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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/008 20060101AFI20220610BHJP
   G06K 13/06 20060101ALI20220610BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20220610BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G11B5/008 Z
G06K13/06
G06K7/08 040
G07D9/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017166586
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019046516
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 和寿
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-265189(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093340(WO,A1)
【文献】特開2016-189055(JP,A)
【文献】特開2016-207051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/008
G06K 13/06
G06K 7/08
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録された磁気データの読取りおよび前記カードへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドと、前記カードが挿入されるカード挿入口が形成されるカード挿入部材と、前記カード挿入部材に異物が取り付けられたことを検知するための発光素子および受光素子とを備え、
前記カード挿入口への前記カードの挿入方向側を奥側とし、前記カード挿入口からの前記カードの排出方向側を前側とし、前記カード挿入口に挿入された前記カードの厚さ方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とし、前記カード挿入口に対する前記カードの挿入排出方向を前後方向とし、前後方向と前記カードの厚さ方向とに直交する方向を前記カードの幅方向とすると、
前記磁気ヘッドは、第1方向側から前記カードに接触するように配置され、
前記カード挿入口の第1方向側の面は、前側に向かうにしたがって第1方向側へ向かうように傾斜する凸曲面状または平面状の傾斜面となっており、
前記発光素子から射出された光は、前記カード挿入部材の一部分を通過した後、奥側かつ第1方向側から前記傾斜面に入射するとともに前記傾斜面で屈折して少なくとも前側に向かって前記傾斜面から射出され、
前記受光素子には、前記発光素子から射出され前記傾斜面の前側かつ第2方向側で反射された光、および、前記発光素子から射出され前記カード挿入部材の前側で反射された光が入射し、
前記カードの幅方向から見たときに、前記傾斜面から射出される光の光軸は、前側に向かうにしたがって第2方向側に向かうように傾斜しており、前記傾斜面から射出される光の光軸の前後方向に対する傾斜角度は、前記傾斜面に入射する光の光軸の前後方向に対する傾斜角度よりも小さくなっていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記カード挿入口の奥端に繋がるとともに前記カード挿入口に挿入された前記カードが移動するカード移動路が形成され、
前記カードの幅方向から見たときに、前記傾斜面から射出される光の光軸は、前記カード挿入口の前端から前側に向かって少なくとも10cmの範囲において、前記カード移動路の第1方向側の面から前側に伸びる直線状の仮想線よりも第1方向側にあることを特徴とする請求項記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記カード挿入口の奥端に繋がるとともに前記カード挿入口に挿入された前記カードが移動するカード移動路が形成され、
前記発光素子および前記受光素子は、前記カード移動路よりも第1方向側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記傾斜面は、平面状に形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記発光素子は、赤外光を射出し、
前記カード挿入部材は、赤外光を透過させるとともに可視光を遮断することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項6】
前後方向から見たときに、前記受光素子は、前記カードの幅方向において前記磁気ヘッドと同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項7】
前記カード挿入部材には、前記発光素子から射出された光が入射する入射面が形成され、
前記発光素子から射出され前記入射面を透過した光が前記傾斜面に入射することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項8】
前記カード挿入部材には、前記発光素子から射出された光が入射する入射面と、前記傾斜面に向かって光を反射する反射面とが形成され、
