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特許7085844シートモールディングコンパウンドの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】シートモールディングコンパウンドの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/16 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
B29B11/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018001037
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019119148
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503090980
【氏名又は名称】ジャパンコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】安宅 忍
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】小田 敬一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 貴史
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-017557(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221655(WO,A1)
【文献】特開昭50-108371(JP,A)
【文献】特開2018-126975(JP,A)
【文献】特開2016-164244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16,15/08-15/14
C08J 5/04-5/10,5/24
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を連続的に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に対して上側に配置され、強化繊維をカットして、カットした強化繊維を前記樹脂組成物に落下させるカッティング装置と、
鉛直方向における前記搬送装置と前記カッティング装置との間に配置され、前記カッティング装置から落下する強化繊維が一旦接触する接触面を備える落下方向制御装置と、を備え、
前記接触面は、前記搬送装置による前記樹脂組成物の搬送方向および鉛直方向の両方向と交差する方向に延び、鉛直方向において異なる位置に端部を有し、
前記搬送装置と前記カッティング装置との間において、前記接触面と向かい合うように配置され、前記カッティング装置から落下する強化繊維を分散させて前記接触面に供給する分散装置をさらに備え、
前記分散装置は、鉛直方向および前記搬送方向の両方向と交差する方向に延びる軸線を中心として回転する回転体を備え、
前記落下方向制御装置は、前記回転体に対して搬送方向の下流側のみ、または、上流側のみに間隔を空けて配置されることを特徴とする、シートモールディングコンパウンドの製造装置。
【請求項2】
前記接触面は、水平方向に対して交差するように延び、
前記接触面と水平方向とがなす角の角度は、60°以上90°以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置。
【請求項3】
前記強化繊維は、ガラス繊維であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートモールディングコンパウンドの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物を、ガラス繊維などのチョップドストランドに含浸させたシートモールディングコンパウンドが知られている。シートモールディングコンパウンドは、所定形状に成形し硬化させることにより、種々の産業製品に利用される。
【0003】
そのようなシートモールディングコンパウンドを製造するには、例えば、所定方向に搬送する樹脂組成物に対して上側から、チョップドストランドを落下させる。
【0004】
そのようにチョップドストランドを落下させるときに、チョップドストランドが互いに凝集してしまい、チョップドストランドを樹脂組成物の全体に均一に供給できない場合がある。
【0005】
そこで、落下するチョップドストランドの凝集を解消できるシートモールディングコンパウンドの製造装置が種々検討されている。
【0006】
例えば、ガラス繊維カッターローラと、ガラス繊維カッターローラに対向配置されるゴムローラと、ガラス繊維カッターローラの下方に位置する回転ドラムと、回転ドラムの下方に位置する基材搬送装置と、を備えるガラス繊維切断装置が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0007】
そのようなガラス繊維切断装置では、ガラス繊維カッターローラとゴムローラとの間においてガラス繊維ロービングが切断され、切断されたガラス繊維のチョップドストランドが、回転ドラムにより叩き上げられる。これにより、互いに凝集するチョップドストランドがほぐされ、チョップドストランドの凝集が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-17557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、特許文献1に記載のガラス繊維切断装置では、チョップドストランドは、回転ドラムにより叩き上げられた後、基材搬送装置により搬送される熱硬化性樹脂組成物に自然落下する。
【0010】
このとき、チョップドストランドは、空気抵抗などにより、主にその長さ方向が鉛直方向に沿うように落下した後、所定方向に搬送される樹脂組成物に到達する。すると、チョップドストランドは、樹脂組成物が所定方向に搬送されているために、その下端部を支点として樹脂組成物の搬送方向に倒れる。これによって、シートモールディングコンパウンドにおいて、チョップドストランドは、主に樹脂組成物の搬送方向に配向される。
【0011】
そのようなシートモールディングコンパウンドの成形品では、チョップドストランドの配向方向(樹脂組成物の搬送方向)に強度を確保できる一方、チョップドストランドの配向方向(樹脂組成物の搬送方向)と直交する方向において強度を十分に確保できないという不具合がある。つまり、シートモールディングコンパウンドの成形品において強度に異方性が生じる。
【0012】
