(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】難燃剤、複合難燃剤、難燃剤帯電防止組成物、および耐炎性の方法
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20220610BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220610BHJP
C08K 5/5397 20060101ALI20220610BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20220610BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20220610BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C09K21/12
C08L101/00
C08K5/5397
C08K5/04
C09K3/16 101B
C09K21/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017089657
(22)【出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】201610274735.2
(32)【優先日】2016-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】郭鵬
(72)【発明者】
【氏名】呂明福
(72)【発明者】
【氏名】徐耀輝
(72)【発明者】
【氏名】張師軍
(72)【発明者】
【氏名】権慧
(72)【発明者】
【氏名】徐凱
(72)【発明者】
【氏名】畢福勇
(72)【発明者】
【氏名】宋文波
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特公昭52-017050(JP,B2)
【文献】米国特許第04259229(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103044922(CN,A)
【文献】特表2005-517788(JP,A)
【文献】特開平01-263156(JP,A)
【文献】特開2010-100837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K21/00- 21/14
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 9/00- 9/42
B29C44/00- 44/60
C07F 9/00- 19/00
C01B32/00- 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩より形成される錯体を含む、難燃剤であって、
上記遷移金属塩に含まれる遷移金属は、第VIII族の金属元素である、難燃剤。
【請求項2】
上記ホスフィンオキシドは、以下の分子構造式(I)を有している、請求項1に記載の難燃剤:
【化1】
ここで、R
1、R
2およびR
3は、同一であるか、または互いに異なっており、C
1-C
18直鎖アルキル、C
3-C
18分枝状のアルキル、C
1-C
18直鎖アルコキシ、C
3-C
18分枝状のアルコキシ、C
6-C
20置換または無置換アリール、およびC
6-C
20置換または無置換アリールオキシ、からそれぞれ独立して選択される。
【請求項3】
R
1、R
2およびR
3は、C
4-C
18直鎖または分枝状のアルキル、一つまたは二つの炭素環を有しているC
6-C
18アリール、からそれぞれ独立して選択される、請求項2に記載の難燃剤。
【請求項4】
R
1、R
2およびR
3は、主炭素鎖において6以上の炭素原子を有しているC
6-C
12直鎖または分枝状の直鎖アルキル、および、置換もしくは無置換フェニルからそれぞれ独立して選択される、請求項3に記載の難燃剤。
【請求項5】
上記ホスフィンオキシドは、トリフェニルホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4-カルボキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフェート、およびジブチルブチルホスフェート、から少なくとも一つ選択され得る、請求項1に記載の難燃剤。
【請求項6】
上記遷移金属塩は、遷移金属有機塩および/または遷移金属無機塩であり得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の難燃剤。
【請求項7】
上記遷移金属塩は、遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、およびシュウ酸塩の少なくとも一つであり得る、請求項6に記載の難燃剤。
【請求項8】
上記遷移金属は、コバルトおよび/またはニッケルである、請求項6または7に記載の難燃剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の難燃剤の製造方法であって、
ホスフィンオキシドおよび遷移金属を混合することで錯体を得る調製ステップを含み、
上記錯体の調製ステップは、1~10重量部の上記ホスフィンオキシドおよび3~15重量部の上記遷移金属を有機溶媒中で攪拌および混合し、その後、マイクロ波を用いて加熱し、超臨界乾燥し、上記錯体を得る、難燃剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の難燃剤、および無機難燃剤成分を含む、複合難燃剤。
【請求項11】
上記無機難燃剤成分に対する上記錯体の重量比は、(1~5):1である、請求項10に記載の複合難燃剤。
【請求項12】
上記無機難燃剤成分に対する上記錯体の重量比は、(2.5~3.5):1である、請求項11に記載の複合難燃剤。
【請求項13】
上記無機難燃剤成分は、第IIA族および第IIIA族の金属水酸化物から選択される、請求項10~12のいずれか一項に記載の複合難燃剤。
【請求項14】
上記無機難燃剤成分は
、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムから選択される少なくとも一つである、請求項13に記載の複合難燃剤。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の難燃剤または請求項10~14のいずれか一項に記載の複合難燃剤と、カーボンナノファイバーを含む帯電防止剤とを含む、難燃剤帯電防止組成物。
【請求項16】
上記カーボンナノファイバーは1重量%~5重量%の遷移金属を含む、請求項15に記載の難燃剤帯電防止組成物。
【請求項17】
上記遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケルおよびクロムの少なくとも一つである、請求項16に記載の難燃剤帯電防止組成物。
【請求項18】
上記カーボンナノファイバーの炭素源は、炭素アスファルト、石油アスファルト、コールタールピッチ、コールタール、天然グラファイト、人工グラファイト、竹炭、カーボンブラック、活性炭およびグラフェン、の少なくとも一つであり;好ましくは、80重量%以上の炭素含有量を有する上記炭素源であり;より好ましくは、上記炭素源は、80重量%以上の炭素含有量を有する、コールタールピッチ、石油ピッチおよび竹炭の少なくとも一つである、請求項15~17のいずれか一項に記載の難燃剤帯電防止組成物。
【請求項19】
上記カーボンナノファイバーの炭素源は、80重量%以上の炭素含有量を有する、請求項18に記載の難燃剤帯電防止組成物。
【請求項20】
上記カーボンナノファイバーを調製する調製ステップを含み、
上記カーボンナノファイバーの調製ステップは、炭素源を酸処理に供すること、その後、遷移金属触媒を用いて錯体を形成すること、上記錯体を炭化処理に供すること、を含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の難燃剤帯電防止組成物の製造方法。
【請求項21】
上記遷移金属触媒は、上記遷移金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩およびシクロペンタジエニル化合物の少なくとも一つである、請求項20に記載の難燃剤帯電防止組成物の製造方法。
【請求項22】
上記炭素源に対する上記遷移金属原子の重量比は、(35~70):100である、請求項20または21に記載の難燃剤帯電防止組成物の製造方法。
【請求項23】
上記炭化処理における炭化反応は、0.5~5時間、800~1200℃において、不活性ガスの保護下にて進行される、請求項20~22のいずれか一項に記載の難燃剤帯電防止組成物の製造方法。
【請求項24】
請求項1~8のいずれか一項に記載の上記難燃剤、または請求項10~14のいずれか一項に記載の上記複合難燃剤、または請求項15~19のいずれか一項に記載の上記難燃剤帯電防止組成物を、材料の中に添加し、上記材料に難燃性を付与することを含んでいる、耐炎性の方法。
【請求項25】
上記材料は、重合体材料、ポリオレフィンベース樹脂、ポリ乳酸ベース樹脂、ポリウレタンベース樹脂、ポリエステルベース樹脂およびポリアミドベース樹脂、の一つ以上を含んでいる熱可塑性樹脂である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンベース樹脂、ポリプロピレンベース樹脂、ポリブチレンベース樹脂、ポリウレタンベース樹脂、ポリ乳酸ベース樹脂、ポリエチレンテレフタラートベース樹脂、ポリブチレンテレフタラートベース樹脂、ポリブチレンスクシナートベース樹脂およびナイロン6ベース樹脂から一つ以上選択される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、重合体の技術分野に関し、特に、難燃剤、複合難燃剤、難燃剤帯電防止組成物、および耐炎性の方法に関する。
【0002】
〔背景〕
軽い重量、優良な機械特性、成形によって特定の形状を有する製品を製造するために使用可能であること、という特徴のために、発泡ポリプロピレン(EPP)ビーズは、広く使用されている重合体発泡体材料であり、発泡ポリプロピレンビーズの発展及び工業生産は、国策産業および学術的世界の中心である。ポリスチレンシリーズ樹脂発泡ビーズから製造された成形製品と比較して、発泡ポリプロピレンビーズを成形することによって得られる発泡ポリプロピレン成形体は、優れた耐化学性、高い靱性、高い耐熱性、優良な耐圧縮性、などを有する。しかしながら、工業用EPPは、高い成形温度、乏しい難燃剤帯電防止性能、および低い温度における乏しい耐衝撃性、等の欠点を有している。
【0003】
第一に、成形工程のエネルギー消費が高い。発泡ポリプロピレンビーズが鋳型中で成形されるとき、高飽和蒸気圧を有する蒸気を使用することによって加熱する必要があり、これは、発泡粒子が二次発泡されると同時に発泡粒子がともに溶融することを可能とするためである。それ故に、高い圧力抵抗を有する金型、および、高スタンピングを有する特別な成形装置、を使用する必要があり、それはまた、エネルギー消費の増加を導く。従って、低い蒸気圧および低い温度を備えるEPPビーズ成形技術を開発することは、非常に重要である。
【0004】
第二に、EPP発泡ビーズは、可燃性である。ポリプロピレンは、可燃性物質であり、大きい放熱を伴って燃焼し、かつ、溶融した小滴を伴って、火が広がりやすい。さらに、EPPビーズは、セル構造、および、より悪い難燃剤特性を有している。この段階において、ほとんどのEPPビーズは、難燃剤機能を達成できず、このことは、高難燃剤要求の分野におけるEPPビーズの適用を制限する。現在、国内市場において、耐炎性PPは主に、ハロゲン含有有機化合物と三酸化アンチモンとを含んでいる複合難燃剤から調製される。ハロゲン含有難燃剤可塑性製品は、燃焼において、有毒な、腐食性のガス、および多くの煙を生産するであろうし、このことは、環境に対して大きな損害を引き起こし得る。近年、多くの環境アセスメント報告書において、ハロゲン含有難燃剤材料は、それらの処理工程、燃焼およびリサイクリング工程、の間、毒性の強い発がん性物質(例えば、ベンゾフランおよびダイオキシンなど)を放出すると言われており、このことは、環境および人間の健康に対して深刻な損害を与える。2003年2月、欧州連合は、ハロゲンを制限するためにROHS指示(電子自動車製品有害物質制限指示)を最初に公表し、ドイツ、アメリカ合衆国、日本、中国の全てではまた、関連する環境上の法律および条令が制定された。電気および電子装置の世界的な生産業者、供給業者および取引先は、それら自身の製品及び生産ラインが、現行および将来の環境上の規制を満たすものとするために、ほとんどの保険を、サプライ・チェーンの範囲内で必要要件-「ハロゲン無し(zero halogen)」とする。
【0005】
現在、広く使用されているハロゲンフリーのポリプロピレン難燃剤は、水酸化物、リン、および窒素、ならびにそれらの化合物を包含している。水酸化物難燃剤は、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムによって代表され、その量は、絶縁シートのためのUL94V0難燃剤グレード要求に達するポリプロピレンを製造するために、60重量%よりも多いが、これは難燃剤ポリプロピレン処理工程における困難さをもたらす。リン難燃剤は、赤リンおよび有機リン酸エステルによって代表され、その量は水酸化物の量よりも少ないが、ポリプロピレンプレートの絶縁グレードは、製品の、大きな吸水率および高いリーク速度に起因して、低減される。窒素難燃剤は、メラミンおよびトリアジンによって代表されるが、成形体または成形プレートの厚さが0.125~0.75mmの範囲である場合、それらの製品に、高難燃剤グレードを達成させることはできない。それ故に、煙が少なく、ハロゲン無しである、環境に負担をかけない難燃剤PPを開発することは、大きな実用的な意義がある。
【0006】
第三に、EPPビーズは、乏しい帯電防止特性を有している。EPPビーズが関連した電子材料輸送容器および液晶パネルターンオーバーボックス(turnover box)として成形されるとき、EPPビーズの帯電防止性能に対して一層高い要求がある。一般的な発泡PP材料は、乏しい帯電防止特性を有しており、これは、外側と擦れるかまたは剥がれるとき、静電気を生じ易い。さらに、生じた電荷は漏れ出しにくく、表面上に蓄積し続ける。ポリプロピレンの表面が帯電したとき、効果的な表面処理または帯電防止処理がない場合には、ポリプロピレンの表面は空気中のちりおよび埃を吸着しやすいであろう。ヒトの体が静電気のポリプロピレンに曝されたとき、感電の感覚があるであろう。そして、静電気はまた、電子装置の故障を引き起こし得る。さらに深刻なことには、静電気の蓄積は、静電的引力(もしくは静電的斥力)、感電または火花放電の現象、という結果を招くであろうし、これは、燃えやすく、爆発しやすい材料の環境下において、非常に大きな災害をもたらすであろう。静電気の影響を避けるために、ポリプロピレンは、いくつかの特別な場合に適応させるために帯電防止性が改質される必要がある。
【0007】
