(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】構造用接着剤用の硬化剤配合物における構成単位としてのAPCHA
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20220610BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20220610BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220610BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220610BHJP
C09J 109/02 20060101ALI20220610BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20220610BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J163/02
C09J11/06
C09J11/04
C09J109/02
C08G59/50
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2017246126
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリーケ テオドラ ファン ホルコム
(72)【発明者】
【氏名】エゼ ヤン テイスマ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】東ドイツ国経済特許第130580(DD,A1)
【文献】特開2017-095703(JP,A)
【文献】特表2014-532805(JP,A)
【文献】特開平05-059157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 59/50
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分;および
アミン配合物を含む硬化剤成分
の反応生成物を含む接着剤組成物であって、前記アミン配合物が、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分と、
少なくとも1つのポリアミド、
少なくとも1つの環式脂肪族アミン、
少なくとも1つのポリエーテルジアミ
ンおよび
少なくとも1つのエーテルジアミ
ンからなる第二アミン成分とを含み、ここで第一アミン成分が、前記アミン配合物の5質量%~50質量%である、前記接着剤組成物。
【請求項2】
前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリアミドを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリアミドが、前記アミン配合物の10質量%~60質量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記アミン配合物が、少なくとも1つの環式脂肪族アミンを含み、ここで少なくとも1つの前記環式脂肪族アミンが、前記アミン配合物の10質量%~40質量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリエーテルジアミンが、前記アミン配合物の10質量%~50質量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記アミン配合物が、少なくとも1つのエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記エーテルジアミンが、前記アミン配合物の30質量%までである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
第一アミン成分が、前記アミン配合物の10質量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリアミドを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリアミドが、前記アミン配合物の40質量%である、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つの環式脂肪族アミンを含み、ここで少なくとも1つの前記環式脂肪族アミンが、前記アミン配合物の15質量%である、請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つのポリエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリエーテルジアミンが、前記アミン配合物の20質量%である、請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つのエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記エーテルジアミンが、前記アミン配合物の15質量%である、請求項9に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルが、前記エポキシ樹脂成分の40質量%~90質量%である、請求項11に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記アミン配合物が、前記硬化剤成分の10質量%~60質量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂成分と前記硬化剤成分との質量比が、100:65~100:85である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記硬化剤成分がさらに、タルク、ヒュームドシリカ、アルミニウム、およびアミンを末端基とするブタジエン-アクリロニトリルコポリマーの群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
