(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】高圧受電設備監視装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2018019465
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】三谷 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 仁
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-270459(JP,A)
【文献】特開2017-103866(JP,A)
【文献】特開2007-049095(JP,A)
【文献】特開平03-109798(JP,A)
【文献】特開2014-098999(JP,A)
【文献】国際公開第97/002570(WO,A1)
【文献】特開平7-264771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービクル式高圧受電設備の電圧/電流情報を含む電力情報の表示機能を備えた高圧受電設備監視装置であって、
少なくとも高圧受電電力の電圧/電流の表示、及び前記高圧受電電力を負荷に供給するために低圧変換した低圧電力の電圧/電流の表示を行う表示部と、
電力に関する他の表示機能或いは前記電力情報を外部へ通知する機能を備えた拡張モジュールを接続して通信するための
複数の拡張端子とを有する基本モジュールを具備し、
前記基本モジュールは、前面に前記表示部を設けた蓋部と、 前記蓋部の背部に配置されて
前記拡張モジュールを収容するモジュール収容部を備えた本体部とで構成され、
前記モジュール収容部の奥に前記拡張端子を複数備える一方、
前記拡張モジュールは前記拡張端子に接続するための第1接続端子を背部に具備し、
前記拡張モジュールを、前記モジュール収容部に前方から挿入操作すると、前記第1接続端子が前記拡張端子に接続されることを特徴とする高圧受電設備監視装置。
【請求項2】
前記基本モジュールと前記拡張モジュールとの間の通信制御は、前記拡張モジュールに設けられた通信制御部により実施されることを特徴とする請求項
1記載の高圧受電設備監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュービクル等の高圧受電設備における受電電力を監視する監視装置に関し、特に監視機能を容易に変更できる高圧受電設備用監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のキュービクル等の高圧受電設備には、電力会社から送電された高電圧の商用電力を受電する設備を備える一方で、太陽光発電等の自家発電電力を商用電力に系統連系させる機能を備えたものがある。このような高圧受電設備では、受電電力(電流、電圧、力率等)を計測して表示する表示部に加えて、発電電力の計測や売電電力を計測する機能が設けられたり、必要に応じて節電制御する機能を備えた高圧受電設備監視装置を備えたものがある。
このような背景を踏まえて、本出願人は特許文献1に示すような高圧受電設備監視装置を容易に組み付けることができるキュービクルを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キュービクルを特許文献1に開示された構成とすることで、高圧受電設備監視装置を容易に後付けすることができた。
しかしながら、組み付ける高圧受電設備監視装置は、例えば設備の保守点検をサポートする機能、設備の過負荷をお知らせする機能、発電量及び売電量を表示する機能、使用電力を監視して節電制御を行う機能、更にはクラウド通信機能等、利用者によって要求が様々であり、多くの機能を備えておく必要があった。そのため、ユーザにとっては必要としない機能まで備えることになり、コスト高なものとなっていた。
【0005】
これを解消するために、監視装置の機能を限定した複数種類の監視装置を用意すれば、ユーザーにとって必要な機能のみを備えた装置を提供することが可能となるが、種類を増やせばその分コストの上昇を招き、コストダウンは望めなかった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、利用者が必要とする機能のみの取り付けを可能とし、且つそれを低コストで実現できる高圧受電設備監視装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、キュービクル式高圧受電設備の電圧/電流情報を含む電力情報の表示機能を備えた高圧受電設備監視装置であって、少なくとも高圧受電電力の電圧/電流の表示、及び高圧受電電力を負荷に供給するために低圧変換した低圧電力の電圧/電流の表示を行う表示部と、電力に関する他の表示機能或いは電力情報を外部へ通知する機能を備えた拡張モジュールを接続して通信するための複数の拡張端子とを有する基本モジュールを具備し、基本モジュールは、前面に表示部を設けた蓋部と、 蓋部の背部に配置されて拡張モジュールを収容するモジュール収容部を備えた本体部とで構成され、モジュール収容部の奥に拡張端子を複数備える一方、拡張モジュールは拡張端子に接続するための第1接続端子を背部に具備し、拡張モジュールを、モジュール収容部に前方から挿入操作すると、第1接続端子が拡張端子に接続されることを特徴とする。
この構成によれば、基本モジュールによりユーザや保安管理者等の利用者にとって必要最小限の情報を提供できる。そして、拡張端子を介して他の機能を備えた拡張モジュールを取り付ければ、利用者が望む追加機能を設けることができる。よって、拡張モジュールのみ何種類か用意すれば利用者の要求に対応でき、コスト増は僅かで済む。
