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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ギヤモータ及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
H02K5/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017227398
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019097364
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守谷 幸次
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-150520(JP,A)
【文献】特開2010-014020(JP,A)
【文献】特開2003-182676(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019420(WO,A1)
【文献】特開2007-085559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 7/116
H02K 11/215
F16H 1/32
F16H 57/023
F16C 19/06
F16C 19/28
F16C 19/54
F16C 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機とモータとを有するギヤモータであって、
前記減速機は、内歯歯車と、前記内歯歯車に内接噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を揺動させる揺動部を有する入力軸と、前記外歯歯車と前記揺動部との間に配置される揺動軸受けと、前記入力軸を支持する入力軸受けと、を有し、
前記入力軸は、モータ側に突出して前記モータのロータが設けられる突出部を有し、かつ、減速機側からモータ側に向かって、前記入力軸受けが配置される軸受け配置部、及び前記ロータが配置されるロータ配置部を、この順に有し、
前記ロータ配置部の外径が前記軸受け配置部の外径以下であり、
前記ロータ配置部にはロータ磁石が直接固定され、
さらに、前記外歯歯車よりもモータ側に配置されて前記外歯歯車の軸方向の移動を規制する第1規制部材を備え、
前記第1規制部材の外径は前記内歯歯車の歯部の内径よりも小さい、
ギヤモータ。
【請求項2】
前記外歯歯車よりも反モータ側に配置されて前記外歯歯車の軸方向の移動を規制する第2規制部材を備え、
前記第2規制部材の外径は前記第1規制部材の外径よりも大きい、
請求項記載のギヤモータ。
【請求項3】
前記第2規制部材の外径は前記内歯歯車の歯部の内径よりも大きい、
請求項記載のギヤモータ。
【請求項4】
前記減速機は、前記内歯歯車として第1内歯歯車と第2内歯歯車とがモータ側から反モータ側に向かってこの順に配置された撓み噛合い式減速機であり、
前記減速機は、更に、前記入力軸の反モータ側を支持する反モータ側入力軸受けと、
前記反モータ側入力軸受けを支持する軸受けハウジングと、
前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車との間に配置されて前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車とを相対的に回転可能とする主軸受けと、を有し、
前記軸受けハウジングは、前記第2内歯歯車に外嵌されかつ前記主軸受けの軸方向の移動を規制する外嵌部を有する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のギヤモータ。
【請求項5】
第1内歯歯車と、第2内歯歯車と、前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車との間に配置されて前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車とを相対的に回転可能とする主軸受けと、前記第1内歯歯車及び前記第2内歯歯車に内接噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を揺動させる揺動部及びモータ側に突出してロータが設けられる突出部を有する入力軸と、前記揺動部と前記外歯歯車との間に配置される揺動軸受けと、前記入力軸の前記揺動軸受けよりもモータ側を支持する入力軸受けと、前記入力軸の前記揺動軸受けよりも反モータ側を支持する反モータ側入力軸受けと、前記反モータ側入力軸受けを支持する軸受けハウジングと、を備えるギヤモータの組立方法であって、
前記主軸受けを介して前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車とが組み付けられた内歯歯車アッセンブリを組み立てる工程と、
前記入力軸に前記揺動軸受け、前記外歯歯車、前記入力軸受け及び前記反モータ側入力軸受けが組み付けられた入力軸アッセンブリを組み立てる工程と、
前記入力軸アッセンブリに対してモータ側から前記内歯歯車アッセンブリを外嵌する工程と、