第一部分と第二部分との間に配置された接着剤組成物によって、第二部分に接着された第一部分
を含む風力タービンブレードであって、
前記接着剤組成物が、
少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分;および
アミン配合物を含む硬化剤成分
の反応生成物を含み、前記アミン配合物が、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分と、少なくとも1つのポリアミド、少なくとも1つの環式脂肪族アミン、少なくとも1つのポリエーテルジアミンおよび少なくとも1つのエーテルジアミンからなる第二アミン成分とを含み、ここで第一アミン成分が、前記アミン配合物の5質量%~50質量%である、前記風力タービンブレード。
【請求項17】
前記風力タービンブレードがさらに、ブレード長さを含み、ここで前記ブレード長さが30mより大きい、請求項16に記載の風力タービンブレード。
【請求項18】
風力タービンブレードを形成する方法であって、
(a)少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分を含むアミン配合物を含む硬化剤成分と混合して、接着剤組成物を形成する工程;
(b)前記接着剤組成物を風力タービンブレードの第一部分に塗布する工程;
(c)工程(b)の後に、前記風力タービンブレードの第一部分を前記風力タービンブレードの第二部分に、前記風力タービンブレードの第一部分に塗布された前記接着剤組成物に前記第二部分を接触させることによって、結合する工程;
(d)前記風力タービンブレードの第一部分および第二部分を一緒に十分な期間にわたってプレスして、前記接着剤組成物を硬化させる工程
を含
み、
ここで、前記接着剤組成物が、
少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分;および
アミン配合物を含む硬化剤成分
の反応生成物を含み、前記アミン配合物が、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分と、少なくとも1つのポリアミド、少なくとも1つの環式脂肪族アミン、少なくとも1つのポリエーテルジアミンおよび少なくとも1つのエーテルジアミンからなる第二アミン成分とを含み、ここで第一アミン成分が、前記アミン配合物の5質量%~50質量%である、風力タービンブレードを形成する方法。
【請求項19】
工程(b)がさらに、前記接着剤組成物を前記風力タービンブレードの第二部分に塗布することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)の後に、前記風力タービンブレードの第一部分および第二部分を加熱して、前記硬化プロセスを促進することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用接着剤組成物およびより詳細には2成分(2K)構造用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、風力タービンは、環境的に安全で比較的安価な代替エネルギー源として、ますます注目されている。信頼性が高く、効率的な風力タービンを開発することに、かなりの労力が費やされている。一般に、風力タービンは、複数の風力タービンブレードを有するロータを包含する。該風力タービンブレードは、風に応じて回転力を提供するように構成される細長いエアフォイルとして成形される。風力タービンブレードを製造する現在のアプローチの1つは、各ブレードを、2つのハーフシェルおよびスパーとして、または一体型スパーを有する2つのハーフシェルとして製造することである。双方の場合に、2つのハーフシェルを、それらのエッジに沿って接着材料で互いに接着して、完全なブレードを形成する。典型的には、該接着材料は、周囲条件下で混合した際に化学的に反応(すなわち、架橋)して、該ハーフシェルを互いに接着させる2つの成分を包含する、2成分(2K)構造用接着材料である。
【0003】
該風力タービンブレードのハーフシェルを結合するのに利用される接着剤は、使用中の各ブレードにかかる遠心力に耐えられなければならず、かつ該ブレードの寿命にわたって不断の熱サイクルおよび環境的な攻撃下で接着強さを維持できなければならない。加えて、これらの接着材料は、比較的塗布しやすいべきである。したがって、2K接着剤にとって、ポットライフは、重要な考慮事項である。接着剤技術における当業者が認識するような、用語“ポットライフ”は、接着剤組成物が、接着されうる基材材料に塗布できるように十分に液体である期間として定義されうる。より短いポットライフを有する接着材料は、その2成分がより急速に反応するものであり、かつより長いポットライフを有する接着材料は、その2成分がよりゆっくりと反応するものである。
【0004】
