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  • 特許-ムスク化合物の同定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ムスク化合物の同定方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220610BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220610BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220610BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220610BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220610BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220610BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017564070
(86)(22)【出願日】2016-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 US2016036776
(87)【国際公開番号】W WO2016201152
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-05-28
(31)【優先権主張番号】62/173,762
(32)【優先日】2015-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック プフィスター
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ロジャーズ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/027158(WO,A2)
【文献】国際公開第02/018657(WO,A1)
【文献】特開2014-235098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0248390(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02832347(EP,A1)
【文献】SHIRASU. M. et al.,Olfactory receptor and neural pathway responsible for highly selective sensing of musk odors,Neuron,2014年,Vol. 81(1),pp. 165-178
【文献】HUBER THE NOSE.,Fragrance-brochure[online],2014年02月19日,https://www.thenose.swiss/uploads/CVrJfFE1/fragrance-brochure.pdf,[retrieved on 3.17.2020]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多環状ムスク化合物およびニトロムスクから選択される1または複数のムスク化合物によって活性化される嗅覚受容体の活性を活性化、模倣、遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、
前記方法は、
a)配列番号2または配列番号4と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、多環状ムスク化合物およびニトロムスクから選択される1または複数のムスク化合物によって活性化される前記ポリペプチド発現するよう組換え改変された細胞を、多環状ムスク化合物およびニトロムスクから選択される1または複数のムスク化合物の存在下で、化合物と接触させること、ここで、前記細胞は、
1)前記ポリペプチドをコードする核酸;または
2)前記ポリペプチドをコードし、かつ、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を含む、発現ベクター;
を含み、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法。
【請求項2】
前記多環状化合物が、トナリド、ブルカノリドおよびカシュメランからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が真核細胞である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が原核細胞である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記真核細胞がHEK293、CHO、アフリカツメガエル卵母細胞、COS、酵母および嗅板由来の細胞からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、匂い物質および芳香の受容体、ならびに匂い物質および/または芳香化合物の同定に使用することができる、より具体的にはムスク化合物のエンハンサーの同定に使用することができるアッセイを対象とする。
【0002】
背景技術
嗅覚は、ヒトの感覚系のうち、最も複雑でかつ十分な解明が進んでいないものの1つである。嗅覚受容体(OR)の活性化から知覚に至るまでには、さらなる研究を要する多くのステップが存在する。ムスク化合物は、構造的に多様な化学物質群の一部であり、これには、大環状ムスク、多環状ムスク、脂環式ムスクおよびニトロムスクが含まれる。これらのムスク化合物は香水類に使用されており、多くの市販の処方物においてベースノートを形成している。したがって、新規のムスク化合物および香料におけるムスクの知覚を高める化合物を同定する必要がある。
【0003】
発明の概要
本明細書において、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換された宿主細胞が提供される。
【0004】
さらに本明細書において、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0005】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1または配列番号3と少なくとも75%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0006】
さらに本明細書において、多環状ムスクまたはニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0007】
さらに、上記のポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1に、ムスク化合物の混合物に応答する嗅覚ニューロンのCa2+イメージングのトレース(図1A)ならびにその後のマウス受容体Olfr96およびOlfr235の同定(図1B)を示す。
図2図2に、多環状ムスク化合物であるブルカノリドおよびトナリドを用いたOlfr96のムスク用量反応曲線を示す。
図3図3に、多環状ムスク化合物であるブルカノリド、トナリドおよびカシュメランならびにニトロムスク化合物であるムスクXを用いたOlfr96およびOR11A1のムスク用量反応曲線を示す。
