(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】排気ガス処理装置用保持材、その製造方法及び排気ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 33/00 20060101AFI20220610BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220610BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B01J33/00 Z ZAB
F01N3/28 311N
B01D53/94 300
(21)【出願番号】P 2017210815
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 健二
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227129(JP,A)
【文献】特開2002-066331(JP,A)
【文献】特開2011-231774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
F01N 3/28
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項14】
直径が3~10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部の表面に、直径が1~15nmの第2無機繊維
と、第1無機微粒子とを含むコロイド溶液を塗布する工程と、
前記本体部の表面に塗布された前記コロイド溶液を乾燥
し、前記本体部に表面層を形成
する工程と、
を含む、排気ガス処理装置用保持材の製造方法。
【請求項15】
直径が3~10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部の表面に、直径が1~1
5nmの第2無機繊維と、前記第2無機繊維のアスペクト比よりも小さいアスペクト比を
有する第3無機繊維とを含むコロイド溶液を塗布する工程と、
前記本体部の表面に塗布された前記コロイド溶液を乾燥し、前記本体部に表面層を形成
する工程と、
を含む、排気ガス処理装置用保持材の製造方法。
【請求項16】
直径が3~10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部の表面に、直径が1~1
5nmの第2無機繊維を含むコロイド溶液を塗布する工程と、
前記本体部の表面に塗布された前記コロイド溶液を乾燥し、前記本体部に表面層を形成
する工程と、
を含み、
前記本体部の内部に有機バインダが分散しており、前記有機バインダがアクリル系ラテ
ックスである、排気ガス処理装置用保持材の製造方法。
【請求項17】
スプレーコート、ロールコート又はカーテンコートによって、前記本体部の表面に前記コロイド溶液を塗布する、請求項14
~16のいずれか一項に記載の排気ガス処理装置用保持材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚染コントロール装置のハウジング中に汚染コントロール要素を取り付けるための保持材、その製造方法及びその保持材等を備えた汚染コントロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンからの排気ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等を含む。ディーゼルエンジンから排出される排気ガスは、更にスス等のパティキュレートマターも含んでおり、これらの燃焼生成物を除去するための手段として、セラミック触媒コンバータやディーゼルパーティキュレートフィルター(DPF)を用いた排気ガス浄化システムが知られている。また、ガソリンパーティキュレートフィルター(GPF)の搭載も検討されている。これらのデバイスは一般には汚染コントロール装置と呼ばれる。
【0003】
一般的に、汚染コントロール装置(例えば、セラミック触媒コンバータ)は、汚染コントロール要素(例えば、ハニカム状のセラミック製触媒担体)と、これらの汚染コントロール要素(例えば、触媒担体)を収容する金属製ケーシングと、汚染コントロール要素(例えば、触媒担体)の外周面とケーシングの内面との隙間に充填される保持材とを備える。保持材は、汚染コントロール要素(例えば、触媒担体)をケーシング内に保持し、衝撃、振動等による機械的なショックが汚染コントロール要素(例えば、触媒担体)に不用意に加わるのを防止する。このようにして、汚染コントロール要素(例えば、触媒担体)のケーシング内での移動やケーシングに抗した破壊を十分防止し、汚染コントロール要素の動作寿命期間において、望ましい効果を提供できる。このタイプの保持材は、一般的にはマウンティング材とも呼ばれている。これらの保持材は通常、汚染コントロール要素に巻きつける単一もしく複数の層のマットの形態をなしている。
【0004】
保持材は、優れた断熱性及び耐熱性を達成する観点から、通常、無機繊維等の無機材料を主な構成材料とするものである。このような保持材(マウンティング材)の例は、例えば、特許文献1,2及び3に記載されている。しかしながら、ケーシング内に保持材とともに汚染コントロール要素を組み付ける際、無機繊維又はその破損片、粉末など(以下、これらを「ファイバ片」ともいう。)が周囲に飛散し、周囲環境及び取付け作業者に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、従来、保持材がマット形態である場合は、有機バインダをマットに含浸させたり塗布してファイバ片の飛散を防止することが検討されている。例えば、特許文献3には繊維材料のマットにガラス転移温度(Tg)が異なる少なくとも2種類の有機バインダを含浸してなる保持材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭57-61686号公報
