(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】タービン翼を切削加工する方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20220610BHJP
B23P 23/02 20060101ALI20220610BHJP
B23Q 3/10 20060101ALI20220610BHJP
B23P 15/02 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B23Q3/06 304Z
B23P23/02 Z
B23Q3/10
B23P15/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017227792
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-08-13
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519198557
【氏名又は名称】ジー・エフ マシーニング ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】GF Machining Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Roger-Federer-Allee 7,2504 Biel,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン シュターレク
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517151(JP,A)
【文献】特開平04-226859(JP,A)
【文献】特開昭56-023319(JP,A)
【文献】特開2016-198837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0269189(US,A1)
【文献】スイス国特許発明第00686878(CH,A5)
【文献】特開2012-106304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 15/02
B23P 23/02
B23Q 3/06
B23Q 3/10
B23C 3/18
F01D 25/00 - 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸式の工作機械においてタービン翼(1)を切削加工する方法であって、回転可能な翼基部緊締装置と回転可能な翼先端緊締装置(2)とによって前記タービン翼(1)を保持し、かつ工具スピンドルにおいて緊締された工具によって加工する方法であって、
まず、翼先端に隣接した第1の異形材部分(4)を前記工具によって加工し、その後で、前記工具を取り外し、前記工具スピンドルが、前記第1の異形材部分(4)に適合されたクランプジョー(6.1,6.2)を有する追加緊締装置(5)を把持し、前記クランプジョー(6.1,6.2)が前記第1の異形材部分(4)に載置されるように、前記翼先端緊締装置(2)において前記追加緊締装置(5)を位置決めし、前記工具スピンドルが別の工具を把持し、
前記別の工具を用いて
、前記第1の異形材部分
(4)の未加工の部分を加工することを特徴とする、タービン翼を切削加工する方法。
【請求項2】
前記追加緊締装置(5)を、ゼロポイント・クランピングシステムを用いて前記翼先端緊締装置(2)に固定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記クランプジョー(6.1,6.2)は、前記追加緊締装置(5)に交換可能に配置されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記追加緊締装置は
、第1の部分(5.
1)および第2の部分(5.2)から成り、
前記第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)はそれぞれ1つの前記クランプジョー(6.1,6.2)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
まず、前記追加緊締装置(5)の前記第1の部分(5.1)を、前記加工された異形材部分(4)の吸込み側または圧力側に取り付け、前記タービン翼(1)を180°回転させ、次いで、前記追加緊締装置(5)の前記第2の部分(5.2)を、前記加工された異形材部分(4)の圧力側または吸込み側に取り付ける、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記追加緊締装置(5)の前記
第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)のそれぞれに、前記工具スピンドルによって前記
第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)のそれぞれを把持するために操作ピン(7)が配置されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記操作ピン(7)は中空である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記追加緊締装置(5)を、前記工具スピンドルを通して供給される圧縮流体を用いて緊締または弛緩する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
タービン翼(1)を保持するために回転可能な翼基部緊締装置と回転可能な翼先端緊締装置(2)とを有しており、工具を緊締するために工具スピンドルをさらに有している、タービン翼(1)を切削加工する工作機械であって、
当該工作機械は
、第1の部分(5.
1)および第2の部分(5.2)から成る追加緊締装置(5)を有しており、
前記第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)は、それぞれ1つまたは複数のクランプジョー(6.1,6.2)を備えており、前記追加緊締装置(5)は、前記翼先端緊締装置(2)に、好ましくはゼロポイント・クランピングシステムを用いて固定することができることを特徴とする、タービン翼(1)を切削加工する工作機械。
【請求項10】
前記追加緊締装置(5)の
前記第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)それぞれに、
前記第1の部分(5.
