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特許7085829撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/37 20060101AFI20220610BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20220610BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220610BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
D06M15/37
D06M13/395
D06M15/263
C09K3/18 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017244124
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019108641
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 弓子
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特許第6688171(JP,B2)
【文献】特表2016-524628(JP,A)
【文献】特表2016-522330(JP,A)
【文献】特開2018-62720(JP,A)
【文献】特表2005-519176(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、下記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物との反応生成物である疎水性化合物[但し、下記一般式(11)で表される化合物及び下記一般式(12)で表される化合物を除く]を含む撥水剤組成物。
31[-W-R32[-V (I-1)
[式(I-1)中、dは1以上の整数を表し、eは2以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、R31は(d+e)価の有機基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R32は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、e個のVのうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
33[-NCO] (II)
[式(II)中、R33はf価の有機基を表し、fは2~7の整数を表す。]
11 [-W -R 12 [-V-R 13 (-Z (11)
[式(11)中、dは2以上の整数を表し、eは1以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、gは1以上の整数を表し、R 11 は(d+e)価の有機基を表し、W はエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R 12 は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R 13 は(1+g)価の有機基を表し、Z はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。]
21 [-W -R 22 ][-W -R 23 ] (12)
[式(12)中、R 21 は下記一般式(13)で表される2価の基を表し、W 及びW はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R 22 は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、R 23 は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基、又は、下記一般式(14)で表される1価の基を表す。ただし、W がエステル基又はアミド基である場合、R 23 は炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。
【化1】

{式(13)中、qは1~4の整数を表し、R 24 及びR 26 はそれぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基を表し、Jはカルボニル基又はアミド基である2価の基を表し、R 25 は、炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基、又は、下記一般式(15)で表される1価の基を表す。ただし、Jがカルボニル基である場合、当該カルボニル基に結合するR 25 は炭素数10~24の直鎖もしくは分岐の1価の炭化水素基である。
-R 28 (-Z (15)
(式(15)中、kは1以上の整数を表し、R 28 は(1+k)価の有機基を表し、Z はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。)}
-R 27 (-Z (14)
{式(14)中、hは1以上の整数を表し、R 27 は(1+h)価の有機基を表し、Z はイソシアネート基又はブロックされたイソシアネート基である1価の基を表す。}]
【請求項2】
一般式(I-1)で表される前記多官能化合物が、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の撥水剤組成物
C[-R41[-R42-V[-R43-W-R44 (I-2)
[式(I-2)中、gは0又は1の整数であり、hは2又は3の整数であり、iは1又は2の整数であり、(g+h+i)は4であり、R41は炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R42は炭素数1~2の2価のアルキレン基を表し、R43は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R44は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、2つ以上のVはヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
【化2】

[式(I-3)中、R51及びR52はそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R54及びR55はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R53、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される1価の基を示す。
-R59-V (1)
{R59は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。}
-R60-W-R61 (2)
{R60は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R61は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表す。}
ただし、R53、R56、R57及びR58のうち少なくとも2つは、Vがヒドロキシ基又はアミノ基である、前記一般式(1)で表される基である。]
【化3】

[式(I-4)中、jは1~4の整数を表し、R71及びR73はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R72及びR74はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アミノ基又は下記一般式(3)で表される1価の基を表し、R75は水素、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される1価の基を表す。
-W-R76 (3)
{式(3)中、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R76は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
-R77-OH (4)
{式(4)中、R77は炭素数2~3のアルキレン基を表す。}
-R78-W-R79 (5)
{式(5)中、R78は炭素数2~3のアルキレン基を表し、R79は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を示す。}
-W-R80 (6)
{式(6)中、Wはカルボニル基又はアミド基を表し、R80は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
ただし、R72、R74及びj個のR75のうち少なくとも2つはヒドロキシ基、アミノ基、水素又は前記一般式(4)で表される1価の基であり、R72及びR74はヒドロキシ基又はアミノ基、R75は水素又は前記一般式(4)で表される1価の基である。]
【請求項3】
前記疎水性化合物が、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を有する、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に由来する構造単位を含有する非フッ素系ポリマーを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【化4】

[式(A-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭化水素12以上の1価の炭化水素基を表す。]
【請求項5】
前記疎水性化合物の重量平均分子量が、2,000~100,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項6】
前記疎水性化合物が、下記一般式(III-1)、一般式(III-2)又は一般式(III-3)で表される部分構造を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【化5】

[式(III-1)中、n1は、2以上の整数を表し、R 11 及びR 12 は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【化6】

[式(III-2)中、n2は、2以上の整数を表し、n3は、1以上の整数を表し、R 13 は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【化7】

[式(III-3)中、n4は、2以上の整数を表し、R 14 は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【請求項7】
繊維用である、請求項1~のいずれか一項に記載の撥水剤組成物。
【請求項8】
繊維を、請求項1~のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【請求項9】
繊維と、前記繊維上に付着した請求項1~のいずれか一項に記載の撥水組成物と、を備える、撥水性繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水剤組成物としてはフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤が知られており、かかるフッ素系撥水剤を繊維表面に処理することにより、撥水性が付与された繊維製品が得られる。このようなフッ素系撥水剤は一般に長鎖フルオロアルキル基を有する単量体を重合、もしくは共重合させることにより製造される。しかし、フッ素系撥水剤で処理された繊維製品は優れた撥水性を発揮するものの、使用される長鎖フルオロアルキル化合物の環境負荷の懸念が明らかとなってきたため、全くフッ素系化合物を含まずにフッ素系に匹敵する高性能な撥水性能を発現する非フッ素系撥水剤が国際的に求められるようになってきた。
【0003】
そこで、近年、フッ素を含まない非フッ素系撥水剤について研究が進められている。例えば、下記特許文献1には、エステル部分の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として含む特定の非フッ素系ポリマーからなる撥水剤が提案されている。また、下記特許文献2には、単量体成分として特定の長鎖(メタ)アクリレートエステル及び環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートを有する非フッ素重合体を含む水系エマルションである表面処理剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-328624号公報
【文献】特開2015-166465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の非フッ素系撥水剤は、一般的な撥水性評価試験のひとつであるJIS L 1092(1998)のスプレー法において撥水効果は認められるものの、洗濯を繰り返した場合に、撥水性が低下するという問題があった。このような繰り返しの洗濯に対する耐久撥水性は、実用の面で重要である。従来の非フッ素系撥水剤は、耐久撥水性の点で、フッ素系撥水剤に比べて未だ不十分であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撥水性及び耐久撥水性に優れた撥水性繊維製品を得ることができる撥水剤組成物、並びにそれを用いた撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも下記一般式(I-1)で表される多官能化合物由来の構造単位と、下記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物由来の構造単位と、を有する疎水性化合物を含む撥水剤組成物を提供する。
【0008】
31[-W-R32[-V (I-1)
[式(I-1)中、dは1以上の整数を表し、eは2以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、R31は(d+e)価の有機基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R32は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、e個のVのうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
33[-NCO] (II)
[式(II)中、R33はf価の有機基を表し、fは2~7の整数を表す。]
【0009】
本発明の撥水剤組成物によれば、撥水性及び耐久撥水性に優れた撥水性繊維製品を実現することができる。
【0010】
上記一般式(I-1)で表される多官能化合物は、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0011】
C[-R41[-R42-V[-R43-W-R44 (I-2)
[式(I-2)中、gは0又は1の整数であり、hは2又は3の整数であり、iは1又は2の整数であり、(g+h+i)は4であり、R41は炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R42は炭素数1~2の2価のアルキレン基を表し、R43は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R44は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、2つ以上のVはヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
【0012】
【化1】