特に、より長いブレードへの需要が増大するにつれて、考慮すべき別の側面は、オープンタイムである。用語“オープンタイム”は、一方のハーフシェル上への該接着剤の塗布と、その接着剤ボンドライン上への第二のハーフシェルの配置との間の期間として定義されうる。長いオープンタイム後でさえも良好な接着性を提供する接着材料が好ましい。考慮すべき別の側面は、該ハーフシェルが互いに接着される環境条件、すなわち温度および湿度である。理想的には、接着材料は、幅広い範囲の条件にわたって堅牢(robust)であり、かつ不利な環境条件に感受性ではない。
【0005】
風力タービンブレードの製造者は、より大きなブレードへの需要のために挑戦し続けている。かつては、最も大きい稼働中の風力タービンは、100m未満のロータ直径を有していた。該ロータ直径は、そのブレード長さの概ね2倍であるので、これらのロータ上の最大のブレードは、50m未満であった。目下、一部のオンショア風力タービンのロータ直径は、130mの大きさであり、かつ一部のオフショアタービンは、170mのロータ直径を有する。しかしながら、該ブレードがより長くなるにつれて、現在入手可能な接着剤は、加工上の問題を引き起こす。
【0006】
風力タービンブレードのシェルを接着するためのエポキシ系接着剤の使用は周知である。典型的な関連技術は、例えば、独国特許出願公開第102011113395号明細書(DE102011113395)および米国特許出願公開第2012/128499号明細書(US2012128499)に見出すことができる。先行技術の接着剤は、十分に長いポットライフを有しておらず、長いオープンタイムに感受性であり、および/またはブレードサイズの増加により引き起こされる要求に適合するために、高められた温度での適切な反応性を有していない。
【0007】
図1は、190のエポキシ当量(EEW)を有するビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)型液状エポキシ樹脂を有する標準の風力ブレード接着剤の参考エポキシ硬化剤を用いて生じた引張データを示す。通常の条件下(オープンタイムなし)で、2つの基材を引き離すのに必要な力は、約1%の伸びで8MPaであった。同じ硬化剤および基材を用いるが、しかし23℃および70%の相対湿度で1時間のオープンタイムでは、該基材を引き離すのに必要な力は、単に0.3%の伸びで2MPaに低下した(75%減少)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102011113395号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/128499号明細書
【文献】国際公開第2009/089145号
【文献】米国特許第2,890,194号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Y. Tanaka, “Synthesis and Characteristics of Epoxides”, C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記で議論した欠点のために、ブレード製造者は、2つの該シェルの間の該接着剤が破損するようなブレードの破損に直面していた。したがって、長いポットライフ、長いオープンタイム後の良好な接着能力を有し、かつ様々な環境条件下で有効な接着剤組成物が当工業界において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、十分な接着強さを提供し、塗布しやすく、長いオープンタイム条件下で使用される際に感受性ではなく、かつ基材材料、例えば風力タービンブレードを互いに接着するのに使用するために十分に長いポットライフを有する、接着剤組成物に関する。
【0012】
本発明の態様において、該接着剤組成物は、エポキシ樹脂成分を含み、該成分は、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン(APCHA)を含む硬化剤成分で硬化される。
【0013】
本発明は以下に、添付の図面と共に説明され、ここで、同様の数字は同様の要素を表す:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な先行技術の硬化剤で硬化される接着剤組成物を用いて製造した風力ブレードの引張強さを示すグラフ。
【
図2】本発明の配合物の組成および性質をまとめた表。
【
図3】硬化剤配合物UMX-126Dで硬化される接着剤組成物を用いて製造した風力ブレードの引張強さを示すグラフ。
【
図4】本発明の硬化剤の好ましい実施態様において使用されるアミン配合物の組成を列挙した表。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、好ましい例示的な実施態様を単に提供するに過ぎず、かつ本発明の範囲、利用可能性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、好ましい例示的な実施態様の以下の詳細な説明は、当業者に、本発明の好ましい例示的な実施態様を実施することを可能にする説明を提供するものである。添付の請求の範囲に記載されているように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配列の多様な変更を行うことができる。
【0016】
特許請求の範囲において、請求の範囲に記載の方法工程を識別するのに、アルファベットが使用されてよい(例えばa、b、およびc)。これらのアルファベットは、該方法工程を参照するのを助けるために使用され、ならびに請求の範囲に順序が具体的に記載されていない限り、かつ請求の範囲に順序が具体的に記載されている範囲のみを除き、請求の範囲に記載の工程が実施される順序を指示することを意図するものではない。