導電性の機能的成分(例えば、導電性カーボンブラック)または帯電防止剤を重合体マトリクスの中に添加することは、重合体の帯電防止複合材料を調製するための主な工程の一つである。しかしながら、一般的に、導電性ネットワークを形成するために必要とされる、導電性フィラーの充填された量または帯電防止剤の量は、比較的大きく、重合体の機械特性の顕著な減少という結果を招き、かつ、材料の製造コストおよび処理工程の困難さを改善する。それ故に、導電性フィラーの量を低減することは、帯電防止複合材料の発展および適用の重要な部分である。中国特許出願第2005100040230号は、重合体帯電防止剤を使用することによる、帯電防止特性を有するポリオレフィン樹脂発泡体の調製を開示し、上記ポリオレフィン樹脂発泡体は、108Ω~1013Ωの表面固有抵抗率を有している。使用される重合体帯電防止剤は、主に、ポリエーテルおよびポリプロピレンのブロック共重合体、ポリエーテルエステルアミドおよびポリアミドの混合物、などを含み、そして、帯電防止剤の量は4~6%であり、それは短時間作用型の帯電防止剤であり、帯電防止特性は30日間のみ持続し得る。中国特許出願第2007101922158号は、帯電防止性および絶縁(抗導電性)のポリプロピレンの調製工程を開示する。得られるポリプロピレン粒子の体積抵抗率は、100~1011Ω・cmの間で調節可能であり、カーボンブラックの量は、25~35%であり;カーボンブラックの表面密度は低いため、その量は大きく、ポリプロピレンベース樹脂との混合は困難であり、処理工程の複雑さおよび製品コストを増大させている。
【0008】
難燃剤および長時間作用型の帯電防止剤をポリプロピレンビーズの中に添加した後が最も重要であり、EPPビーズのセル構造および成形体の機械特性は、著しく影響を受けるであろうし、続いて成形される成形製品の品質は保証され難く、これは、その適用範囲を制限する。難燃剤および帯電防止剤の両方が添加される場合、それらはしばしば、互いに対して、難燃性または帯電防止特性の同時の減少という結果を招く。
【0009】
第四に、低い温度におけるポリプロピレン、特にプロピレン単独重合体の耐衝撃性は乏しい。ゴム分散相の添加によって得られるインパクトポリプロピレンは、高い温度または低い温度における優れた耐衝撃性強度、高い張力強度、屈曲係数および反対の剛性、ならびに高い耐熱温度、を有し、これは、多くの分野(例えば、成形もしくは押し出しの自動化部分、家庭用器具、容器および家庭用品)において、広く使用されている。インパクトポリプロピレンを使用して調製された発泡ビーズはまた、低い温度に対する優良な抵抗性を有しており、特に、コールドチェーン輸送包装、スポーツ用品、建造物の断熱材、宇宙産業において、幅広い見込みがある。従来の汎用のインパクトポリプロピレンの低い溶融強度のために、発泡ビーズの調製において幾つか問題(例えば、セルの差し込みおよび分割、乏しい成形性、など)がある。
【0010】
ポリプロピレンの溶融強度を増加させるための一般的な工程は、メルトインデックスを減らすことであり、すなわち、ポリプロピレンの分子量を増加させることであるが、これは、材料を溶融し、かつ、押し出すことの困難さをもたらし得る。別の工程は、分子量分布を幅広くすることである。例えば、米国特許第7365136号および米国特許第6875826号は、それぞれ、幅広い分子量分布、高溶融強度を有する、単独重合およびランダム共重合ポリプロピレンの調製工程を開示しており、ここで、アルコキシシランは、外部電子供与体(例えば、ジシクロペンチルジメトキシシラン)として選択され、ポリプロピレンの溶融強度を増加させる効果は、複数の一連の反応器において、水素の濃度を調節して分子量および分布を制御することによって、達成される。国際公開公報第9426794号は、複数の一連の反応器における、高溶融強度単独重合およびランダムポリプロピレンの調製工程を開示しており、上記方法は、異なる反応器において水素の濃度を調節することによって、幅広い分子量分布または二峰性分布を有する高溶融強度ポリプロピレンを製造し、触媒の性質はそれぞれの反応器において調節されないため、調製工程は、多量の水素を必要とする。中国特許第102134290号および中国特許第102134291号は、それぞれ、広い分子量分布および高溶融強度を有するホモポリプロピレンの調製方法を開示しており、これは、異なる反応段階において、複数の一連の反応器を使用することによって、外部電子供与体成分の種および比率を制御し、その後、水素の量を制御することと組み合わせることを通して、広い分子量分布および高溶融強度を有するホモポリプロピレンまたはランダム共重合体ポリプロピレンを製造する。ここで、上記水素は、分子量調整剤として機能する。中国特許出願第201210422726.5号はまた、広い分子量分布および高溶融強度を有する、ホモポリプロピレンまたはランダム共重合されたポリプロピレンを得るための調製工程を開示しており、当該工程は、異なる反応器の間で、シランおよびジエーテルの外部電子供与体の二つの異なる種類を適度に混合することによって、触媒の、アイソタクチック指標、および水素調(hydrogen tone)の感受性を制御している。
【0011】
〔発明の概要〕
本発明の一つの目的は、難燃剤材料を調製することに適している、新規の難燃剤を提供することである。本発明の第二の目的は、向上した難燃剤効果を有する、複合難燃剤を提供することである。
【0012】
本発明の第三の目的は、難燃剤または複合難燃剤および長時間作用型の帯電防止剤を含んでいる、難燃剤帯電防止組成物を提供することであり、ここで、上記難燃剤帯電防止組成物は、難燃剤および帯電防止剤の相互作用を有している。
【0013】
本発明の第四の目的は、耐炎性の方法を提供することであり、上記耐炎性の方法は、上述した難燃剤または複合難燃剤または難燃剤帯電防止組成物を材料の中に添加することを含んでおり、故に、上記材料は難燃性を有する。
【0014】
さらに、本発明の目的はまた、上述した難燃剤、複合難燃剤または難燃剤帯電防止組成物の製品の調製工程を提供することである。
【0015】
本発明の第一の態様によれば、ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩より形成される錯体を含んでいる難燃剤が提供される。本発明の好ましい実施形態において、上記難燃剤はハロゲン元素を包含しない。従って、本発明によれば、難燃剤、特にポリプロピレン材料における難燃剤、としての上記錯化剤の使用が、本質的に提供される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、上記難燃剤は、ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩より形成される錯体を包含している、ハロゲンフリーの難燃剤である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、ホスフィンオキシドは、以下の分子構造式(I)を有している:
【0018】
【0019】
ここで、R1、R2およびR3は、同一であるか、または互いに異なっており、C1-C18直鎖アルキル、C3-C18分枝状のアルキル、C1-C18直鎖アルコキシ、C3-C18分枝状のアルコキシ、C6-C20置換または無置換アリール、およびC6-C20置換または無置換アリールオキシ、からそれぞれ独立して選択される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、R1、R2およびR3は、同一であるか、または互いに異なっており、メチル、エチル、プロピル、C4-C18直鎖または分枝状のアルキル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、C4-C18直鎖または分枝状のアルコキシ、C6-C20置換または無置換アリール、およびC6-C20置換または無置換アリールオキシ、からそれぞれ独立して選択される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、R1、R2およびR3は、メチル、エチル、プロピル、C4-C18直鎖または分枝状のアルキル、C6-C20置換または無置換アリールからそれぞれ独立して選択され;より好ましくはC4-C18直鎖または分枝状のアルキル、およびC6-C18置換または無置換アリールからそれぞれ独立して選択される。
【0022】
さらに、ここでアルキルは、好ましくは、C4-C12直鎖または分枝状のアルキル、より好ましくはC6-C12直鎖または分枝状のアルキル、および特に好ましくはC6-C10直鎖のアルキル、からそれぞれ独立して選択される。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、R1、R2およびR3は、主炭素鎖において6以上の炭素原子を有しているC6-C18アルキル、より好ましくは主炭素鎖において6以上の炭素原子を有しているC6-C12分枝状のまたは直鎖アルキル、からそれぞれ独立して選択される。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、R1、R2およびR3は、一つまたは二つの炭素環を有しているC6-C18アリール、より好ましくは置換または無置換フェニル、からそれぞれ独立して選択される。好ましくは、R1、R2およびR3は、同一である。
【0025】
本発明によれば、アリールは、ヒドロキシル基、カルボキシル基などのような置換基を有していてもよい。
【0026】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、R1、R2およびR3は、同一の置換基である。この構造を有するホスフィンオキシドおよび遷移金属は、より強い錯体形成能力を有する。
【0027】
本発明によれば、ホスフィンオキシドは、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(4-カルボキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフェート、およびジブチルブチルホスフェート、から選択される少なくとも一つであり得、好ましくは、トリフェニルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリブチルホスフェート、およびジブチルブチルホスフェート、から選択される少なくとも一つであり得る。
【0028】
本発明の上記難燃剤によれば、遷移金属塩は、遷移金属有機塩および/または遷移金属無機塩であり得、好ましくは、遷移金属の硝酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、およびシュウ酸塩、より好ましくはギ酸塩および硝酸塩、から選択される少なくとも一つであり得る。遷移金属は、好ましくは、第VIII族の金属元素であり、より好ましくは、コバルトおよび/またはニッケルである。特に、上記遷移金属塩は、例えば、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルおよび硫酸コバルト、から選択される少なくとも一つである。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記遷移金属塩は、硝酸コバルトおよび/または硝酸ニッケルである。これら二つの塩は、ホスフィンオキシドと錯体を形成する可能性が高く、より高い収率という結果を招く。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩より形成される錯体は、式(II)に示されるような分子構造を有する。
【0031】
【0032】
式(II)において、Mは遷移金属であり、好ましくはNiまたはCoである。
【0033】
式(II)において、R4およびR5は、同一であるか、または互いに異なっており、ギ酸塩(HCOO-)、酢酸塩(CH3COO-)、シュウ酸塩(C2O4H-)、硝酸塩(NO3
-)およびチオシアン酸塩(SCN-)、から一つ以上それぞれ独立して選択され;好ましくは硝酸塩および/またはチオシアン酸塩、より好ましくは硝酸塩、からそれぞれ独立して選択される。
【0034】
式(II)において、R1、R2およびR3は、式IにおけるR1、R2およびR3と、それぞれ同一である。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、R1、R2およびR3は、同一であるか、または互いに異なっており、C1-C18直鎖アルキル、C3-C18分枝状のアルキル、C1-C18直鎖アルコキシ、C3-C18分枝状のアルコキシ、C6-C20置換または無置換アリール、およびC6-C20置換または無置換アリールオキシ、からそれぞれ独立して選択される。好ましくは、R1、R2およびR3は、同一である。
【0036】
本発明によって提供された難燃剤によれば、錯体の調製ステップは下記を含む:1~10重量部、好ましくは2~5重量部、のホスフィンオキシド、および、3~15重量部、好ましくは5~10重量部、の遷移金属、を有機溶媒中で攪拌および混合し、その後、マイクロ波を用いて加熱し、超臨界乾燥し(supercritical dried)、上記錯体を得;上記有機溶媒は、好ましくは、エタノール、アセトン、ピリジン、テトラヒドロフランおよびDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)の少なくとも一つである。
【0037】
ここで、攪拌速度は、例えば、90~120rpmであり得、マイクロ波の出力は、35~55Wであり、マイクロ波の加熱温度は、35~50℃であり、かつ、加熱時間は3~4.5時間である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、超臨界乾燥の後に得られた錯体は、M(CHO2)2(OPR3)2として表されることが可能であり、ここで、MはNiまたはCoであり得、Rはフェニル、ヘキシル、オクチル、またはデシルであり得る。
【0039】
本発明の他の好ましい実施形態において、超臨界乾燥の後に得られた錯体は、M(NO3)2(OPR3)2として表されることが可能であり、ここで、MはNiまたはCoであり得、Rはフェニル、ヘキシル、オクチル、またはデシルであり得る。
【0040】
本発明の第二の態様によれば、本発明に係る上述されているような難燃剤、および無機難燃剤成分、を含んでいる複合難燃剤が提供され、好ましくは、上記無機難燃剤成分は、第IIA族および第IIIA族の金属水酸化物から選択され、より好ましくは、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムから選択される少なくとも一つである。無機難燃剤成分を添加することによって、難燃剤効果はさらに向上させられ得る。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記無機難燃剤成分に対する上記錯体の重量比は、(1~5):1であり、好ましくは(2.5~3.5):1である。
【0042】
好ましい実施形態において、上記複合難燃剤は、1~10重量部、好ましくは2~5重量部、のホスフィンオキシド、および、3~15重量部、好ましくは5~10重量部、の遷移金属塩より形成される錯体と、1~10重量部、好ましくは3~6重量部、の無機難燃剤成分とを含む。
【0043】
ここで、複合難燃剤は、まず上記錯体を調製することによって調製され得、その後、複合難燃剤を得るために、上記錯体を無機難燃剤成分と物質的に混合することによって調製され得る。ここで、物質的な混合は、ボールミル粉砕、機械的混合、であり得る。好ましくは、均質化された機械的な攪拌であり、攪拌速度は約100rpmである。
【0044】
本発明に係る、難燃剤または複合難燃剤は、特に、ポリプロピレン発泡材料またはそれの成形体を調製することに適しており、ポリプロピレン製品の使用を促進するために帯電防止剤と共同して使用され得、これは、環境上の保護および安全要求を満たし、難燃性効率を改善するためである。
【0045】
本発明の第三の態様によれば、本発明に基づき、上述されているような難燃剤または複合難燃剤、およびカーボンナノファイバー帯電防止剤(導電性フィラー)を含んでいる、難燃剤帯電防止組成物が提供される。
【0046】
好ましくは、カーボンナノファイバー帯電防止剤に対する上記難燃剤または複合難燃剤の重量比は、(3~20):1であり、好ましくは(6~15):1である。
【0047】
