(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】映像表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220610BHJP
H04N 21/24 20110101ALI20220610BHJP
H04N 21/433 20110101ALI20220610BHJP
【FI】
H04N7/18 U
H04N21/24
H04N21/433
(21)【出願番号】P 2018004190
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501159133
【氏名又は名称】株式会社キッズウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 尚
(72)【発明者】
【氏名】川本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】永井 和志
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-18525(JP,A)
【文献】特開2015-170874(JP,A)
【文献】特開2005-20047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影して映像データを生成する
複数の撮影装置と、前記撮影装置から無線送信される映像データを保存用映像データとして第1記憶部に記憶するサーバ装置とを有し、前記保存用映像データを表示装置に表示することの可能な映像表示システムであって、
前記撮影装置は、被写体を撮影することにより得られる映像データを補完用映像データとして記憶する第2記憶部を備え、
前記サーバ装置は、前記第1記憶部に記憶されている保存用映像データに欠損部分が存在すると判定することに基づいて、当該欠損部分に対応する補完用映像データを前記撮影装置から取得する映像データ補完処理を実行する
とともに、
前記映像データ補完処理について、複数の前記撮影装置に対して予め設定された順序で、且つ、複数の前記撮影装置のうちの2つ以上の前記撮影装置に対して並列に実行する
映像表示システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、前記第1記憶部に記憶されている保存用映像データに複数の欠損部分が存在する場合、前記映像データ補完処理において、複数の前記欠損部分のうち、時間的に古い欠損部分に対応する補完用映像データを前記撮影装置から優先的に取得する
請求項1に記載の映像表示システム。
【請求項3】
前記サーバ装置は、
前記撮影装置から送信された映像データに対して所定の映像処理を行うことにより前記保存用映像データを生成するものであり、
前記撮影装置から送信された映像データに対して前記所定の映像処理を行った際に異常が発生することをもって、前記保存用映像データに欠損部分が発生したと判定する
請求項1又は2に記載の映像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の画像表示システムがある。特許文献1に記載の画像表示システムでは、カメラにより撮像された画像データがリアルタイムでサーバ装置に無線送信されて記憶される。サーバ装置に記憶されている画像データは、パーソナルコンピュータ等で表示することが可能となっている。
【0003】
このような画像表示システムでは、公衆無線回線網の異常などによりカメラとサーバ装置との間の無線通信が確立できなくなった場合、カメラからサーバ装置に画像データを送信することができなくなる。これは、サーバ装置に記憶されている画像データに欠損を生じさせる要因となる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の画像表示システムのカメラは、画像データをサーバ装置に送信している際にサーバ装置との無線通信が確立されているか否かを監視している。カメラは、サーバ装置との無線通信が確立されていないと判定したとき、画像データをSDカードに記憶させる。その後、カメラは、サーバ装置との無線通信が確立されたと判定したときに、SDカードに記憶されている画像データをサーバ装置に送信することにより、サーバ装置に記憶されている画像データの欠損を補完する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の画像表示システムでは、カメラとサーバ装置との間の無線通信が不安定な場合、カメラとサーバ装置との間の無線通信が確立されてはいるものの、カメラからサーバ装置に画像データを送信することが難しい状況、あるいは画像データを送信することができない状況が生じ得る。このような状況では、サーバ装置がカメラの画像データを適切に取得することができないため、サーバ装置に記憶されている画像データに欠損が生じる。
