IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7085857樹脂組成物、チップ抵抗器の保護膜、およびチップ抵抗器
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、チップ抵抗器の保護膜、およびチップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20220610BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220610BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220610BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220610BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220610BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220610BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20220610BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220610BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/34
C08K3/36
C08G59/50
C09D163/00
C09D7/63
H01C7/00 110
H01C7/00 400
C09D7/61
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018029535
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2018145410
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017037951
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正幸
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0245161(US,A1)
【文献】特開2011-144361(JP,A)
【文献】特開2010-202865(JP,A)
【文献】特開2016-089096(JP,A)
【文献】特開2009-091424(JP,A)
【文献】特開2015-021086(JP,A)
【文献】特開2011-063653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 3/34
C08K 3/36
C08G 59/50
C09D 163/00
C09D 7/63
H01C 7/00
C09D 7/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)成分の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、15~40質量部であり、(C)成分の総量が、(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、50質量部以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分が、さらに、(c2)シリカフィラーを含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の樹脂組成物を用いる、チップ抵抗器の保護膜用コーティング剤。
【請求項4】
(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)成分の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、15~40質量部であり、(C)成分の総量が、(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、50質量部以下である樹脂組成物の硬化物を有する、チップ抵抗器の保護膜。
【請求項5】
請求項4記載の保護膜を含む、チップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、チップ抵抗器の保護膜、およびチップ抵抗器に関し、特に、硬化後に耐熱性に優れる樹脂組成物、耐熱性に優れるチップ抵抗器の保護膜、および耐熱性に優れるチップ抵抗器の保護膜を含むチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用電子部品の高耐熱化が求められている。車載用電子部品は、従来よりもエンジンに近い位置での使用が検討されており、これまでは長期での耐熱温度の評価基準は、150℃であったが、現在は200℃での耐熱性が求められるようになってきている。
【0003】
この耐熱性には、長時間経過後、例えば、1000時間経過後の密着性が要求される。従来の樹脂組成物は、150℃で長時間経過後に十分な密着性を確保していたが、200℃では長時間保持後に密着性が低下してしまう、という問題がある。
【0004】
高温での劣化が少なく金属等との密着性が良好な耐熱塗料として、所定のポリイミド樹脂とナフタレン骨格を有する4官能エポキシ樹脂とを含有する耐熱塗料が、報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、所定のポリイミド樹脂とナフタレン骨格を有する4官能エポキシ樹脂とを含有する耐熱塗料は、ポリイミド樹脂を使用しているので、ワニス状にするために、大量の溶剤が必要となる。このため、この耐熱塗料では、厚膜が得られにくい、さらに、ポリイミドを溶解可能な溶剤は、スクリーン印刷の乳剤を溶かしてしまう、等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-131856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有する硬化膜を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した樹脂組成物、チップ抵抗器の保護膜、およびチップ抵抗器に関する。
〔1〕(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)成分の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、15~40質量部であることを特徴とする、樹脂組成物。
