プリントヘッドの印刷要素が割り当て可能である。重畳領域内に位置する、プリントヘッドの印刷要素には、ビットマップの同じビットマップデータが割り当て可能である。ここで重畳領域におけるこれらの印刷要素は次のように駆動制御可能である。すなわち、ビットデータに割り当てられている印刷ドットが、一方のプリントヘッドの印刷要素によっても、他方のプリントヘッドの印刷要素によっても印刷可能であるように、駆動制御可能である。
【0013】
本発明の発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0014】
極めて簡易化された場合には、重畳領域における印刷要素の数に応じて、印刷像のビットマップの属する列が倍にされる。従って、重畳領域における、個々の印刷要素が、自身のビットマップ列によって結像される。ここで、重畳領域における印刷されるべきピクセルは、交互に、重畳している2つのプリントヘッドのうちの1つによって印刷され得る。
【0015】
ランダム生成器を用いることによって、場合によって、印刷像におけるモアレ作用を阻止することができる。このモアレ作用は、プリントヘッドへのビットマップデータの交互の割り当て時に発生し得る。
【0016】
さらに、より複雑なラスタライズアルゴリズムも可能である。これらのアルゴリズムは、ピクセルを、周囲のピクセルデータに応じて、一方のプリントヘッドか他方のプリントヘッドに割り当てる。例えば、このラスタライズアルゴリズムは、重畳領域において、印刷像の残りの部分を印刷するプリントヘッドの印刷要素が印刷を行うことを決定することができる。
【0017】
印刷像でのトーン値上昇は、著しく非線形であるので、プリントヘッドの印刷要素によって、重畳領域内に印刷された印刷ドットのオフセットが、サブピクセル領域において、さらに、視認可能な移行部を生じさせることがある。この問題を補償するために、基準印刷パターンで測定された、重畳領域におけるトーン値曲線を求めることができる。この場合には、2つのプリントヘッドへのピクセルの分配は、このトーン値曲線から展開された修正関数に基づいて、所期のように修正可能である。この修正関数は、入力量として、サブピクセル間隔を含む。全体的に、重畳領域において多少暗くされたインキ着けを実現するために、この修正関数に相応して、印刷されるべきピクセルの一部分を、2つのプリントヘッドによって同時に印刷することができる。
【0018】
従って、本発明の方法は、以下の利点を有する。
【0019】
隣接して配置された2つのプリントヘッドの重畳印刷領域における印刷像の欠陥を、2つのプリントヘッドに、印刷されるべきピクセルを分配することによって補償することができる。極めて簡易化された場合には、プリントヘッドの印刷要素のノズルが重畳している場合に、一方のプリントヘッドの印刷要素または他方のプリントヘッドの印刷要素が交互に、被印刷材料上に印刷ドットを生成することができる。さらに、ランダム生成器を用いて、2つのプリントヘッドの印刷要素へ、印刷されるべきピクセルを分配することができる。
【0020】
付加的な修正アルゴリズムは、サブピクセル領域における印刷ドットの間隔を検出することができ、補償曲線によって、ピクセル網目スクリーン生成に影響を与えることができる。
【0021】
概略図に示されている実施例に基づいて、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】インク印刷ユニットにおける複数の印字バーによるプリントヘッドアレイの基本的な図
【
図2】相互にずらされた5つのプリントヘッドから成る印字バーの基本的な図
【
図3】重畳領域が示されている、隣接して配置された2つのプリントヘッドのノズルプレートの部分的な平面図
【
図4】テキストに基づいた、プリントヘッドが隣接して配置されている場合の重畳作用を補償するためのステップの図
【0023】
インク印刷機の
図1では、被印刷材料3を印刷するためのインク印刷ユニット1、被印刷材料3のための搬送ユニットおよびプリンター制御部2が示されている。被印刷材料3に沿って、被印刷材料3の搬送方向PFで見て、複数のプリントヘッド5を有する印字バー4が並んで配置されている。カラー印刷の場合には、例えば、印刷されるべき色毎に、それぞれ1つの印字バー4が設けられ得る。被印刷材料3は、駆動ロール7、9によって、印字バー4を通過するように動かされる。これはここでは、ガイドロールを備えた回転サドル8上に位置する。印字バーユニットの入り口には、センサ6が配置可能である。このセンサ6は、被印刷材料3の移動運動に応じて、印刷クロックパルスT