好ましくは、上記カーボンナノファイバーは、1重量%~5重量%(例えば2重量%~4重量%)の遷移金属(例えば、ニッケルまたはコバルト)を含有する。遷移金属のこの部分は、上記カーボンナノファイバーを調製するために使用された触媒に、由来し得る。使用されたカーボンナノファイバーが、当該カーボンナノファイバー中の遷移金属触媒が取り除かれることなく、上記難燃剤帯電防止組成物を調製するために直接使用されることは、本発明の利点である。遷移金属の存在および他の潜在的な理由のために、本発明において使用されるカーボンナノファイバーは、難燃剤との相互作用を有することが可能であり、これは、炎と材料とを遮る、密度の高い炭素層を形成するために寄与し、それ故に、難燃剤の量を低減し、互いの負の性能という結果を招く互いの悪影響を有さない難燃剤との組み合わせは、続く発泡工程、ならびに発泡構造、および物質的特性、に影響を与えない。
【0048】
本発明によれば、カーボンナノファイバーの純度、アスペクト比、直径および形態について、特別な要求はない。
【0049】
本発明のカーボンナノファイバーに適した調製工程は、炭素源を酸処理に供すること、その後、遷移金属触媒を有する錯体を形成すること、上記錯体を炭化処理に供すること、を含む。
【0050】
以下は、カーボンナノファイバーの例示的な調製工程である。
【0051】
1)炭素源は、リン酸/硝酸/塩酸(体積比1:1:1)で混合酸処理工程、または、粉砕処理工程によって、前処理され、前処理された物質を得る。
【0052】
ここで、炭素源は、濃縮された炭素源であり、炭素アスファルト、石油アスファルト、コールタールピッチ、コールタール、天然グラファイト、人工グラファイト、竹炭、カーボンブラック、活性炭およびグラフェン、の少なくとも一つであり得;好ましくは、80重量%以上の炭素含有量を有する上記炭素源(例えば、80重量%以上の炭素含有量を有する、コールタールピッチ、石油ピッチおよび竹炭の少なくとも一つ)であり得る。
【0053】
2)錯化:錯体は、前処理された物質と金属触媒とを混ぜ合わせることによって得られる。
【0054】
金属触媒は、好ましくは、遷移金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩またはシクロペンタジエニル化合物であり、上記遷移金属は、好ましくは、第VIII族金属元素(例えば、Fe,CoまたはNi)であり、Crでもあり得る。
【0055】
金属触媒における、炭素源に対する遷移金属原子の重量比は、(35~70):100である。
【0056】
触媒における窒素の存在は、難燃剤効果を促進するための相乗効果のために良い、ということを考慮すると、金属触媒は、好ましくは、硝酸コバルトおよび/または硝酸ニッケルである。
【0057】
3)炭化処理:錯体は、800~1200℃の下、高純度窒素の保護下、0.5~5時間一定温度下、において炭化反応に供され、室温まで冷却されて、自己会合したカーボンファイバーを得る。本明細書における、炭化処理の温度は、好ましくは、950~1150℃である。反応は、一定温度にて1.5~2.5時間行われる。金属不純物を取り除くための後処理は必要ない。
【0058】
先行技術において通例使用される、短期間の帯電防止剤(例えば、重合体帯電防止剤)とは異なり、本発明において使用されるカーボンナノファイバーは、長時間作用型の帯電防止剤であり、これは、長時間作用型の帯電防止効果を提供することができる。
【0059】
本発明はまた、本発明に係る難燃剤帯電防止組成物の、熱可塑性樹脂における使用、特に発泡ビーズにおける使用、さらに、発泡ポリエチレンビーズおよび/または発泡ポリプロピレンビーズの調製における使用、を提供する。
【0060】
本発明の第四の態様によれば、本発明の第一の態様に係る上記難燃剤、または本発明の第二の態様に係る上記複合難燃剤、または本発明の第三の態様に係る上記難燃剤帯電防止組成物を、材料の中に添加し、難燃性を有する上記材料を与えることを含んでいる、耐炎性の方法が提供される。
【0061】
本発明において、上記材料は、重合体材料、好ましくは、ポリオレフィンベース樹脂、ポリ乳酸ベース樹脂、熱可塑性ポリウレタンベース樹脂、ポリエステルベース樹脂およびポリアミドベース樹脂、から一つ以上を含んでいる熱可塑性樹脂、であり;好ましくは、上記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンベース樹脂、ポリプロピレンベース樹脂、ポリブチレンベース樹脂、熱可塑性ポリウレタン(TPU)ベース樹脂、ポリ乳酸ベース樹脂、ポリブチレンテレフタラート(PET)ベース樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PBT)ベース樹脂、ポリブチレンスクシナート(PBS)ベース樹脂およびナイロン6ベース樹脂、より好ましくはポリプロピレンベース樹脂、よりさらに好ましくは、発泡ポリエチレンビーズおよび/または発泡ポリプロピレンビーズ、から一つ以上選択される。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、下記を含む難燃剤ポリプロピレン組成物が提供される:
ポリプロピレンベース樹脂を100重量部;
本発明に基づき、上述されているように提供された、難燃剤または複合難燃剤を5~50重量部、好ましくは10~20重量部;
任意で、酸化防止剤を0.1~0.5重量部、好ましくは0.15~0.25重量部。
【0063】
さらに、本発明は、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を提供し、当該難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンベース樹脂、および難燃剤成分、および帯電防止重合体成分、を含み、特に、上述されているような難燃剤帯電防止組成物、およびポリプロピレンベース樹脂、を含む。いくつかの特定の実施形態において、上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、下記を含んでいてもよい:
ポリプロピレンベース樹脂を100重量部;
本発明に基づき、上述されているように提供された、難燃剤または複合難燃剤を5~50重量部、好ましくは10~20重量部;
上述されているような、本発明に係るカーボンナノファイバー帯電防止剤を0.1~10重量部、好ましくは1~3重量部;
任意で、酸化防止剤を0.1~0.5重量部、好ましくは0.15~0.25重量部。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、ハロゲン元素のないものである。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、提供された難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物において、ここで、上記ポリプロピレンベース樹脂は、プロピレン単独重合体成分とプロピレン-エチレン共重合体成分とを含み、上記ポリプロピレンベース樹脂の分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、10以下であり、かつ、4以上であり、好ましくは5より大きくかつ9未満であり;Mz+1/Mw(Z+1平均分子量/重量平均分子量)は10より大きくかつ20未満であり、好ましくは10より大きくかつ15未満であり;上記ポリプロピレン材料中の室温でのキシレン可溶分の含有量は、10重量%より大きくかつ30重量%未満であり、好ましくは、10重量%より大きくかつ20重量%未満であり;また、室温でのトリクロロベンゼン不溶分のMwに対する、室温でのトリクロロベンゼン可溶分のMwの比は、0.4より大きくかつ1未満であり、好ましくは、0.5より大きく、0.8未満である。ポリプロピレンベース樹脂において、連続相としてのプロピレン単独重合体成分は、ポリプロピレン材料に特定の剛性を提供し得、ゴム相(すなわち分散相)としてのプロピレン-エチレン共重合体成分は、ポリプロピレン材料の強靭性を改善し得る。しかしながら、高溶融強度のインパクトポリプロピレンに関しては、材料の連続相および分散相の多相構造のために、溶融強度に影響を与える要因が、より複雑になる。本発明の発明者らは、上述されているような、成分の分子量関係および分子量分布の特徴を有する、ヘテロ相のポリプロピレン材料は、高溶融強度を有するとともに、優れた剛性および強靭性を有するということを見出した。
【0066】
上記ポリプロピレンベース樹脂において、ゴム相の含有量は、室温でのキシレン可溶分という形で測定される。特徴付けの利便性のために、ゴム相の分子量は、トリクロロベンゼン可溶分の分子量という形で測定される。また、ゴム相の組成は、キシレン可溶分中のエチレン含有量によって特徴付けられる。好ましくは、ポリプロピレンベース樹脂の室温でのキシレン可溶分中のエチレン含有量は、50重量%未満、25重量%より大きく、好ましくは30重量%より大きく、50重量%未満である。ここで、「室温でのキシレン可溶分中のエチレン含有量」は、室温でのキシレン可溶分中のエチレンモノマー成分の重量含有量を意味し、これは、本発明において、ゴム相中のエチレンモノマー成分の重量含有量に相当するものであり、これは、CRYSTEX法によって決定され得る。
【0067】
本発明によれば、好ましくは、ポリプロピレンベース樹脂中のエチレンモノマー単位の含有量は、5~15重量%である。本明細書において、ポリプロピレンベース樹脂中のエチレンモノマー単位の含有量は、ポリプロピレン共重合体中のエチレンモノマー成分の含有重量として理解され得る。
【0068】
本発明によれば、ポリプロピレンベース樹脂が、0.1~15g/10分、好ましくは0.1~6g/10分、のメルトインデックスを有することもまた好ましく、当該メルトインデックスは2.16kgの荷重下にて230℃において測定される。
【0069】
ポリプロピレンベース樹脂の分子量の多分散性指数(PI)は、好ましくは4~8であり、より好ましくは4.5~6である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、プロピレン単独重合体成分は、第一のプロピレン単独重合体および第二のプロピレン単独重合体を、少なくとも含んでおり;ここで、第一のプロピレン単独重合体は、2.16kgの荷重下にて230℃において測定され、0.001~0.4g/10分のメルトインデックスを有し;第一のプロピレン単独重合体および第二のプロピレン単独重合体を含んでいるプロピレン単独重合体成分は、0.1~15g/10分のメルトインデックスを有しており、当該メルトインデックスは、2.16kgの荷重下にて230℃において測定され;また、上記第二のプロピレン単独重合体に対する上記第一のプロピレン単独重合体の重量比は、40:60~60:40である。上記ポリプロピレンベース樹脂のプロピレン単独重合体成分が、異なるメルトインデックスおよび特定の比率関係を有している少なくとも二つのプロピレン単独重合体の組み合わせを包含するように設定することによって、本発明の組成物において使用されるポリプロピレンベース樹脂が特定の連続相を有するようにして、かつ、連続相および分散相ゴム成分のさらなる組み合わせの下において、高溶融強度ならびに優良な剛性および強靭性を有するインパクトポリプロピレン材料を製造する。
【0071】
ポリプロピレンベース樹脂が剛性および強靭性の優良なバランスを有することを確実にするために、本発明は、ゴム成分としてエチレン-プロピレンランダム共重合体を採用し、また本発明において使用されるインパクトポリプロピレンベース樹脂において、プロピレン単独重合体成分に対するプロピレン-エチレン共重合体成分の重量比は(11~80):100であり、これは溶融強度および耐衝撃性に対してより良い効果を有する。さらに、好ましくは、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン-エチレン共重合体成分を包含するポリプロピレンベース樹脂に対するプロピレン単独重合体成分のメルトインデックス比は、0.6以上、1以下である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明において使用されるインパクトポリプロピレンベース樹脂を構成するプロピレン単独重合体成分は、さらに以下の特徴を有する:分子量分布Mw/Mn=6~20、好ましくは10~16;分子量が5,000,000より大きいプロピレン単独重合体成分の含有量は、1.5重量%以上かつ5重量%以下である;分子量が50,000未満であるプロピレン単独重合体成分の含有量は、15重量%以上かつ40重量%以下である;Mz+1/Mnは、70以上であり、好ましくは150未満である。
【0073】
本発明に基づき提供され、かつ使用されるポリプロピレンベース樹脂は、第一のプロピレン単独重合体成分および第二のプロピレン単独重合体成分を含んでいるプロピレン単独重合体を得るために、第一のプロピレン単独重合体の存在下においてプロピレン単独重合に供し、その後、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン-エチレン共重合体成分を含んでいる材料を得るために、上記プロピレン単独重合体成分の存在下においてプロピレン-エチレン共重合に供することによって、得られる。故に、本発明のインパクトポリプロピレンベース樹脂は、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン-エチレン共重合体成分の単なる混合ではなく、プロピレン単独重合体およびプロピレン-エチレン共重合体を含んでいる統合されたポリプロピレン材料であり、これは、特定のプロピレン単独重合体成分に基づいてプロピレン-エチレン共重合に供されることによって得られる。
【0074】
本発明において使用されるポリプロピレンベース樹脂はまた、優良な耐熱性を有しており、DSCによって測定される、最終的なポリプロピレン樹脂の溶融ピーク温度Tmは、158℃以上である。
【0075】
本発明によれば、高溶融強度インパクトポリプロピレンベース樹脂の調製工程は下記を含んでいる:
第一ステップ:下記を包含するプロピレン単独重合:
第一段階:プロピレン単独重合が、第一の外部電子供与体を含んでいるチーグラー-ナッタ触媒の作用下にて、水素の存在下または非存在下において、行われ、第一のプロピレン単独重合体を含んでいる反応流を得る;
第二段階:第二の外部電子供与体が、上記反応流における、触媒を有する錯体に添加され、その後、第一のプロピレン単独重合体および水素の存在下にてプロピレン単独重合が行われ、第二のプロピレン単独重合体を製造し、第一のプロピレン単独重合体および第二のプロピレン単独重合体を含んでいるプロピレン単独重合体成分を得る;
ここで、第一のプロピレン単独重合体、および、第一のプロピレン単独重合体と第二のプロピレン単独重合体とを含んでいるプロピレン単独重合体成分、のメルトインデックスは、0.001~0.4g/10分および0.1~15g/10分であり、これらは2.16kgの荷重下にて230℃において測定される;
第二ステップ:プロピレン-エチレン共重合、プロピレン-エチレンガスの共重合は、上記プロピレン単独重合体成分および水素の存在下において行われ、プロピレン-エチレン共重合体成分を製造し、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン-エチレン共重合体成分を含んでいるポリプロピレン樹脂を得る。反応流はまた、第一ステップからの反応していない触媒を含有しているということが、十分に理解されるであろう。
【0076】
本発明によれば、好ましくは、第二のプロピレン単独重合体に対する第一のプロピレン単独重合体の重量比は、40:60~60:40である。
【0077】
本発明によれば、好ましくは、第二ステップにおいて得られた、プロピレン単独重合体成分およびプロピレン-エチレン共重合体成分を含んでいるポリプロピレン樹脂、に対する第一ステップにおいて得られたプロピレン単独重合体成分のメルトインデックス比は、0.6以上、1以下である。
【0078】