【文献】特開2002-66331号公報
【文献】特開2006-223920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
繊維材料からなるマットに有機バインダを含浸させることはファイバ片の飛散抑制に有効である。しかし、年々厳しくなる排ガス規制に伴い、その使用量が制限される傾向にある。他方、保持材が汚染コントロール要素とともにケーシング内に収容された後においては、保持材が接する面(ケーシングの内面及び/又は汚染コントロール要素の外面)に対して十分に高い摩擦係数を有し、これにより、例えば、ケーシング内において汚染コントロール要素が所定の位置から移動することを防止する役割を果たすことが保持材に求められる。
【0007】
本開示は、ケーシング内に汚染コントロール要素を組み付ける際に無機繊維の飛散を抑制できるとともに、高い摩擦係数を有する保持材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は保持材に関する。この保持材は、直径が約3~約10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部と、本体部の少なくとも一方の表面上に設けられており、直径が約1~約15nmの第2無機繊維を含む表面層とを備える。
【0009】
本開示の他の側面は汚染コントロール装置に関する。この装置は、ケーシングと、ケーシング内に設置された汚染コントロール要素と、ケーシングと汚染コントロール要素との間に配置された上記保持材とを備える。
【0010】
本開示の更に他の側面は保持材の製造方法に関する。この製造方法は、直径が3~10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部の表面に、直径が約1~約15nmの第2無機繊維を含むコロイド溶液を塗布する工程と、本体部の表面に塗布されたコロイド溶液を乾燥する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ケーシング内に汚染コントロール要素を組み付ける際に無機繊維の飛散を十分に抑制できるとともに、十分に高い摩擦係数を有する保持材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る保持材を示す斜視図である。
【
図3】
図3は本開示に係る汚染コントロール装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は保持材の静止摩擦係数を測定するための装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る保持材は、直径が約3~約10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部と、本体部の少なくとも一方の表面上に設けられており、直径が約1~約15nmの第2無機繊維を含む表面層とを備えることを主たる特徴とする。この保持材によれば、微小繊維である第2無機繊維を含む表面層を本体部の表面に設けたことで、ケーシング内に汚染コントロール要素を組み付ける際にファイバ片の飛散を抑制できる。また、本実施形態の保持材によれば、保持材が汚染コントロール要素とともにケーシング内に収容された後においては、ケーシングの内面及び/又は汚染コントロール要素の外面に上記表面層が接した状態であることで高い静止摩擦係数とを維持でき、結果として、ケーシング内において汚染コントロール要素が所定の位置から移動することを防止できる。
【0014】
本実施形態に係る保持材は、直径が約3~約10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部の表面に、直径が約1~約15nmの第2無機繊維を含むコロイド溶液を塗布する工程と、本体部の表面に塗布されたコロイド溶液を乾燥する工程とを経て製造される。
ここで、第1無機繊維及び第2無機繊維の「直径」とは繊維断面の平均直径をいうものとし、「長さ」とは、繊維長手方向の平均長さ(平均繊維長)をいうものとする。また、第1無機繊維及び第2無機繊維のアスペクト比とは、繊維の長さを直径で割った比をいうものとする。本明細書において、無機繊維はアスペクト比が5以上の無機材料をいう。
【0015】
汚染コントロール要素(例えば、触媒担体及びフィルター要素)は、保持材により汚染コントロール装置(例えば、触媒コンバータ)の中に保持される。このとき、汚染防止要素の保持力は面圧と静止摩擦係数の積に比例する。
【0016】
そのため、保持材の圧縮量を増やすことにより保持材の面圧を増やすこと、又は保持材の静止摩擦係数を増加することによって、汚染コントロール要素の保持力を高めることができる。本実施形態の保持材によれば、直径が約1~約15nmの第2無機繊維を含む表面層がケーシングの内面及び/又は汚染コントロール要素の外面と当接する。この表面層は、保持材の本体部を構成する第1無機繊維又は他の無機繊維の表面より高い摩擦係数を示す表面形状を保持材に付与する。更に、こうした表面形状の存在のために、保持材の表面と汚染コントロール要素の表面又はケーシングの表面との間の摩擦係数は増加されることができる。この保持材とケーシングとの間の摩擦係数は、ケーシングが金属プレート、例えばステンレススチール(SS)からできている場合、特に増加する。他方、この保持材と汚染コントロール要素との間の摩擦係数は、汚染コントロール要素がセラミックからできている場合、特に増加する。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の保持材の一例を示す斜視図である。同図に示す保持材10は、円柱又は楕円柱の外形を有する汚染コントロール要素30を巻回してケーシング20内に保持するためのものである(
図3参照)。保持材10は、汚染コントロール要素30の外周の長さに応じた長さを有する。保持材10は、例えば、一端に凸部10aを有し、他端に凹部10bを有しており、汚染コントロール要素30に保持材10を巻きつけたときに、互いに凸部10aと凹部10bが嵌合する形状を有する。なお、嵌合部において有効に排気ガスの漏洩を防止できればよく、L字型等の他の形態をとることもでき、嵌合の形状等は特に限定されない。