【0009】
詳細な説明
本明細書中の説明および付属の特許請求の範囲に関して、「または」の使用は、他に記載がない限り「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は互換的であり、限定することを意図するものではない。
【0010】
さらに、様々な実施形態の記載において「含む(comprising)」という用語が用いられる場合に、いくつかの特定の例においては、ある実施形態を、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」または「~からなる(consisting of)」という言語を用いて代替的に記載しうることを当業者であれば理解するであろうということが理解されるべきである。
【0011】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0012】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0013】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0014】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0015】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0016】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0017】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0020】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0022】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
一実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドを発現するように形質転換され、その際、該ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0025】
一実施形態において、宿主細胞は、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換され、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換され、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換される。
【0026】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0027】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0028】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0029】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0030】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0031】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0032】
本明細書においてさらに、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0033】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0034】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0035】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0036】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0037】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも95%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0038】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも98%または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0039】
本明細書においてさらに、配列番号4と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0040】
本明細書においてさらに、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供され、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供され、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0041】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0042】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0043】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0044】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0045】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0046】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0047】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0048】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0049】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0050】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも85%、90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0051】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも90%、95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0052】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも95%、98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0053】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも98%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0054】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0055】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号1と同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0056】
本明細書において、核酸を有する発現ベクターであって、前記核酸は、配列番号3と同一であるヌクレオチド配列を含む発現ベクターも提供される。
【0057】
一実施形態において、本明細書において、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供される。
【0058】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0059】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0060】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0061】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0062】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0063】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0064】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0065】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0066】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0067】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0068】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0069】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0070】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0071】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0072】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0073】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0074】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0075】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0076】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0077】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0078】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0079】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0080】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0081】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0082】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0083】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0084】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0085】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも85%、90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0086】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも90%、95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0087】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも95%、98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0088】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも98%および99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0089】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0090】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0091】
さらに本明細書において、ニトロムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0092】
さらに、多数のムスク化合物のうち、嗅覚受容体の活性を活性化、模倣、遮断、阻害、調節および/または増強しかつ本明細書に開示される方法によって同定されるいずれか1つが提供される。
【0093】
本発明のもう1つの実施形態は、嗅覚受容体の活性を活性化、模倣、遮断、阻害、調節および/または増強するムスク化合物を同定するための、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドの使用に関する。
【0094】
その上さらに、上記のポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供される。
【0095】
一実施形態において、本明細書において、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換された非ヒト細胞が提供され、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換された非ヒト細胞が提供され、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように形質転換された非ヒト細胞が提供される。
【0096】
さらに本明細書において、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供され、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供され、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0097】