前記発光素子から射出され前記入射面を透過した光が前記反射面で反射された後、前記傾斜面に入射することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された磁気データの読取りやカードへの磁気データの記録を行うカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犯罪者がカードリーダのカード挿入部に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングを阻止することが可能なカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、カード挿入部(フロントパネル)の前側にスキミング用の磁気ヘッド(以下、「スキミング用磁気ヘッド」とする)が取り付けられたことを検知するためのフォトリフレクタを備えている。このカードリーダでは、カード挿入部の前側にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられたことがフォトリフレクタによって検知されたときに所定の処理を実行することで、スキミングを阻止することが可能となっている。
【0003】
なお、特許文献1に記載のカードリーダでは、カードリーダに挿入されたカードの下面に接触するように磁気ヘッドが配置されている。また、このカードリーダでは、カード挿入口へのカードの挿入が容易となるように、カード挿入口の下面は、前側に向かうにしたがって下側へ向かうように傾斜する平面状の傾斜面となっており、カード挿入口の上面は、前側に向かうにしたがって上側へ向かうように傾斜する平面状の傾斜面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-265189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
犯罪者によるスキミングは年々、巧妙化しており、従来、スキミング用磁気ヘッドが取り付けられることのなかったカード挿入口の下面(傾斜面)に、小型のスキミング用磁気ヘッドが取り付けられるといった事態が生じている。特許文献1に記載のカードリーダでは、カード挿入部の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドをフォトリフレクタによって検知することは可能である。しかしながら、特許文献1に記載のカードリーダでは、カード挿入口の傾斜面にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられる事態は想定されておらず、カード挿入口の傾斜面に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを検知することは困難である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、カード挿入口が形成されるカード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドおよびカード挿入口の傾斜面に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを簡易な構成で検知することが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードに記録された磁気データの読取りおよびカードへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドと、カードが挿入されるカード挿入口が形成されるカード挿入部材と、カード挿入部材に異物が取り付けられたことを検知するための発光素子および受光素子とを備え、カード挿入口へのカードの挿入方向側を奥側とし、カード挿入口からのカードの排出方向側を前側とし、カード挿入口に挿入されたカードの厚さ方向の一方側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とし、カード挿入口に対するカードの挿入排出方向を前後方向とし、前後方向とカードの厚さ方向とに直交する方向をカードの幅方向とすると、磁気ヘッドは、第1方向側からカードに接触するように配置され、カード挿入口の第1方向側の面は、前側に向かうにしたがって第1方向側へ向かうように傾斜する凸曲面状または平面状の傾斜面となっており、発光素子から射出された光は、カード挿入部材の一部分を通過した後、奥側かつ第1方向側から傾斜面に入射するとともに傾斜面で屈折して少なくとも前側に向かって傾斜面から射出され、受光素子には、発光素子から射出され傾斜面の前側かつ第2方向側で反射された光、および、発光素子から射出されカード挿入部材の前側で反射された光が入射し、カードの幅方向から見たときに、傾斜面から射出される光の光軸は、前側に向かうにしたがって第2方向側に向かうように傾斜しており、傾斜面から射出される光の光軸の前後方向に対する傾斜角度は、傾斜面に入射する光の光軸の前後方向に対する傾斜角度よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0008】
本発明のカードリーダは、カード挿入部材に異物が取り付けられたことを検知するための発光素子および受光素子を備えており、発光素子から射出された光は、カード挿入口の第1方向側の面である傾斜面に奥側かつ第1方向側から入射するとともに傾斜面で屈折して少なくとも前側に向かって傾斜面から射出される。また、本発明では、受光素子に、発光素子から射出され傾斜面の前側かつ第2方向側で反射された光、および、発光素子から射出されカード挿入部材の前側で反射された光が入射する。
【0009】