前記入力軸アッセンブリに対して反モータ側から前記軸受けハウジングを外嵌する工程と、
を含むギヤモータの組立方法。
【請求項6】
前記入力軸アッセンブリ、前記内歯歯車アッセンブリ及び前記軸受けハウジングを互いに組み付けた後に、前記入力軸の前記突出部にロータ磁石を固定する工程を更に含む、
請求項記載のギヤモータの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機とモータとを有するギヤモータ及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2には減速機とモータとを有するギヤモータが記載されている。このギヤモータは、減速機の入力軸(102)がモータ側に突出し、突出した部分にモータのロータが設けられている。このロータは、入力軸の突出した部分の外周に固定された介在部材と、介在部材の外周に固定されたロータ磁石とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-150520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のギヤモータでは、減速機の入力軸の突出した部分に介在部材を介してロータ磁石が固定されており、介在部材の寸法公差とロータ磁石の寸法公差とが合わさってロータ磁石の位置精度が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、減速機とモータとを有するギヤモータであって、高い位置精度でロータ磁石を設けることのできるギヤモータ及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るギヤモータは、
減速機とモータとを有するギヤモータであって、
前記減速機は、内歯歯車と、前記内歯歯車に内接噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を揺動させる揺動部を有する入力軸と、前記外歯歯車と前記揺動部との間に配置される揺動軸受けと、前記入力軸を支持する入力軸受けと、を有し、
前記入力軸は、モータ側に突出して前記モータのロータが設けられる突出部を有し、かつ、減速機側からモータ側に向かって、前記入力軸受けが配置される軸受け配置部、及び前記ロータが配置されるロータ配置部を、この順に有し、
前記ロータ配置部の外径が前記軸受け配置部の外径以下であり、
前記ロータ配置部にはロータ磁石が直接固定され、
さらに、前記外歯歯車よりもモータ側に配置されて前記外歯歯車の軸方向の移動を規制する第1規制部材を備え、
前記第1規制部材の外径は前記内歯歯車の歯部の内径よりも小さい構成とした。
【0007】
本発明に係るギヤモータの組立方法は、
第1内歯歯車と、第2内歯歯車と、前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車との間に配置されて前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車とを相対的に回転可能とする主軸受けと、前記第1内歯歯車及び前記第2内歯歯車に内接噛合する外歯歯車と、前記外歯歯車を揺動させる揺動部及びモータ側に突出してロータが設けられる突出部を有する入力軸と、前記揺動部と前記外歯歯車との間に配置される揺動軸受けと、前記入力軸の前記揺動軸受けよりもモータ側を支持する入力軸受けと、前記入力軸の前記揺動軸受けよりも反モータ側を支持する反モータ側入力軸受けと、前記反モータ側入力軸受けを支持する軸受けハウジングと、を備えるギヤモータの組立方法であって、
前記主軸受けを介して前記第1内歯歯車と前記第2内歯歯車とが組み付けられた内歯歯車アッセンブリを組み立てる工程と、
前記入力軸に前記揺動軸受け、前記外歯歯車、前記入力軸受け及び前記反モータ側入力軸受けが組み付けられた入力軸アッセンブリを組み立てる工程と、
前記入力軸アッセンブリに対してモータ側から前記内歯歯車アッセンブリを外嵌する工程と、
前記入力軸アッセンブリに対して反モータ側から前記軸受けハウジングを外嵌する工程と、
を含む方法とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、減速機とモータとを有するギヤモータであって、高い位置精度でロータ磁石を設けることのできるギヤモータ及びその組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るギヤモータを示す断面図である。
図2】モータのステータコア及びロータを示す正面図である。
図3】入力軸を示す断面図である。
図4図4(A)はハウジングを示す断面図、図4(B)は第2内歯歯車を示す断面図、図4(C)は第1内歯歯車を示す断面図である。
図5】入力軸アッセンブリの組み付け工程を示す説明図である。
図6】内歯歯車アッセンブリの組み付け工程を示す説明図である。
図7】複数のアッセンブリから減速機を組み立てる工程を示す説明図である。
図8】減速機とモータ部品とからギヤモータを組み立てる工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るギヤモータを示す断面図である。図2は、図1のモータのステータコア及びロータを示す正面図である。図3は、入力軸を示す断面図である。図4(A)はハウジングを示す断面図、図4(B)は第2内歯歯車を示す断面図、図4(C)は第1内歯歯車を示す断面図である。本明細書では、入力軸41の中心軸O1に沿った方向を軸方向、中心軸O1から直交する方向を径方向、中心軸O1を中心に回転する方向を周方向と定義する。
