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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】熱伝導性成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20220610BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220610BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220610BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B29C51/10
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
B29C51/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018000553
(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公開番号】P2019119131
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100190931
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 祥平
(72)【発明者】
【氏名】打矢 智昭
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 尚之
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-238754(JP,A)
【文献】特開2012-168708(JP,A)
【文献】国際公開第2013/94395(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/290504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状を有する型の前記三次元形状に追従するように前記型上に配置され、前記三次元形状に対応した形状を有する第一のフィルムを準備する工程と、
前記第一のフィルム上に、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル単量体を含有する硬化性組成物を配置する工程と、
前記硬化性組成物上に第二のフィルムを配置して、前記第一のフィルム及び前記第二のフィルムで前記硬化性組成物を挟む工程と、
前記硬化性組成物中の(メタ)アクリル単量体をラジカル重合させて、前記第一のフィルム及び前記第二のフィルムの間に前記硬化性組成物の硬化物を形成する工程と、
を備え、
前記第一のフィルム及び前記第二のフィルムの酸素透過度がいずれも1000ml/m・24h・atm未満であり、且つ前記第一のフィルムの温度100℃における50%伸張強度が100N/25mm以下である、熱伝導性成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第一のフィルムの厚さが3~200μmである、請求項1に記載の熱伝導性成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第一のフィルムの動摩擦係数が0.7以下である、請求項1又は2に記載の熱伝導性成形体の製造方法。
【請求項4】
三次元形状を有する第一の面を有し、熱伝導性フィラー及び(メタ)アクリル重合体を含有する樹脂成形体と、
前記三次元形状に追従するように前記樹脂成形体の前記第一の面上に配置された第一のフィルムと、
を備え、
前記第一のフィルムの酸素透過度が1000ml/m・24h・atm未満であり、且つ温度100℃における50%伸張強度が100N/25mm以下である、熱伝導性成形体。
【請求項5】
前記第一のフィルムの厚さが3~200μmである、請求項4に記載の熱伝導性成形体。
【請求項6】
前記第一のフィルムの動摩擦係数が0.7以下である、請求項4又は5に記載の熱伝導性成形体。
【請求項7】
前記樹脂成形体の前記第一の面とは反対側の面上に配置された第二のフィルムを更に備え、
前記第二のフィルムの酸素透過度が1000ml/m・24h・atm未満である、請求項4~6のいずれか一項に記載の熱伝導性成形体。
【請求項8】
前記第一の面が、型に対応した三次元形状を有する第一の面を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載の熱伝導性成形体。
【請求項9】