一実施形態において、本明細書において、配列番号2または配列番号4と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供される。
【0098】
一実施形態において、本明細書において、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供され、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供され、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現するように組換え改変された細胞が提供される。
【0099】
さらに本明細書において、多環状ムスクによって活性化される嗅覚受容体の活性を遮断、阻害、調節および/または増強する化合物を同定するための方法であって、前記受容体は、配列番号2または配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、より具体的には配列番号2と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、さらにより具体的には配列番号4と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、前記方法は、
a)前記受容体またはそのキメラもしくは断片を化合物と接触させること、
b)前記化合物が前記受容体の活性に影響を及ぼすか否かを判断すること
を含む方法が提供される。
【0100】
一実施形態において、本明細書において細胞が提供され、その際、該細胞は原核細胞である。もう1つの実施形態において、本明細書で提供される細胞は、真核細胞である。特定の一実施形態において、本明細書で提供される細胞は、酵母細胞および植物細胞からなる群から選択される。本明細書において提供されるより具体的な一実施形態において、細胞は、HEK293、CHO、アフリカツメガエル卵母細胞、COS、酵母、細菌、および嗅板由来の細胞からなる群から選択される。
【0101】
未知のムスク特異的受容体を同定するために、代表的なムスク混合物を使用して、解離された嗅覚ニューロン(OSN)をスクリーニングする。個々のムスク化合物をさらに、特定のムスク受容体に対して行われる細胞ベースの用量反応実験に用いることにより、これらの受容体の特異性および感受性の双方を評価することができる。
【0102】
例えば、ムスク化合物は、構造的に多様な化学物質群の一部であり、これには、以下に記載されるような大環状ムスク、多環状ムスク、脂環式ムスクおよびニトロムスクが含まれる。
【0103】
【化1】
【0104】
一態様において、本明細書において、ムスク香気化合物に関する哺乳動物の匂い物質受容体を同定するための方法、ならびにムスクモジュレーター(例えば、エンハンサー)および新規のムスク化合物のスクリーニング、特にハイスループットスクリーニング(HTS)のための該受容体の使用が提供される。
【0105】
特に本明細書において、ブルカノリド、カシュメラン、トナリドおよびムスクXを含むムスク化合物の受容体としての、マウス受容体、例えばOlfr96(配列番号2)およびそのヒトカウンターパートOR11A1(配列番号4)が提供される。
【0106】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、マウス受容体Olfr235は、受容体Olfr1440のパラログでかつヒト受容体OR5AN1のオルソログである。これらの受容体は、ムスコンおよびムセノン感受性受容体としてすでに同定されている(国際公開第2015/020158号(WO 2015/020158);Shirasu et al.、Neuron (2013))。
【0107】
さらなる一実施形態において、嗅覚受容体の活性をモニタリングするためのインジケーターは、蛍光カルシウムインジケーター色素、カルシウムインジケータータンパク質、蛍光cAMPインジケーター、cAMP応答配列(CRE)媒介性レポータータンパク質、生化学的cAMP HTRFアッセイ、β-アレスチンアッセイまたは電気生理学的記録から選択される。特に、嗅覚ニューロンの膜上に発現される嗅覚受容体の活性のモニタリングに使用することができるカルシウムインジケーター色素(例えばFura-2AM)が選択される。
【0108】
特定の一実施形態において、化合物を順次スクリーニングし、匂い物質に応じたカルシウム色素の蛍光の変化を、蛍光顕微鏡または蛍光活性化セルソーター(fluorescent-activated cell sorter、FACS)を用いて測定する。
【0109】
さらなる一実施形態において、嗅覚受容体の受容体3D分子モデリングを用いて、イン・シリコでの結合ポテンシャルを評価し、かつ嗅覚受容体の活性を活性化、模倣、遮断、阻害、調節および/または増強しうる化合物を同定する。
【0110】
一例として、嗅覚ニューロンを、マイクロマニピュレーターに取り付けられたガラス微小電極またはFACS機器のいずれかを使用して、1種または複数のムスク化合物により単離する。マウスの嗅覚ニューロンを、以前に記載された手法(Malnic et al., 1999;Areneda et al., 2004;国際公開第2014/210585号(WO 2014/210585))と同様のCa2+イメージングによってスクリーニングする。特に、細胞数を増加させて1回の実験につき少なくとも1,500のスクリーニングが可能となるようにするために、電動式顕微鏡用ステージを用いる。マウスには約1,200の異なる嗅覚受容体が存在しており、各嗅覚ニューロンは、1,200の嗅覚受容体遺伝子のうち1つのみを発現するため、このスクリーニング能力は、マウスの匂い物質受容体のレパートリーのほぼすべてを網羅することになる。換言すれば、カルシウムイメージングとハイスループットの嗅覚ニューロンスクリーニングとを組み合わせることによって、匂い物質の特定のプロファイルに応答する匂い物質受容体のほぼすべてが同定される。特定の一態様において、ムスク化合物に応答する匂い物質受容体を単離することができる。例えば、少なくとも1つのニューロンを単離する。
【0111】
嗅覚ニューロンのカルシウムイメージングのために、ニューロンの分離前にマウスから主嗅上皮を切り出すことができる。切り出された嗅上皮を、その後、機械的および酵素的に分離させるために解離バッファーに移すことができる。解離されたニューロンを、次いで蛍光顕微鏡法により数千の細胞のスクリーニングが可能なカバースリップ上に播種することができ、これらの細胞に、カルシウム感受性色素(Fura-2AM)を例えば31℃で約30分間かけて負荷し、スクリーニングの準備が整った顕微鏡上に移すことができる。細胞を、分離済み嗅覚ニューロンへの匂い物質の(生理食塩水)希釈液の灌流によって刺激する。例えば受容体をムスク化合物50μmで刺激し、次いでFura-2蛍光の変化によって示される細胞内Ca2+フラックスをモニタリングすることにより、悪臭化合物に応答する希少な細胞を同定する。解析後、応答細胞を、吸引マイクロピペットを用いてガラスカバースリップから取り出すことができる。単離された細胞を、次いで、これらの応答細胞においてmRNAとして発現される匂い物質受容体遺伝子をその後で同定するために、1つのサンプルにプールする。
【0112】