【0012】
本実施形態のギヤモータ1は、モータ10と減速機40とが連結されてユニット化されたギヤモータである。
【0013】
<モータ>
モータ10は、ロータ軸となる入力軸41の突出部41bと、ロータ磁石(永久磁石)12bと、コイル13と、ステータコア14とを有する。入力軸41の突出部41bとロータ磁石12bとがロータ12を構成し、コイル13とステータコア14とがステータ15を構成する。さらに、モータ10は、ステータ15の外周側を覆う筒状のモータフレーム17と、ステータ15及びモータフレーム17の軸方向の一方(反負荷側:減速機40の反対側)を覆うモータカバー19とを備える。また、ステータ15及びモータフレーム17の軸方向のもう一方(負荷側:減速機40側)は、減速機40の第1内歯歯車44により仕切られている。第1内歯歯車44のうちモータ10の一方を覆っている部分をカバー部44b(図6を参照)と記す。
【0014】
ステータコア14は、磁性体から構成され、図2に示すように、複数のコアセグメント14aと、複数のスロット14bとを有する。複数のコアセグメント14aは、内周面がロータ12に対向するように、周方向に並んで配置される。複数のスロット14bは、複数のコアセグメント14aの間に設けられる。
【0015】
コイル13は、アルミ線から構成され、複数のスロット14bを通ってコアセグメント14aに巻回される。コイル13は、ステータコア14の軸方向の端よりも一部が外側にはみ出す。このスロット14bから軸方向にはみ出した部分がコイルエンド13aである。
【0016】
ロータ12を構成する入力軸41の突出部41bは、金属製であり、中空構造を有する。
【0017】
モータフレーム17は、樹脂製であり、ステータコア14の外周部に接触してステータコア14を固定する。
【0018】
ステータ15の負荷側を覆うカバー部44b(図6)は、樹脂製である。なお、カバー部44bの素材は、樹脂に限定されるものではなく、非導電性の素材であればよい。例えば、樹脂と別素材の複合材やベーク材(紙ベーク材や布ベーク材)でもよい。カバー部44bは、外歯歯車42及び起振体軸受け43とステータ15との間を遮って、例えば減速機40からの潤滑油の流出を防止する。
【0019】
カバー部44bは、環状の形態を有し、中央に入力軸41を通す貫通孔を有する。カバー部44bの内周部には入力軸受け51が嵌入され、カバー部44bは入力軸受け51を介して入力軸41を回転可能に支持する。カバー部44bは、特に制限されるものでないが、例えばボルト21を介してモータカバー19と連結され、カバー部44bとモータカバー19との間にモータフレーム17が挟まれて固定される。
【0020】
カバー部44bは、コイルエンド13aからの最短の沿面距離が、6.3mmより短い。従来の一般的なモータでは、ステータの軸方向の一方を覆うカバーが導電性の素材で構成されており、この沿面距離を6.3mm以上にして絶縁性を確保していたため、動力伝達装置の体積の増大、軸方向の長大化、ロータ軸及び入力軸が長くなることに起因して装置全体の重量が増大するという課題があった。しかし、本実施形態では、カバー部44bに絶縁性を持たせて(非導電性の素材で構成して)沿面距離を6.3mmより短くすることで、上記の課題が軽減されている。なお、カバー部44bとコイルエンド13aとの沿面距離は、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは1mm以下としてもよい。
【0021】
より具体的には、本実施形態のカバー部44bは、ステータ15のコイルエンド13aの一部に接触するように配置される。カバー部44bは絶縁性を有するため、このような接触があっても、コイル13とカバー部44bとの十分な絶縁性、並びに、モータ10と減速機40との十分な絶縁性を確保することができる。カバー部44bとコイルエンド13aとが接触する面積は、好ましくは、負荷側のコイルエンド13aの表面積の50%以下であり、より好ましくは、この表面積の10%以下である。仮に、カバー部44bがコイルエンド13aの全体に接触する場合、コイルエンド13aの熱膨張率とカバー部44bの熱膨張率との違いから、カバー部44b及びコイルエンド13aの耐久性に課題が生じる。しかし、上記の接触面積とすることで、熱膨張率の違いがあっても耐久性の低下を抑えることができる。
【0022】
ステータ15の反負荷側を覆うモータカバー19は、樹脂製である。なお、モータカバー19の素材も、樹脂に限定されるものではなく、非導電性の素材であればよい。例えば、樹脂と別素材の複合材やベーク材(紙ベーク材や布ベーク材)でもよい。モータカバー19は、図1の断面形状が周方向に連なった環状の構成を有する。モータカバー19は、軸方向に見て、入力軸41のホロー部と連通するように、中央部が開口している。モータカバー19は、軸方向の反負荷側にあるコイルエンド13aの内周側を覆う内壁部19aと、ステータ15の軸方向の反負荷側を覆う背面壁部19bとを有する。内壁部19aは、入力軸41のホロー部に中空部が連通する筒状の形態を有する。内壁部19aの負荷側の端面は、入力軸41に固定されたロータ磁石12bに軸方向から対向する。内壁部19aの負荷側の端面における、周方向の一部には回転位置検出用のセンサ(磁気センサ等)22が設けられている。センサ22は、例えばロータ磁石12bの磁束を検知することでロータ12の回転位置を検出する。センサ22は、内壁部19aの端面に沿って延びる環状のブラケット23を介して固定される。内壁部19aは、本発明に係る筒状部の一例に相当する。