本発明によれば、好ましくは、プロピレン単独重合体成分に対するプロピレン-エチレン共重合体成分の重量比は、(11~80):100である。
【0079】
第一段階において、使用される水素の量は、例えば、0~200ppmであり得る。第二段階において、使用される水素の量は、2000~20000ppmである。
【0080】
本発明に係る工程において、使用される触媒はチーグラー-ナッタ触媒であり、好ましくは、高い立体選択性を有している触媒である。本明細書中に記載されている高い立体選択性を有するチーグラー-ナッタ触媒は、95%より大きいアイソタクチック指標を有しているプロピレン単独重合体、を調製するために使用され得る触媒を指す。そのような触媒は、通常、(1)主な成分がマグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与体である、チタン含有固体触媒活性成分;(2)有機アルミニウム化合物を有する共触媒成分;(3)外部電子供与体成分、を包含する。
【0081】
本発明の工程において使用されるチーグラー-ナッタ触媒における固体触媒活性成分(主触媒としても知られている)は、公知の技術である。そのような活性固体触媒成分(1)の具体例は、例えば、中国特許第85100997号、中国特許第98126383.6号、中国特許第98111780.5号、中国特許第98126385.2号、中国特許第93102795.0号、中国特許第00109216.2号、中国特許第99125566.6号、中国特許第99125567.4号、中国特許第02100900.7号の特許文献において、利用可能である。これら特許文書の全体の内容は、援用によって本明細書中に組み込まれる。
【0082】
本発明の工程において使用されるチーグラー-ナッタ触媒における有機アルミニウム化合物は、好ましくはアルキルアルミニウム化合物であり、より好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムおよびトリスヘキシルアルミニウム、などの少なくとも一つである。
【0083】
本発明の工程において使用されるチーグラー-ナッタ触媒における、有機アルミニウム化合物に対するチタン含有活性固体触媒成分のモル比は、アルミニウム/チタンの点について、10:1~500:1であり、好ましくは、25:1~100:1である。
【0084】
本発明によれば、第一の外部電子供与体は、好ましくは、一般式R1R2Si(OR3)2の化合物から選択される少なくとも一つであり;ここで、R2およびR1は、C1-C6直鎖または分枝状のアルキル、C3-C8シクロアルキルおよびC5-C12ヘテロアリールからそれぞれ独立して選択され、かつ、R3はC1-C3直鎖脂肪族基である。具体例は、メチル-シクロペンチル-ジメトキシシラン、エチル-シクロペンチル-ジメトキシシラン、n-プロピル-シクロペンチル-ジメトキシシラン、ビス(2-メチルブチル)-ジメトキシシラン、ビス(3-メチルブチル)-ジメトキシシラン、2-メチルブチル-3-メチルブチル-ジメトキシシラン、ビス(2,2-ジメチル-プロピル)-ジメトキシシラン、2-メチルブチル-2,2-ジメチル-プロピル-ジメトキシシラン、3-メチルブチル-2,2-ジメチル-プロピル-ジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチル-ジエトキシシラン、ジイソブチル-ジメトキシシラン、メチル-シクロヘキシル-ジメトキシシラン、メチル-イソブチル-ジメトキシシラン、ジシクロヘキシル-ジメトキシシラン、メチル-イソプロピル-ジメトキシシラン、イソプロピル-シクロペンチル-ジメトキシシラン、ジシクロペンチル-ジメトキシシラン、イソプロピル-イソブチル-ジメトキシシラン、ジイソプロピル-ジメトキシシラン、などを包含するが、これらに限定されない。
【0085】
第一の外部電子供与体に対する上記有機アルミニウム化合物のモル比は、アルミニウム/シリコンの点について、1:1~100:1であり、好ましくは10:1~60:1である。
【0086】
本発明の工程において、第一の外部電子供与体を含んでいる触媒は、単独重合反応器の中に直接添加され得るか、または、技術的に知られているように、予備接触、および/もしくは、予備重合され、その後、単独重合反応器の中に添加され得る。予備重合は、望ましい、粒子形態および速度論的挙動制御を得るために、予備重合が、相対的に低い温度において、特定の比率、および触媒を用いて行われることを指す。予備重合は、液相バルクの連続的な予備重合であり得るか、または、不活性溶媒の存在下における断続的な予備重合であり得る。予備重合温度は、通常、-10~50℃であり、好ましくは5~30℃である。予備接触ステップは、予備重合工程の前に、任意で設けられてもよい。予備接触ステップは、重合活性を有している触媒系を得るために、触媒系の錯体形成が、触媒系における、共触媒、外部電子供与体、および主触媒(固体活性中心成分)によって行われることを指す。予備接触ステップの温度は、一般的に、-10~50℃において制御され、好ましくは、5~30℃において制御される。
【0087】
本発明によれば、第二の外部電子供与体は、式(III)、(IV)および(V)において示されるような分子構造を有する化合物から、選択される少なくとも一つである;
【0088】
【0089】
ここで、R1およびR2は、C1-C20直鎖、分枝状の、または環状の脂肪族基、から一つそれぞれ独立して選択され、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素原子、ハロゲン原子、C1-C20直鎖または分枝状のアルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C7-C20アルカリルおよびC7-C20アラルキル、からそれぞれ独立して選択され;R9、R10およびR11は、それぞれ独立してC1-C3直鎖脂肪族基であり、R12は、C1-C6直鎖もしくは分枝状のアルキル、またはC3-C8シクロアルキルである。第二の外部電子供与体の具体例は、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2,3,7-ジメチルオクチル-ジメトキシプロパン、2,2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ブチル-1,3-ジプロポキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジプロポキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジエトキシプロパン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリブトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリプロポキシシラン、t-ブトキシトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、などを包含するが、これらに限定されない。
【0090】
第二の外部電子供与体に対する有機アルミニウム化合物のモル比は、アルミニウム/シリコン、またはアルミニウム/酸素の点について、1:1~60:1であり、好ましくは5:1~30:1である。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第一の外部電子供与体に対する第二の外部電子供与体のモル比は、1~30であり、好ましくは5~30である。
【0092】
本発明の工程において、好ましくは、第二の外部電子供与体は、第二段階における単独重合の前に、第一段階反応生成物における触媒成分と十分に接触させられる。いくつかの好ましい実施形態において、第二の外部電子供与体は、第二段階反応器の前かつ第一段階後の反応器後にあるか、または、第二段階反応器の供給ラインの前方における、供給ラインに添加され得、その目的は、第二段階の反応前に、第一段階反応生成物における触媒を予備接触することである。
【0093】
好ましくは、第二ステップにおいて、使用されるエチレンの量は、エチレンおよびプロピレンの総体積に対するエチレンの重量を単位として、20%~50%である。好ましくは、第二ステップにおいて、エチレンおよびプロピレンの総量に対する水素の体積比は、0.02~1である。一方では、上述されているように、第一段階において、使用される水素の量は、例えば、0~200ppmであり得る。第二段階において、使用される水素の量は、2000~20000ppmであり得る。本発明において、分散相および連続相の組成、構造、または性能を制御することは、高溶融強度ならびに高い剛性および強靭性を有しているポリプロピレンベース樹脂を得るために、重要である。本発明は、本発明の目的のために、分子量分布およびエチレン含有量を有しているゴム相が、これらの好ましい条件によって得られることを可能とし、より良い特性を有するインパクトポリプロピレンベース樹脂を得る。
【0094】
本発明の好ましい実施形態において、第二のプロピレン単独重合体に対する第一のプロピレン単独重合体の収率の比は、40:60~60:40である。プロピレン単独重合体成分に対するプロピレン-エチレン共重合体成分の収率の比は、(11~40):100である。
【0095】
第一ステップの重合は、液相-液相において、もしくは気相-気相において、または、液体-気体の組み合わせ技術において、行われ得る。液相重合が行われるとき、より良い重合温度は、0~150℃であり、好ましくは60~100℃である;重合圧力は、対応する重合温度におけるプロピレンの飽和蒸気圧よりも高くあるべきである。気相重合において、重合温度は、0~150℃であり、好ましくは60~100℃である;重合圧力は、大気圧以上であり得、好ましくは、1.0~3.0MPa(ゲージ圧、以下同様)であり得る。
【0096】
第二ステップの重合は、気相において行われる。気相反応器は、気相流動床反応器、気相移動床反応器、または気相攪拌床反応器であり得る。重合温度は、0~150℃であり、好ましくは60~100℃である。重合圧力は、プロピレンの分圧下における液化圧力よりも低い。
【0097】
本発明の好ましい実施形態によれば、第一ステップにおいて、第一段階における反応温度は、50~100℃であり、好ましくは60~85℃である;第二段階における反応温度は、55~100℃であり、好ましくは60~85℃である。第二ステップにおける反応温度は、55~100℃であり、好ましくは60~85℃である。
【0098】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の工程はまた、ポリプロピレン樹脂材料の剛性または強靭性をさらに向上させるために、調製されたインパクトポリプロピレンベース樹脂を、αまたはβ結晶造核剤によってさらに修飾することを含んでいる。α結晶またはβ結晶造核剤によって適用可能な修飾は、技術的に公知の技術である。通常、ポリプロピレンの総重量に対する造核剤の重量比は、(0.005~3):100である。
【0099】
本発明の工程によれば、重合反応は、連続的にまたは断続的に行われ得る。好ましくは、本発明によって提供される工程は、連続して接続された2以上の運転反応器において、行われる。
【0100】
本発明の工程によれば、(1)連続して接続された複数の反応器において2以上の異なる種類の外部電子供与体を使用すること、(2)外部電子供与体の適切な量を選択すること、(3)連鎖移動剤として異なる量の水素を組み合わせること、(4)非常に幅広い分子量分布と特定のメルトインデックスとを有する多数の超高分子量成分を含んでおり、好ましくは、単独重合体成分の分子量分布Mw/Mnは6~20であり、分子量が5,000,000より大きいプロピレン単独重合体成分の含有量は、1.5重量%以上かつ5重量%以下であり;分子量が50,000未満であるプロピレン単独重合体成分の含有量は、15重量%以上かつ40重量%以下であり;Mz+1/Mnは、70以上であり、好ましくは150未満である;単独重合されたポリプロピレン連続相を製造すること、が好ましく、かつ、これに基づき、プロピレンおよびエチレンの共重合が連続相において分散したゴム相を得るために行われ、共重合反応の反応条件を制御することによってゴム相の組成および構造を制御し、好ましくは、上記ポリプロピレンベース樹脂の分子量分布Mw/Mnは10以下であり、かつ、4以上であり;Mz+1/Mnは、10より大きくかつ20未満であり、好ましくは10より大きくかつ15未満であり;ポリプロピレンベース樹脂の室温でのキシレン可溶分は10重量%よりも大きくかつ30重量%未満であり;室温でのトリクロロベンゼン不溶分のMwに対する、室温でのトリクロロベンゼン可溶分のMwの比は、0.4より大きくかつ1未満であり、好ましくは、0.5より大きく、0.8未満であり、高い溶融強度効果を有するインパクトポリプロピレンベース樹脂を得る。
【0101】
本発明のインパクトポリプロピレンベース樹脂の調製工程において、添加された第二の外部電子供与体は、第一段階の単独重合体製品における触媒活性中心と反応することが可能であり、新規の触媒活性中心を形成し、第二段階においてプロピレンの重合を引き起こし続け、第一段階における製品と相違する分子量を有している単独重合体を得る。第二の外部電子供与体は、第一の外部電子供与体よりも高い水素感受性を有しており、高メルトインデックス重合体は、少量の水素の存在下で調製され得る。それ故に、連続して接続された二つの反応器において、または、断続的な操作の異なる段階において、特定の触媒を使用することなく、外部電子供与体の量および種類ならびに水素の量、を調節することによって、本発明は、非常に少量の水素と共に大量の超高分子量画分および幅広い分子量分布を含んでいる、単独重合されたポリプロピレン成分を、得ることが可能である。その後、単独重合されたポリプロピレン成分の基礎原料に対して、適切なエチレン/(エチレン+プロピレン)、水素/(エチレン+プロピレン)ならびに温度および圧力を選択することによって、プロピレン-エチレン共重合が行われ、特定の性能を有するゴム成分を特定の量、含有している高溶融強度インパクトポリプロピレンを得る。ゴム相成分の組成および構造の制御はその高溶融強度を確実にし、ゴム成分の特定の含有量はその高い耐衝撃性を確実にし、適切な分子量分布はまた、重合体に、良好な加工性を与える。言い換えれば、本発明は、複数のプロピレン単独重合段階を設定し、かつ、それぞれの単独重合および共重合のための適切な反応パラメータおよび反応条件を選択することによって、適切な連続相およびゴム分散相、ならびにそれらの組み合わされた関係を提供し、この基礎原料に基づいて優れた性能を有する、ポリプロピレンベース樹脂を得る。
【0102】
本発明において調製され、かつ使用される、高溶融強度を有するインパクトポリプロピレンは、特許出願第2014106027987において記載されており、つけられた名称は「高溶融強度インパクトポリプロピレン材料およびそれの調製方法」であり、それ自身の全体の内容は、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0103】
本発明によって提供された、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、ここで、カーボンナノファイバーが上述されているような特徴(例えば1重量%~5重量%の遷移金属)を有しており、これは、以前に記載されている調製工程によって調製され得る。
【0104】
さらに、上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、他の添加剤を含んでいてもよく、当該他の添加剤は、通例、先行技術におけるポリプロピレン樹脂およびポリプロピレンプロファイルにおいて用いられており、本発明によって提供されるポリプロピレン組成物の、押し出し特性、難燃剤特性、帯電防止特性、および機械特性、に対して悪影響を引き起こさない。他の添加剤は、スリップ剤、および抗ブロッキング剤を包含するが、これらに限定されない。さらに、他の添加剤の量は、当業者によって理解され得るような、技術的に従来型の選択であり得る。