本発明は、搬送方向に配向される強化繊維と、搬送方向と交差する方向に配向される強化繊維とをバランスよく含有できるシートモールディングコンパウンドを円滑に製造できるシートモールディングコンパウンドの製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明[1]は、樹脂組成物を連続的に搬送する搬送装置と、前記搬送装置に対して上側に配置され、強化繊維をカットして、カットした強化繊維を前記樹脂組成物に落下させるカッティング装置と、鉛直方向における前記搬送装置と前記カッティング装置との間に配置され、前記カッティング装置から落下する強化繊維が一旦接触する接触面を備える落下方向制御装置と、を備え、前記接触面は、前記搬送装置による前記樹脂組成物の搬送方向および鉛直方向の両方向と交差する方向に延び、鉛直方向において異なる位置に端部を有する、シートモールディングコンパウンドの製造装置を含む。
【0014】
このような構成によれば、強化繊維は、カッティング装置によりカットされた後、カッティング装置から落下した後、落下方向制御装置が備える接触面に一旦接触する。
【0015】
このとき、接触面が、搬送方向および鉛直方向の両方向と交差する方向に延び、鉛直方向において異なる位置に端部を有することから、強化繊維は、接触面との摩擦により、その長さ方向が搬送方向および鉛直方向の両方向と交差する方向に沿うように徐々に傾倒しながら、接触面上を滑り落ちる。
【0016】
その後、接触面から自由落下した強化繊維は、接触面上での傾倒の度合いにより、樹脂組成物に落下したときに、樹脂組成物の搬送方向に沿うように倒れて、搬送方向に配向したり、搬送方向と交差する方向に倒れて、鉛直方向および搬送方向の両方向と交差する方向に配向する。
【0017】
その結果、シートモールディングコンパウンドは、搬送方向に配向される強化繊維と、搬送方向と交差する方向に配向される強化繊維とをバランスよく含有することができる。これによって、シートモールディングコンパウンドの成形品において、強度の異方性を低減することができる。
【0018】
本発明[2]は、前記搬送装置と前記カッティング装置との間において、前記接触面と向かい合うように配置され、前記カッティング装置から落下する強化繊維を分散させて前記接触面に供給する分散装置をさらに備える、上記[1]に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置を含む。
【0019】
このような構成によれば、カッティング装置から落下する強化繊維は、分散装置により分散されて接触面に供給される。そのため、強化繊維が互いに凝集した状態で接触面に供給されることを抑制でき、強化繊維を効率的に接触面と接触させることができる。
【0020】
本発明[3]は、前記分散装置は、鉛直方向および前記搬送方向の両方向と交差する方向に延びる軸線を中心として回転する回転体を備える、上記[2]に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置を含む。
【0021】
このような構成によれば、分散装置が回転体を備えるので、回転体が、回転することにより、カッティング装置から落下する強化繊維を円滑に分散させて接触面に供給することができる。
【0022】
本発明[4]は、前記接触面は、水平方向に対して交差するように延び、前記接触面と水平方向とがなす角の角度は、60°以上90°以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置を含む。
【0023】
このような構成によれば、接触面と水平方向とがなす角の角度が上記範囲であるので、接触面上に強化繊維が堆積することを抑制でき、接触面から強化繊維を円滑に落下させることができる。
【0024】
本発明[5]は、前記強化繊維は、ガラス繊維である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置を含む。
【0025】
このような構成によれば、シートモールディングコンパウンドの成形品において、強度の異方性を確実に低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置によれば、搬送方向に配向される強化繊維と、搬送方向と交差する方向に配向される強化繊維とをバランスよく含有できるシートモールディングコンパウンドを円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第1実施形態としてのSMC製造装置の概略構成図である。
図2図2Aは、図1に示すカッティング装置、分散装置および落下方向制御板の拡大図である。図2Bは、図2Aに示す分散装置および落下方向制御板の平面図である。図2Cは、図2Bに示す落下方向制御板の正面図である。
図3図3Aは、図2Aに示す回転体の第1実施形態としての多歯型回転体の斜視図を示す。図3Bは、図3Aに示す分散歯のセットの側面図である。図3Cは、図3Bに示す分散歯のセットに対して、60°位相がずれた分散歯のセットの側面図である。図3Dは、図3Cに示す分散歯のセットに対して、60°位相がずれた分散歯のセットの側面図である。
図4図4Aは、図2Aに示す回転体の第2実施形態としての多歯型回転体の斜視図を示す。図4Bは、図3Aに示す分散歯のセットの側面図である。図4Cは、図4Bに示す分散歯のセットに対して、45°位相がずれた分散歯のセットの側面図である。
図5図5Aは、図2Aに示す回転体の第3実施形態としての連子型回転体の正面図を示す。図5Bは、図5Aに示す連子型回転体の側断面である。
図6図6Aは、図2Aに示す回転体の第4実施形態としての角柱型回転体の正面図を示す。図6Bは、図6Aに示す角柱型回転体の側断面である。
図7図7は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第2実施形態に係るカッティング装置、分散装置および落下方向制御板の拡大図である。
図8図8は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第3実施形態に係るカッティング装置、分散装置および落下方向制御板の拡大図である。
図9図9は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第4実施形態に係るカッティング装置、分散装置および落下方向制御板の拡大図である。
図10図10は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第5実施形態に係るカッティング装置、分散装置および落下方向制御板の拡大図である。
図11図11は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第6実施形態に係るカッティング装置および落下方向制御板の拡大図である。
図12図12は、本発明のシートモールディングコンパウンドの製造装置の第7実施形態に係るカッティング装置および落下方向制御板の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.シートモールディングコンパウンドの製造装置の概略