前記樹脂成形体における前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂成形体全量基準で、55~95体積%である、請求項4~8のいずれか一項に記載の熱伝導性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に搭載される発熱性部品(例えば、車載用バッテリパック等)の発熱を効率よく冷却するため、発熱性部品とヒートシンク等の放熱部品との間に熱伝導性成形体を適用して、発熱性部品の放熱性を向上させることが行われている。このような熱伝導性成形体は、例えば、樹脂母材と熱伝導性フィラーとを含有する組成物を構成する工程と、所望の形状に対応した形状を有する耐熱性トレーのトレー凹部に組成物を充填する工程と、トレー凹部に充填された状態の組成物を加熱硬化する工程とを含む方法によって製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-92227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱伝導性に優れた熱伝導性成形体を製造するための新規な製造方法及び当該製造方法により得られる熱伝導性成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、三次元形状を有する型の当該三次元形状に追従するように型上に配置され、その三次元形状に対応した形状を有する第一のフィルムを準備する工程と、第一のフィルム上に、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル単量体を含有する硬化性組成物を配置する工程と、硬化性組成物上に第二のフィルムを配置して、第一のフィルム及び第二のフィルムで硬化性組成物を挟む工程と、硬化性組成物中の(メタ)アクリル単量体をラジカル重合させて、第一のフィルム及び第二のフィルムの間に硬化性組成物の硬化物を形成する工程と、を備える、熱伝導性成形体の製造方法に関する。上記製造方法において、第一のフィルム及び第二のフィルムの酸素透過度は、いずれも1000ml/m・24h・atm未満であり、且つ第一のフィルムの温度100℃における50%伸張強度は、100N/25mm以下である。
【0006】
また、本発明の他の一側面は、三次元形状を有する第一の面を有し、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル重合体を含有する樹脂成形体と、当該三次元形状に追従するように樹脂成形体の第一の面上に配置された第一のフィルムと、を備える、熱伝導性成形体に関する。上記熱伝導性成形体において、第一のフィルムの酸素透過度は、1000ml/m・24h・atm未満であり、且つ温度100℃における50%伸張強度が100N/25mm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱伝導性に優れた熱伝導性成形体を製造するための新規な製造方法及び当該製造方法により得られる熱伝導性成形体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】熱伝導性成形体の一実施形態を概略的に示す斜視図である。
図2】熱伝導性成形体の一実施形態を示す断面図である。
図3】熱伝導性成形体の製造方法の一実施形態を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、必要に応じて図面を適宜参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
<熱伝導性成形体>
本実施形態に係る熱伝導性成形体は、三次元形状を有する第一の面を有する樹脂成形体と、三次元形状に追従するように樹脂成形体の第一の面上に配置された第一のフィルムと、を備える。
【0011】
三次元形状は、熱伝導性成形体を適用する被着体(例えば、発熱製部品や放熱性部品など)の形状に応じて適宜設定することができる。例えば、被着体の表面形状に沿った形状であってよく、適用箇所への設置が容易となる形状であってよい。
【0012】
三次元形状は、特に制限されるものではないが、例えば、その少なくとも一部が、半球状、半円柱状などであってもよい。このような三次元形状を有することで、適用する被着体に対して、摺動させながら位置合わせを行いやすく、作業性に優れる。また、位置合わせ後は、被着体に押しつけられることで、三次元形状を変形させ、接触面積を確保することができる。
【0013】
図1は、熱伝導性成形体の一実施形態を概略的に示す斜視図である。図1(a)~(g)において、三次元形状部を有する熱伝導性成形体の具体的な一例を示す。三次元形状部を有する熱伝導性成形体としては、例えば、図1(a)及び(b)に示されるように、半球状、半円柱状などであってよい。また、熱伝導性成形体における三次元形状部の大きさ、個数、配置場所等については、熱伝導性成形体を適用する部品の形状、大きさ等を考慮して適宜設定することができ、例えば図1(c)~(g)に示されるような、三次元形状部を複数、具体的には二つ以上、三つ以上又は五つ以上有する熱伝導性成形体であってよい。その他、半球状の三次元形状部と半円柱状の三次元形状部とが、同一の熱伝導性成形体において併存していてもよい。
【0014】
樹脂成形体は、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル重合体を含有する。
【0015】