Dを生成する。これは、プリンター制御部2に供給され、プリンター制御部2によって例えば、印刷のための印刷データがプリンター制御部2内に準備されている場合に、個々のプリントヘッド5のノズルにおいて、インク滴の吐出時点を定めるために用いられる。このセンサは例えば、ロータリーエンコーダーロールまたはエンコーダーロール6として構成可能であり、被印刷材料3によって駆動される。
【0024】
図2では、印字バー4は、例えば5つのプリントヘッド5.1~5.5を有している。印字バー4内のこれらのプリントヘッド5は、例えば相互にずらして、2列で配置されている。
図3は、隣接する2つのプリントヘッド5.1および5.2の重畳領域10を、プリントヘッド5.1および5.2の各ノズル面12の平面図で示している。印刷要素DEの終端部は、点によって示されている。被印刷材料3(図示されていない)の走行方向は、矢印PFによって示されている。隣接する2つのプリントヘッド5、例えばプリントヘッド5.1および5.2の重畳領域10内に、プリントヘッド5.1の印刷要素DE1と、プリントヘッド5.2の印刷要素DE2とが配置されている。従って、重畳領域10において、2つのプリントヘッド5.1、5.2の印刷要素DE1、DE2が、印刷ドットを、被印刷材料3上に生成する。従って、印刷時に、印刷像内にストリップが生じてしまう虞がある。
【0025】
以降で説明される本発明の方法によって、例えばストリップが印刷像において、被印刷材料3上に形成される虞が回避される。本発明の説明では、プリントヘッド5.1、5.2において、それぞれ4つの印刷要素DE1、DE2によって重畳領域10が設けられている、ということが仮定される。重畳領域10は、機械的な要素のチェーンにおける機械的なトレランス(ノズルの製造精度、設置点の精度、支持体フレームでの製造精度)の最大の合計より大きいべきである。従って、例えば、1200dpiの物理的な解像度(これは、約21μmの公称ノズル間隔に相当する)と、80μmの総トレランスとを有するプリントヘッド5の場合には、4ピクセルの公称重畳領域10が設けられ得る。印刷されるべきビットマップの幅は、ヘッド境界の数に応じて低減されている。次に印刷幅が得られる。
a 1つのプリントヘッドのノズルの数
b 公称重畳(ピクセル単位)
m 印刷幅にわたったプリントヘッドの数
x=a*m 物理的に印刷されるべきピクセルの数
x’=x-(m-1)*b 最大印刷幅(ピクセル単位)
【0026】
図4には、印刷像DBに対するビットマップデータまたは印刷データの生成のフローが概略的に示されている。ここで、個々のステップが列で示されている。
【0027】
印刷像DBが
図4aに示されている。これは、単語「Test」を含んでいる。印刷像DBに対しては、公知のラスタライズ方法の後に、ピクセル網目スクリーンPRが生成され、ここから、複数のビットマップデータ行Zおよび複数のビットマップデータ列Sで配置されたビットマップデータから成るデジタルビットマップが生成される。ここでこのビットマップデータは、このピクセルの箇所で、被印刷材料3上に印刷ドットが生成されるべきか否かを示す。あるピクセルの箇所で印刷ドットが生成されるべき場合、このピクセルは、黒塗りされた正方形として示されている。
【0028】
図4aでは、文字「e」上にピクセル網目スクリーンPR1が、文字「s」上にピクセル網目スクリーンPR2が生成されている。これは4つの列S1~S4と6つの行Z1~Z6から形成されるべきである。ピクセル網目スクリーンPR1、PR2に相応して、ビットマップが形成され、そのビットマップデータは、記号「e」および記号「s」に対して「1」を含んでいる。これは、その箇所において、被印刷材料3上に印刷ドットが生成されるべき場合である。そうでない場合には「0」を含んでいる。ビットマップの生成は、プリンター制御部2内で行われ得る。従ってビットマップに相応して、プリントヘッド5の印刷要素DEが駆動制御される。
【0029】