特定の一実施形態において、嗅覚ニューロンのmRNAを、Marko, N. F., et al., (2005) A robust method for the amplification of RNA in the sense orientation. BMC genomics, 6, 27; doi:10.1186/1471-2164-6-27において一般に記載された方法(Eberwine法)により精製し、増幅させる。トランスクリプトームの少なくとも一部(から全トランスクリプトームを含むまで)を、次世代シーケンシング(NGS)を用いて配列決定するか、またはマイクロアレイ技術を用いて公知の遺伝子にハイブリダイズさせる。NGSは広く論じられており、Metzker, M. L. (2010). Sequencing technologies - the next generation. Nature reviews. Genetics, 11(1), 31-46; doi:10.1038/nrg262に記載されている。特定の一実施形態において、同一の応答プロファイルを示す最低限の5つのニューロンをプールする。このmRNAを、ピッキング後にただちに細胞溶解によって放出させる。DNアーゼは用いず、また精製ステップも行わない。これらのmRNAを、連続する2回のインビトロ転写(IVT)によって増幅させる。増幅を、以下のパラメーターでMesageAmpII aRNA kit (Ambion, AMA1751)により行うことができる:連続する14時間にわたるIVTを2回。
【0113】
さらなる一実施形態において、単離された活性化嗅覚ニューロンから得られたNGSリードの結果を同種のリファレンスゲノム配列と比較することにより、ムスクの嗅覚受容体の群または遺伝子ファミリーの同一性を(例えば、ピッキングされたニューロンの数と同数まで)判断する。特に推定ムスク受容体は、嗅覚ニューロン由来のNGSサンプル中に最も高度に多く存在するmRNAであり、または複数の独立したバイオロジカルレプリケートにおいて存在するであろう。嗅覚コードには組み合わせの性質がある(1つの化合物が多数のORを活性化させ、また1つのORが多数の化合物によって活性化されうる)ため、所与の化合物によって活性化されるいくつかのニューロンをプールすることで、単一のNGS実験においてこれらの分子の知覚を担う受容体を実質的にすべて探し出すことができる。このようにして、機能的に類似したニューロンをプールすることにより、脱オーファン化のスループットおよび速度が大幅に向上する。
【0114】
その後、標準的なバイオインフォマティクスツールを用いて、相同配列の受容体は同様の機能を保持しているという仮定の下で、哺乳動物(非ヒト)の他の1つまたは複数の推定ムスク受容体に最も密接に関連するヒトの1つまたは複数の匂い物質受容体を同定する。Adipietro et al. (2012) Functional Evolution of Mammalian Odorant Receptors. PLoS Genet 8(7): e1002821. doi:10.1371/ journal.pgen.1002821。BLASTPおよび/またはBLASTNアルゴリズムのデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0115】
ムスク化合物の活性を活性化、模倣、遮断、阻害、調節および/または増強する化合物の同定に使用できる機能アッセイに、ヒトまたは非ヒト哺乳動物のムスク受容体を適合させることができる。具体的にはこのアッセイは、細胞ベースのアッセイまたは結合アッセイであることができ、化合物を同定するための方法は、ハイスループットスクリーニングアッセイであることができる。より具体的には、本明細書において、調節性化合物(例えば遮断、増強およびマスキング)を発見するための化合物ライブラリーを用いた受容体のハイスループットスクリーニングに適合しうる受容体ベースのアッセイが提供される。
【0116】
特定の一実施形態において、ムスク化合物感受性細胞から以下のようにしてムスク受容体遺伝子配列を同定する:プールされたニューロンを、10分間かけて75℃に加熱して細胞膜を破壊し、それらのmRNAを増幅に利用できるようにする。限られた量の出発材料、典型的には5~15個の細胞を用いてNGS技術を適用する場合には、この増幅ステップが重要である。Eberwine法による線形的増幅(IVT)によって、発現される遺伝子の相対的な転写レベル維持を保証する。次いで、一晩(14時間)のインビトロ転写を2回連続して行うことにより、十分な量のcRNAが得られ、次いで、増幅されたcRNAを用いて、Illumina HiSeq cDNAライブラリーを生成する。得られる典型的には150塩基対の短い配列(一般には「リード」と呼ばれる)を、マウスのリファレンスゲノム(例えばUCSCバージョンmm9またはmm10)に対してアライメントすることにより、これらの細胞の完全なトランスクリプトームを構築する。このトランスクリプトームデータの定量的解析によって、転写された匂い物質受容体遺伝子およびそれらのそれぞれの発現レベルのリストが得られる。最も高レベルの量のmRNAを示す(「リード」が極めて多い)かまたは複数のレプリケートにおいて存在する匂い物質受容体遺伝子を、推定ムスク化合物受容体であると考える。
【0117】
次いで、これらの予想されるマウスOR遺伝子を用いて、マウスゲノムデータベースおよびヒトゲノムデータベースの双方の最新版をマイニングすることによって、極めて密接に関連する(すなわち極めて高い配列類似性を示す)受容体を、マウスにおいて(パラロガス遺伝子)およびヒトにおいて(オルソロガス遺伝子)同定する。このプロセスを、配列類似性検索ツールであるBLAST検索アルゴリズム(NCBIウェブサイトにて公開)を用いて行うことができ、このツールでは、初期のトランスクリプトーム解析により以前に得られているすべての推定遺伝子配列がクエリー配列として使用される。このデータマイニングプロセスから同定された新たに同定された遺伝子も、パラロガス遺伝子とオルソロガス遺伝子とは同様の活性を有する可能性が高いという仮定の下に、潜在的なムスク受容体であると考えられる。特定の一実施形態において、配列相同性のペアワイズ比較を行うことにより、以下の反復的なスキームを用いてマウスおよびヒトにおいて密接に関連する受容体を同定する。
【0118】
【表1】
【0119】
その後、マルチアライメントツールを用いてパラロガス遺伝子をアライメントすることによって系統樹を作成する。インビトロでの機能データを、密接に関連してはいるが異なる受容体の間でのそのような系統学的関係に照らして解釈することができる。このステップは、程度の差はあるが例えばブルカノリドのような試験化合物に応答する、完全なOR遺伝子ファミリーの同定において不可欠である。
【0120】