[式(I-3)中、R51及びR52はそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R54及びR55はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R53、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される1価の基を示す。
-R59-V (1)
{R59は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。}
-R60-W-R61 (2)
{R60は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R61は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表す。}
ただし、R53、R56、R57及びR58のうち少なくとも2つは、Vがヒドロキシ基又はアミノ基である、上記一般式(1)で表される基である。]
【化2】

[式(I-4)中、jは1~4の整数を表し、R71及びR73はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R72及びR74はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アミノ基又は下記一般式(3)で表される1価の基を表し、R75は水素、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される1価の基を表す。
-W-R76 (3)
{式(3)中、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R76は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
-R77-OH (4)
{式(4)中、R77は炭素数2~3のアルキレン基を表す。}
-R78-W-R79 (5)
{式(5)中、R78は炭素数2~3のアルキレン基を表し、R79は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を示す。}
-W-R80 (6)
{式(6)中、Wはカルボニル基又はアミド基を表し、R80は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
ただし、R72、R74及びj個のR75のうち少なくとも2つはヒドロキシ基、アミノ基、水素、上記一般式(4)で表される1価の基であり、R72及びR74はヒドロキシ基又はアミノ基、R75は水素又は上記一般式(4)で表される1価の基である。]
【0013】
上記疎水性化合物は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を有してよい。
【0014】
本発明の撥水剤組成物は、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)に由来する構造単位を含有する非フッ素系ポリマーを更に含んでよい。
【化3】

[式(A-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭化水素12以上の1価の炭化水素基を表す。]
【0015】
本発明の撥水剤組成物は、繊維用であってよい。
【0016】
本発明はまた、繊維を、上記本発明に係る撥水剤組成物で処理する工程を備える撥水性繊維製品の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の撥水性繊維製品の製造方法によれば、撥水性及び耐久撥水性に優れた撥水性繊維製品を安定して製造することができる。
【0018】
本発明はまた、繊維と、繊維上に付着した上記本発明に係る撥水剤組成物と、を備える撥水性繊維製品を提供する。
【0019】
本発明の撥水性繊維製品は、撥水性及び耐久撥水性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理物に、優れた撥水性及び耐久撥水性を付与することができる撥水剤組成物、及びそれを用いて得られる撥水性繊維製品を提供することができる。
【0021】
本発明の撥水剤組成物は、フッ素化合物を含まない撥水剤組成物でありながらもフッ素化合物を含む撥水剤と同等の優れた撥水性及び耐久撥水性を付与できることから、フッ素系撥水剤に代わるものとしての利用が可能であり、また、長鎖フルオロアルキル化合物を含まないため、環境等への影響懸念を解消することができる。
【0022】
フッ素系撥水剤を繊維製品に付着させた場合は通常高温での熱処理が施されるが、本発明の撥水剤組成物はフルオロアルキル基を有する単量体を用いていないため、130℃以下の温和な条件で熱処理した場合であっても高い撥水性を発揮させることができる。また、130℃を超える高温で熱処理した場合には、熱処理時間をフッ素系撥水剤の場合よりも短くすることができる。したがって、本発明の撥水剤組成物は、被処理物の熱による変質を抑えることができ、また熱処理にかかる熱量を削減できる等のコスト面でも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の撥水剤組成物は、下記一般式(I-1)で表される多官能化合物由来の構造単位と、下記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物由来の構造単位と、を有する疎水性化合物を含む。
【0024】
31[-W-R32[-V (I-1)
[式(I-1)中、dは1以上の整数を表し、eは2以上の整数を表し、(d+e)は3~6であり、R31は(d+e)価の有機基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R32は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、e個のVのうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
【0025】
33[-NCO] (II)
[式(II)中、R33はf価の有機基を表し、fは2~7の整数を表す。]
【0026】
このような疎水性化合物は、少なくとも上記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、上記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。
【0027】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは「アクリル酸エステル」又はそれに対応する「メタクリル酸エステル」を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等においても同義である。
【0028】
本明細書において、エステル基は、-O-CO-で表される基を意味する。アミド基は、-NH-CO-で表される基を意味する。ウレタン基は、-O-CO-NH-で表される基を意味する。ウレア基は、-NH-CO-NH-で表される基を意味する。イソシアネート基は、-N=C=Oで表される基を意味する。カルボニル基は、-CO-で表される基を意味する。
【0029】
本実施形態の撥水剤組成物に含まれる疎水性化合物について説明する。
【0030】
まず、上記一般式(I-1)で表される多官能化合物について説明する。
【0031】
上記一般式(I-1)において、dが2以上の場合、複数存在するWは同一であっても異なっていてもよい。複数存在するR32は同一であっても異なっていてもよい。複数存在するVは同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
31は、(d+e)価の有機基を表す。撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)及び水浸み防止性の観点から、R31の炭素数は、2~40であることが好ましく、4~12であることがより好ましい。R31としては、下記化学式(7)で表される基、下記化学式(8)及び、下記化学式(9)で表される基で表される基が好ましい。(d+e)は、ポリマーの取り扱いやすさの観点から、3~4であることが好ましい。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】

[式(9)中、m1は、1以上の整数を表す。]
【0036】
m1は、1以上の整数を表し、1~3であることが好ましい。
【0037】
31は、ヒドロキシ基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を(d+e)個有する多官能化合物(以下、「多官能化合物A」という。)から、(d+e)個の官能基を除いた残基であってよい。ただし、(d+e)個の官能基のうちの2つ以上がヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。
【0038】
多官能化合物Aとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。これらの中でも、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性の観点から、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ジエタノールアミン及びジエチレントリアミンが好ましい。
【0039】
は、エステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表す。Wは、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)、水浸み防止性の観点から、エステル基及びウレタン基であることが好ましい。
【0040】
32は、炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。炭化水素基としては、撥水性がより優れるものとなることから、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭化水素基の炭素数は、10~24が好ましく、12~22がより好ましく、12~18が特に好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性及び風合が特に優れるものとなる。炭化水素基としては、炭素数12~18の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0041】
32としては、例えば、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ベヘニル基が挙げられる。
【0042】
32は、上記多官能化合物Aが有する官能基と反応可能な反応基を有する反応性炭化水素化合物から、反応基を除いた残基であってよい。反応性炭化水素化合物としては、例えば、炭素数が8~24である、高級脂肪酸(なお、前記炭素数には、カルボニル基の炭素も含まれる)、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族モノイソシアネート及び高級脂肪族アミンが挙げられる。
【0043】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ドコサン酸などが挙げられる。
【0044】
高級脂肪族アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0045】
高級脂肪族モノイソシアネートとしては、例えば、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、ペンタデシルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、エイコシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
高級脂肪族アミンとしては、例えば、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミンなどが挙げられる。
【0047】
は、ヒドロキシ基、アミノ基またはカルボキシ基を表す。Vは、耐久撥水性の観点から、ヒドロキシ基、アミノ基であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(I-1)で表される多官能化合物は、例えば、上記のヒドロキシ基、アミノ基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を(d+e)個有する多官能化合物(多官能化合物A)に、[-W-R32]で表される疎水性基をd個導入することにより製造することができる。
【0049】
[-W-R32]で表される疎水性基は、例えば、上記多官能化合物A1モルに対し、上記反応性炭化水素化合物1モル以上を、多官能化合物Aの未反応の官能基の数eが2以上になるよう、従来公知の合成方法、すなわち、エステル化反応、アミド化反応又はウレタン反応により、反応させることにより導入することができる。
【0050】
上記一般式(I-1)で表される多官能化合物は、特に制限されないが、下記一般式(I-2)で表される多官能化合物、下記一般式(I-3)で表される多官能化合物及び下記一般式(I-4)で表される多官能化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
C[-R41[-R42-V[-R43-W-R44 (I-2)
[式(I-2)中、gは0又は1の整数であり、hは2又は3の整数であり、iは1又は2の整数であり、(g+h+i)は4であり、R41は炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R42は炭素数1~2の2価のアルキレン基を表し、R43は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R44は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。ただし、2つ以上のVはヒドロキシ基及び/又はアミノ基である。]
【0052】
【化7】