【0105】
難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、多様な従来型の工程に基づいて調製され得、例えば、(1)上記難燃剤または上記複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、ならびに任意で、酸化防止剤、潤滑剤、および他の添加剤と、(2)高溶融強度のインパクトポリプロピレンベース樹脂と、を機械的混合装置において特定の比率に基づき、直接的に機械的に混合し、その後、溶融混和装置において、170~200℃にて、溶融混和されることによって、調製され得る。代替的に、少量の高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂は、濃縮された様式において、上記難燃剤および導電性フィラー(すなわち、カーボンナノファイバー帯電防止剤)と、それぞれ、混和され得、そして、難燃剤マスターバッチおよび帯電防止剤マスターバッチは、170~210℃において調製され、その後、二種類のマスターバッチ、および高溶融強度を有するインパクトポリプロピレン樹脂は、釣り合うように混和され、170~200℃の条件下においてペレット化される。それ故に、機械的混合装置は、例えば、高速ミキサー、ニーダーなどであり得る。溶融混和装置は、例えば、二軸押出機、単軸式押出機、開放式ミル、密閉式ミキサー、バスニーダーなど、であり得る。
【0106】
本発明によって提供される、高性能なハロゲンフリーの難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物は、優れた機械的強度、加工性能、適確な光学特性、および優れた帯電防止特性を有している。高い性能を有するハロゲンフリーの難燃剤帯電防止組成物の性能は、下記を満たし得る:単純支持梁のノッチ付き衝撃強度は、≧15MPaであり、好ましくは≧25MPaである;酸素指数は、≧25であり、好ましくは≧28である。さらに、本発明の難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物に基づき調製された、帯電防止フィルム原シートの表面抵抗率は、107~109Ωであり、好ましくは108~109Ωである。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態では、難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズが提供されており、これは、上述の難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物から、発泡工程によって調製され得、ここで、難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズは、規則的なセル形態および適切な発泡倍率を有しており、かつ、高い温度および低い温度における耐衝撃性、帯電防止特性、難燃性、並びに単純な加工技術という特徴を有している。上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズ、およびその調製工程を提供することによって、本発明は、下記(1)および(2)の欠点を克服する:(1)ポリプロピレン発泡ビーズを調製するときに、既存のポリプロピレンベース樹脂が乏しい難燃性および帯電防止特性を示すということ;(2)続く成型の施行に影響を与える難燃剤帯電防止性の改善の後に、発泡ポリプロピレンのセル形態および発泡倍率の制御に関する問題があるということ。
【0108】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズが提供されており、これは、上述の10~13のいずれか一つに記載されているように100重量部、およびセル造核剤を0.001~1重量部、好ましくは0.01~0.1重量部、より好ましくは0.01~0.05重量部含んでいる難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、の含浸および発泡工程によって調製される。
【0109】
本発明はまた、上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズの調製工程を提供しており、これは以下のステップを含む:
上記難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を、分散媒、並びに任意で添加された、界面活性剤、分散剤および分散促進剤の少なくとも一つと、オートクレーブにおいて、混合し、分散液を得る;
発泡剤はオートクレーブの中に供給され、温度および圧力は、発泡温度および発泡圧力にそれぞれ調節され、それから、発泡反応は攪拌下にて行われる;発泡ビーズは回収される。
【0110】
ここで、セル造核剤は無機粉末(例えば、ホウ酸亜鉛、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂および水酸化アルミニウムの少なくとも一つ)であり得、ここで、ホウ酸亜鉛が好ましい。セル造核剤は、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物の調製において、ともに添加され得、これは、酸化防止剤の量を低減する目的のためである。
【0111】
本発明に基づき、難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズおよびその調製は、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物において使用される難燃剤および帯電防止剤のために、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物はセル核生成の一部として働きうるため、続く段階におけるセル造核剤の量は低減され得るため、発泡ビーズのセル形態が受ける影響は可能な限り低減される。
【0112】
本発明は、マイクロペレットを発泡するために、反応器含浸工程の使用を必要としており、これは、溶剤の分散、および、好ましくは、少なくとも一つの添加剤(例えば、界面活性剤、分散剤および分散促進剤など)の添加、を要求しており、これはまた、発泡剤の添加を必要とする。
【0113】
難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットを溶解することなく、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットが分散される任意の成分、が分散媒として使用され得る。分散媒は、水、エチレングリコール、グリセロール、メタノールおよびエタノールの一つ、または、それらのいくつかの混合物、であり得る。好ましくは、水溶性の分散媒であり、より好ましくは水であり、最も好ましくは脱イオン化した水である。分散媒の量は、反応器の体積の5Lと相対的に、1~4Lであり、好ましくは2.5~3.5Lである。
【0114】
分散媒におけるマイクロペレットの分散を促進するために、界面活性剤を用いることが好ましく、当該界面活性剤は、ステアリン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、第四級アンモニウム塩、レシチン、アミノ酸、ベタイン、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ソルビタンおよびポリソルベートの一つ以上であり得、好ましくは、陰イオン界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットの100重量部に対して、界面活性剤の量は、一般的に0.001~1重量部であり、好ましくは0.01~0.5重量部であり、好ましくは0.1~0.3重量部である。
【0115】
発泡ステップの間、ポリプロピレンマイクロペレットの溶融接着を防止するために、微細な有機または無機固形物である分散剤を、分散媒の中に添加することが望ましい。容易に操作するために、無機粉末を用いることが好ましい。分散剤は、天然の、または合成された粘土鉱物(例えば、カオリン、マイカ、パイロープおよび粘土)、アルミナ、二酸化チタン、塩基性の炭酸マグネシウム、塩基性の炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、ホウ酸亜鉛および酸化鉄、であり得、ここで、カオリンが好ましい。難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットの100重量部に対して、分散剤の量は、一般的に0.01~0.5重量部であり、好ましくは0.1~0.3重量部であり、好ましくは0.5~2重量部である。
【0116】
分散剤の分散効率を改善するために、即ち、マイクロペレットの溶融結合を防止する分散剤の機能を維持するとともに分散剤の量を低減するために、分散促進剤が分散溶媒の中に添加され得る。分散促進剤は、40℃において100mLの水における約1mgの溶解度を有している無機化合物であり、二価もしくは三価の陰イオンまたは陽イオンを提供する。分散促進剤の例は、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、および硝酸鉄、を包含し、その中で硫酸アルミニウムが好ましい。分散促進剤の使用は、100g/L以上の見かけ密度を有しているPP発泡ビーズを得るために有益である。難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットの100重量部に対して、分散促進剤の量は、一般的に0.0001~1重量部であり、好ましくは0.01~0.1重量部である。
【0117】
本発明に適した発泡剤は、有機物質発泡剤または無機物質発泡剤であり得る。有機物質発泡剤は、一つ以上の脂肪族炭化水素(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン);脂環式炭化水素(例えばシクロブタンおよびシクロヘキサン)、およびハロゲン化炭化水素(例えばクロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,2-ジフルオロエタン、1,2,2,2-テトラフルオロエタン、塩化メチル、塩化エチルおよびジクロロメタン)、を包含する。無機物質発泡剤の例は、一つ以上の空気、窒素、二酸化炭素、酸素、および水、を包含する。本明細書中において、発泡剤としての水は、ポリプロピレン樹脂マイクロペレットを分散するために、分散媒において用いられる水であり得る。これらの有機および無機発泡剤は、単独で、または二つ以上の組み合わせで用いられ得る。PP発泡ビーズの、安定性(均一性)、低費用および低環境負荷における課題のために、二酸化炭素および窒素は、本発明における発泡剤として好ましい。
【0118】
発泡剤の量は、発泡剤、発泡温度、および製造されるPP発泡ビーズの見かけ密度に基づいて、従来のように決定され得る。窒素ガスが発泡剤として使用され、水が分散媒として使用される場合は、発泡装置が減圧されるときの密閉容器中の圧力、すなわち密閉容器の上部空間における圧力(ゲージ圧)は、1~12MPaの範囲であり;二酸化炭素が発泡剤として使用される場合は、ゲージ圧は1~7MPaの範囲である。一般的に、密閉容器の上部空間における圧力は、得られるPP発泡ビーズの見かけ密度の減少とともに、望ましく上昇される。
【0119】
本発明に基づく、難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズの調製工程は、以下を含み得る:難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズは、上述された量としてすべての成分を、溶融混和、および水中におけるペレット化、ならびに容器における含浸および発泡、に供することによって、得られる。
【0120】
本明細書における、原料の溶融混和および造粒工程は、以下のようであってもよい:難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するための原料は、難燃剤(または複合難燃剤)、長時間作用型の帯電防止剤、ポリプロピレンベース樹脂など、並びに、セル造核剤、酸化防止剤、および、任意で、スリップ剤、結合剤など、を包含しており、当該原料は高速攪拌機によって混和され、かつ、二軸または単軸押出機の一つ以上のダイを介して、ワイヤーの中へ押し出され、切断され、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレットを得る。好ましくは、マイクロペレットの切断は、水中のマイクロペレットペレット化システムを用いて、75℃以下の、好ましくは70℃以下の、より好ましくは55~65℃以下の水中にて実行され、ポリプロピレン樹脂マイクロペレットを得る。好ましくは、それぞれの粒子の長さ/直径の比率は、0.5~2.0であり、好ましくは0.8~1.3であり、より好ましくは0.9~1.1であり、平均重量は、0.1~20mg、好ましくは0.2~10mg、より好ましくは1~3mgである。平均重量は、無作為に選択された200個のマイクロペレットの平均である。
【0121】
本発明の特定の実施形態によれば、発泡ステップは、反応器において含浸および発泡が行われ、特定のステップは以下のようなステップである:
1)オートクレーブにおいて、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物のマイクロペレット、および添加剤(例えば、分散媒、界面活性剤、分散剤、分散促進剤、など)は、一度に、添加され、かつ混合される。
2)不活性発泡剤を使用して反応器から残留空気を取り除き、反応器の内部の空気が取り除かれた後に、蓋をする。不活性発泡剤は、オートクレーブの中に供給され、オートクレーブが安定するまで、最初に圧力を調節する。ここで、上記不活性発泡剤は、二酸化炭素、および/または窒素、好ましくは二酸化炭素である。続いて、50~150rpm、好ましくは90~110rpmの攪拌速度において、オートクレーブ中の分散液を攪拌する。
3)ケトル中の圧力を、発泡するために必要とされる圧力に調節し、当該必要とされる圧力は1~10MPaであり、好ましくは3~5MPa(ゲージ圧)である。温度は、0.1℃/分の平均加熱速度において、発泡温度まで上昇させられ、当該発泡温度は、80~220℃である。攪拌は、発泡温度および圧力の条件下において、0.1~2時間、好ましくは0.25~0.5時間、続けられる。
4)オートクレーブの排気口は、その後、開放され、オートクレーブの内容物を回収タンクの中に排出し、ポリプロピレン発泡ビーズを得る。二酸化炭素ガスは、排出が行われている間、供給され、オートクレーブ中の圧力は、全ての粒子が完全に発泡しかつ収集タンクの中にあるより前に、発泡圧力付近で維持される。
【0122】
本発明の好ましい実施形態によれば、難燃剤帯電防止ポリプロピレン発泡ビーズは、ハロゲンフリーである。
【0123】
本発明の、いくつかのさらに好ましい実施形態では、上述されているようなポリプロピレン発泡ビーズから得られた成形体もまた提供され、当該成形体は、1.0×107Ω~1.0×109Ω、好ましくは1.0×108Ω~9.9×108Ωの表面抵抗率を有しており、その限界酸素指数は20~40(試験基準は、以下に記載されている)である。成形体の圧縮強度は、好ましくは170~600kPaであり、これは、アメリカ合衆国ASTM規格D3575-08に基づいて、10mm/分の圧縮速度において測定され、これは、成形体が50%まで圧縮される圧縮強度である。
【0124】
さらに、本発明はまた、本発明に基づき調製された発泡ビーズまたはその成形体の、自動車用部品、医療用具、電子輸送容器、家庭用品、低い温度におけるコールドチェーン輸送容器、スポーツ用品、建造物インシュレーション、および航空宇宙、といった分野における使用を提供する。