〔2〕(C)成分が、さらに、(c2)シリカフィラーを含有する、上記〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕記載の樹脂組成物を用いる、チップ抵抗器の保護膜用コーティング剤。
〔4〕(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)成分の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、15~40質量部である樹脂組成物の硬化物を有する、チップ抵抗器の保護膜。
〔5〕上記〔4〕記載の保護膜を含む、チップ抵抗器。
【発明の効果】
【0009】
本発明〔1〕によれば、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有する硬化膜を形成することができる樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
本発明〔4〕によれば、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有する樹脂組成物の硬化膜であるチップ抵抗器の保護膜を提供することができる。
【0011】
本発明〔5〕によれば、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有するチップ抵抗器の保護膜を含む、信頼性の高いチップ抵抗器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物(以下、樹脂組成物という)は、(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)成分の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、15~40質量部であることを特徴とする。
【0013】
(A)成分であるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、樹脂組成物に、接着性を付与する。耐熱性に優れる樹脂は、一般に、高ガラス転移点(Tg)のものが多く、この高ガラス転移点の樹脂は、芳香環等による剛直な分子構造に加えて樹脂の架橋密度を上げることにより、達成されている場合が多い。しかしながら、樹脂の架橋密度を上げると、内部応力が高くなり、被着物との密着性が低下する傾向がある。一方、この(A)成分を使用する硬化物は2官能の分子を多く含んでおり、従来の高耐熱性樹脂に比べて架橋密度が高くなりにくく、そのため密着性が低下しにくい、と考えられる。また、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、メチレン基の代わりにエーテル基でナフタレン構造が結ばれており、従来の高耐熱性樹脂より化学的な耐熱性に優れる、と考えられる。(A)成分は、特に、限定されないが、一般式(1):
【0014】
【化1】
【0015】
で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ここで、式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ベンジル基、アルキル基であるか、または一般式(2):
【0016】
【化2】
【0017】
で表され、式中、Arは、それぞれ独立して、フェニレン基、もしくはナフチレン基であり、mは1もしくは2の整数であるものであり、nは、は1~20の整数であるものが、挙げられる。
【0018】
また、(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、180~1000が好ましく、190~900がより好ましく、200~800が更に好ましく、210~700がより更に好ましく、230~500が特に好ましい。エポキシ当量が大きくなるにつれ、一般にTgは低下する傾向にあるが、化学的な耐熱性が弱いとされるエポキシ基の総数が減少するので、樹脂組成物全体としての化学的な耐熱性は向上する。
【0019】
(A)成分の具体例としては、例えば、「ネットワークポリマー」Vol30、No4、P192(2009)に開示されている式(6)又は式(7)で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が、挙げられる。また、(A)成分の市販品としては、DIC製ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(品名:エピクロンHP-6000(エポキシ当量240~270))、(品名:EXA-7310(エポキシ当量247)、EXA-7311(エポキシ当量277)、EXA-7311L(エポキシ当量262)、EXA7311-G3(エポキシ当量250))等が挙げられる。(A)成分は、単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(B)成分であるアミン系硬化剤は、樹脂組成物に、硬化性を付与する。(B)成分は、特に限定されないが、アミン系硬化剤としては、芳香族ジアミン系硬化剤、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物等が挙げられる。芳香族ジアミン系硬化剤は、分子内に2つのアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物である。芳香族ジアミン系硬化剤を選択することで、他のアミン系硬化剤に比べ、硬化物により耐熱性(密着保持性)を付与できる。芳香族ジアミン系硬化剤としては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が、挙げられる。耐熱性の観点から、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが、好ましく、特に均一分散の観点から液状の3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが好ましい。ジシアンジアミドは、長期耐熱性と高ガラス転移点(Tg)を両立する硬化物を与えることができる。イミダゾール化合物としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられ、特に硬化促進の観点から、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。なお、フェノール硬化剤(レゾール型)の場合には、高Tgの硬化物が得られるが、ジシアンジアミドで硬化させた硬化物に比べてその硬化物が硬く、脆いため、長期耐熱性が悪くなってしまう。また、酸無水物系硬化系は、吸湿により特性が変わってしまうため、スクリーン印刷で使いにくい。
【0021】