図1を参照して、シートモールディングコンパウンドの製造装置1(以下、SMC製造装置1とする。)の概略について説明する。
【0029】
SMC製造装置1は、強化繊維と、強化繊維に含浸される樹脂組成物とを備えるシートモールディングコンパウンド(以下、SMCとする。)を、ロールツーロール方式により連続的に製造する。
【0030】
強化繊維として、例えば、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維など)、有機繊維(例えば、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維(全芳香族系繊維も含む)、フッ素樹脂系繊維、フェノール系繊維など)が挙げられる。
【0031】
このような強化繊維のなかでは、好ましくは、無機繊維が挙げられ、さらに好ましくは、ガラス繊維が挙げられる。以下では、強化繊維がガラス繊維である態様について、詳述する。
【0032】
図1において、紙面上下方向は鉛直方向であり、紙面上側は鉛直方向上側(以下、単に上側とする。)であり、紙面下側は鉛直方向下側(以下、単に下側とする。)である。
【0033】
また、図1において、紙面左右方向は、鉛直方向と直交する第1の水平方向であり、樹脂組成物の搬送方向(以下、単に搬送方向とする。)の一例である。紙面左側は搬送方向上流側であり、紙面右側は搬送方向下流側である。
【0034】
また、図1において、紙面厚み方向は、鉛直方向および第1の水平方向の両方向と直交する第2の水平方向であり、搬送方向および鉛直方向の両方向と直交する幅方向の一例である。紙面手前側は幅方向の一方側であり、紙面奥側は幅方向の他方側である。具体的には、方向は、各図に記載の方向矢印従う。
【0035】
SMC製造装置1は、搬送装置の一例としてのキャリア樹脂搬送装置2と、カッティング装置3と、分散装置4と、落下方向制御装置の一例としての落下方向制御板5と、カバー樹脂供給装置6と、押圧ユニット7とを備える。
【0036】
キャリア樹脂搬送装置2は、樹脂組成物を連続的に搬送する。キャリア樹脂搬送装置2は、キャリアシート供給ユニット26と、第1ドクターブレード24とを備える。
【0037】
キャリアシート供給ユニット26は、キャリアシート供給ロール20と、巻き取りロール21と、第1ロール22と、第2ロール23とを備える。
【0038】
キャリアシート供給ロール20は、キャリアシート25を連続的に送出可能である。キャリアシート供給ロール20は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。キャリアシート供給ロール20の周面には、キャリアシート25が巻回されている。
【0039】
キャリアシート25は、可撓性を有する樹脂シートである。キャリアシート25は、所定の厚みを有し、厚み方向と直交する方向に延びる長尺かつ平帯形状を有する。キャリアシート25は、キャリアシート供給ロール20の周面に渦巻き状に巻回されている。
【0040】
巻き取りロール21は、キャリアシート供給ロール20から供給されるキャリアシート25を巻き取り可能であり、キャリアシート25上に製造されるSMCを巻き取り可能である。巻き取りロール21は、キャリアシート供給ロール20に対して、搬送方向の下流側に間隔を空けて配置される。巻き取りロール21は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0041】
第1ロール22は、キャリアシート供給ロール20に対して、上側かつ搬送方向の下流側に間隔を空けて配置される。第1ロール22は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0042】
第2ロール23は、第1ロール22に対して搬送方向の下流側に間隔を空けて配置され、搬送方向に投影したときに第1ロール22と重なるように位置する。また、第2ロール23は、巻き取りロール21に対して上側かつ搬送方向の上流側に間隔を空けて配置される。第2ロール23は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0043】
キャリアシート供給ユニット26において、キャリアシート25は、キャリアシート供給ロール20から第1ロール22に向かって送出された後、第1ロール22および第2ロール23を通過し、次いで、巻き取りロール21に向かって移動し、その後、巻き取りロール21に巻き取られる。キャリアシート25は、第1ロール22と第2ロール23との間において、水平方向に沿うように配置される。
【0044】
第1ドクターブレード24は、キャリアシート25上に供給される樹脂組成物の厚みを規制して、キャリアシート25上に樹脂組成物層を形成する。第1ドクターブレード24は、幅方向に延びる平板形状を有する。第1ドクターブレード24は、第1ロール22と第2ロール23との間に配置されるキャリアシート25に対して、上側に間隔を空けて配置される。
【0045】
カッティング装置3は、詳しくは後述するが、ガラス繊維(強化繊維の一例)をカットして、カットしたガラス繊維を、キャリアシート25上の樹脂組成物に落下させる。カッティング装置3は、キャリア樹脂搬送装置2に対して上側に間隔を空けて配置される。詳しくは、カッティング装置3は、第1ドクターブレード24に対して搬送方向の下流側において、キャリアシート25に対して上側に間隔を空けて配置される。
【0046】
分散装置4は、詳しくは後述するが、カッティング装置3から落下するガラス繊維を分散させて、落下方向制御板5に供給する。分散装置4は、鉛直方向におけるカッティング装置3とキャリア樹脂搬送装置2との間に配置される。詳しくは、分散装置4は、第1ドクターブレード24に対して搬送方向の下流側において、カッティング装置3とキャリアシート25との間に配置される。
【0047】
落下方向制御板5は、詳しくは後述するが、カッティング装置3から落下するガラス繊維と接触可能であり、接触するガラス繊維の落下方向を制御する。落下方向制御板5は、鉛直方向におけるキャリア樹脂搬送装置2とカッティング装置3との間に配置される。詳しくは、落下方向制御板5は、カッティング装置3とキャリアシート25との間に配置される。第1実施形態において、落下方向制御板5は、分散装置4に対して、搬送方向の下流側に間隔を空けて配置される。
【0048】
カバー樹脂供給装置6は、カッティング装置3からのガラス繊維が落下した樹脂組成物に対して、さらに樹脂組成物を供給する。カバー樹脂供給装置6は、落下方向制御板5に対して、搬送方向の下流側(第1ドクターブレード24の反対側)に位置する。
【0049】
カバー樹脂供給装置6は、カバーシート供給ユニット64と、第2ドクターブレード63とを備える。
【0050】
カバーシート供給ユニット64は、カバーシート供給ロール60と、第3ロール61と、第4ロール62とを備える。
【0051】