[式(I-3)中、R51及びR52はそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し、R54及びR55はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R53、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される1価の基を示す。
-R59-V (1)
{R59は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を表す。}
-R60-W-R61 (2)
{R60は炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R61は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表す。}、
ただし、R53、R56、R57及びR58のうち少なくとも2つは、Vがヒドロキシ基又はアミノ基である、上記一般式(1)で表される基である。]
【0053】
【化8】

[式(I-4)中、jは1~4の整数を表し、R71及びR73はそれぞれ独立に炭素数1~4の2価のアルキレン基を表し、R72及びR74はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アミノ基又は下記一般式(3)で表される1価の基を表し、R75は水素、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で表される1価の基を表す。
-W-R76 (3)
{式(3)中、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を表し、R76は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}
-R77-OH (4)
{式(4)中、R77は炭素数2~3のアルキレン基を表す。}
-R78-W-R79 (5)
{式(5)中、R78は炭素数2~3のアルキレン基を表し、R79は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表し、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基を示す。}
-W-R80 (6)
{式(6)中、Wはカルボニル基又はアミド基を表し、R80は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。}、
ただし、R72、R74及びj個のR75のうち少なくとも2つはヒドロキシ基、アミノ基、水素、上記一般式(4)で表される1価の基であり、R72及びR74はヒドロキシ基又はアミノ基、R75は水素又は上記一般式(4)で表される1価の基である。]
【0054】
上記一般式(I-2)で表される多官能化合物において、iが2の場合、複数存在するWは、同一であっても異なっていてもよい。iが2である場合、複数存在するR43は、同一であっても異なっていてもよい。iが2である場合、複数存在するR44は、同一であっても異なっていてもよい。R44は、上記一般式(I-1)におけるR32に対応する。複数存在するR42は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するVは、同一であっても異なっていてもよい。。
【0055】
上記一般式(I-2)で表される多官能化合物において、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基である。Wは、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)、水浸み防止性の観点から、エステル基及びウレタン基であることが好ましい。
【0056】
上記一般式(I-2)で表される多官能化合物において、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基である。Vは、耐久撥水性の観点から、ヒドロキシ基又はアミノ基であることが好ましい。
【0057】
上記一般式(1)で表される基において、Vはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基である。Vは、耐久撥水性の観点から、ヒドロキシ基又はアミノ基であることが好ましい。
【0058】
上記一般式(2)で表される基において、R61は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。R61は、上記一般式(I-1)におけるR32に対応する。
【0059】
上記一般式(2)で表される基において、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基である。Wは、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)、水浸み防止性の観点から、エステル基又はウレタン基であることが好ましい。
【0060】
上記一般式(3)で表される基において、R76は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。R76は、上記一般式(I-1)におけるR32に対応する。
【0061】
上記一般式(3)で表される基において、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基である。Wは、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)、水浸み防止性の観点から、エステル基、アミド基又はウレタン基であることが好ましい。
【0062】
上記一般式(5)で表される基において、R79は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。R79は、上記一般式(I-1)におけるR32に対応する。
【0063】
上記一般式(5)で表される基において、Wはエステル基、アミド基、ウレタン基又はウレア基である2価の基である。Wは、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)、水浸み防止性の観点から、エステル基、アミド基又はウレタン基であることが好ましい。
【0064】
上記一般式(6)で表される基において、R80は炭素数8~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基である。R80は、上記一般式(I-1)におけるR32に対応する。
【0065】
次に、上記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物について説明する。
【0066】
33は、f価の有機基を表す。R33の炭素数は、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)及び水浸み防止性の観点から、4~40であることが好ましく、6~18であることがより好ましい。R33としては、へキシレン基が好ましい。fは、2~7の整数であってよく、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)及び水浸み防止性の観点から、2~3であることが好ましい。
【0067】
上記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物であってよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルポリメチルポリイソシアネートに代表される液状MDI、粗MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート、及び、これらのイソシアヌレート環である三量体などが挙げられる。これらの中でも、撥水性、耐久撥水性(特に、耐洗濯性)及び水浸み防止性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0068】
上記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、上記一般式(II)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させてなる疎水性化合物としては、例えば、下記一般式(III-1)、一般式(III-2)及び一般式(III-3)で表される部分構造を有する疎水性化合物などが挙げられる。
【0069】
【化9】

[式(III-1)中、n1は、2以上の整数を表し、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【0070】
n1は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~100であることが好ましく、2~50であることがより好ましい。
【0071】
【化10】

[式(III-2)中、n2は、2以上の整数を表し、n3は、1以上の整数を表し、R13は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【0072】
n2は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましい。
【0073】
n3は、1以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性の観点から、1~3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0074】
【化11】

[式(III-3)中、n4は、2以上の整数を表し、R14は、それぞれ独立に炭素数10~24の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基を表す。]
【0075】
n4は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましい。
【0076】
上記一般式(III-1)で表される部分構造を有する疎水性化合物としては、例えば、下記式(III-4)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化12】

[式(III-4)中、n5は、2以上の整数を表し、Rは、下記式(R-1)で表される一価の有機基を表す。]
【0078】
n5は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~100であることが好ましく、2~50であることがより好ましい。
【0079】
【化13】
【0080】
上記一般式(III-2)で表される部分構造を有する疎水性化合物としては、例えば、下記式(III-5)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化14】

[式(III-5)中、n6は、2以上の整数を表し、n7は、1以上の整数を表す。Rは、上記式(R-1)で表される一価の有機基を表す。]
【0082】
n6は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましい。
【0083】
n7は、1以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性の観点から、1~3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0084】
上記一般式(III-3)で表される部分構造を有する疎水性化合物としては、例えば、下記式(III-6)で表される化合物が挙げられる。
【0085】
【化15】