(C)成分は、樹脂組成物に、低熱膨張性を付与する。これにより、温度変化に伴う寸法変化が抑えられ、高い耐熱性(密着保持性)が得られる。(C)成分は、長期耐熱性の観点から、少なくとも(c1)タルクを含有する。(c1)成分は、耐熱性(密着保持性)を著しく改善する。(c1)成分であるタルク粉末の形状は、板状、扁平状であり、硬化後に、面方向で樹脂の伸縮を抑制できるため好ましい。タルク粉末の平均粒径(面方向の長さ)は、特に限定されないが、1~10μmであることが、樹脂組成物の低熱膨張性、樹脂組成物中への(c1)成分の分散性の観点から好ましい。1μm未満であると、面方向での樹脂の伸縮を抑制する効果が低減するおそれがある。10μm超だと、樹脂組成物から形成される塗膜中に(c1)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。ここで、(c1)成分の平均粒径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。市販品としては、松村産業株式会社製タルク(品名:ハイフィラー#5000PJ)等が挙げられる。(c1)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。なお、タルクと同様にケイ酸塩鉱物として知られるモンモリロナイトは、イオン性不純物濃度が高いことと揺変性が付与されることから、フィラーとして機能するほどの十分な量を配合しにくい;カオリナイトは、イオン性不純物濃度が高い、吸水性が高い、耐湿性が悪い;マイカは、硬く、印刷性が悪い、等の欠点がある。
【0022】
樹脂組成物は、(C)成分が、さらに、(c2)シリカフィラーを含有すると、耐スクラッチ性の観点から、好ましい。(c2)の添加は、特に、硬化後の樹脂組成物が、バレルめっきをされる場合に、有効である。(c2)成分としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ、ナノシリカ等が、挙げられる。(c2)成分の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、特に限定されないが、0.1~10μmであることが、樹脂組成物中への(c2)成分の分散性、および樹脂組成物の低溶融粘度化の観点から好ましい。0.1μm未満だと、樹脂組成物の粘度が上昇して、印刷性等の作業性が悪化するおそれがある。10μm超だと、樹脂組成物中に(c2)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。ここで、(c2)成分の平均粒径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。市販品としては、アドマテックス製シリカ(製品名:SO-E2、平均粒径:0.5μm)、アドマテックス製シリカ(製品名:SE-1050、平均粒径:0.3μm)、龍森製シリカ(製品名:MP-8FS、平均粒径:0.7μm)、DENKA製シリカ(品名:FB-5D、平均粒径:5μm)、扶桑化学工業製(製品名:SP03B、平均粒径:300nm)等が挙げられる。(c2)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0023】
(A)成分の含有量の下限値は、硬化物の耐熱物性保持の観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量部に対し、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましい。一方、(A)成分の含有量の上限値は、熱膨張性の観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量部に対し、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0024】
(B)成分の含有量は、(B)成分が芳香族ジアミン系硬化剤の場合には、(A)成分の総含有量(その他にエポキシ化合物を含む場合には、それらも含む総含有量)のエポキシ官能価に対する当量比で、0.8~1.2の範囲内とすることが好ましい。(B)成分がジシアンジアミド及び/又はイミダゾール化合物の場合には、(A)成分の総含有量(その他にエポキシ化合物を含む場合には、それらも含む総含有量)100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲内とすることが好ましく、1~10質量部の範囲内とすることがより好ましい。
【0025】
(c1)成分の含有量は、(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、15~40質量部である。(c1)の成分が、15質量部未満であると、面方向で樹脂の伸縮を抑制する機能が不足するため、被着物と剥離し易くなる、または硬化物にクラックが生じ易くなる。一方、(c1)成分が、40質量部を超えると、バインダーとなる樹脂成分が不足し、硬化物の熱による劣化の進行が早くなる懸念がある。
【0026】
(c2)成分は、密着性の観点から、質量比で、(c1)1.0に対し、2.0を超えない範囲であると好ましい。
【0027】
(C)成分の総量は、(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、50質量部以下であると好ましく、43質量部以下であるとより好ましい。(C)成分の総量が、50質量部を超えると、密着保持性が劣り易くなる。なお、この場合においても、(c1)は40質量部以下である。
【0028】
なお、樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤等のカップリング剤、粘着性付与剤、消泡剤、流動調整剤、成膜補助剤、分散助剤等の添加剤を含むことができる。また、着色顔料を含むことができる。
【0029】
樹脂組成物は、(A)~(C)成分等を含む原料を、有機溶剤に溶解又は分散等させることにより、作製することができる。これらの原料の溶解又は分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0030】
有機溶剤としては、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート;芳香族系溶剤、例えば、トルエン、キシレン等;ケトン系溶剤、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。有機溶剤は、樹脂組成物をスクリーン印刷等での塗布に適した粘度に調整できるため好ましく、沸点が150℃以上の高沸点溶剤であると、印刷中に樹脂組成物から揮発しにくいため、より好ましく、カルビトール(沸点:200℃)、ブチルカルビトール(沸点:230℃)、ブチルカルビトールアセテート(沸点:247℃)が、さらに好ましい。有機溶剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、固形分が20~50質量%となるように使用することが好ましい。作業性の点から、樹脂組成物は、20~180Pa・sの粘度の範囲であることが好ましい。粘度は、HB型粘度計を用いて、回転数50rpm、25℃で測定した値とする。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有する硬化膜を形成することができる。