【0007】
一方、カメラとサーバ装置との間の無線通信が不安定な状況では、カメラとサーバ装置との間の無線通信が完全に遮断されている状態になっておらず、それらの無線通信がかろうじて確立されている可能性がある。このような場合、サーバ装置との無線通信が確立されているとカメラが判定すると、カメラは、画像データをSDカードに記憶させる処理を実行しない。このような状況では、サーバ装置に記憶されている画像データの欠損部分を、SDカードに記憶されている画像データを用いて補完することができない。このように、特許文献1に記載の画像表示システムでは、カメラとサーバ装置との間の無線通信が不安定な状況において、サーバ装置に記憶されている画像データの欠損を補完できない可能性がある。
【0008】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サーバ装置に記憶されている映像データをより的確に補完することの可能な映像表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する映像表示システムは、被写体を撮影して映像データを生成する撮影装置と、撮影装置から無線送信される映像データを保存用映像データとして第1記憶部に記憶するサーバ装置とを有し、保存用映像データを表示装置に表示することが可能である。撮影装置は、被写体を撮影することにより得られる映像データを補完用映像データとして記憶する第2記憶部を備える。サーバ装置は、第1記憶部に記憶されている保存用映像データに欠損部分が存在すると判定することに基づいて、当該欠損部分に対応する補完用映像データを撮影装置から取得する映像データ補完処理を実行するとともに、前記映像データ補完処理について、複数の前記撮影装置に対して予め設定された順序で、且つ、複数の前記撮影装置のうちの2つ以上の前記撮影装置に対して並列に実行する。
【0010】
この構成によれば、撮影装置との無線通信が不安定化することによりサーバ装置が映像データを適切に取得することができずに保存用映像データに欠損部分が生じた場合でも、サーバ装置が映像データ補完処理を実行することにより、保存用映像データの欠損部分が、撮影装置の第2記憶部に記憶されている補完用映像用データにより補完される。これにより、より的確にサーバ装置に記憶されている映像データの欠損部分を補完することが可能となる。
【0011】
また、この構成によれば、複数の撮影装置が存在する場合に、より早期に保存用映像データの欠損部分を補完することができる。
【0012】
さらに、この構成によれば、複数の撮影装置のうちの一つの撮影装置に対応する保存用映像データの補完だけが大幅に遅れるような状況を回避することができる。
【0013】
上記の映像表示システムにおいて、サーバ装置は、第1記憶部に記憶されている保存用映像データに複数の欠損部分が存在する場合、映像データ補完処理において、複数の欠損部分のうち、時間的に古い欠損部分に対応する補完用映像データを撮影装置から優先的に取得することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、時間的に古い保存用映像データの欠損部分から順に補完することができる。
上記の映像表示システムにおいて、サーバ装置は、撮影装置から送信された映像データに対して所定の映像処理を行うことにより保存用映像データを生成するものであり、撮影装置から送信された映像データに対して所定の映像処理を行った際に異常が発生することをもって、保存用映像データに欠損部分が発生したと判定することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、保存用映像データに欠損部分が存在するか否かを容易に判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、サーバ装置に記憶されている映像データをより的確に補完することの可能な映像表示システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態の映像表示システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の撮影装置の記憶媒体に記憶されている補完用映像データの一例を示す図表である。
【
図3】
図3は、実施形態のサーバ装置の記憶媒体に記憶されている保存用映像データの一例を示す図表である。
【
図4】
図4は、実施形態のサーバ装置により実行される映像データ記憶処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態のサーバ装置の記憶媒体に記憶されている欠損テーブルの一例を示す図表である。