【0023】
モータカバー19は、コイルエンド13aからの最短の沿面距離が6.3mmより短くなるように、コイルエンド13aに近づけて配置されてもよい。モータカバー19は、一部がコイルエンド13aに接触するように配置されてもよい。
【0024】
<減速機>
図3は、入力軸を示す断面図である。図4(A)はハウジングを示す断面図、図4(B)は第2内歯歯車を示す断面図、図4(C)は第1内歯歯車を示す断面図である。
【0025】
減速機40は、撓み噛合い式減速機であり、入力軸41、起振体41a、外歯歯車42、起振体軸受け43、第1内歯歯車44、第2内歯歯車45、第1規制部材46、第2規制部材47、軸受けハウジング48、入力軸受け51、反モータ側入力軸受け52、主軸受け54及び外周ハウジング53を備える。このうち、起振体41aが本発明に係る揺動部の一例に相当し、起振体軸受け43が本発明に係る揺動軸受けの一例に相当する。
【0026】
入力軸41は、起振体41a及びロータ軸となる突出部41bとが一体的に単一の部材として形成されている。入力軸41は、ホロー構造を有する金属製の軸である。入力軸41は、起振体41aの部分において中心軸O1に直交する断面の外形が非円形(例えば中心軸O1を中心とする楕円)であり、その他の部位は中心軸O1に直交する断面の外形が中心軸O1を中心とする円形である。なお、起振体41a、突出部41b又はこれら両方が、別体に形成され、互いに連結されて入力軸41が構成されていてもよい。
【0027】
入力軸41には、図3にも示すように、モータ10側から減速機40側へ向かって、ロータ磁石12bが固定されるロータ配置部w1と、軸方向に延設された延設部w2と、第1軸受け配置部w3と、起振体41aと、第2軸受け配置部w4とが、この順に設けられている。第1軸受け配置部w3は、本発明に係る軸受け配置部の一例に相当する。
【0028】
第1軸受け配置部w3と第2軸受け配置部w4には、それぞれ入力軸受け51と反モータ側入力軸受け52とが外嵌される。入力軸41には、第1軸受け配置部w3と第2軸受け配置部w4に隣接する部位に、起振体41a側に進むと段状に径が大きくなる段部s1、s2が設けられている。入力軸受け51と反モータ側入力軸受け52とは、段部s1、s2に当接されて、軸方向の位置を決めることができる。
【0029】
起振体41aは、入力軸41が回転することで、起振体軸受け43を介して外歯歯車42を撓み揺動させる。起振体41aの外径は、外径の最大値及び最小値ともに、第1軸受け配置部w3の外径及び第2軸受け配置部w4の外径よりも大きい。第1軸受け配置部w3と起振体41aとの間、並びに、第2軸受け配置部w4と起振体41aとの間は、起振体41aに近づくほど径が大きくなるように傾斜が設けられている。この傾斜は入力軸41の内周面及び外周面の両方に設けられている。第1軸受け配置部w3及び第2軸受け配置部w4の肉厚は、起振体41aの肉厚よりも大きい。
【0030】
延設部w2は、第1軸受け配置部w3とロータ配置部w1とを所定長離間させるように設けられている。延設部w2の外径は、第1軸受け配置部w3の外径と同一である。あるいは、延設部w2の外径は、第1軸受け配置部w3の外径よりも小さく、かつ、ロータ配置部w1の外径以上であってもよい。また、第1軸受け配置部w3、延設部w2及びロータ配置部w1は、全て同一の外径を有していてもよい。
【0031】
ロータ配置部w1は、入力軸41のモータ側(モータ10の側)の端部に設けられる。ロータ配置部w1には、ロータ磁石12bが直接固定される。直接の固定方法としては、例えば接着材によりロータ磁石12bを貼り付ける方法が適用できる。ロータ配置部w1と延設部w2との間には、延設部w2の方へ進むと段状に径が大きくなる段部s3が設けられ、段部s3にロータ磁石12bを当接させて、ロータ磁石12bの軸方向の位置を決めることができる。
【0032】
外歯歯車42は、例えば金属製であり、撓み可能な金属又は樹脂から構成され、外周側に外歯が設けられている。外歯歯車42は、第1内歯歯車44及び第2内歯歯車45に内接噛合する。外歯歯車42は、図1に示すように、コロ軸受け43を挟んで起振体41aの外周面に沿うように組み付けられている。
【0033】
起振体軸受け43は、例えば軸方向に2列にコロが並んだコロ軸受けであり、起振体41aと外歯歯車42との間に設けられ、外歯歯車42に対して起振体41aを相対的に回転可能とする。起振体軸受け43は、専用の外輪と内輪とを持たない。起振体41aの外周面が内輪側転走面を構成し、外歯歯車42の内周面が外輪側転走面を構成する。起振体41aの外周面の軸方向の幅寸と、2列に並んだコロの軸方向の一端から他端までの幅寸とは、ほぼ同一である。起振体軸受け43は、一端側と他端側とにそれぞれ配置された第1規制部材46及び第2規制部材47により軸方向の移動が規制される。