カバーシート供給ロール60は、カバーシート65を連続的に送出可能である。カバーシート供給ロール60は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。カバーシート供給ロール60の周面には、カバーシート65が巻回されている。カバーシート65は、上記したキャリアシート25と同様の構成を有する。そして、カバーシート65は、カバーシート供給ロール60の周面に渦巻き状に巻回されている。
【0052】
第3ロール61は、カバーシート供給ロール60に対して、搬送方向の上流側(カバーシート65の移動方向の下流側)に間隔を空けて配置される。第3ロール61は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0053】
第4ロール62は、第3ロール61に対して搬送方向の上流側(カバーシート65の移動方向の下流側)に間隔を空けて配置され、落下方向制御板5に対して搬送方向の下流側に間隔を空けて配置される。第4ロール62は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0054】
カバーシート供給ユニット64において、カバーシート65は、カバーシート供給ロール60から第3ロール61に向かって送出された後、第3ロール61を通過し、第4ロール62および後述するテンションロール73に沿ってUターンして、巻き取りロール21に向かう。カバーシート65は、第3ロール61と第4ロール62との間において、水平方向に沿うように配置される。
【0055】
第2ドクターブレード63は、カバーシート65上に供給される樹脂組成物の厚みを規制して、カバーシート65上に樹脂組成物層を形成する。第2ドクターブレード63は、幅方向に延びる平板形状を有する。第2ドクターブレード63は、第3ロール61と第4ロール62との間に配置されるカバーシート65に対して、上側に間隔を空けて配置される。
【0056】
押圧ユニット7は、搬送方向において、落下方向制御板5と第2ロール23との間に配置される。押圧ユニット7は、第1押圧ユニット70と、第2押圧ユニット71とを備える。第1押圧ユニット70および第2押圧ユニット71は、鉛直方向に互いに間隔を空けて配置される。
【0057】
第1押圧ユニット70は、第4ロール62に対して下側に間隔を空けて配置される。第1押圧ユニット70は、テンションロール73と、駆動ロール74と、無端ベルト72と、複数の加圧ロール75とを備える。
【0058】
テンションロール73および駆動ロール74は、搬送方向に互いに間隔を空けて配置される。テンションロール73および駆動ロール74のそれぞれは、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0059】
駆動ロール74は、モータなどの駆動源(図示せず)からの駆動力が入力される。駆動ロール74は、駆動力が入力されると、幅方向の一方側から見て反時計回り方向に回転する。
【0060】
無端ベルト72は、テンションロール73および駆動ロール74の周りに掛けられている。無端ベルト72は、テンションロール73および駆動ロール74の周りを移動可能である。
【0061】
複数の加圧ロール75は、無端ベルト72の内側に位置し、テンションロール73および駆動ロール74の間において、搬送方向に互いに間隔を空けて配置される。複数の加圧ロール75のそれぞれは、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0062】
第2押圧ユニット71は、第1押圧ユニット70に対して下側に配置されており、水平方向に対して、第1押圧ユニット70と線対称な構成を有する。なお、第2押圧ユニット71の駆動ロール74は、駆動力が入力されると、幅方向の一方側から見て時計回り方向に回転する。
【0063】
2.カッティング装置の詳細
次に、図2Aを参照して、カッティング装置3の詳細について説明する。
【0064】
カッティング装置3は、ガラス繊維の一例としてのガラスロービングGRを連続的にカットして、カットしたガラスロービング(以下、ガラスチョップGCとする。)を、キャリアシート25に搬送される樹脂組成物に落下させる。
【0065】
カッティング装置3は、カッティングロール30と、ゴムロール31とを備える。
【0066】
カッティングロール30は、ロール本体30Aと、複数の切断刃30Bとを備える。
【0067】
ロール本体30Aは、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。ロール本体30Aには、モータなどの駆動源(図示せず)からの駆動力が入力される。ロール本体30Aは、駆動力が入力されると、幅方向の一方側から見て反時計回り方向に回転する。
【0068】
複数の切断刃30Bは、ロール本体30Aの周面に配置される。複数の切断刃30Bのそれぞれは、ロール本体30Aの周面からロール本体30Aの径方向外側に突出し、幅方向に延びる。複数の切断刃30Bは、ガラスチョップGCの長さが後述する範囲となるように、ロール本体30Aの周方向に互いに間隔を空けて配置される。
【0069】
ゴムロール31は、カッティングロール30に対して、搬送方向の上流側および下流側のいずれにも配置可能である。第1実施形態では、ゴムロール31は、搬送方向の上流側に対向配置される。詳しくは、ゴムロール31は、ロール本体30Aに対して僅かに間隔を空けて配置され、複数の切断刃30Bと接触する。ゴムロール31は、幅方向に延びる円柱形状を有し、その軸線を中心として回転可能である。
【0070】
3.分散装置の詳細
次に、図2A図5Cを参照して、分散装置4の詳細について説明する。
【0071】
図2Aおよび図2Bに示すように、分散装置4は、落下方向制御板5の接触面50(後述)と向かい合うように配置され、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCを分散させて接触面50に供給する。分散装置4は、回転体40を備える。
【0072】
回転体40は、鉛直方向において、カッティング装置3と、第1ドクターブレード24(図1参照)および押圧ユニット7(図1参照)の間に位置するキャリアシート25との間に配置される。回転体40は、鉛直方向に投影したときに、ゴムロール31とロール本体30Aとの間の隙間と重なる。
【0073】
回転体40は、キャリアシート25に対して上側に間隔を空けて配置される。鉛直方向における回転体40とキャリアシート25との間の最小寸法L1は、例えば、50mm以上、好ましくは、100mm以上、例えば、500mm以下、好ましくは、300mm以下である。
【0074】
回転体40は、鉛直方向および搬送方向の両方向と交差する方向に延びる軸線40Aを中心として回転可能である。第1実施形態において、回転体40は、鉛直方向および搬送方向の両方向と直交する幅方向に延びており、軸線40Aは、幅方向に延びる。回転体40の幅方向の寸法は、キャリアシート25の幅方向の寸法よりも大きい。
【0075】