熱伝導性材料は、樹脂成形体に実質的な熱伝導性を付与する成分である。熱伝導性材料としては特に限定されないが、例えば公知の熱伝導性フィラーを用いることができる。
【0016】
熱伝導性材料としては、例えば、金属水和化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物が挙げられる。
【0017】
金属水和化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、ドウソナイト、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛、アルミン酸カルシウム、酸化ジルコニウム水和物等が挙げられる。また、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられ、金属炭化物としては、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0018】
これらの熱伝導性材料は、通常、粒子の状態で添加される。なお、熱伝導性材料としては、その平均粒径が10~100μmである比較的大きな粒子径群と、その平均粒径が10μm未満である比較的小さな粒子径群とを組み合わせて用いることで、添加量(充填量)を高めることができる。なお、平均粒径とは、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を指す。
【0019】
熱伝導性材料(熱伝導性フィラー)は、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸等の表面処理剤などにより表面処理されていてもよい。このような表面処理を施された熱伝導性材料を用いることで、熱伝導性成形体の強度(例えば、引張強度)を向上させることができる。また、上記表面処理は、後述する硬化性組成物の粘度を低下させる効果が大きいため、製造工程上好ましい。なお、熱伝導性材料には予め表面処理を施していてもよいが、カップリング剤又は表面処理剤を、熱伝導性材料とともに後述する硬化性組成物中に添加させることで、表面処理の効果を得ることもできる。
【0020】
樹脂成形体における熱伝導性材料の含有量は、樹脂成形体全量基準で、55~95体積%であることが好ましく、65~85体積%であることがより好ましい。熱伝導性材料の含有量が上記範囲であると、十分な熱伝導性が得られるとともに、熱伝導性材料が多すぎて樹脂成形体が脆くなったり製造が困難になることを防ぎ、十分な強度及び柔軟性を有する熱伝導性成形体を容易に得ることができる。
【0021】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリル単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体である。重合は、後述するように、ラジカル重合により行うことができる。ここで、「(メタ)アクリル単量体」とは、アクリル酸、アクリル酸エステル等のアクリル系単量体、及び/又は、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル等のメタアクリル系単量体を示す。すなわち、(メタ)アクリル重合体は、アクリル系単量体及びメタクリル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体、ということもできる。
【0022】
(メタ)アクリル単量体としては、一般的な(メタ)アクリル重合体を形成するために用いられる単量体であればよく、特に限定されるものではない。また、(メタ)アクリル単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0023】
上記単量体成分は、(メタ)アクリル単量体として、少なくとも単官能(メタ)アクリル単量体を含有することが好ましい。なお、単官能(メタ)アクリル単量体とは、(メタ)アクリルロイル基を一つ有する単量体である。
【0024】
単官能(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、単官能(メタ)アクリル単量体としては、炭素数12~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここでアルキル基は、鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
【0026】
また、単官能(メタ)アクリル単量体としては、炭素数の異なる二種以上のアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。この場合、各アルキル(メタ)アクリレートの含有量を調整することで、得られる樹脂成形体の柔軟性をその用途に応じて適宜調整することができる。
【0027】
上記単量体成分は、(メタ)アクリル単量体として、さらに多官能(メタ)アクリル単量体を含有していてもよい。なお、多官能(メタ)アクリル単量体とは、(メタ)アクリロイル基を二つ以上有する単量体である。上記単量体成分が多官能(メタ)アクリル単量体を含有すると、(メタ)アクリル重合体が架橋構造を有するものとなるため、樹脂成形体の強度が向上する。