【0125】
本明細書中で用いられるとき、用語「ベース樹脂」は、純粋な樹脂を意味し、すなわち、いずれの組成物も形成しない樹脂を意味する。
【0126】
本発明において用いられるとき、用語「ハロゲンフリー」は、化合物、または混合物、または組成物が、ハロゲンを含んでいないことを意味する。
【0127】
ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩より形成される「錯体」は、本発明における式(II)において示されるような分子構造を有しており、「錯体」は、配位錯体を指しており、「配位化合物」または「金属錯体」とも呼ばれ、中心原子もしくはイオン、または周囲の原子もしくは分子(リガンド)と弱く接続された分子、から構成されている構造を指している。
【0128】
本発明において用いられるとき、用語「複合難燃剤」は、いくつかの異なる難燃剤または難燃剤物質から製造される難燃剤を意味する。
【0129】
本発明の要素を説明するかまたは記載するとき、用語「a」、「an」、「一つ(one)」、「the」および「上記(said)」は、一つ以上の要素の存在を意味することを目的としている。用語「包含する」、「含有する」、「含む」、「有する」は、列挙された要素以外の付加的な要素が存在してもよいという意味を含めることを目的としている。
【0130】
本明細書中で用いられるとき、用語「約」、「約」、「基本的には」、および「主に」は、要素、濃度、温度、または他の物質的または化学的特性もしくは特徴と関連して用いられる場合、範囲の上限値および/または下限値における変化は、例えば、切り捨て、測定工程、または他の統計学的変化によって引き起こされる変化を包含している。本明細書中に記載されているように、量、重量などと関連する値は、それぞれの特定の値に対して全ての値のプラスまたはマイナス10%である「約」、として定義される。例えば、用語「約10%」は、「9%~11%」として理解されるべきである。
【0131】
先行技術と比較して、本発明は、以下の有利な効果を有している:
本発明は、ハロゲンフリーの難燃剤および複合難燃剤並びに長時間作用型の帯電防止剤、を提供しており、これは、相乗効果を果たし得、ポリプロピレン製品の難燃性効率を効果的に改善し得、また、難燃剤効果を改善し得、難燃剤の量を低減し得、一方で、帯電防止性能に対する副作用を少しも有さない。
【0132】
本発明は、高溶融強度インパクトポリプロピレンを、ベース樹脂として用いており、それから特定の帯電防止難燃性相乗剤を添加し、ポリプロピレン組成物を得、その後、ポリプロピレン発泡ビーズを得るために、ケトル工程によって調製する。発泡ビーズは、高い温度および低い温度における優れた耐衝撃性、帯電防止性、難燃性、高比率の閉鎖領域、制御可能な密度、成形および加工容易性、などの特徴を有する。製造工程は単純であり、省エネルギーであり、かつ環境に負担をかけないものである。
【0133】
さらに、本発明によって提供される発泡ポリプロピレンビーズは、低費用、緻密なセル、および均一な孔径分布という利点を有しており、下記(1)および(2)に適用されることが可能である:(1)軽量の可塑性製品に対してより高い要求がある場合(例えば、自動車部品、食品及び電子の輸送容器、ならびに建造物の装飾など);(2)低い温度における難燃性、帯電防止特性、および耐衝撃性に対する包括的な要求がある分野の優れた材料(例えば、医療機器、家庭用品、低い温度におけるコールドチェーン輸送容器、スポーツ用品、および航空宇宙など)。
【0134】
本発明によって製造される発泡ポリプロピレンビーズは、非架橋構造であり、一般的なポリプロピレン修飾材料として二次汚染を引き起こすことなく再利用され得、循環経済の要求を満たし得る。
【0135】
〔図面の説明〕
ここから、本発明は、添付の図面を参照して、さらに詳細に記載され、本明細書において、図面中、同一部材は同一参照番号によって示される。
【0136】
図1は、ホスフィンオキシドおよびCo(OPPh
3)
2(NO
3)
2の赤外線スペクトルを示す。
【0137】
図2は、Co(OPPh
3)
2(NO
3)
2の、電子顕微鏡観察による微細構造を示す。
【0138】
図3は、カーボンナノファイバーの、電子顕微鏡観察による微細構造を示す。
【0139】
図4は、実施例1で調製された難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による表面の観察を示す。
【0140】
図5は、実施例1で調製された難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による断面の観察を示す。
【0141】
図6は、比較例1で調製された発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による表面の観察を示す。
【0142】
図7は、比較例1で調製された発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による断面の観察を示す。
【0143】
〔特定の実施形態〕
本発明は、以下の実施例の参照によってさらに記載されるが、本発明はこれらの実施例に限定されないことが言及されなければならない。
【0144】
以下の実施例および比較例における原料は、以下を含んでいる。
【0145】
一般ポリプロピレンベース樹脂:China Petroleum & Chemical Corporation QiluBranch、グレードEPS30R;
ポリエチレンベース樹脂:China Petroleum & Chemical Corporation Yangtze Branch、グレード7042;
ポリエチレンベース樹脂:China Petroleum & Chemical Corporation Yanshan Branch、グレードLD100ac;
ポリエチレンベース樹脂:China Petroleum & Chemical Corporation Beijing Chemical Industry Research Institute、グレードHPE1、HPE2;
ポリ乳酸ベース樹脂:Natureworks;
TPUベース樹脂:BASF;
PBTベース樹脂:Chi Mei Chemical;
PETベース樹脂:Japan Toray;
PA6ベース樹脂:BASF;
PBSベース樹脂:China Petroleum & Chemical Corporation Beijing Chemical Industry Research Institute;
カオリン:Braun、ACROS、分析試薬;
トリフェニルホスフィンオキシド:Braun、ACROS、分析試薬;
硝酸コバルト:Braun、ACROS、分析試薬;
硝酸ニッケル:Braun、ACROS、分析試薬;
石炭アスファルト:Institute of Coal Chemistry Chinese Academy of Science(Shanxi)、80重量%より高い炭素含有量、工業用グレード;
石油アスファルト:Sinopec、80重量%より高い炭素含有量、工業用グレード;
竹炭:Institute of Coal Chemistry Chinese Academy of Scienc (Shanxi)、80重量%より高い炭素含有量、工業用グレード;
水酸化マグネシウム:Braun、ACROS、分析試薬;
水酸化アルミニウム:Braun、ACROS、分析試薬;
エタノール:Braun、ACROS、分析試薬;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:Tianjin Guangfu Fine Chemical Research Institute、分析試薬;
硫酸アルミニウム:Tianjin Guangfu Technology Development Co., Ltd.、分析試薬;
ホウ酸亜鉛:Tianjin Guangfu Fine Chemical Research Institute、分析試薬;
カーボンナノファイバー:Institute of Coal Chemistry、Chinese Academy of Scienc (Shanxi)、80重量%より高い純度、工業用グレード;
帯電防止剤 Atmer129:Croda company, 工業用グレード;
トリオクチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリブチルホスフェートおよびジブチルブチルホスホネートを従来知られている製造工程で調製する。
【0146】
使用される他の原料は、商業的に入手可能である。
【0147】
以下の実施例および比較例で使用される、製造用および試験用機械および器具には、以下が含まれる。
【0148】
水中ペレット化システム:Labline 1000、Germany BKG company;
溶融張力試験機:Rheotens71.97、Germany Goettfert;
密度試験機:CPA225D、Density accessories YDK01、Germany Satorius company;
成形機械:Germany Kurtz Ersa Company Kurtz T-Line;
万能材料試験機:5967、the United Kingdom Instron;
酸素指数計器:6448、Italy ceast company;
コーンカロリメーター:FTT200、British FTT company;
表面抵抗メーター:4339B、the United States Agilent company;
赤外分光計:Nicolet6700、the United States Thermal company;
走査型電子顕微鏡:SL-30、US FEI Corporation。
【0149】
実施例における重合体の関連データを以下の試験方法に従って得る。
【0150】
(1)室温でのキシレン可溶分の含有量および室温でのキシレン可溶分中のエチレンの含有量(例えば、ゴム相の含有量およびゴム相中のエチレンの含有量の特徴付け)を、Spain Polymer Char Company製のCRYST-EX(CRYST-EX EQUIPMENT, IR4+ 検出器)を用いて、CRYSTEX法で測定し、室温でのキシレン可溶分の異なる含有量を有する一連のサンプルを、キャリブレーションのための標準サンプルとして選択し、室温での標準的なキシレン可溶分の含有量をASTM D5492に従って測定する。
【0151】
計器自体に備え付けられた赤外線検出器は、可溶性物質中のプロピレンの重量含有量を試験でき、室温でのキシレン可溶分中のエチレンの含有量(ゴム相中のエチレンの含有量)を特徴付けるために使用され、(ゴム相中のエチレンの含有量)=100%-プロピレンの重量含有量である。
【0152】
(2)樹脂の張力強度を、GB/T 1040.2(ISO 527に対応)に従って測定する。
【0153】
(3)メルトマスフローレートMFR(メルトインデックスとも知られる):ASTM D1238に記載される方法に従って、CEAST 7026メルトインデックス計を用いて、2.16kgの荷重下、230℃で測定する。
【0154】
(4)曲げ弾性率:GB/T 9341に記載の方法(ISO 178に対応)に従って測定する。
【0155】
(5)ノッチ付単純梁の衝撃強さ:GB/T 1043.1に記載の方法(ISO 179に対応)に従って測定する。
【0156】
(6)エチレンの含有量:赤外分光(IR)法で測定し、ここで、核磁気共鳴法によってサンプルをキャリブレーションする。Swiss Bruker company AVANCE III 400MHz核磁気共鳴分光器(NMR)、10mmプローブを用いて、核磁気共鳴を測定する。溶媒は、1,2-ジクロロベンゼン-d4であり、約250mgのサンプルを2.5mLの重水素化溶媒中に置き、均質な溶液を形成するため、140℃のオイルバスで加熱し、溶解させた。13C-NMRを集めるため、プローブ温度125℃、90°パルスを使用、サンプリング時間AQは5秒間、遅延時間D1は10秒間、スキャン回数は5000回超とする。一般のNMR実験用の必要条件として、他の操作、ピーク同定、およびその他を行う。
【0157】
(7)相対分子質量の多分散性指数(PI):樹脂サンプルを200℃で2mmシートに成形し、Rheometric Scientific Inc.製のARES(Advanced Rheometer Extension System)レオメーターを用いて、窒素保護下において190℃で動的周波数スキャニングに供し、平行板治具を用いて、実験を直鎖領域で行うことを確実にするために適当な歪み振幅を決定し、周波数を変化させて、サンプルの貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G'')等を測定する。
【0158】
相対分子質量の多分散性指数は、PI=105/Gであり、式中、G(単位:Pa)は、G’-周波数曲線およびG''-周波数曲線の共通部分における弾性率値である。
【0159】
(8)Germany Geottfert Werkstoff Pruefmaschinen Company製のRheotens溶融強度メーターを用いて、溶融強度を測定する。重合体を単軸押出機で溶融し、可塑化し、それから、30/2アスペクト比の90°操縦ダイヘッドで溶融物断片を押出し、一軸延伸のため一定速度で回転する複数のローラーの間に断片を保持し、引出ローラーに接続された力測定部を介して、溶融物引出工程の力を測定し、記録し、破損するまでの溶融物引き伸ばし時間で測定された最大力値を溶融強度と規定する。
【0160】
(9)分子量(Mw、Mn)および分子量分布(Mw/Mn、Mz+1/Mw):サンプルの分子量および分子量分布を決定するため、Polymer Laboratories(USA)製のPL-GPC 220ゲル透過クロマトグラフィーまたはSpain Polymer Char company製のGPC-IR計器(IR5 濃度検出器)を用いる。クロマトグラフィーカラムは、連続に接続された三つのPLゲル 13μm Olexisカラムであり、溶媒および移動相は、1,2,4-トリクロロベンゼン(250ppmの酸化防止剤2,6-ジブチルp-クレゾールを含む)であり、カラム温度は150℃であり、流速は1.0mL/分であり、共通キャリブレーションとして、PL company製の分布が狭いポリスチレン標準EasiCal PS-1を用いる。
【0161】
室温でのトリクロロベンゼン可溶物質の調製工程は、以下の通りである。サンプルおよびトリクロロベンゼン溶媒の重さを正確に量り、150℃で5時間溶解させ、15時間、25℃で静置した後、定量グラスファイバーろ過紙を使用してろ過し、決定のために使用される、室温でのトリクロロベンゼン可溶分溶液を得る。既知の濃度のポリプロピレンを用いてGPC曲線領域を補正し、室温でのトリクロロベンゼン可溶分の含有量を決定し、室温でのトリクロロベンゼン不溶分の分子量データを、オリジナルサンプルのGPCデータおよび可溶性物質のGPCデータから計算する。
【0162】
(10)密度測定:GB/T 1033.1-2008(ISO 1183に対応)に従って、ザルトリウス天秤の密度付属品を用いて、排水法によってポリプロピレンベース樹脂および発泡ポリプロピレンビーズの密度を得る。得られた発泡ポリプロピレン材料の発泡倍率は以下の式で計算される:b=ρ1/ρ2、式中、bは発泡倍率であり、ρ1は、ポリプロピレンベース樹脂の密度であり、ρ2は、発泡材料の見かけ密度である。
【0163】
(11)酸素指数試験:GB/T 2406.2-2009(ISO 4589に対応)に記載の方法に従って試験する。
【0164】
(12)表面抵抗性試験:GB/T 1410-2006[国際電子技術委員会(International Electro technical Commission)(IEC)IEC60167に対応]に従って試験する。