加えて、基本モジュールが拡張モジュールを収容するモジュール収容部を備えるため、拡張モジュール設置のための空間を別途確保する必要がないし、拡張モジュールを収容すると第1接続端子が拡張端子に接続されるため、接続操作が容易である。そして、表示部の配置に十分なスペースを確保できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、基本モジュールと拡張モジュールとの間の通信制御は、拡張モジュールに設けられた通信制御部により実施されることを特徴とする。
この構成によれば、基本モジュールに予め拡張モジュールと通信する機能を設けておく必要がないため、最小限の機能を備えれば良く安価に構成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基本モジュールによりユーザや保安管理者等の利用者にとって必要な最小限の情報を提供できる。そして、拡張端子を介して他の機能を備えた拡張モジュールを取り付ければ、利用者が望む追加機能を設けることができる。よって、拡張モジュールのみ何種類か用意すれば利用者の要求に対応でき、コスト増は僅かで済む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る高圧受電設備監視装置の一例を示す構成説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】高圧受電設備監視装置の機能ブロック図である。
【
図3】高圧受電設備監視装置の他の例を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図4】高圧受電設備監視装置の他の例を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は拡張モジュールを装着する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る高圧受電設備監視装置の一例を示す構成説明図であり、(a)は正面、(b)は側面を示している。
図1において、1は基本モジュール、2(2a,2b・・)は拡張モジュールであり、基本モジュール1と拡張モジュール2とは、接続部分の幅、奥行きを同一寸法とし、積み重ねて配置可能としている。
【0014】
基本モジュール1は、天面に拡張モジュール2を接続するための拡張端子3aが設けられ、拡張モジュール2の対応する底面には拡張端子3aに接続するための第1接続端子3bが設けられている。また、拡張モジュール2の天面には拡張端子3aと同一の端子である第2接続端子3cが拡張端子3aの位置に合わせて設けられている。即ち、第1接続端子3bと第2接続端子3cとは互いに背中合わせに配置されている。
この結果、各端子3(拡張端子3a、第1接続端子3b、第2接続端子3c)は、モジュール1,2を縦方向に重ねることで連結される。
尚、拡張端子3a及び第2接続端子3cは雌型、第2接続端子を雄型としているが、逆でも良い。
【0015】
図2は高圧受電設備監視装置の機能ブロック図を示し、1つの基本モジュール1に対して5個の拡張モジュール2(2a,2b,2c,2d,2e)を連結した構成を示している。この場合の個々のモジュールの構成、高圧受電設備監視装置全体の構成は以下のようである。尚、拡張モジュール2の設置数は1つの場合もあり、利用者の要求する機能により変更される。
基本モジュール1は、相線式や計器用変圧器の変圧比又は電圧、変流器の変流比又は変圧器容量等の基本設定を行う基本設定部11、図示しないセンサから入力された情報を基に高圧及び低圧の電圧/電流、デマンド電流、過電流、更に電力、力率、買/売(発電)電力量等を演算する計測部12、計測結果である高圧の電圧/電流、低圧の電圧/電流、デマンド電流、過電流、使用電力、力率、買/売(発電)電力量等を表示する表示部13、基本モジュール1を制御する基本制御部14等を備えている。
【0016】
尚、基本モジュール1には、キュービクル内に設置された各種センサ(電圧センサ、電流センサ、温度センサ等)を接続する複数のセンサ端子(図示せず)が設けられている。また、拡張モジュール2が必要とする各種センサは、拡張モジュール2に設けられるし、基本モジュール1に接続されている場合は基本モジュール1を介して送信される。
【0017】
第1拡張モジュール2aは、デマンド制御のための電力平均値等の閾値の設定等を行うための操作部21、演算した電力等を記憶する記憶部22、図示しない高圧スマートメータと通信して使用電力情報を入手する第1通信部23、負荷をデマンド制御するための制御信号を出力する制御出力部24、第1拡張モジュール2aを制御すると共に基本モジュール1との通信を制御する第1制御部25等を備えている。第1通信部23、制御出力部24は、第1拡張モジュール2aの前面等の拡張モジュール2を重ねても露出する部位に設けられている。尚、他の拡張モジュール2の通信部等の位置も同様である。
【0018】
第2拡張モジュール2bは、自身に設けられている温度センサの情報を基に温度を監視したり、他のモジュールから情報を入手して買/売電力量を演算する計測部31、キュービクルの温度や買/売電力の計測値、演算により得られた警報や外部から入力された警報などを外部へ通知したり、デマンド目標値を遠隔管理するためにクラウド側へ通知したり、更にはアグリゲータからの指示を受けるための第2通信部32、第2拡張モジュール2bを制御すると共に基本モジュール1との通信を制御する第2制御部33等を備えている。
【0019】