回転体40には、モータなどの駆動源(図示せず)からの駆動力が入力される。回転体40は、駆動力が入力されると回転する。なお、回転体40の回転方向は、特に制限されず、幅方向の一方側から見て、時計回り方向でもよく、反時計回り方向でもよい。第1実施形態では、回転体40は、幅方向の一方側から見て時計回り方向に回転する。
【0076】
このような回転体40の構成は、ガラスチョップGCを分散させて接触面50(後述)に供給することができれば、特に制限されない。
【0077】
回転体40として、例えば、図3A図4Cに示す多歯型回転体41、図5Aおよび図5Bに示す連子型回転体43、図6Aおよび図6Bに示す角柱型回転体44などが挙げられる。
【0078】
多歯型回転体41は、図3A図3Dに示すように、幅方向に延びる円柱形状を有するシャフト41Aと、複数の分散歯41Bとを備える。
【0079】
複数の分散歯41Bは、シャフト41Aの周面に配置される。複数の分散歯41Bのそれぞれは、シャフト41Aの周面からシャフト41Aの径方向外側に突出する円柱形状を有する。複数の分散歯41Bのそれぞれの外径は、例えば、2mm以上5mm以下である。
【0080】
複数の分散歯41Bは、シャフト41Aと直交する同一の仮想平面上に位置する分散歯41Bのセット41Sを、幅方向に間隔を空けて複数含んでいる。複数のセット41Sにおいて互いに隣り合うセット41Sは、シャフト41Aの周方向に所定角度ずつ位相がずれるように配置されている。
【0081】
図3A図3Dに示す多歯型回転体41において、セット41Sは、2つの分散歯41Bから構成される。各セット41Sにおいて、2つの分散歯41Bは、シャフト41Aに対して互いに反対側に位置し、シャフト41Aの周方向に180°の間隔を空けて配置される。そして、複数のセット41Sにおいて互いに隣り合うセット41Sは、シャフト41Aの周方向に60°位相がずれて配置される。このような多歯型回転体41において、互いに隣り合うセット41Sの間の間隔は、例えば、10mm以上30mm以下である。
【0082】
また、図4A図4Cに示す多歯型回転体41では、セット41Sは、4つの分散歯41Bから構成される。各セット41Sにおいて、4つの分散歯41Bは、シャフト41Aの周方向に90°の間隔を空けて配置される。そして、複数のセット41Sにおいて互いに隣り合うセット41Sは、シャフト41Aの周方向に45°位相がずれて配置される。
【0083】
図5Aおよび図5Bに示すように、連子型回転体43は、幅方向に延びる円柱形状を有するシャフト43Aと、1対の支持板43Bと、複数のバー43Cとを備える。
【0084】
1対の支持板43Bは、幅方向に互いに間隔を空けて対向配置される。1対の支持板43Bのそれぞれは、円板形状を有する。1対の支持板43Bの中央部分には、シャフト43Aが貫通しており、1対の支持板43Bは、シャフト43Aに固定されている。
【0085】
複数のバー43Cは、1対の支持板43Bの間に配置され、1対の支持板43Bに支持されている。複数のバー43Cのそれぞれは、幅方向に延びる円柱形状を有する。複数のバー43Cは、シャフト43Aの周囲において、シャフト43Aの周方向に間隔を空けて配置される。なお、図5Aおよび図5Bでは、複数(6つ)のバー43Cは、シャフト43Aの周方向に、互いに60°の間隔を空けて配置される。
【0086】
図6Aおよび図6Bに示すように、角柱型回転体44は、幅方向に延びる円柱形状を有するシャフト44Aと、角柱部44Bとを備える。
【0087】
角柱部44Bは、幅方向に延びる角柱形状(例えば、三角柱形状、四角角柱形状、六角柱形状など)を有する。なお、図6Aおよび図6Bでは、角柱部44Bは、六角柱形状を有する。角柱部44Bの中央部分には、シャフト44Aが貫通しており、角柱部44Bは、シャフト44Aに固定されている。
【0088】
4.落下方向制御板の詳細
次に、図2A図2Cを参照して、落下方向制御板5の詳細について説明する。
【0089】
図2Aおよび図2Bに示すように、落下方向制御板5は、第1実施形態において、搬送方向に投影したときに、回転体40と重なるように、回転体40に対して搬送方向の下流側に間隔を空けて配置される。
【0090】
落下方向制御板5は、幅方向に延びる平板形状を有し、水平方向と交差するように配置されている。図2Aでは、落下方向制御板5が、幅方向から見たときに鉛直方向に沿う態様を実線で示し、落下方向制御板5が、幅方向から見たときに鉛直方向に対して傾く態様を仮想線で示す。
【0091】
落下方向制御板5は、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCが一旦接触する接触面50を備える。第1実施形態では、接触面50は、カッティング装置3から落下した後、回転体40により供給されるガラスチョップGCと一旦接触する。
【0092】
接触面50は、搬送方向において回転体40に対して間隔を空けて向かい合う面であって、落下方向制御板5における搬送方向上流側の面である。搬送方向における回転体40と接触面50との間の最小寸法L2は、例えば、20mm以上、好ましくは、30mm以上、さらに好ましくは、40mm以上、例えば、150mm以下、好ましくは、70mm以下、さらに好ましくは、60mm以下である。
【0093】
接触面50は、搬送方向および鉛直方向の両方向と交差する方向に延びており、第1実施形態において、搬送方向および鉛直方向の両方向と直交する幅方向に延びる。接触面50の幅方向の寸法は、キャリアシート25の幅方向の寸法より大きく、回転体40の幅方向の寸法と略同じである。
【0094】
また、接触面50は、水平方向に対して交差するように延び、鉛直方向において異なる位置に端部を有する。詳しくは、接触面50は、鉛直方向に互いに間隔を空けて配置される上端部50Aおよび下端部50Bを有する。
【0095】
接触面50における水平方向に対して交差する方向の寸法、より具体的には、幅方向と直交し、かつ、水平方向と交差する方向における、上端部50Aおよび下端部50Bの間の寸法L3は、特に制限されないが、好ましくは、回転体40が回転したときの回転軌跡の外径よりも大きい。接触面50における水平方向に対して交差する方向の寸法(幅方向と直交し、かつ、水平方向と交差する方向における、上端部50Aおよび下端部50Bの間の寸法L3)は、回転体40が回転したときの回転軌跡の外径に対して、例えば、1.2倍以上、好ましくは、2倍以上、例えば、5倍以下、好ましくは、3倍以下である。
【0096】
また、鉛直方向における接触面50の下端部50Bとキャリアシート25との間の間隔L4の範囲は、上記の最小寸法L2の範囲と同じである。
【0097】
接触面50と水平方向とがなす角の角度は、例えば、30°以上、好ましくは、45°以上、さらに好ましくは、60°以上、例えば、90°以下である。
【0098】
接触面50と水平方向とがなす角の角度が上記範囲であると、接触面50からガラスチョップGCを円滑に落下させることができ、とりわけ、接触面50と水平方向とがなす角の角度が60°以上であると、ガラスチョップGCが接触面50上に堆積することを抑制できる。
【0099】
