(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】水槽の天板への取付構造
(51)【国際特許分類】
A47B 77/06 20060101AFI20220610BHJP
E03C 1/33 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A47B77/06
E03C1/33 B
(21)【出願番号】P 2017247452
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 創
(72)【発明者】
【氏名】千品 喜嗣
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-291610(JP,A)
【文献】特開平10-183718(JP,A)
【文献】特開平08-056864(JP,A)
【文献】実公平03-016943(JP,Y2)
【文献】実開平05-010566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/06
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された天板と、
前記開口部に配置された水槽本体と、該水槽本体から外方に延出し前記天板の下面に沿って配置されたフランジ部と、を有する水槽と、
前記フランジ部の上面と前記天板の下面との間に接着剤が充填されて形成された接着層と、を備え、
前記フランジ部の上面には、下方に凹む凹部
、上方に突出する凸部
及び前記凹部と前記凸部との間に平面部が形成され、
前記接着層は、前記凹部
、前記平面部及び前記凸部を跨ぐ領域に形成されていることを特徴とする水槽の天板への取付構造。
【請求項2】
前記凹部は、平面視で、前記凸部よりも前記水槽本体側に形成されている請求項1に記載の水槽の天板への取付構造。
【請求項3】
前記凹部は、前記水槽本体の外縁に沿って全周に形成されている請求項1または2に記載の水槽の天板への取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽の天板への取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キッチンに設置されるシンク等の水槽は、カウンター等の天板にシリコン等の接着剤で固定されている。塗布された接着剤で形成される接着層の高さを確保するために、シンクのフランジ部の上面に所定の高さを有する目地材が設けられたり、フランジ部に上方に突出する突起が設けられたりしたものが提案されている(下記の特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-268828号公報
【文献】特開2006-291610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シンクのフランジ部と天板との間の接着層の端面は水に晒されやすく水が浸入しやすいため、フランジ部が天板に適切に接着されることが望まれている。一方、接着層の厚みを厚くして接着力を強くすれば、使用者から接着層が目立ってしまい見栄えが劣るという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接着力を確保しつつ、外観を良好とする水槽の天板への取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る水槽の天板への取付構造は開口部が形成された天板と、前記開口部に配置された水槽本体と、該水槽本体から外方に延出し前記天板の下面に沿って配置されたフランジ部と、を有する水槽と、前記フランジ部の上面と前記天板の下面との間に接着剤が充填されて形成された接着層と、を備え、前記フランジ部の上面には、下方に凹む凹部、上方に突出する凸部及び前記凹部と前記凸部との間に平面部が形成され、前記接着層は、前記凹部、前記平面部及び前記凸部を跨ぐ領域に形成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された水槽の天板への取付構造では、フランジ部の上面には上方に突出する凸部が形成されているため、フランジ部の上面と天板の下面との間に形成された接着層の厚さを確保することができる。また、フランジ部の上面に形成された下方に凹む凹部には接着剤が充填されているため、凹部では接着層の厚さが他の箇所より部分的に厚くなっている。よって、凸部で接着層の厚さが確保されつつ、凹部で接着層の厚さが一層厚くなっているため、接着力を確保することができる。
また、従来の凹部が設けられていないものよりも接着層の厚さを薄くしても、本発明では凹部内に接着剤が充填されているため、接着力が確保される。よって、接着層の厚さを薄くすることができるため、見えがかりが薄くなり、外観を良好とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る水槽の天板への取付構造では、前記凹部は、平面視で、前記凸部よりも前記水槽本体側に形成されていることが好ましい。
【0009】