【0034】
第1内歯歯車44は、図4(C)の断面形状(ネジ孔h4、h5を除く)が周方向に連なった環状の構成を有し、ネジ孔h4、h5が周方向の複数箇所に設けられている。第1内歯歯車44は、内歯が設けられる歯部44aと、ステータ15の負荷側を覆うカバー部44bと、外周ハウジング53及びモータカバー19と連結される周端部44cと、入力軸受け51が内嵌される軸受け配置部44dと、第1規制部材46が嵌合される規制部材配置部44eと、延設部44fとを有する。第1内歯歯車44は、これらの部分が一体的に単一の部材により形成されている。第1内歯歯車44は、剛性を有する樹脂から構成される。
【0035】
周端部44cには、モータフレーム17の一端に外嵌する突出部44gと、外周ハウジング53の一端部に内嵌する突出部44hとが設けられている。突出部44hは、主軸受け54に当接して、主軸受け54を軸方向に位置決めする(図1を参照)。
【0036】
第1内歯歯車44には、軸受け配置部44dに隣接して入力軸受け51のモータ側の端面に張り出す張出部44iが、更に設けられている。軸受け配置部44dに内嵌される入力軸受け51は、張出部44iに当接されて軸方向の位置を決めることができる。
【0037】
規制部材配置部44eは、第1規制部材46が嵌合する段状に凹んだ形態を有し、第1規制部材46は規制部材配置部44eに内嵌されて径方向の移動が規制される。第1内歯歯車44には、歯部44aと規制部材配置部44eとの間にスリットsl1が、更に設けられ、スリットsl1により歯部44aの歯と第1規制部材46とが干渉しないように離間される。
【0038】
軸受け配置部44dと規制部材配置部44eとは、歯部44aよりも内周寄り、かつ、径方向に見て歯部44aと重ならない位置に設けられている。周端部44cは、歯部44aよりも外周寄り、かつ、径方向に見て歯部44aと重なる位置に設けられている。
【0039】
延設部44fは、歯部44aと周端部44cとを所定長離間させる要素であり、軸方向の幅寸が、歯部44aの幅寸よりも小さく形成されている。薄く形成されることで、第2内歯歯車45との間に間隙を設け、ステータ15の収容空間を大きくとることができ、加えて、第1内歯歯車44の軽量化を図ることができる。
【0040】
第2内歯歯車45は、図4(B)の断面形状(ネジ孔h1を除く)が周方向に連なった環状の構成を有し、周方向の複数の箇所に複数のネジ孔h1が設けられている。第2内歯歯車45は、内歯が設けられる歯部45aと、主軸受け54が配置される軸受け配置部45bと、軸方向の反モータ側(モータ10とは反対側)へ膨出される膨出部45cとを有する。第2内歯歯車45は、剛性を有する樹脂から構成される。
【0041】
歯部45aには、第1内歯歯車44の歯部44aと軸方向の幅寸が略同一の内歯が設けられている。
【0042】
軸受け配置部45bは、第2内歯歯車45よりも外周寄りかつ径方向に見て歯部45aと重なる位置に設けられている。第2内歯歯車45には、軸受け配置部45bのモータ側に隣接して、径方向に張り出した張出部45dが、更に設けられている。この構成により、反モータ側から主軸受け54を軸受け配置部45bに外嵌させ、かつ、主軸受け54が張出部45dに当接するまで押し込むことで、主軸受け54の軸方向の位置を決めることができる。
【0043】
膨出部45cは、軸受けハウジング48の軸方向のモータ側に設けられた凹溝48aに嵌入するように軸方向に膨出した形態を有する(図1を参照)。膨出部45cには、反モータ側の端面に開口するネジ孔h1が設けられており、膨出部45cは軸受けハウジング48にネジn1を用いて固定されている。
【0044】
第1内歯歯車44の歯部44aと、第2内歯歯車45の歯部45aとは、歯数が異なる。例えば、第1内歯歯車44は外歯歯車42よりも歯数が2つ多く、第2内歯歯車45は外歯歯車と歯数が等しい。
【0045】
主軸受け54は、図1に示すように、例えば玉軸受けであり、第1内歯歯車44と第2内歯歯車45とを相対的に回転可能に支持する。
【0046】
入力軸受け51及び反モータ側入力軸受け52は、図1に示すように、例えば玉軸受けであり、起振体41aの軸方向の両側で入力軸41を回転可能に支持する。
【0047】
外周ハウジング53は、図1の断面形状(ネジ孔h2、h3を除く)が周方向に連なった環状の形態を有し、ネジ孔h2、h3が周方向の複数箇所に設けられ、ギヤモータ1のうち主に主軸受け54の外周側を覆う。外周ハウジング53は、金属又は樹脂により構成される。外周ハウジング53のネジ孔h3と第1内歯歯車のネジ孔h5とは、支持部材をネジにより固定するために使用することができる。
【0048】
外周ハウジング53は、第1内歯歯車44の周端部44c(図4)と軸方向に隣接し、ネジn2を介して第1内歯歯車44と連結される。外周ハウジング53は、主軸受け54が内嵌される軸受け配置部53a(図6)を有する。軸受け配置部53aよりも反モータ側には、内方に張り出した張出部53b(図6)が設けられ、張出部53bと第1内歯歯車44の突出部44gとが主軸受け54を軸方向の両側から当接して主軸受け54が固定される。
【0049】