このアプローチは、以前に確立された単一細胞RT-PCR法に比べていくつかの主要な利点を有する。第1に、類似の結合特性を共有する複数のニューロンをプールすることによって、独自のmRNAシーケンシング試験(NGS)で、標的ムスク化合物により活性化される受容体がほぼすべて同定される。したがってスループットは、以前に達成されたものよりも高い。第2に、複数の細胞を1つのサンプルにプールすることができるため、このアプローチによって、試験間での複製サンプルの包括的な比較による遺伝子の選択が可能となる。第3に、NGSは、ORに特異的なPCRプライマーの使用を必要としない。NGSはまた、問題が多く、非線形的または非特異的なPCR増幅ゆえに偽陽性を生じることの多い、ORに特異的な縮重プライマーの使用を必要としない。特に、ORコード配列は単一エクソン内にあることから、ゲノムDNAでのサンプル汚染によって、OR遺伝子配列の非特異的増幅が容易に生じうる。第4に、固有の偽陽性率ゆえ、プールされたサンプルに対してRT-PCR解析を行うことは困難である。単一細胞のmRNAのハイブリダイゼーション試験は、高密度DNAマイクロアレイチップを用いて行われる。しかしこのアプローチは、一般的にNGSより感度が低く、さらには既知の遺伝子に制限されており、これについて、対応するDNAプローブを合成する必要がある。したがって、NGSの使用は、ORの迅速な同定に著しく有利であり、その結果最終的に、標準的な(例えばRT-PCRおよびマイクロアレイ)アプローチよりも正確な候補受容体が選択される。NGSアプローチが好ましいが、RT-PCRアプローチおよびマイクロアレイアプローチのような他のアプローチを使用してもよい。
【0121】
さらなる一実施形態においては、脱オーファン化プロセスを完了するために、候補OR遺伝子をさらにインビトロで発現させて、嗅覚ニューロンおよび構造的に関連する他の重要な化合物を単離するために使用される化合物に対する活性を確認する。双方のムスク化合物に応答する単離された嗅覚ニューロンから同定されたマウス受容体を、それらのN末端で、短いポリペプチド配列(例えばFlag(配列番号6)タグ、Rho(配列番号8、ウシロドプシン受容体の最初の20個のアミノ酸)タグまたはLucy(配列番号10)タグ)で修飾し、HEK293T細胞において一過的に発現させ、ムスク化合物と別々に刺激して、真正ムスク化合物受容体としてのそれらの同一性を確認する。この細胞ベースのアッセイにおけるヒトGαサブユニットGαolfの共発現によってGs伝達経路が活性化され、これによって、適切なリガンドに結合した際に内部のcAMPが増加する。あるいは、細胞ベースのアッセイにおけるヒトGαサブユニットGα15の共発現によってGq伝達経路が活性化され、これによって、適切なリガンドに結合した際に内部のCa2+が増加する。上記のプロセスおよびこれまで得られた結果は、ムスク化合物に関する哺乳動物の匂い物質受容体を迅速かつ確実に同定するためのプロセスを検証するのに役立つ。
【0122】
定義
特に指定しない限り、以下の用語は、それらに与えられた意味を有する。
【0123】
「OR」とは、嗅細胞において発現されるGタンパク質共役受容体のファミリーの1つまたは複数のメンバーを指す。嗅覚受容体細胞は、形態に基づいて、または嗅細胞において特異的に発現されるタンパク質の発現によっても同定されることができる。ORファミリーメンバーは、嗅覚伝達のための受容体として作用する能力を有しうる。
【0124】
「OR」の核酸は、「Gタンパク質共役受容体活性」を有する7つの膜貫通領域を有するGPCRのファミリーをコードし、例えば、それらは細胞外刺激に応答してGタンパク質に結合し、かつセカンドメッセンジャー、例えばIP3、cAMP、cGMPおよびCa2+の生成を、酵素、例えばホスホリパーゼCおよびアデニル酸シクラーゼの刺激を介して促進することができる。
【0125】
「N末端ドメイン」領域は、N末端で始まり、最初の膜貫通領域の始点に近い領域まで延びる。7つの「膜貫通領域」を含む「膜貫通ドメイン」とは、原形質膜内に存在するORポリペプチドのドメインを指し、これには、対応する細胞質(細胞内)および細胞外のループも含まれうる。7つの膜貫通領域ならびに細胞外および細胞質のループは、Kyte & Doolittle, J. Mol. Biol., 157:105-32 (1982)またはStryerにおいて記載されているような標準的な方法を用いて特定することができる。膜貫通ドメインの一般的な二次および三次構造、特に嗅覚受容体のようなGタンパク質共役受容体の7つの膜貫通ドメインは、当技術分野で知られている。したがって、一次構造配列は、以下に詳細に説明するように、既知の膜貫通ドメイン配列に基づいて設計または予測されることができる。これらの膜貫通ドメインは、可溶性相および固相の双方でインビトロでのリガンド結合アッセイに有用である。
【0126】
ORファミリーメンバーにより媒介される嗅覚伝達を調節する化合物を試験するためのアッセイの文脈における「機能的効果」という用語には、間接的または直接的に受容体の影響下にある任意のパラメーター、例えば機能的、物理的および化学的効果の判断が含まれる。これには、リガンド結合、イオンフラックス、膜電位、電流、転写、Gタンパク質結合、GPCRリン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達受容体-リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えばcAMP、cGMP IP3または細胞内Ca2+)のインビトロ、インビボおよびエキソビボでの変化が含まれ、さらに、他の生理学的効果、例えば神経伝達物質またはホルモン放出の増加または減少も含まれる。
【0127】
アッセイの文脈における「機能的効果の判断」または「活性の確認」とは、間接的または直接的にORファミリーメンバーの影響下にあるパラメーター、例えば機能的、物理的および化学的な効果を増加または減少させる化合物についてのアッセイを指す。そのような機能的効果は、当業者に知られているいずれの手段によって測定することもでき、例えば分光学的特性(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的特性(例えば形状)、クロマトグラフ特性または溶解特性の変化、パッチクランプ、電位感受性色素、全細胞電流、放射性同位体流出、誘導マーカー、卵母細胞OR遺伝子発現;組織培養細胞OR発現;OR遺伝子の転写活性化;リガンド結合アッセイ;電圧、膜電位およびコンダクタンスの変化;イオンフラックスアッセイ;細胞内セカンドメッセンジャー、例えばcAMP、cGMPおよびイノシトール三リン酸(IP3)の変化;細胞内カルシウムレベルの変化;神経伝達物質放出などによって測定することができる。
【0128】
OR遺伝子またはタンパク質の「インヒビター」、「アクチベーター」、「カウンタラクタント」および「モジュレーター」は、嗅覚伝達についてインビボ、インビトロおよびインビボアッセイを用いて特定される阻害分子、活性化分子または調節分子を指すために互換的に用いられ、例えばリガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、エンハンサー、並びにそれらのホモログおよび模倣物である。インヒビターとは、例えば、結合することによって刺激を部分的または完全に遮断し、活性化を減少、妨害、遅延させ、嗅覚伝達を不活化、脱感作または下方調節する化合物であり、例えばアンタゴニストである。アクチベーターとは、例えば、結合することによって活性化を刺激、増加、開放活性化、促進、増強させ、嗅覚伝達を感作または上方調節する化合物であり、例えばアゴニストである。モジュレーターには、例えば受容体と以下のものとの相互作用を変更する化合物が含まれる:アクチベーターまたはインヒビターに結合する細胞外タンパク質(例えば、匂い物質結合タンパク質、エブネリン(ebnerin)および疎水性キャリアファミリーの他のメンバー);Gタンパク質;キナーゼ(例えば、受容体の不活性化および脱感作に関与するロドプシンキナーゼおよびβアドレナリン受容体キナーゼのホモログ);およびアレスチン(これもまた、受容体を不活性化および脱感作する)。