このように構成された水槽の天板への取付構造では、凹部は平面視で凸部よりも水槽本体側に形成されているため、水に晒されやすい水槽本体側で確実に接着力を高めて、天板とフランジ部との間からの水の浸入を抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る水槽の天板への取付構造では、前記凹部は、前記水槽本体の外縁に沿って全周に形成されていてもよい。
【0011】
このように構成された水槽の天板への取付構造では、凹部は水槽本体の外縁に沿って全周に形成されているため、水槽本体の外縁の全周にわたって接着力を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水槽の天板への取付構造によれば、接着力を確保しつつ、外観を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水槽の天板への取付構造を備えたキッチンユニットを示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る水槽の天板への取付構造で取り付けられた水槽を斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るキッチンユニットについて、
図1から
図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水槽の天板への取付構造を示す斜視図である。
図1に示すように、水槽の天板への取付構造を備えたキッチンユニット100は、支持体となるキッチンキャビネット1と、キッチンキャビネット1上に設けられた天板2と、天板2に取り付けられたシンク(水槽)3と、を備える。
【0015】
以下の説明において、キッチンユニット100を使用する使用者がシンク3と向き合ったときの左右方向を幅方向と称する。キッチンユニット100が設置される床面に直交する方向を上下方向と適宜称する。また、幅方向及び上下方向と直交する方向を奥行方向と称し、使用者側を手前側、反対側を奥側と称する。また、平面視で、シンク3の中心側を内側、シンク3の中心側と反対側を外側と称する。
【0016】
キッチンユニット100には、抽斗、棚板、扉等を備える収納部11や加熱器具(図示省略)が適宜設けられる。
【0017】
天板2は、平板状に形成され、板厚方向を上下方向に向けて配置されている。天板2には、シンク3を取り付けるための取付開口部(開口部)21が形成されている。天板2は、セラミック、人造大理石、ステンレス等の材料から形成されている。
【0018】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示すように、天板2の取付開口部21の下端部には、傾斜面22が形成されている。本実施形態では、傾斜面22はいわゆるC面取りである。
【0019】
図3は、シンク3を斜め上方から見た斜視図である。
図3に示すように、シンク3は、上方に開口した凹形状をなすシンク本体(水槽本体)30と、シンク本体30の外縁部30aから外方に延出したフランジ部40と、を有する。
図2に示すように、シンク本体30は、天板2の取付開口部21に配置されている。フランジ部40は、天板2の下面2dに沿って配置されている。
【0020】
図3に示すように、シンク本体30は、底部31と、底部31の外縁部に立設された側壁32,33,34,35と、底部31に形成された排水口36と、底部31の上面よりも下方に窪み排水口36に排水を誘導する誘導溝37と、を有している。
【0021】
シンク3は、人造大理石、ステンレス等からなり一体成形されている。シンク本体30は、底部31及び側壁32,33,34,35により、ボウル状の凹部が形成されている。本実施形態では、底部31が平面視において幅方向に長い略長方形である例を示す。
【0022】
フランジ部40は、シンク本体30の外縁部(側壁32,33,34,35の上端部)30aから外方に向かって水平方向に延びるように連続して設けられている。フランジ部40は、平面視略矩形の枠形状をなしている。
【0023】
フランジ部40の上面40uには、下方に凹む凹溝41が形成されている。凹溝41は、シンク本体30の外縁部30aに沿って全周に形成されている。
【0024】
図2に示すように、凹溝41は、奥行方向(または幅方向)及び上下方向に沿う断面で、円弧状をなす曲面で形成されている。
【0025】
図3に示すように、フランジ部40の上面40uには、上方に突出する凸部42が形成されている。凸部42は、平面視で凹溝41よりも外側に配置されている。
【0026】
凸部42は、シンク本体30の外縁部30aに沿って間隔を有して複数形成されている。各凸部42は、平面視で、シンク本体30の外縁部30aに沿う方向に長い形状をなしている。
図2に示すように、凸部42は、奥行方向(または幅方向)及び上下方向に沿う断面で、円弧状をなす曲面で形成されている。本実施形態では、凹溝41及び凸部42は、シンク本体30及びフランジ部40とともに一体成形で成型されている。
【0027】
次に、シンク3の天板2への取付構造について説明する。