[式(III-6)中、n8は、2以上の整数を表し、Rは、上記式(R-1)で表される一価の有機基を表す。]
【0086】
n8は、2以上の整数を表し、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)、水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性とポリマーの取り扱いやすさの観点から、2~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましい。
【0087】
本実施形態に係る疎水性化合物は、耐薬品性の観点から、ブロック化剤(「保護反応化合物」ともいう。)で保護されたブロックドイソシアネート基を有することが好ましい。疎水性化合物に含まれるイソシアネート基及びブロックドイソシアネート基の総数に対する、ブロックドイソシアネート基の割合は、耐薬品性の観点から、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
【0088】
ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基としては、例えば、下記一般式(7)で表される基が挙げられる。
【0089】
(-NH-CO-B) (7)
[式(7)中、Bは、ブロック化剤に由来する基である。]
【0090】
ブロック化剤としては、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール、ピラゾールなどのピラゾール類;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、p-iso-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-iso-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール等のフェノール類;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類;N-メチルアセトアミド、アセトアニリド等のN-置換アミド類;コハク酸イミド、フタルイミド等のイミド化合物;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類などが挙げられる。ブロック化剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、汎用性とブロックドイソシアネート基の反応性、ブロックのし易さの観点から、ピラゾール類、オキシム類及びラクタム類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、中でも、ジメチルピラゾール、メチルエチルケトンオキシム及びカプロラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することがより好ましい。
【0091】
本実施形態の疎水性化合物の重量平均分子量(Mw)は、撥水性、耐久撥水性(特に耐洗濯性)水浸み防止性、疎水性化合物の乳化分散安定性の観点から、好ましくは2,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、更に好ましくは2,000~20,000であってよい。疎水性化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。
【0092】
ヒドロキシ基及び/又はアミノ基をe個有する上記一般式(I-1)で表される多官能化合物と、上記一般式(II)で表される化合物とを反応させる際の上記一般式(II)で表される化合物の配合量は、上記一般式(I-1)で表される多官能化合物1モルに対し、(0.8~1.20)×2/eモルが好ましく、(0.80~0.99)×2/eモルがより好ましく、(0.85~0.95)×2/eモルがさらに好ましい。又は、(1.01~1.20)×2/eモルがより好ましく、(1.05~1.15)×2/eがさらに好ましい。
【0093】
本実施形態に係る撥水剤組成物は、非フッ素系ポリマーを更に含んでよい。
【0094】
非フッ素系ポリマーとしては、特に制限されないが、上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が挙げられる。上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12以上の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、Rは無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0095】
上記炭化水素基の炭素数は、12~24であることが好ましい。炭素数が12未満であると、非フッ素系ポリマーを含む撥水剤組成物を繊維製品等に付着させた場合、十分な撥水性を発揮できない。一方、炭素数が24を超えると、炭素数が上記範囲にある場合と比較して、非フッ素系ポリマーを含む撥水剤組成物を繊維製品等に付着させた場合、繊維製品の風合が粗硬になる傾向にある。
【0096】
上記炭化水素基の炭素数は、12~21であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合が特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が12~18の直鎖状のアルキル基である。
【0097】
上記(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸セリル及び(メタ)アクリル酸メリシルが挙げられる。
【0098】
上記(A)成分は、架橋剤と反応可能なヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することができる。この場合、得られる繊維製品の耐久撥水性を更に向上させることができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、上記(A)成分がアミノ基を有する場合、得られる繊維製品の風合を更に向上させることができる。
【0099】
上記(A)成分は、1分子内に重合性不飽和基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。
【0100】
上記(A)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
上記(A)成分は、得られる繊維製品の耐久撥水性(特には耐洗濯性)の点で、アクリル酸エステル単量体(a1)とメタアクリル酸エステル単量体(a2)とを併用することが好ましい。配合する(a1)成分の質量と(a2)成分の質量との比(a1)/(a2)は、30/70~90/10であることが好ましく、40/60~85/15であることがより好ましく、50/50~80/20であることがさらに好ましい。(a1)/(a2)が上記範囲内である場合は、得られる繊維製品の耐久撥水性がより良好となる。
【0102】
非フッ素系ポリマーにおける上記(A)成分の単量体の合計構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び耐久撥水性の点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、50~100質量%であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましい。
【0103】
非フッ素系ポリマーは、得られる繊維製品の撥水性、及び非フッ素系ポリマーの乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性を向上できる点で、(A)成分に加えて、(B1)HLBが7~18である下記一般式(B-1)で表される化合物、(B2)HLBが7~18である下記一般式(B-2)で表される化合物、及び(B3)HLBが7~18である、ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物のうちから選ばれる少なくとも1種の反応性乳化剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0104】
【化16】

[式(B-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0105】
【化17】

[式(B-2)中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0106】
「反応性乳化剤」とは、ラジカル反応性を有する乳化分散剤、すなわち、分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する界面活性剤のことであり、(メタ)アクリル酸エステルのような単量体と共重合させることができるものである。
【0107】
また、「HLB」とは、エチレンオキシ基を親水基、それ以外を全て親油基と見なし、グリフィン法により算出したHLB値のことである。
【0108】
本実施形態にて使用される上記(B1)~(B3)の化合物のHLBは、7~18であり、非フッ素系ポリマーの乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という。)の点で、9~15が好ましい。さらには、撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の反応性乳化剤(B)を併用することがより好ましい。
【0109】
本実施形態にて使用される上記一般式(B-1)で表される反応性乳化剤(B1)において、Rは水素又はメチル基であり、(A)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。Yは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0110】
上記一般式(B-1)で表される化合物としては、下記一般式(B-3)で表される化合物が好ましい。
【0111】
【化18】

[式(B-3)中、Rは水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、mは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~80の整数が好ましく、mが2以上のときm個のAOは同一であっても異なっていてもよい。]
【0112】
上記一般式(B-3)で表される化合物において、Rは水素又はメチル基であり、(A)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。AOの種類及び組み合わせ、並びにmの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、mは1~80の整数が好ましく、1~60の整数であることがより好ましい。mが2以上のときm個のAOは同一であっても異なっていてもよい。また、AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0113】
上記一般式(B-3)で表される反応性乳化剤(B1)は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王株式会社製の「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等を挙げることができる。
【0114】
本実施形態にて使用される上記一般式(B-2)で表される反応性乳化剤(B2)において、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であり、トリデセニル基、トリデカジエニル基、テトラデセニル基、テトラジエニル基、ペンタデセニル基、ペンタデカジエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、Rは炭素数14~16の1価の不飽和炭化水素基がより好ましい。
【0115】
は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Yにおけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、アルキレンオキシ基はエチレンオキシ基がより好ましい。
【0116】
上記一般式(B-2)で表される化合物としては、下記一般式(B-4)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化19】