【
図6】
図6は、実施形態のサーバ装置により実行される映像データ補完処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態のサーバ装置の記憶媒体に記憶されている撮影装置リストの一例を示す図表である。
【
図8】
図8は、実施形態の第1映像データ補完処理及び第2映像データ補完処理の動作例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、映像表示システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、本実施形態の映像表示システム10は、複数の撮影装置20a~20cと、無線通信部30と、サーバ装置40と、表示装置50とを備えている。
【0019】
複数の撮影装置20a~20cは同一の構造を有している。そのため、以下では、複数の撮影装置20a~20cのうちの一つの撮影装置20aの構造について代表して説明する。
撮影装置20aは、工事現場等の予め定められた場所に設置されており、その場所の状況を撮像する。撮影装置20aは、演算処理部21と、撮像素子22と、記憶媒体23と、プログラム格納メモリ24とを備えている。
【0020】
撮像素子22は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等からなるものであって、撮像領域内の被写体を撮像することに画像データを生成するとともに、生成された画像データを演算処理部21に送信する。
記憶媒体23は、SDカードを含むフラッシュメモリ等の不揮発性メモリからなる。記憶媒体23では、データの書き込み及び読み込みが可能である。本実施形態では、記憶媒体23が第2記憶部に相当する。
【0021】
演算処理部21は、プログラム格納メモリ24に予め記憶されている各種プログラムを実行することにより撮影装置20aを制御するための各種処理を行う。具体的には、演算処理部21は、撮像素子22から送信される画像データを所定の録画形式の映像データに変換するとともに、変換した映像データを記憶媒体23に常時記憶させる処理を行う。この処理において、演算処理部21は、所定の単位録画時間Ta毎に映像データを記憶媒体23に記憶させる。これにより、記憶媒体23には、
図2に示されるように、単位録画時間Ta毎の複数の映像データVDS(t)~VDS(t-m・Ta)が記憶されることになる。なお、「t」は現在の時刻を示す。また、「m」は2以上の整数を示す。以下では、記憶媒体23に記憶されている映像データVDS(t)~VDS(t-m・Ta)を「補完用映像データVDS(t)~VDS(t-m・Ta)」とも称する。また、補完用映像データVDS(t)~VDS(t-m・Ta)をまとめて「補完用映像データVDS」とも称する。
【0022】
図1に示されるように、演算処理部21は、撮影装置20aとは別に設けられる無線通信部30と有線通信可能に接続されている。無線通信部30は、携帯電話網60の基地局61と無線通信を行うことにより、インターネット網62に接続可能である。インターネット網62には、サーバ装置40が接続されている。すなわち、演算処理部21は、無線通信部30を介してサーバ装置40と無線通信を行うことが可能となっている。演算処理部21は、撮像素子22から送信される画像データを所定の録画形式の映像データVDRに変換するとともに、変換した映像データVDRを無線通信部30によりサーバ装置40にリアルタイムで常時無線送信する処理も行っている。以下では、撮影装置20aからサーバ装置40に常時送信されている映像データVDRを「リアルタイム映像データVDR」とも称する。
【0023】
サーバ装置40は、複数の撮影装置20a~20cからそれぞれ送信される映像データを記憶するとともに、表示装置50からの要求に応じて映像データを表示装置50に表示する。サーバ装置40は、演算処理部41と、記憶媒体42とを備えている。
記憶媒体42は、大容量のデータを記憶可能なハードディスクドライブ等からなる。記憶媒体42では、データの書き込み及び読み込みが可能である。記憶媒体42には、演算処理部41により実行される各種プログラムが予め記憶されている。本実施形態では、記憶媒体42が第1記憶部に相当する。
【0024】
演算処理部41は、記憶媒体42に記憶されている各種プログラムを実行することによりサーバ装置40を制御するための各種処理を行う。例えば、演算処理部41は、複数の撮影装置20a~20cからそれぞれ常時送信されるリアルタイム映像データVDRを記憶媒体42に記憶させる映像データ記憶処理を実行する。具体的には、演算処理部41は、映像データ記憶処理において、複数の撮影装置20a~20cからそれぞれ常時送信されるリアルタイム映像データVDRの録画形式を、表示装置50に表示可能な録画形式に変換する処理を行った上で、変換された映像データを保存用映像データVDDとして記憶媒体42に記憶させる。