軸受けハウジング48は、図4(A)の断面形状(ネジ孔h6と嵌合孔h7を除く)が周方向に連なった環状の形態を有し、ネジ孔h6と嵌合孔h7とが周方向の複数箇所に設けられている。軸受けハウジング48は、軸方向に見て中央に入力軸41の一部が配置される開口を有し、減速機40の反モータ側を覆う。軸受けハウジング48は、金属又は樹脂から構成される。軸受けハウジング48は、ネジ孔h6を介してネジn1が締められて第2内歯歯車45に固定される(図1を参照)。嵌合孔h7には、例えば出力側の部材を嵌合することができる。
【0050】
軸受けハウジング48の開口には、図4(A)に示すように、反モータ側入力軸受け52を内嵌する軸受け配置部48bが設けられている。軸受け配置部48bよりも反モータ側には内周側に張り出した張出部48cが設けられている。反モータ側入力軸受け52は張出部48cに当接して軸方向の位置を決めることができる。
【0051】
軸受けハウジング48は、更に、第2内歯歯車45の膨出部45c(図4(B))の外周側まで張り出す外嵌部48dを有する。外嵌部48dは、主軸受け54の軸方向の端部まで延設され、主軸受け54に当接して主軸受け54の軸方向の位置を規制することができる。
【0052】
第1規制部材46は、図1の断面形状が周方向に連なった環状の形態を有する、外歯歯車42及び起振体軸受け43のモータ側に配置される。第1規制部材46は、中心軸O1に直交する平面状の接触面を有し、接触面により外歯歯車42及び起振体軸受け43の軸方向の移動を規制する。第1規制部材46の接触面は、外歯歯車42及び起振体軸受け43(のリテーナ)と軸方向に対向する。第1規制部材46の外径は、第1内歯歯車44の歯部44aより反モータ側の構成要素の内径、及び第2内歯歯車45の内径よりも小さい。第1規制部材46の内周縁部は、入力軸41の起振体41aと第1軸受け配置部w3との間の傾斜部によって確保された空間に位置することで、余裕を持った大きさの接触面を確保することができる。
【0053】
第2規制部材47は、図1の断面形状が周方向に連なった環状の形態を有し、外歯歯車42及び起振体軸受け43の反モータ側に配置される。第2規制部材47は、中心軸O1に直交する平面状の接触面を有し、接触面により外歯歯車42及び起振体軸受け43の軸方向の移動を規制する。第2規制部材47の外径は、第1規制部材46の外径よりも大きく、また、第1内歯歯車44及び第2内歯歯車45の歯部44a、45aの内径よりも大きい。第2規制部材47の接触面は、外歯歯車42、起振体軸受け43(のリテーナ)及び第2内歯歯車45の歯部45aと軸方向に対向する。第2規制部材47の内周縁部は、入力軸41の起振体41aと第2軸受け配置部w4との間の傾斜部により確保された空間に位置することで、余裕を持った大きさの接触面を確保することができる。
【0054】
<動作説明>
コイル13が通電されてロータ12に回転トルクが生じると、ロータ12と一体化された入力軸41が中心軸O1を中心に回転する。入力軸41の回転に伴い起振体41aの運動が外歯歯車42に伝わる。外歯歯車42は、固定された第1内歯歯車44に一部が噛合っているので、起振体41aの回転に追従して外歯歯車42が回転することはなく、起振体41aが外歯歯車42の内側で相対的に回転する。さらに、外歯歯車42は起振体41aの外周面に沿うように規制されているため、起振体41aの回転に伴って撓み変形し揺動する。この揺動の周期は、起振体41aの回転周期に比例する。
【0055】
起振体41aの回転により外歯歯車42が変形すると、起振体41aの径が大きい部分(長軸部分)が周方向に移動し、これにより外歯歯車42と第1内歯歯車44との噛合う位置が周方向に変化する。外歯歯車42と第1内歯歯車44との歯数に違いがあるため、噛合う位置が一周するごとに、外歯歯車42と第1内歯歯車44との噛合う歯がずれていき、これにより外歯歯車42が回転する(自転する)。例えば、第1内歯歯車44の歯数が102で、外歯歯車42の歯数が100であれば、起振体41aの回転運動は減速比100:2で減速されて外歯歯車42に伝達される。
【0056】
一方、外歯歯車42は第2内歯歯車45とも同様に噛合っているため、起振体41aの回転によって外歯歯車42と第2内歯歯車45との噛合う位置も回転方向に変化する。第2内歯歯車45と外歯歯車42との歯数は同数であるので、外歯歯車42と第2内歯歯車45とは相対的に回転せず、外歯歯車42の回転運動が減速比1:1で第2内歯歯車45へ伝達される。これらによって、起振体41aの回転運動が減速されて出力軸となる第2内歯歯車45及び軸受けハウジング48へ出力される。
【0057】
コイル13への通電中、カバー部44bとコイルエンド13aとの間の距離が短くても、カバー部44bが樹脂製(非導電性の素材)であるため、コイル13と装置外部あるいはコイル13と減速機40との間の高い絶縁性が確保される。また、カバー部44bとコイル13とは接触しているが、接触面は互いに滑り合うことで相対移動可能である。よって、コイル13への通電により、コイル13が発熱し、熱膨張しても、カバー部44bとコイル13との接触部分において僅かな歪みの力が発生するだけで、カバー部44b及びステータ15の耐久性にはほとんど影響しない。
【0058】
<組立方法>
図5は、入力軸アッセンブリの組み付け工程を示す説明図である。図6は、内歯歯車アッセンブリの組み付け工程を示す説明図である。図7は、複数のアッセンブリから減速機を組み立てる工程を示す説明図である。図8は、減速機とモータ部品とからギヤモータを組み立てる工程を示す説明図である。