[式(B-4)中、Rは重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~50の整数が好ましく、nが2以上のときn個のAOは同一であっても異なっていてもよい。]
【0118】
上記一般式(B-4)で表される化合物におけるRは、上述した一般式(B-2)におけるRと同様のものが挙げられる。
【0119】
Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、AOの種類及び組み合わせ、並びにnの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、AOはエチレンオキシ基がより好ましく、nは1~50の整数が好ましく、5~20の整数がより好ましく、8~14の整数がさらに好ましい。nが2以上のときn個のAOは同一であっても異なっていてもよい。また、AOが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0120】
本実施形態にて使用される上記一般式(B-4)で表される反応性乳化剤(B2)は、従来公知の方法で対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0121】
上記対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールには、工業的に製造された純品または混合物のほか、植物等から抽出・精製された純品又は混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツの殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3-[8(Z),11(Z),14-ペンタデカトリエニル]フェノール、3-[8(Z),11(Z)-ペンタデカジエニル]フェノール、3-[8(Z)-ペンタデセニル]フェノール、3-[11(Z)-ペンタデセニル]フェノール等が挙げられる。
【0122】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、HLBが7~18である、ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂としては、不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)を含んでいてもよい脂肪酸のモノ又はジグリセライド、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸(リシノール酸、リシノエライジン酸、2-ヒドロキシテトラコセン酸等)を含む脂肪酸のトリグリセライドを挙げることができる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のトリグリセライドのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ヒマシ油(リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド)の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。さらに、アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、20~50モルがより好ましく、25~45モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキサイドが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0123】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、従来公知の方法でヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂にアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド、すなわちヒマシ油に苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0124】
非フッ素系ポリマーにおける上記(B)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性、及び非フッ素系ポリマーの乳化安定性を向上できる観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0125】
撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマーは、得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(A)成分に加えて、下記(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び(C5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2の(メタ)アクリル酸エステル単量体(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0126】
(C1)は、(C5)以外の下記一般式(C-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0127】
【化20】

[式(C-1)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rはヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を表す。ただし、分子内における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2以下である。]
【0128】
(C2)は、下記一般式(C-2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0129】
【化21】

[式(C-2)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を表す。]
【0130】
(C3)は、下記一般式(C-3)で表されるメタクリル酸エステル単量体である。
【0131】
【化22】

[式(C-3)中、Rは無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基を表す。]
【0132】
(C4)は、下記一般式(C-4)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0133】
【化23】

[式(C-4)中、R10は水素又はメチル基を表し、pは2以上の整数を表し、Sは(p+1)価の有機基を表し、Tは重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。]
【0134】
(C5)は、下記一般式(C-5)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0135】
【化24】