【0025】
演算処理部41は、保存用映像データVDDを複数の撮影装置20a~20c毎に、また所定の単位録画時間Tb毎に記憶媒体42に記憶させる。これにより、記憶媒体42には、
図3に示されるように、複数の撮影装置20a~20c毎に単位録画時間Tb毎の複数の保存用映像データVDDa(t)~VDDa(t-n・Tb),VDDb(t)~VDDb(t-n・Tb),VDDc(t)~VDDc(t-n・Tb)が記憶されることになる。なお、「n」は2以上の整数を示す。
【0026】
本実施形態では、サーバ装置40の単位録画時間Tbは撮影装置20a~20cの単位録画時間Tbと同一の値に設定されている。時間「n・Tb」は、サーバ装置40における保存用映像データVDDの録画保存期間に等しい。録画保存期間とは、録画データの保存が保証されている期間である。なお、時刻「t-n・Tb」よりも古い保存用映像データVDDが記憶媒体42に記憶されている可能性もあるが、そのような映像データは保証の対象外となっている。
【0027】
図1に示される表示装置50は、ディスプレイを備えるパーソナルコンピュータや携帯端末等からなる。サーバ装置40は、表示装置50に入力されるIDコードやパスワード等の入力情報に基づいて表示装置50を認証すると、入力情報に紐付けられた撮影装置に対応した保存用映像データを記憶媒体42から読み込んで表示装置50に送信する。例えば表示装置50に入力された入力情報が撮影装置20aに対応する入力情報である場合、サーバ装置40は、記憶媒体42に記憶されている保存用映像データVDDa(t)~VDDa(t-n・Ta)のうち、指定された時間帯に対応する保存用映像データを表示装置50に送信する。これにより、サーバ装置40から送信される保存用映像データを表示装置50がディスプレイに表示する。よって、表示装置50を操作しているユーザは、表示装置50に表示される保存用映像データを通じて、撮影装置20aにより撮像されている場所の情報を確認することができる。
【0028】
ところで、映像表示システム10では、撮影装置20a~20cとサーバ装置40との無線通信が不安定な状況になると、それらの間の無線通信が確立されているにも関わらず、サーバ装置40においてリアルタイム映像データVDRを適切に受信できない可能性がある。このような状況では、サーバ装置40の演算処理部41は、適切な保存用映像データVDDを記憶媒体42に記憶させることができないため、結果的に記憶媒体42に記憶されている保存用映像データVDDに欠損が生じる。記憶媒体42に記憶されている保存用映像データVDDに欠損が生じると、欠損の生じた部分の保存用映像データVDDを表示装置50に表示させることができないため、ユーザにとって不都合が生じる。
【0029】
そこで、本実施形態の映像表示システム10では、サーバ装置40の演算処理部41が、保存用映像データVDDを記憶媒体42に記憶させる映像データ記憶処理の実行の際に、保存用映像データVDDに欠損が生じているか否かを判定する。演算処理部41は、保存用映像データVDDに欠損が生じていると判定した場合には、その欠損情報を記憶媒体42に記憶させる。演算処理部41は、記憶媒体42に記憶されている保存用映像データVDDの欠損情報を参照しつつ、欠損の生じている時間帯に対応する補完用映像データVDSを撮影装置20a~20cから取得することにより、保存用映像データVDDの欠損を補完する映像データ補完処理を実行する。
【0030】
次に、演算処理部41により実行される映像データ記憶処理及び映像データ補完処理の具体的な手順について説明する。はじめに、
図4を参照して、映像データ記憶処理の具体的な手順について説明する。なお、演算処理部41は、撮影装置20a~20cから送信されるリアルタイム映像データVDRを受信している期間、
図4に示される映像データ記憶処理を上記の単位録画時間Taの周期で繰り返し実行する。また、演算処理部41は、
図4に示される映像データ記憶処理を複数の撮影装置20a~20c毎に個別に実行する。以下では、便宜上、撮影装置20aから送信されるリアルタイム映像データVDRに対して実行される映像データ記憶処理について代表して説明する。
【0031】
図4に示されるように、演算処理部41は、まず、ステップS10の処理として、録画形式変換処理を実行する。録画形式変換処理は、撮影装置20aから送信された単位録画時間Ta当たりのリアルタイム映像データVDRの録画形式を、表示装置50に表示可能な録画形式に変換して保存用映像データVDDを作成する処理である。
【0032】