モジュレーターには、ORファミリーメンバーの遺伝的に改変されたバージョン、例えば活性が改変されたバージョンならびに天然由来および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、低化学分子などが含まれうる。インヒビターおよびアクチベーターについてのそのようなアッセイには、例えば、細胞または細胞膜におけるORファミリーメンバーの発現、フレーバーもしくはフレグランス分子、例えばムスクの存在または不在下での推定モジュレーター化合物の適用、および次いで上記のような嗅覚伝達に対する機能的効果の判断が含まれる。潜在的なアクチベーター、インヒビターまたはモジュレーターを用いて処理されたORファミリーメンバーを含むサンプルまたはアッセイを、このインヒビター、アクチベーターまたはモジュレーターを含まない対照サンプルと比較することによって、調節の程度が調べられる。(モジュレーターで処理されていない)対照サンプルを、相対的OR活性値が100%であるものとする。対照に対するOR活性値が約80%、場合により50%または25~0%である場合には、ORの阻害が達成される。対照に対するOR活性値が110%、場合により150%、場合により200~500%または1000~3000%超である場合には、ORの活性化が達成される。
【0129】
本明細書において用いられる場合に、「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、本発明の化合物に通常その自然状態で付随している他の非類似化合物を含まない状態を指す。したがって、「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」対象物は、所与のサンプルを少なくとも0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%または20質量%、最も好ましくは少なくとも50質量%または75質量%含む。好ましい一実施形態においては、これらの用語は、所与のサンプルを少なくとも95質量%含む本発明の化合物を指す。本明細書で使用する場合に、「精製された」「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、1種の核酸または1種のタンパク質、複数の核酸または複数のタンパク質に関する場合には、哺乳動物、特にヒトの体内で自然に生じるものとは異なる精製または濃縮の状態をも指す。(1)付随する他の構造体もしくは化合物からの精製、もしくは(2)哺乳動物、特にヒトの体内では通常では付随しない構造体もしくは化合物の付随を含む、哺乳動物、特にヒトの体内で自然に生じるものよりも高い精製または濃縮のいずれの程度も、「単離された」の意味に包含される。本明細書に記載の1種の核酸もしくは1種のタンパク質または複数の核酸もしくは複数のタンパク質の種類は、当業者に知られている様々な方法およびプロセスにより単離されてもよいし、通常は自然にはこれらに付随しない構造体または化合物を付随していてもよい。
【0130】
本明細書で使用する場合に、「単離された」という用語は、核酸またはポリペプチドに関する場合には、哺乳動物、特にヒトの体内で自然に生じるものとは異なる精製または濃縮の状態を指す。(1)自然に生じる付随する他の構造体もしくは化合物からの精製、もしくは(2)体内では通常では付随されない構造体もしくは化合物の付随を含む、体内で自然に生じるものよりも高い精製または濃縮のいずれの程度も、本明細書で使用する場合の「単離された」の意味に包含される。本明細書に記載の複数の核酸または複数のポリペプチドは、当業者に知られている様々な方法およびプロセスにより単離されてもよいし、通常は自然にはこれらに付随しない構造体または化合物を付随していてもよい。
【0131】
本明細書で使用する場合に、「増幅させる」および「増幅」という用語は、以下に詳細に説明するように、自然に発現された核酸の組換えの発生または検出に適したいずれの増幅方法の使用をも指す。例えば本発明は、本発明の自然に発現された核酸(例えばゲノムもしくはmRNA)または組換え核酸(例えばcDNA)をインビボまたはインビトロで(例えばポリメラーゼ連鎖反応、PCRにより)増幅させるための方法および試薬(例えば特異的な縮重オリゴヌクレオチドプライマー対)を提供する。
【0132】
「7回膜貫通型受容体」という用語は、原形質膜を7回貫通する7つのドメインを有する膜貫通型タンパク質のスーパーファミリーに属するポリペプチドを意味する(したがって、これら7つのドメインは「膜貫通型」または「TM」ドメインTM I~TM VIIと呼ばれる)。嗅覚および特定の味覚の受容体のファミリーのそれぞれが、このスーパーファミリーに属する。以下でさらに詳細に説明するように、7回膜貫通型受容体ポリペプチドは、類似しかつ特徴的な一次、二次および三次構造を有する。
【0133】
「核酸」または「核酸配列」という用語は、1本鎖または2本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドオリゴヌクレオチドを指す。この用語には、天然のヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸、すなわちオリゴヌクレオチドが包含される。またこの用語には、合成骨格を有する核酸様構造体も包含される。別段の記載がない限り、特定の核酸配列には、明示された配列以外に、その保存的に改変された変異体(例えば縮重コドン置換体)および相補的配列も暗に包含される。具体的には、縮重コドン置換体は、例えば1つもしくは複数の選択されたコドンの第3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列の生成により達成されることができる。
【0134】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に用いられる。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、および天然に存在するアミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「異種」という用語は、核酸の部分に関して使用する場合には、当該核酸が、自然では互いに同一の関係では見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、核酸は典型的には組換えにより生成され、新たな機能的核酸を生成するために配置された無関係の遺伝子に由来する2つ以上の配列を有し、例えばある供給源からのプロモーターおよび他の供給源からのコード領域を有する。同様に、異種タンパク質とは、当該タンパク質が自然では互いに同一の関係では見出されない2つ以上の配列を含むこと(例えば、融合タンパク質)を示す。
【0135】
「プロモーター」とは、核酸の転写を指示する核酸配列のアレイと定義される。本明細書で使用する場合、プロモーターには、転写の開始部位付近の必要な核酸配列が含まれ、ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメントが含まれる。プロモーターには、必要に応じて、転写の開始部位から数千塩基対ほどの場所に位置しうる遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含まれる。「構成的」プロモーターとは、大半の環境および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターとは、環境または発生の調節下で活性であるプロモーターである。「作動可能に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との間の機能的連結を意味し、その際、この発現制御配列は、この第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0136】