【0017】
本発明は、構造用接着剤組成物およびより詳細には2K構造用接着剤組成物に関する。また、本発明は、エポキシ樹脂成分と、アミン系硬化剤組成物とを含む2K構造用接着剤組成物に関する。本発明の態様は、APCHAを含有するアミン配合物を含むアミン系硬化剤に関する。
【0018】
APCHAは、特定の望ましい特徴、例えば粘度および反応性、およびエポキシ樹脂での硬化後の良好な接着性能および熱的性能を有するアミン硬化剤である。これらの特徴およびそのユニークな化学は、構造用接着剤用、特に風力ブレード接着剤用の硬化剤配合物におけるAPCHAの使用を可能にする。APCHAは、粘度上昇、作業時間、完全硬化、相溶性および接着性能に伴う問題を解決し、これらの問題は、通常使用されるアミン配合物で対処することができない。
【0019】
上記の、性能の損失の問題は、そのエポキシ系の組成、特に該硬化剤配合物の組成を変更することによって対処される。風力ブレード硬化剤は、相溶性の問題が生じうるほど典型的な組成である。APCHAは、その化学構造のために、これらの問題を生じない。意外なことに、硬化剤配合物は、APCHAを用いて設計できることで、良好な接着性能を提供するだけではなく、構造用接着剤の硬化剤配合物として良好な一般性能も有する。
【0020】
当工業界において公知であるように、エポキシ系は、エポキシ樹脂成分および硬化剤成分を含む。任意の適した配合物を、該エポキシ樹脂成分に使用することができる。DGEBA型液状エポキシ樹脂が特に適していることが見出された。適したエポキシ樹脂成分の一例は、DGEBA型液状エポキシ樹脂(EEW 190)64%、タルク34.5%、およびヒュームドシリカ1.5%からなる。エポキシ樹脂成分と硬化剤成分との比は、好ましくは、質量で100/65~100/85の範囲および、より好ましくは、質量で100/70~100/80の範囲である。100/76の質量比は、
図2の配合物UMX-126Dで特に良好に作用することが見出された。
【0021】
例示的な一実施態様において、該硬化剤成分の該アミン配合物は、APCHA、少なくとも1つのポリアミド、少なくとも1つの環式脂肪族アミン、少なくとも1つのポリエーテルジアミン、および少なくとも1つのエーテルジアミンを含む。これらの成分のそれぞれについての許容される範囲(質量%として表される)は、
図4の“範囲”欄に示される。好ましい範囲(質量%として表される)は、
図4の“好ましい範囲”欄に示される。アミン官能基を有する反応性液状ポリマー、例えばアミンを末端基とするブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、例えばHycar ATBNX16は、任意に、該硬化剤成分中に存在してよい。しかしながら、そのようなコポリマーは、本開示により定義されるようなアミン配合物の一部ではない。
【0022】
当該開示の適したポリアミドは、Ancamide(登録商標) 3030 (A3030)を包含するが、しかしこれに限定されない。当該開示の適した環式脂肪族アミンは、4,4′-メチレンビスシクロヘキサンアミン(PACM)を包含するが、しかしこれに限定されない。当該開示の適したポリエーテルジアミンは、α-(2-アミノメチルエチル)ω-(2-アミノメチルエトキシ)(Jeffamine(登録商標) 230、Jeffamine(登録商標) D-400)を包含するが、しかしこれらに限定されない。当該開示の適したエーテルジアミンは、イソトリデシルオキシプロピル-1,3-ジアミノプロパン(Tomamine DA-17)を包含するが、しかしこれに限定されない。Ancamide(登録商標)はEvonik Corp.の登録商標である。Jeffamine(登録商標)はHuntsman Petrochemical LLCの登録商標である。
【0023】
例示的な硬化剤成分は、配合物UMX-126Dを含む(
図4を参照)。この硬化剤成分は、次のものからなる:配合物UMX-126D(36質量%);Hycar ATBNX16(11%);アルミニウム(15.5%);タルク(36%);ヒュームドシリカ(1.5%)。
【0024】
実験データは、硬化剤配合物におけるAPCHAの使用が、不利な条件下での長いオープンタイム後の性能の損失の問題に実際に対処したことを証明している。
図3は、
図2の配合物UMX-126Dを用いて生じた引張データを示す。そのグラフは、本発明に基づく少なくとも1つの配合物、すなわちUMX-126Dが、接着性能の有意な改善を示したことを示している。特に、1時間暴露した(オープンタイム)後に、その絶対値がより高いことが見出され、ならびに性能の低下は、
図1に示された先行技術の配合物における性能の75%低下と比べて、著しく少なかった(60%)。
【0025】
エポキシ樹脂成分
該エポキシ樹脂成分は、単一樹脂からなっていてよく、または相互に相溶性のエポキシ樹脂の混合物であってよい。該エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAおよびビスフェノールF樹脂を包含してよいが、しかしこれらに限定されない。本明細書で利用されるような、多官能性エポキシ樹脂は、1分子あたり2個以上の1,2-エポキシ基を有する化合物を説明する。このタイプのエポキシド化合物は、当業者に周知であり、かつY. Tanaka, “Synthesis and Characteristics of Epoxides”, C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)に記載されており、これは参照により全面的に本明細書に取り込まれる。