【0059】
本実施形態に係るギヤモータ1は、次のように組み立てることができる。先ず、図5に示すように、入力軸41、入力軸受け51、反モータ側入力軸受け52、起振体軸受け43、外歯歯車42、第1規制部材46及び第2規制部材47を、互いに組み付けて入力軸アッセンブリA1(図7)を組み立てる。
【0060】
入力軸アッセンブリA1を組み立てるには、組立員は、入力軸41に起振体軸受け43と外歯歯車42とを組み付けた状態で、反モータ側から第2規制部材47と反モータ側入力軸受け52とを、この順で入力軸41に通す。これにより、第2規制部材47が、起振体軸受け43と反モータ側入力軸受け52とに挟まれて保持される。加えて、反モータ側入力軸受け52が、第2軸受け配置部w4に外嵌されて固定される。
【0061】
さらに、組立員は、入力軸41に、モータ側から第1規制部材46と入力軸受け51とを通す。これにより、第1規制部材46が、起振体軸受け43と入力軸受け51とに挟まれて保持される。加えて、入力軸受け51が、第1軸受け配置部w3に外嵌されて固定される。
【0062】
また、入力軸アッセンブリA1の組み立てと並行して、組立員は、図6に示すように、第1内歯歯車44、第2内歯歯車45、主軸受け54及び外周ハウジング53を、互いに組み付けて内歯歯車アッセンブリA2(図7)を組み立てる。
【0063】
内歯歯車アッセンブリA2を組み立てるには、組立員は、第2内歯歯車45に主軸受け54を外嵌させかつ張出部45dに当接するまで押し込む。また、組立員は、外周ハウジング53を主軸受け54に外嵌させ、張出部53bが主軸受け54に当接するまで押し込む。次に、組立員は、第1内歯歯車44の突出部44hの部分を、外周ハウジング53に嵌合させ、ネジn2を締めて第1内歯歯車44を外周ハウジング53に固定する。このとき、主軸受け54は、第1内歯歯車44の突出部44hと外周ハウジングの張出部53bとに挟まれて固定され、第2内歯歯車45は張出部45dが主軸受け54に当接して軸方向の位置が決められる。
【0064】
続いて、組立員は、図7に示すように、入力軸アッセンブリA1、内歯歯車アッセンブリA2及び軸受けハウジング48を、互いに組み付ける。内歯歯車アッセンブリA2は、入力軸アッセンブリA1に対して、モータ側から挿入することで、組み付けることができる。このような組み付けは、第1内歯歯車44の歯部44aの内径と、第2内歯歯車45の内径とが、入力軸受け51及び第1規制部材46の外径より大きいので可能となる。この組み付けの際、第1規制部材46は第1内歯歯車44の規制部材配置部44eに嵌入される。
【0065】
次に、組立員は、反モータ側から軸受けハウジング48を組み付ける。このとき、軸受けハウジング48の軸受け配置部48bを反モータ側入力軸受け52に外嵌させ、反モータ側入力軸受け52が張出部48cに当接するまで押し込む。このとき、軸受けハウジング48の外嵌部48dの先端は、主軸受け54に当接して主軸受け54が固定される。この状態で、ネジn1を締めて軸受けハウジング48を第2内歯歯車45に固定する。
【0066】
続いて、組立員は、図8に示すように、減速機40にモータ10の各部品を組み付けてギヤモータ1を組み立てる。先ず、組立員は、減速機40の入力軸41のロータ配置部w1に、ロータ磁石12bを直接に固定する。ロータ磁石12bは、ロータ配置部w1の段部s3に一端を当接させるようにして軸方向の位置が決まる。
【0067】
次に、組立員は、モータフレーム17と、ステータ15とを減速機40のモータ側から組み付ける。ここで、モータフレーム17の一端は、第1内歯歯車44の周端部44cの突出部44gに内嵌するように組み付けられ、ステータ15はモータフレーム17の内周面にステータコア14の外周面が接触することで保持される。また、ステータ15の軸方向の負荷側の端部が、第1内歯歯車44の一部に接触することで、ステータ15の軸方向の位置が決まる。
【0068】
さらに、組立員は、ブラケット23を介してセンサ22が取り付けられたモータカバー19を、モータフレーム17の一端に嵌合させ、ボルト21を介してモータカバー19を内歯歯車アッセンブリA2に連結させる。ボルト21を通すボルト孔は、ネジn2を通すネジ孔h2と周方向に位置の異なる複数の箇所に設けられており、複数のボルト21を止着することでギヤモータ1が組み上がる。
【0069】
<実施形態効果>
以上のように、本実施形態に係るギヤモータ1によれば、減速機40の入力軸41のうちモータ10側へ突出した突出部41bがロータ軸として機能する。また、入力軸41は、減速機40側からモータ10側に向かって、入力軸受け51が配置される第1軸受け配置部w3と、ロータ磁石12bが配置されるロータ配置部w1がこの順に配置される。そして、ロータ配置部w1の外径が、第1軸受け配置部w3の外径以下であり、ロータ配置部w1には、ロータ磁石12bが直接に固定されている。このような構成により、ギヤモータ1の部品点数を削減でき、かつ、簡単にかつ高い組立精度でギヤモータ1を組み立てることができ、さらに、ロータ磁石12bの位置精度を向上することができる。
【0070】