そのため、本発明では、カード挿入部材の前側にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられた場合、および、カード挿入口の傾斜面にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられた場合のいずれの場合であっても、共通の発光素子と受光素子とを用いてスキミング用磁気ヘッドを検知することが可能になる。したがって、本発明では、カード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドおよびカード挿入口の傾斜面に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを簡易な構成で検知することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、前後方向とカードの厚さ方向とに直交する方向をカードの幅方向とすると、カードの幅方向から見たときに、傾斜面から射出される光の光軸は、前側に向かうにしたがって第2方向側に向かうように傾斜しており、傾斜面から射出される光の光軸の前後方向に対する傾斜角度は、傾斜面に入射する光の光軸の前後方向に対する傾斜角度よりも小さくなっている。そのため、傾斜面から射出される光の前後方向の照射範囲を広げやすくなる。したがって、カード挿入部材の前側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッドの前後方向の検知領域を広げることが可能になり、その結果、カード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを検知しやすくなる。
【0011】
本発明において、カードリーダには、カード挿入口の奥端に繋がるとともにカード挿入口に挿入されたカードが移動するカード移動路が形成され、カードの幅方向から見たときに、傾斜面から射出される光の光軸は、カード挿入口の前端から前側に向かって少なくとも10cmの範囲において、カード移動路の第1方向側の面から前側に伸びる直線状の仮想線よりも第1方向側にあることが好ましい。本願発明者の検討によれば、このように構成すると、カード挿入部材の前側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッドの想定取付範囲(スキミング用磁気ヘッドが取り付けられると想定される範囲)に対して、傾斜面から射出された光を照射することが可能になる。したがって、カード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドをより検知しやすくなる。
【0012】
本発明において、カードリーダには、カード挿入口の奥端に繋がるとともにカード挿入口に挿入されたカードが移動するカード移動路が形成され、発光素子および受光素子は、カード移動路よりも第1方向側に配置されている。また、本発明において、傾斜面は、たとえば、平面状に形成されている。
【0013】
本発明において、発光素子は、赤外光を射出し、カード挿入部材は、赤外光を透過させるとともに可視光を遮断することが好ましい。このように構成すると、カード挿入部材の外部から受光素子に可視光が入射するのを防止することが可能になるため、受光素子の誤検知を防止することが可能になる。したがって、カード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドおよびカード挿入口の傾斜面に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを精度良く検知することが可能になる。
【0014】
本発明において、前後方向から見たときに、受光素子は、カードの幅方向において磁気ヘッドと同じ位置に配置されていることが好ましい。スキミング用磁気ヘッドは、一般に、カードの幅方向において磁気ヘッドと同じ位置に配置されるため、このように構成すると、スキミング用磁気ヘッドを検知しやすくなる。
【0015】
本発明において、カード挿入部材には、発光素子から射出された光が入射する入射面が形成され、発光素子から射出され入射面を透過した光が傾斜面に入射することが好ましい。このように構成すると、カード挿入部材の形状を簡素化することが可能になる。また、本発明において、カード挿入部材には、発光素子から射出された光が入射する入射面と、傾斜面に向かって光を反射する反射面とが形成され、発光素子から射出され入射面を透過した光が反射面で反射された後、傾斜面に入射しても良い。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のカードリーダでは、カード挿入口が形成されるカード挿入部材の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドおよびカード挿入口の傾斜面に取り付けられたスキミング用磁気ヘッドを簡易な構成で検知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの概略図である。
図2図1に示すカードの裏面を示す図である。
図3図1のE-E方向からカード挿入部材、発光素子および受光素子等を示す図である。
図4図1のF部の拡大図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかるカード挿入部材の構成および発光素子の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略図である。図2は、図1に示すカード2の裏面を示す図である。図3は、図1のE-E方向からカード挿入部材8、発光素子9および受光素子10等を示す図である。図4は、図1のF部の拡大図である。
【0020】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りやカード2への磁気データの記録を行うための装置である。このカードリーダ1は、たとえば、ATM等の所定の上位装置に搭載されて使用される。
【0021】
カード2は、厚さが0.7~0.8mm程度の略長方形状の塩化ビニール製のカードである。カード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。磁気ストライプ2aは、略長方形状に形成されるカード2の長手方向に沿って形成されている。なお、カード2には、ICチップが内蔵されていても良い。また、カード2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0022】