【0026】
該エポキシ樹脂成分における使用に適したエポキシ樹脂の1つの種類は、多価フェノールのグリシジルエーテルを含み、これは二価フェノールのグリシジルエーテルを包含する。例証となる例は、次のもののグリシジルエーテルを包含するが、しかしこれらに限定されない:レソルシノール、ヒドロキノン、ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジフルオロフェニル)-メタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールAとして商業的に公知)、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-メタン(ビスフェノールFとして商業的に公知、かつ多様な量の2-ヒドロキシフェニル異性体を含有してよい)等、またはそれらの任意の組合せ。付加的に、式(1):
【化1】
[式中、mは、0~25であり、かつRは、二価フェノールの二価炭化水素基である]の構造のアドバンス法による(advanced)二価フェノール、例えば上記で列挙されたそれらの二価フェノールも、当該開示において有用である。
【0027】
式(1)による材料は、二価フェノールおよびエピクロロヒドリンの混合物を重合させることによるか、または該二価フェノールのジグリシジルエーテルと該二価フェノールの混合物をアドバンス法に供することにより、製造することができる。任意の所与の分子中でmの値が整数であるのに対して、該材料は常に、必ずしも整数ではないmの平均値により特徴付けることができる混合物である。0~約7の平均値mを有する高分子材料を、当該開示の一態様において使用することができる。他の実施態様において、該エポキシ成分は、2,2′-メチレンジアニリン、4,4′-メチレンジアニリン、m-キシレンジアニリン、ヒダントイン、およびイソシアナートの1つ以上からのポリグリシジルアミンであってよい。
【0028】
該エポキシ樹脂成分は、環式脂肪族(脂環式)エポキシドであってよい。適した環式脂肪族エポキシドの例は、ジカルボン酸の環式脂肪族エステルのジエポキシド、例えばビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサラート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジパート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジパート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド;リモネンジエポキシド;ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメラート;ジシクロペンタジエンジエポキシド;および適した他の環式脂肪族エポキシドを包含する。ジカルボン酸の環式脂肪族エステルの適した他のジエポキシドは、例えば、国際公開第2009/089145号(WO 2009/089145 A1)に記載されており、これは参照により全面的に本明細書に取り込まれる。
【0029】
他の環式脂肪族エポキシドは、3,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、例えば3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート;3,3-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシラート;6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート;3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシル-メチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシラートを包含する。適した他の3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートは、例えば、米国特許第2,890,194号明細書に記載されており、これは参照により全面的に本明細書に取り込まれる。他の実施態様において、該エポキシ成分は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラヒドロフランからのポリオールポリグリシジルエーテルまたはその組合せを包含してよい。
【0030】
別の態様において、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルであるエポキシノボラック樹脂は、当該開示に従って多官能性エポキシ樹脂として使用することができる。さらに別の態様において、少なくとも1つの該多官能性エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAの、アドバンス法によるかまたはより高分子量の変型、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、またはそれらの任意の組合せである。DGEBAのより高分子量の変型または誘導体は、アドバンス法(advancement process)により製造され、ここで、過剰のDGEBAがビスフェノールAと反応して、エポキシを末端基とする生成物を生じる。そのような生成物のエポキシ当量(EEW)は、約450~3000またはそれ以上にわたっている。これらの生成物は室温で固体であるので、それらはしばしば固体エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0031】