演算処理部41は、ステップS10に続くステップS11の処理として、保存用映像データVDDに欠損が生じているか否かを判定する。例えば、撮影装置20aから送信されるリアルタイム映像データVDRを通信の不安定化によりサーバ装置40が適切に受信できなかった場合、リアルタイム映像データVDRにデータ不良が発生する。このような場合、録画形式変換処理では、保存用映像データVDDを適切に作成することができないため、異常が発生する。これを利用し、演算処理部41は、録画形式変換処理の実行の際に異常が生じることをもって、保存用映像データVDDに欠損が生じていると判定する。
【0033】
演算処理部41は、ステップS11の判定処理で否定判定した場合、すなわち保存用映像データVDDに欠損が生じていない場合には、ステップS12の処理として、作成した保存用映像データVDDを記憶媒体42に記憶させる。また、演算処理部41は、ステップS13の処理として、保存用映像データVDDに対応した時間帯の映像データが登録済みであることを記憶媒体42に記憶させた後、一連の処理を一旦終了する。
【0034】
演算処理部41は、ステップS11の判定処理で肯定判定した場合、すなわち保存用映像データVDDに欠損が生じている場合には、ステップS14の処理として、保存用映像データVDDに対応した時間帯の映像データが未登録であることを記憶媒体42に記憶させた後、一連の処理を一旦終了する。
【0035】
このような映像データ記憶処理が複数の撮影装置20a~20c毎に単位録画時間Tbの周期で実行されることにより、
図5に示されるような欠損テーブルTDが記憶媒体42に作成される。
図5に示されるように、欠損テーブルTDは、複数の撮影装置20a~20cのそれぞれに対応した保存用映像データVDDa(t)~VDDa(t-n・Tb),VDDb(t)~VDDb(t-n・Tb),VDDc(t)~VDDc(t-n・Tb)のうちのいずれに欠損が存在するかを表したものである。なお、
図5において、ハッチングが付されている映像データは、欠損の生じている映像データを示し、ハッチングが付されていない映像データは、欠損の生じていない映像データを示す。
【0036】
次に、
図6を参照して、演算処理部41により実行される映像データ補完処理の具体的な手順について説明する。なお、演算処理部41は、
図6に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。また、演算処理部41は、
図6に示される処理に相当するタスクを複数実行することにより、複数の映像データ補完処理を並列に実行する。演算処理部41は、複数の映像データ補完処理を開始する際、それぞれの開始時間を所定時間だけずらす。
【0037】
図6に示されるように、演算処理部41は、まず、ステップS20の処理として、撮影装置リストLIを記憶媒体42から読み込む。撮影装置リストLIは、例えば
図7に示されるように映像表示システム10に設けられる撮影装置20a~20cをリスト化したものである。撮影装置リストLIには、撮影装置20a~20cの情報の他、それらに対応する順番S及びフラグFの情報が含まれている。順番Sは、保存用映像データVDDの補完が行われる撮影装置の順序を示す。フラグFは、対応する撮影装置に対して映像データ補完処理が実行されているか否かを示す。例えばフラグFaがオン状態である場合、撮影装置20aに対して映像データ補完処理が実行されていることを示す。また、フラグFb,Fcがオフ状態である場合、撮影装置20b,20cに対して映像データ補完処理が実行されていないことを示す。
【0038】
図6に示されるように、演算処理部41は、ステップS20に続くステップS21の処理として、順番Sの値に対応する撮影装置を補完対象として設定する。なお、順番Sの初期値は「1」に設定されている。
その後、演算処理部41は、ステップS22の処理として、順番Sの撮影装置に対して別の映像データ補完処理が実行されているか否かを判断する。具体的には、演算処理部41は、
図7に示される撮影装置リストLIにおいて、現在の順番Sの値に対応するフラグFがオン状態であることに基づいて、順番Sの撮影装置に対して別の映像データ補完処理が実行されていると判断する。この場合、演算処理部41は、ステップS22の処理で肯定判断し、続くステップS23の処理として、順番Sの値をインクリメントする。その後、演算処理部41は、ステップS21の処理に戻り、順番Sに対応する撮影装置を映像データ補完対象の撮影装置として再設定する。
【0039】
演算処理部41は、ステップS22の処理で否定判断した場合、すなわち順番Sの撮影装置に対して別の映像データ補完処理が実行されていない場合には、ステップS24の処理として、順番Sの撮影装置に対応する保存用映像データVDDに欠損が存在するか否かを判定する。具体的には、演算処理部41は、