カードリーダ1には、カード2が挿入されるとともにカード2が排出されるカード挿入口3と、カード挿入口3に挿入されたカード2が移動するカード移動路4とが形成されている。カードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りおよびカード2への磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド5と、カード移動路4においてカード2を搬送するための駆動ローラ6およびパッドローラ7とを備えている。また、カードリーダ1は、カード挿入口3が形成されるカード挿入部材(ベゼル)8と、カード挿入部材8に異物が取り付けられたことを検知するための発光素子9および受光素子10とを備えている。
【0023】
本形態では、カード挿入口3に挿入されたカード2は、図1に示すX方向で移動する。すなわち、X方向は、カード2の移動方向であるとともに、カード挿入口3に対するカード2の挿入排出方向である。以下の説明では、カード2の移動方向(X方向)を前後方向とする。また、カード挿入口3に挿入されたカード2の厚さ方向(図1等のZ方向)を上下方向とし、前後方向と上下方向とに直交するカード2の幅方向(図1等のY方向)を左右方向とする。
【0024】
また、以下の説明では、前後方向のうちの、カード挿入口3へのカード2の挿入方向側(図1等のX2方向側)を奥側とし、カード挿入口3からのカード2の排出方向側(図1等のX1方向側)を前側とし、上下方向のうちの、図1等のZ1方向側を上側とし、その反対側である図1等のZ2方向側を下側とする。本形態の下側は、カード2の厚さ方向の一方側である第1方向側となっており、上側は、第1方向側の反対側である第2方向側となっている。
【0025】
カード移動路4は、カード挿入口3の奥端に繋がっている。カード2は、カード2の裏面が下側を向いた状態で、かつ、カード2の長手方向が前後方向と一致した状態で、カード挿入口3に挿入されて、カード移動路4を移動する。磁気ヘッド5は、下側からカード移動路4に臨むように配置されている。すなわち、磁気ヘッド5は、下側からカード2に接触するように配置されている。また、磁気ヘッド5は、左右方向において、磁気ストライプ2aが通過する位置に配置されている。駆動ローラ6とパッドローラ7とは、上下方向で対向するように配置されている。駆動ローラ6には、駆動ローラ6を駆動する駆動機構(図示省略)が連結されている。パッドローラ7は、駆動ローラ6に向かって付勢されている。
【0026】
(カード挿入部材、発光素子、受光素子の構成および発光素子、受光素子の配置)
発光素子9は、赤外光を射出する。本形態の発光素子9は、赤外線LEDである。受光素子10は、赤外光を受光可能となっている。発光素子9および受光素子10は、共通の基板11に実装されている。基板11は、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板またはフレキシブルプリント基板である。本形態では、2個の発光素子9と1個の受光素子10とが基板11に実装されている。2個の発光素子9は、左右方向において受光素子10を挟むように配置されている。発光素子9、受光素子10および基板11は、カード挿入部材8の内部に配置されている。なお、図1では、基板11の図示を省略している。
【0027】
カード挿入部材8は、カードリーダ1の前端部を構成している。カード挿入部材8は、樹脂で形成されている。具体的には、カード挿入部材8は、赤外光は透過させるが可視光は遮断する黒色の樹脂材料で形成されている。カード挿入部材8の前面は、前後方向に直交する平面となっている。カード挿入部材8には、上述のように、カード挿入口3が形成されている。また、カード挿入部材8には、カード移動路4の前端部が形成されており、上述のように、カード移動路4の前端は、カード挿入口3の奥端に繋がっている。カード移動路4の前端部およびカード挿入口3は、前後方向でカード挿入部材8を貫通している。
【0028】
カード挿入部材8に形成されるカード移動路4の前端部の下面および上面は、上下方向に直交する平面となっている。カード挿入口3の奥端の、前後方向から見たときの形状は、左右方向に細長い長方形状となっている。カード挿入口3の下面は、前側に向かうにしたがって下側へ向かうように傾斜する平面状の傾斜面3aとなっている。カード挿入口3の上面は、前側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜する平面状の傾斜面3bとなっている。また、カード挿入口3の左右の両面は、前側に向かうにしたがって左右方向の外側へ向かうように傾斜する平面状の傾斜面3cとなっている。
【0029】
カード挿入部材8の、カード移動路4よりも下側の部分である下側部8aは、奥端側が開口する中空状に形成されている。下側部8aの内部には、発光素子9、受光素子10および基板11が配置されている。すなわち、発光素子9、受光素子10および基板11は、カード移動路4よりも下側に配置されている。発光素子9および受光素子10は、前後方向から見たときに、左右方向において磁気ヘッド5と略同じ位置に配置されている。また、本形態の磁気ヘッド5は、左右方向で隣り合う2個のヘッドコアを有する2チャンネル型の磁気ヘッドであり、受光素子10は、前後方向から見たときに、左右方向において磁気ヘッド5の一方のチャンネルと同じ位置に配置されている。すなわち、受光素子10は、前後方向から見たときに、左右方向において磁気ヘッド5と同じ位置に配置されている。
【0030】