DGEBAまたはアドバンス法によるDGEBA樹脂は、それらの低コストと一般に高い性能特性との組合せのために構造用配合物にしばしば使用される。約174~約250、およびより一般的に約185~約195にわたるEEWを有するDGEBAの市販グレードは、容易に入手可能である。これらの低い分子量では、該エポキシ樹脂は液体であり、かつしばしば液状エポキシ樹脂と呼ばれる。液状エポキシ樹脂のたいていのグレードが、少しばかり重合していることは、当業者により理解される、それというのも、純粋なDGEBAは、174のEEWを有するからである。250~450のEEWを有する樹脂、またアドバンス法により一般に製造されるものは、半固体エポキシ樹脂と呼ばれる、それというのも、それらは、室温で固体と液体との混合物だからである。一般に、約160~約750の固形物を基準とするEEWを有する多官能性樹脂が、当該開示において有用である。別の態様において、該多官能性エポキシ樹脂は、約170~約250の範囲のEEWを有する。
【0032】
本発明の態様は、例えば、次のとおりである:
<1> 少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と、アミン配合物を含む硬化剤成分との反応生成物を含む接着剤組成物であって、前記アミン配合物が、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分と、ポリアミド、環式脂肪族アミン、ポリエーテルジアミン、およびエーテルジアミンの群から選択される少なくとも1つからなる第二アミン成分とを含む、前記接着剤組成物。
<2> 第一アミン成分が、前記アミン配合物の5質量%~50質量%である、<1>に記載の接着剤組成物。
<3> 第一アミン成分が、前記アミン配合物の5質量%~15質量%である、<1>に記載の接着剤組成物。
<4> 前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリアミドを含む、<2>から<3>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<5> 少なくとも1つの前記ポリアミドが、前記アミン配合物の10質量%~60質量%である、<4>に記載の接着剤組成物。
<6> 少なくとも1つの前記ポリアミドが、前記アミン配合物の30質量%~50質量%である、<4>に記載の接着剤組成物。
<7> 前記アミン配合物が、少なくとも1つの環式脂肪族アミンを含む、<2>から<3>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<8> 少なくとも1つの前記環式脂肪族アミンが、前記アミン配合物の10質量%~40質量%である、<7>に記載の接着剤組成物。
<9> 少なくとも1つの前記環式脂肪族アミンが、前記アミン配合物の10質量%~20質量%である、<7>に記載の接着剤組成物。
<10> 前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリエーテルジアミンを含む、<2>から<3>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<11> 少なくとも1つの前記ポリエーテルジアミンが、前記アミン配合物の10質量%~50質量%である、<10>に記載の接着剤組成物。
<12> 少なくとも1つの前記ポリエーテルジアミンが、前記アミン配合物の10質量%~30質量%である、<10>に記載の接着剤組成物。
<13> 前記アミン配合物が、少なくとも1つのエーテルジアミンを含む、<2>から<3>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<14> 少なくとも1つの前記エーテルジアミンが、前記アミン配合物の30質量%までである、<13>に記載の接着剤組成物。
<15> 少なくとも1つの前記エーテルジアミンが、前記アミン配合物の10質量%~20質量%である、<13>に記載の接着剤組成物。
<16> 第一アミン成分が、前記アミン配合物の10質量%である、<1>に記載の接着剤組成物。
<17> 前記アミン配合物が、少なくとも1つのポリアミドを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリアミドが、前記アミン配合物の40質量%である、<16>に記載の接着剤組成物。
<18> 前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つの環式脂肪族アミンを含み、ここで少なくとも1つの前記環式脂肪族アミンが、前記アミン配合物の15質量%である、<17>に記載の接着剤組成物。
<19> 前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つのポリエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記ポリエーテルジアミンが、前記アミン配合物の20質量%である、<18>に記載の接着剤組成物。
<20> 前記アミン配合物がさらに、少なくとも1つのエーテルジアミンを含み、ここで少なくとも1つの前記エーテルジアミンが、前記アミン配合物の15質量%である、<19>に記載の接着剤組成物。