【0019】
保持材10は、
図2に示すように、厚さ約5~約15mm程度のシート状の本体部1と、本体部1の両面上に設けられた厚さ約0.1~約2mm程度の表面層5とを備える。本体部1は直径(平均直径)が約3~約10μmの第1無機繊維と、必要に応じて配合される他の成分とによって構成されている。表面層5は、直径(平均直径)が約1~約15nmの第2無機繊維と、必要に応じて配合される他の成分とによって構成されている。なお、保持材10はその一方の面のみに表面層5を有したものであってもよい。例えば、ケーシングの20がステンレススチールからなる場合であって、その内面が高温条件下において酸化されることによってザラザラになり、これにより、保持材10に対して十分に高い摩擦係数が確保できる場合、本体部1は汚染コントロール要素30と接する側のみに表面層5を有していればよい。
【0020】
上述のとおり、表面層5は、微小繊維である第2無機繊維と、必要に応じて配合される他の成分とによって構成されている。第2無機繊維の直径は、約1nm~約15nmであってよく、例えば、約1nm以上、約2nm以上、もしくは約3nm以上であり、約15nm以下、約8nm以下、もしくは約5nm以下であってもよい。直径が約1nm以上の第2無機繊維はこれよりも細い無機繊維と比較して入手しやすいという利点がある。これに加え、汚染コントロール装置の製造時に、ファイバ片の飛散を抑制できる傾向にある。他方、直径が約15nm以下の第2無機繊維はこれよりも太い無機繊維と比較して汚染コントロール装置の製造時に、ファイバ片の発生自体を抑制できる傾向にある。第2無機繊維の平均長さは、例えば、約500~約5000nmであり、約1000~約4000nm又は約1400~約3000nmであってもよい。
【0021】
なお、第2無機繊維の直径(平均直径)及び平均長さ(平均繊維長)は、顕微鏡写真像(TEM像、SEM像等)からランダムに抽出した繊維の太さ及び長さを、例えば、50以上の測定し、その平均値を算出することで求めることができる。後述の第1無機繊維及び第3無機繊維についても同様である。無機繊維のアスペクト比は平均長さの値を直径の値で除すことによって算出される。
【0022】
第2無機繊維のアスペクト比は、例えば、約60~約2000であり、約100~約1500又は約300~約800であってもよい。アスペクト比が約60以上の第2無機繊維はこれよりもアスペクト比が小さい無機繊維と比較して汚染コントロール装置の製造時に、ファイバ片の飛散を抑制できる傾向にある。他方、アスペクト比が約2000以下の第2無機繊維はこれよりもアスペクト比が大きい無機繊維と比較して入手しやすいという利点がある。
【0023】
第2無機繊維としては、アルミナ又はその水和物等の材質からなるファイバが挙げられる。例えば、第2無機繊維がアルミナ水和物からなる場合、アルミニウムアルコキシドを原料として準備し、これをゾルゲル法に供することで、繊維状のアルミナ水和物(組成式:Al2O3・nH2O(n=1~1.5))を合成することができる。このアルミナ水和物の結晶系はベーマイト又は擬ベーマイトである。第2無機繊維として、市販されているものを採用してもよい。その具体例として、川研ファインケミカル株式会社製のアルミゾルF-1000及びアルミゾルF-3000(いずれも商品名)が挙げられる。アルミゾルF-1000は平均直径約4nmであり且つ平均長さ約1000nm(平均アスペクト比:約250)のアルミナ微小繊維であり、アルミゾルF-3000は平均直径約4nmであり且つ平均長さ約3000nm(平均アスペクト比:約750)のアルミナ微小繊維である。
【0024】
表面層5は、第2無機繊維の他に、第1無機微粒子を更に含んでいてもよく、あるいは、第2無機繊維のアスペクト比よりも小さいアスペクト比を有する第3無機繊維を更に含んでいてもよい。表面層5に第1無機微粒子又は第3無機繊維を配合することで、表面層5の摩擦係数を調整し得る。第1無機微粒子の形状に制限はなく、例えば、略球状、楕円形、不定形などが挙げられる。第1無機微粒子の平均粒径は、焼結性の観点から、好ましくは約1μm以下であり、より好ましくは500nm以下である。他方、取り扱い性及び入手の容易性の観点から、第1無機微粒子の平均粒径の下限値は、好ましくは約1nmであり、より好ましくは約4nmである。なお、第1無機微粒子の平均粒径は、例えば代表的には、BET法を用いて測定することができる。第1無機微粒子としては、例えば、日産化学工業株式会社製のAS520を使用できる。AS520は平均粒径約10~約20nmである。
【0025】
第3無機繊維のアスペクト比は、例えば、約5~約30であり、約10~約20であってもよい。アスペクト比が約5以上の第3無機繊維はこれよりもアスペクト比が小さい無機繊維と比較して汚染コントロール装置の製造時において第3無機繊維自体の飛散を抑制できる傾向にある。他方、アスペクト比が約30以下の第3無機繊維はこれよりもアスペクト比が大きい無機繊維と比較して摩擦係数の向上に寄与しやすい。第3無機繊維の直径は、例えば、約1~約15nmであり、約5~約10nmであってもよい。
【0026】
第3無機繊維としては、アルミナ又はその水和物等の材質からなるファイバが挙げられる。この具体例として、日産化学工業株式会社製のAS100及びAS200(いずれも商品名)が挙げられる。これらの平均直径は、約10nmであり且つ平均長さ約100nm(平均アスペクト比約10)のアルミナファイバである。
【0027】
表面層5が第2無機繊維及び第1無機微粒子の両方を含有する場合、第2無機繊維と第1無機微粒子の合計質量(W2
+Wp1)に対する第1無機微粒子の質量(Wp1)の比率(Wp1/(W2
+Wp1
))は、例えば、約0.1~約0.9であり、約0.2~約0.8又は約0.25~約0.75であってもよい。この比率が約0.1以上であることで、表面層5の摩擦係数をより向上しやすく、他方、約0.9以下であることで、汚染コントロール装置の製造時において第1無機微粒子自体の飛散を抑制できる。