図5に示される欠損テーブルTDを用いることにより、順番Sの撮影装置に対応する保存用映像データVDDに欠損が存在するか否かを判断する。なお、ステップS24の処理において対象となる保存用映像データVDDは、現在の時刻tから時刻「t-n・Tb」までの期間に録画された保存用映像データVDD、すなわち録画保存期間内の保存用映像データVDDである。演算処理部41は、時刻「t-n・Tb」よりも前に録画された保存用映像データVDDに関しては欠損判定の対象外にする。結果的に、時刻「t-n・Tb」よりも前に録画された保存用映像データVDDに関しては補完の対象外となる。
【0040】
演算処理部41は、ステップS24の処理で肯定判断した場合、すなわち順番Sの撮影装置に対応する保存用映像データVDDに欠損が存在する場合には、ステップS25の処理として、その順番Sに対応するフラグFをオン状態に設定した後、ステップS26の処理として、欠損部分に対応する補完用映像データVDSを順番Sの撮影装置から取得する。その際、順番Sの撮影装置に対応する保存用映像データVDDに複数の欠損が発生している場合には、それらのうち、時間的に最も古い保存用映像データVDDを順番Sの撮影装置から取得する。続いて、演算処理部41は、ステップS27の処理として、取得した補完用映像データVDSを保存用映像データVDDとして記憶媒体42に記憶させることにより、保存用映像データVDDの欠損部分を補完する。
【0041】
演算処理部41は、ステップS27に続くステップS28の処理として、順番Sに対応するフラグFをオフ状態に設定した後、ステップS29の処理として、順番Sが最大値Smaxに達したか否かを判断する。最大値Smaxは、映像表示システム10に設けられる撮影装置の数に等しく、本実施形態では「3」に設定されている。演算処理部41は、ステップS29の処理で否定判断した場合、すなわち順番Sが最大値Smaxに達していない場合には、ステップS30の処理として、順番Sをインクリメントした後、ステップS21の処理に戻る。
【0042】
演算処理部41は、ステップS29の処理で肯定判断した場合、すなわち順番Sが最大値Smaxに達した場合には、ステップS31の処理として、順番Sを「1」に設定した後、一連の処理を一旦終了する。この場合、演算処理部41は、所定の周期の経過後に、
図6に示される処理を再度実行する。
【0043】
次に、本実施形態の映像表示システム10の動作例について説明する。なお、簡単のために、演算処理部41が2つの映像データ補完処理を並列に実行している場合について説明する。以下では、演算処理部41により実行される2つの映像データ補完処理を「第1映像データ補完処理」及び「第2映像データ補完処理」と称する。
【0044】
演算処理部41により第1映像データ補完処理が開始されると、第1映像データ補完処理では、撮影装置20aに対応する保存用映像データVDDa(t)~VDDa(t-n・Tb)の補完が開始される。具体的には、
図5に示されるように保存用映像データVDDa(t-(n-3)・Tb)~VDDa(t-(n-7)・Tb)に欠損が生じている場合、第1映像データ補完処理では、それらのうち、最も時間的に古い保存用映像データVDDa(t-(n-3)・Tb)が補完対象に設定される。そして、撮影装置20aの記憶媒体23に記憶されている補完用映像データVDSのうち、保存用映像データVDDa(t-(n-3)・Tb)の録画時間に対応する補完用映像データをサーバ装置40の演算処理部41が撮影装置20aから取得する。演算処理部41は、撮影装置20aから取得した補完用映像データを保存用映像データVDDa(t-(n-3)・Tb)として記憶媒体42に記憶させる。これにより、保存用映像データVDDa(t-(n-3)・Tb)の補完が完了する。
【0045】
一方、演算処理部41により第1映像データ補完処理が開始された時点から所定時間経過後に第2映像データ補完処理が開始される。第2映像データ補完処理が開始された時点では、第1映像データ補完処理が撮影装置20aに対して実行されているため、第2映像データ補完処理では、撮影装置リストLIにおいて撮影装置20aの次の順番である撮影装置20bに対応する保存用映像データVDDb(t)~VDDb(t-n・Tb)の補完が開始される。具体的には、
図5に示されるように、保存用映像データVDDb(t-(n-6)・Tb),VDDa(t-(n-7)・Tb)に欠損が生じている場合、第1映像データ補完処理では、それらのうち、最も時間的に古い保存用映像データVDDb(t-(n-6)・Tb)が補完対象に設定される。そして、撮影装置20bの記憶媒体23に記憶されている補完用映像データVDSのうち、保存用映像データVDDb(t-(n-6)・Tb)の録画時間に対応する補完用映像データをサーバ装置40の演算処理部41が撮影装置20bから取得する。演算処理部41は、撮影装置20bから取得した補完用映像データを保存用映像データVDDb(t-(n-6)・Tb)として記憶媒体42に記憶させる。これにより、保存用映像データVDDb(t-(n-6)・Tb)の補完が完了する。