発光素子9は、斜め前上側に向かって光を射出する。受光素子10の受光面は、斜め前上側を向いている。本形態では、左右方向から見たときに、発光素子9の光軸と受光素子10の光軸とが略一致している。図4に示すように、中空状に形成される下側部8aの内側面には、発光素子9から射出された光が入射する入射面8bが形成されている。入射面8bは、発光素子9から射出され入射面8bに入射する光の光軸に直交する平面となっている。また、入射面8bは、傾斜面3aの斜め奥下側に配置されている。上下方向に対する入射面8bの傾斜角度θ1は、上下方向に対する傾斜面3aの傾斜角度θ2よりも小さくなっている。
【0031】
本形態では、図4に示すように、発光素子9から射出され入射面8bを透過した光が傾斜面3aに入射する。具体的には、発光素子9から射出された光は、入射面8bに入射するとともに入射面8bを透過し、カード挿入部材8の、入射面8bと傾斜面3aとの間の部分を通過した後、奥側かつ下側から傾斜面3aに入射する。すなわち、発光素子9から射出された光は、カード挿入部材8の一部分を通過した後、奥側かつ下側から傾斜面3aに入射する。
【0032】
また、入射面8bを透過して傾斜面3aに入射した光は、傾斜面3aで屈折して前側に向かって傾斜面3aから射出される。本形態の発光素子9は、たとえば、志向性の強い赤外光を射出する。そのため、傾斜面3aから射出される光は、前側に向かって直線的に進む。なお、傾斜面3aから射出される光は、たとえば、上下の両側および左右の両側に広がっていても良い。
【0033】
図4に示すように、左右方向から見たときに、傾斜面3aから射出される光の光軸L1は、前側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜している。また、左右方向から見たときに、傾斜面3aから射出される光の光軸L1の前後方向に対する傾斜角度θ3は、傾斜面3aに入射する光の光軸L2の前後方向に対する傾斜角度θ4よりも小さくなっている。傾斜角度θ3は、たとえば、2°程度である。
【0034】
受光素子10には、発光素子9から射出され傾斜面3aの前側かつ上側で反射された光、および、発光素子9から射出されカード挿入部材8の前側で反射された光が入射する。具体的には、傾斜面3aから射出され傾斜面3aの前側かつ上側で反射された光、および、傾斜面3aから射出されカード挿入部材8の前側で反射された光が受光素子10に入射する。
【0035】
ここで、スキミング用磁気ヘッド20がカード挿入部材8の前側に取り付けられる場合、スキミング用磁気ヘッド20は、カード移動路4よりも下側であって、かつ、カード挿入口3の前端から前側に向かって所定の距離Dの範囲に配置されることが想定される(図4参照)。本願発明者の検討によると、スキミング用磁気ヘッド20は、カード移動路4よりも下側であって、かつ、カード挿入口3の前端から前側に向かって10(cm)の範囲に配置されることが想定される。そのため、本形態では、傾斜面3aから射出される光の光軸L1は、左右方向から見たときに、カード挿入口3の前端から前側に向かって少なくとも10(cm)の範囲において、カード移動路4の下面から前側に伸びる直線状の仮想線VLよりも下側にある。
【0036】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、発光素子9から射出された光は、カード挿入口3の傾斜面3aに奥側かつ下側から入射するとともに傾斜面3aで屈折して前側に向かって傾斜面3aから射出される。また、本形態では、発光素子9から射出され傾斜面3aの前側かつ上側で反射された光、および、発光素子9から射出されカード挿入部材8の前側で反射された光が受光素子10に入射する。
【0037】
そのため、本形態では、カード挿入部材8の前側にスキミング用磁気ヘッド20が取り付けられた場合、および、カード挿入口3の傾斜面3aにスキミング用磁気ヘッド20が取り付けられた場合のいずれの場合においても、共通の発光素子9と受光素子10とを用いてスキミング用磁気ヘッド20を検知することが可能になる。したがって、本形態では、カード挿入部材8の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20およびカード挿入口3の傾斜面3aに取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20を簡易な構成で検知することが可能になる。
【0038】
本形態では、左右方向から見たときに、傾斜面3aから射出される光の光軸L1は、前側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜しており、光軸L1の前後方向に対する傾斜角度θ3は、傾斜面3aに入射する光の光軸L2の前後方向に対する傾斜角度θ4よりも小さくなっている。そのため、本形態では、傾斜面3aから射出される光の前後方向の照射範囲を広げやすくなる。したがって、本形態では、カード挿入部材8の前側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッド20の前後方向の検知領域を広げることが可能になり、その結果、カード挿入部材8の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20を検知しやすくなる。
【0039】
特に本形態では、左右方向から見たときに、傾斜面3aから射出される光の光軸L1は、カード挿入口3の前端から前側に向かって少なくとも10cmの範囲において、仮想線VLよりも下側にあるため、カード挿入部材8の前側に取り付けられるスキミング用磁気ヘッド20の想定取付範囲に対して、傾斜面3aから射出された光を照射することが可能になる。したがって、本形態では、カード挿入部材8の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20をより検知しやすくなる。
【0040】