1)および前記第2の部分(5.2)を把持するために操作ピン(7)が設けられている、請求項9記載の、タービン翼(1)を切削加工する工作機械。
【請求項11】
前記追加緊締装置(5)は、前記工具スピンドルを通して供給される圧縮流体を用いて緊締または弛緩される、請求項9または10記載の、タービン翼(1)を切削加工する工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸式の工作機械においてタービン翼を切削加工する方法であって、回転可能な翼基部緊締装置と回転可能な翼先端緊締装置とによってタービン翼を保持し、かつ工具スピンドルにおいて緊締された工具によって加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法では、切削力に起因して生じる、タービン翼の弾性的な撓みが、公知の問題としてある。このような撓みは、加工の精度を損ない、かつタービン翼の振動を引き起こすことがあり、これによって、加工された異形材部分における表面品質が劣化してしまう。
【0003】
欧州特許第2618961号明細書に基づいて公知の、上に述べた問題の解決策では、タービン翼は加工中に、翼軸線に沿って走行可能な振り止め(Luenette)によって部分的に支持される。この振り止めは、その軸線に沿って可動の複数のプランジャを有しており、これらのプランジャは、タービン翼を支持するために、タービン翼に押し付けられる。この振り止めは、タービン翼の周囲に比較的大きな空間を要し、追加的な駆動装置を必要とし、タービン翼への接近可能性を損ない、かつチップの落下を妨げることがある。さらに、加工すべき異形材部分の交換時に、工具は振り止めを迂回しなければならず、このことは、プログラミングコストを増大し、それにもかかわらずある程度の衝突のおそれを含んでいる。さらに、加工済みの翼面が、プランジャによって、例えばプランジャが圧痕を残すことによって、損傷されるおそれがある。
【0004】
スイス国特許発明第693610号明細書および国際公開第2015/157166号には、翼異形材に適合された緊締ジョーを備えた装置が開示されているが、これらの装置では、すべての異形材部分を加工できるようにするために、ワークピースを掴み変えなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術を出発点として、本発明の根底を成す課題は、タービン翼がただ一度の緊締で加工され、翼先端の領域においては、切削力に起因するタービン翼の撓みが減じられ、かつ振動が減衰されるように緊締がなされる、タービン翼を切削加工する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、まず、翼先端に隣接した第1の異形材部分を工具によって加工し、その後で、工具を取り外し、工具スピンドルが、第1の異形材部分に適合されたクランプジョーを有する追加緊締装置を把持し、クランプジョーが第1の異形材部分に載置されるように、翼先端緊締装置において追加緊締装置を位置決めし、工具スピンドルが別の工具を把持し、これを用いて残りの異形材部分を加工することによって、解決される。
【0007】
この本発明に係る方法の構成には、以下の利点がある。翼基部緊締装置と追加緊締装置との間の空間が、残りの異形材部分の加工中に自由なままなので、タービン翼は工具が接近可能なままであり、チップは下方に向かって自由に落下することができる。この接近可能性によって、工具に対する衝突のおそれはなくなり、公知の従来技術に比べて加工プログラミングが簡単になる。さらに、工作機械は、追加緊締装置を操作するための追加の軸を必要とせず、結局、適合されたクランプジョーによって、翼異形材の表面が大切に扱われる。
【0008】
本発明の特別な構成形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の異形材部分の加工後における、工作機械の翼先端緊締装置の領域を示す斜視図である。
【
図2】追加緊締装置の取付け後における、
図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
両方の図面には、タービン翼1の加工中における工作機械の、回転駆動可能な翼先端緊締装置2を備えた領域が、斜視図で示されている。この翼先端緊締装置2の軸および駆動装置は、ハウジング3内に収容されている。翼先端緊締装置2とは反対側に位置する翼基部緊締装置およびタービン翼1の長手方向軸線に対して角度を成して方向付けられた工具軸が設けられているが、図面には示されていない。
図1に示されているように、翼先端に隣接した第1の異形材部分4は、工具によって既に加工されている。この加工は、必ずしも仕上げ加工である必要はない。重要なことはただ、異形材部分が、後で述べるクランプジョーのための定義された安定した接触面(Anlageflaeche)を提供することだけである。
【0012】
上に述べた第1の異形材部分4を安定化させるための、2つの部分5.1,5.2から成る追加緊締装置5は、
図1に示した図面では、後の使用のためにハウジング3上に保管されている。追加緊締装置5の各部分5.1,5.2は、クランプジョー6.1,6.2を備えており、このクランプジョー6.1,6.2のクランプ面は、既に加工された第1の異形材部分4に合わせられている。クランプジョー6.1,6.2は、異形材部分4に全面的に接触している必要はなく、中断された接触部分を有することができる。さらに、追加緊締装置5の各部分5.1,5.2は、上方に向かって突出する操作ピン7を有しており、この操作ピン7は、工具スピンドルによって把持されることができるが、操作ピン7を把持する前に、その前にこの工具スピンドルにおいて緊締されていた工具、例えばフライスは、取り外されて例えば工具マガジン内に収納される。
【0013】
図2に示した図面では、追加緊締装置5の両方の部分5.1,5.2は、工具スピンドルによって翼先端におけるその位置にもたらされて緊締されている。まず第1の部分5.1が、工具スピンドルによってその操作ピン7において把持され、かつゼロポイント・クランピングシステム(Nullpunkt-Spannsystem)を用いて、例えばタービン翼1の吸込み側において翼先端緊締装置2に固定され、その後でタービン翼は180°回転させられる。その後で第2の部分5.2が、工具スピンドルによって同様な形式でタービン翼の圧力側において固定される。操作ピン7は中空であり、かつ例えば工具スピンドルを通して供給される圧縮流体、例えば圧縮空気によって、追加緊締装置5の操作を可能にする。追加緊締装置5は圧力下で解除され、追加緊締装置5が無圧の場合にクランプする。
【0014】
冒頭に挙げた欧州特許第2618961号明細書に基づき公知の従来技術と比較すると、上に述べた方法は、大幅に僅かなコストで、かつ事実上維持費なしで得られる。プログラミングもあまり複雑ではなく、素材サイズが変化しても、衝突のおそれなしに、工具の全自動式の確実な位置決めが可能になる。
【符号の説明】
【0015】
1 タービン翼
2 翼先端 緊締装置
3 ハウジング
4 第1の異形材部分
5 追加緊締装置
5.1 追加緊締装置5の部分
5.2 追加緊締装置5の部分
6.1 クランプジョー
6.2 クランプジョー
7 操作ピン