【0046】
このようにして第1映像データ補完処理及び第2映像データ補完処理が順次実行されることにより、
図8に示されるような順序で保存用映像データVDDの補完が行われる。
以上説明した本実施形態の映像表示システム10によれば、以下の(1)~(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0047】
(1)サーバ装置40は、撮影装置20a~20cから送信されるリアルタイム映像データVDRを保存用映像データVDDとして記憶する記憶媒体42を備えている。サーバ装置40は、記憶媒体42に記憶されている保存用映像データVDDに欠損部分が存在すると判定することに基づいて、当該欠損部分に対応する映像データを撮影装置20a~20cから取得する映像データ補完処理を実行する。これにより、撮影装置20a~20cとの無線通信が不安定化することによりサーバ装置40がリアルタイム映像データVDRを適切に取得することができずに保存用映像データVDDに欠損部分が生じた場合でも、サーバ装置40が映像データ補完処理を実行することにより、保存用映像データVDDの欠損部分が補完される。よって、サーバ装置40に記憶されている保存用映像データVDDをより的確に補完することができる。
【0048】
(2)サーバ装置40は、映像データ補完処理を撮影装置20a~20cのうちの2つの撮影装置に対して並列に実行する。これにより、より早期に保存用映像データVDDの欠損部分を補完することができる。
(3)サーバ装置40は、
図7に示されるように撮影装置20a~20cに対して予め設定された順序で映像データ補完処理を実行する。これにより、全ての撮影装置20a~20cに対して映像データ補完処理が均等に実行されるため、一つの撮影装置に対応する保存用映像データVDDの補完だけが大幅に遅れるような状況を回避することができる。
【0049】
(4)サーバ装置40は、保存用映像データVDDに複数の欠損部分が存在する場合、映像データ補完処理において、複数の欠損部分のうち、時間的に古い欠損部分に対応する補完用映像データVDSを撮影装置20a~20cから優先的に取得する。これにより、時間的に古い保存用映像データVDDの欠損部分から順に補完することができる。
【0050】
(5)サーバ装置40は、撮影装置20a~20cから送信されたリアルタイム映像データVDRに対して所定の映像処理を行った際に異常が発生することをもって、保存用映像データVDDに欠損部分が発生したと判定する。これにより、保存用映像データVDDに欠損部分が存在するか否かを容易に判定することができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態のサーバ装置40は、保存用映像データVDDに欠損部分が発生したか否かを任意の方法で判定することが可能である。例えば、サーバ装置40は、撮影装置20a~20cとの通信に異常が生じることをもって、保存用映像データVDDに欠損部分が発生したと判定してもよい。
【0052】
・上記実施形態の映像表示システム10は3つの撮影装置20a~20cを備えているが、映像表示システム10が備える撮影装置の数は任意に変更可能である。また、撮影装置の数に合わせて、サーバ装置40により3つ以上の映像データ補完処理を並列に実行してもよい。なお、サーバ装置40は、1つの映像データ補完処理のみを実行するものであってもよい。
【0053】
・上記実施形態のサーバ装置40は、
図7に示されるような撮影装置20a~20cの処理順序を用いずに、単に保存用映像データVDDに存在する欠損部分のうち、時間的に古いものから優先的に補完してもよい。例えば
図5に示されるように保存用映像データVDDに欠損部分が生じている場合、サーバ装置40は、「VDDc(t-(n-2)・Tb)→VDDa(t-(n-3)・Tb)→VDDa(t-(n-4)・Tb)→・・・」といった順序で複数の映像データ補完処理により補完を行ってもよい。
【0054】
・上記実施形態のサーバ装置40は、保存用映像データVDDに複数の欠損部分が存在する場合に、時間的に古い欠損部分を優先的に補完するものに限らず、任意の欠損部分から補完するものであってもよい。例えば、サーバ装置40は、表示装置50の操作によりユーザが指定した部分の欠損を優先的に補完するような処理を行ってもよい。
【0055】
・撮影装置20a~20cの単位録画時間Taは、サーバ装置40の単位録画時間Tbとは異なる値に設定されていてもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0056】
10:映像表示システム
20a~20c:撮影装置
23:記憶媒体(第2記憶部)
40:サーバ装置
42:記憶媒体(第1記憶部)
50:表示装置