本形態では、カード挿入部材8は、赤外光は透過させるが可視光は遮断する。そのため、本形態では、カード挿入部材8の外部から受光素子10に可視光が入射するのを防止することが可能になり、その結果、受光素子10の誤検知を防止することが可能になる。したがって、本形態では、カード挿入部材8の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20およびカード挿入口3の傾斜面3aに取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20を精度良く検知することが可能になる。
【0041】
また、スキミング用磁気ヘッド20は、一般に、左右方向において磁気ヘッド5と同じ位置に配置されるが、本形態では、前後方向から見たときに、受光素子10が左右方向において磁気ヘッド5と同じ位置に配置されているため、カード挿入部材8の前側に取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20およびカード挿入口3の傾斜面3aに取り付けられたスキミング用磁気ヘッド20を検知しやすくなる。
【0042】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0043】
上述した形態において、図5に示すように、中空状に形成される下側部8aの内側面に、発光素子9から射出された光が入射する入射面8cと、傾斜面3aに向かって光を反射する反射面8dとが形成されていても良い。この場合には、発光素子9から射出され入射面8cを透過した光が反射面8dで反射された後、傾斜面3aに入射する。なお、図5に示す変形例と比較して、上述した形態の方がカード挿入部材8の形状を簡素化することが可能になる。
【0044】
図5に示す変形例では、たとえば、発光素子9は真上に向かって光を射出し、受光素子10の受光面は真上を向いている。また、入射面8cは、たとえば、上下方向に直交する平面であり、発光素子9から射出され入射面8cに入射する光の光軸に直交している。また、反射面8dの角度は、反射面8dに入射する光が全反射する角度に設定されている。図5では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0045】
上述した形態において、カード2の裏面に形成される磁気ストライプ2aに代えて、または、磁気ストライプ2aに加えて、カード2のおもて面に磁気ストライプが形成されていても良い。この場合には、カードリーダ1は、磁気ヘッド5に代えて、または、磁気ヘッド5に加えて、上側からカード2に接触する磁気ヘッドを備えている。また、この場合には、カード挿入部材8の、カード移動路4よりも上側の部分である上側部は中空状に形成されており、上側部の内部に、発光素子9、受光素子10および基板11が配置されている。
【0046】
また、この場合には、たとえば、中空状に形成される上側部の内側面に、発光素子9から射出された光が入射する入射面が形成されており、発光素子9から射出されこの入射面を透過した光は、奥側かつ上側から傾斜面3bに入射する。また、傾斜面3bに入射した光は、傾斜面3bで屈折して前側に向かって傾斜面3bから射出される。左右方向から見たときに、傾斜面3bから射出される光の光軸は、前側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜している。受光素子10には、発光素子9から射出され傾斜面3bの前側かつ下側で反射された光、および、発光素子9から射出されカード挿入部材8の前側で反射された光が入射する。
【0047】
なお、磁気ストライプ2aに代えて、カード2のおもて面に磁気ストライプが形成されている場合には、下側部8aの内部に、発光素子9、受光素子10および基板11は配置されていない。また、磁気ストライプ2aに代えて、カード2のおもて面に磁気ストライプが形成されている場合には、上側(Z1方向側)は第1方向側となり、下側(Z2方向側)は第2方向側となる。
【0048】
上述した形態において、傾斜面3aから射出される光の光軸L1は、前後方向と平行であっても良いし、前側に向かうにしたがって下側へ向かうように傾斜していても良い。また、上述した形態において、カード挿入口3の前端から前側に向かって10(cm)の範囲で、傾斜面3aから射出される光の光軸L1が仮想線VLより上側に配置されることがあっても良い。さらに、上述した形態において、傾斜面3aは、凸曲面状に形成されていても良い。また、上述した形態において、発光素子9、受光素子10および基板11は、カード挿入部材8の外部に配置されていても良い。具体的には、発光素子9、受光素子10および基板11は、カード挿入部材8の奥端より奥側に配置されていても良い。
【0049】
上述した形態において、基板11に実装される発光素子9は1個であっても良い。ただし、2個の発光素子9が基板11に実装されている場合には、発光素子9の光の照射範囲を広げることが可能になるため、スキミング用磁気ヘッド20の検知領域を広げることが可能になる。また、上述した形態では、カードリーダ1は、駆動ローラ6およびパッドローラ7を有するカード搬送式のカードリーダであるが、カードリーダ1は、ユーザが手動で操作を行う手動式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 カードリーダ
2 カード
3 カード挿入口
3a 傾斜面
4 カード移動路
5 磁気ヘッド
8 カード挿入部材
8b、8c 入射面
8d 反射面
9 発光素子
10 受光素子
L1 傾斜面から射出される光の光軸
L2 傾斜面に入射する光の光軸
VL 仮想線
X 前後方向(カードの挿入排出方向)
X1 前側(カードの排出方向側)
X2 奥側(カードの挿入方向側)
Y カードの幅方向
Z カードの厚さ方向
Z1 第2方向側
Z2 第1方向側
θ3 傾斜面から射出される光の光軸の傾斜角度
θ4 傾斜面に入射する光の光軸の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5