【0028】
表面層5が第2無機繊維及び第3無機繊維の両方を含有する場合、第2無機繊維と第3無機繊維の合計質量(W2
+W3)に対する第3無機繊維の質量(W3)の比率(W3/(W2
+W3
))は、例えば、約0.1~約0.9であり、約0.2~約0.8又は約0.25~約0.75であってもよい。この比率が約0.1以上であることで、表面層5の摩擦係数をより向上しやすく、他方、約0.9以下であることで、汚染コントロール装置の製造時において第3無機繊維自体の飛散を抑制できる。
【0029】
本体部1は、第1無機繊維を含む。第1無機繊維の具体例として、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維及びホウ素繊維が挙げられるが、必要であれば他の無機繊維が使用されてもよい。第1無機繊維として、上記から選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、複合繊維としてもよい。これらの中で特に好ましいのは、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びアルミナ-シリカ繊維のようなセラミック繊維である。セラミック繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、複合繊維としてもよい。また、他の無機材料が、添加剤として、上記のセラミック繊維又は他の無機繊維と共に使用してもよい。好適な添加剤としては、例えば、ジルコニア、マグネシア、カルシア、酸化クロム、酸化イットリウム、及び酸化ランタンが挙げられる。添加剤は、通常、粉末又は微粒子の形態で使用し、1種を単独で又は2種以上の混合物として使用してもよい。
【0030】
第1無機繊維の直径(平均直径)は約3~約10μmの範囲である。第1無機繊維の直径が約3μm以上であることで、十分な強度を有する本体部1が得られやすく、他方、約10μm以下であることで、本体部1を成形しやすい傾向にある。
【0031】
第1無機繊維の平均長さは、例えば、約0.5~約200mmである。無機繊維の平均長さが約0.5mm以上であることで、ファイバ片の飛散を抑制しやすく、他方、約200mm以下であることで、取り扱い性が優れるという傾向にあり、保持材10の製造プロセスをスムースに進行することが容易になる。
【0032】
第1無機繊維のアスペクト比は、例えば、約1000~約70000であり、約5000~約50000又は約10000~約30000であってもよい。アスペクト比が約1000以上の第1無機繊維はこれよりもアスペクト比が小さい無機繊維と比較して汚染コントロール装置の製造時に、ファイバ片の飛散を抑制できる傾向にある。他方、アスペクト比が約70000以下の第1無機繊維はこれよりもアスペクト比が大きい無機繊維と比較して入手しやすいという利点がある。
【0033】
本体部1として、主としてアルミナ繊維の積層シートからなるアルミナ質繊維シートを使用してもよい。このようなアルミナ質繊維シートにおいて、アルミナ繊維の平均長さは、好ましくは約20~約200mmの範囲であり、繊維の直径(平均直径)は、好ましくは約1~約40μmの範囲であり、アスペクト比は、好ましくは約5000~約50000の範囲である。また、アルミナ質繊維は、Al2O3/SiO2質量比(Al2O3/SiO2)=約70/約30~約74/約26のムライト組成であることが好ましい。
【0034】
上記のアルミナ質繊維のシートは、例えば、オキシ塩化アルミニウム等のアルミナ源、シリカゾル等のシリカ源、ポリビニルアルコール等の有機バインダ及び水の混合物から成る紡糸原液を使用して製造することができる。すなわち、紡糸したアルミナ繊維前駆体を積層してシート化し、通常、約1000~約1300℃の高温で焼成することによって上記シートを製造できる。このシートは、その後ニードルパンチを施した成形物とすることが好ましい。このようなシートであれば、シートを構成する無機繊維材料が絡み合うことによって、シート単独での形状保持性を確保できる。
【0035】
本体部1の内部には、必要に応じて、有機バインダ及び/又は第2無機微粒子が分散した状態で含有されていてもよい。有機バインダ及び第2無機微粒子は、本体部1の内部においてほぼ均一に分散していることが好ましい。
【0036】
有機バインダは、本体部1を構成する無機繊維に付着してファイバ片の飛散を抑制する。保持材10の全質量を基準とする有機バインダの量は、例えば約3質量%以下であり、約0.5~約2質量%の範囲であってもよい。有機バインダの適当な例としては、天然もしくは合成の高分子材料、例えばブタジエン-スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料あるいはポリビニルアルコール等の有機材料を挙げることができる。有機バインダとして、好ましくはアクリル系ラテックスを使用することができる。
【0037】
アクリル系ラテックスは多数の種類があるが、保持材10の構成及び汚染コントロール要素30に求められている特性などを考慮して、好適なガラス転移温度(Tg)を有するものを選択することが好ましい。アクリル系ラテックスとして、通常、Tgが約-70~約50℃の範囲のものが知られているが、本実施形態においては、Tgが約15℃以下のものが好ましく、約1℃以下、あるいは約-10℃以下のものも使用できる。Tgが約15℃以下のアクリル系ラテックスを使用すれば、ケーシング20内に汚染コントロール要素30を組み付け作業を行う一般的な作業温度(25℃)で、マット内の無機繊維に対し、十分高い濡れ性を発揮するため、ファイバ片の飛散を効果的に抑制できる。
【0038】
本実施形態で使用する有機バインダは、保持材10の特性などに悪影響がでない限り、いろいろなアクリル系ラテックスを使用することができ、所望ならば、商業的に入手しうるアクリル系ラテックスをそのままの形で、あるいは、保持材が使用される環境にあわせて任意に変性した後で使用してもよい。適当なアクリル系ラテックスは、アクリル系樹脂を水性媒体あるいはその他の媒体に分散させて得たコロイド状分散液である。