図2に示すように、天板2の下面2dとシンク3のフランジ部40の上面40uとの間には、シリコン等の接着剤が充填されて形成された接着層50が形成されている。接着層50は、凹溝41及び凸部42を跨ぐ領域Rに形成されている。本実施形態では、平面視で接着層50の内側(領域Rの内側)は、天板2の取付開口部21に達している。また、平面視で接着層50の外側(領域Rの外側)は、フランジ部40よりも外方まで設けられ、フランジ部40の外縁部40aと後述する裏打ち材61との間を充填している。接着層50は、フランジ部40の凹溝41の内部にも設けられている。フランジ部40の凸部42は天板2の下面2dに当接しており、フランジ部40の凸部42の上方には接着層50は設けられていない。
【0028】
天板2の下面2dには、木製の板等で形成された裏打ち材61が設けられている。裏打ち材61は、シンク3の外方に配置されている。
【0029】
裏打ち材61の下方には、固定部材63が設けられている。固定部材63は、裏打ち材61の下面に沿って配置されるスペーサー64と、スペーサー64に設けられた押え金具65と、を有している。固定部材63は、フランジ部40の外縁部40aに沿って間隔を有して複数設けられている。
【0030】
押え金具65は、スペーサー64の下面及び側面に沿って配置される固定部66と、固定部66から延び先端部67aがシンク3のフランジ部40の下面40dに当接配置された押え部67と、を有している。固定部66及びスペーサー64を貫通する螺子68が、裏打ち材61に螺合されている。これにより、フランジ部40は、押え部67から上方に押圧された状態で、天板2の下面2dに接着層50により接着されている。フランジ部40の下方には、ウレタン等の充填材70が充填されている。
【0031】
次に、上記のシンク3を天板2に取り付ける取付方法について説明する。
まず、予め、天板2の下面2dに裏打ち材61を取り付けておく。裏打ち材61が取り付けられた天板2を上下反転させて、天板2の上面を組み立て作業面(不図示)上に設置する。
【0032】
次に、天板2の面(キッチンユニット100として設置した状態での下面)2dで裏打ち材61が設けられていない部分(面2dが露出している部分)に、接着剤を塗布する。接着層50にシンク3のフランジ部40が載るように、天板2上にシンク3を載せる。
【0033】
次に、裏打ち材61にスペーサー64を設置して、スペーサー64に押え金具65を設置する。押え金具65の押え部67の先端部67aが、シンク3のフランジ部40に当接するようにしておく。この状態で、螺子68を、押え金具65の固定部66及びスペーサー64に挿通させて、裏打ち材61に螺合させる。このように、押え金具65でフランジ部40を接着層50側に押圧する。
【0034】
次に、フランジ部40に充填材70を充填する。これにより、接着剤が硬化するまで位置ずれ等を防止される。
【0035】
このように構成されたキッチンユニット100では、フランジ部40の上面40uには上方に突出する凸部42が形成されているため、フランジ部40の上面40uと天板2の下面2dとの間に形成された接着層50の厚さを確保することができる。また、フランジ部40の上面40uに形成された下方に凹む凹溝41には接着剤が充填されているため、凹溝41では接着層50の厚さが他の箇所より部分的に厚くなっている。よって、凸部42で接着層50の厚さが確保されつつ、凹溝41で接着層50の厚さが一層厚くなっているため、接着力を確保することができる。
【0036】
また、従来の凹溝が設けられていないものよりも接着層50の厚さを薄くしても、本発明では凹溝41内に接着剤が充填されているため、接着力が確保される。よって、接着層50の厚さを薄くすることができるため、見えがかりが薄くなり、外観を良好とすることができる。
【0037】
また、凹溝41は平面視で凸部42よりもシンク本体30側に形成されているため、水に晒されやすいシンク本体30側で確実に接着力を高めて、天板2とフランジ部40との間からの水の浸入を抑制することができる。
【0038】
また、凹溝41はシンク本体30の外縁部30aに沿って全周に形成されているため、シンク本体30の外縁部30aの全周にわたって接着力を高めることができる。
【0039】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0040】
例えば、上記に示す実施形態では、凹溝41はシンク本体30の外縁部30aに沿って全周に形成されているが、本発明はこれに限られない。凹部は、シンク本体30の外縁部30aに沿って間隔を有して複数形成される構成であってもよい。
【0041】
また、上記に示す実施形態では、凹溝41は、平面視で凸部42よりも内側に配置されていて、これにより、水に晒されやすいシンク本体30側で確実に接着力を高めることができるが、本発明はこれに限られない。凹部が、平面視で凸部よりも外側に配置されていてもよい。あるいは、凹部と凸部とは、シンク本体30の外縁部30aに沿う同一の(環状をなす)線上に配置されていてもよい。フランジ部40における凹部及び凸部の配置位置は、適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…キッチンキャビネット
2…天板
3…シンク(水槽)
11…収納部
21…取付開口部(開口部)
22…傾斜面
30…シンク本体(水槽本体)
40…フランジ部
41…凹溝(凹部)
42…凸部
50…接着層
61…裏打ち材
63…固定部材
65…押え金具
100…キッチンユニット