【0165】
(13)圧縮強度試験:50×50×25mmサンプルを発泡ビーズ成形体から切り出し、アメリカ合衆国ASTM規格 D3575-08に基づいて、万能材料試験機5967で、圧縮速度10mm/分で試験すると、成形体が50%まで圧縮されるとき、圧縮強度が得られる。
【0166】
〔ポリプロピレンベース樹脂HMSPPの調製〕
<ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の調製>
プロピレン重合をポリプロピレン装置一式で遂行し、装置一式の主な器具は、予備重合反応器、第一のループ反応器、第二のループ反応器、および第3の気相反応器を含んでいる。重合工程およびステップは以下の通りである。
【0167】
(1)予備重合反応
主触媒(DQC-401触媒,Sinopec Catalyst Company Beijing Oda Branchより提供)、共触媒(トリエチルアルミニウム)、第一の電子供与体(ジシクロペンチル-ジメトキシシラン、DCPMS)を6℃で20分間、予備接触させた後、予備重合反応のため、連続攪拌タンク予備重合反応器に引き続き加えた。予備重合反応器に入れられるトリエチルアルミニウム(TEA)の流速は、6.33g/時であり、ジシクロペンチル-ジメトキシシランの流速は、0.3g/時であり、主触媒の流速は、0.6g/時であり、TEA/DCPMS比は50mol/molである。プロピレン液相バルク状態下にて、15℃の温度、約4分間の滞留時間で予備重合を行い、触媒は、これらの条件下で、約80~120倍の予備重合比を有した。
【0168】
(2)第一ステップ:プロピレン単独重合
第一段階:予備重合の後、第一のループ反応器に触媒を引き続いて入れ、第一段階プロピレン単独重合を終わらせた。第一のループ反応器では、重合温度は70℃であり、反応圧力は4.0MPaである。第一のループ反応器の供給は、水素を含んでおらず、供給原料中の、オンラインクロマトグラフィーによる検出の水素濃度は10ppm未満であり、第一のプロピレン単独重合体Aを得る。
【0169】
第二段階:第一のループ反応器と連続して接続された第二のループ反応器中で、第二段階のプロピレン単独重合を行う。第二のループ反応器中、プロピレンの中に加えた0.63g/時のテトラエトキシシラン(TEOS)の混合物および第一のループ反応器からの反応流を用いて、TEA/TEOS比は5(mol/mol)であり、TEOSは第二の外部電子供与体である。第二のループ反応器では、重合温度は70℃であり、反応圧力は4.0MPaである。プロピレンを供給する間に、特定量の水素を加え、供給原料中の、オンラインクロマトグラフィーによる検出の水素濃度は3000ppmである。第二のループ反応器中で第二のプロピレン単独重合体Bを製造し、第一のプロピレン単独重合体と第二のプロピレン単独重合体とを含んでいるプロピレン単独重合体成分を得る。
【0170】
(3)第二ステップ:エチレンプロピレン共重合
第3の反応器に特定量の水素を加え、H2/(C2+C3)=0.06(mol/mol)であり、C2/(C2+C3)=0.3(mol/mol)(C2およびC3はそれぞれ、エチレンおよびプロピレンを指す)であり、第3の反応器中で、75℃の反応温度で、エチレン/プロピレン共重合を続け、プロピレン-エチレン共重合体成分Cを製造する。
【0171】
最終製造物は、第一のプロピレン単独重合体、第二のプロピレン単独重合体およびプロピレン-エチレン共重合体成分を含み、湿潤窒素で未反応触媒を除去し、加熱によって乾燥させることによって重合体粉末を得る。0.1重量%のIRGAFOS 168添加物、0.1重量%のIRGANOX 1010添加物および0.05重量%のステアリン酸カルシウムを、重合から得られた粉末に添加し、二軸押出機でペレット化する。得られた重合体の分析結果および物質的特性を表1および2に示す。
【0172】
<ポリプロピレンベース樹脂HMSPP602の調製>
HMSPP602において、HMSPP601と同様の触媒、予備錯化および重合の工程条件を用いた。HMSPP601との相違点は、第二段階における第二の反応器中の水素の量を13000ppmに変更する点、および第二ステップの間、気相反応器におけるH2/(C2+C3)を0.49(mol/mol)に調節する点である。量は変更せずに、第一の外部電子供与体を、メチル-イソプロピル-ジメトキシシラン(MIPMS)に置き換える。得られた重合体の分析結果および物質的特性を表1および2に示す。
【0173】
<ポリプロピレンベース樹脂HMSPP603の調製>
HMSPP603において、HMSPP601と同様の触媒、予備錯化および重合の工程条件を用いた。HMSPP601との相違点は、量は変更せずに、第二の外部電子供与体を2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン(DIBMP)に変更する点、および第二段階の間、第二の反応器中の水素ガスの量を3600ppmに調節する点である。得られた重合体の分析結果および物質的特性を表1および2に示す。
【0174】
【0175】
【0176】
〔実施例1〕
この実施例で調製する難燃剤、ポリプロピレン組成物および発泡ビーズ等の原料比および反応条件を表3および4に示し、発泡ビーズの性能パラメータも表4に一覧にする。表中、難燃剤成分Aはホスフィンオキシドであり、難燃剤成分Bは遷移金属塩であり、難燃剤成分Cは無機難燃剤成分である。
【0177】
(a)難燃剤(ハロゲンフリー)の調製
トリフェニルホスフィンオキシドおよび硝酸コバルトをエタノールに加え、100rpmの速度で攪拌し、それから、50Wの加熱出力、40℃の温度、および4時間の加熱時間でのマイクロ波照射を用いて攪拌しながら、混合物を加熱する。マイクロ波加熱反応の後、材料を超臨界乾燥することで、錯体Co(OPPh3)2(NO3)2を得る。ここで、当該錯体は、硝酸コバルトとのトリフェニルホスフィンオキシドの反応によって形成された。
【0178】
上述の錯体の赤外線スペクトルを
図1に示す。1143および1070cm
-1のピークは、P-O伸縮振動に対応し、低い波数へと移動し、これは、上記錯体の形成を示すことが
図1からわかる。1258、1024、812cm
-1のピークは、O・NO
2錯化に対応し、それ故に上記錯体の4面体構造を実証する。
【0179】
【0180】
(b)複合難燃剤(ハロゲンフリー)の調製
上述の調製された錯体Co(OPPh3)2(NO3)2を水酸化マグネシウムと共に機械的に攪拌し、10rpmの速度で攪拌し、複合難燃剤を得る。
【0181】
(c)カーボンナノファイバー帯電防止剤の調製
炭素源として85重量%の炭素含有量のコールタールピッチを用いて、リン酸/硝酸/塩酸(体積比1:1:1)で粉砕前処理を行い、前処理された材料を得る。
【0182】
上述の前処理された材料および触媒である硝酸コバルトをボールミルに加え、混合し、錯体を得る。
【0183】
上述の錯体を、高純度窒素保護下、950℃の一定温度で1.5時間、炭化反応に供し、それから、室温まで冷却し、自己組織化カーボンナノファイバーを得る。触媒金属不純物(測定値、コバルト2重量%)を除去するための後処理は不要である。
【0184】
上記カーボンナノファイバーの微細構造を
図3に示す。
【0185】
(d)難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物(ハロゲンフリー)の調製
HMSPP601、上述の調製されたカーボンナノファイバー帯電防止剤、セル造核剤としてホウ酸亜鉛、酸化防止剤1010(BASF)および酸化防止剤168(BASF)を同時に、上述のように調製された複合難燃剤と共に高速攪拌機に加え、均一に混合する。それから、Coperion製の二軸押出機のフィーダーに、混合した材料を供給し、フィーダーを介して、当該材料を二つのスクリューに入れ、処理工程の間、当該スクリューの温度は170~200℃の間に維持される。スクリューを介して均一に溶融混練し、Labline100微粒子調製システム(約65%、速度300rpmのトルク制御)に入れる。難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物マイクロペレットを得る。組成物材料の23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃は25.8KJ/m2である。
【0186】
(e)難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズ(ハロゲンフリー)の調製
(1)上述の調製された難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物および分散媒である水、界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分散剤であるカオリン、および分散補助剤である硫酸アルミニウムを加え、1回程度混合し、分散液を得る。
【0187】
(2)オートクレーブ中の残留空気を、不活性発泡剤である二酸化炭素を用いて排出し、当該不活性発泡剤を入れ続け、オートクレーブが安定するまで、上記オートクレーブ内部の圧力を調整する。それから、上記オートクレーブ中の分散液を攪拌する。
【0188】
(3)続いて、当該オートクレーブ内部の圧力を調整して発泡に要する圧力に到達させる。平均加熱速度0.1℃/分で発泡温度まで温度を上げるが、当該発泡温度はマイクロペレットの溶融温度よりも0.5~1℃低い。発泡温度および圧力の条件下で、0.25~0.5時間攪拌を続ける。
【0189】
(4)それから、上記オートクレーブの排気口を開け、当該オートクレーブの内容物を回収タンクに排出し、ポリプロピレン発泡ビーズを得る。排出を行いながら二酸化炭素ガスを供給することで、すべての粒子が完全に発泡し、回収タンクに入る前に、オートクレーブ内部の圧力を発泡圧力付近に維持する。続いて、発泡ビーズを洗浄し、乾燥させるが、温度は80℃で、乾燥時間は5時間である。
【0190】
(5)発泡ビーズの密度を測定する。結果を表4に示す。発泡ビーズの表面および断面の形態を走査電子顕微鏡によって特徴付ける。
図4および5を参照のこと。
【0191】
(6)発泡ビーズの調製および性能試験
乾燥させた発泡ビーズを約12時間、室温で静置させ、それから、成形機に加え、0.22MPaの成形圧力下で水蒸気を用いて、発泡ビーズへと成形して、発泡ビーズの成形体を形成する。得られた製造物を12時間、80℃でオーブン内に静置させる。成形体の酸素指数、炭素残存含有量、火炎高さ、煙の様子、表面抵抗率、および圧縮強度を、上述の方法に従って測定する。ここで、成形体の調製が終わるときに、成形体の表面抵抗率を測定し、特別な保護方法なしで30日間静置させた後、再度これらの表面抵抗率を測定する。試験の結果を表4に示す。
【0192】
〔実施例2〕
表3および4に示されている原料配合および反応条件を除き、難燃剤、複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、および発泡ビーズの調製工程は、実施例1のそれと同様である。例えば、この実施例は、HMSPP602を採用し、形成されたハロゲンフリー難燃剤は、トリオクチルホスフィンオキシドおよび硝酸ニッケルにより形成された、錯体Ni(OPOt3)2(NO3)2であり、調製されたカーボンナノファイバー帯電防止剤は、ニッケル3重量%を含んでいる。
【0193】
〔実施例3〕
表3および4に示されている原料配合および反応条件を除き、難燃剤、複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、および発泡ビーズの調製工程は、実施例1のそれと同様である。例えば、この実施例は、HMSPP603を採用し、形成されたハロゲンフリー難燃剤は、トリオクチルホスフィンオキシドおよび硝酸コバルトにより形成された、錯体Ni(OPOt3)2(NO3)2である。
【0194】
〔実施例4〕
表3および4に示されている原料配合および反応条件を除き、難燃剤、複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、および発泡ビーズの調製工程は、実施例1のそれと同様である。例えば、形成されたハロゲンフリー難燃剤は、トリフェニルホスフィンオキシドおよび硝酸ニッケルにより形成された、錯体Ni(OPPh3)2(NO3)2である。
【0195】
〔実施例5〕
表3および4に示されている原料配合および反応条件を除き、難燃剤、複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、および発泡ビーズの調製工程は、実施例1のそれと同様である。例えば、この実施例は、HMSPP602を採用し、形成されたハロゲンフリー難燃剤は、トリヘキシルホスフィンオキシドおよび硝酸ニッケルにより形成された、錯体Ni(OPHx3)2(NO3)2である。
【0196】
〔実施例6〕
表3および4に示されている原料配合および反応条件を除き、難燃剤、複合難燃剤、カーボンナノファイバー帯電防止剤、難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物、および発泡ビーズの調製工程は、実施例1のそれと同様である。例えば、この実施例は、HMSPP603を採用し、形成されたハロゲンフリー難燃剤は、トリデシルホスフィンオキシドおよび硝酸ニッケルにより形成された、錯体Ni(OPDe3)2(NO3)2である。
【0197】
〔実施例7〕
この実施例では、カーボンナノファイバー帯電防止剤を調製せず、使用しないことを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0198】
〔実施例8〕
トリフェニルホスフィンオキシドの代わりにトリブチルホスフェートを使用し、錯体を調製することを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0199】
〔実施例9〕
トリフェニルホスフィンオキシドの代わりにジブチルブチルホスフェートを使用し、錯体を調製すること、および無機難燃剤成分を用いないことを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0200】
〔実施例10〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、通常のインパクト共重合ポリプロピレンEPS30Rを使用することを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0201】
〔実施例11〕
工程(c)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、帯電防止剤をカーボンブラックで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0202】
〔実施例12〕
工程(c)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、帯電防止剤をAtmer129で置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0203】
〔実施例13〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、コモノマーであるブテン-1と共に、直鎖低密度ポリエチレン7042を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0204】
〔実施例14〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、メタロセン触媒、およびコモノマーであるヘキセン-1と共に、ポリエチレンHPE1を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0205】