【0039】
第2無機微粒子は、有機バインダとともに本体部1内に含浸されてもよい。この場合、第2無機微粒子は、本体部1内に分散した状態で存在していることが好ましい。より具体的には、第2無機微粒子は、保持材10に対して熱が加わる前、有機バインダとともに無機繊維の表面や交絡点に付着して存在する。その後、有機バインダが燃焼するような高温条件に保持材10が曝されると、第2無機微粒子の焼結が進行し、無機繊維の表面に付着していた第2無機微粒子は無機繊維に固着し、焼結体となり、無機繊維の表面の粗度を高めて無機繊維同士を滑りにくくする役割を果たしうるだろうと考えられる。他方、無機繊維の交絡点に付着していた第2無機微粒子は、焼結体となり、当該交絡点を拘束し、無機繊維の立体的形状を維持する役割を果たすだろうと考えられる。このような第2無機微粒子の機能により保持材10が厚さ方向に圧縮されにくくなり、十分に高い面圧が維持可能となると考えられる。
【0040】
第2無機微粒子は、無機繊維に固着可能なものであればよいが、好適な具体例として、金属酸化物、窒化物、炭化物及びそれらの複合材料からなる微粒子により形成される粒子が挙げられる。これらの微粒子は一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本体部1がアルミナ繊維を含有するものを採用した場合、アルミナ繊維との結合性の点から、第2無機微粒子はシリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子及びジルコニア微粒子から選択される微粒子により形成されることが好ましい。これらの微粒子はコロイド溶液の状態で入手することができる。本体部1に含まれる第2無機微粒子は、表面層5に含まれる第1無機微粒子と同一であっても異なるものであってもよい。
【0041】
なお、本実施形態において、第2無機微粒子の大きさや形状は、無機繊維に付着し、更に、保持材が汚染コントロール装置内で使用されることで、有機バインダが燃焼した後にもシート内に残留できるものであればよく、限定はないが、第2無機微粒子の平均粒径は、焼結性の観点から、好ましくは約1μm以下であり、より好ましくは約500nm以下である。他方、取り扱い性及び入手の容易性の観点から、第2無機微粒子の平均粒径の下限値は、好ましくは約1nmであり、より好ましくは約4nmである。なお、平均粒径は、例えば代表的には、BET法を用いて測定することができる。
【0042】
本実施形態の保持材10は、第2無機繊維を含む表面層5を備えるため、ケーシング20内に汚染コントロール要素30を組み付ける際にファイバ片の飛散を十分に抑制できる。具体的には、保持材10によれば、ファイバ片飛散率を約0.09質量%以下とすることができ、この値は約0.07質量%以下であることがより好ましい。ここでいう「ファイバ片飛散率」は実施例の欄に記載の「ファイバ片飛散率の測定」による測定値を意味する。
【0043】
保持材10は、第2無機繊維を含む表面層5を備えるため、高い静止摩擦係数を有する。保持材10のケーシング20(例えば、ステンレススチール製)の内面に対する静止摩擦係数は、例えば、約0.30以上であり、約0.35~約1.0であることがより好ましい。保持材10の汚染コントロール要素30(例えば、日本ガイシ株式会社製触媒担体)の外面に対する静止摩擦係数は、例えば、約0.60以上であることがより好ましい。
【0044】
次に、保持材10の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、平均太さが約3~約10μmの第1無機繊維からなるシート状の本体部1の表面に、アスペクト比が約60~約2000の第2無機繊維を含むコロイド溶液を塗布する工程と、コロイド溶液が表面に塗布された本体部1に熱を加える工程とを含む。上記製造方法によれば、本体部1の少なくとも一方の表面上に表面層5が形成された保持材10を得ることができる。
【0045】
表面層5の形成に用いるコロイド溶液は、水溶液中に第2無機繊維が分散したものである。第2無機繊維の安定剤として塩酸、硝酸又は酢酸を添加することで水溶液中に第2無機繊維が高度に分散した状態を維持できる。
【0046】
本体部1の表面に対するコロイド溶液の塗布は、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、フィルム転写及びカーテンコーティングなどによって実施すればよい。単位面積当たりの塗布量(固形分質量)は、例えば、約0.5~約20g/m2であり、約0.8~約16g/m2であってもよい。塗布後の乾燥工程は、水分を揮発させることによって表面層5を形成させるためのものである。例えば、コロイド溶液を塗布後の本体部1を、約80~約250℃に設定した温風乾燥機の中で約10~約180分間乾燥させればよい。これにより、本体部1の表面に表面層5が形成される。
【0047】
なお、本体部1として、有機バインダ及び第2無機微粒子を含む無機繊維からなるシートを使用する場合、表面層5の形成に先立ち、以下の工程を実施すればよい。
(a)第1無機繊維からなるシートに、第2無機微粒子及び有機バインダを含有するコロイド溶液を含浸させる工程。
(b)コロイド溶液が含浸されたシートを乾燥することによって本体部1を得る工程。
【0048】
工程(a)は、シートの内部において、第2無機微粒子の量が、本体部1の全質量を基準として約1~約10質量%となるように、コロイド溶液の組成を調整することが好ましい。第2無機微粒子の量が約1質量%以上であることで十分な面圧が得られやすく、約10質量%以下であることで、保持材10を汚染コントロール要素に巻回させるのに十分な柔軟性が得られやすい。
【0049】
工程(b)としては、工程(a)により得られたシートを乾燥できるものであればよい。例えば、工程(a)により得られたシートを、約80~約250℃に設定した温風乾燥機の中で約10~約180分間乾燥させてもよい。