図4bには、印刷レジスター11の基本が示されている。ここでは、ピクセル網目スクリーンPR1、PR2の行Z2に対して、個々のビットマップデータが記入されており、詳細には、ピクセル網目スクリーン列S1~S8に対して示されている。さらに
図4cには、印刷レジスター11の下方に、隣接する2つのプリントヘッド5.1、5.2の重畳領域10が示されており、詳細には、重畳領域10における、プリントヘッド5.1の印刷要素DE11~DE14と、プリントヘッド5.2の印刷要素DE21~DE24が示されている。印刷要素DE11~DE24が、印刷レジスター11のビットマップデータに相応して駆動制御される場合には、重畳領域10において、プリントヘッド5.1の各印刷要素DEによって、行Z2において、列S1およびS2において、それぞれ印刷ドットが生成され、プリントヘッド5.2の各印刷要素DEによって、列S2、S3、S4において、それぞれ印刷ドットが印刷される。
図4dにおける印刷結果は、記号「s」が記号「e」上に印刷されていることを示している。
【0030】
本発明では、重畳領域10における記号「e」に対するビットマップを、行Zにつき、2倍にすることを提案する。行Z2に対して、印刷レジスター11における結果が、
図4eに示されている。ここで、印刷要素DE11~DE14およびDE21~DE24が印刷レジスター11を介して駆動制御される場合には、印刷要素DE11~DE14または印刷要素DE21~DE24は、選択的に、印刷ドットを、ピクセル網目スクリーンPRの行Z2に相応して印刷することができる。
【0031】
例えば、
図4eの例では、行Z2、Z3、Z6が、プリントヘッド5.1の印刷要素DE1によって印刷され、行Z4が、プリントヘッド5.2の印刷要素DE2によって印刷される(
図4f)。これらの印刷要素DEは、重畳領域10に位置しているので、ピクセル網目スクリーンPR1の行Z1~Z6は選択可能に、プリントヘッド5.1の印刷要素DE1によって、または、プリントヘッド5.2の印刷要素DE2によって印刷される(
図4f)。
【0032】
図4gは、印刷結果を示している。重畳領域10において2つの異なる記号を重ねて印刷することが回避される。
【0033】
図5は、この方法をフローチャートで、ステップ毎に示している。
【0034】
前もって、隣接するプリントヘッド5の重畳領域10が確認される。これは例えば、プリントヘッド5毎に、4つの印刷要素DEを含み得る(
図3)。重畳領域10は、プリントヘッド5の構造的な配置によって定められ得る。
【0035】
次に、別の準備ステップにおいて、印刷像がラスタライズされ、網目スクリーン列と網目スクリーン行とから成るピクセル網目スクリーンが生成され、ここからビットマップが次のように展開される。すなわち、プリントヘッド5の印刷要素DEに、ビットマップデータが割り当てられるように、展開される。このビットマップから、印刷要素DE毎に、これが、印刷ドットを被印刷材料3上に吐出すべきか否かが明らかになる。このビットマップは例えば、プリンター制御部2内に格納される。ここでこのビットマップから、どの箇所で、被印刷材料3上に印刷ドットが形成されるべきかも判明する。ビットマップの行Zは、例えば、印刷レジスター11内に格納される。レジスター箇所が、印刷要素DEに割り当てられる。この割り当ては、重畳領域10内に位置する、プリントヘッド5の印刷要素DEにも適用される。
【0036】
ステップA1およびA2
例えば2つのプリントヘッド5.1および5.2の印刷要素DEが重畳領域10において相互に重なって位置する印刷ドットを生成することを阻止するために、ビットマップが行Zにおいて、重畳領域10内に位置する印刷要素DEの数ぶん、拡張される。従って、重畳領域10における印刷要素DEの数に相応した数のビットマップデータ列Sが挿入される、または、重畳領域10においてビットマップが2倍にされる。ここで、重畳領域10における2つのプリントヘッド5.1、5.2の印刷要素DEには、1行ずつ、同一の印刷データが提供されてよい。
【0037】
ステップA3およびA4
選択可能なアルゴリズムに従って、ここで、重畳領域10において、一方のプリントヘッド5.1の、または、他方のプリントヘッド5.2の印刷要素DEが駆動制御される。例えば、これらの印刷要素DEは、重畳領域10において、交互に駆動制御されてよい。このために、印刷レジスター11におけるレジスター箇所が交互に、または、2倍にされた領域で、消去可能である。