【0028】
多官能(メタ)アクリル単量体としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリイソプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリル単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリル単量体;ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリル単量体;ジペンタエリトリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート等の五官能(メタ)アクリル単量体;などが挙げられる。
【0029】
上記単量体成分における多官能(メタ)アクリル単量体の含有量は、単官能(メタ)アクリル単量体100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましい。このような含有量であると、架橋構造による樹脂成形体の強度向上効果が十分に得られるとともに、過度の架橋による柔軟性の低下が避けられ、高い柔軟性を有する熱伝導性成形体が得られる。
【0030】
樹脂成形体における(メタ)アクリル重合体の含有量は、樹脂成形体全量基準で、0.05~30質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましい。
【0031】
樹脂成形体は、上記以外の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂成形体は、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、沈降防止剤、増粘剤、超微粉シリカ等のチクソトロピー剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、静電気防止剤、金属不活性化剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0032】
本実施形態に係る熱伝導性成形体において、第一のフィルムの酸素透過度は、1000ml/m・24h・atm未満であることが必要である。第一のフィルムの酸素透過度が1000ml/m・24h・atm未満であることにより、後述する熱伝導性成形体の製造において、(メタ)アクリル単量体をラジカル重合して(メタ)アクリル重合体を製造する際に、酸素によりラジカル重合が阻害されることを防ぐことができる。このような観点から、第一のフィルムの酸素透過度は、好ましくは200ml/m・24h・atm以下であり、より好ましくは150ml/m・24h・atm以下であり、更に好ましくは100ml/m・24h・atm以下である。第一のフィルムの酸素透過度の下限は、特に制限されるものではないが、例えば0.01ml/m・24h・atm以上である。なお、本明細書において、酸素透過度とは、MOCON社製酸素透過率測定装置OX-TRAN、Model2/21を用いて測定される酸素透過度を意味する。なお、酸素透過度が200ml/m・24h・atmを超える場合には、テストセルの一部にマスクをして測定を行うものとする。
【0033】
また、第一のフィルムの温度100℃における50%伸張強度は、100N/25mm以下であることが必要である。第一のフィルムの温度100℃における50%伸張強度が100N/25mm以下であれば、第一のフィルムの柔軟性を十分に確保することができ、後述する熱伝導性成形体の製造において、型への追従性を良好に保つことができる。このような観点から、第一のフィルムの温度100℃における50%伸張強度は、例えば、50N/25mm以下、又は25N/25mm以下であってよい。なお、本明細書において、温度100℃における50%伸張強度とは、ISO 527-3(JIS K 7172:1999)に準拠した方法で測定される伸張強度を意味する。
【0034】
第一のフィルムの動摩擦係数は、第一のフィルムの優れたすべり性を与え、熱伝導性成形体を被着体に適用する際の作業性を向上させる観点から、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.3以下である。第一のフィルムの動摩擦係数の下限は、特に制限されることはないが、例えば0.05以上である。なお、本明細書において、動摩擦係数とは、ISO 8295:1995(JIS K7125:1999)に準拠した方法に基づき、銅に対する動摩擦係数として測定される値を意味する。すなわち、重りの底面に両面粘着テープ(スリーエムジャパン製ST-416)で銅箔を貼り付け、荷重200g及び引張速度100mm/分の条件で測定した値を意味する。
【0035】