【0050】
保持材10は、
図3に示すとおり、汚染コントロール装置50内において汚染コントロール要素30を保持するのに使用される。汚染コントロール要素30の具体例としては、エンジンからの排ガス浄化用の触媒担体やフィルター要素などが挙げられる。汚染コントロール装置50の具体例としては、触媒コンバータ及び排気浄化装置(例えば、ディーゼルパーティキュレートフィルター装置)が挙げられる。
【0051】
図3に示す汚染コントロール装置50は、ケーシング20と、ケーシング20内に設置された汚染コントロール要素30と、ケーシング20の内面と汚染コントロール要素30の外面との間に配置された保持材10とを備える。汚染コントロール装置50は、汚染コントロール要素30に排ガスを導入するガス流入口21と、汚染コントロール要素30を通過した排気ガスを排出するガス流出口22とを更に備える。
【0052】
ケーシング20の内面と、汚染コントロール要素30の外面との隙間の幅は、気密性の確保及び保持材10の使用量の低減の観点から、好ましくは約1.5~約15mmである。保持材10は、ケーシング20と汚染コントロール要素30との間で適切な嵩密度となるように、適度に圧縮されている状態であるのが好ましい。汚染コントロール要素30の保持に保持材10を使用することで、その製造過程において無機繊維材料の飛散を十分に抑制できるとともに、ケーシング20の内面と汚染コントロール要素30との間で十分に高い面圧及び静止摩擦係数を維持できる。また、従来と比較して組み付け時の嵩密度を低く設定することができ、比較的高価な無機繊維材料の使用量を削減できる。保持材10を圧縮して組み付ける手法には、クラムシェル法、スタッフィング法、ターニキット法などがある。
【0053】
汚染コントロール装置50は、高い静止摩擦係数を有する保持材10を備えることにより、ケーシング20内に汚染コントロール要素30を強固に保持することができる。
【0054】
例えば、汚染コントロール装置50として触媒コンバータを構成した場合、触媒コンバータは、好ましくは、モノリス状に成形された触媒要素を備えた触媒コンバータ、すなわち、モノリス型触媒コンバータである。この触媒コンバータは、ハニカム状の断面の小さな通路を有する触媒要素からなるので、従来のペレット型触媒コンバータに比較して小型であり、排気ガスとの接触面積を十分に確保しながら、排気抵抗を小さく抑えることができ、よって、より効率よく排気ガスの処理を行うことができる。当該触媒コンバータは、各種の内燃機関と組み合わせて、その排気ガスの処理に有利に使用することができる。特に、乗用車、バス、トラック等の自動車の排気システムに当該構成の触媒コンバータを搭載した時に、その優れた作用効果を十分に発揮させることができる。
【0055】
触媒担体に担持されるべき触媒は、通常、金属(例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムなど)及び金属酸化物(例えば、五酸化バナジウム、二酸化チタンなど)であり、好ましくは、コーティングの形で用いられる。なお、触媒担体の代わりにフィルター要素を適用することにより、ディーゼルパーティキュレートフィルターとして汚染コントロール装置を構築することもできる。
【実施例】
【0056】
本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
【0057】
(実施例1)
<本体部の作製>
攪拌されている10Lの水に、以下の薬品を1分間隔で投入し、有機バインダ及び第2無機微粒子を含むコロイド溶液を調製した。
(1)硫酸アルミニウム(固形分濃度40%水溶液):6g
(2)有機バインダ(アクリル系ラテックスLX874(商品名)、日本ゼオン株式会社製):2.6g
(3)コロイダルシリカ(スノーテックスO(商品名)、日産化学工業株式会社製):10g
(4)液体アルミン酸ナトリウム(固形分40%):3.5g
【0058】
ニードルパンチ処理を施したアルミナファイバーブランケット(三菱ケミカル株式会社製、マフテックMLS-2ブランケット(商品名))を15cm×40cmに裁断した。これを金属メッシュの上に置き、上から上記コロイド溶液を注いだ後、更に金属メッシュ上で15秒間吸引脱水した。このようにしてブランケットに上記コロイド溶液を含浸させた後、温度170℃に設定した温風乾燥機で45分間にわたって乾燥処理をした。これにより、保持材の本体部を作製した。
【0059】
<表面層の形成>
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000(川研ファインケミカル株式会社製、固形分濃度:5質量%)を準備した。この第2無機繊維の平均直径は4nm、平均長さは3000nmであり、アスペクト比(長さ/直径)は、750であった。このアルミナゾル40質量部に対して水72質量部を加えた後、1分間攪拌することにより、表面層形成用のコロイド溶液を調製した。スプレーガンPS-9513(商品名、アネスト岩田株式会社製)を用いて、このコロイド溶液を本体部の表面に塗布した。塗布量は単位面積当たりの固形分の質量が16g/m2となるように調整した。これを温度170℃に設定した温風乾燥機で45分間にわたって乾燥処理することによって、本体部の一方の面上に表面層を形成した。本体部の他方の面上にも同様にして表面層(固形分の質量:16g/m2と)を形成することにより、本例に係る保持材を得た。なお、得られた保持材の加熱減量(LOI)は1.1質量%であった。この量を保持材に含まれる有機バインダの含有量とした。
【0060】
(実施例2)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、8g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0061】
(実施例3)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、0.8g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0062】