〔実施例15〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、チーグラー・ナッタ触媒、およびコモノマーであるヘキセン-1と共に、ポリエチレンHPE2を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0206】
〔実施例16〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、低密度ポリエチレンLD100acを用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0207】
〔実施例17〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードポリ乳酸を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0208】
〔実施例18〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードTPUを用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0209】
〔実施例19〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードPBTを用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0210】
〔実施例20〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡PETを用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0211】
〔実施例21〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードナイロン6を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0212】
〔実施例22〕
高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、ポリブチレンスクシネートベース樹脂を用いることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0213】
〔比較例1〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、帯電防止剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。調製したポリプロピレン発泡ビーズの電子顕微鏡による表面の観察を
図6に示し、調製されたポリプロピレン発泡ビーズを
図7に示す。
【0214】
〔比較例2〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、複合難燃剤をヘキサブロモシクロドデカンおよび三酸化アンチモン(重量比約2.5:1)で置き換えて試験を行うことを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0215】
〔比較例3〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、複合難燃剤を水酸化アルミニウムのみを用いることによって置き換えることを除き、試験手順は、実施例2のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0216】
〔比較例4〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、複合難燃剤をポリリン酸アンモニウムで置き換えることを除き、試験手順は、実施例3のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0217】
〔比較例5〕
難燃剤を、トリフェニルホスフィンオキシドのみを用いることによって置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0218】
〔比較例6〕
難燃剤を、リン酸コバルトのみを用いることによって置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0219】
〔比較例7〕
難燃剤を、トリメチロールホスフィンオキシドによって置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0220】
〔比較例8〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、コモノマーとしてのブテン-1と共に、直鎖低密度ポリエチレン7042を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0221】
〔比較例9〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、メタロセン触媒、およびポリエチレンHPE1に対してコモノマーであるヘキセン-1を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0222】
〔比較例10〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、チーグラー・ナッタ触媒、およびポリエチレンHPE2に対してコモノマーであるヘキセン-1を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0223】
〔比較例11〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、低密度ポリエチレンLD100acを用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0224】
〔比較例12〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードポリ乳酸を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0225】
〔比較例13〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡TPUを用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0226】
〔比較例14〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードPBTを用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0227】
〔比較例15〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードPETを用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0228】
〔比較例16〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、発泡グレードナイロン6を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0229】
〔比較例17〕
工程(a)および(b)を行わないこと、および工程(d)において難燃剤帯電防止ポリプロピレン組成物を調製するときに、試験するために複合難燃剤を赤リンで置き換えることを除き、試験手順は、実施例1のそれと同様に行う。高溶融強度ポリプロピレンベース樹脂HMSPP601の代わりに、ポリブチレンスクシネートベース樹脂を用いる。発泡材料の具体的な原料配合、反応条件、および最終的な特性といった結果を表3および4に示す。
【0230】
【0231】
【0232】
表1および表2からわかるように、本発明に係る調製されたHMSPP601、HMSPP602、およびHMSPP603ポリプロピレンは、高い溶融強度、張力強度および曲げ弾性率、ならびに高いノッチ付衝撃強度を有する。
【0233】
ベース樹脂として、本発明に係る、調製された高溶融強度インパクトポリプロピレンに、無機水酸化物、および帯電防止剤として、ニッケルまたはコバルトを含んでいるカーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブと共に、ホスフィンオキシドおよび遷移金属塩によって形成される錯体で構成される難燃剤を加え、難燃剤帯電防止組成物を調製し、続いて、本発明に規定されるケトル含浸および発泡工程によって、難燃剤帯電防止発泡ビーズを調製する。表3、表4、ならびに
図4および5から、発泡圧力および温度等の条件を調整することによって、0.07~0.21g/cm
3の密度を有している発泡ビーズを得ることができ、かつ、非超臨界二酸化炭素を発泡剤として用いる場合、発泡効果は良好であり、セル密度はより高く、セル密度は均一であり、セルサイズはより小さく、セル壁は薄く、ビーズ表面はなめらかである、ことが理解され得る。
【0234】
実施例10の結果として、高い溶解強度を有するインパクトポリプロピレンHMSPP601、HMSPP602、およびHMSPP603に比較して、一般的なインパクト共重合体ポリプロピレンEPS30Rの基本樹脂から得られる発泡ビーズは、より大きな密度、不均一なセル、なめらかでないビーズ表面を有する、ということが理解され得る。これは主に、EPS30Rのより低い溶融強度、および要求されるより高い発泡温度に起因し、結果として、より高い成形圧を招く。上述の構造的特徴により、ビーズ成形製品の耐衝撃性は、本発明によって提供される、高い溶解強度を有するインパクトポリプロピレン(例えば、HMSPP601、602、および603)を用いて得られるビーズ成形製品のこれらに劣る、という結果となり得る。加えて、従来のインパクト共重合体ポリプロピレンを用いて得られた発泡ビーズの成形圧は高く、それ故、製造エネルギー消費を向上させる。
【0235】
表4は、本発明によって提供される発泡ビーズで形成される成形体は、優れた機械特性、難燃性および帯電防止特性を有し、酸素指数は28を超え、より高い難燃性レベルを必要とする分野に使用することができ、表面抵抗率は108Ω帯電防止レベルに到達することができる。上記発泡ビーズは、成形製品を圧縮特性が優れたものにできる、優良なセル構造を有する。成形体の酸素指数および関連する難燃性試験結果等の結果は、難燃性錯体および帯電防止剤は、難燃剤の量を効果的に減らすことができるという相乗効果を果たすことができることを示し、特に、実施例1および7の結果によって示される。
【0236】
表4の結果、特に実施例11、比較例1、比較例2、比較例3および比較例4の結果から、ポリプロピレン組成物の調製のため、複合難燃剤帯電防止剤として、ニッケルまたはコバルト等を含んでいるカーボンナノファイバーと、従来の赤リン、臭素化難燃剤、水酸化アルミニウム、および他の難燃剤と、の組み合わせを用いると、このようなポリプロピレン組成物によって調製された発泡ビーズを基として形成された成形体の難燃性および帯電防止特性は、実施例1~8に記載された組成物によって得られた発泡ビーズに劣り、比較例における難燃剤および帯電防止剤の添加によって、発泡特性に負の効果を有し、セルが不均一になり、セルの壁が損傷するという結果となることがわかる。
【0237】
本発明に係る実施形態では、有機ホスフェートおよび、ニッケルまたはコバルト等の遷移金属、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウム、およびカーボンナノファイバーから形成される錯体からなる複合難燃剤から構成される難燃剤帯電防止系において、上記遷移金属と水酸化マグネシウムとの間で相乗触媒効果が起こり、リン含有難燃剤の難燃性能を向上させる。上記カーボンナノファイバーは、樹脂内部に効果的な導電ネットワークを構築することができ、それ故、長時間作用型の帯電防止ネットワークシステムを形成し、発泡ビーズ成形体の表面抵抗率を効果的に下げ、その帯電防止能力は、30日間以上の保管または使用時でもほとんど変化しない。カーボンファイバー中の残留ニッケルまたはコバルト触媒もまた、錯体と優良な相乗効果を有し、難燃効率の向上を促進する。比較例1では、従来の赤リン難燃剤および帯電防止剤により形成される系から得られる組成物を用いると、これらの両方は、如何なる相乗効果も有さないが、その代わりに、互いに作用して、難燃性および帯電防止特性を低下させ、ビーズのセル構造に悪影響を及ぼし、得られる発泡ビーズは、低いセル密度、より大きなセル直径を有し、セル壁破損の現象が生じる(
図6および7に示される)。
【0238】
さらに、ポリプロピレン樹脂において使用することに加えて、複合難燃剤および帯電防止剤を、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ならびに種々の密度およびコモノマーの分解性熱可塑性材料に適用すると、機械特性、難燃剤特性、発泡性能、および帯電防止特性において、幾分かより良好な性能をさらに提供できることが、表3および4からわかる。
【0239】
任意の最小値と任意の最大値との間隔の二つの単位のみがある場合、本発明において言及されるいかなる値も、最小値から最大値の間において1単位の値をすべて含んでいる。例えば、成分の量が50~90と記載される場合、または温度、圧力、時間等の工程変数の値が50~90である場合、それは、51~89、52~88、・・・および69~71、70~71並びに他の値であることを本明細書中、意図する。非整数値に関しては、単位として、0.1、0.01、0.001または0.0001であるとみなすことが適切であろう。これはいくつかの特定の実施例のみである。本出願書類において、同様に列挙される最小値と最大値との間のすべての可能な数値の組み合わせが記載されているようにみなされる。
【0240】
本発明は詳細に記載されているが、本発明の思想および範囲内の改良は当業者にとって明らかであり得ることは、明らかであり得る。さらに、本発明の種々の態様、種々の実施形態の種々の一部、および列挙される種々の特性は、組み合わせられてもよく、完全にまたは部分的に交換可能であってもよいことが理解されなければならない。当業者によって理解され得るように、それぞれの上述の特定の実施形態において、別の実施形態を参照するそれらの実施形態は、その他の実施形態と好適に組み合わされてもよい。さらに、前述の記載は様式の一例に過ぎず、本発明を限定することを意図しないことが、当業者によって理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【
図1】
図1は、ホスフィンオキシドおよびCo(OPPh
3)
2(NO
3)
2の赤外線スペクトルを示す。
【
図2】
図2は、Co(OPPh
3)
2(NO
3)
2の、電子顕微鏡観察による微細構造を示す。
【
図3】
図3は、カーボンナノファイバーの、電子顕微鏡観察による微細構造を示す。
【
図4】
図4は、実施例1で調製された難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による表面の観察を示す。
【
図5】
図5は、実施例1で調製された難燃剤帯電防止発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による断面の観察を示す。
【
図6】
図6は、比較例1で調製された発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による表面の観察を示す。
【
図7】
図7は、比較例1で調製された発泡ポリプロピレンビーズの、電子顕微鏡による断面の観察を示す。