本実施形態に係る熱伝導性成形体において好適に用いられる第一のフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(二軸延伸PET)、無延伸ナイロン及び無延伸PETからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。これらの中でも、深絞り性、すべり性、樹脂成形体に対する剥離性、及び後述する第二のフィルムに対する剥離性等の観点から、EVOH、PVDF、無延伸ナイロンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むフィルムであることが好ましく、EVOHを含むフィルムは、多層フィルムであることがより好ましい。
【0036】
第一のフィルムの厚さは、熱伝導性成形体の用途及びフィルムの種類に応じて、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において適宜設定することができる。第一のフィルムの厚さは、例えば、3~200μm、5~150μm、又は10~130μmであってよい。第一のフィルムの厚さが上記範囲内であれば、酸素透過度及び強度をより十分に確保できる一方、熱抵抗を抑制でき成形性も確保することができる。
【0037】
また、第一のフィルムは、一層で構成されていてもよいし、二層以上で構成されていてもよい。第一のフィルムが二層以上で構成される場合、そのうちの少なくとも一層が上記本実施形態に係る第一のフィルムの特性を有していてもよく、すべての層が上記本実施形態に係る第一のフィルムの特性を有していてもよい。第一のフィルムが二層以上で構成される場合、それぞれの層は適宜接着層等を介して積層されていてもよい。
【0038】
本実施形態に係る熱伝導性成形体は、上述した樹脂成形体の第一の面とは反対側の面上に配置された第二のフィルムを更に備えていてもよい。図2は、熱伝導性成形体の一実施形態を示す断面図である。図2に示されるように、熱伝導性成形体100は、第一のフィルム1と、第二のフィルム2と、樹脂成形体3とを備えており、樹脂成形体3は、三次元形状を有する第一の面3a及び第一の面とは反対側の面3bを有している。第一のフィルム1は、樹脂成形体3の第一の面3aの三次元形状に追従するように配置され、第二のフィルム2は、樹脂成形体3の第一の面とは反対側の面3b上に配置されている。
【0039】
熱伝導性成形体が第二のフィルム2を更に備える場合、第二のフィルム2の酸素透過度は、1000ml/m・24h・atm未満である。第二のフィルム2の酸素透過度が1000ml/m・24h・atm未満であることにより、後述する熱伝導性成形体の製造において、(メタ)アクリル単量体をラジカル重合して(メタ)アクリル重合体を製造する際に、酸素によりラジカル重合が阻害されることをより効果的に防ぐことができる。このような観点から、第二のフィルム2の酸素透過度は、好ましくは200ml/m・24h・atm以下であり、より好ましくは150ml/m・24h・atm以下であり、更に好ましくは100ml/m・24h・atm以下である。第二のフィルム2の酸素透過度の下限は、特に制限されるものではないが、例えば0.01ml/m・24h・atm以上である。
【0040】
このような第二のフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(二軸延伸PET)、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(二軸延伸PEN)、無延伸ナイロン及び無延伸PETからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。これらの中でも、樹脂成形体に対する剥離性、及び第一のフィルムに対する剥離性、並びに酸素透過率をより十分に抑制する等の観点から、二軸延伸PET、二軸延伸PEN及び無延伸ナイロンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むフィルムであることが好ましい。なお、後述するように、熱伝導性成形体の使用に際して、第二のフィルムを剥離して使用する場合には、剥離を容易にする観点から、第二のフィルムの硬化性組成物が接触する側の面に、シリコーン等の剥離剤を塗布しておいてもよい。
【0041】
第二のフィルム2の厚さは、熱伝導性成形体100の用途及びフィルムの種類に応じて、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において適宜設定することができる。第二のフィルム2の厚さは、例えば、5~200μm、10~100μm、又は20~75μmであってよい。
【0042】
また、第二のフィルムは、一層で構成されていてもよいし、二層以上で構成されていてもよい。第二のフィルムが二層以上で構成される場合、そのうちの少なくとも一層が上記本実施形態に係る第二のフィルムの特性を有していてもよく、すべての層が上記本実施形態に係る第二のフィルムの特性を有していてもよい。第二のフィルムが二層以上で構成される場合、それぞれの層は適宜接着層等を介して積層されていてもよい。
【0043】