(実施例4)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、0.4g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0063】
(実施例5)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-1000(川研ファインケミカル株式会社製、固形分濃度:5質量%)を使用したことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。この第2無機繊維の平均直径は4nm、平均長さは1400nmであり、アスペクト比(長さ/直径)は、350であった。
【0064】
(実施例6)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-1000(川研ファインケミカル株式会社製、繊維サイズ4nm×1400nm)を使用したことの他は、実施例2と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0065】
(実施例7)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-1000(川研ファインケミカル株式会社製、繊維サイズ4nm×1400nm)を使用したことの他は、実施例3と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した本体部(表面層なし)を本例に係る保持材とした。
【0067】
(比較例2)
アルミゾルF-3000を使用する代わりに、粒状微粒子であるアルミナゾルAS520(日産化学工業株式会社製、固形分濃度:20質量%)を使用して表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。なお、アルミゾルF-3000は固形分濃度が5質量%であるのに対し、アルミナゾルAS520は固形分濃度が20質量%であるため、この固形分濃度が5質量%となるように希釈して用いた。アルミナゾルAS520の平均粒径は、10~20nmであった。
【0068】
(比較例3)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、8g/m2としたことの他は、比較例2と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0069】
(比較例4)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、0.8g/m2としたことの他は、比較例2と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0070】
(比較例5)
本体部の両面にそれぞれ塗布する表面層形成用のコロイド溶液の量(固形分)を16g/m2とする代わりに、0.4g/m2としたことの他は、比較例2と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0071】
(実施例8)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-3000(75体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(25体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液を使用し、当該コロイド溶液の塗布量(固形分)を8g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0072】
(実施例9)
アルミゾルF-3000(75体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(25体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液の塗布量(固形分)を8g/m2とする代わりに0.8g/m2したことの他は、実施例8と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0073】
(実施例10)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-3000(50体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(50体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液を使用し、当該コロイド溶液の塗布量(固形分)を16g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0074】
(実施例11)
アルミゾルF-3000(50体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(50体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液の塗布量(固形分)を16g/m2とする代わりに8g/m2したことの他は、実施例8と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0075】
(実施例12)
アルミゾルF-3000(50体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(50体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液の塗布量(固形分)を16g/m2とする代わりに0.8g/m2したことの他は、実施例8と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0076】
(実施例13)