[式(C-5)中、R15は水素又はメチル基を表し、R16はクロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基を表す。]
【0136】
上記(C1)の単量体は、エステル部分にヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、かつ、上記(C5)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体である。架橋剤と反応可能な点から、上記炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの架橋剤と反応可能な基を有する(C1)の単量体を含有する非フッ素系ポリマーを、架橋剤とともに繊維製品に処理した場合に、得られる繊維製品の風合を維持したまま、耐久撥水性を向上することができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基であってもよい。
【0137】
上記鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、上記官能基の他に置換基を更に有していてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、直鎖状であること、及び/又は、飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0138】
具体的な(C1)の単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。さらに得られる繊維製品の風合を向上させる点で、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。
【0139】
非フッ素系ポリマーにおける上記(C1)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0140】
上記(C2)の単量体は、エステル部分に炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、環状炭化水素基としては、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。これら環状炭化水素基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。ただし、置換基が炭化水素基の場合、置換基及び環状炭化水素基の炭素数の合計が11以下となる炭化水素基が選ばれる。また、これら環状炭化水素基は、エステル結合に直接結合していることが、耐久撥水性向上の観点から好ましい。環状炭化水素基は、脂環式であっても芳香族であってもよく、脂環式の場合、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸イソボルニルがより好ましい。
【0141】
非フッ素系ポリマーにおける上記(C2)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0142】
上記(C3)の単量体は、エステル部分のエステル結合に、無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基が直接結合したメタクリル酸エステル単量体である。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~2の直鎖炭化水素基、及び、炭素数3~4の分岐炭化水素基が好ましい。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。具体的な化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0143】
非フッ素系ポリマーにおける上記(C3)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0144】
上記(C4)の単量体は、1分子内に3以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。本実施形態では、上記一般式(C-4)におけるTが(メタ)アクリロイルオキシ基である、1分子内に3以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。式(C-4)において、p個のTは同一であっても異なっていてもよい。具体的な化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、テトラメチロールメタンテトラアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートがより好ましい。
【0145】
非フッ素系ポリマーにおける上記(C4)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0146】
上記(C5)の単量体は、クロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基を有する。上記(C5)の単量体において、R15は水素又はメチル基である。得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、R15はメチル基であることが好ましい。
【0147】
16はクロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基である。鎖状飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。鎖状飽和炭化水素基が直鎖状である場合、得られる繊維製品の耐久撥水性がより優れるものとなる。鎖状飽和炭化水素基の炭素数は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、3~4であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0148】
上記鎖状飽和炭化水素基は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、一つもしくは二つのクロロ基と、一つのヒドロキシ基とを有していることが好ましく、一つのクロロ基と、一つのヒドロキシ基とを有していることがより好ましい。また、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、鎖状飽和炭化水素基はβ位(CH=CR15(CO)O-に結合している炭素原子の隣の炭素原子)にヒドロキシ基を有していることがさらに好ましい。具体的な上記鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、3-クロロ-2-ヒドロキシルプロピル基、3-クロロ-2-ヒドロキシブチル基、5-クロロ-2-ヒドロキシペンチル基、3-クロロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基及び3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0149】
具体的な(C5)の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5-クロロ-2-ヒドロキシペンチル及び(メタ)アクリル酸3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性を向上できる点で、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルが好ましく、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルがより好ましい。
【0150】
非フッ素系ポリマーにおける上記(C5)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0151】
非フッ素系ポリマーにおける上記の(C)成分の単量体の合計構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0152】
非フッ素系ポリマーは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、これらと共重合可能な単官能の単量体(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を、本発明の効果を損なわない範囲において含有することができる。
【0153】
上記(D)の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エチレン、スチレン等のフッ素を含まない(E)成分以外のビニル系単量体等が挙げられる。なお、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭化水素基に、ビニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基等の置換基を有していてもよく、第4級アンモニウム基等の架橋剤と反応可能な基以外の置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合等を有していてもよい。(A)成分及び(C)成分以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0154】
非フッ素系ポリマーにおける上記(D)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合の観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0155】
非フッ素系ポリマーは、架橋剤と反応可能なヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが、得られる繊維製品の耐久撥水性を向上させることから好ましい。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、非フッ素系ポリマーは、アミノ基を有することが、得られる繊維製品の風合も向上させることから好ましい。
【0156】
非フッ素系ポリマーは、得られる繊維製品の撥水性とコーティングに対する剥離強度を向上できる点で、(A)成分に加えて、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0157】
本実施形態にて使用される塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(E)は、得られる繊維製品の撥水性とコーティングに対する剥離強度の点で、塩化ビニルが好ましい。
【0158】
非フッ素系ポリマーにおける上記(E)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品のコーティングに対する剥離強度を向上できる観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~45質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることがさらに好ましい。
【0159】
本実施形態の撥水剤組成物に含まれる非フッ素系ポリマーの製造方法について説明する。
【0160】
非フッ素系ポリマーは、ラジカル重合法により製造することができる。また、このラジカル重合法の中でも、得られる撥水剤の性能及び環境の面から乳化重合法又は分散重合法で重合することが好ましい。
【0161】
例えば、媒体中で、上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)を乳化重合又は分散重合させることにより非フッ素系ポリマーを得ることができる。より具体的には、例えば、媒体中に(A)成分及び必要に応じて上記(B)成分、上記(C)成分、上記(D)成分及び上記(E)成分、並びに乳化補助剤又は分散補助剤を加え、この混合液を乳化又は分散させて、乳化物又は分散物を得る。得られた乳化物又は分散物に、重合開始剤を加えることにより、重合反応が開始され、単量体及び反応性乳化剤を重合させることができる。なお、上述した混合液を乳化又は分散させる手段としては、ホモミキサー、高圧乳化機又は超音波等が挙げられる。
【0162】
上記乳化補助剤又は分散補助剤等(以下、「乳化補助剤等」ともいう。)としては、上記反応性乳化剤(B)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用することができる。乳化補助剤等の含有量は、全単量体100質量部に対して、0.5~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。上記乳化補助剤等の含有量が0.5質量部未満であると、乳化補助剤等の含有量が上記範囲にある場合と比較して、混合液の分散安定性が低下する傾向にあり、乳化補助剤等の含有量が30質量部を超えると、乳化補助剤等の含有量が上記範囲にある場合と比較して、得られる撥水剤組成物の撥水性が低下する傾向にある。
【0163】
乳化重合又は分散重合の媒体としては、水が好ましく、必要に応じて水と有機溶剤とを混合してもよい。このときの有機溶剤としては、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
【0164】
上記重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、又はレドックス系等の公知の重合開始剤を適宜使用できる。重合開始剤の含有量は、全単量体100質量部に対して、重合開始剤0.01~2質量部であることが好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲であると、重量平均分子量が10万以上である非フッ素系ポリマーを効率よく製造することができる。