なお、図2Aでは、接触面50と水平方向とがなす角の角度が、90°である態様を実線に示し、接触面50と水平方向とがなす角の角度が、30°、45°および60°のそれぞれである態様を仮想線にて示す。
【0100】
このような接触面50は、平滑(鏡面)であってもよく、所定の表面粗さRを有してもよい。接触面50の表面粗さRは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、例えば、25μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0101】
なお、表面粗さRは、JIS B 0601(2001年)に準拠して測定できる。
【0102】
接触面50の表面粗さRが上記下限以上であると、ガラスチョップGCと接触面50との接触面積の低減を図ることができ、ガラスチョップGCが、接触面50に密着して接触面50上に堆積することを抑制できる。接触面50の表面粗さRが上記上限以下であると、ガラスチョップGCが、接触面50に引っかかり接触面50上に堆積することを抑制することができる。
【0103】
このような落下方向制御板5は、SMC製造装置1に固定されていてもよく、振動可能に構成されていてもよい。
【0104】
5.SMCの製造方法
次に、図1図2Cを参照して、SMCの製造方法について説明する。
【0105】
SMCの製造方法では、まず、樹脂組成物を準備する。
【0106】
樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂、および、ビニルモノマーを含む。
【0107】
熱硬化性樹脂として、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。熱硬化性樹脂のなかでは、好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0108】
ビニルモノマーとして、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレンなどが挙げられ、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0109】
さらに、樹脂組成物は、必要に応じて、公知の添加剤を適宜の割合で含有することができる。添加剤として、例えば、硬化剤、低収縮化剤、重合禁止剤、離型剤、充填材、増粘剤などが挙げられる。添加剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0110】
次いで、樹脂組成物をSMC製造装置1にセットする。詳しくは、樹脂組成物を、第1ドクターブレード24に対して搬送方向の上流側において、キャリアシート25上に供給する。また、樹脂組成物を、第2ドクターブレード63と第3ロール61との間において、カバーシート65上に供給する。なお、以下において、キャリアシート25上に供給される樹脂組成物を、樹脂組成物25Rとし、カバーシート65上に供給される樹脂組成物を、樹脂組成物65Rとする。
【0111】
次いで、駆動ロール74(第1押圧ユニット70の駆動ロール74および第2押圧ユニット71の駆動ロール74)に駆動力を入力する。すると、駆動ロール74の回転に伴って、キャリアシート25およびカバーシート65が、巻き取りロール21に向かって移動する。
【0112】
キャリアシート25の移動速度は、例えば、1m/min以上、好ましくは、5m/min以上、例えば、30m/min以下、好ましくは、20m/min以下、さらに好ましくは、15m/min以下、とりわけ好ましくは、12m/min以下である。
【0113】
キャリアシート25の移動速度が上記下限以上であれば、SMCの製造効率の向上を図ることができる。キャリアシート25の移動速度が上記上限以下であれば、SMCに、搬送方向に配向されるガラスチョップGCと、搬送方向と交差する方向に配向されるガラスチョップGCとをより一層バランスよく含有させることができる。
【0114】
なお、カバーシート65の移動速度の範囲は、キャリアシート25の移動速度の範囲と同じである。
【0115】
そして、キャリアシート25が移動すると、樹脂組成物25Rは、キャリアシート25の移動に伴って、第1ドクターブレード24により、所定の厚みを有する層状に形成される。また、カバーシート65が移動すると、樹脂組成物65Rは、カバーシート65の移動に伴って、第2ドクターブレード63により、所定の厚みを有する層状に形成される。
【0116】
次いで、樹脂組成物25Rは、キャリアシート25の移動により、カッティング装置3の下方に到達する。
【0117】
このとき、カッティング装置3では、図2Aに示すように、ロール本体30Aに駆動力が入力され、ロール本体30Aが回転するとともに、ガラスロービングGRが、ロール本体30Aとゴムロール31との間に連続的に供給される。
【0118】
そして、ロール本体30Aの回転により、複数の切断刃30Bが、ガラスロービングGRを連続的にカットする。これによって、所定の長さを有するガラスチョップGCが、カッティング装置3から連続的に落下する。
【0119】
なお、ガラスチョップの長さ方向の寸法は、例えば、5mm以上、好ましくは、10mm以上、さらに好ましくは、20mm以上、例えば、50mm以下、好ましくは、40mm以下、さらに好ましくは、30mm以下である。
【0120】
また、分散装置4では、回転体40に駆動力が入力され、回転体40が回転している。
【0121】
回転体40の回転速度は、例えば、25rpm以上、好ましくは、50rpm以上、例えば、1000rpm以下、好ましくは、500rpm以下である。
【0122】
そして、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCは、回転体40に到達して、回転する回転体40と接触する。
【0123】
すると、ガラスチョップGCは、回転する回転体40により、互いに凝集した状態が解消するように分散されて、落下方向制御板5の接触面50に供給される。
【0124】
そして、図2Cに示すように、ガラスチョップGCは、接触面50と効率的に接触して、接触面50上を滑り落ちる。
【0125】
このとき、ガラスチョップGCは、接触面50との摩擦により、その長さ方向が幅方向に沿うように徐々に傾倒していく。例えば、接触面50と比較的長い距離接触したガラスチョップGCは、その長さ方向が比較的幅方向に近くなり、接触面50と比較的短い距離接触したガラスチョップGCは、その長さ方向が比較的鉛直方向と近い状態を維持する。
【0126】
その後、ガラスチョップGCは、接触面50から、落下方向制御板5の下方を通過する樹脂組成物25Rに落下する。
【0127】
そして、図2Bに示すように、接触面50から自由落下したガラスチョップGCは、接触面50上での傾倒の度合いにより、樹脂組成物25Rに落下したときに、樹脂組成物25Rの搬送方向に沿うように倒れて、搬送方向に配向したり、搬送方向と交差する方向に倒れて、鉛直方向および搬送方向の両方向と交差する方向に配向する。