本明細書で使用する場合に、「組換え」とは、合成されたかもしくはさもなくばインビトロで操作されたポリヌクレオチド(例えば「組換えポリヌクレオチド」)、細胞もしくは他の生物学的系における遺伝子生成物の生成に組換えポリヌクレオチドを使用する方法、または組換えポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。「組換え」は、本発明のトランスロケーションドメインおよび本発明のプライマーを用いて増幅された核酸配列を含む融合タンパク質を発現させる、例えば誘導的または構成的に発現させるための発現カセットまたは発現ベクターへの、異なる供給源からの様々なコード領域またはドメインまたはプロモーター配列を有する核酸のライゲーションをも意味する。「組換え」は、本明細書において言及される受容体遺伝子のような内在性遺伝子の安定的なまたは一過性の発現をもたらす細胞のゲノム編集技術、例えばCRISPR/Cas9により得られる改変をも意味する。
【0137】
「発現ベクター」という用語は、本発明の核酸配列を、インビトロまたはインビボで、原核生物、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物の細胞を含むいずれかの細胞において構成的または誘導的に発現させる目的での、いずれの組換え発現系をも指す。この用語には、線状または環状の発現系が含まれる。この用語には、エピソームのままであるかまたは宿主細胞のゲノムに組み込まれた発現系が含まれる。この発現系は、自己複製能力を有することも有しないこともでき、すなわち、細胞内で一過性の発現のみを駆動することもできる。この用語には、組換え核酸の転写に必要な最低限の要素のみを含む組換え発現カセットが含まれる。
【0138】
「宿主細胞」とは、発現ベクターを含み、かつ発現ベクターの複製または発現を支援する細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌または真核細胞、例えば酵母、昆虫、両生類または哺乳動物の細胞、例えばCHO、HeLa、HEK-293など、例えば培養細胞、外植片および生体内細胞であることができる。
【0139】
本明細書において同定および/または使用される核酸およびアミノ酸配列を、以下に列挙する。
【0140】
【0141】
以下の実施例は単なる例示であり、概要、説明または特許請求の範囲に記載の本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0142】
実施例
例1
多環状ムスク受容体マウスOlfr96およびヒトOR11A1の同定。
【0143】
ムスク応答細胞を単離し、次世代シーケンシング(NGS)ベースのトランスクリプトーム解析のためにさらに処理した。カシュメラン、トナリドおよびガラクソリドの混合物を調製した(混合物A)。ムスコン、ムセノンおよびハバノリドの混合物を調製した(混合物B)。個々のムスクをそれぞれ、50μMの最終濃度でブレンドした。混合物Aおよび/または混合物Bにより活性化された別個の嗅覚ニューロン(OSN)について、Ca2+イメージングのトレースを記録した。図1AのY軸は、レシオメトリックな340/380nmでのCa2+イメージングの記録の結果としての相対蛍光単位の平均強度を示す。図1AのX軸は、時間枠を示す(8秒/枠)。応答細胞を、RNA抽出およびその後の次世代シーケンシング実験(すなわちRNAseq)のためにプールした。すべての発現レベルをさらに、嗅覚マーカータンパク質(OMP)に対して正規化した。得られたトランスクリプトーム解析によって、最も高度に発現された匂い物質受容体(すなわち、FPKMにより正規化された最も多いリードカウント):Olfr235およびOlfr96が判明した(図1B)。これらは、次のヒトオルソロガス遺伝子に対応する:それぞれOR5AN1およびOR11A1。
【0144】
例2
マウスOlfr96およびヒトOR11A1ムスク受容体の機能解析
機能的な用量反応実験を行うことにより、改変された細胞株の機能活性のレベルを評価した。細胞ベースのアッセイを用いて、HEK293T細胞株においてマウスOlfr96を試験し、その際、内在性RTP1遺伝子を活性化させ、匂い物質受容体のシャペロンを発現させた。Flag-Rhoでタグ付けされた受容体遺伝子を、嗅覚正規Gタンパク質Golf遺伝子と同時にトランスフェクションし、増加する濃度のムスク匂い物質トナリド、ブルカノリドおよびムスコンに曝露した。HTRFベースのキット(CisBio, cAMP dynamic 2 kit, 62AM4PEJ)を用いてサイトゾルにおけるcAMPの増加を測定することによって、匂い物質により誘発される活性を検出した。Olfr96受容体活性の用量依存的増加は、2種の多環状ムスク(トナリドおよびブルカノリド)については観察されるが、大環状ムスクであるムスコンについては観察されない(図2)。同一の条件を用いた追加の繰り返し実験において、マウスOlfr96および対応するヒトのオルソログOR11A1について、特異性評価のために設定された多様なムスクを用いて並行して二重反復試験を行った。Lucy-Flag-Rhoでタグ付けされた受容体遺伝子を、嗅覚正規Gタンパク質Golf遺伝子と同時にトランスフェクションし、増加する濃度の大環状ムスク匂い物質ムセノン、ムスコン、ハバノリドおよびエキサルトリド;多環状ムスク匂い物質トナリド、ブルカノリド、カシュメラン、ガラクソリド;脂環式ムスク匂い物質ヘルベトリド、アンブレットリドおよびロマンドリド;ならびにニトロムスク匂い物質ムスクCおよびムスクXに曝露した。Olfr96受容体活性の用量依存的増加は、3種の多環状ムスク(トナリド、カシュメランおよびブルカノリド)ならびにニトロムスク(ムスクX)については観察されるが、ムスクC、ガラクソリド、大環状ムスクまたは脂環式ムスクについては観察されず(図3)、またOR11A1受容体活性の用量依存増加は、1種の多環状ムスク(ブルカノリド)については観察されるが、大環状ムスク、脂環式ムスクもしくはニトロムスクまたは他の多環状ムスクについては観察されない(図3)。
【0145】
例3
ムスク受容体の活性化を増強する化合物の同定。
【0146】
ムスク受容体を、既知のムスク化合物と評価すべき化合物との二成分混合物に曝露する。この化合物によって提供される「ムスク」受容体活性の増強を測定する。これを、受容体の活性を増強する特定の化合物の存在および非存在下でのムスク用量反応測定の実施により行う。実施例2と同様の細胞ベースのアッセイを用いる。化合物が受容体活性を増強する場合には、その後、該化合物の非存在下で同等の水準の受容体活性化を達成するのに必要なムスク化合物の濃度を低下させる。典型的にはこれは、用量反応実験を用いて行われ、用量反応曲線で示され、これは例えば、曲線の左方向へのシフトおよび算出されるEC50値の減少によって表示または示される。
図1
図2
図3
【配列表】
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