また、上記実施形態に係るギヤモータ1によれば、入力軸41はホロー構造を有し、モータ10の反負荷側を覆うモータカバー19には、入力軸41のホロー部に中空部が連通する筒状の内壁部19aが設けられている。そして、内壁部19aの減速機40側の端面には、回転位置検知用のセンサ22が配置されている。このような構成により、部品点数を増加させずに、高い組立精度でセンサ22を設けることができる。また、モータカバー19の筒状の内壁部19aの中空部と、入力軸41のホロー構造とが連通するので、ギヤモータ1に軸方向に延びる中空部が得られ、この中空部の配線又はシャフトなどを通すことができる。
【0071】
また、上記実施形態に係るギヤモータ1によれば、モータ側の第1規制部材46によって、外歯歯車42及び起振体軸受け43のモータ側への移動を規制できる。また、第1規制部材46の外径が、第1内歯歯車44の歯部44aの内径及び第2内歯歯車45の内径よりも小さい。この構成により、入力軸41に起振体軸受け43、外歯歯車42、第1規制部材46を組み込んだ構成要素に、第1内歯歯車44と第2内歯歯車45を、第1規制部材46の側から組み込むことが可能となる。この構成により、減速機40の組み立て工程を単純化することができ、少ない部品点数でかつ高い精度で減速機40を組み立てることが可能となる。
【0072】
さらに、上記実施形態に係るギヤモータ1によれば、反モータ側の第2規制部材によって、外歯歯車42及び起振体軸受け43の反モータ側への移動を規制できる。また、第2規制部材47の外径は、第1規制部材46の外径よりも大きい。また、第2規制部材47の外径は、第1内歯歯車44の歯部44aの内径及び第2内歯歯車45の内径よりも大きい。このような構成の第2規制部材47及び上述の第1規制部材46により、第1内歯歯車44と第2内歯歯車45とを組み込む際に影響を及ぼすことなく、外歯歯車42と起振体軸受け43の軸方向の移動を規制できる。
【0073】
また、上記実施形態に係るギヤモータ1によれば、軸受けハウジング48に、第2内歯歯車45に外嵌し、主軸受け54に当接する外嵌部48d(図7)が設けられている。このような構成により、部品点数を増加させずに、主軸受け54を高い強度で固定することができる。
【0074】
また、上記実施形態に係るギヤモータ1によれば、入力軸アッセンブリA1と内歯歯車アッセンブリA2とを組み上げた後、これらと軸受けハウジング48とを組み付けて、ギヤモータ1の減速機40を組み上げることができる。さらに、このように組み上げられた減速機40の入力軸41にロータ磁石を直接に固定し、その後、モータ10の残りの部品を組み付けてギヤモータ1を組み上げることができる。このような工程により、少ない部品点数で高い位置精度でギヤモータ1を組み立てることができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、減速機として撓み噛合い式減速機を適用した例を示したが、減速機としては偏心揺動型減速機を適用してもよい。この場合、外周面の中心が中心軸O1から偏心するように入力軸に設けられた偏心体が、外歯歯車を揺動させる入力軸の揺動部に相当する。
【0076】
また、上記実施形態においては、幾つかの部品について素材を特定して説明したが、素材は様々に変更可能である。例えば、樹脂製と示した部品は、例えば樹脂と別素材の複合材やベーク材(紙ベーク材や布ベーク材)を適用してもよい。また、ステータ15を覆うモータカバー19と第1内歯歯車44のカバー部44bは、金属製として、ステータ15から所定の絶縁距離を離して配置される構成としてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0077】
また、上記実施形態においては、入力軸41のロータ配置部w1に固定されたロータ磁石12bの外径が、入力軸受け51の内径や第1規制部材46の内径よりも大きかった。そのため、ロータ磁石12bを固定した後には、減速機40の構成部品をモータ側から取り外すことができなかった。しかし、入力軸41のロータ配置部w1に固定されたロータ磁石12bの外径を、入力軸受け51の内径及び第1規制部材46の内径の両方又は一方よりも小さくしてもよい。この場合、モータカバー19、モータフレーム17及びステータ15を取り外した後に、入力軸41のロータ配置部w1にロータ磁石12bを固定した状態のまま、第1内歯歯車44、入力軸受け51及び第1規制部材46をモータ側に取り外し、交換することもできる。さらには、その他の減速機の構成部品(例えば起振体軸受け43や外歯歯車42)をモータ側に取り外し、交換することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 ギヤモータ
10 モータ
12 ロータ
12b ロータ磁石
15 ステータ
17 モータフレーム
19 モータカバー
19a 内壁部(筒状部)
40 減速機
41 入力軸
41a 起振体(揺動部)
41b 突出部
w1 ロータ配置部
w2 延設部
w3 第1軸受け配置部
w4 第2軸受け配置部
s1、s2、s3 段部
42 外歯歯車
43 起振体軸受け(揺動軸受け)
44 第1内歯歯車
45 第2内歯歯車
46 第1規制部材
47 第2規制部材
48 軸受けハウジング
51 入力軸受け
52 反モータ側入力軸受け
53 外周ハウジング
54 主軸受け
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8