また、熱伝導性成形体100は、第二のフィルム2及び樹脂成形体3の間、又は樹脂成形体3中に、編物、織物、不織布等の補強基材(図示せず)を備えていてもよい。補強基材を備えることにより、熱伝導性成形体100の平面方向への延伸性が抑制され、型から熱伝導性成形体を引き剥がす際に割れ等の不具合を生じる可能性を抑え、取り扱い性を向上させることができる。中でも不織布は、後述する硬化性樹脂組成物の含浸性に優れるため好ましい。補強基材の材料としては、ガラス、ビニロン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル等を使用することができるが、難燃性も付与し得るため、ガラスが好ましい。補強基材の厚さとしては、例えば、20μm以上又は40μm以上であってよく、例えば、0.2mm以下又は0.1mm以下であってよい。
【0044】
<熱伝導性成形体の製造方法>
続いて上記熱伝導性成形体の製造方法について説明する。本実施形態に係る熱伝導性成形体の製造方法は、三次元形状を有する型の当該三次元形状に追従するように型上に配置され、三次元形状に対応した形状を有する第一のフィルムを準備する工程(第一工程)と、第一のフィルム上に、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル単量体を含有する硬化性組成物を配置する工程(第二工程)と、硬化性組成物上に第二のフィルムを配置して、第一のフィルム及び第二のフィルムで硬化性組成物を挟む工程(第三工程)と、硬化性組成物中の(メタ)アクリル単量体をラジカル重合させて、第一のフィルム及び第二のフィルムの間に硬化性組成物の硬化物を形成する工程(第四工程)と、を備える。
【0045】
図3は、熱伝導性成形体の製造方法の一実施形態を示す工程断面図である。以下、図面を適宜参照しながら、上記各工程について説明する。
【0046】
(第一工程)
第一工程は、三次元形状を有する型の当該三次元形状に追従するように型上に配置され、三次元形状に対応した形状を有する第一のフィルムを準備する工程である。型に対応した三次元形状を有する第一のフィルムを準備する方法としては、例えば、真空加熱圧着法、真空成型法、フィルムインサート成型法等が挙げられる。
【0047】
以下、真空加熱圧着法の具体的な方法を例示的に説明する。まず、図3(a)に示されるような、所定の三次元形状を有する型20を用意する。図3(b)に示すように、例示的な真空加熱圧着装置30は、上下に第一真空室31及び第二真空室32をそれぞれ有しており、上下の真空室の間に型20に貼り付ける第一のフィルム10をセットする治具が備えられている。また、下側の第一真空室31には、上下に昇降可能な昇降台35(図示せず)の上に仕切り板34及び台座33が設置されており、型20はこの台座33の上にセットされる。このような真空加熱圧着装置30としては、市販のもの、例えば両面真空成型機(布施真空株式会社製)等を使用することができる。
【0048】
図3(b)に示すように、まず、真空加熱圧着装置30の第一真空室31及び第二真空室32を大気圧に開放した状態で、上下の真空室の間に第一のフィルム10をセットする。第一真空室31において台座33の上に型20をセットする。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、第一真空室31及び第二真空室32を閉鎖し、それぞれ減圧し、各室の内部を真空にする。その後又は真空にするのと同時に第一のフィルム10を加熱する。次いで、図3(d)に示すように、昇降台35を上昇させて型20を第二真空室32まで押し上げる。加熱は、例えば第二真空室32の天井部に組み込まれたランプヒータ(図示せず)で行うことができる。加熱温度は特に限定されるものではないが、通常50℃以上又は130℃以上であり、180℃以下又は160℃以下である。減圧雰囲気の真空度は、大気圧を1atmとして、例えば、0.10atm以下、0.05atm以下、又は0.01atm以下とすることができる。
【0050】
加熱された第一のフィルム10は型20の表面に押しつけられて延伸される。その後又は延伸と同時に、図3(e)に示すように、第二真空室32内を適当な圧力(例えば、1atm~3atm)に加圧する。圧力差により加熱された第一のフィルム10は、型20の露出表面に密着し、露出表面の三次元形状に追従して延伸し、型20の表面に剥離可能に密着した状態の被覆を形成する。図3(c)の状態で減圧及び加熱を行った後、そのまま第二真空室32内を加圧して第一のフィルム10で型20の露出表面を被覆することもできる。
【0051】
その後、上下の第一真空室31及び第二真空室32を再び大気圧に開放して、第一のフィルム10で被覆された型20を取り出す。図3(f)に示すように、型20の表面に密着した第一のフィルム10のエッジをトリミングし、第一のフィルム10と型20とを備える一体品40を得ることができる。なお、以下では、一体品40を用いて、第二の工程を実施する方法について記載するが、本実施形態では、一体品40から型20を剥離して、三次元形状に成型された第一のフィルム10を用いて第二の工程を実施することもできる。
【0052】
(第二工程)
第二工程は、第一のフィルム上に、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル単量体を含有する硬化性組成物を配置する工程である。第二工程の一例を、図3を用いて以下で説明する。
【0053】