【0038】
または、重畳領域10において、印刷データが、プリントヘッド5の印刷要素DEに、そのつどのみ導かれるように、印刷データがプリントヘッド5に供給される。
【0039】
ランダム生成器を用いることによって、場合によっては、印刷像内のモアレ作用を阻止することができる。このモアレ作用は、プリントヘッド5にビットマップデータを交互に割り当てる場合に発生し得る。次に、印刷データは、ランダム生成器の結果に応じて、それぞれ、プリントヘッド5に供給される。
【0040】
さらに、より複雑なラスタライズアルゴリズムも可能である。これはピクセルを、周囲のピクセルデータに応じて、一方のプリントヘッド5か、他方のプリントヘッド5に割り当てる。重畳領域10において終了する印刷要素DEの場合には、このラスタライズアルゴリズムは、例えば、印刷像の残りの部分を印刷するプリントヘッド5の印刷要素DEが、印刷ドットを吐出することを決定することができる。
図4の例では、ここで、記号「e」が、プリントヘッド5.1の印刷要素DE1のみによって印刷され得る。
【0041】
印刷像におけるトーン値上昇は、著しく非線形であるので、2つのプリントヘッド5.1、5.2の順次連続する印刷ドットのオフセットが、サブピクセル領域において、印刷像における視認可能な移行部を生じさせることがある。プリントヘッド5.1および5.2の印刷要素DE1およびDE2による完全な重畳印刷の際に、「0」のサブピクセルオフセットが生じている。このような「0」のサブピクセルオフセットから出発して、印刷されるドットの重畳は、半分のピクセルオフセットまで低減する。ここで、局部的なインキ着けが低減する。従って半分のピクセルオフセットから、印刷ドットの生成が、一方のプリントヘッド5.1の印刷要素DE1から、隣接するプリントヘッド5.2の印刷要素DE2へと切り替わるべきである。例えば、印刷要素DE12から、印刷要素DE23へと切り替わるべきである。
【0042】
サブピクセル領域における視認可能な移行部のこのような問題を取り除くために、重畳領域10における、基準印刷像のトーン値曲線を求めることができる。
・この場合には、2つのプリントヘッド5.1、5.2への、ピクセルおよびビットマップデータの分配が、このトーン値曲線から導出された修正関数に基づいて所期のように修正される。ここでこの修正関数は、2つのプリントヘッド5.1、5.2の印刷ドットのサブピクセル間隔を入力量として含んでいる。
・このトーン値曲線から、逆行する修正関数を求めることができる。これは、インキ着けでの損失を補償する。このトーン値曲線は、計算規則として、または、スクリーニングマトリックスとして、印刷制御部2内に格納可能である。
・このトーン値曲線に基づいて、所定数の行を定めることができ、これらの行にわたって、2倍、印刷されるべきピクセルが分配される。
・このトーン値曲線に基づいて、重み付けファクターを特定することができる。この重み付けファクターは、重畳領域10における網目スクリーン行にわたってランダムに分配されて、隣接して位置するプリントヘッド5.1および5.2の所定数のピクセルを印刷させる。これによって、インキ着けでの損失を補償することができる。
・プリントヘッド5がマルチレベル動作を予定している場合には、印刷要素DEによって吐出されるべきインク滴の大きさは、このトーン値曲線に相応に調整可能である。
【0043】
全体的に、重畳領域10において、多少暗くされたインキ着けを実現するために、この修正関数に相応して、印刷されるべきピクセルの一部分を、2つのプリントヘッド5によって同時に印刷することができる。
【符号の説明】
【0044】
DB 印刷像、 PF 被印刷材料ウェブの搬送方向、 TD 印刷クロックパルス、 DE 印刷要素、 PR ピクセル網目スクリーン、 Z ピクセル網目スクリーンの行、 S ピクセル網目スクリーンの列、 1 インク印刷ユニット、 2 プリンター制御部、 3 被印刷材料ウェブ、 4.1~4.4 印字バー、 5 インクプリントヘッド、 6 センサ、 7 駆動ロール、 8 回転サドル、 9 駆動ロール、 10 重畳領域、 11 印刷レジスター、 12 プリントヘッドのノズル面