【0128】
次いで、図1に示すように、ガラスチョップGCが落下した樹脂組成物25Rは、カバーシート65により搬送される樹脂組成物65Rと連続的に合流する。このとき、ガラスチョップGCは、キャリアシート25に搬送される樹脂組成物25Rと、カバーシート65に搬送される樹脂組成物65Rとの間に挟まれる。
【0129】
これによって、キャリアシート25とカバーシート65との間において、ガラスチョップGCと、ガラスチョップGCに含浸される樹脂組成物とを備えるSMCが調製される。
【0130】
そして、SMCは、キャリアシート25に搬送されて、第1押圧ユニット70および第2押圧ユニット71の間に到達し、キャリアシート25およびカバーシート65を介して、鉛直方向の両側から加圧される。その後、SMCは、順次、巻き取りロール21に巻き取られる。
【0131】
以上によって、SMCが連続的に製造される。
【0132】
SMCにおけるガラス繊維(ガラスチョップGC)の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0133】
また、SMCの単位面積当たりの質量は、例えば、2.0kg/m以上、好ましくは、3.0kg/m以上、例えば、8.0kg/m以下、好ましくは、6.0kg/m以下である。
【0134】
このようなSMCは、加熱硬化するとともに、公知の成形方法により成形することにより、SMCの成形品として調製される。SMCの成形品は、強度の異方性が低減されており、優れた強度の等方性を有する。
【0135】
搬送方向におけるSMCの成形品の曲げ強さは、例えば、50MPa以上、好ましくは、100MPa以上、例えば、400MPa以下、好ましくは、250MPa以下である。
【0136】
なお、SMCの成形品の曲げ強さは、JIS K6911(1995年)に準拠して測定できる。
【0137】
また、搬送方向におけるSMCの成形品の曲げ強さに対する、搬送方向と直交する方向におけるSMCの成形品の曲げ強さの比率は、例えば、0.8以上、好ましくは、0.90以上、さらに好ましくは、0.95以上、例えば、1.25以下、好ましくは、1.10以下、さらに好ましくは、1.05以下である。
【0138】
6.作用効果
図2Aに示すように、ガラスチョップGCは、カッティング装置3によりカットされた後、カッティング装置3から落下した後、落下方向制御板5が備える接触面50に一旦接触する。
【0139】
このとき、図2Cに示すように、接触面50が、幅方向に延び、鉛直方向において異なる位置に上端部50Aおよび下端部50Bを有することから、ガラスチョップGCは、接触面50との摩擦により、その長さ方向が幅方向に沿うように徐々に傾倒しながら、接触面50上を滑り落ちる。
【0140】
その後、接触面50から自由落下したガラスチョップGCは、接触面50上での傾倒の度合いにより、樹脂組成物に落下したときに、樹脂組成物の搬送方向に沿うように倒れて、搬送方向に配向したり、搬送方向と交差する方向に倒れて、鉛直方向および搬送方向の両方向と交差する方向に配向する。
【0141】
その結果、SMCは、搬送方向に配向されるガラスチョップGCと、搬送方向と交差する方向に配向されるガラスチョップGCとをバランスよく含有することができる。これによって、SMCの成形品において、強度の異方性を低減することができる。
【0142】
図2Aに示すように、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCは、分散装置4により分散されて接触面50に供給される。そのため、ガラスチョップGCが互いに凝集した状態で接触面50に供給されることを抑制でき、ガラスチョップGCを効率的に接触面50と接触させることができる。
【0143】
また、分散装置4は、回転体40を備える。そのため、回転体40が回転することにより、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCを円滑に分散させて接触面50に供給することができる。
【0144】
また、接触面50と水平方向とがなす角の角度は、上記範囲である。そのため、接触面50上にガラスチョップGCが堆積することを抑制でき、接触面50からガラスチョップGCを円滑に落下させることができる。
【0145】
7.変形例
上記の第1実施形態では、落下方向制御板5が、回転体40に対して搬送方向の下流側に配置され、搬送方向に投影したときに、回転体40と重なるが、落下方向制御板5の配置は、これに限定されない。
【0146】
例えば、図7に示すように、落下方向制御板5は、回転体40に対して下側に配置され、回転体40とキャリアシート25との間に位置してもよい。
【0147】
また、図8に示すように、落下方向制御板5は、回転体40に対して、搬送方向の上流側に配置されてもよい。この場合、回転体40は、駆動力が入力されると、幅方向の一方側から見て反時計回り方向に回転する。
【0148】
上記の第1実施形態では、分散装置4は、回転体40を備えるが、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCを分散させることができれば、これに限定されない。
【0149】
例えば、図9に示すように、分散装置4は、回転体40に代えて、ふるい45を備えてもよい。ふるい45は、鉛直方向において、カッティング装置3と落下方向制御板5との間に配置される。ふるい45は、ガラスチョップGCが通過可能な複数の開口を有する。ふるい45は、水平方向に揺動可能である。そして、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCは、ふるい45を通過するときに、分散されて接触面50に供給される。
【0150】
また、図10に示すように、分散装置4は、回転体40に代えて、格子部46を備えてもよい。格子部46は、鉛直方向において、カッティング装置3と落下方向制御板5との間に配置される。格子部46は、鉛直方向に延びる複数の第1枠と、水平方向に延びる複数の第2枠とを備える。複数の第1枠および第2枠は、ガラスチョップGCが通過可能な複数の開口を区画するように、格子状に組み合わされている。そして、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCは、格子部46を通過するときに、分散されて接触面50に供給される。
【0151】
上記の第1実施形態では、SMC製造装置1は、分散装置4を備えるが、SMC製造装置1は、図11に示すように、分散装置4を備えなくてもよい。この場合、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCは、落下方向制御板5の接触面50に直接落下して、接触面50と接触する。
【0152】
上記の第1実施形態では、SMC製造装置1は、1つの落下方向制御板5を備えるが、SMC製造装置1は、図12に示すように、複数の落下方向制御板5を備えてもよい。この場合、複数の落下方向制御板5は、カッティング装置3から落下するガラスチョップGCが、複数の落下方向制御板5の接触面50に順次接触するように配置される。