第2無機繊維を含むコロイド溶液として、アルミゾルF-3000を使用する代わりに、アルミゾルF-1000(75体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(25体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液を使用し、当該コロイド溶液の塗布量(固形分)を18g/m2としたことの他は、実施例1と同様にして本例に係る保持材を得た。なお、アルミゾルF-1000は固形分濃度が5質量%であるのに対し、アルミナゾルAS520は固形分濃度が20質量%であるため、この固形分濃度が5質量%となるように希釈して用いた。
【0077】
(実施例14)
アルミゾルF-1000(75体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(25体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液の塗布量(固形分)を16g/m2とする代わりに8g/m2したことの他は、実施例13と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0078】
(実施例15)
アルミゾルF-1000(75体積部)と、固形分濃度5質量%に希釈したアルミナゾルAS520(25体積部、第1無機微粒子)とを混合したコロイド溶液の塗布量(固形分)を16g/m2とする代わりに0.8g/m2したことの他は、実施例13と同様にして本例に係る保持材を得た。
【0079】
上記のようにして得た実施例及び比較例に係る保持材に対して以下の測定を行った。表1に結果を示す。
【0080】
<ファイバ片飛散率の測定>
日本工業規格(JIS K-6830)に記載の衝撃試験機を用意し、同規格に記載される指針に従って衝撃試験を実施した。
(1)保持材(サイズ:15cm×40cm)から、試験片(サイズ:10cm×10cm)を打ち抜き型にて作製し、その質量を測定した。
(2)試験片をJIS K-6830に記載の衝撃試験機にセットし、60°の角度から衝撃を加えた。
(3)試験後の試験片を衝撃試験機から取り外し、その質量を再び測定した。
(4)試験の前後における試験片の質量変化からファイバ片の飛散量(質量%)を計算した。
【0081】
<保持材の静止摩擦係数の測定(ステンレススチール側)>
ステンレススチール(SS)プレートと保持材との間の静止摩擦係数は、オートグラフAGS100D(登録商標、株式会社島津製作所製)を用いて、下記の手順により測定した。すなわち、実施例及び比較例に係る各保持材を50mm角となるように切り出し、試験片を調製した。
図4に示されるように、静止摩擦係数を測定する表面12の反対側の試験片11の表面を、両面接着テープ62を介してSSプレート66に接着することで、試験片11を固定した。
【0082】
約1mのSSコード63の一方の端部をSSプレート66に固定し、もう一方の端部を滑車ブロック65を介してロードセル64に固定した。この際、滑車ブロック65をロードセル64の真下に配置し、ロードセル64が持ち上げられたときに、試験片11に固定したSSプレート66が地面に対して平行に移動するようにした。
【0083】
次に、地面に平行且つ滑車ブロック65の中心軸に対し、SSコード63が垂直になる位置に、試験片11をプレート61(SSプレート)上に設置した。プレート61として、ケーシングの代わりとなるSSプレートを使用し、具体的には、プレート表面に2B処理(冷間圧延処理)を施し、表面が0.2~0.5μmの表面粗さRaを有するように機械加工したものを使用した。ロードセル64の高さは、試験片11が滑車ブロック65から最大距離の位置となるように調整した。
【0084】
SSプレート66の上に、12kgの荷重67を設置した。その後、ロードセル64を持ち上げ、SSコード63を矢印方向に100mm/分の牽引速度で牽引した。プレート61の表面から試験片11が滑り始める直前に測定された荷重を、静止摩擦力(N)として記録した。静止摩擦係数は、SSプレート66を含む試験片11に適用された荷重(N)で、静止摩擦力を除すことで算出した。
【0085】
<保持材の静止摩擦係数の測定(触媒担体側)>
触媒コンバータで使用される触媒担体と保持材との間の静止摩擦係数は、オートグラフAGS100D(登録商標、株式会社島津製作所製)を用いて、下記の手順により測定した。すなわち、実施例及び比較例に係る各保持材を50mm×25mmとなるように切り出し、試験片を調製した。
図4に示すように、静止摩擦係数を測定する表面12の反対側の試験片11の表面を、両面接着テープ62を介してSSプレート66に接着することで、試験片11を固定した。
【0086】
次に、地面に平行且つ滑車ブロック65の中心軸に対し、SSコード63が垂直になる位置に、試験片11をプレート61(モノリス体)上に設置した。プレート61として、触媒担体の代わりとなるモノリス体を使用し、具体的には、日本ガイシ株式会社のモノリス体を使用した。ロードセル64の高さは、試験片11が滑車ブロック65から最大距離の位置となるように調整した。
【0087】
SSプレート66の上に、5kgの荷重67を設置した。その後、ロードセル64を持ち上げ、SSコード63を矢印方向に100mm/分の牽引速度で牽引した。プレート61の表面から試験片11が滑り始める直前に測定された荷重を、静止摩擦力(N)として記録した。静止摩擦係数は、SSプレート66を含む試験片11に適用された荷重(N)で、静止摩擦力を除すことで算出した。
【0088】
【符号の説明】
【0089】
1…本体部、5…表面層、10…保持材、10a…凸部、10b…凹部、11…試験片、12…静止摩擦係数を測定する表面、20…ケーシング、21…ガス流入口、22…ガス流出口、30…汚染コントロール要素、50…汚染コントロール装置、61…プレート(SSプレート又はモノリス体)、62…両面接着テープ、63…SSコード、64…ロードセル、65…滑車ブロック、66…SSプレート、67…荷重