【0165】
また、重合反応において、分子量調整を目的として、ドデシルメルカプタン、t-ブチルアルコール等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0166】
なお、分子量調整のためには重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加により所望の重量平均分子量を有する非フッ素系ポリマーを容易に得ることができる。
【0167】
重合反応の温度は、20℃~150℃が好ましい。温度が20℃未満であると、温度が上記範囲にある場合と比較して、重合が不十分になる傾向にあり、温度が150℃を超えると、反応熱の制御が困難になる場合がある。
【0168】
重合反応において、得られる非フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、上述した重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤の含有量の増減により調整することができ、105℃における溶融粘度は、多官能単量体の含有量、及び、重合開始剤の含有量の増減により調整することができる。なお、105℃における溶融粘度を低下させたい場合は、重合可能な官能基を2つ以上有する単量体の含有量を減らしたり、重合開始剤の含有量を増加させたりすればよい。
【0169】
乳化重合又は分散重合により得られるポリマー乳化液又は分散液における非フッ素系ポリマーの含有量は、組成物の貯蔵安定性及びハンドリング性の観点から、乳化液又は分散液の全量に対して10~50質量%とすることが好ましく、20~40質量%とすることがより好ましい。
【0170】
本実施形態の疎水性化合物は、撥水性能及び環境の面から、乳化補助剤又は分散補助剤にて乳化又は分散して用いることが好ましい。本実施形態の疎水性化合物を含む乳化液又は分散液は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0171】
本実施形態の疎水性化合物に、乳化補助剤又は分散補助剤として界面活性剤を加えて均一とし、そこに撹拌しながら徐々に水を添加していくことで乳化又は分散液を得ることができる。
【0172】
界面活性剤としては、従来公知の非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用することができる。乳化補助剤等の含有量は、本実施形態の疎水性化合物100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましく、20~30質量部であることが更に好ましい。乳化補助剤等の含有量が5質量部未満であると、疎水性化合物の乳化分散安定性が低下する傾向にある。乳化補助剤等の含有量が50質量部を超えると、本実施形態の撥水剤組成物の撥水性が低下する傾向にある。
【0173】
乳化又は分散の媒体としては、水が好ましく、必要に応じて水と有機溶剤とを混合してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテルなどのエーテル類等;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤とを混合する比率は特に限定されるものではない。また有機溶剤は、水分散液の作製途中あるいは作製後に減圧で留去しても構わないし、そのまま残しても構わない。
【0174】
得られた疎水性化合物の水分散液は、ホモミキサー(プライミクス(株)製)、ホモジナイザー(NIROSOAVI製、又はAPVGAULIN製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)、アルチマイザー(株式会社スギノマシン製)、スターバースト(株式会社スギノマシン製)などの高圧乳化機又は超音波乳化機等で粒子を均一化することもできる。
【0175】
本実施形態の撥水剤組成物には必要に応じてフッ素を含まない従来公知の非フッ素系撥水剤を加えることも可能である。この非フッ素系撥水剤としては、例えば、シリコーン系、パラフィン又はワックスなどの炭化水素化合物系、脂肪酸金属塩系又はアルキル尿素系などの撥水剤が挙げられる。
【0176】
また、本実施形態の撥水剤組成物には必要に応じて添加剤等を加えることも可能である。添加剤としては、架橋剤、抗菌防臭剤、難燃剤、帯電防止剤、柔軟剤、防皺剤等が挙げられる。
【0177】
本実施形態の撥水剤組成物が上記本実施形態の非フッ素系ポリマーを含む場合、撥水剤組成物は、上記本実施形態の疎水性化合物と、上記本実施形態の非フッ素系ポリマーとを混合することにより製造することができる。
【0178】
本実施形態の撥水剤組成物が上記本実施形態の非フッ素系ポリマーを含む場合、撥水剤組成物は、少なくとも、上記本実施形態に係る疎水性化合物を含む乳化液又は分散液と、上述した乳化重合又は分散重合により得られた非フッ素系ポリマーを含む乳化液又は分散液とを配合することにより、製造されてもよい。
【0179】
本実施形態の撥水剤組成物が上記本実施形態の非フッ素系ポリマーを含む場合、本実施形態の撥水剤組成物における疎水性化合物の含有量は、上記本実施形態に係る非フッ素系ポリマー100質量部に対して、30~300質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、70~150質量部であることがさらに好ましい。
【0180】
本実施形態の撥水剤組成物が上記本実施形態の非フッ素系ポリマーを含む場合、本実施形態の撥水剤組成物は、上記本実施形態に係る非フッ素系ポリマーを含む組成物と、上記本実施形態に係る疎水性化合物を含む組成物と、を個別にパッケージして組み合わせた2剤型の態様としてもよい。
【0181】
本実施形態の撥水性繊維製品は、繊維と、繊維上に付着した上記本実施形態の撥水剤組成物とを備える。
【0182】
本実施形態の撥水性繊維製品の製造方法について説明する。
【0183】
本実施形態の撥水性繊維製品は、繊維を上述した本実施形態の撥水剤組成物で処理することにより、繊維に撥水剤組成物を付着させることで得られる。かかる繊維としては特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。繊維の形態は、糸、布、不織布などのいずれの形態であってもよい。繊維は、繊維製品であってもよい。
【0184】
繊維を上記撥水剤組成物で処理する方法としては、例えば、上記撥水剤組成物を処理液とした、浸漬、噴霧、塗布等の加工方法が挙げられる。また、本実施形態の撥水剤組成物が水を含有する場合は、繊維に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。上記処理液は、上記処理液が上記本発明に係る非フッ素系ポリマーを含む場合、上記本発明に係る非フッ素系ポリマーと上記本発明に係る疎水性化合物とを含む組成物を用いて調製してもよく、上記本発明に係る非フッ素系ポリマーを含む組成物と上記本発明に係る疎水性化合物を含む組成物を用いて調製してもよい。上記処理液が上記本発明に係る非フッ素系ポリマーを含み、本実施形態の撥水剤組成物が2剤型である場合、繊維を処理する方法は、2剤を使用前に配合して得た処理液で処理してもよく、上記本発明に係る非フッ素系ポリマーを含む処理液で処理した後に、上記本発明に係る疎水性化合物を含む処理液で処理してもよく、その逆の順番で処理してもよい。
【0185】
本実施形態の撥水剤組成物の繊維への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、繊維100gに対して、撥水剤組成物の付着量が0.05~5gとなるように調整することが好ましく、0.1~3gとなるように調整することがより好ましい。撥水剤組成物の付着量が0.05g未満であると、繊維が十分な撥水性を発揮できない傾向にあり、5gを超えると、繊維の風合が粗硬となり、また経済的にも不利となる傾向がある。
【0186】
また、本実施形態の撥水剤組成物を繊維に付着させた後は、適宜熱処理することが好ましい。温度条件は特に制限はないが、本実施形態の撥水剤組成物を用いると、100~130℃の温和な条件により繊維に十分良好な撥水性を発現させることができる。温度条件は130℃以上(好ましくは200℃まで)の高温処理であってもよいが、かかる場合は、フッ素系撥水剤を用いた従来の場合よりも処理時間を短縮することが可能である。
【0187】
特に、耐久撥水性を向上させたい場合には、本実施形態の撥水剤組成物で繊維を処理する上述の工程と、メチロールメラミン及び/又はイソシアネート基を2個以上有する化合物若しくはそのブロック化物に代表される架橋剤で繊維を処理してこれを加熱する工程とを含む方法によって、繊維を撥水加工することが好ましい。
【0188】
イソシアネート基を2個以上有する化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート及びこれらのイソシアヌレート環である三量体、トリメチロールプロパンアダクト体が挙げられる。これらのブロック化物を得るために用いられるブロック化剤としては、前述と同じものが挙げられる。上述の架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0189】
架橋剤は、例えば、架橋剤を有機溶剤に溶解するか水に乳化分散させた処理液で、被処理物(繊維)を処理(例えば、浸漬、噴霧、塗布など)し、被処理物に付着した処理液を乾燥する方法により、被処理物に付着させることができる。そして、被処理物に付着した架橋剤を加熱することにより、架橋剤と被処理物及び本実施形態の撥水剤組成物との反応を進行させることができる。架橋剤の反応を十分に進行させてより効果的に洗濯耐久性を向上させるために、このときの加熱は110~180℃で1~5分間行うのがよい。架橋剤の付着及び加熱の工程は、上述の本実施形態の撥水剤組成物で処理する工程と同時に行ってもよい。同時に行う場合、例えば、本実施形態の撥水剤組成物及び架橋剤を含有する処理液を被処理物に付着させ、水を除去した後、更に、被処理物に付着している架橋剤を加熱する。撥水加工工程の簡素化や、熱量の削減、経済性を考慮した場合、本実施形態の撥水剤組成物の処理工程と同時に行うことが好ましい。
【0190】
また、架橋剤を過度に使用すると風合を損ねるおそれがある。上記架橋剤は、繊維100gに対して0.1~5gの量で用いることが好ましく、0.1~2gの量で用いることが特に好ましい。
【0191】
こうして得られる本実施形態の撥水性繊維製品は、撥水性及び耐久撥水性(特に、耐洗濯性)に優れ、また、上記撥水性繊維製品はフッ素系の化合物を使用していないことから、環境にやさしいものとすることができる。
【0192】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0193】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0194】
<疎水性化合物の合成>
表1に示される化合物(表中、数値はモル比を示す。)を含む混合液を、以下に示す手順により重合して、疎水性化合物を得た。合成例及び比較合成例におけるNCO%とは、遊離イソシアネート基含有量のことであり、以下の測定方法で測定した値を示す。
(NCO%の測定)
反応物0.3gを三角フラスコに採取し、0.1Nジブチルアミントルエン溶液10mlを配合し、溶解させた。次いでブロモフェノールブルー液を数滴加え、0.1N塩酸メタノール溶液で滴定し、下記式によりNCO%を求めた。
NCO%=(a-b)×0.42×k/x
a:0.1Nジブチルアミントルエン溶液10mlのみを滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量(ml)
b:反応中の組成物を滴定した場合の0.1N塩酸メタノール液の滴定量(ml)
k:0.1N塩酸メタノール液のファクター(濃度補正係数)
x:サンプリング量(g)
【0195】
(合成例1)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン206.74g、ステアリン酸469.87g、p-トルエンスルホン酸、3.4gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0196】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を101.12gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート23.78g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒(ネオスタンU-600:日東化成株式会社製)0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応は、NCO%が0.64%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.36g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(HLC-8320GPC(TOSOHCORPORATION))を用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、11700であった。
【0197】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、Wがエステル基、R32がヘプタデシル基、Vがヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後、反応せずに残っているイソシアネート基を、3,5-ジメチルピラゾールでブロックし、得られた化合物である。
【0198】
(合成例2)