【0032】
〔チップ抵抗器の保護膜用コーティング剤〕
本発明のチップ抵抗器の保護膜用コーティング剤は、上述の樹脂組成物を用いる。
【0033】
〔チップ抵抗器の保護膜〕
本発明のチップ抵抗器の保護膜は、上述の樹脂組成物の硬化物である。すなわち、(A)ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、および(C)少なくとも(c1)タルクを含有する無機充填材を含み、
(c1)の含有量が(A)と(B)と(C)の合計100質量部に対して、15~40質量部である樹脂組成物の硬化物を有する。
【0034】
チップ抵抗器の保護膜は、樹脂組成物を、チップ抵抗器の所望の箇所に塗布した後、熱硬化させることにより得られる。
【0035】
樹脂組成物をチップ抵抗器に塗布する方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷、ディスペンス、ディッピング等が挙げられる。ここで、熱硬化後のチップ抵抗器の保護膜の厚さは、絶縁性の確保、外力からの保護と内部応力の軽減の観点から、10~50μmであると好ましい。
【0036】
熱硬化条件は、樹脂組成物に使用される有機溶剤の種類や量、塗布の厚み等に応じて、適宜、設定することができ、例えば、150~250℃で、10~120分程度とすることができる。
【0037】
以上のようにして、チップ抵抗器の保護膜を得ることができる。この保護膜は、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有する。
【0038】
〔チップ抵抗器〕
本発明のチップ抵抗器は、上述の保護膜を含む。このチップ抵抗器は、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有するチップ抵抗器の保護膜を含むため、信頼性が高い。
【実施例
【0039】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0040】
(A)成分のナフチレンエーテル型エポキシ樹脂には、DIC株式会社製ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(品名:エピクロンHP-6000)を、
(A’)成分のナフタレン型エポキシ樹脂には、DIC株式会社製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:エピクロンHP-4710)を、ビフェニル型エポキシ樹脂には、日本化薬株式会社製ビフェニル型エポキシ樹脂(品名:NC-3000)を、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂には、DIC株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(品名:エピクロンN-665 EXP)を、
(B)成分のアミン系硬化剤には、
(B1)3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製アミン系硬化剤、品名:カヤハードA-A)を、
(B2)ジシアンジアミドには、エボニック・ジャパン株式会社製のジシアンジアミド(品名:CG1400)を、
(B3)2-エチル-4-メチルイミダゾールには、四国化成工業株式会社製イミダゾール(品名:2E4MZ)を、
(B’)成分のフェノール硬化剤(レゾール)には、三菱ガス化学株式会社製レゾール型フェノール系硬化剤(品名:ニカノールPR-1440M)を、
(c1)成分のタルクには、松村産業株式会社製タルク粉末(品名:ハイフィラー#5000PJ、平均粒径:4μm)を、
(c2)成分のシリカには、アドマテックス株式会社製シリカ粉末(品名:アドマファインSE-1050、平均粒径:0.3μm)を、
カップリング剤には、信越化学工業株式会社製シランカップリング剤(品名:KBM-403)を、使用した。
【0041】
〔実施例1~7、比較例1~10〕
(A)成分及び(A’)成分をブチルカルビトールアセテートにより溶液化した後、表1、2に示す割合で、(A)~(C)成分等を、3本ロールミルを用いて混合した。
【0042】
〔保存安定性の評価〕
(A)成分及び(A’)成分を、ブチルカルビトールアセテート(BCA)により溶解した溶液の溶解状態の安定性の確認を、目視で行った。(A)成分および(A’)成分の再析出の有無を、以下の基準で判定した。
○:1週間以上経過しても再析出がなかった。
△:1日以上1週間未満に再析出した。
×:1日未満に再析出した。
なお、溶解性が×となった時点で、評価を終了した。
【0043】
〔耐熱性の評価〕
硬化した樹脂組成物の耐熱性評価を、行った。樹脂組成物を、スライドガラス上に、1.5mm□のパターンの印刷マスクを用いてスクリーン印刷し、200℃のバッチ炉で30分間加熱し、硬化したものを試験片とし、その試験片を200℃に保持したバッチ炉に1000時間静置した後に取り出し、試験片が室温になるまで自然冷却してから、セロハンテープを用い、スライドガラス上の硬化膜のテープ剥離試験を行った。
なお、硬化膜数は50個とし、剥離した数を以下の基準により、目視で判定した。
◎:剥離の発生がなかった。
○:剥離の発生数が、10個以下であった。
△:剥離の発生数が、11~49個であった。
×:50個すべてが剥離した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1~2からわかるように、実施例1~7は、保存安定性、耐熱性が、良好であった。特に、表1には記載していないが、実施例1~3、5は、5000時間経過後も耐熱性が、著しく良好であった。実施例4は、(c2)成分が多く、(c1)成分を含有させる効果が小さかったため、他の実施例に比べ、耐熱性が若干劣った。また、表1には記載していないが、実施例1~7は、保存安定性が非常に良好で、6ヶ月後も再析出が観察されなかった。これに対して、(c1)成分が少なすぎる比較例1、(c1)成分が多すぎる比較例2は、耐熱性が悪かった。(A)成分の代わりにナフタレン型エポキシ樹脂を使用した比較例3、(A)成分の代わりにビフェニル型エポキシ樹脂を使用した比較例4は、保存安定性が悪かった。(A)成分の代わりにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を使用した比較例5、(B)成分の代わりにフェノール型硬化剤を使用した比較例6、(c1)成分を含まない比較例7~10は、耐熱性が悪かった。
【0047】
上記のように、本発明の樹脂組成物は、高温(例えば、200℃)での保持後に、十分な密着性を有し、保存安定性も良好である。