<21> 少なくとも1つの前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを含む、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<22> 前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルが、前記エポキシ樹脂成分の40質量%~90質量%である、<21>に記載の接着剤組成物。
<23> 前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルが、前記エポキシ樹脂成分の55質量%~75質量%である、<21>に記載の接着剤組成物。
<24> 前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルが、前記エポキシ樹脂成分の64質量%である、<21>に記載の接着剤組成物。
<25> 前記アミン配合物が、前記硬化剤成分の10質量%~60質量%である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<26> 前記アミン配合物が、前記硬化剤成分の25質量%~45質量%である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<27> 前記アミン配合物が、前記硬化剤成分の36質量%である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<28> 前記エポキシ樹脂成分と前記硬化剤成分との質量比が、100:65~100:85である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<29> 前記エポキシ樹脂成分と前記硬化剤成分との質量比が、100:70~100:80である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<30> 前記エポキシ樹脂成分と前記硬化剤成分との質量比が、100:76である、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<31> 前記硬化剤成分がさらに、タルク、ヒュームドシリカ、アルミニウム、およびアミンを末端基とするブタジエン-アクリロニトリルコポリマーの群から選択される少なくとも1つを含む、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<32> 前記エポキシ成分がさらに、タルクおよびヒュームドシリカの群から選択される少なくとも1つを含む、<1>から<20>までのいずれかに記載の接着剤組成物。
<33> 第一部分と第二部分との間に配置された接着剤組成物によって、第二部分に接着された第一部分を含む風力タービンブレードであって、前記接着剤組成物が、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と、硬化剤成分との反応生成物を含み、ここで前記硬化剤成分が、第一アミン成分を含み、第一アミン成分がN-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる、前記風力タービンブレード。
<34> 前記風力タービンブレードがさらに、ブレード長さを含み、ここで前記ブレード長さが30mより大きい、<33>に記載の風力タービンブレード。
<35> 前記風力タービンブレードがさらに、ブレード長さを含み、ここで前記ブレード長さが50mより大きい、<33>に記載の風力タービンブレード。
<36> 風力タービンブレードを形成する方法であって、(a)少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分を、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミンからなる第一アミン成分を含むアミン配合物を含む硬化剤成分と混合して、接着剤組成物を形成する工程;(b)前記接着剤組成物を風力タービンブレードの第一部分に塗布する工程;(c)工程(b)の後に、前記風力タービンブレードの第一部分を前記風力タービンブレードの第二部分に、前記風力タービンブレードの第一部分に塗布された前記接着剤組成物に前記第二部分を接触させることによって、結合する工程;および(d)前記風力タービンブレードの第一部分および第二部分を一緒に十分な期間にわたってプレスして、前記接着剤組成物を硬化させる工程
を含む、風力タービンブレードを形成する方法。
<37> 工程(b)がさらに、前記接着剤組成物を前記風力タービンブレードの第二部分に塗布することを含む、<36>に記載の風力タービンブレードを形成する方法。
<38> 工程(c)の後に、前記風力タービンブレードの第一部分および第二部分を加熱して、前記硬化プロセスを促進する、<36>に記載の風力タービンブレードを形成する方法。
【実施例】
【0033】
図2は、APCHAを用いて開発したUMX-126B~Hで符号化した多数の硬化剤配合物を示す。該配合物を、DGEBAエポキシ樹脂と混合し、ゲル化時間、10Pa・sまでの時間、ゲル化点までの時間および示差走査熱量測定(DSC)について試験した。UMX-126B~Hで符号化したこれらの配合物は、風力ブレード接着剤の硬化剤の参考配合物(UMX-126A)に比べて良好な性能を示した。
【0034】
本発明の原理が、好ましい実施態様に関連して上記で説明されたが、この説明が、一例としてなされたものに過ぎず、かつ発明の範囲の限定するものではないことが明らかに理解されるべきである。