1000mlフラスコにトリメチロールプロパン255.88g、ステアリン酸542.51g、p-トルエンスルホン酸、1.6gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0199】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を87.83gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート37.11g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0.69%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.37g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、17500であった。
【0200】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がトリメチロールプロパンから3つのヒドロキシ基を除いた残基、dが1、eが2、Wがエステル基、R32がヘプタデシル基、Vがヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後、反応せずに残っているイソシアネート基を、3,5-ジメチルピラゾールでブロックし、得られた化合物である。
【0201】
(合成例3)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン206.74g、ステアリン酸469.87g、p-トルエンスルホン酸、3.4gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0202】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を114.33gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート22.25g、メチルエチルケトン27g、ビスマス系触媒0.3gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0%になるまで行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、12900であった。
【0203】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、Wがエステル基、R32がヘプタデシル基、Vがヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させて得られた化合物である。
【0204】
(合成例4)
300mlフラスコにジトリメチロールプロパン28.52g、ステアリルイソシアネート67.32g、メチルエチルケトン23.4g、ビスマス系触媒0.06gを入れ、80℃まで昇温し5時間反応を行なった。
【0205】
次に、ヘキサメチレンジイソシアネート21.1gを入れ、さらに80℃で5時間反応を行なった。反応はNCO%が0.43%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを1.6g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、17500であった。
【0206】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、Wがウレタン基、R32がヘプタデシル基、Vがヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させて得られた化合物である。
【0207】
(合成例5)
1000mlフラスコにジトリメチロールプロパン250.34g、ラウリン酸400.6g、p-トルエンスルホン酸、3.3gを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで昇温し、その後昇温速度約0.4℃/分で窒素気流下140-190℃で5時間脱水反応を行なった。窒素流量は、毎分5mlである。反応終了後、合成物の酸価を測定した。酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0208】
次に、300mlフラスコに上記の反応物を93.94gとり、ヘキサメチレンジイソシアネート28.27g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒0.125gを入れ、80℃で7時間反応を行なった。反応はNCO%が0.63%になるまで行った。反応後40℃まで降温し、次いで、3,5-ジメチルピラゾールを2.79g入れて40℃にて1時間反応を行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、13500であった。
【0209】
得られた疎水性化合物は、上記一般式(I-1)においてR31がジトリメチロールプロパンから4つのヒドロキシ基を除いた残基、dが2、eが2、Wがエステル基、R32がウンデシル基、Vがヒドロキシ基である多官能化合物と、上記一般式(II)においてR33がへキシレン基、fが2であるイソシアネート化合物とを、反応させ、その後未反応のイソシアネート基を3,5-ジメチルピラゾールでブロックして得られた化合物である。
<非フッ素系ポリマー分散液の調整>
表2に示される組成(表中、数値は(g)を示す。)を有する混合液を、以下に示す手順により重合して、非フッ素系ポリマー分散液を得た。
【0210】
(合成例6)
500mL耐圧フラスコに、アクリル酸ステアリル50g、メタクリル酸ステアリル30g、アクリル酸ベヘニル10g、ノイゲンXL-100(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=14.7)2g、ノイゲンXL-60(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=12.5)2g、アーカードT-28(ライオン株式会社製、ステアリルジメチルアミン塩酸塩)2g、トリプロピレングリコール25g及び水179gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.25gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃にて6時間ラジカル重合させて、非フッ素系ポリマーを30質量%含む非フッ素系ポリマー分散液を得た。
【0211】
(合成例7)
500mL耐圧フラスコに、アクリル酸ステアリル50g、メタクリル酸ステアリル30g、アクリル酸ベヘニル7g、ラテムルPD-420(花王株式会社製、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB=12.6)2g、ラテムルPD-430(花王株式会社製、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB=14.4)2g、アーカードT-28(ライオン株式会社製、ステアリルジメチルアミン塩酸塩)2g、トリプロピレングリコール25g及び水179gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.25gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃にて6時間ラジカル重合させて、非フッ素系ポリマーを30質量%含む非フッ素系ポリマー分散液を得た。
【0212】
(合成例8)
500mL耐圧フラスコに、アクリル酸ステアリル42g、メタクリル酸ステアリル25g、ラテムルPD-420(花王株式会社製、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB=12.6)2g、ラテムルPD-430(花王株式会社製、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB=14.4)2g、アーカードT-28(ライオン株式会社製、ステアリルジメチルアミン塩酸塩)2g、トリプロピレングリコール25g及び水179gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.25gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した.60℃を維持しながら,クロロエチレン20gを3時間かけて導入しラジカル重合させた。その後60℃にて3時間重合させて、非フッ素系ポリマーを30質量%含む非フッ素系ポリマー分散液を得た。
【0213】
なお、合成例6~8で得られたポリマー分散液中の各ポリマーは、ガスクロマトグラフ(GC-15APTF、(株)島津製作所製)により、いずれも全単量体の98%以上が重合していることが確認された。
【0214】
(比較合成例1)
300mlフラスコに1,4-ブタンジオール43.1g、ヘキサメチレンジイソシアネート81.85g、メチルエチルケトン25g、ビスマス系触媒0.06gを入れ、80℃で5時間反応を行なった。反応はNCO%が0%になるまで行い、疎水性化合物を得た。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、得られた疎水性化合物の重量平均分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は、14000であった。
【0215】
<疎水性化合物の分散液の調製>
500mLステンレス容器に、合成例1~5及び比較合成例1で得られた疎水性化合物40g、メチルエチルケトン50g、デカグリン1-L(非イオン界面活性剤、第一工業製薬製)5g、デカグリン1-SV(非イオン界面活性剤、第一工業製薬製)5g及びアーカードT-28(カチオン界面活性剤、ライオンスペシャリティケミカルズ製)5gを入れ、50℃に加熱して溶解させた。次いで80℃の熱水295gを加え、超音波乳化機US-600E(株式会社日本精機製作所)を使用して80℃を維持しながら20分間乳化した。その後冷却し、疎水性化合物の10%分散液を得た。
【0216】
<撥水剤組成物の調整>
(実施例1)
合成例1の疎水性化合物の分散液及び水を混合して、撥水剤組成物の分散液を調整した。撥水剤組成物の分散液は、疎水性化合物成分が10質量%になるよう調整した。
【0217】
(実施例2~10及び比較例1)
合成例1~5及び比較合成例1の疎水性化合物の分散液、合成例6~8の非フッ素系ポリマー分散液、並びに水を混合して、非フッ素系ポリマーと疎水性化合物とが表3及び4に示される組成(表中、各成分の数値は、疎水性化合物及び非フッ素系ポリマーの総量に占める、各成分の質量比を表す。)で含まれる撥水剤組成物の分散液を調整した。撥水剤組成物の分散液は、非フッ素系ポリマー成分と疎水性化合物成分との合計が10質量%になるよう調整した。
【0218】
(比較例2)
合成例8の非フッ素系ポリマー分散液及び水を混合して、撥水剤組成物の分散液を調整した。撥水剤組成物の分散液は、非フッ素系ポリマー成分が10質量%になるよう調整した。
【0219】
(比較例3)
疎水性化合物の代わりにフッ素系撥水剤(NKガードS-33、日華化学株式会社製)を用い、非フッ素系ポリマーを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、撥水剤組成物の分散液を調整した。
【0220】
(撥水性繊維製品の作成)
実施例1~10及び比較例1~3の撥水剤組成物の分散液が12質量%、NKアシスト FU(架橋剤、日華化学株式会社製、ブロックドイソシアネート)が0.5質量%、ナイスポールFE-26(帯電防止剤、日華化学製)が0.5質量%及びテキスポートBG-290(浸透剤、日華化学製)が0.5質量%となるように水で希釈した処理液に、染色を行ったポリエステル100%布又はナイロン100%布を浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で2分間乾燥した。更にポリエステル100%布においては180℃で30秒間熱処理をし、ナイロン100%布においては170℃で30秒間熱処理を行い、撥水性繊維製品を得た。
【0221】
(撥水性繊維製品の撥水性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法と同様の方法でシャワー水温を20℃として上記の撥水性繊維製品の撥水性を評価した。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。評価結果を表3及び4に示す。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0222】
(撥水性繊維製品の耐久撥水性評価)
上記の撥水性繊維製品に対して、JIS L 0217(1995)の103法による洗濯を10回(L-10)行い、風乾後の撥水性を上記撥水性評価方法と同様に評価した。評価結果を表3及び4に示す。
【0223】
(撥水性繊維製品の風合評価)
上記の撥水性繊維製品の風合を、ハンドリングにて下記に示す5段階で評価した。評価結果を表3及び4に示す。
1:硬い ~ 5:柔らかい
【0224】
(撥水性繊維製品の経時水浸み性評価)
上記のポリエステル100%の撥水性繊維製品を水平で平坦な場所に置き、撥水性繊維製品に200μLの水滴を3滴ずつ滴下して、室温にて放置した。10分、30分、60分、120分後に繊維上に水滴状態で残っている液滴数を評価結果とした。評価結果を表3及び4に示す。
【0225】
【表1】
【0226】
【表2】

【0227】
【表3】

【0228】
【表4】
【0229】
実施例1~10の撥水剤組成物で処理した撥水性繊維製品は、フッ素を含まないにもかかわらず、フッ素系撥水剤と同等の撥水性を発現しており、耐久撥水性に優れることが確認された。