第3拡張モジュール2cは、同一キュービクルに設置された高圧受電設備監視装置同士で通信を実施したり、図示しないパワーコンディショナーや蓄電池との連携、更には他のキュービクルとの連携を可能とする第3通信部41、第3拡張モジュール2cを制御すると共に基本モジュール1との通信を制御する第3制御部42等を備えている。第3拡張モジュール2cを設けることで、高圧受電設備監視装置同士の通信が可能となり、互いに連携させた制御が可能となる。尚、この場合第3通信部41同士は有線或いは無線で接続される。
【0020】
第4拡張モジュール2dは、キュービクル内の絶縁劣化、太陽光発電設備の故障等の異常発生信号を一元管理するための警報入力部51、第4拡張モジュール2dを制御すると共に基本モジュール1との通信を制御する第4制御部52等を備えている。
【0021】
第5拡張モジュール2eは、変圧器の過負荷、デマンド電流または絶縁劣化等の警報を外部に通報する警報出力部61、第5拡張モジュールを制御すると共に基本モジュール1との通信を制御する第5制御部62等を備えている。
個々の拡張モジュール2はこのように構成されており、
図1に示すように基本モジュール1に対して複数の拡張モジュール2を積み重ねて連結することで、高圧受電設備監視装置は構成されている。そして、高圧受電設備監視装置の制御部4は、基本制御部14と第1~第5制御部(25,33,42,52,62)とで構成され、第1~第5制御部(25,33,42,52,62)が互いに通信すると共に、それぞれが基本制御部14との通信を管理することで、スムーズな通信を可能としている。
【0022】
このように、基本モジュール1によりユーザや保安管理者等の利用者にとって必要な最小限の情報を提供できる。そして、拡張端子3aを介して他の機能を備えた拡張モジュール2を取り付ければ、利用者が望む追加機能を設けることができる。よって、拡張モジュール2のみ何種類か用意すれば利用者の要求に対応でき、コスト増は僅かで済む。
また、拡張モジュール2は基本モジュール1の上に載置することで連結されて通信できるし、拡張モジュール2は重ねて配置することで基本モジュール1と通信を実施できるため、基本モジュール1に1つの拡張端子3aを設けるだけで、拡張モジュール2の数に制限を設けること無く接続でき、利用者の要求する機能を追加できる。
そして、接続された拡張モジュール2と基本モジュール1との間の通信は、拡張モジュール2が制御するため、基本モジュール1に予め拡張モジュール2と通信する機能を設けておく必要がなく、基本モジュール1を安価に構成できる。
【0023】
尚、
図1では、基本モジュール1上に拡張モジュール2を重ねて配置しているが、各モジュール1,2を縦に配置しても良く、縦配置した基本モジュール1に対して拡張モジュール2を隣接して配置し、複数の拡張モジュール2を横方向に重ねるように設置しても良い。更には、基本モジュール1の下に拡張モジュール2を配置しても良い。
【0024】
図3は高圧受電設備監視装置の他の形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図であり、基本モジュール1に拡張モジュール2を収容する収容部15を設け、拡張モジュール2を収容部15に組み付けるよう構成した高圧受電設備監視装置を示している。
基本モジュール1は、下部に基本設定部11、表示部13を備えると共にその背部に計測部等を配置し、上部に大きく開口形成されて複数の拡張モジュール2を前方から収容可能な収容部15が形成されている。
【0025】
収容部15の奥部には、複数の拡張端子3aが上下方向に複数配置されたボード16が配置されている。また、拡張モジュール2は背面に第1接続端子3bが配置されており、収容部15に挿入することでボード16に接続され、基本モジュール1との通信が可能となる。
【0026】
このように、基本モジュール1が拡張モジュール2を収容する収容部15を備えることで、拡張モジュール2設置のための空間を別途確保する必要がないし、拡張モジュール2を収容すると第1接続端子3bが拡張端子3aに接続されるため、接続操作が容易である。そして、複数の拡張モジュール2を装着できるため、利用者の要求する機能を追加しやすい。
【0027】
尚、
図3では、拡張端子3aを収容部15の奥部に配置して前方から拡張モジュール2を挿入して収容する構成となっているが、側方に向けて収容部15を形成して、側方から拡張モジュール2を挿入する形態としても良い。
また、拡張モジュール2を収容する部位は、基本モジュール1の下方に設けても良いし、基本設定部11、表示部13を設けた面の背部に配置しても良い。
図4はこのような構成、即ち表示部13等を設けた面の背部に拡張モジュール2の収容部を配置した例を示している。前面を構成する蓋板17とその背部に配置された本体部18とで基本モジュール1を構成し、蓋板17の前面全体を基本設定部11及び表示部13としている。一方、本体部18に収容部15を備えて、蓋板17を回動操作して持ち上げることで、拡張モジュール2を収納可能としている。また、計測部12、基本制御部14は、本体部18の収容部15の奥部に配置している。このように、基本モジュール1の表示部13の背部に拡張モジュール2の収容部15を配置しても良く、表示部13等の配置に十分なスペースを確保できる。
【符号の説明】
【0028】
1・・基本モジュール、2・・拡張モジュール、3a・・拡張端子、3b・・第1接続端子、3c・・第2接続端子、13・・表示部、15・・収容部(モジュール収容部)、25・・第1制御部(通信制御部)、33・・第2制御部(通信制御部)、42・・第3制御部(通信制御部)、52・・第4制御部(通信制御部)、62・・第5制御部(通信制御部)。