【0153】
上記した実施形態では、強化繊維がガラス繊維である態様について詳述するが、上記した実施形態における各種条件(例えば、寸法、移動速度、物性、含有割合など)は、ガラス繊維以外の強化繊維についても同様に適用可能である。
【0154】
これら変形例によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0155】
上記の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【実施例
【0156】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0157】
<実施例1~9>
不飽和ポリエステル樹脂80質量部(ジャパンコンポジット社製、ポリホープ6619)、ポリスチレンのスチレン溶液20質量部(低収縮化剤、ジャパンコンポジット社製、ポリホープ9965)、パラベンゾキノン(重合禁止剤)0.05質量部、t-ブチルパーオキシベンゾエート(硬化剤)1.0質量部、ステアリン酸亜鉛(離型剤)5質量部、炭酸カルシウム(充填材)140質量部、および、酸化マグネシウム(増粘剤)1.0質量部を混合して、樹脂組成物を調製した。
【0158】
次いで、樹脂組成物およびガラスロービング(強化繊維)を、図1および図2に示すSMC製造装置にセットして、SMCを製造した。
【0159】
SMC製造装置において、落下方向制御板は、分散装置に対して搬送方向の下流側に配置されていた。回転体は、幅方向一方側から見て時計回り方向に回転し、その回転速度は、100rpmであった。
【0160】
また、落下方向制御板の接触面と水平方向とがなす角の角度、回転体の態様、および、キャリアシートの移動速度を、表1に示す。
【0161】
得られたSMCにおいて、ガラスチョップの長さは25mmであり、ガラスチョップの含有割合は25質量%であった。また、SMCの単位面積当たりの質量は、4.0kg/mであった。
【0162】
<実施例10>
樹脂組成物およびガラスロービングを、図8に示すSMC製造装置にセットしたこと以外は、実施例1と同様にして、SMCを製造した。
【0163】
SMC製造装置において、落下方向制御板は、分散装置に対して搬送方向の上流側に配置されていた。
【0164】
<実施例11>
樹脂組成物およびガラスロービングを、図8に示すSMC製造装置にセットしたこと以外は、実施例4と同様にして、SMCを製造した。
【0165】
<実施例12>
強化繊維をガラスロービングから炭素繊維(東レ社製、T700SC-12000)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、SMCを製造した。得られたSMCにおいて、炭素繊維チョップの長さは25mmであり、SMCの単位面積当たりの質量は、3.7kg/mであった。
【0166】
<比較例1>
SMC製造装置が分散装置および落下方向制御板を備えないこと以外は、実施例1と同様にして、SMCを製造した。
【0167】
<比較例2>
SMC製造装置が落下方向制御板を備えないこと以外は、実施例1と同様にして、SMCを製造した。
【0168】
<比較例3~5>
SMC製造装置が落下方向制御板を備えないこと、および、キャリアシートの移動速度を表1に従って変更したこと以外は、実施例10と同様にして、SMCを製造した。
【0169】
<比較例6>
強化繊維をガラスロービングから炭素繊維(東レ社製、T700SC-12000)に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、SMCを製造した。炭素繊維チョップの長さは25mmであり、SMCの単位面積当たりの質量は、3.7kg/mであった。
【0170】
<<評価>>
(曲げ強さ)
各実施例および比較例において得られたSMCを、40℃で48時間熟成させ加熱圧縮成形可能な状態になるまで増粘させた。
【0171】
次いで、SMCから、290mm×290mmのSMC片を2枚切り出し、切り出したSMC片を、それらの向き(搬送方向)が同じになるように重ね合わせた。次いで、重ねられたSMC片を、加熱圧縮成型して、厚み4mmの平板状の成形品を得た。成形温度は140℃、成形圧力は10MPa、保持時間は420秒であった。
【0172】
その後、成形品を冷却した後、成形品から、搬送方向に長手な試験片(長さ80mm、幅10mm)と、搬送方向と直交する直交方向に長手な試験片(長さ80mm、幅10mm)とを切り出した。
【0173】
そして、2つの試験片の曲げ強さを、JIS K6911(1995年)に準拠して測定した。また、それら2つの試験片の曲げ強さの比率(搬送方向に長手な試験片の曲げ強さ/搬送方向と直交する直交方向に長手な試験片の曲げ強さ)を算出した。その結果を表1に示す。
【0174】
(強化繊維チョップの堆積)
各実施例におけるSMCの製造において、落下方向制御板に対する強化繊維チョップの堆積の有無を目視により確認した。その結果を表1に示す。
【0175】
(強化繊維チョップの含浸状態)
各実施例および比較例において得られたSMCを、300mm×300mmの大きさに切り出して、強化繊維チョップに対する樹脂組成物の含浸状態を目視により、以下の基準で評価した。
◎:樹脂組成物が含浸されていない強化繊維チョップ(ドライ強化繊維)が確認されない。
○:樹脂組成物が含浸されていない強化繊維チョップ(ドライ強化繊維)が1~4箇所確認される。
△:樹脂組成物が含浸されていない強化繊維チョップ(ドライ強化繊維)が5箇所確認される。
【0176】
【表1】
【0177】
<<考察>>
実施例1~12(SMC製造装置が落下方向制御板を備える態様)のSMCの成形品は、比較例1~6(SMC製造装置が落下方向制御板を備えない態様)のSMCの成形品と比較して、上記の曲げ強さの比率が1.0に近くなり、優れた強度の等方性を有することが確認された。
【0178】
とりわけ、実施例1~3、6、7および12(接触面と水平方向とがなす角の角度が60°以下である態様)のSMCの成形品は、上記の曲げ強さの比率が1.0±0.03以下であり、より一層優れた強度の等方性を有することが確認された。
【0179】
しかし、実施例6および7(接触面と水平方向とがなす角の角度が45°以下である場合)では、SMCの製造において、落下方向制御板に強化繊維チョップが堆積することが確認され、落下方向制御板に堆積した強化繊維チョップが、樹脂組成物に落下することにより生じる含浸状態の不均一化が確認された。
【符号の説明】
【0180】
1 SMC製造装置
2 キャリア樹脂搬送装置
3 カッティング装置
4 分散装置
5 落下方向制御板
40 回転体
40A 軸線
41 多歯型回転体
43 連子型回転体
44 角柱型回転体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12