図3(g)に示すように、一体品40の空洞部11に、熱伝導性材料及び(メタ)アクリル単量体を含有する硬化性組成物を充填し、必要に応じてブレード等を使用して平坦化処理を行い、充填部12を形成することにより硬化性組成物を配置する。硬化性組成物の充填に際しては、特に限定されるものではないが、空気の混入を防ぐため脱気したものを適用することが好ましい。
【0054】
(第三工程)
第三工程は、硬化性組成物上に第二のフィルムを配置して、第一のフィルム及び第二のフィルムで硬化性組成物を挟む工程である。
【0055】
図3(g)では、上記工程で形成された充填部12上に、更に第二のフィルム13を適用する構成を例示する。この態様では、第二のフィルム13が、第一のフィルム10と充填部12とを覆うように配置して一体品50を得ることができる。なお、第三工程においては、充填部12及び第二のフィルム13の間に不織布等の補強基材を配置する場合、例えば第二のフィルム13上に補強基材を適用し、補強基材と充填部12とが接するように配置してもよいし、充填部12中に補強基材を配置する場合、硬化性組成物に予め補強基材を含浸させておいてもよい。
【0056】
(第四工程)
第四工程は、硬化性組成物中の(メタ)アクリル単量体をラジカル重合させて、第一のフィルム10及び第二のフィルム13の間に硬化性組成物の硬化物(樹脂成形体)12aを形成する工程である。これにより、硬化性組成物の硬化物(樹脂成形体)12aを有する一体品50aが得られる。
【0057】
ラジカル重合は、例えば、紫外線重合、電子線重合、γ線照射重合、イオン化線照射重合等により行うことができる。紫外線重合は、例えば、光重合開始剤を適当量含有する硬化性組成物を上記空洞部11に充填させて充填部12を形成した後、紫外線を照射することにより行うことができる。なお、電子線重合を始めとする粒子エネルギー線を用いて重合する場合には、通常、重合開始剤は不要である。
【0058】
光重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル類;アニソインエチルエーテル、アニソインイソプロピルエーテル、ミヒラーケトン(4,4’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(例えば、商品名:KB-1(サルトマー社製)、商品名:イルガキュア651(Irgacure651)(チバスペシャルティーケミカルズ社製))、2,2-ジエトキシアセトフェノン等の置換アセトフェノン類;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン等の置換α-ケトール類;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド類;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィノキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;等が挙げられる。なお、上記光重合開始剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0059】
硬化性組成物に配合される光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、通常、上記(メタ)アクリル単量体等の単量体成分100質量部に対して0.05~2.0質量部である。
【0060】
第四工程を経て得られた一体品50aは、任意に冷却した後、型20から取り出すことにより、図3(h)に示すような熱伝導性成形体60を得ることができる。なお、必要に応じて、第一のフィルム10及び/又は第二のフィルム13を除去してもよく、適当な大きさに打ち抜いて個別の三次元形状を有する熱伝導性成形体を得ることもできる。第一のフィルム10を除去せずに製品として使用する場合、バッテリー等の隙間に押し込まれる際に第一のフィルム10の表面での滑り性や製品としての強度が上がるという利点がある。
【0061】
本実施形態に係る製造方法によって得られた熱伝導性成形体は、車輌、リチウムイオンバッテリー(例えば、車載用リチウムイオンバッテリパック)、家電製品、コンピュータ機器等で使用される、例えば、ICチップ等の発熱性部品と、ヒートシンク又はヒートパイプ等の放熱性部品との間の間隙を充填するように配置して、発熱性部品から発生した熱を放熱性部品に効率よく熱伝達し得る、放熱用部材として使用することができる。特に、本実施形態に係る熱伝導性成形体は、形状、大きさを自由に設計できるため、例えば回路基板のポッティング材の代替として使用することができ、コイル等の複雑形状の発熱性部品に対しても使用することができる。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例で用いた各成分について、その略称と詳細を以下に説明する。
【0064】
<硬化性組成物の調製>
表1に示す各成分を表1に記載の配合割合(質量比)でプラネタリーミキサーに仕込み、減圧下(0.01MPa)、30分混練することによって脱気及び混合して、硬化性組成物を得た。なお、下記硬化性組成物において、熱伝導性フィラーの体積割合は、67.4体積%であった。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示す各略称は、それぞれ以下を意味する。
【0067】
((メタ)アクリル単量体)
・LA:ラウリルアクリレート
・ISTA:イソステアリルアクリレート
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
【0068】
(光重合開始剤)
・IRGACURE819:BASF社製、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
【0069】
(可塑剤)
・T10:花王株式会社製、トリメリテート系可塑剤、トリメックス T-10
【0070】
(酸化防止剤)
・IRGANOX1010:BASF社製、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
・AO503:ADEKA社製「アデカスタブAO503」、ジトリデシルチオジプロピオネート
【0071】
(熱伝導性フィラー)
・B53:日本軽金属社製、水酸化アルミニウム(平均粒径50μm)
・BF083:日本軽金属社製、水酸化アルミニウム(平均粒径8μm)
【0072】
(分散剤)
・BYK-145:ビックケミー・ジャパン株式会社製、湿潤分散剤DISPERBYK-145
【0073】
<熱伝導性成形体の作製>
表2に示す各フィルムを準備し、図3(b)に示されるように、真空加熱圧着装置30として、両面真空成型機(布施真空株式会社製)を採用し、真空加熱圧着装置30内に設置した樹脂製の型20上にフィルムを固定した。該フィルムの表面温度が120℃になるように加熱条件を設定し、上述した図3(c)~図3(e)で示されるような手順に従って、加熱したフィルムをエアーが巻き込まれないように型20の表面に積層し、図3(f)に示されるような一体品40を作製した。フィルムの追従性については、目視にて確認した。ここで、型20は、図3(f)に示されるような、23.5mm×90.0mm×4.0mmの半円柱状の三次元形状が得られるような形状を備える。用いたフィルムの各性状を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
なお、表2におけるフィルムA~Iは、それぞれ以下のものである。
フィルムA:シュペレン 35E-LL(株式会社宇部フィルム製、PE/EVOH/LLDPEの3層フィルムであり、各層は接着樹脂を介して積層しているフィルム)
フィルムB:シュペレン 35E-LL(株式会社宇部フィルム製、PE/EVOH/LLDPEの3層フィルムであり、各層は接着樹脂を介して積層しているフィルム)
フィルムC:ハイトロンBX(タマポリ株式会社製、ポリアクリロニトリルフィルム)
フィルムD:ダイアミロンC(三菱ケミカル株式会社製、塩化ビニリデンコート無延伸ナイロン-6フィルム)
フィルムE:ダイアミロンMF F001(三菱ケミカル株式会社製、PP/EVOH/PPの3層フィルムであり、各層は接着樹脂を介して積層しているフィルム)
フィルムF:ダイアミロンMF V442(三菱ケミカル株式会社製、EVOH/Nylon/PP/LLDPHの4層フィルムであり、一部の層は接着樹脂を介して積層しているフィルム)
フィルムG:UB-OB(タマポリ株式会社製、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)
フィルムH:V-1(タマポリ株式会社製、低密度ポリエチレンフィルム)
フィルムI:エンブレットS50(ユニチカ株式会社製、PETフィルム)
【0076】
一体品40の空洞部11に、上記で得られた硬化性組成物を充填し、次いで、充填した硬化性組成物上に、エアーが巻き込まれないように第二のフィルム13(ポリエステルフィルムライナー、帝人フィルムソリューションズ株式会社製、商品名「ピューレックスA50」、厚さ50μm、酸素透過度16)を積層した。第二のフィルム13が型20に均一に密着するように、第二のフィルム13上にゴムローラーを適用して一体品50を作製した。ブラックライトランプを用いて、一体品50の第二のフィルム13側5.5cmの距離から15分間UV照射を行い、硬化性組成物に含まれるアクリル単量体を重合させ(照射条件:UV-A(波長315~380nm)、7.46mW/cm)、続いて、型20から熱伝導性成形体60を脱型した。
【0077】
<熱伝導性成形体の硬化状態>
得られた熱伝導性成形体から第一のフィルムを剥離し、硬化性組成物の硬化状態を目視と指触で確認した。重合阻害が起こった場合は熱伝導性成形体の頂上部分及びフィルム表面には未硬化の硬化性組成物がうっすらと残って白濁していたが、重合阻害が起こらなかった場合にはフィルムは透明なままであった。また、重合阻害が起こらなかった場合の熱伝導性成形体の表面は、指触によりタックの存在を確認することができた。
【符号の説明】
【0078】
1…第一のフィルム、2…第二のフィルム、3…樹脂成形体、3a…第一の面、3b…第一の面とは反対側の面、100…熱伝導性成形体。
図1
図2
図3